説明

非ワクチン治療法の治療効果を改善するための熱ショックタンパク質の使用

本発明は、非ワクチン治療方法と共に、熱ショックタンパク質(HSP)調製物又はα−2−マクログロブリン(α2M)調製物を投与することを含む、治療結果を改善する方法に関する。特に、HSP調製物又はα2M調製物を、癌又は感染性疾患の治療のための非ワクチン治療法と併せて投与する。本発明の実施に際し、抗原分子と非共有結合又は共有結合したHSP(限定するものではないが、例えばhsp70、hsp90及びgp96など)単独又はそれらの組み合わせ、あるいは抗原分子と非共有結合又は共有結合したα2M、を含む調製物を、非ワクチン治療法と併用して投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願第10/131,961号(2002年4月25日出願)の一部継続出願である、米国特許出願第10/322,312号(2002年12月16日出願)の継続出願であり、これらはそれぞれ全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
1.導入
本発明は、非ワクチン治療方法と共に、熱ショックタンパク質(HSP)調製物又はα−2−マクログロブリン(α2M)調製物を投与することを含む、治療結果を改善する方法に関する。特に、HSP調製物又はα2M調製物を、癌又は感染性疾患の治療のための非ワクチン治療法と併せて投与する。本発明の実施に際し、抗原分子と非共有結合又は共有結合したHSP(限定するものではないが、例えばhsp70、hsp90及びgp96など)単独又はそれらの組み合わせ、あるいは抗原分子と非共有結合又は共有結合したα2M、を含む調製物を、非ワクチン治療法と併用して投与する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
本明細書における参考文献の引用又は検討は、それらが本発明に対する先行技術であると自認するものと解釈されるべきではない。
【0004】
2.1.免疫応答
生物の免疫系は、病原体又はその他の有害な因子に対する2種類の応答、すなわち、体液性応答及び細胞性応答により反応する(Alberts, Bら、1994, Molecular Biology of the Cell. 1195-96)。休止B細胞が、抗原により活性化されて、増殖し、抗体分泌細胞に成熟すると、これらは、特有の抗原結合部位を有する抗体を産生及び分泌する。この抗体分泌反応は、体液性応答として知られている。これに対し、T細胞の多様な応答は、集合的に細胞媒介性免疫反応と呼ばれている。T細胞には、2つの主要クラス、すなわち、細胞傷害性T細胞とヘルパーT細胞がある。細胞傷害性T細胞は、ウイルス又はその他の細胞内微生物に感染した細胞を直接死滅させる。対照的に、ヘルパーT細胞は、その他の細胞の応答を刺激するのを助ける:例えば、ヘルパーT細胞は、マクロファージ、樹状細胞及びB細胞を活性化するのを助ける(Alberts, Bら、1994, Molecular Biology of the Cell. 1228参照)。細胞傷害性T細胞及びヘルパーT細胞のいずれも、標的細胞内部の外来タンパク質抗原の分解によって産生されるペプチド断片の形態の抗原を認識することから、両者とも、主要組織適合性複合体(MHC)分子に依存する。該分子は、これらのペプチド断片と結合し、これらを細胞表面に運搬して、そこでこれらをT細胞に提示する(Alberts, Bら、1994, Molecular Biology of the Cell. 1228参照)。MHC分子は、一般に、抗原提示細胞(APC)上に多量にみいだされる。
【0005】
2.2.慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性(骨髄性、骨髄球性、顆粒球性)白血病(CML)は、白血球の過剰産生を特徴とする血液及び骨髄の癌である。CMLは、慣用的な薬剤で処置した場合に3〜5年の平均持続期間を有する慢性期と、約3〜6ヶ月の持続期間の急速又は急性期と、不可避的な死の結果を特徴とする。最初は、症状及び兆候が全く又はほとんどないことが特徴の慢性期である。しかしながら、大部分の場合には、全身症状及び異常な身体的知見、例えば髄外異常(骨髄芽細胞腫など)が最終的には生じる。
【0006】
CMLは、全白血病患者の7%〜20%を占め、一般人口の10万人に1〜2人が罹患していると推定されている。The American Cancer Societyは、本年度の米国におけるCMLの新たな罹患が約4,400であると推定している。
【0007】
CMLは、特定の細胞遺伝学的異常、すなわちフィラデルフィア(Ph+)染色体により生じ、これは、分化多能性造血幹細胞のクローン性骨髄増殖性障害の原因となる(Faderlら, 1999, New England J. Med. 341 (3): 164-172)。Ph+染色体は9番染色体及び22番染色体の長腕の間の平衡転座によって生じ、チロシンキナーゼ活性が改変された異常融合タンパク質を発現するbcr/ablキメラ遺伝子をもたらす。
【0008】
CMLの慢性期にある患者の現在の治療の選択肢としては、ブスルファン(BUS)、ヒドロキシウレア(HU)、インターフェロン(IFN)に基づく治療計画、bcr/ablに対する特異的キナーゼ阻害剤、又は骨髄/幹細胞移植(BMT)が含まれる(Silverら, 1999, Blood 94 (5): 1517-1536)。数年前までは同種BMTが全ての患者にとって選択肢となる治療法であった。その理由は、かかる疾患の天然の経過に変化をもたらすと考えられた唯一の治療法であったためである。研究によって、移植した患者の少なくとも半数は治療後5〜10年生存することが示された。しかしながら、この実施には依然としてドナーが少ないということと、移植片対宿主疾患及び感染症などの移植に関連する合併症が顕著であるという問題があった。IFNに基づく治療計画もまたCMLの天然の経過に影響を及ぼすものである。しかしながら、IFNに基づく治療計画単独では、平均約20ヶ月の生存というわずかな利益をもたらすにすぎない(Chronic Myeloid Leukemia Trialists' Collaborative Group, 1997, J. Natl. Cancer Inst. 89 (21): 1616-20)。
【0009】
GleevecTM(グリーベック;メシル酸イマチニブ,NovaltisTM)などの特異的bcr/abl阻害剤は、フェーズI臨床試験において有望であることが示されている(Drucker及びLydon, 2000, J. Clin. Invest. 105(1) :3-7;Dazziら, 2000, Leukemia 14: 419-426;Hellman, Principles of Cancer Management: 第6版, 2001;DeVitaら編, J.B. Lippencott Company, Philadelphia, pp.2443-2444も参照されたい。これらはその全文が参照により本明細書に組み入れられる)。GleevecTM(メシル酸イマチニブ)はまた、シグナル伝達阻害剤571、STI−571、及びCGP 57148として知られている。フェーズII試験に基づいて(Drukerら, 2001, New England J. Med. 344 (14): 1031-1037、及びDrukerら, 2001, New England J. Med. 344 (14): 1038-1042)、FDAは、CMLの以下の3つの期、すなわち標準的な治療(インターフェロン)に対してもはや応答しない慢性期、急性期、及び骨髄急性転化期を治療するためのGleevecTMの使用を承認した。しかしながら長期間にわたる効力及び毒性については不明な点がある。さらに、GleevecTM処置患者においては副作用、例えば浮腫、肝毒性及び血液毒性などが観察されている(Physician's Desk Reference(第56版, 2002))。さらに、GleevecTM抵抗性についてもすでに報告されている(Le Coutreら, 2000, Blood 95 (5): 1758-1766)。従って、当該分野においては、CMLを治療するための改良方法が必要とされている。
【0010】
2.3.熱ショックタンパク質
熱ショックタンパク質(HSP)は、本明細書中では互換的にストレスタンパク質とも称し、以下の基準を満たすあらゆる細胞タンパク質の中から選択することができる。またこれは、細胞がストレス刺激に暴露された際にその細胞内濃度が増大するタンパク質であり、他のタンパク質又はペプチドと結合可能であり、アデノシン三リン酸(ATP)又は低pHの存在下又は酸性条件下において結合タンパク質又はペプチドを放出することができ、さらに上記の性質のいずれかを有する任意の細胞タンパク質と少なくとも35%の相同性を示すものである。HSPには、ストレスにより誘導されるタンパク質の、構成的に発現される保存された細胞相同タンパク質が含まれる。従って、ストレスタンパク質/HSPには、上記性質を有する3つのファミリーのメンバーと少なくとも35%〜55%、好ましくは55%〜75%、最も好ましくは75%〜85%のアミノ酸同一性を有する、他のタンパク質、ミューテイン、類似体及び変異体が含まれる。
【0011】
最初のストレスタンパク質は、HSPとして同定されたものである。その名が意味するように、HSPは熱ショックに応答して細胞により合成される。現在までに、HSPにはファミリーメンバーの分子量に基づいて3つの主要なファミリーがある。これらのファミリーは、hsp60、hsp70及びhsp90と呼ばれ、この数値は、そのストレスタンパク質のおおよその分子量(キロダルトン)を反映している。上記ファミリーの多くのメンバーは、他のストレス刺激、例えば、栄養欠乏、代謝破壊、酸素ラジカル及び細胞内病原体による感染などに応答して誘導されることが見出されている(Welch, May 1993, Scientific American 56-64; Young, 1990, Annu. Rev. Immunol. 8:401-420; Craig, 1993, Science 260:1902-1903; Gethingら, 1992, Nature 355:33-45; 及びLindquistら, 1988, Annu. Rev. Genetics 22:631-677を参照のこと。この開示内容は参照により本明細書に組み入れられる)。これら3つのファミリーに属するhsp/ストレスタンパク質は、本発明の実施に用いることができると考えられる。
【0012】
HSPは、多量に存在し、可溶性で、かつ高度に保存されている細胞内分子である。HSPは、細胞内シャペロンとして、タンパク質の成熟の多くの生化学経路に関与し、ストレス時及び正常な細胞ホメオスタシスにおいて機能する。多くのストレスは細胞タンパク質の三次元構造又はその折りたたみを破壊しうる。修正されないまま誤って折りたたまれたタンパク質が存在すると、細胞を最終的に死滅させる沈殿を形成する。HSPは、これらの損傷を受けたタンパク質に結合し、それらが適切なコンホメーションに再生(再折りたたみ)されるのを補助する。正常(ストレスを受けていない)細胞のホメオスタシスにおいては、HSPは細胞の代謝に必要とされる。HSPは、新たに合成されたポリペプチドの折りたたみを補助し、それゆえ他のタンパク質との未成熟な相互作用を防止する。また、HSPは細胞の種々の細胞小器官へのタンパク質の輸送を補助する。
【0013】
主要なHSPは、ストレスをうけた細胞中に非常に高レベルで蓄積するが、これらはストレスをうけていない細胞においては低〜中程度のレベルで存在する。例えば、誘導性の高い哺乳動物hsp70は、通常の温度ではほとんど検出されないが、熱ショックをうけた細胞においては最も活発に合成されるタンパク質となる(Welchら, 1985, J. Cell. Biol. 101:1198-1211)。対照的に、hsp90及びhsp60タンパク質は、通常の温度で全てではないが大部分の哺乳動物細胞中に多量に存在し、熱によりさらに誘導される(Laiら, 1984, Mol. Cell. Biol. 4:2802-10;van Bergen en Henegouwenら, 1987, Genes Dev. 1:525-31)。
【0014】
HSPは、免疫及び抗原特性を有することがわかっている。特定の腫瘍から単離したgp96又はp84/86でマウスを免疫感作すると、これらのマウスは、その特定の腫瘍に対して免疫性を獲得するが、抗原的に異なる腫瘍に対しては免疫性を獲得しない(Srivastava, P.K.ら、1988, Immunogenetics 28:205-207;Srivastava, P.K.ら、1991, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 167:109-123)。さらに、hsp70は、それが単離された腫瘍に対しては免疫を誘発するが、抗原的に異なる腫瘍に対しては誘発しないことが明らかにされた。しかし、ペプチドを欠失したhsp70は、その免疫原活性を喪失することがわかった(Udono, M.及びSrivastava, P.K.、1993, J. Exp. Med. 178:1391-1396)。これらの研究結果から、熱ショックタンパク質はそれ自体では免疫原性ではないが、抗原ペプチドとの非共有結合複合体を形成し、この複合体が、抗原ペプチドに対する特異的免疫を誘発する可能性があることが示唆される(Srivastava, P.K.、1993, Adv. Cancer Res. 62:153-177;Udono, H.ら、1994, J. Immunol., 152:5398-5403;Suto, R.ら、1995, Science, 269:1585-1588)。最近、hsp60及びhsp70が、単球、マクロファージ又は細胞傷害性T細胞による前炎症性サイトカイン類(TNFα及びIL−6など)の産生を刺激することが見いだされた(Breloerら、1999, J. Immunol. 162:3141-3147;Chenら、1999, J. Immunol. 162:3212-3219;Ohashiら、2000, J. Immunol. 164:558-561;Aseaら、2000, Nature Medicine, 6:435-442;Todrykら、1999, J. Immunol. 163:1398-1408)。hsp70はまた、未成熟樹状細胞を標的化し、それらの抗原捕捉能を大きくすることが示されている(Todrykら、1999, J. Immunol. 163:1398-1408)。例えば細胞死などに起因する、hsp60及びhsp70の放出又はそれらの発現の誘導は、免疫反応が誘起する必要があるシグナル伝達において役割を果たし得る(Chenら、1999, J. Immunol. 162:3212-3219;Ohashiら、2000, J. Immunol. 164:558-561;Todrykら、1999, J. Immunol. 163:1398-1408)。
【0015】
癌の治療及び予防のための、癌細胞から精製されたHSP及びペプチドの非共有結合複合体の使用が米国特許第5,750,119号、同第5,837,251号及び同第6,017,540号に記載されている。
【0016】
養子免疫療法において用いる目的で、in vitroで抗原提示細胞を感作するのにHSP−ペプチド複合体を用いることについては、米国特許第5,985,270号及び同第5,830,464号に記載されている。
【0017】
HSP−ペプチド複合体はまた、病原体感染細胞から単離することができ、ウイルスのような病原体や、細菌、原生動物、真菌及び寄生生物などのその他の細胞内病原体によって起こる感染の治療及び予防に用いることができる。米国特許第5,961,979号及び同第6,048,530号を参照されたい。
【0018】
さらに、免疫原性HSP−ペプチド複合体は、HSPと抗原ペプチドとのin vitroでの複合体形成により調製することもでき、このような複合体を癌及び感染性疾患の治療及び予防に使用することは、米国特許第5,935,576号及び同第6,030,618号に記載されている。癌及び感染性疾患の治療のために、所定の抗原と組み合わせて熱ショックタンパク質を使用することも、1997年2月27日付けのPCT公報WO97/06821号に記載されている。
【0019】
細胞溶解物からのHSP−ペプチド複合体の精製については既に記載されている。例えば、米国特許第5,750,119号及び同第5,997,873号に記載されている。
【0020】
2.4.α2−マクログロブリン
α−マクログロブリンは、補体成分であるC3、C4及びC5をも含む構造的に関連したタンパク質のタンパク質スーパーファミリーのメンバーである。ヒト血漿タンパク質α(2)マクログロブリン(α2M)は、主にプロテイナーゼインヒビター並びに血漿性及び炎症性液性プロテイナーゼスカベンジャー分子として知られている720kDaのホモ四量体タンパク質である(総説としては、Chu及びPizzo, 1994, Lab. Invest. 71: 792を参照されたい)。α(2)マクログロブリンは1474アミノ酸の前駆体として合成され、そのうちシグナル配列として機能する最初の23個が切り離されて1451アミノ酸の成熟タンパク質となる(Kanら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82: 2282-2286)。
【0021】
α(2)マクログロブリンは求核性アミノ酸側鎖を有するタンパク質及びペプチドに共有結合により無差別に結合し(Chuら, 1994, Ann. N.Y. Acad. Sci. 737: 291-307)、それらをα2M受容体(α2MR)を発現する細胞に標的化する(Chu及びPizzo, 1993, J. Immunol. 150: 48)。α2Mのα2M受容体への結合はα2MのC末端部分により仲介され(Holtetら, 1994, FEBS Lett. 344: 242-246)、その重要な残基が特定されている(Nielsenら, 1996, J. Biol. Chem. 271: 12909-12912)。
【0022】
プロテイナーゼ活性の阻害について一般的に知られているように、α2Mは複数の結合部位で種々のプロテアーゼに結合する(例えばHallら, 1981, Biochem. Biophys. Res. Commum. 100(1): 8-16を参照されたい)。α2Mとプロテアーゼが相互作用すると、トランスフォーメーションと呼ばれる複雑な構造的再編成がおこる。これは、プロテイナーゼがチオエステルによって「トラップ」された後に、α2Mの「ベイト(bait; おとり)」領域内において開裂が起こる結果である。当該コンホメーション変化により受容体結合に必要な残基が露出し、α2Mプロテイナーゼ複合体がα2MRに結合することが可能になる。メチルアミンは、プロテイナーゼにより誘導されたのと同様のコンホメーション変化と開裂を引き起こすことができる。この受容体に認識されないα2Mの未開裂の形態のものは、しばしば「遅延型」形態(s−α2M)と称される。開裂した形態は「急速型」形態(f−α2M)と称される(Chuら, 1994, Ann. N.Y. Acad. Sci. 737: 291-307に概説されている)。
【0023】
プロテイナーゼ阻害機能のほかに、α2Mは、抗原と複合体を形成したときに、マクロファージのような抗原提示細胞に取り込まれてT細胞ハイブリドーマに提示されるその抗原の能力をin vitroにおいて最大で2桁高め(Chu及びPizzo, 1994, Lab. Invest. 71: 792)、T細胞の増殖を誘導することができる(Osadaら, 1987, Biochem. Biophys. Res. Commun. 146: 26-31)ことが、研究により明らかになっている。更なる証拠により、α2Mと抗原との複合体形成は、in vitroにおいて未処理脾臓細胞による抗体産生を高め(Osadaら, 1988, Biochem. Biophys. Res. Commun. 150: 883)、実験用ウサギ(Chuら, 1994, J. Immunol. 152: 1538-1545)及びマウス(Mitsudaら, 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 101: 1326-1331)でのin vivoにおける抗体反応を誘起することが示唆されている。しかしながらこれらの研究は何れも、α2M−抗原複合体がin vivoにおいて細胞傷害性T細胞の応答を誘導することができるか否かを示すものではない。
【0024】
α2Mは、抗原と複合体を形成することができ、それがα2MR(LDL(低密度リポタンパク質)受容体関連タンパク質(LRP)又はCD91としても知られている)を介して抗原提示細胞(APC)に取り込まれる(PCT/US01/18047号を参照されたい。この出願はその全内容を参照により本明細書に組み入れる)。α2Mは、熱ショックタンパク質gp96とα2MRとの結合と直接競合する(Binderら, 2000, Nature Immunology 1(2), 151-154)。さらに、in vitroで調製されたα2M−抗原ペプチド複合体は、動物に投与されると、該抗原分子に特異的な細胞傷害性T細胞応答を引き起こす(Binderら, 2001, J. Immunol. 166:49968-72)。従って、hsp及びα2Mはいくつかの共通する機能的性質(例えばペプチドとの結合能、α2MRによる認識と取り込み、細胞傷害性T細胞応答の刺激など)を有するため、α2Mは癌及び感染性疾患に対する免疫療法として有用となる可能性がある。
【発明の開示】
【0025】
3.発明の概要
本発明は、一部において、HSP調製物が非ワクチン治療法又は癌若しくは感染性疾患の治療のための治療法の治療効果を増強又は改善しうるという認識に基づいている。従って、本発明は、非ワクチン治療法と組み合わせてHSP調製物を投与することを含む方法及び組成物を包含する。また、非ワクチン治療法と組み合わせてα2M調製物を投与することを含む方法及び組成物を包含する。特に、本発明は、HSP調製物若しくはα2M調製物単独の投与、又は非ワクチン治療法単独の施行よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療の方法及び組成物を包含する。HSP又はα2Mの供与源は、好ましくは真核生物であり、最も好ましくは哺乳動物である。治療を受ける被験体は、好ましくは哺乳動物であり、例えば限定するものではないが、ペット動物(ネコ及びイヌなど)、野生動物(キツネ及びアライグマなど)、家畜及び家禽(ウマ、ウシ、ヒツジ、シチメンチョウ及びニワトリなど)、並びに任意のげっ歯類が含まれる。被験体は最も好ましくはヒトである。
【0026】
本発明は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物のいずれかを、治療法の施行と組み合わせて投与することを含む、非ワクチン治療法の治療効果を改善する方法を提供する。HSP調製物又はα2M調製物は、非ワクチン治療法による治療計画に先行して、それと重複して及び/又はそれの後に一定期間にわたって投与することができる。HSP調製物又はα2M調製物は、治療法を施すのと同時、その前又は後に投与することができる。治療法の例としては、限定するものではないが、抗生物質、抗ウイルス薬、抗菌性化合物、抗癌治療剤(例えば化学療法剤及び放射線)、並びに生物学的療法剤及び免疫療法剤)が含まれる。好ましい実施形態において、治療法は、癌の治療又は予防に有用である。特に好ましい実施形態において、治療法は、慢性骨髄性白血病又は軟部組織肉腫、例えば限定するものではないが、消化管間質腫瘍などの治療又は予防に有用である。別の好ましい実施形態において、治療法はGleevecTMである。
【0027】
一実施形態において、本発明は、治療法又はHSP調製物単独の投与よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療方法を包含する。別の実施形態において、本発明は、治療法又はα2M調製物単独の投与よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療方法を包含する。本発明には、HSP調製物又はα2M調製物と共に治療法を施行することによって付加的効力又は付加的治療効果を有する方法が包含される。本発明はまた、治療効果が付加的よりも大きい相乗的効果を包含する。また、HSP調製物又はα2M調製物と共に治療法を施行することによって、望ましくない又は有害な作用が低減又は回避されることが好ましい。本発明により、特定の実施形態においては、非ワクチン治療法の用量を低減したり、又はその投与頻度を低減することができ、好ましくは患者のコンプライアンスを向上させ、治療を改善し、及び/又は望ましくない若しくは有害な作用を低減するものである。特定の実施形態において、化学療法又は放射線療法の用量が低減又は頻度が低減することにより、望ましくない作用を低減又は回避する。あるいは、HSP調製物の用量及びα2M調製物の用量は、治療法と共に投与する場合には、低減するか又はその投与頻度が低減する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、ワクチンではない治療法を受けている被験体における治療効果を改善する方法を提供する。この方法は、熱ショックタンパク質調製物、好ましくは精製されたHSP調製物、又はα2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物のいずれかを、治療法の施行前、それと同時又はその後に、被験体に投与することを含む。特定の実施形態においては、HSP調製物又はα2M調製物は、治療法の治療利益を増強し、治療の効果を改善し得る。いかなる理論又は機序により制限されるものではないが、哺乳動物のHSP調製物又はα2M調製物の被験体への投与は、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞の増加及び/若しくは樹状細胞の成熟促進などにより被験体の非特異的免疫機構の応答性を増強したり、並びに/あるいは、CD4+及びCD8+T細胞数を上昇させることなどにより特異的免疫機構の応答性を増強しうる。好ましい特定の実施形態においては、HSP調製物を治療法を施す前に投与する。別の好ましい実施形態においては、α2M調製物を治療法を施す前に投与する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、HSP調製物の投与の前、投与と同時又は投与後に被験体に非ワクチン治療法を施すことによる、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物の投与を受ける被験体における治療効果を改善する方法を提供する。特定の実施形態において、非ワクチン治療法はHSP調製物の治療利益を増強し、該治療の効果を改善しうる。
【0030】
他の実施形態においては、本発明は、α2M調製物の投与の前、投与と同時又は投与後に被験体に非ワクチン治療法を施すことによる、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物の投与を受ける被験体における治療効果を改善する方法を提供する。特定の実施形態において、非ワクチン治療法はα2M調製物の治療利益を増強し、該治療の効果を改善しうる。
【0031】
特定の実施形態において、治療法を施さないHSP/α2M調製物の投与、又はHSP/α2M調製物の投与を行わない治療法の施行は、治療上有効なものではない。特定の実施形態において、HSP/α2M調製物又は治療法の量は、それ単独では治療上有効であるのに不十分な量で投与又は施行する。別の実施形態において、HSP/α2M調製物又は治療法の両方又は少なくとも一方は、単独で投与した場合に治療上有効なものである。
【0032】
種々の実施形態において、本方法は、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物を、癌若しくは感染性疾患の治療ための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、HSP調製物は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性、又は感染因子の抗原の抗原性を示すHSP−ペプチドを含む、すなわち、熱ショックタンパク質は、その複合体を得た癌細胞又は感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したものである。従って、一実施形態において、HSP調製物の特異的免疫原性はHSPに複合体化させたペプチド複合体に由来する。好ましい実施形態において、HSP−ペプチド複合体は、癌組織、癌細胞又は感染組織などの抗原供与源から単離される。本発明の実施において、かかるHSP−ペプチド複合体は、好ましくは、個々の被験体の自己由来のもの、すなわちHSP調製物及び治療法の投与を受ける被験体の組織から得られたものであるが、これは必ずしも必要なわけではない(すなわち、個々の被験体の同種異形であってもよい)。
【0033】
種々の他の実施形態において、本方法は、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物を、癌若しくは感染性疾患の治療ための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、α2M調製物は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性、又は感染因子の抗原の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含む、すなわち、α2Mは、その複合体を得た癌細胞又は感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したものである。従って、一実施形態において、α2M調製物の特異的免疫原性はHSPに複合体化させたペプチドに由来する。好ましい実施形態において、α2M−ペプチド複合体は、癌組織、癌細胞又は感染組織などの抗原供与源から単離される。本発明の実施において、かかるα2M−ペプチド複合体は、好ましくは、個々の被験体の自己由来のもの、すなわちα2M調製物及び治療法の投与を受ける被験体の組織から得られたものであるが、これは必ずしも必要なわけではない(すなわち、個々の被験体の同種異形であってもよい)。
【0034】
一実施形態において、本方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、感染性疾患の治療のための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。そのような治療法は当技術分野で公知であり、限定するものではないが、抗生物質、抗ウイルス薬、抗菌薬、並びに生物学的療法剤及び免疫療法剤を含む。好ましくは、HSP調製物は、感染性疾患の因子の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体を含む。好ましくは、α2M調製物は、感染性疾患の因子の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含む。特定の実施形態において、非ワクチン治療法を受けている被験体におけるある種の感染性疾患の治療の効果は、当該種の感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したHSPを含むHSP−ペプチド複合体を投与することにより改善される。好ましくは、HSP−ペプチド複合体は、同じ感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mとの混合物として存在しない(国際特許出願PCT/US01/28840号、2001年9月15日出願を参照。その全文を参照により本明細書に組み入れる)。一実施形態において、HSP調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法は、HSP調製物を投与する前に施行する。別の実施形態において、非ワクチン治療法を受けている被験体におけるある種の感染性疾患の治療の効果は、当該種の感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したα2Mを含むα2M−ペプチド複合体を投与することにより改善される。好ましくは、α2M−ペプチド複合体は、同じ感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mとの混合物として存在しない。一実施形態において、α2M調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法は、α2M調製物を投与する前に施行する。
【0035】
他の実施形態において、本方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。かかる治療法としては、限定するものではないが、化学療法及び放射線療法、並びにホルモン療法、生物学的療法及び免疫療法が含まれる。好ましくは、HSP調製物又はα2M調製物は、癌の治療のための化学療法又は放射線療法を受けている被験体に投与する。好ましくは、HSP調製物は、治療対象の種の癌の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体を含む。調製物がα2M調製物である場合には、α2M調製物が治療対象の種の癌の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含むことが好ましい。従って、好ましい実施形態において、本発明は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したHSPを含むHSP−ペプチド複合体、又はある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したα2Mを含むα2M−ペプチド複合体を用いた、ワクチンではない治療法を受けている被験体において癌治療の効果を改善する方法を提供する。特定の好ましい実施形態においては、かかるHSP−ペプチド複合体及びα2M−ペプチド複合体は、同種の癌の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mで希釈されたものではない。一実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法は、HSP調製物又はα2M調製物の投与前に施行する。
【0036】
種々の実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物は、抗癌剤と共に投与し、その抗癌剤とは、限定するものではないが、細胞毒性薬、抗分裂剤、チューブリン安定化剤、微小管形成阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、DNA相互作用剤、代謝拮抗剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、DNA代謝拮抗剤でありうる。特定の実施形態において、抗癌剤は化学療法剤である。
【0037】
特定の実施形態において、HSP調製物は、癌の治療のための化学療法剤の投与を受けている被験体に投与する。別の好ましい実施形態において、α2M調製物は、癌の治療のための化学療法剤の投与を受けている被験体に投与する。かかる化学療法剤は当技術分野で公知であり、限定するものではないが、以下のものが含まれる:メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、カムパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、マイトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、タキサン(ドセタキセル及びパクリタキセルなど)、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ニトロソウレア(カルムスチン及びロムスチンなど)、ビンカアルカロイド類、白金化合物、マイトマイシン、ゲムシタビン、ヘキサメチルメラミン、トポテカン、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、STI−571、又はGleevecTM(メシル酸イマチニブ)、ハービマイシンA、ゲニステイン、アーブステイン、及びラベンダスチンA。
【0038】
好ましい実施形態において、上記各方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、癌の治療のための2−フェニルアミノピリミジン系の薬剤の投与を受けている被験体に投与することを含むものである。より好ましくは、癌の治療のためにGleevecTM(すなわちメシル酸イマチニブ)の投与を受けている被験体である。
【0039】
別の特定の実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物は、癌の治療のために放射線療法を受けている被験体に投与する。放射線療法に関して、放射線は、γ線又はX線でありうる。この方法は、放射線療法、例えば遠隔照射放射線療法、放射性同位体(I125、パラジウム、イリジウム)、放射性同位体(ストロンチウム89など)の間質移植、胸部放射線療法、腹腔内P−32放射線療法、並びに/又は腹式及び骨盤部全放射線療法などを含む癌の治療を包含する。放射線療法の一般的な概説については、Hellman, Chapter 16: Principles of Cancer Management: Radiation Therapy,第6版,2001, DeVitaら編, J.B. Lippencott Company, Philadelphiaを参照のこと。好ましい実施形態において、放射線治療は、照射を遠隔照射源から行う、遠隔照射放射線療法又は遠隔療法として行う。種々の好ましい実施形態において、放射線治療は、放射線照射源を癌細胞又は腫瘍塊の近傍の体内に配置する、体内治療又は近接照射法として行う。
【0040】
別の実施形態において、上記各方法は、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物を、癌の治療のための治療法の組み合わせを受けている被験体に投与することを含むものである。別の実施形態において、上記各方法は、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物を、癌の治療のための治療法の組み合わせを受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、HSP調製物及びα2M調製物はそれぞれ、治療対象の種の癌の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体及びα2M−ペプチド複合体をそれぞれ含む。かかる一実施形態においては、HSP調製物は、生物学的療法、好ましくはサイトカインと組み合わせて化学療法を受けている被験体に投与する。別のかかる実施形態においては、α2M調製物は、生物学的療法、好ましくはサイトカインと組み合わせて化学療法を受けている被験体に投与する。種々の実施形態において、サイトカインはIL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、L−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TNFβ、G−CSF、GM−CSF、TGF−β、IL−15、IL−18、GM−CSF、INF−γ、INF−α、SLC、内皮単球活性化タンパク質−2(EMAP2)、MIP−3α、MIP−3β、又はMHC遺伝子(HLA−B7など)からなる群より選択される。さらに、他のサイトカインの例としては、TNFファミリーの他のメンバー、例えば限定するうものではないが、TNF−α関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、TNF−α関連活性化誘導性サイトカイン(TRANCE)、アポトーシスのTNF−α関連弱誘導因子(TWEAK)、CD40リガンド(CD40L)、LT−α、Lu−β、OX4OL、CD4OL、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、APRIL、LIGHT、TL1、TNFSF16、TNFSF17、及びAITR−L、又はそれらの機能的部分が含まれる。TNFファミリーの一般的な概説については、例えば、Kwonら, 1999, Curr. Opin. Immunol. 11: 340-345を参照されたい。一実施形態において、HSP調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法はHSP調製物を投与する前に施行する。
【0041】
好ましい実施形態において、精製されたHSP調製物を、癌の治療のためにシクロホスファミドとIL−12の組み合わせの投与を受けている被験体に投与する。別の好ましい実施形態において、精製されたα2M調製物を、癌の治療のためにシクロホスファミドとIL−12の組み合わせの投与を受けている被験体に投与する。
【0042】
別の実施形態において、上記方法は、癌又は感染性疾患の予防のために有用である。特定の実施形態において、HSP調製物は、非ワクチン治療法と組み合わせて被験体に投与し、ある種の癌又は感染性疾患を患うリスクを低減する。他の特定の実施形態において、上記方法は、癌若しくは感染性疾患に対する遺伝的素因若しくは非遺伝的素因を有する被験体、又は感染性疾患の因子に対して曝露される被験体に、予防的手段として、非ワクチン治療法の施行と組み合わせてHSP調製物を投与することを包含する。さらなる実施形態において、本発明はまた、上記実施形態のそれぞれを、α2M調製物を非ワクチン治療法と組み合わせて投与する場合に適用することができる。
【0043】
本発明の方法及び組成物は、治療を受けていない患者に有用なだけではなく、HSP/α2M調製物を使用しない治療法に対して又は治療法を使用しないHSP/α2M調製物に対して部分的又は完全に応答しない患者の治療にも有用である。種々の実施形態において、本発明は、HSP/α2M調製物又は治療法のいずれか又は両方の投与又は施行を含む治療処置に対して非応答性である又は当該治療処置では難治性であることが示された又はその可能性がある患者における疾患又は障害の治療又は予防に有用な方法及び組成物を提供する。本発明はまた、他の形態の医療的処置を以前に受けていた又は現在受けている患者に対するHSP/α2M調製物及び治療法の投与又は施行を含む方法及び組成物を包含する。
【0044】
本発明の方法及び組成物において使用するHSP調製物は、好ましくは精製されたものであり、何らかの分子に結合していない遊離HSP、及びHSPと別の分子(例えばペプチド)との分子複合体を含みうる。HSP−ペプチド複合体は、ペプチドに共有結合又は非共有結合したHSPを含む。本発明の方法は、被験体への投与の前に、HSPと任意の特異的抗原又は抗原性ペプチドとの共有結合又は非共有結合を必要としてもよいし又は必要としなくてもよい。ペプチド(1種若しくは複数)は、治療対象の感染性疾患若しくは障害又は特定の癌に関連していなくてもよいが、好ましい実施形態において、HSP調製物は、それぞれ治療対象の感染性疾患の因子の抗原、又は特定種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す複合体を含む。より好ましくは、感染性疾患の治療に関して、HSP調製物は、感染性疾患を引き起こす感染因子(又はその抗原性を示すその非感染性変異体)に感染した細胞から単離された非共有結合HSP−ペプチド複合体を含む。より好ましくは、ある種の癌の治療に関して、HSP調製物は、患者に由来する(自己由来)又は由来しない(同種異系)、当該種の癌又はその転移癌の癌組織から単離された非共有結合HSP−ペプチド複合体を含む。従って、本発明の目的のため、HSP調製物は、他の分子(例えばペプチド)と結合していない又は結合しているHSPを含む。HSPは、好ましくは精製されたものである。HSP調製物は、HSPを含む粗製細胞溶解物を含んでもよく、その溶解物の量は100〜10細胞等価物に相当する。HSPは、大部分の細胞供与原から、HSPと非共有結合した種々のペプチドの複合体の集団として簡便に精製することができる。HSPは、低pH及び/若しくはアデノシン三リン酸への曝露又は当技術分野で公知のほかの方法により非共有結合ペプチドから分離することができる。
【0045】
本発明の方法及び組成物において使用するα2M調製物は、好ましくは精製されたものであり、何らかの分子に結合していない遊離α2M、及びα2Mと別の分子(例えばペプチド)との分子複合体を含みうる。α2M−ペプチド複合体は、ペプチドに共有結合又は非共有結合したα2Mを含む。本発明の方法は、被験体への投与の前に、α2Mと任意の特異的抗原又は抗原性ペプチドとの共有結合又は非共有結合を必要としてもよいし又は必要としなくてもよい。ペプチド(1種若しくは複数)は、治療対象の感染性疾患若しくは障害又は特定の癌に関連していなくてもよいが、好ましい実施形態において、α2M調製物は、それぞれ治療対象の感染性疾患の因子の抗原、又は特定種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す複合体を含む。より好ましくは、感染性疾患の治療に関して、α2M調製物は、感染性疾患を引き起こす感染因子(又はその抗原性を示すその非感染性変異体)に感染した細胞から単離された非共有結合α2M−ペプチド複合体を含む。より好ましくは、ある種の癌の治療に関して、α2M調製物は、患者に由来する(自己由来)又は由来しない(同種異系)、当該種の癌又はその転移癌の癌組織から単離された非共有結合α2M−ペプチド複合体を含む。従って、本発明の目的のため、α2M調製物は、他の分子(例えばペプチド)と結合していない又は結合しているα2Mを含む。HSPは、好ましくは精製されたものである。α2M調製物は、α2Mを含む粗製細胞溶解物を含んでもよく、その溶解物の量は100〜10細胞等価物に相当する。α2Mは、大部分の細胞供与原から、α2Mと非共有結合した種々のペプチドの複合体の集団として簡便に精製することができる。α2Mは、低pH及び/若しくはアデノシン三リン酸への曝露又は当技術分野で公知のほかの方法により非共有結合ペプチドから分離することができる。
【0046】
種々の実施形態において、HSP及びα2Mの供与源は、好ましくは真核生物であり、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。従って、本発明の方法により使用されるHSP調製物は、真核生物HSP、哺乳動物HSP及びヒトHSPを含む。α2M調製物は、真核生物α2M、哺乳動物α2M及びヒトα2Mを含む。HSP調製物又はα2M調製物が由来する真核生物の供与源、及びHSP調製物又はα2M調製物の投与を受ける被験体はそれぞれ同種であることが好ましい。
【0047】
一実施形態において、HSP調製物の特異的免疫原性は、熱ショックタンパク質と複合体化したペプチドによるものである。従って、種々の実施形態において、HSP調製物は、熱ショックタンパク質が特異的抗原供与源に由来するペプチドと複合体化した、熱ショックタンパク質ペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、HSPタンパク質調製物は、自己由来の熱ショックタンパク質−ペプチド複合体を含む。別の好ましい実施形態において、HSP調製物は、その熱ショックタンパク質の由来する癌細胞の抗原性ペプチドと複合体化した熱ショックタンパク質を含む。特定の実施形態において、抗原は腫瘍特異的抗原(すなわち、腫瘍細胞においてのみ発現する)である。別の実施形態において、抗原は腫瘍関連抗原(すなわち腫瘍細胞において比較的過剰発現する)である。また別の実施形態において、HSP調製物は、その熱ショックタンパク質の由来する感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化した熱ショックタンパク質を含む。
【0048】
別の実施形態において、α2M調製物の特異的免疫原性は、α2Mと複合体化したペプチドによるものである。従って、種々の実施形態において、α2M調製物は、α2Mが特異的抗原供与源に由来するペプチドと複合体化した、α2Mペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、α2Mタンパク質調製物は、自己由来のα2M−ペプチド複合体を含む。別の好ましい実施形態において、α2M調製物は、そのα2Mの由来する癌細胞の抗原性ペプチドと複合体化したα2Mを含む。特定の実施形態において、抗原は腫瘍特異的抗原(すなわち、腫瘍細胞においてのみ発現する)である。別の実施形態において、抗原は腫瘍関連抗原(すなわち腫瘍細胞において比較的過剰発現する)である。また別の実施形態において、α2M調製物は、そのα2Mの由来する感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したα2Mを含む。
【0049】
また本発明には、少なくとも1種の非ワクチン治療法とHSP調製物又はα2M調製物を投与又は施行することを含む治療方法及び送達方法、医薬組成物及び製剤、並びにかかる医薬組成物を含むキットが包含される。
【0050】
4.図面の説明
図1は、第7節に記載した臨床プロトコールの概要である。この概要は、HSP−ペプチド複合体でのワクチン接種の前、その間及びその後に行った全ての身体的検査、血液検査、X線検査及び骨髄検査を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
5.発明の詳細な説明
本発明は、一部において、HSP調製物が非ワクチン治療法又は癌若しくは感染性疾患の治療のための治療法の治療効果を増強又は改善しうるという認識に基づいている。従って、本発明は、非ワクチン治療法と組み合わせてHSP調製物を投与することを含む方法及び組成物を包含する。また、非ワクチン治療法と組み合わせてα2M調製物を投与することを含む方法及び組成物を包含する。特に、本発明は、HSP調製物若しくはα2M調製物単独の投与、又は非ワクチン治療法単独の施行よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療の方法及び組成物を包含する。HSP又はα2Mの供与源は、好ましくは真核生物であり、最も好ましくは哺乳動物である。治療を受ける被験体は、好ましくは哺乳動物であり、例えば限定するものではないが、ペット動物(ネコ及びイヌなど)、野生動物(キツネ及びアライグマなど)、家畜及び家禽(ウマ、ウシ、ヒツジ、シチメンチョウ及びニワトリなど)、並びに任意のげっ歯類が含まれる。被験体は最も好ましくはヒトである。
【0052】
本発明は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物のいずれかを、治療法の施行と組み合わせて投与することを含む、非ワクチン治療法の治療効果を改善する方法を提供する。HSP調製物又はα2M調製物は、非ワクチン治療法による治療計画に先行して、それと重複して及び/又はそれの後に一定期間にわたって投与することができる。HSP調製物又はα2M調製物は、治療法を施すのと同時、その前又は後に投与することができる。治療法の例としては、限定するものではないが、抗生物質、抗ウイルス薬、抗菌性化合物、抗癌治療剤(例えば化学療法剤及び放射線)、並びに生物学的療法剤及び免疫療法剤)が含まれる。好ましい実施形態において、治療法は、癌の治療又は予防に有用である。特に好ましい実施形態において、治療法は、慢性骨髄性白血病又は軟部組織肉腫、例えば限定するものではないが、消化管間質腫瘍などの治療又は予防に有用である。別の好ましい実施形態において、治療法はGleevecTMである。
【0053】
一実施形態において、本発明は、治療法又はHSP調製物単独の投与よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療方法を包含する。別の実施形態において、本発明は、治療法又はα2M調製物単独の投与よりも良好な治療プロフィールをもたらす治療方法を包含する。本発明には、HSP調製物又はα2M調製物と共に治療法を施行することによって付加的効力又は付加的治療効果を有する方法が包含される。本発明はまた、治療効果が付加的よりも大きい相乗的効果を包含する。また、HSP調製物又はα2M調製物と共に治療法を施行することによって、望ましくない又は有害な作用が低減又は回避されることが好ましい。本発明により、特定の実施形態においては、非ワクチン治療法の用量を低減したり、又はその投与頻度を低減することができ、好ましくは患者のコンプライアンスを向上させ、治療を改善し、及び/又は望ましくない若しくは有害な作用を低減するものである。特定の実施形態において、化学療法又は放射線療法の用量が低減又は頻度が低減することにより、望ましくない作用を低減又は回避する。あるいは、HSP調製物の用量及びα2M調製物の用量は、治療法と共に投与する場合には、低減するか又はその投与頻度が低減する。
【0054】
一実施形態において、本発明は、ワクチンではない治療法を受けている被験体における治療効果を改善する方法を提供する。この方法は、熱ショックタンパク質調製物、好ましくは精製されたHSP調製物、又はα2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物のいずれかを、治療法の施行前、それと同時又はその後に、被験体に投与することを含む。特定の実施形態においては、HSP調製物又はα2M調製物は、治療法の治療利益を増強し、治療の効果を改善し得る。いかなる理論又は機序により制限されるものではないが、哺乳動物のHSP調製物又はα2M調製物の被験体への投与は、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞の増加及び/若しくは樹状細胞の成熟促進などにより被験体の非特異的免疫機構の応答性を増強したり、並びに/あるいは、CD4+及びCD8+T細胞数を上昇させることなどにより特異的免疫機構の応答性を増強しうる。好ましい特定の実施形態においては、HSP調製物を治療法を施す前に投与する。別の好ましい実施形態においては、α2M調製物を治療法を施す前に投与する。
【0055】
別の実施形態において、本発明は、HSP調製物の投与の前、投与と同時又は投与後に被験体に非ワクチン治療法を施すことによる、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物の投与を受ける被験体における治療効果を改善する方法を提供する。特定の実施形態において、非ワクチン治療法はHSP調製物の治療利益を増強し、該治療の効果を改善しうる。
【0056】
他の実施形態においては、本発明は、α2M調製物の投与の前、投与と同時又は投与後に被験体に非ワクチン治療法を施すことによる、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物の投与を受ける被験体における治療効果を改善する方法を提供する。特定の実施形態において、非ワクチン治療法はα2M調製物の治療利益を増強し、該治療の効果を改善しうる。
【0057】
特定の実施形態において、治療法を施さないHSP/α2M調製物の投与、又はHSP/α2M調製物の投与を行わない治療法の施行は、治療上有効なものではない。特定の実施形態において、HSP/α2M調製物又は治療法の量は、それ単独では治療上有効であるのに不十分な量で投与又は施行する。別の実施形態において、HSP/α2M調製物又は治療法の両方又は少なくとも一方は、単独で投与した場合に治療上有効なものである。
【0058】
種々の実施形態において、本方法は、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物を、癌若しくは感染性疾患の治療ための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、HSP調製物は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性、又は感染因子の抗原の抗原性を示すHSP−ペプチドを含む、すなわち、熱ショックタンパク質は、その複合体を得た癌細胞又は感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したものである。従って、一実施形態において、HSP調製物の特異的免疫原性はHSPに複合体化させたペプチド複合体に由来する。好ましい実施形態において、HSP−ペプチド複合体は、癌組織、癌細胞又は感染組織などの抗原供与源から単離される。本発明の実施において、かかるHSP−ペプチド複合体は、好ましくは、個々の被験体の自己由来のもの、すなわちHSP調製物及び治療法の投与を受ける被験体の組織から得られたものであるが、これは必ずしも必要なわけではない(すなわち、個々の被験体の同種異形であってもよい)。
【0059】
種々の他の実施形態において、本方法は、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物を、癌若しくは感染性疾患の治療ための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、α2M調製物は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性、又は感染因子の抗原の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含む、すなわち、α2Mは、その複合体を得た癌細胞又は感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したものである。従って、一実施形態において、α2M調製物の特異的免疫原性はHSPに複合体化させたペプチドに由来する。好ましい実施形態において、α2M−ペプチド複合体は、癌組織、癌細胞又は感染組織などの抗原供与源から単離される。本発明の実施において、かかるα2M−ペプチド複合体は、好ましくは、個々の被験体の自己由来のもの、すなわちα2M調製物及び治療法の投与を受ける被験体の組織から得られたものであるが、これは必ずしも必要なわけではない(すなわち、個々の被験体の同種異形であってもよい)。
【0060】
一実施形態において、本方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、感染性疾患の治療のための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。そのような治療法は当技術分野で公知であり、限定するものではないが、抗生物質、抗ウイルス薬、抗菌薬、並びに生物学的療法剤及び免疫療法剤を含む。好ましくは、HSP調製物は、感染性疾患の因子の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体を含む。好ましくは、α2M調製物は、感染性疾患の因子の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含む。特定の実施形態において、非ワクチン治療法を受けている被験体におけるある種の感染性疾患の治療の効果は、当該種の感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したHSPを含むHSP−ペプチド複合体を投与することにより改善される。好ましくは、HSP−ペプチド複合体は、同じ感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mとの混合物として存在しない(国際特許出願PCT/US01/28840号、2001年9月15日出願を参照。その全文を参照により本明細書に組み入れる)。一実施形態において、HSP調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法は、HSP調製物を投与する前に施行する。別の実施形態において、非ワクチン治療法を受けている被験体におけるある種の感染性疾患の治療の効果は、当該種の感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したα2Mを含むα2M−ペプチド複合体を投与することにより改善される。好ましくは、α2M−ペプチド複合体は、同じ感染性疾患の因子の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mとの混合物として存在しない。好ましくは、α2M調製物は、治療法を施す前に投与する。
【0061】
他の実施形態において、本方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与することを含むものである。かかる治療法としては、限定するものではないが、化学療法及び放射線療法などの抗癌療法、並びにホルモン療法、生物学的療法及び免疫療法が含まれる。本発明の方法において、使用しうる抗癌剤には、限定するものではないが、細胞毒性薬、抗分裂剤、チューブリン安定化剤、微小管形成阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、DNA相互作用剤、代謝拮抗剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、DNA代謝拮抗剤が含まれる。好ましくは、抗癌剤は化学療法剤である。好ましくは、HSP調製物又はα2M調製物は、癌の治療のための化学療法又は放射線療法を受けている被験体に投与する。好ましくは、HSP調製物は、治療対象の種の癌の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体を含む。調製物がα2M調製物である場合には、α2M調製物が治療対象の種の癌の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含むことが好ましい。従って、好ましい実施形態において、本発明は、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したHSPを含むHSP−ペプチド複合体、又はある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すペプチドと複合体化したα2Mを含むα2M−ペプチド複合体を用いた、ワクチンではない治療法を受けている被験体において癌治療の効果を改善する方法を提供する。特定の好ましい実施形態においては、かかるHSP−ペプチド複合体及びα2M−ペプチド複合体は、同種の癌の抗原の抗原性を示すペプチドとは複合体化していないHSP又はα2Mで希釈されたものではない。好ましくは、HSP調製物又はα2M調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法は、HSP調製物又はα2M調製物の投与前に施行する。
【0062】
特定の実施形態において、HSP調製物は、癌の治療のための化学療法剤の投与を受けている被験体に投与する。別の好ましい実施形態において、α2M調製物は、癌の治療のための化学療法剤の投与を受けている被験体に投与する。かかる化学療法剤は当技術分野で公知であり、限定するものではないが、以下のものが含まれる:メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、カンプトテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、マイトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、タキサン(ドセタキセル及びパクリタキセルなど)、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ニトロソウレア(カルムスチン及びロムスチンなど)、ビンカアルカロイド類、白金化合物、マイトマイシン、ゲムシタビン、ヘキサメチルメラミン、トポテカン、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、GleevecTM(メシル酸イマチニブ)、ハービマイシンA、ゲニステイン、アーブステイン、及びラベンダスチンA。好ましい実施形態において、化学療法剤はGleevecTM(メシル酸イマチニブ)である。
【0063】
他の実施形態において、好適な化学療法剤としては、限定するものではないが、メトトレキセート、タキソール、L−アスパラギナーゼ、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、トポテカン、ナイトロジェンマスタード、シトキサン、エトポシド、5−フルオロウラシル、BCNU、イリノテカン、カンプトテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、マイトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。好ましい実施形態において、抗癌剤は、限定するものではないが、表1に例示する薬剤でありうる。
【表1】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
本発明の方法において使用しうる別の抗癌剤としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:アシビシン(acivicin)、アクラルビシン、アコダゾールヒドロクロリド(acodazole hydrochloride)、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン(ambomycin)、アメタントロンアセテート(ametantrone acetate)、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン(anthramycin)、アスパラギナーゼ、アスペルリン(asperlin)、アザシチジン、アゼテパ(azetepa)、アゾトマイシン、バチマスタット(batmastat)、ベンゾデパ(benzodepa)、ビカルタミド、ビサントレンヒドロクロリド(bisantrene hydrochloride)、ビスナフィドジメシレート(bisnafide dymesylate)、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム(brequinar sodium)、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルステロン(calusterone)、カラセミド(caracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシンヒドロクロリド(carubicin hydrochloride)、カルゼレシン(carzelesin)、セデフィンゴール(cedefingol)、クロラムブシル、シロレマイシン(cirolemycin)、シスプラチン、クラドリビン、クリスナトールメシレート(crisnatol mesylate)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン(decitabine)、デキソルマプラチン(dexormaplatin)、デザグアニン(dezaguanine)、デザグアニンメシレート(dezaguanine mesylate)、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン(duazomycin)、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エンロプラチン(enloplatin)、エンプロメート(enpromate)、エピプロピジン(epipropidine)、塩酸エピルビシン、エルブロゾール(erbulozole)、エソルビシンヒドロクロリド(esorubicin hydrochloride)、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン(etoprine)、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド(fenretinide)、フロクリジン(floxuridine)、リン酸フルダラビン、フルロウラシル、フルロシタビン(flrocitabine)、フォスキドン(fosquidone)、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシンヒドロクロリド(idarubicin hydrochloride)、イフォスファミド、イルモフォシン(ilmofosine)、インターロイキンII(組換えインターロイキンII又はrIL2を含む)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium)、ロムスチン、ロソキサントロンヒドロクロリド(losoxantrone hydrochloride)、マソプロコール(masoprocol)、マイタンシン、メクロレタミンヒドロクロリド(mechlorethamine hydrochloride)、メゲストロールアセテート(megesterol acetate)、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ(meturedepa)、ミチンドミド(mitindomide)、マイトカルシン(mitocarcin)、マイトクロミン(mitocromin)、マイトギリン(mitogillin)、マイトマルシン(mitomalcin)、マイトマイシン、マイトスペル(mitosper)、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン(ormaplatin)、オキシスラン(oxisuran)、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、ペリオマイシン(peliomycin)、ペンタムスチン(pentamustine)、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン(piposulfan)、ピロキサントロンヒドロクロリド(piroxantrone hydrochloride)、プリカマイシン、プロメスタン(plomestane)、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、プレドニムスチン(prednimustine)、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシンヒドロクロリド、ピラゾフリン(pyrazofurin)、リボプリン(riboprine)、ログレチミド(roglerimide)、サフィンゴル(safingol)、サフィンゴルヒドロクロリド(safingol hydrochloride)、セムスチン、シムトラゼン(simtrazene)、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン(spiromustine)、スピロプラチン(spiroplatin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル(sulofenur)、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフル、テロキサントロンヒドロクロリド(teloxantrone hydrochloride)、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン(teroxirone)、テストラクトン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、トレストロンアセテート(trestolone acetate)、トリシリビンホスフェート(triciribine phosphate)、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、ツブロゾールヒドロクロリド(tubulozole hydrochloride)、ウラシルマスタード、ウレデパ(uredepa)、バプレオチド(vapreotide)、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、ビネピジンスルフェート(vinepidine sulfate)、ビングリシネートスルフェート(vinglycinate sulfate)、ビンロイロシンスルフェート(vinleurosine sulfate)、酒石酸ビノレルビン、ビンロシジンスルフェート(vinrosidine sulfate)、ビンゾリジンスルフェート(vinzolidine sulfate)、ボロゾール、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジノスタチン、ゾルビシンヒドロクロリド(zorubicin hydrochloride)が挙げられる。
【0068】
使用しうるその他の抗癌剤としては、限定されるものではないが、20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3、5−エチニルウラシル、アビラテロン(abiraterone)、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール(adecypenol)、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL−TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アムバムスチン(ambamustine)、アミドックス(amidox)、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス(antarelix)、抗背側化形態形成タンパク質−1、抗アンドロゲン、前立腺癌、抗エストロゲン、抗ネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィジコリングリシネート、アポトーシス遺伝子調節因子、アポトーシス制御因子、アプリン酸、アラ−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン(axinastatin)1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン(azatoxin)、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット(batimastat)、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン(benzochlorins)、ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)、βラクタム誘導体、β−アレチン(alethine)、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン(bisantrene)、ビサジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine)、ビスナフィド(bisnafide)、ビストラテン(bistratene)A、ビゼレシン、ブレフレート(breflate)、ブロピリミン、ブドチタン(budotitane)、ブチオニンスルフォキサミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN 700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン(carzelesin)、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリックス、クロールン(chlorlns)、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシン(collismycin)A、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クラムベシディン(crambescidin)816、クリスナトール(crisnatol)、クリプトフィシン(cryptophycin)8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム(cycloplatam)、シペマイシン(cypemycin)、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、サイトスタチン(cytostatin)、ダクリキシマブ(dacliximab)、デシタビン(decitabine)、デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B、デスロレリン(deslorelin)、デキサメタゾン、デキシフォスファミド(desifosfamide)、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、ジアジコン、ダイデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジヒドロタキソール、9−、ジオキサマイシン(dioxamycin)、ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine)、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン(ecomustine)、エデルフォシン(edelfosine)、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル(emitefur)、エピルビシン、エプリステリド(epristeride)、エストラムスチン類似体、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド(fenretinide)、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン(flezelastine)、フルアステロン、フルダラビン、フルオロダウノルニシンヒドロクロリド(fluorodaunorunicin hydrochloride)、フォルフェニメックス(forfenimex)、フォルメスタン、フォストリエシン、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム(hepsulfam)、ヘレギュリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン(idarubicin)、イドキシフェン、イドラマントン(idramantone)、イルモフォシン(ilmofosine)、イロマスタット(ilomastat)、イミダゾアクリドン(imidazoacridones)、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン(iobenguane)、ヨードドキソルビシン、イポメアノール(ipomeanol)、4−、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール(isobengazole)、イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B、イタセトロン、ジャスプラキノリド(jasplakinolide)、カハラリド(kahalalide)F、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトールスタチン(leptolstatin)、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド(lissoclinamide)7、ロバプラチン(lobaplatn)、ロムブリシン(lombricine)、ロメトレキソール(lometrexol)、ロニダミン、ロソキサントロン(losoxanrone)、ロバスタチン、ロキソリビン(loxoribine)、ルルトテカン(lurtotecan)、ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin)、リソフィリン、溶解ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン(merbarone)、メテレリン(meterelin)、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトラクトール(mitolactol)、マイトマイシン類似体、ミトナフィド(mitonafide)、ミトトキシン(mitotoxin)線維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk、モピダモール(mopidamol)、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1−をベースとする治療、マスタード抗癌剤、マイカペルオキシド(mycaperoxide)B、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン(myriaporone)、N−アセチルジナリン、N−置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチップ(nagrestip)、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン(napavin)、ナフテルピン(naphterpin)、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン(nemorubicin)、ネリドロン酸(neridronic acid)、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン(nisamycin)、一酸化窒素モジュレーター、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン(nitrullyn)、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン(okicenone)、オリゴヌクレオチド、オナプリストン(onapristone)、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン(oracin)、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン(ormaplatin)、オサテロン、オキサリプラチン、オキザウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン(palauamine)、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン(parabactin)、パゼリプチン(pazelliprine)、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、ペルデシン(peldesine)、ペントサン多硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール(pentrozole)、ペルフルブロン(perflubron)、ペルホスファミド(perfosfamide)、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム(piritrexim)、プラセチン(placetin)A、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、白金複合体、白金化合物、白金−トリアミド複合体、ポルフィマー間トリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピル ビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aをベースとする免疫モジュレーター、プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類のプロテインキナーゼC阻害剤、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、ras−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン(retelliprine)、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド(rogletimide)、ロヒツキン(rohitukine)、ロムルチド、ロキニメックス(roquinimex)、ルビギノン(rubiginone)B1、ルボキシル、サフィンゴル(safingol)、サイントピン(saintopin)、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi 1ミメティックス、セムスチン、セネセンス(senescence)由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテイト、ナトリウムフェニルアセテート、ソルベロール(solverol)、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォン酸(sparfosic aicd)、スピカマイシンD、スピロムスイン(spiromustine)、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド(stipiamide)、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン(sulfinosine)、過剰活動性血管活性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン(tallimustine)、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン(tauromustine)、タザロテン、
テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム(tellurapyrylium)、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン(tetrazomine)、タリブラスチン(thaliblastine)、チオコラリン(thiocoraline)、トロンボポエチン、トロンボポエチンミメティック、チマルファシン(thymalfasin)、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン(thymotrinan)、甲状腺刺激ホルモン、チンエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンビクロリド、トプセンチン(topsentin)、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド(turosteride)、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン(tyrphostins)、UBC阻害剤、ウベニメックス、泌尿生殖器洞由来増殖阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド(vapreotide)、バリオリン(variolin)B、ベクター系、赤血球遺伝子治療、ベラレソール(velaresol)、ベラミン、ベルジン(verdins)、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン(vitaxin)、ボロゾール、ザノテロン(zanoterone)、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジラスコルブ(zilascorb)及びジノスタチンスチマラマーが挙げられる。本発明の好ましい化学療法剤としては、GleevecTM(メシル酸イマニチブ)及び他のチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0069】
好ましい実施形態において、上記各方法は、HSP調製物又はα2M調製物、好ましくは精製されたHSP調製物又は精製されたα2M調製物を、癌の治療のための2−フェニルアミノピリミジン系の薬剤の投与を受けている被験体に投与することを含むものである。より好ましくは、癌の治療のためにGleevecTM(すなわちメシル酸イマチニブ)の投与を受けている被験体である。
【0070】
別の特定の実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物は、癌の治療のために放射線療法を受けている被験体に投与する。放射線療法に関して、放射線は、γ線又はX線でありうる。この方法は、放射線療法、例えば遠隔照射放射線療法、放射性同位体(I125、パラジウム、イリジウム)、放射性同位体(ストロンチウム89など)の間質移植、胸部放射線療法、腹腔内P−32放射線療法、並びに/又は腹式及び骨盤部全放射線療法などを含む癌の治療を包含する。放射線療法の一般的な概説については、Hellman, Chapter 16: Principles of Cancer Management: Radiation Therapy,第6版,2001, DeVitaら編, J.B. Lippencott Company, Philadelphiaを参照のこと。好ましい実施形態において、放射線治療は、照射を遠隔照射源から行う、遠隔照射放射線療法又は遠隔療法として行う。種々の好ましい実施形態において、放射線治療は、放射線照射源を癌細胞又は腫瘍塊の近傍の体内に配置する、体内治療又は近接照射法として行う。
【0071】
別の実施形態において、上記各方法は、HSP調製物、好ましくは精製されたHSP調製物を、癌の治療のための治療法の組み合わせを受けている被験体に投与することを含むものである。別の実施形態において、上記各方法は、α2M調製物、好ましくは精製されたα2M調製物を、癌の治療のための治療法の組み合わせを受けている被験体に投与することを含むものである。好ましくは、HSP調製物及びα2M調製物はそれぞれ、治療対象の種の癌の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体及びα2M−ペプチド複合体をそれぞれ含む。かかる一実施形態においては、HSP調製物は、生物学的療法、好ましくはサイトカインと組み合わせて化学療法を受けている被験体に投与する。別のかかる実施形態においては、α2M調製物は、生物学的療法、好ましくはサイトカインと組み合わせて化学療法を受けている被験体に投与する。種々の実施形態において、サイトカインはIL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、L−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TNFβ、G−CSF、GM−CSF、TGF−β、IL−15、IL−18、GM−CSF、INF−γ、INF−α、SLC、内皮単球活性化タンパク質−2(EMAP2)、MIP−3α、MIP−3β、又はMHC遺伝子(HLA−B7など)からなる群より選択される。さらに、他のサイトカインの例としては、TNFファミリーの他のメンバー、例えば限定するうものではないが、TNF−α関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、TNF−α関連活性化誘導性サイトカイン(TRANCE)、アポトーシスのTNF−α関連弱誘導因子(TWEAK)、CD40リガンド(CD40L)、LT−α、Lu−β、OX4OL、CD4OL、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、APRIL、LIGHT、TL1、TNFSF16、TNFSF17、及びAITR−L、又はそれらの機能的部分が含まれる。TNFファミリーの一般的な概説については、例えば、Kwonら, 1999, Curr. Opin. Immunol. 11: 340-345を参照されたい。一実施形態において、HSP調製物は、治療法を施す前に投与する。別の実施形態において、治療法はHSP調製物を投与する前に施行する。
【0072】
特定の実施形態において、精製されたHSP調製物を、癌の治療のためにシクロホスファミドとIL−12の組み合わせの投与を受けている被験体に投与する。別の好ましい実施形態において、精製されたα2M調製物を、癌の治療のためにシクロホスファミドとIL−12の組み合わせの投与を受けている被験体に投与する。
【0073】
別の実施形態において、化学療法剤はチロシンキナーゼ阻害剤であり、HSP調製物は治療対象の癌被験体から得られたものであり、そして化学療法剤はHSP調製物の投与前に投与されたものである。別の特定の実施形態において、抗癌剤は化学療法剤GleevecTM(メシル酸イマチニブ)であり、HSP調製物は治療対象の癌被験体から得られたhsp70を含むものであり、そして化学療法剤はHSP調製物の投与前に投与されたものである。別の特定の実施形態において、HSP調製物は治療対象の癌被験体から得られたhsp70−ペプチド複合体を含む。別の特定の実施形態は、一日約400mg〜800mgのメシル酸イマチニブの投与を受けている被験体におけるCMLの治療方法であって、該被験体に、hsp70ペプチド複合体を含む熱ショックタンパク質調製物を投与することを含む上記方法を包含する。好ましい実施形態において、熱ショックタンパク質調製物は1週間に1回投与し、熱ショックタンパク質調製物は上記被験体から得られたhsp70−ペプチド複合体を含むものである。
【0074】
ある特定の実施形態において、HSP調製物は、既にGleevecTMの投与を受けている被験体に投与する(カプセル剤形で一日400〜800mg、一日1回400〜600mgを投与、又は各400mgを2回の用量で一日800mgを投与)。かかる実施形態においては、HSP/α2M調製物は、GleevecTMに加えてHSP/α2M調製物を投与する2日前、2日〜1週間前、1週間〜1ヶ月前、1ヶ月〜6ヶ月前、6ヶ月〜1年前に、HSP/α2M調製物を使用しないで既にGleevecTMの投与を受けている被験体に最初に投与する。特定の実施形態において、HSP/α2M調製物は、GleevecTM単独での処置に対して抵抗性を示した被験体に投与する。
【0075】
他の実施形態において、HSP/α2M調製物は、GleevecTMの最初の投与と同時に被験体に最初に投与する。
【0076】
また別の特定の実施形態においては、GleevecTM(例えばカプセル剤形で一日400〜800mg)を、HSP/α2M調製物の投与を含む処置を既に受けている被験体に投与する。かかる実施形態において、GleevecTMは、HSP/α2M調製物の投与に加えてGleevecTMを投与する2日前、2日〜1週間前、1週間〜1ヶ月前、1ヶ月〜6ヶ月前、6ヶ月〜1年前に、GleevecTMを使用しないで既にHSP/α2M調製物の投与を受けている被験体に最初に投与する。
【0077】
特定の実施形態において、GleevecTMは経口投与する。別の特定の実施形態において、HSP調製物は皮内投与する。
【0078】
上述した各方法においては、一例として、GleevecTMを、一日当たり、50mg〜100mg、100mg〜200mg、200mg〜300mg、300mg〜400mg、400mg〜500mg、500mg〜600mg、600mg〜700mg、700mg〜800mg、800mg〜900mg、又は900mg〜1000mgで患者に投与する。特定の実施形態において、総日用量は、2回の日用量として、25mg〜50mg、50mg〜100mg、100mg〜200mg、200mg〜300mg、300mg〜400mg、又は400mg〜500mgを被験体に投与する。
【0079】
他の使用可能な治療法としては、限定されるものではないが、当技術分野で公知の抗ウイルス薬が含まれる。かかる抗ウイルス薬としては、限定されるものではないが、リバビリン、リファムピシン、AZT、ddI、ddC、アシクロビル及びガンシクロビルが含まれる。
【0080】
また、本発明には、当技術分野で公知の抗生物質薬剤である治療法が含まれる。かかる抗生物質薬剤としては、限定されるものではないが、アミノグリコシド抗生物質(アパラマイシン、アルベカシン、バムバーマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシルネート、ネチルミシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソミシン及びスペクチノマイシン)、アムフェニコール抗生物質(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール及びチアムフェニコール)、アンサマイシン抗生物質(例えば、リファミド及びリファンピン)、カルバセフェム類(例えばロラカルベフ)、カルバペネム類(例えば、ビアペネム及びイミペネム)、セファロスポリン類(例えば、セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド及びセフピロム)、セファマイシン類(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール及びセフミノックス)、モノバクタム類(例えば、アズトレオナム、カルモナム及びチゲモナム)、オキサセフェム類(例えば、フロモキセフ及びモキサラクタム)、ペニシリン類(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカムピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン、フロキサシリン、ペナムシリン、ペネサメートヒドリオダイド(penethamate hydriodide)、ペニシリンo−ベネサミン、ペニシリン0、ペニシリンV、ペニシリンVベンザシン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピシクリン、及びフェンシヒシリンカリウム)、リンコサミド類(例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシン)、マクロライド類(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリソマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、及びエリスロマイシンアシストレート)、アムホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン、エンビオマイシン、テトラサイクリン類(例えば、アピシクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、及びデメクロサイクリン)、2,4−ジアミノピリミジン類(例えば、ブロジモプリム)、ニトロフラン類(例えば、フラルタドン及び塩化フラゾリウム)、キノロン類及びその類似体(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン、及びグレパグロキサシン)、スルホンアミド類(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド、フタリルスルフアセトアミド、スルフアクリソイジン(sulfachrysoidine)、及びスルフアシチン)、スルホン類(例えば、ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム、及びソラスルホン)、シクロセリン、ムピロシン及びツベリンが挙げられる。
【0081】
また、本発明には、当技術分野で公知の抗菌剤である治療法が含まれる。かかる抗菌剤としては、限定されるものではないが、ポリエン類(例えば、アムホテリシンb、カンジシジン、メパルトリシン、ナタマイシン、及びナイスタチン)、アリルアミン類(例えば、ブテナフィン及びナフチフィン)、イミダゾール類(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、及びラノコナゾール)、チオカルバメート類(例えば、トルシクレート、トリンデート及びトルナフテート)、トリアゾール類(例えば、フルコナゾール、イントラコナゾール、サペルコナゾール及びテルコナゾール)、ブロモサリチルクロルアニリド、ブクロサミド、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロックス、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン、ネオマイシンウンデシレネート、ピロルニトリン、シカニン、ツベルシジン及びビリジンが挙げられる。
【0082】
別の実施形態において、上記方法は、癌又は感染性疾患の予防のために有用である。特定の実施形態において、HSP調製物は、非ワクチン治療法と組み合わせて被験体に投与し、ある種の癌又は感染性疾患を患うリスクを低減する。他の特定の実施形態において、上記方法は、癌若しくは感染性疾患に対する遺伝的素因若しくは非遺伝的素因を有する被験体、又は感染性疾患の因子に対して曝露される被験体に、予防的手段として、非ワクチン治療法の施行と組み合わせてHSP調製物を投与することを包含する。さらなる実施形態において、本発明はまた、上記実施形態のそれぞれを、α2M調製物を非ワクチン治療法と組み合わせて投与する場合に適用することができる。
【0083】
本発明の方法及び組成物は、治療を受けていない患者に有用なだけではなく、HSP/α2M調製物を使用しない治療法に対して又は治療法を使用しないHSP/α2M調製物に対して部分的又は完全に応答しない患者の治療にも有用である。種々の実施形態において、本発明は、HSP/α2M調製物又は治療法のいずれか又は両方の投与又は施行を含む治療処置に対して非応答性である又は当該治療処置では難治性であることが示された及び/又はその可能性がある患者における疾患又は障害の治療又は予防に有用な方法及び組成物を提供する。本発明はまた、他の形態の医療的処置を以前に受けていた又は現在受けている患者に対するHSP/α2M調製物及び治療法の投与又は施行を含む方法及び組成物を包含する。
【0084】
本発明の方法及び組成物において使用するHSP調製物は、好ましくは精製されたものであり、何らかの分子に結合していない遊離HSP、及びHSPと別の分子(例えばペプチド)との分子複合体を含みうる。HSP−ペプチド複合体は、ペプチドに共有結合又は非共有結合したHSPを含む。本発明の方法は、被験体への投与の前に、HSPと任意の特異的抗原又は抗原性ペプチドとの共有結合又は非共有結合を必要としてもよいし又は必要としなくてもよい。ペプチド(1種若しくは複数)は、治療対象の感染性疾患若しくは障害又は特定の癌に関連していなくてもよいが、好ましい実施形態において、HSP調製物は、それぞれ治療対象の感染性疾患の因子の抗原、又は特定種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す複合体を含む。より好ましくは、感染性疾患の治療に関して、HSP調製物は、感染性疾患を引き起こす感染因子(又はその抗原性を示すその非感染性変異体)に感染した細胞から単離された非共有結合HSP−ペプチド複合体を含む。より好ましくは、ある種の癌の治療に関して、HSP調製物は、患者に由来する(自己由来)又は由来しない(同種異系)、当該種の癌又はその転移癌の癌組織から単離された非共有結合HSP−ペプチド複合体を含む。従って、本発明の目的のため、HSP調製物は、他の分子(例えばペプチド)と結合していない又は結合しているHSPを含む。HSPは、好ましくは精製されたものである。HSP調製物は、HSPを含む粗製細胞溶解物を含んでもよく、その溶解物の量は100〜10細胞等価物に相当する。HSPは、大部分の細胞供与原から、HSPと非共有結合した種々のペプチドの複合体の集団として簡便に精製することができる。HSPは、低pH及び/若しくはアデノシン三リン酸への曝露又は当技術分野で公知のほかの方法により非共有結合ペプチドから分離することができる。
【0085】
本発明の方法及び組成物において使用するα2M調製物は、好ましくは精製されたものであり、何らかの分子に結合していない遊離α2M、及びα2Mと別の分子(例えばペプチド)との分子複合体を含みうる。α2M−ペプチド複合体は、ペプチドに共有結合又は非共有結合したα2Mを含む。本発明の方法は、被験体への投与の前に、α2Mと任意の特異的抗原又は抗原性ペプチドとの共有結合又は非共有結合を必要としてもよいし又は必要としなくてもよい。ペプチド(1種若しくは複数)は、治療対象の感染性疾患若しくは障害又は特定の癌に関連していなくてもよいが、好ましい実施形態において、α2M調製物は、それぞれ治療対象の感染性疾患の因子の抗原、又は特定種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す複合体を含む。より好ましくは、感染性疾患の治療に関して、α2M調製物は、感染性疾患を引き起こす感染因子(又はその抗原性を示すその非感染性変異体)に感染した細胞から単離された非共有結合α2M−ペプチド複合体を含む。より好ましくは、ある種の癌の治療に関して、α2M調製物は、患者に由来する(自己由来)又は由来しない(同種異系)、当該種の癌又はその転移癌の癌組織から単離された非共有結合α2M−ペプチド複合体を含む。従って、本発明の目的のため、α2M調製物は、他の分子(例えばペプチド)と結合していない又は結合しているα2Mを含む。HSPは、好ましくは精製されたものである。α2M調製物は、α2Mを含む粗製細胞溶解物を含んでもよく、その溶解物の量は100〜10細胞等価物に相当する。α2Mは、大部分の細胞供与原から、α2Mと非共有結合した種々のペプチドの複合体の集団として簡便に精製することができる。α2Mは、低pH及び/若しくはアデノシン三リン酸への曝露又は当技術分野で公知のほかの方法により非共有結合ペプチドから分離することができる。
【0086】
種々の実施形態において、HSP及びα2Mの供与源は、好ましくは真核生物であり、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。従って、本発明の方法により使用されるHSP調製物は、真核生物HSP、哺乳動物HSP及びヒトHSPを含む。α2M調製物は、真核生物α2M、哺乳動物α2M及びヒトα2Mを含む。HSP調製物又はα2M調製物が由来する真核生物の供与源、及びHSP調製物又はα2M調製物の投与を受ける被験体はそれぞれ同種であることが好ましい。
【0087】
一実施形態において、HSP調製物の特異的免疫原性は、熱ショックタンパク質と複合体化したペプチドによるものである。従って、種々の実施形態において、HSP調製物は、熱ショックタンパク質が特異的抗原供与源に由来するペプチドと複合体化した、熱ショックタンパク質ペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、HSPタンパク質調製物は、自己由来の熱ショックタンパク質−ペプチド複合体を含む。別の好ましい実施形態において、HSP調製物は、その熱ショックタンパク質の由来する癌細胞の抗原性ペプチドと複合体化した熱ショックタンパク質を含む。特定の実施形態において、抗原は腫瘍特異的抗原(すなわち、腫瘍細胞においてのみ発現する)である。別の実施形態において、抗原は腫瘍関連抗原(すなわち腫瘍細胞において比較的過剰発現する)である。また別の実施形態において、HSP調製物は、その熱ショックタンパク質の由来する感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化した熱ショックタンパク質を含む。
【0088】
別の実施形態において、α2M調製物の特異的免疫原性は、α2Mと複合体化したペプチドによるものである。従って、種々の実施形態において、α2M調製物は、α2Mが特異的抗原供与源に由来するペプチドと複合体化した、α2Mペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、α2Mタンパク質調製物は、自己由来のα2M−ペプチド複合体を含む。別の好ましい実施形態において、α2M調製物は、そのα2Mの由来する癌細胞の抗原性ペプチドと複合体化したα2Mを含む。特定の実施形態において、抗原は腫瘍特異的抗原(すなわち、腫瘍細胞においてのみ発現する)である。別の実施形態において、抗原は腫瘍関連抗原(すなわち腫瘍細胞において比較的過剰発現する)である。また別の実施形態において、α2M調製物は、そのα2Mの由来する感染細胞の抗原性ペプチドと複合体化したα2Mを含む。
【0089】
種々の特定の実施形態において、上記方法は、HSP調製物又はα2M調製物を、治療法を受けた被験体に投与することを含み、ここで該治療法は、単独で施行した場合に、該被験体を治療するのに臨床上十分なものではなく、それゆえ被験体が別の有効な治療法を必要とするもの、例えば、被験体がHSP調製物又はα2M調製物の投与を行わない治療法には応答しないものである。かかる実施形態には、HSP調製物又はα2M調製物を、治療法を受けている被験体に投与することを含み、ここで該被験体は、治療に対して応答するが、副作用を受けたり、再発したり、抵抗性を確立したりしているものである。かかる被験体は、治療法単独の治療に対して応答しない又は該治療では難治性と考えられる。上記実施形態により、HSP調製物を治療法単独では難治性の被験体に投与することを含む本発明の方法が、本発明の方法により想定されるように施行された場合に、該治療法の治療の有効性を改善しうるものとなる。α2M調製物を治療法単独では難治性の被験体に投与することを含む本発明の方法が、本発明の方法により想定されるように施行された場合に、該治療法の治療の有効性を改善しうるものとなる。
【0090】
特定の実施形態において、HSP調製物は、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与し、ここで、該被験体は、該治療法単独での治療に応答しない又は難治性である、すなわち、癌細胞の少なくともある程度の有意な部分が死滅しない又はその細胞分裂が停止しない。治療法の有効性の判定は、当技術分野で公知の方法を用いてin vivo又はin vitroでアッセイすることができる。難治性という当技術分野で許容される意味は癌に関しては周知である。一実施形態において、癌は、癌細胞数が有意に低減していないか又は増大している場合に、難治性又は非応答性である。好ましい実施形態において、ある種の癌の抗原性を示すHSP調製物は、治療法単独の施行に対して応答しない被験体に投与し、ここでHSP調製物の投与によって、該治療法の有効性が改善される。治療対象のこれらの被験体の中には、化学療法又は放射線療法を受けている被験体が含まれる。
【0091】
特定の実施形態において、α2M調製物は、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与し、ここで、該被験体は、該治療法単独での治療に応答しない又は難治性である、すなわち、癌細胞の少なくともある程度の有意な部分が死滅しない又はその細胞分裂が停止しない。治療法の有効性の判定は、当技術分野で公知の方法を用いてin vivo又はin vitroでアッセイすることができる。難治性という当技術分野で許容される意味は癌に関しては周知である。一実施形態において、癌は、癌細胞数が有意に低減していないか又は増大している場合に、難治性又は非応答性である。好ましい実施形態において、ある種の癌の抗原性を示すα2M調製物は、治療法単独の施行に対して応答しない被験体に投与し、ここでα2M調製物の投与によって、該治療法の有効性が改善される。治療対象のこれらの被験体の中には、化学療法又は放射線療法を受けている被験体が含まれる。
【0092】
特定の実施形態において、HSP調製物は、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与し、ここで該被験体は、該治療法単独での治療により望ましくない又は有害な作用を受けているものでありうる、例えば、該治療法が、単独で施行(投与)したときにその有効量では毒性又は有害でありうる。本発明により、HSP調製物は、HSP調製物と組み合わせて投与した場合に、該治療法の治療効果を改善することができ、その結果、上記治療法の施行(投与)量又はその頻度を低減することができる。好ましい実施形態において、ある種の癌の抗原性を示すHSP調製物は、治療法単独の望ましくない又は有害な作用を低減又は回避するために被験体に投与し、ここでHSP調製物の投与によって、治療法の施行(投与)量が低減し、及び/又はその頻度が少なくなる。治療対象のこれらの被験体の中には、化学療法又は放射線療法を受けている被験体が含まれる。
【0093】
特定の実施形態において、α2M調製物は、癌の治療のための治療法を受けている被験体に投与し、ここで該被験体は、該治療法単独での治療により望ましくない又は有害な作用を受けているものでありうる、例えば、該治療法が、単独で施行(投与)したときにその有効量では毒性又は有害でありうる。本発明により、α2M調製物は、α2M調製物と組み合わせて投与した場合に、該治療法の治療効果を改善することができ、その結果、上記治療法の施行(投与)量又はその頻度を低減することができる。好ましい実施形態において、ある種の癌の抗原性を示すα2M調製物は、治療法単独の望ましくない又は有害な作用を低減又は回避するために被験体に投与し、ここでα2M調製物の投与によって、治療法の施行(投与)量が低減し、及び/又はその頻度が少なくなる。治療対象のこれらの被験体の中には、化学療法又は放射線療法を受けている被験体が含まれる。
【0094】
特定の実施形態において、HSP調製物は、最適以下の量で、例えば、治療法を使用しないで投与した場合には、当技術分野で公知の方法により測定したときに検出可能な治療効果が現れない量で、投与する。かかる方法において、かかる最適以下の量のHSP調製物の、治療法を受けている被験体への投与によって、治療の有効性の全体的な改善がもたらされる。別の特定の実施形態において、α2M調製物は、最適以下の量で投与する。かかる方法において、かかる最適以下の量のα2M調製物の、治療法を受けている被験体への投与によって、治療の有効性の全体的な改善がもたらされる。
【0095】
好ましい実施形態において、HSP調製物は、治療法を使用しないでHSP調製物を投与した場合には、腫瘍の退行若しくは癌の寛解をもたらさない量で、又は癌細胞が有意に低減しない若しくは増大する量で、投与する。好ましくは、HSP調製物は、治療対象の種の癌の抗原性を示すHSP−ペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、HSP調製物の最適以下の量を治療法を受けている被験体に投与し、それにより治療の全体的な有効性を改善する。別の好ましい実施形態において、α2M調製物は、治療法を使用しないでα2M調製物を投与した場合には、腫瘍の退行若しくは癌の寛解をもたらさない量で、又は癌細胞が有意に低減しない若しくは増大する量で、投与する。好ましくは、α2M調製物は、治療対象の種の癌の抗原性を示すα2M−ペプチド複合体を含む。好ましい実施形態において、α2M調製物の最適以下の量を治療法を受けている被験体に投与し、それにより治療の全体的な有効性を改善する。HSP又はα2M調製物による治療対象のこれらの被験体の中には、化学療法又は放射線療法を受けている被験体が含まれる。最適以下の量は、適当な動物実験により決定しうる。ヒトにおけるかかる最適以下の量は、動物実験からの外挿により決定しうる。
【0096】
HSP調製物又はα2M調製物は、非ワクチン治療法の施行(投与)の前、それと同時、又はその後に投与することができる。一実施形態において、HSP調製物及び治療法は、正確に同時に投与(施行)する。別の実施形態において、α2M調製物及び治療法は、正確に同時に投与(施行)する。別の実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物のいずれか及び治療法は、HSP調製物及び治療法が一緒に作用して、それらを単独で投与(施行)した場合よりも増大した効果をもたらすように、又はα2M調製物及び治療法が一緒に作用して、それらを単独で投与(施行)した場合よりも増大した効果をもたらすように、連続して及び一定期間をおいて投与する。他の実施形態において、HSP調製物及び治療法は、所望の治療効果が得られるように十分に近接した時間で投与する。他の実施形態において、α2M調製物及び治療法は、所望の治療効果が得られるように十分に近接した時間で投与する。HSP又はα2M調製物、及び治療法は、任意の形態及び任意の好適な経路により、同時に又は別々に投与(施行)することができる。一実施形態において、HSP調製物及び治療法は、異なる投与経路により投与する。別の実施形態において、それぞれを同じ投与経路で投与する。HSP調製物は、同じ又は異なる部位、例えば腕及び脚に投与しうる。。別の実施形態において、α2M調製物及び治療法は、異なる投与経路により投与する。あるいは、それぞれを同じ経路で投与する。さらに、それぞれを、同じ又は異なる部位に投与しうる。
【0097】
上述した方法のように、種々の実施形態において、HSP調製物及び治療法は、1時間未満おいて、約1時間おいて、1時間〜2時間おいて、2時間〜3時間おいて、3時間〜4時間おいて、4時間〜5時間おいて、5時間〜6時間おいて、6時間〜7時間おいて、7時間〜8時間おいて、8時間〜9時間おいて、9時間〜10時間おいて、10時間〜11時間おいて、11時間〜12時間おいて、24時間未満おいて、若しくは48時間未満おいて、又は1週間未満おいて、若しくは2週間おいて、又は1ヶ月おいて若しくは3ヶ月おいて、投与する。別の実施形態において、HSP調製物及び治療法は、2〜4日おいて、4〜6日おいて、1週間おいて、1〜2週間おいて、2〜4週間おいて、1ヶ月おいて、1〜2ヶ月おいて、又は2ヶ月以上おいて、投与する。好ましい実施形態においては、HSP調製物及び治療法は、両方が依然として活性を保持している時間において投与する。当業者であれば、各投与成分の半減期を測定することによりそのような時間を決定することができるだろう。別の又は上記の実施形態において、HSP調製物及び治療法は、2週間未満、1ヶ月、6ヶ月、1年又は5年おいて投与する。好ましくは、HSP調製物は、治療法の前に投与する。さらなる実施形態において、α2M調製物及び治療法は、上記実施形態の各々に記載した時間間隔で及び時間にわたり投与する。好ましくは、α2M調製物は、治療法の前に投与する。好ましくは、上記実施形態の各々において、治療法は、化学療法及びサイトカイン処置の組み合わせである。
【0098】
一実施形態において、治療法は毎日施行(投与)し、HSP調製物又はα2M調製物は、最初の4週間は一週間に1回、その後二週間に1回投与する。一実施形態において、治療法は毎日施行(投与)し、HSP調製物又はα2M調製物は、最初の8週間は一週間に1回、その後二週間に1回投与する。
【0099】
一実施形態において、2種以上の成分を同じ患者の診察時に投与する。一実施形態において、α2M調製物は治療法の施行(投与)前に投与する。別の実施形態において、α2M調製物は治療法の施行(投与)後に投与する。別の実施形態において、HSP調製物は治療法の施行(投与)に続いて投与する。
【0100】
特定の実施形態において、HSP調製物又はα2M調製物、及び非ワクチン治療法は、周期的に被験体に投与する。周期的療法には、一定期間のHSP調製物の投与と、その後の一定期間の治療法の施行(投与)、及びこの逐次投与の反復が含まれる。あるいは、周期的療法には、一定期間のα2M調製物の投与と、その後の一定期間の治療法の施行(投与)、及びこの逐次投与の反復が含まれる。周期的療法は、1以上の治療法に対する抵抗性の確立を低減し、該治療法の1つの副作用を回避若しくは低減し、及び/又は治療の効力を改善することができる。かかる実施形態において、本発明は、HSP調製物の投与と、その4〜6日後、好ましくは2〜4日後、より好ましくは1〜2日後の治療法の施行(投与)、の交互の投与(施行)であって、この周期が所望の回数で反復されうる投与を包含する。本発明はまた、α2M調製物の投与と、その4〜6日後、好ましくは2〜4日後、より好ましくは1〜2日後の治療法の施行(投与)、の交互の投与(施行)であって、この周期が所望の回数で反復されうる投与を包含する。
【0101】
特定の実施形態において、HSP調製物及び治療法は、3週間未満の周期で、二週間に1回、10日に1回又は一週間に1回の周期で、交互に投与(施行)する。他の実施形態において、α2M調製物及び治療法は、3週間未満の周期で、二週間に1回、10日に1回又は一週間に1回の周期で、交互に投与(施行)する。本発明の特定の実施形態において、一周期は、各周期90分、各周期1時間又は各周期45分にわたり注入による化学療法剤の投与を含み得る。各周期は、少なくとも1週間の中断、少なくとも2週間の中断、少なくとも3週間の中断を含み得る。ある実施形態において、投与の周期数は、1〜12周期、より典型的には2〜10周期、そしてより典型的には2〜8周期である。
【0102】
好ましい実施形態において、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すHSP調製物は、化学療法とサイトカイン処置の組み合わせを受ける約2週間〜1ヶ月前に、前記癌の治療に有効ではない量で被験体に投与するものであり、ここで治療の有効性は、HSP調製物又は化学療法とサイトカイン処置の組み合わせの単独投与の有効性よりも大きい。被験体がヒトであることが好ましい。好ましい実施形態において、被験体は、HSP調製物の投与前に化学療法とサイトカイン処置の組み合わせに応答しないものである。別の好ましい実施形態において、化学療法はシクロホスファミドであり、サイトカインはIL−12であり、HSP調製物は被験体の癌組織から得られたgp96−ペプチド複合体を含む。
【0103】
特定の好ましい実施形態において、ある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示すα2M調製物は、化学療法とサイトカイン処置の組み合わせを受ける約2週間〜1ヶ月前に、前記癌の治療に有効ではない量で被験体に投与するものであり、ここで治療の有効性は、α2M調製物又は化学療法とサイトカイン処置の組み合わせの単独投与の有効性よりも大きい。被験体がヒトであることが好ましい。
【0104】
好ましい実施形態において、被験体は、α2M調製物の投与前に化学療法とサイトカイン処置の組み合わせに応答しないものである。別の好ましい実施形態において、化学療法はシクロホスファミドであり、サイトカインはIL−12であり、α2M調製物は被験体の癌組織から得られたα2M−ペプチド複合体を含む。
【0105】
特定の実施形態において、上記方法は、癌の治療のためのGleevecTM(メシル酸イマチニブ)の投与を包含する。好ましい実施形態において、癌はCMLであり、化学療法剤はGleevecTM(メシル酸イマチニブ)であり、HSP調製物は治療対象の癌被験体から得られたhsp70−ペプチド複合体を含む。
【0106】
また本発明には、少なくとも1種の非ワクチン治療法とHSP調製物又はα2M調製物を投与又は施行することを含む治療方法及び送達方法、医薬組成物及び製剤、並びにかかる医薬組成物を含むキットが包含される。
【0107】
5.1.熱ショックタンパク質調製物
HSPの主要な3つのファミリーは、分子量に基づいて特定されている。そのファミリーはhsp60、hsp70及びhsp90と呼ばれており、この数値は、そのストレスタンパク質のおおよその分子量(キロダルトン)を反映している。これらのファミリーの多くのメンバーは、他のストレス刺激、例えば限定されるものではないが、栄養欠乏、代謝破壊、酸素ラジカル、及び細胞内病原体による感染などに応答して誘導されることが見出されている(Welch, May 1993, Scientific American 56-64; Young, 1990, Annu. Rev. Immunol. 8:401-420; Craig, 1993, Science 260:1902-1903; Gethingら, 1992, Nature 355:33-45; 及びLindquistら, 1988, Annu. Rev. Genetics 22:631-677を参照のこと)。シャペロン機能に関与すると考えられているタンパク質のいくつかは、小胞体(ER)内腔に存在し、例えば、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI;Gethingら, 1992, Nature 355:33-45)、カルレティキュリン(Herbertら, 1997, J. Cell Biol. 139:613-623、hsp90に関連するGrp94又はERp99(Sorger及びPelham, 1987, J. Mol. Biol. 194:(2)341-4)、並びにhsp70に関連するGrp78又はBiP(Munroら,1986, Cell 46:291-300;Haas及びWebl, 1983, Nature 306:387-389)が含まれる。これら3つのファミリーの全てに属するHSP(かかるHSPの断片も含む)は、本発明の実施に用いることができると考えられる。また、HSPは、ストレスにより誘導されるタンパク質の構成的に発現される保存された細胞性相同タンパク質を含むことに留意されたい。
【0108】
HSPは、本明細書中ではストレスタンパク質とも称し、以下の基準を満たすあらゆる細胞タンパク質の中から選択することができる。またこれは、細胞がストレス刺激に晒された際にその細胞内濃度が増大するタンパク質であり、他のタンパク質又はペプチドと結合可能であり、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下又は低pHにおいて結合タンパク質又はペプチドを放出することができ、さらに上記の性質のいずれかを有する任意の細胞タンパク質と少なくとも35%の相同性を示すものである。
【0109】
熱ショックタンパク質は現存するタンパク質のうちで最も高度に保存されたタンパク質に入る。例えば、大腸菌由来のhsp70であるDNAKは、擦過傷(excoriate)からのhsp70タンパク質に対して約50%のアミノ酸配列同一性を有する(Bardwellら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:848-852)。hsp60及びhsp90ファミリーも同様に高いレベルのファミリー内保存性を示す(Hickeyら, 1989, Mol. Cell. Biol. 9:2615-2626; Jindal, 1989, Mol. Cell. Biol. 9:2279-2283)。さらに、hsp60、hsp70及びhsp90ファミリーは、配列の点では例えば35%を超えるアミノ酸同一性を有し、ストレスタンパク質に関係しているが、その発現レベルがストレスによって変化しないタンパク質を含むことが発見されている。従って、ストレスタンパク質/HSPは、ストレス刺激に応答して細胞内での発現レベルが増大する上記3つのファミリーのメンバーと少なくとも35%〜55%、好ましくは55%〜75%、最も好ましくは75%〜85%のアミノ酸同一性を有する他のタンパク質、その変異型タンパク質、類似体及び変異体も含むものとする。これらの3つのファミリーに属するストレスタンパク質の精製については後述する。
【0110】
さらに、HSPは免疫学的特性及び抗原性を有することが見出されている。現在、HSPは、免疫の調節において不可欠な役割を果たしていると理解されている。例えば、以前の実験では、HSPが、HSPに共有結合又は非共有結合している抗原性ペプチドに対して強力で長期間持続する特異的免疫応答を刺激することが証明されている。特異的ペプチドを使用することによって、誘起される免疫応答はそのペプチドに対して「特異的」すなわち標的化されたものとなる。
【0111】
HSP−ペプチド複合体を非ワクチン治療法の施行と組み合わせて使用した場合、好ましくはペプチドがその症状に対して抗原性又は関連するものとなる。特に好ましい実施形態において、特定の種の癌を患う被験体に施した治療法の治療効果がHSP−ペプチド複合体の投与により改善されることが企図される(ここで、ペプチドはその種の癌の抗原の抗原性を提示する)。
【0112】
本発明においては、HSP調製物は、限定するものではないが、未結合のhsp70、hsp90、gp96、カルレティキュリン、hsp110、若しくはgp170、又は、それらがペプチドと非共有結合若しくは共有結合により複合体化した複合体が含まれうる。
【0113】
5.2.熱ショックタンパク質及びα2Mの調製
本発明において、精製された未結合HSP、特異的ペプチド若しくは非特異的ペプチドに共有結合若しくは非共有結合したHSP(本明細書中、これらをまとめてHSP−ペプチド複合体という)、及びこれらの組み合わせを使用する。複合体化形態又は非複合体化形態のHSPの精製は、以下の小節において説明する。さらに、当業者であれば、同様に以下に記載するように、組換え発現又はペプチド合成により、HSPを合成することができる。
【0114】
また本発明には、精製された未結合α2M、特異的ペプチド若しくは非特異的ペプチドに共有結合若しくは非共有結合したα2M(本明細書中、これらをまとめてα2M−ペプチド複合体という)、及びこれらの組み合わせを使用する。複合体化形態又は非複合体化形態のα2Mの精製は、以下の小節において説明する。さらに、当業者であれば、同様に以下に記載するように、組換え発現又はペプチド合成により、α2Mを合成することができる。
【0115】
5.2.1.Hspペプチド又はHsp70−ペプチド複合体の調製及び精製
非共有結合の細胞により生成されるhsp70−ペプチド複合体の精製は、以前に記載されており、例えば、Udonoら、1993, J. Exp. Med. 178:1391-1396を参照されたい。使用できる手順を以下に記載するが、これは例として示すに過ぎず、本発明を何ら制限するものではない:
最初に、5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、150mM NaCl、2mM CaCl、2mM MgCl、及び1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)からなる、3容量の1×溶解バッファーにヒト又は哺乳動物細胞を懸濁させる。次に、ペレットを氷上で音波処理することにより、99%以上の細胞を溶解させるが、これは顕微鏡検定により決定される。音波処理に代わり、細胞を機械的せん断により溶解させてもよく、この手法では、細胞は、典型的に30mM炭酸水素ナトリウム(pH7.5)と1mM PMSF中に再懸濁させ、氷上で20分インキュベートした後、95%以上の細胞が溶解するまで、ダウンス型(Dounce)ホモジナイザーで均質化する。
【0116】
次に、溶解物を1,000gで10分遠心することにより、破壊されていない細胞、核及びその他の細胞屑を除去する。得られた上清を100,000gで90分遠心した後、上清を回収してから、2mM Ca2+及び2mM Mg2+を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化させたConAセファロースTMと混合する。機械的せん断により細胞を溶解させる場合には、、上清を等量の2×溶解バッファーで希釈した後、ConAセファロースTMと混合する。次に、上清をConAセファロースTMと4℃で2〜3時間結合させる。結合しなかった物質を回収し、10mM Tris−Acetate(pH7.5)、0.1mM EDTA、10mM NaCl、1mM PMSFに対して36時間透析する(100容量ずつ3回)。次に、透析物を17,000rpm(Sorvall SS34ローター)で20分遠心する。得られた上清を回収し、20mM Tris−Acetate(pH7.5)、20mM NaCl、0.1mM EDTA及び15mM 2−メルカプトエタノール中で平衡化させたMonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)にアプライする。このカラムを20mMから500mMのNaCl勾配で展開させた後、溶離した分画をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離してから、適当な抗hsp70抗体(Stressgen製のクローンN27F3−4由来のものなど)を用いたイムノブロッティングにより特性決定する。
【0117】
抗hsp70抗体と強い免疫反応性を示す分画をプールし、hsp70−ペプチド複合体を硫酸アンモニウム、具体的には、50%〜70%の硫酸アンモニウムカットで沈殿させる。得られた沈殿物を17,000rpm(SS34 Sorvallローター)での遠心分離により回収した後、70%硫酸アンモニウムで洗浄する。洗浄した沈殿物を溶解させ、残留する硫酸アンモニウムをSephadex(登録商標)G25カラム(Pharmacia)上でのゲルろ過により全て除去する。必要であれば、このようにして得られたhsp70調製物を前述のように、MonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)を用いて再精製することもできる。
【0118】
この方法を用いて、hsp70−ペプチド複合体を見かけ均質性まで精製することができる。典型的には、1gの細胞/組織から、1mgのhsp70−ペプチド複合体を精製することができる。
【0119】
hsp70−ペプチド複合体を精製するための改良法は、細胞タンパク質を、固相基質に固定したADP又はATPの非加水分解性類似体と接触させることにより、溶解物中のhsp70を、ADP又は非加水分解性ATP類似体と結合させた後、結合hsp70を溶離することを含む。好ましい方法では、固相基質に固定したADP(例えば、ADP−アガロース)を用いたカラムクロマトグラフィーを用いる。得られたhsp70調製物は、これまでより純度が高く、混入ペプチドを全く含まない。hsp70複合体の収率も約10倍以上有意に高まる。これ以外に、ADPに代わり、ATPの非加水分解性類似体を用いるクロマトグラフィーを用いて、hsp70−ペプチド複合体を精製することもできる。例として、限定するものではないが、ADP−アガロースクロマトグラフィーによるhsp70−ペプチド複合体の精製は、次のように実施することができる:
MethA肉腫細胞(5億個の細胞)を低張性バッファー中で均質化させ、溶解物を4℃にて100,000gで90分遠心する。上清をADP−アガロースカラムにアプライする。カラムをバッファー中で洗浄し、5カラム容量の3mM ADPで溶離する。hsp70−ペプチド複合体は、溶離する合計15分画のうち2〜10分画に溶離する。溶離した分画をSDS−PAGEにより分析する。この手順を用いて、hsp70−ペプチド複合体を見かけ均質性まで精製することができる。
【0120】
hsp70−ペプチド複合体からのHSPの分離は、ATP又は低pHの存在下にて行うことができる。これらの2つの方法は、hsp70−ペプチド複合体からのペプチドの溶出にも使用することができる。第1の手法は、ATPの存在下にてhsp70−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。別の手法は、低pHバッファー中でhsp70−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。これらの方法及び当技術分野で公知のほかの方法を、hsp−ペプチド複合体からのHSP及びペプチドの分離に適用することができる。
【0121】
5.2.2.Hsp90又は非共有結合細胞生成Hsp90−ペプチド複合体の調製及び精製
用いることができる手順を以下に記載するが、これは例として示すに過ぎず、本発明を制限するものではない:
最初に、5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、150mM NaCl、2mM CaCl、2mM MgCl、及び1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)からなる、3容量の1×溶解バッファーにヒト又は哺乳動物細胞を懸濁させる。次に、このペレットを氷上で音波処理することにより、99%以上の細胞を溶解させるが、これは顕微鏡検定により決定される。音波処理に代わり、細胞を機械的せん断により溶解させてもよく、この手法では、細胞は、典型的に30mM炭酸水素ナトリウム(pH7.5)と1mM PMSF中に再懸濁させ、氷上で20分インキュベートした後、95%以上の細胞が溶解するまで、ダウンス型(Dounce)ホモジナイザーで均質化させる。
【0122】
次に、溶解物を1,000gで10分遠心することにより、破壊されていない細胞、核及びその他の細胞屑を除去する。得られた上清を100,000gで90分再度遠心した後、上清を回収してから、2mM Ca2+及び2mM Mg2+を含むPBSで平衡化させたConAセファロースTMと混合する。機械的せん断により細胞を溶解させる場合には、上清を等量の2X溶解バッファーで希釈した後、ConAセファロースTMと混合する。次に、上清をConAセファロースTMと4℃で2〜3時間結合させる。結合しなかった物質を回収し、10mM Tris−Acetate(pH7.5)、0.1mM EDTA、10mM NaCl、1mM PMSFに対して36時間透析する(100容量ずつ3回)。次に、透析物を17,000rpm(Sorvall SS34ローター)で20分遠心する。得られた上清を回収し、溶解バッファーで平衡化させたMonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)にアプライする。次に、200mMから500mMのNaClの塩勾配で、タンパク質を溶離する。
【0123】
溶離した分画をSDS−PAGEにより分別した後、3G3(Affinity Bioreagents)などの抗hsp90抗体を用いて、イムノブロッティングすることにより、hsp90−ペプチド複合体を含む分画を同定する。この手順を用いて、hsp90−ペプチド複合体を見かけ均質性まで精製することができる。典型的には、1gの細胞/組織から、150〜200μgのhsp90−ペプチド複合体を精製することができる。
【0124】
hsp90−ペプチド複合体からのHSPの分離は、ATP又は低pHの存在下にて行うことができる。これらの2つの方法は、hsp90−ペプチド複合体からのペプチドの溶出にも使用することができる。第1の手法は、ATPの存在下にてhsp90−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。別の手法は、低pHバッファー中でhsp90−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。これらの方法及び当技術分野で公知のほかの方法を、hsp−ペプチド複合体からのHSP及びペプチドの分離に適用することができる。
【0125】
5.2.3.Gp96又は非共有結合細胞生成Gp96−ペプチド複合体の調製及び精製
用いることができる手順を以下に記載するが、これは例として示すに過ぎず、本発明を何ら制限するものではない:
30mM炭酸水素ナトリウムバッファー(pH7.5)と1mM PMSFとからなる、3容量のバッファーにヒト又は哺乳動物細胞のペレットを再懸濁させ、細胞を氷上で20分膨潤させる。次に、95%以上の細胞が溶解するまで、細胞ペレットをダウンス型(Dounce)ホモジナイザー(ホモジナイザーの適切なクリアランスは、各細胞型に応じて変動する)で均質化させる。
【0126】
溶解物を1,000gで10分遠心することにより、破壊されていない細胞、核及びその他の細胞屑を除去する。次に、この遠心分離ステップで得られた上清を100,000gで90分再遠心する。100,000ペレット又は上清のいずれかから、gp96−ペプチド複合体を精製することができる。
【0127】
上清から精製したら、この上清を等量の2×溶解バッファーで希釈した後、2mM Ca2+及び2mM Mg2+を含むPBSで平衡化させたConAセファロースTMと4℃で2〜3時間混合する。次に、このスラリーをカラムにパッキングした後、OD280がベースラインに下降するまで、1×溶解バッファーで洗浄する。次に、2mM Ca2+及び2mM Mg2+を含むPBS中に溶解させた1/3カラム床容量の10%α−メチルマンノシド(α−MM)でカラムを洗浄した後、カラムをパラフィン片で密封してから、37℃で15分インキュベートする。次に、カラムを室温まで冷却し、カラム底部からパラフィンを除去する。5カラム容量のα−MMバッファーをカラムに導入し、SDS−PAGEにより溶離液を分析する。典型的には、得られる物質は約60〜95%純粋であるが、これは、用いた細胞型及び組織対溶解バッファー比によって異なる。次に、5mMリン酸ナトリウム(pH7)を含むバッファーで平衡化させたMonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)にサンプルをアプライする。0〜1MのNaCl勾配を用いてカラムからタンパク質を溶離させると、gp96分画が、400mM〜550mM NaClの間で溶離する。
【0128】
しかし、この手順は、2つの別のステップ(単独又は組み合わせて用いることができる)によって改変することにより、見かけ上均質なgp96−ペプチド複合体を一貫して生成することも可能である。1つの任意ステップは、ConA精製ステップの前に硫酸アンモニウム沈殿を行なうものであり、もう一つの任意ステップは、ConA精製ステップ後で、しかもMonoQ FPLCTMステップ前にDEAE−セファロースTM精製を実施するものである。
【0129】
第1の任意ステップを以下に例として説明するが、このステップでは、100,000g遠心ステップから得られた上清を、硫酸アンモニウムの添加により、最終濃度が50%硫酸アンモニウムとなるようにする。硫酸アンモニウムは、氷水のトレイ内に配置したビーカー中の溶液を穏やかに攪拌しながら、ゆっくりと添加する。この溶液を4℃で0.5〜12時間攪拌し、得られた溶液を6,000rpmで遠心分離する(Sorvall SS34ローター)。このステップから得られた上清を取り出し、硫酸アンモニウム溶液の添加により、70%硫酸アンモニウム飽和に到らせた後、6,000rpmで遠心する(Sorvall SS34ローター)。このステップから得られたペレットを回収し、70%硫酸アンモニウムを含むPBS中に懸濁させることにより、ペレットをすすぐ。この混合物を6,000rpmで遠心(Sorvall SS34ローター)した後、2mM Ca2+及びMg2+を含むPBS中にペレットを溶解させる。非溶解物質を15,000rpmでの短い遠心(Sorvall SS34ローター)により除去する。次に、溶液をConAセファロースTMと混合した後、前記と同様の手順を実施する。
【0130】
第2の任意ステップを以下に例として説明するが、このステップでは、ConAカラムから溶離した分画を含むgp96をプールした後、透析により、又は好ましくはSephadex G25カラム上でのバッファー交換により、バッファーを5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、300mM NaClと交換する。バッファー交換後、予め5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、300mM NaClで平衡化させておいたDEAE−セファロースTMと溶液を混合する。タンパク質溶液とビーズを1時間穏やかに混合し、カラムに注ぎ込む。次に、280nmでの吸光度がベースラインに降下するまで、カラムを5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、300mM NaClで洗浄する。次に、5容量の5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)、700mM NaClを含むカラムから、結合したタンパク質を溶離する。タンパク質を含む分画をプールし、5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)で希釈することにより、塩濃度を175mMまで低下させる。5mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7)で平衡化させたMonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)に、得られた物質を導入し、MonoQ FPLCTMイオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia)と結合したタンパク質を前記と同様に溶離する。
【0131】
しかし、当業者であれば、通常の実験により、第2の任意ステップを精製プロトコールに組み込む利点の評価を理解できる。さらに、任意ステップの各々を加える利点が、出発材料の供与源によって異なることも理解できる。
【0132】
gp96分画を100,000gペレットから単離する場合、このペレットを1%デオキシコール酸ナトリウム又は1%オクスチル(oxtyl)グルコピラノシドのいずれかを含む5容量のPBS(ただし、Mg2+及びCa2+は含まない)中に懸濁させ、氷上で1時間インキュベートする。懸濁液を20,000gで30分遠心し、得られた上清をPBSのいくつかの変種(同様に、Mg2+及びCa2+を含まない)に対して透析することにより、界面活性剤を除去する。透析物を100,000gで90分遠心し、上清を回収した後、カルシウム及びマグネシウムを上清に添加することにより、それぞれ、最終濃度を2mMとする。次に、非改変又は改変した方法のいずれかでサンプルを精製することにより、gp96−ペプチド複合体を100,000g上清から単離する(前記参照)。
【0133】
以上の手順を用いて、gp96−ペプチド複合体を見かけ均質性まで精製することができる。約10〜20μgのgp96を1g細胞/組織から単離することができる。
【0134】
gp96−ペプチド複合体からのHSPの分離は、ATP又は低pHの存在下にて行うことができる。これらの2つの方法は、gp96−ペプチド複合体からのペプチドの溶出にも使用することができる。第1の手法は、ATPの存在下にてgp96−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。別の手法は、低pHバッファー中でgp96−ペプチド複合体の調製物をインキュベートすることを含む。これらの方法及び当技術分野で公知のほかの方法を、hsp−ペプチド複合体からのHSP及びペプチドの分離に適用することができる。
【0135】
5.2.4.非共有結合細胞生成Hsp110−ペプチド複合体の調製及び精製
用いることができる手順(Wangらにより、2001, J. Immunol. 166(1):490-7に記載)を以下に記載するが、これは例として示すに過ぎず、本発明を何ら制限するものではない:
ダウンス型(Dounce)ホモジネートにより、5容量の低張バッファー(30mN炭酸水素ナトリウム(pH7.2)とプロテアーゼ阻害剤)中で細胞又は組織、例えば、腫瘍細胞組織のペレット(40〜60ml)を均質化させる。溶解物を4,500×g、次に100,000×gで2時間遠心する。細胞又は組織が、肝臓由来のものである場合には、得られた上清をまず青色セファロースカラム(Pharmacia)に導入して、アルブミンを除去する。それ以外の場合には、結合バッファー(20mM Tris−HCl、pH7.5;100mM NaCl;1mM MgCl;1mM CaCl;1mM MnCl;及び15mM 2−ME)で予め平衡化させたConA−セファロースカラム(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に、得られた上清を導入する。15%α−D−o−メチルマンノシドを含む結合バッファー(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を用いて、結合したタンパク質を溶離する。
【0136】
ConA-セファロース非結合物質を、まず、20mM Tris−HCl、pH7.5;100mM NaCl;及び15mM 2−MEの溶液に対して透析した後、DEAE−セファロースカラムに導入し、100〜500mMのNaClの塩勾配により、溶離する。hsp110を含む分画を回収、透析した後、20mM Tris−HCl、pH7.5;200mM NaCl;及び15mM 2−MEで平衡化させたMonoQ(Pharmacia)10/10カラムに導入する。結合したタンパク質は、200〜500mMのNaCl勾配で溶出する。分画をSDS−PAGEにより分析した後、Wangら、1999, J. Immunol. 162:3378に記載されているように、hsp110の抗体(Ab)を用いたイムノブロッティングを実施する。hsp110を含む分画をプールし、これをCentriplus(Amicon、マサチューセッツ州ビバリー)により濃縮した後、Sperose 12カラム(Pharmacia)に導入する。40mM Tris−HCl、pH8.0;150mM NaCl;及び15mM 2−MEにより、0.2ml/分の流速でタンパク質を溶離する。
【0137】
5.2.5.非共有結合細胞生成Grp170−ペプチド複合体の調製及び精製
用いることができる手順(Wangらにより、2001, J. Immunol. 166(1):490-7に記載)を以下に記載するが、これは例として示すに過ぎず、本発明を何ら制限するものではない:
ダウンス型(Dounce)ホモジネートにより、5容量の低張バッファー(30mN炭酸水素ナトリウム(pH7.2)とプロテアーゼ阻害剤)中で細胞又は組織、例えば、腫瘍細胞組織のペレット(40〜60ml)を均質化させる。溶解物を4,500×g、次に100,000×gで2時間遠心する。細胞又は組織が、肝臓由来のものである場合には、得られる上清をまず青色セファロースカラム(Pharmacia)に導入して、アルブミンを除去する。それ以外の場合には、結合バッファー(20mM Tris−HCl、pH7.5;100mM NaCl;1mM MgCl;1mM CaCl;1mM MnCl;及び15mM 2−ME)で予め平衡化させたConA−セファロースカラム(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に、得られた上清を導入する。15%α−D−O−メチルマンノシドを含む結合バッファー(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を用いて、結合したタンパク質を溶離する。
【0138】
ConA−セファロース結合物質を、まず、20mM Tris−HCl(pH7.5)及び150mM NaClに対して透析した後、MonoQ(Pharmacia)カラムに導入し、150〜400mMのNaCl勾配により、溶離する。プールした分画を濃縮した後、Superose 12カラム(Pharmacia)にアプライする。均質なgrp170を含む分画を回収する。
【0139】
5.2.6.α2M−抗原分子複合体
内因性α2M−抗原分子複合体は、以下の非限定的な方法により得ることができる。
【0140】
α−2−マクログロブリンは、市販のものを購入してもよいし又はヒトの血液から精製することにより調製してもよい。血液からα2Mを精製するために、例として以下のプロトコールを用い得るが、これに限定されるものではない。
【0141】
被験者から血液を採取し、凝血させる。次に、14,000×gで30分遠心して血清を取得し、それを0.04M Trisバッファー(pH7.6)及び0.3M NaClで平衡化したゲル濾過カラム(Sephacryl S−300R)にアプライする。約10mlの血清について65mlのカラムを使用する。画分を3ml回収し、各画分を、α2M特異的抗体を用いてドットブロットによりα2Mの存在について試験する。α2M陽性画分をプールし、PD10カラムにアプライして、バッファーを、PMSF添加0.01Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と交換する。次にプールした画分をリン酸バッファーで平衡化したConAカラム(10ml)にアプライする。カラムを洗浄し、5%メチルマンノースピラノシドを用いてタンパク質を溶出する。溶出液をPD10カラムに通過させて、バッファーを酢酸ナトリウムバッファー(0.05M;pH6.0)と交換する。続いてDEAEカラムを酢酸バッファーで平衡化し、サンプルをこのDEAEカラムにアプライする。カラムを洗浄し、0.13M酢酸ナトリウムを用いてタンパク質を溶出させる。次にα2Mを含む画分をプールする。
【0142】
5.2.7.HSP及びα2M、並びに抗原性ペプチドの組換え発現
当技術分野で公知の方法を使用して、HSP及びα2Mを組換え手法により作製することができる。熱ショックタンパク質又はα2Mをコードする核酸配列を、宿主細胞における増殖及び発現のために発現ベクターに挿入しうる。
【0143】
発現構築物とは、本明細書中で使用する場合、適切な宿主細胞中でのHSP又はα2Mの発現を可能にする1以上の調節領域と機能的に連結されたHSP又はα2Mをコードするヌクレオチド配列を指す。「機能的に連結された」とは、調節領域と発現しようとするHSP又はα2Mの配列とが、転写及び最終的には翻訳されるように連結され、配置されている関係を指す。
【0144】
HSP又はα2Mの転写に必要な調節領域を発現ベクターにより提供しうる。翻訳開始コドン(ATG)もまた、元の開始コドンを欠損するHSP又はα2M遺伝子配列を発現させようとする場合には提供してもよい。適合可能な宿主−構築物系においては、細胞転写因子、例えばRNAポリメラーゼ、を発現構築物上の調節領域に結合させ、宿主生物における改変型HSP又はα2M配列の転写を実施してもよい。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は宿主細胞の種類に応じて異なり得る。一般には、RNAポリメラーゼに結合可能で、機能的に連結された核酸配列の転写を促進するプロモーターが必要である。かかる調節領域としては、転写及び翻訳の開始に関与する5’非コード配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などが含まれる。コード配列の3’側の非コード領域は、転写終止調節配列、例えばターミネーター及びポリアデニル化部位が含まれ得る。
【0145】
調節機能を有するDNA配列(プロモーターなど)をHSP若しくはα2M遺伝子配列に結合させるため、又はHSP若しくはα2M遺伝子配列をベクターのクローニング部位に挿入するために、適当な適合可能な制限部位を提供するリンカー又はアダプターを、当技術分野で周知の手法によりcDNAの末端に連結してもよい(Wuら, 1987, Methods in Enzymol 152: 343-349)。制限酵素による切断を利用して、連結前に一本鎖DNA末端を消化又は充填することにより平滑末端を作製するよう改変しうる。あるいは、所望の制限酵素部位を、所望の制限酵素部位を含むプライマーを用いたPCRを使用したDNAの増幅によりDNAの断片に挿入することができる。
【0146】
調節領域と機能的に連結されたHSP又はα2Mの配列を含む発現構築物を、それ以上クローニングすることなく、HSP−ペプチド複合体又はα2M−ペプチド複合体の発現及び産生のための適切な宿主細胞中に直接的に導入することができる。例えば、米国特許第5,580,859号を参照。発現構築物にはまた、HSP又はα2M配列の宿主細胞ゲノム中への組み込み(例えば相同組換えによる)を容易にするDNA配列を含ませることができる。この場合には、宿主細胞中でのHSP又はα2Mの増幅と発現のために、適切な宿主細胞に適した複製起点を含む発現ベクターを用いる必要がない。
【0147】
種々の発現ベクターを用いることが可能であり、例えば限定するものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、又は改変ウイルスが挙げられる。典型的には、そのような発現ベクターは、適当な宿主細胞において該ベクターが増殖するための機能的な複製起点、HSP又はα2Mの遺伝子配列を挿入するための1以上の制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1以上の選択マーカーを含む。発現ベクターは、原核生物又は真核生物、例えば限定するものではないが、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物及びヒトなどに由来しうる適合可能な宿主細胞と共に使用する必要がある。
【0148】
適切にプロセシングされたHSP/α2M又はHSP−ペプチド/α2M−ペプチド複合体の長期にわたる高収率の産生には、哺乳動物細胞中での安定な発現が好ましい。HSP/α2M又はHSP−ペプチド/α2M−ペプチド複合体を安定に発現する細胞系は、選択マーカーを含有するベクターを用いて操作することができる。例えば限定するものではないが、発現構築物の導入後、操作された細胞を1〜2日間、富化培地中で増殖させ、次いで選択培地に換える。発現構築物中の選択マーカーは、その選択に対する耐性を付与し、最適な形としては細胞が安定にその発現構築物を染色体中に組み込み、培養下で増殖して細胞系へと増殖することができる。そのような細胞は長期間培養することができ、その一方でHSP/α2Mは連続的に発現される。
【0149】
組換え細胞は、温度、インキュベーション時間、吸光度、及び培地組成の標準的な条件下で培養することができる。しかしながら、組換え細胞の増殖条件は、HSP/α2M及び抗原性タンパク質の発現についての条件とは異なり得る。HSP/α2Mの産生を増強するために、改変された培養条件及び培地を用いてもよい。例えば、その元のプロモーターと共にHSPを含有する組換え細胞を熱若しくは他の環境ストレス又は化学的ストレスに曝露してもよい。HSP/α2M又はHSP−ペプチド/α2M−ペプチド複合体を産生するための最適条件を確立するために当技術分野で公知のあらゆる手法を適用することができる。
【0150】
細胞は、種々の供与源に由来するものとすることができ、例えば限定されるものではないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球等の血液細胞;種々の幹細胞又は前駆細胞、特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝等から得た造血幹細胞又は前駆細胞が挙げられる。細胞型の選択は、治療又は予防する腫瘍又は感染性疾患の種類に依存し、当業者により決定され得る。ある特定の実施形態では、HSP/α2Mポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現構築物を抗原性の細胞に導入する。本明細書中で用いる場合、抗原性の細胞には、感染性因子又は病原体に感染した細胞、非感染性の形態又は非病原性の形態の感染性因子又は病原体に(例えばヘルパー感染性因子の使用により)感染した細胞、弱毒化された形態の感染性因子又は病原体の非病原性の変異体若しくは複製ができない変異体に感染した細胞又はそれらを発現するように操作された細胞、癌の原因となる感染性因子(例えばウイルス)に感染しているものの未だ新生物性ではない前新生物性細胞;あるいは、突然変異原若しくは癌原因物質(例えばDNA損傷性物質、放射線など)に曝された抗原性の細胞が含まれうる。使用できる他の細胞は前新生物性細胞であって、形態、生理学的機能又は生化学的機能によって特性付けられるような正常の形態から新生物性の形態への移行の途上にあるものである。好ましくは本発明の方法に使用する癌細胞及び前新生物性細胞は哺乳動物起源のものである。本発明のこの態様から考えられる哺乳動物には、ヒト、ペット動物(例えばイヌ及びネコ)、家畜動物(例えばヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ及びウマ)、実験動物(例えばマウス、ラット及びウサギ)、及び捕獲した又は自由な野生動物が含まれる。
【0151】
種々の実施形態では、任意の癌細胞、好ましくはヒト癌細胞を、ペプチド−複合体を産生するための本発明の方法に使用することができる。癌細胞は、発現されたHSP/α2Mポリペプチドと共有結合により又は非共有結合により会合する抗原ペプチドを提供する。次に、ペプチド−複合体を該細胞から精製してかかる癌を治療するために使用する。本発明の方法で調製される免疫原性組成物により治療又は予防しうる癌には、肉腫及び癌腫のような腫瘍が含まれるがこれらには限らない。このように、前新生物性の病変、癌(複数の離れた部位に転移した癌を含む)から単離した任意の組織又は細胞は本発明の方法に使用することができる。例えば、充実性組織のみならず、異常に増殖している組織に見られる細胞、循環する白血病細胞、転移性の病変を使用することができる。
【0152】
他の実施形態では、前新生物性病変、癌組織又は癌細胞に由来する細胞系もまた、該細胞系の細胞が標的癌細胞上の抗原と共通する少なくとも1以上の抗原決定基を有している限り、使用することができる。癌組織、癌細胞、癌原因物質に感染した細胞、他の前新生物性細胞、及びヒト起源の細胞系が好ましい。
【0153】
癌細胞及び前新生物性細胞は当該技術分野において既知の任意の方法により同定できる。例えば、癌細胞は、形態、酵素アッセイ、増殖アッセイ、細胞質遺伝学的特性決定、DNAマッピング、DNA配列決定、癌原因ウイルスの存在、又は突然変異原若しくは癌原因物質への曝露の履歴、イメージングなどにより同定できる。癌細胞はまた、外科的技術、内視鏡検査技術又は他の生検技術により得ることもできる。癌細胞のある特徴的な特性が知られている場合は、アフィニティークロマトグラフィー及び蛍光活性化細胞選別(例えば、癌細胞が発現する抗体に対する、蛍光により標識した抗体を用いる)のような、しかしながらこれらには限らない、当該技術分野で既知の任意の生化学的方法及び免疫学的方法により癌細胞を得る又は精製することもできる。
【0154】
癌組織、癌細胞又は細胞系統は単一の個体から得てもよいし、又は複数の個体からプールしてもよい。クローンの、同種の、又は精製された癌細胞の集団を使用することは必須ではない。また、標的癌細胞上の少なくとも1以上の抗原決定基がHSP/α2Mポリペプチドを発現するために使用する細胞に存在している限りは、in vivoでの最終的な標的の細胞(例えば対象のレシピエントの腫瘍からの細胞)を使用する必要もない。加えて、離れた転移癌に由来する細胞を用いて原発癌に対する免疫原性組成物を調製することもできる。細胞の混合物は、該混合物中の細胞のうちの相当数が癌細胞であり且つ標的癌細胞と少なくとも1つの抗原決定基が共通しているのであれば、使用することができる。ある特定の実施形態では、HSP/α2Mポリペプチドを発現するのに使用する癌細胞は精製されている。
【0155】
5.2.8.ペプチド合成
組換え手法によりHSP/α2Mを製造する以外に、ペプチド合成がある。例えばHSP/α2Mの全長又はHSP/α2Mの一部に対応するペプチドは、ペプチド合成装置を使用して合成することができる。慣用的なペプチド合成又は他の当技術分野で周知の合成プロトコールを使用しうる。
【0156】
HSP/α2M又はその一部のアミノ酸配列を有するペプチドは、Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc., 85:2149に述べられている手順と類似の手順を用いて固相ペプチド合成によって合成することができる。合成の際に、保護された側鎖を有するN−α−保護アミノ酸を、そのC末端で不溶性のポリマー支持体、例えばポリスチレンビーズに連結された伸長させるポリペプチド鎖に段階的に添加する。ペプチドは、N−α−脱保護アミノ酸のアミノ基を、N−α−保護アミノ酸(このアミノ酸はジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬と反応させることによって活性化させている)のα−カルボキシル基と連結させることによって合成される。活性化カルボキシルに遊離アミノ基が結合することによってペプチド結合が形成される。最も一般的に用いられるN−α−保護基としては、酸に対して不安定なBoc、及び塩基に対して不安定なFmocが挙げられる。適切な化学反応、樹脂、保護基、保護アミノ酸、及び試薬についての詳細は当該技術分野で周知であり、本明細書中では詳述しない(Athertonら, 1989, Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach, IRL Press、及びBodanszky, 1993, Peptide Chemistry, A Practical Textbook, 第2版, Springer-Verlagを参照されたい)。
【0157】
得られたHSP/α2Mの精製は、慣例的な手順、例えばゲル浸透、分配及び/若しくはイオン交換クロマトグラフィーを用いた分取HPLCなどを用いて達成される。適切なマトリックス及びバッファーの選択については当該技術分野で周知であり、本明細書では詳述しない。
【0158】
5.3.抗原分子
以下の小節に、本発明のHSP/α2M−ペプチド複合体の抗原/免疫原成分として有用なペプチドについて概説し、また、そのようなペプチドの同定方法、例えばHSP/α2Mと抗原分子とのin vitroにおける複合体化のためのペプチドの組換え発現に使用するペプチドの同定について概説する。しかし、本発明の実施において、例えばHSP/α2M−ペプチド複合体を癌細胞又は病原体に感染した組織から直接精製する場合には、HSP/α2M−ペプチド複合体の抗原分子の内容を知らなくてもよい。
【0159】
5.3.1.抗原/免疫原成分の単離
抗原ペプチド及び/又は成分は、ATP又は低pHのいずれかの存在下においてHSP/α2M複合体から溶出可能であることがわかっている。これらの実験条件を使用して、細胞から有用な抗原決定基を含むと考えられるペプチド及び/又は抗原成分を単離することができる。各抗原ペプチドは、単離した後、そのアミノ酸配列を慣例的なアミノ酸配列決定法を用いて決定しうる。続いて、かかる抗原分子は、化学合成法又は組換え手法により生成し、精製し、そしてin vitroにおいてHSPと複合体化させることにより、本発明のHSP複合体を形成することができる。
【0160】
同様に、免疫原性を有する可能性のあるペプチドは、当該技術分野で周知の技法を用いてMHC−ペプチド複合体から溶出することができる(Falk, K.ら, 1990 Nature 348:248-251;Elliott, T.ら, 1990, Nature 348:195-197;Falk, K.ら, 1991, Nature 351:290-296)。
【0161】
従って、免疫原性又は抗原性を有する可能性のあるペプチドは、内因性ストレスタンパク質−ペプチド複合体又は内因性MHC−ペプチド複合体のいずれかから単離し、その後抗原分子として用いて、in vitroにおいてHSP/α2Mと複合体化させることにより、本発明のHSP/α2M複合体を形成することができる。上記の複合体のいずれかからペプチド及び/又は抗原成分を単離するプロトコールの例は以下に記載するように当技術分野で公知である。
【0162】
5.3.2.ストレスタンパク質−ペプチド複合体からのペプチド
ストレスタンパク質−ペプチド複合体からペプチドを溶出させるには、2つの方法を用いることができる。
【0163】
1つの手法は、ストレスタンパク質−ペプチド複合体をATPの存在下にてインキュベートすることを含む。もう1つの手法は該複合体を低いpHのバッファー中でインキュベートすることを含む。
【0164】
簡潔に説明すると、対象とする複合体をCentricon10 assembly(Millipore)により遠心し、該複合体と弱く会合した低分子量物質を取り出す。高分子量の画分を取り出し、SDS−PAGEにより分析することができる。一方で、低分子量のものは下記のようにHPLCにより分析できる。ATPとインキュベートするプロトコールでは、高分子量画分中のストレスタンパク質−ペプチド複合体を10mM ATPとともに30分間室温にてインキュベートする。低いpHのプロトコールでは、酢酸又はトリフルオロ酢酸(TFA)をストレスタンパク質−ペプチド複合体に添加して最終濃度が10%(vol/vol)になるようにし、そして該混合物を室温にて、又は沸騰水浴中で、又はその間の任意の温度にて10分間インキュベートする(Van Bleekら, 1990, Nature 348:213-216;及びLiら, 1993, EMBO JouRNAl 12:3143-3151参照)。
【0165】
得られたサンプルを先に記載したようにCentricon10 assemblyにより遠心分離する。高分子量画分及び低分子量画分を回収する。残りの高分子量のストレスタンパク質−ペプチド複合体はATP又は低pHとともに再度インキュベートして残存するペプチドを取り出すこともできる。
【0166】
得られた低分子量画分をプールし、蒸発濃縮し、そして0.1%TFA中に溶解する。次に溶解した物質を逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により、例えば0.1%TFAにより平衡化したVYDAC C18逆相カラムを用いて分画する。次に、結合した物質を、約0.8ml/分の流速にて、0.1%TFA中0〜80%のアセトニトリルの直線的な勾配をかけてカラムを展開することにより溶出させる。ペプチドの溶出はOD210によりモニターでき、ペプチドを含む画分を集めることができる。
【0167】
5.3.3.MHC−ペプチド複合体からのペプチド
免疫原性を有する可能性のあるペプチドのMHC分子からの単離は当該技術分野において周知であるので、本明細書では詳しくは記載しない(Falkら, 1990, Nature 348:248-251; Rotzscheら, 1990, Nature 348:252-254; Elliottら, 1990, Nature 348:191-197; Falkら, 1991, Nature 351:290-296; Demotzら, 1989, Nature 343:682-684; Rotzscheら, 1990, Science 249:283-287を参照されたい。なおこれらの開示内容は参照により本明細書に組み入れる)。
【0168】
簡潔に説明すると、MHC−ペプチド複合体は通常のイムノアフィニティーの手順により単離できる。ペプチドは、次に、アセトニトリル中約0.1% TFAの存在下にてMHC−ペプチド複合体をインキュベートすることによりMHC−ペプチド複合体から溶出させることができる。溶出したペプチドは上記のように逆相HPLCにより分画し精製することができる。
【0169】
溶出したペプチドのアミノ酸配列は、当該技術分野において周知である手動の又は自動化されたアミノ酸配列決定技術の何れかにより決定することができる。潜在的に保護するペプチドのアミノ酸配列を決定した後、該ペプチドは、通常のペプチド合成又はその他の当該技術分野において周知のプロトコールを用いて所望の量を合成できる。
【0170】
上記で単離したペプチドのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するペプチドは、Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc., 85:2149に述べられている手順と類似の手順を用いて固相ペプチド合成によって合成することができる。合成の際に、保護された側鎖を有するN−α−保護アミノ酸を、そのC末端で不溶性のポリマー支持体、例えばポリスチレンビーズに連結された伸長させるポリペプチド鎖に段階的に添加する。ペプチドは、N−α−脱保護アミノ酸のアミノ基を、N−α−保護アミノ酸(このアミノ酸はジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬と反応させることによって活性化させている)のα−カルボキシル基と連結させることによって合成される。活性化カルボキシルに遊離アミノ基が結合することによってペプチド結合が形成される。最も一般的に用いられるN−α−保護基としては、酸に対して不安定なBoc、及び塩基に対して不安定なFmocが挙げられる。
【0171】
簡単に説明すると、最初にN−α−保護アミノ酸のC末端をポリスチレンビーズに結合させる。続いてこのN−α−保護基を除去する。脱保護されたα−アミノ基を、次の(別の)N−α−保護アミノ酸の活性化α−カルボキシル基と連結させる。この工程を繰り返し行い、所望のペプチドを合成する。次に得られたペプチドを不溶性のポリマー支持体から切り出し、アミノ酸側鎖を脱保護する。長いペプチドは、複数の保護ペプチド断片を縮合することにより誘導することができる。適切な化学反応、樹脂、保護基、保護アミノ酸、及び試薬についての詳細は当該技術分野で周知であり、本明細書中では詳述しない(Athertonら, 1989, Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach, IRL Press、及びBodanszky, 1993, Peptide Chemistry, A Practical Textbook, 第2版, Springer-Verlagを参照されたい)。
【0172】
得られたペプチドの精製は、慣例的な手順、例えばゲル浸透、分配及び/若しくはイオン交換クロマトグラフィーを用いた分取HPLCなどを用いて達成される。適切なマトリックス及びバッファーの選択については当該技術分野で周知であり、本明細書では詳述しない。
【0173】
5.3.4.外来性抗原分子
病原体の既知抗原又はある種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す分子、例えば、抗原又はその抗原性部分は、HSP/α2Mと複合体化するための抗原分子として使用するために、当該技術分野で公知のものから選択してもよいし、あるいは抗体若しくはMHC分子に結合可能な(抗原性をもつ)又は免疫応答を起こすことができる(免疫原性をもつ)ものをイムノアッセイにより決定してもよい。免疫原性及び抗原性を抗体への結合を検出することにより測定するために、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、in vivo イムノアッセイ(例えばコロイド金標識、酵素標識、又はラジオアイソトープ標識を用いる)、ウエスタンブロット、免疫沈降反応、凝集アッセイ(例えばゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイ等の技術を用いる競合アッセイ系及び非競合アッセイ系を含むがこれらに限らない当該技術分野において既知の種々のイムノアッセイを使用することができる。一態様では、抗体結合は一次抗体上のラベルを検出することにより検出する。他の態様では、一次抗体を、二次抗体又は一次抗体への試薬の結合を検出することにより検出する。更なる態様では、二次抗体を標識化する。イムノアッセイで結合を検出するための多くの方法が当該技術分野において既知であり、それらを使用することが考えられる。免疫原性を検出するための一実施形態では、T細胞が介在する応答を標準的な方法により、例えばin vitroでの細胞傷害性アッセイ又はin vivoでの遅延型過敏反応アッセイにより、アッセイすることができる。
【0174】
抗原分子として用いるために有用であると考えられる抗原又はその誘導体は、種々の基準、例えば、(ある病原体による感染の治療又は予防を望む場合には)病原体の感染性の中和における抗原の関与(Vaccines 85, Lernerら(編), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, pp. 388-389中のNorrby, 1985, Summary)、種類若しくは群の特異性、患者の抗血清若しくは免疫細胞による認識、及び/又は抗原に特異的な抗血清又は免疫細胞による防御効果の証明により同定することができる。加えて、病原体が原因である疾患の治療又は予防を望む場合には、抗原にコードされているエピトープは、好ましくは時間的な、又は同じ病原体の異なる単離株間での抗原性の変動が小さいか又は全くない程度を示すべきである。
【0175】
好ましくは、癌の治療又は予防を望む場合は、既知の腫瘍特異的抗原分子(すなわち腫瘍細胞で発現される)若しくは腫瘍関連抗原(すなわち腫瘍細胞で比較的過剰発現される)又はその断片若しくは誘導体を使用する。例えば、このような腫瘍特異的抗原分子又は腫瘍関連抗原分子には、KS 1/4全癌抗原(pancarcinoma antigen)(Perez及びWalker, 1990, J. Immunol. 142:3662-3667; Bumal, 1988, Hybridoma 7(4):407-415); 卵巣癌抗原(CA125)(Yuら, 1991, Cancer Res. 51(2): 468-475); 前立腺性酸フォスファタ−ゼ(phosphate)(Tailerら, 1990, Nucl. Acids Res. 18(16):4928); 前立腺特異的抗原(Henttu及びVihko, 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 160(2):903-910; Israeliら, 1993, Cancer Res. 53:227-230); 黒色腫−関連抗原p97(Estinら, 1989, J. Natl. Cancer Inst. 81(6):445-446); 黒色腫抗原gp75(Vijayasardahlら, 1990, J. Exp. Med. 171(4):1375-1380): 高分子量黒色腫抗原(Nataliら, 1987, Cancer 59:55-63)及び前立腺特異的膜抗原が含まれるがこれらに限らない。HSP/α2Mと複合体化させうる他の外因性抗原としては、癌細胞において高頻度に突然変異を起こす部分又はタンパク質、例えば発癌遺伝子(ras、特に4つのアミノ酸残基(12,13,59若しくは61)においてのみ起こる、活性化する突然変異を有するrasの突然変異体(Gedde-Dahlら, Eur. J. Immunol. 24(2):410-414))、腫瘍抑制遺伝子(例えばp53、これについて細胞傷害性T細胞応答を刺激しうる種々の突然変異体若しくは多型性p53ペプチド抗原が同定されている(Gnjaticら, 1995, Eur. J. Immunol. 25(6):1638-1642)などが挙げられる。
【0176】
ある特定の実施形態では、ある特定の腫瘍に特異的な抗原又はその断片若しくは誘導体を、HSP/α2Mと複合体化させてHSP/α2M複合体を形成し、続いて希釈体と混合して、該腫瘍を有する患者に投与するために選択する。
【0177】
好ましくは、ウイルス性疾患の治療又は予防を望む場合には、既知のウイルスのエピトープを含む分子を使用する。例えばかかる抗原エピトープは、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスI型(HSV−I)、単純ヘルペスウイルスII型(HSV−II)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体(RS)ウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクスサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、及びヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)を含むがこれらに限らないウイルスから調製することができる。好ましくは、細菌感染症の治療又は予防を望む場合には、既知の細菌のエピトープを含む分子を使用する。例えば、かかる抗原エピトープは、マイコバクテリア(mycobacteria)、リケッチア(rickettsia)、マイコプラズマ(mycoplasma)、ナイセリア(neisseria)及びレジオネラ(legionella)を含むがこれらに限らない細菌から調製することができる。
【0178】
好ましくは、原生動物感染症の治療又は予防を望む場合には、既知の原生動物のエピトープを含む分子を使用する。例えばかかる抗原エピトープは、リーシュマニア(leishmania)、コクジジオア(kokzidioa)、及びトリパノゾーマ(trypanosoma)を含むがこれらに限らない原生動物から調製することができる。
【0179】
また好ましくは、寄生生物感染症の治療又は予防を望む場合には、既知の寄生生物のエピトープを含む分子を使用する。例えば、かかる抗原エピトープは、クラミジア(chlamydia)及びリケッチアを含むがこれらに限らない寄生生物から調製することができる。
【0180】
5.4.非共有結合HSP/α2M複合体のin vitro生成
HSP/α2Mと、それらが内在的にin vivoで結合したペプチドとの複合体を用いない実施形態では、HSP/α2Mと抗原分子との複合体をin vitroで生成する。当業者には理解されるように、前述の手順で単離した、又は化学的に合成した、あるいは、組換え手法により生産したペプチドを、各種の精製された天然又は組換えストレスタンパク質とin vitroで再構成して、非共有結合ストレスタンパク質−抗原分子複合体を生成することができる。あるいは、外因性抗原又は抗原若しくは免疫原断片又はその誘導体をストレスタンパク質と複合体化させることができる。ストレスタンパク質と抗原分子をin vitroで複合体化させる好ましいプロトコール例を以下に説明する。
【0181】
非共有結合HSP−抗原分子複合体及びα2M−抗原分子複合体を作製する方法において、複合体は、Blachereら、1997 J. Exp. Med. 186(8):1315-22(参照によりその全文を本明細書に組み入れる)により記載された方法に従って調製する。Blachereは、hspと抗原分子のin vitro複合体化を教示している。Blachereに記載のプロトコールは、hsp成分をα2Mで置き換えるように改変することができる。Binderら(2001, J. Immunol. 166:4968-72)は、Blachereの方法が抗原分子に結合したα2Mの複合体を生成するものであることを示している。
【0182】
複合体化の前に、HSP/α2MをATP又は低pHで前処理することにより、目的とするHSP/α2Mと会合している可能性のあるペプチドを全て除去する。ATP手法を用いる場合には、Levyら、1991, Cell 67:265-274により記載されているように、過剰なATPをアピラーゼ(apyranase)の添加により調製物から除去する。低pH手順を用いる場合には、pH調節試薬の添加により、バッファーのpHを中性pHとなるよう再調節する。
【0183】
抗原分子と前処理したHSP/α2Mを混合して、抗原分子約5:ストレスタンパク質1のモル比を達成する。次に、20mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、350mM NaCl、3mM MgClと1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含むバッファーなどの好適な結合バッファー中で、上記混合物を4〜45℃で、15分〜3時間インキュベートする。調製物をCentricon10アセンブリー(Milipore)により遠心分離することにより、非結合ペプチドを全て除去する。ペプチドとストレスタンパク質との会合は、SDS−PAGEによりアッセイすることができる。これは、内在性HSPペプチド複合体から解離したペプチドとMHC−ペプチド複合体から単離されるペプチドとのin vitro複合体形成の好ましい方法である。
【0184】
hsp70と、タンパク質などの外因性抗原分子との複合体を生成するのに好ましい本発明の別の実施形態では、5〜10μgの精製HSPを等モル量の抗原分子と一緒に、容量が100μLの20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)、0.5M NaCl、3mM MgCl及び1mM ADPにおいて37℃で1時間インキュベートする。このインキュベーション混合物をさらにリン酸緩衝化生理食塩水中で1mlまで希釈する。
【0185】
gp96又はhsp90とペプチドとの複合体を生成するのに好ましい本発明の別の実施形態では、5〜10μgの精製gp96又はhsp90を等モル量又は過剰量の抗原ペプチドと一緒に、20mMリン酸ナトリウムバッファーpH7.5、0.5M NaCl、3nM MgClを含むバッファーのような好適なバッファーにおいて60〜65℃で5〜20分インキュベートする。このインキュベーション混合物を室温まで冷却させ、必要であれば、Centricon10アセンブリー(Millipore)を用いて1回以上遠心分離することにより、非結合ペプチドを全て除去する。
【0186】
抗原分子は、種々の供与源から単離したり、化学合成したり、又は組換えにより生成しうる。かかる方法は、免疫療法又は予防用ワクチンの中規模又は大規模製造のために容易に適合させることができる。
【0187】
複合体形成の後、場合により、例えば以下に説明する混合リンパ球標的細胞アッセイ(MLTC)を用いて、免疫原性抗原分子複合体をin vitroでアッセイしてもよい。免疫原性複合体を単離した後、場合により、以下に説明する好ましい投与プロトコール及び賦形剤を用いて、これら複合体をさらに動物モデルにおいて特性決定してもよい。
【0188】
5.5.共有結合HSP/α2M複合体の形成
HSP/α2Mと抗原分子との非共有結合複合体の他に、抗原分子は、HSP/α2Mと共有結合により結合させることもできる。HSP/α2Mペプチド複合体は、好ましくは細胞又は組織から精製した後に架橋する。共有結合した複合体は、B細胞応答が望まれる場合の選択肢の1つである。
【0189】
一実施形態において、HSP/α2Mは、化学的架橋により抗原分子と共有結合させる。化学的架橋方法は当該技術分野において周知である。例えば好ましい実施形態では、グルタルアルデヒド架橋を使用することができる。グルタルアルデヒド架橋はペプチドとhspとの共有結合による複合体形成のために使用されている(Barriosら, 1992, Eur. J. Immunol. 22: 1365-1372を参照されたい)。好ましくは、1〜2mgのHSPペプチド複合体を0.002%のグルタルアルデヒドの存在下にて2時間かけて架橋させる。グルタルアルデヒドはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対する終夜にわたる透析により除去される(Lussowら, 1991, Eur. J. Immunol. 21:2297-2302)。一実施形態においては、以下のプロトコールを採用する。場合により、HSPはATP又は低pHで前処理した後で複合体形成を行ってもよく、それによりHSPポリペプチドと結合する可能性のあるペプチドを除去する。好ましくは、1mgのHSPを0.002%のグルタルアルデヒドの存在下にて2時間かけて1mgのペプチドと架橋させる。グルタルアルデヒドはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対する終夜にわたる透析により除去される(Lussowら, 1991, Eur. J. Immunol. 21:2297-2302)。
【0190】
化学的架橋のための他の方法もまた使用してよく、さらに光架橋等のタンパク質を共有結合により結合させるための他の方法もまた使用してよい(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら(編), Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい)。
【0191】
他の実施形態においては、HSPと特異的抗原は紫外線(UV)架橋法により架橋する。
【0192】
一実施形態において、HSPは、化学的架橋により抗原分子と共有結合させる。化学的架橋方法は当該技術分野において周知である。例えば好ましい実施形態では、グルタルアルデヒド架橋を使用することができる。グルタルアルデヒド架橋はペプチドとHSPとの共有結合による複合体形成のために使用されている(Barriosら, 1992, Eur. J. Immunol. 22: 1365-1372を参照されたい)。好ましくは、1〜2mgのHSP−ペプチド複合体を0.002%のグルタルアルデヒドの存在下にて2時間かけて架橋させる。グルタルアルデヒドはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対する終夜にわたる透析により除去される(Lussowら, 1991, Eur. J. Immunol. 21:2297-2302)。あるいは、HSP及びペプチドの集団を、当技術分野で公知の条件下における紫外線(UV)架橋により架橋してもよい。
【0193】
本発明の別の実施形態において、ペプチドの集団は、ペプチド断片とα2Mとを50:1のモル比で50℃にて10分インキュベートした後、25℃で30分インキュベートすることにより、α2Mと複合体化させうる。次に、遊離(複合体化していない)ペプチドをサイズ排除濾過により除去する。タンパク質−ペプチド複合体は、好ましくはシンチレーションカウンターで測定し、モル濃度に基づいて、各タンパク質が等量のペプチドと結合しているかどうかを観察して確認することができる(約0.1%のペプチドの開始量)。詳細に関しては、Binder, 2001, J. Immunol. 166 (8):4968-72を参照されたい(その全文を参照により本明細書に組み入れる)。
【0194】
あるいは、抗原性ペプチドの集団を、PCT公開公報WO94/14976号及びWO99/50303号(その全文を参照により本明細書に組み入れる)に記載のペプチドとα2Mとの複合体化方法により、α2Mと共有結合により複合体化させうる。抗原性ペプチドの集団とα2Mとの共有結合は、二官能性架橋剤を用いて実施しうる。かかる架橋剤及びその使用方法はまた当技術分野で周知である。
【0195】
一般に、α2Mをプロテアーゼと混合すると、α2Mの「べイト(bait)」領域の切断が起こり、プロテイナーゼがチオエステルにより「補足(トラップ)」され、コンホメーションの変化が起こり、これによって、α2M複合体とα2M受容体との結合が可能になる。α2Mのタンパク質分解活性化の間、非タンパク質分解リガンドは、活性化チオエステルと共有結合することができる。非タンパク質分解リガンドはまた、熱を用いて、求核活性化反応が逆転する間にアンモニア又はメチルアミンにより活性化α2M分子に組み込むこともできる(Gron及びPizzo, 1998, Biochemistry, 37:6009-6014)。α2M分子によるペプチドの偶然の補足を可能にする条件を用いて、本発明での使用のためにα2M−抗原複合体を調製する。このような共有結合の方法は、以前記載されている(Osadaら、1987, Biochem. Biophys. Res. Commun. 146:26-31;Osadaら、1988, Biochem. Biophys. Res. Commun. 150:833;Chu及びPizzo, 1993, J. Immunol. 150:48;Chuら、1994, Annu. N.Y. Acad. Sci. 737:291-307;Mitsudaら、1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 101:1326-1331)。このようにして、一実施形態では、α2M抗原分子複合体は、Gron及びPizzo, 1998, Biochemistry, 37:6009-6014により記載されたように調製することができる。Gron及びPizzoの方法により、抗原分子に共有結合したα2Mの複合体が得られる。
【0196】
例えば、α2Mポリペプチドを、プロテアーゼ、アンモニア又は、メチルアミンやエチルアミンなどのその他の小さなアミン求核試薬の存在下で、抗原分子と混合する。用いることができるプロテアーゼとして、限定するものではないが、トリプシン、ブタ膵臓エラスターゼ(PEP)、ヒト好中球エラスターゼ、カテプシンG、S.アウレウス(S. aureus)V−8プロテイナーゼトリプシン、α−キモトリプシン、V8プロテアーゼ、パパイン、及びプロテイナーゼKが挙げられる(Ausubelら編、”Current Protocols in Molecular Biology”, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、ニューヨーク、17.4.6-17.4.8参照)。α2Mポリペプチドと抗原分子をin vitroで複合体化させる好ましいプロトコール例を以下に示す。抗原分子(1μg〜20mg)とα2Mポリペプチド(1μg〜20mg)を、プロテアーゼ、例えばトリプシン(約500μl PBS中0.92mgのトリプシン)の存在下で、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(100μl〜5ml)中で混合することにより、約5:1の抗原分子:α2Mポリペプチドモル比を達成する。この混合物を37℃で5〜15分インキュベートする。500μlの4mg/4ml p−Aフェニルメチルスルホニルフルオリド(p−APMSF)を上記溶液に添加することにより、トリプシン活性を阻害し、25℃で2時間インキュベートする。調製物をCentricon10アセンブリー(Millipore)により遠心分離することにより、非結合ペプチドを全て除去する。あるいは、遊離抗原分子をゲル透過カラムを通過させることにより除去することができる。ペプチドとα2Mポリペプチドの会合は、SDS−PAGEによりアッセイすることができる。これは、MHC−抗原分子複合体から単離した抗原分子、又は内在性α2M−抗原分子複合体から解離したペプチドをin vitroで複合体化させる好ましい方法である。上記方法は、HSP−ペプチド複合体を生成するために容易に用いることができる。
【0197】
5.6.HSP又はα2M融合タンパク質
本発明の特定の実施形態において、HSP/α2M抗原分子複合体は、組換え融合タンパク質である。このような組換え融合タンパク質は、抗原分子の配列と連結されたHSP/α2Mの配列から構成され、本発明の方法において使用することができる。このような組換え融合タンパク質を生成するには、当該技術分野で公知の組換え方法を利用して、抗原分子をコードする配列と融合されたHSP/α2Mをコードする核酸配列を用いて発現ベクターを構築する(Suzueら、1997, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:13146-51)。続いて、HSP/α2M抗原ペプチド融合体を発現させ単離する。その分子の抗原ペプチド部分を特異的に設計することによって、かかる融合タンパク質を、免疫応答を誘発するために、また標的とする癌及び感染性疾患に対する免疫療法において用いることができる。
【0198】
5.7.キット、投与量計画、投与、及び製剤
本発明はまた、本発明の治療方法を行うためのキットをも提供する。一実施形態において、かかるキットは、精製されたHSP調製物又はα2M調製物を含有する第1容器、癌の治療のための非ワクチン治療法を含有する第2容器を含む。好ましくは、癌はCMLであり、HSP調製物はhsp70−ペプチド複合体を含み、治療法がGleevecTMである。特定の実施形態において、第2容器はメシル酸イマチニブを含む。別の特定の実施形態において、メシル酸イマチニブは精製されたものである。特定の実施形態において、キットは、精製されたHSP調製物又はα2M調製物を、それ単独で投与した場合には疾患又は障害を治療するのに有効ではない量で含有する第1容器;並びに、非ワクチン治療法を、第1容器におけるHSP調製物又はα2M調製物の投与前、投与と同時又は投与後に施行した場合に、各成分を単独で投与したときの有効性の全体的な治療の有効性を改善するのに有効な量で含有する第2容器を含む。別の特定の実施形態において、キットは、精製されたHSP調製物又はα2M調製物を、それ単独で投与した場合には疾患又は障害を治療するのに有効ではない量で含有する第1容器;並びに、1種以上の非ワクチン治療法を、第1容器におけるHSP調製物又はα2M調製物の投与前、投与と同時又は投与後に施行した場合に、HSP調製物若しくはα2M調製物を単独で投与又は治療法を単独で施行したときの有効性の全体的な治療の有効性を改善するのに有効な量で含有する第2容器を含む。さらに別の特定の実施形態において、キットは、精製されたHSP調製物又はα2M調製物を、それ単独で投与した場合には疾患又は障害を治療するのに有効ではない量で含有する第1容器;並びに、それぞれ、非ワクチン治療法を、、第1容器におけるHSP調製物又はα2M調製物の投与前、投与と同時又は投与後に施行した場合に、HSP調製物若しくはα2M調製物を単独で投与又は治療法を単独で施行したときの有効性の全体的な治療の有効性を改善するのに有効な量で含有する、第2容器及び第3容器を含む。好ましい実施形態において、本発明は、第1容器に、哺乳動物の癌組織から得られた非共有結合HSP−ペプチド複合体又はα2M−ペプチド複合体の集団を含む精製されたHSP調製物又はα2M調製物、第2容器に、精製された癌化学療法剤を含む組成物、並びに第3容器に、精製されたサイトカインを含む組成物、を含むキットを提供する。特定の実施形態において、メシル酸イマチニブを含有する第2容器は、精製されたメシル酸イマチニブを含有する。
【0199】
投与すべきHSP調製物又はα2M調製物の用量は、大部分が、治療対象の被験体の状態及び大きさに、並びに施行する非ワクチン治療法の量、治療の頻度及び投与経路に応じて異なる。部位、用量及び頻度を含む、治療を継続するための治療計画は、最初の応答及び臨床判断により導き得る。
【0200】
投与経路、及びHSP調製物中のHSPの種類に応じて、HSP調製物中のHSPの量は、例えば投与当たり0.1〜1000μgの範囲としうる。gp96又はhsp70の好ましい量は、投与当たり10〜600μgの範囲であり、HSP調製物を皮内投与する場合には0.1〜100μgである。hsp70の特に好ましい量は、皮内投与する場合には投与当たり約50μgである。hsp90については、好ましい量は投与当たり約50〜1000μgであり、皮内投与する場合には約5〜50μgである。投与するα2Mの量は、約4〜6週間に1回、皮内投与でその投与部位は逐次に変更して、2〜1000μg、好ましくは20〜500μg、最も好ましくは約25〜250μgの範囲でありうる。
【0201】
いくつかの実施形態においては、本発明の方法がHSP調製物を最適以下の量で投与することを用いるため、投与経路及びHSP調製物中のHSPの種類に応じて、HSP調製物のHSPの量は、投与当たり0.1〜1000μgの範囲の量よりも少ないものとしうる。従って、gp96又はhsp70の好ましい量は、投与当たり10〜600μgの範囲未満であり、HSP調製物を皮内投与する場合には0.1〜10μgの範囲未満である。hsp90については、好ましい量は投与当たり50〜1000μgの範囲未満であり、皮内投与については5〜50μgの範囲未満である。投与するα2Mの量は、4〜6週間に1回、皮内投与でその投与部位は逐次に変更して、2〜1000μg、好ましくは20〜500μg、最も好ましくは25〜250μgの範囲未満でありうる。
【0202】
可溶性及び治療法の施行(投与)部位は、本発明のHSP調製物の投与経路を選択する際の検討すべき因子である。投与経路は、例えば限定するものではないが、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、又は経粘膜でありうる。粘膜経路は、さらに、経口、直腸及び経鼻投与の形態をとることができる。上記因子を考慮して、HSPを、治療法の施行(投与)部位と同じ部位又は近接した部位に投与することが好ましい。
【0203】
本発明の一実施形態において、HSP/α2Mは、任意の所望の投与経路を用いて投与しうる。皮内投与の利点としては、低用量を使用すること、及び急速な吸収が含まれる。皮下又は筋肉内投与の利点としては、ある程度不溶性の懸濁塩基及び油性懸濁液にとって好適であることが含まれる。粘膜投与経路は、限定されるものではないが、経口、直腸及び経鼻投与でありうる。粘膜投与用の調製物は、以下に記載する種々の製剤において好適である。
【0204】
HSP/α2M調製物が水溶性の場合には、それを適当なバッファー、例えばリン酸緩衝化生理食塩水又は他の生理学的に混和性の溶液、好ましくは滅菌溶液中に製剤化しうる。あるいは、得られる複合体が水性溶媒において溶解度が低い場合には、それを非イオン性サーファクタント、例えばTween、又はポリエチレングリコールなどで製剤化しうる。従って、化合物及びその生理学的に許容される溶媒を、吸引若しくは吸入(口腔又は鼻経由のいずれか)により、又は経口、口腔内、非経口若しくは直腸投与により、あるいは腫瘍の場合には直接固形腫瘍に注射することにより投与するために、製剤化しうる。
【0205】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば溶剤、シロップ剤又は懸濁剤の液状形態をとることができ、あるいは使用直前に水若しくは他の好適なビヒクルにより再構成するための乾燥製品として提供してもよい。かかる液体調製物は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は食用硬化油脂);乳化剤(例えばレシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル又は精製植物油);保存剤(例えばメチル−若しくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸エステル、又はソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物とともに通常の方法により調製することができる。医薬組成物は、例えば、結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤とともに通常の方法により調製した錠剤又はカプセル剤の形態をとることができる。錠剤は当該技術分野において周知の方法によりコーティングしてもよい。
【0206】
経口投与のためのHSP/α2M調製物は、活性複合体を制御放出できるように好適に製剤化することもできる。
【0207】
舌下投与のために、かかる調製物は、通常の方法で製剤化された錠剤又はロゼンジ剤の形態をとり得る。
【0208】
調製物は、注射による(例えばボーラス注射又は連続注入などによる)非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、単位投与剤形として、例えばアンプル又は複数投薬容器の中に保存剤を加えた形で提供することができる。調製物は、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁剤、溶剤又は乳剤などの形態であってもよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化用物質を含み得る。あるいは、有効成分は、使用する前に好適なビヒクル(例えば発熱物質を含まない無菌水)で構成するための粉末状のものであってもよい。
【0209】
また調製物は、例えばカカオバター又は他のグリセリド等の従来の坐剤基剤を含む坐剤又は貯留浣腸等の直腸投与用調製物として製剤化してもよい。
【0210】
先に記載した製剤のほかに、調製物は、デポ製剤として製剤化されてもよい。このような長時間作用する製剤は、埋込(例えば皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により、投与することができる。したがって、例えば調製物は、好適なポリマー材料若しくは疎水性材料と一緒に(例えば許容可能な油中の乳剤として)、又はイオン交換樹脂と一緒に、あるいは例えば難溶性塩等の難溶性誘導体として、製剤化することができる。送達用ビヒクル又は親水性薬剤のキャリアの例として、リポソーム及びエマルションが周知である。
【0211】
吸入法により投与する場合、本発明に従って使用する複合体は、適切な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体)を用いて、加圧パック又はネブライザーからエアロゾルスプレーとして都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、一定量を送達するためのバルブを備えることにより送達することができる。吸入器又は気体注入器で用いるカプセル及び薬包(例えばゼラチン製など)は、ラクトースやデンプンなどの好適な粉末基剤と化合物との混合粉末を含むように製剤化することができる。
【0212】
望ましい場合、調製物は、HSP調製物又はα2M調製物を含む単位投与剤形を1つ以上含むパック又はディスペンサーデバイスに入れて提供してもよい。このパックは、例えば金属箔又はプラスチック箔製のもの(例えばブリスターパック等)としうる。パック又はディスペンサーデバイスに、投与に関する説明書を添付してもよい。
【0213】
治療法、例えば化学療法剤、放射線療法、及び生物学的/免疫療法剤(サイトカイン類など)を施すための適当な及び推奨される量、製剤及び投与(施行)経路は、当技術分野で公知であり、例えば、Physician's Desk Reference(第56版、2002年)などの文献に記載されている。特定の実施形態において、本発明は、以下の表2に記載するものなどの抗癌剤を、好ましくは乳癌、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、大腸癌若しくは肺癌、CML若しくは軟部組織肉腫(例えば限定するものではないが、第5.11節に記載のの消化管間質腫瘍)の治療のために投与することを含むものである。
【0214】
特定の実施形態においては、本発明の方法が治療法を最適以下の量で施行することを含むため、各治療法の量は標準的治療法で用いられる又は当技術分野で公知の量よりも低量でありうる。
【0215】
一実施形態において、GleevecTMは、一日当たり、50mg〜100mg、100mg〜200mg、200mg〜300mg、300mg〜400mg、400mg〜500mg、500mg〜600mg、600mg〜700mg、700mg〜800mg、800mg〜900mg、又は900mg〜1000mgで投与する。特定の実施形態において、総日用量は、2回の日用量として、25mg〜50mg、50mg〜100mg、100mg〜200mg、200mg〜300mg、300mg〜400mg、又は400mg〜500mgを被験体に投与する。GleevecTMは、100mg〜1000mg、好ましくは200mg〜900mg、より好ましくは300mg〜800mg、最も好ましくは400mg〜600mgの用量で経口投与する。特定の実施形態において、GleevecTMは、最適以下の日用量で経口投与する。好ましい実施形態において、経口投与するGleevecTMの最適以下の日用量は、約10mg〜600mg、約50mg〜400mg、約100mg〜300mg、又は約200mgである。他の実施形態において、GleevecTMは、一日おき、三日毎、四日毎、五日毎、六日毎、又は週に1回、100mg〜800mg、200mg〜600mg、300mg〜500mg、又は400mgの用量で経口投与する。
【表2】

【0216】

【0217】

【0218】
5.8.感染性疾患の治療及び予防
本発明の方法により治療することができる感染性疾患は、限定するものではないが、ウイルス、細菌、真菌、原生動物及び寄生生物などの感染因子により引き起こされる。
【0219】
本発明の方法により治療することができる感染因子は、限定するものではないが、ウイルス、細菌、真菌、原生動物性疾患の病原体が含まれる。
【0220】
本発明の方法により治療又は予防することができるウイルス性疾患として、限定するものではないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペスI型(HSV−I)、単純ヘルペスII型(HSV−II)、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、天然痘ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、ヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、及びウイルス性髄膜炎、脳炎、デング熱又は天然痘などのウイルス性疾患の病原体により引き起こされる疾患が挙げられる。
【0221】
本発明の方法により治療又は予防することができる細菌性疾患は、限定するものではないが、マイコバクテリア、リケッチア、マイコプラズマ、ナイセリア、肺炎双球菌、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、バチルス・アントラシス(炭疽菌)、破傷風、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、マイコバクテリア、破傷風、百日咳、コレラ、ペスト、ジフテリア、クラミジア、黄色ブドウ球菌、及びレジオネラなどの細菌により引き起こされる。
【0222】
本発明の方法と組み合わせた免疫反応薬剤の使用により治療又は予防することができる原生動物性疾患は、限定するものではないが、リーシュマニア、コクジジオア、及びトリパノソーマなどの原生動物により引き起こされる。
【0223】
本発明の方法の使用により治療又は予防することができる寄生生物性疾患は、限定するものではないが、クラジミア及びリケッチアなどの寄生生物により引き起こされる。
【0224】
5.9.癌の治療
現在、多数の非ワクチン癌治療法について臨床試験が行われており、当技術分野で周知である。HSP/α2M調製物は、そのような非ワクチン癌治療法と一緒に、各種の癌の治療及び予防のために使用することができる。当業者であれば、本発明の方法に従って使用可能な、実験的かつ標準的な抗癌治療剤及び治療法を決定しうる。
【0225】
本発明の方法により治療することができる癌には、ヒトの肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮癌、胎生期癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴音神経系腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病リンパ腫、非ホジキン病リンパ腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、軟部組織肉腫、消化管間質腫瘍及び神経膠芽腫が含まれるがこれらに限定されない。
【0226】
6.実施例:
LLC(D122)及びB16などの腫瘍を担持するマウスは、シクロホスファミド(Cy)とインターロイキン−12(IL−12)の組み合わせの処置に対して応答しない。二重移植実験において、MCA207(Cy+IL−12処置に応答することが知られている腫瘍)及びD122を、マウスの反対側の2つの側面に注射し、有意な大きさ(10×10mm)になるまで成長させ、その後、マウスをCy+IL−12で処置した。大きなMCA207腫瘍は迅速に退行したが、D122腫瘍は同じ動物の逆の側面において成長し続けた。この結果は、同じ動物において他の腫瘍に対しては強力な応答が存在しても、特定の腫瘍、例えばD122はCy+IL−12に応答しないことを示した。
【0227】
処置に対して応答した腫瘍は免疫原性であると考えられるが、応答しなかった他の腫瘍はすべて免疫原性が低い。Cy+IL−12処置の前にT細胞プラミングの形態での宿主による腫瘍の免疫認識が処置に対する腫瘍応答となるかどうかを試験するため、以下の実験を実施した。以下の結果は、Cy+IL−12の単独処置に応答しないD122腫瘍を担持するマウスが腫瘍の免疫学的記憶を獲得し、以後のCy+IL−12による処置を行ったマウスにおいて腫瘍拒絶反応が起こりうることを示した。
【0228】
マウスにおいてCD4+及びCD8+T細胞の両方を含むT細胞の強力な応答を誘発するために、熱ショックタンパク質−ペプチド複合体を使用した。
【0229】
6.1.材料及び方法
未処理マウスは、免疫しないか、又は第0日に、5及び20μgのD122由来gp96−ペプチド複合体を皮下投与することにより免疫するか、又は2μgのD122由来gp96−ペプチド複合体を皮内投与することにより免疫した。陰性対照として、別のマウス群を、肝臓由来gp96−ペプチド複合体で免疫した。D122由来gp96−ペプチド複合体は、D122腫瘍細胞に対し内因性であり、それから単離したHSP−ペプチド複合体である。肝臓由来gp96−ペプチド複合体は、肝細胞に対し内因性であり、それから単離したHSP−ペプチド複合体である。免疫の2週間後(第14日)に、マウスを200,000個のD122細胞で皮下投与によりチャレンジした。免疫は、本発明者の以前の実験結果に従って腫瘍拒絶反応について最適以下の条件で行い、D122腫瘍は全てのマウスにおいて増殖した。腫瘍の大きさが直径10mm以上に達したとき(第32〜34日)に、マウスをCy+IL−12で処置した(Cy、3mgを腹腔内投与;IL−12、200ngを5日間かけて腹腔内投与)。
【0230】
6.2.結果

【0231】
上記表にまとめたように、自己腫瘍由来のgp96−ペプチド複合体で抗原特異的免疫刺激を行った場合には、非応答性腫瘍D122はCy+IL−12の処置に対し応答性となった。肝臓由来gp96−ペプチド複合体で免疫していない群及び免疫した群においては、最も小さな腫瘍(直径10〜12mm未満)を担持するマウスのみが、Cy+IL−12処置後に腫瘍が退行した。対照的に、D122由来gp96−ペプチド複合体で免疫したマウスにおいては、報告されている免疫療法の手法のいずれにおいても一般的に難治性の直径22mm程度の大きなD122腫瘍がCy+IL−12処置後に完全に退行した。さらに、各群から採取したいくつかの腫瘍サンプルについての免疫組織化学分析により次のことが明らかとなった。すなわち、1)Cy+IL−12処置の前後において、肝臓由来gp96−ペプチド複合体で免疫した又は免疫していないマウスから採取した腫瘍においてT細胞の浸潤に兆候はなかった;2)対照的に、ある程度のT細胞浸潤(CD4+及びCD8+の両方)が、Cy+IL−12処置を開始してから第12日においてD122由来gp96−ペプチド複合体で免疫したマウスから採取した腫瘍において観察された(第6日では観察されなかった)。
【0232】
7.実施例:GleevecTM及びHSP−ペプチド複合体の組み合わせを投与した後の慢性期CMLの患者における白血病細胞の完全な排除
慢性期CMLの患者を治療するための自己腫瘍由来hsp70−ペプチド複合体による免疫の可能性を試験するために、以下のプロトコールを使用した(図1)。図1にまとめた臨床プロトコールは、HPS調製物でのワクチン接種の前、その間及びその後に行った全ての身体的検査、血液検査、X線検査及び骨髄検査を含む。試験を行う前に、CMLの被験者の診断を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて被験者から得た末梢血又は骨髄のbcr/abl分子タイピングによりbcr/ablキメラタンパク質又は転写産物の有無を測定して確認した。
【0233】
7.1.材料及び方法
参加被験者は以下の基準を満たした:米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)の試験スコア2未満を示した;年齢が少なくとも18歳であり、インフォームドコンセントを得ることができた;フィラデルフィア染色体陽性の慢性期CMLという最初の診断を受けてから1年が経過していなかった;細胞遺伝学的寛解状態ではなかった;疾患の進行のために主治医によってそのような治療が必要であると認められない限り、6月以内に骨髄又は幹細胞移植を予定していなかった;ヒドロキシウレア、10日間のAra−C/日又はGleevecTM(メシル酸イマチニブ)の同時の標準的治療を維持していた;研究の参加によって健康状態が悪化するような重篤な病状を示さなかった;血清クレアチンレベルが2.0未満で適度な腎機能を示し、ビリルビン及びトランスアミナーゼが正常上限値の2.0倍未満の適度な肝機能を示した;コルチコステロイド治療又は他の免疫抑制治療を受けていなかった;カンジダ、マンプス及びPPDを用いた皮膚試験による3つの抗原のうちの少なくとも1つに対して適度な遅延型過敏症(DHT)応答により示されるアネルギーの欠如を示さなかった、すなわち硬化はその配置の48時間後に0.5cmより大きかった。
【0234】
以下のような被験者は除いた:2以上のECOG試験スコアを示した被験者;フィラデルフィア染色体陽性の慢性期CMLという最初の診断を受けてから3年以上経過している被験者;IFN処置を受けている被験者;顕著な貧血(すなわちヘモグロビンが10g/ml未満)又は血小板減少(すなわち血小板が20,000/μl未満であって、輸血が必要)を示す被験者;末梢芽球数が10%を超える被験者;尿又は血液妊娠試験で陽性を示した被験者;腎機能不全(すなわち血清クレアチンが2.0以上)又は肝機能不全(すなわちビリルビン又はトランスアミナーゼが正常上限値の2.0倍を超える)を示した被験者;登録時に入院が必要な有意な活性の感染症を示す被験者;適当な追跡調査を妨げるような顕著な行動的又は心理学的問題を有する被験者。
【0235】
以下の理由のいずれかのために被験者は試験を中断した:何らかの理由により取りやめを希望した被験者:実績のある有効な治療法を受けることが可能となり、そちらを選択した被験者(例えば、監督庁による他の試験中の薬剤の承認、同一のヒト白血病抗原(HLA)が適合するドナーの特定)、追跡調査において失踪した被験者;以下の兆候及び症状により示される同時治療にもかかわらず疾患の促進の明らかな証拠を示した被験者(すなわち、末梢芽球10%以上、末梢芽球+前骨髄球30%以上、末梢好塩基球20%以上、治療に関係なく血小板減少100,00/mm未満、骨髄芽球10%以上、有意な髄質線維症、治療に対して非応答性の進行性脾腫、WBCの3つが50,000/mm未満、ヘマトクリット25未満、治療により制御されずに血小板100,000/mm、不明な持続性の熱、細胞遺伝学的クローン性進化;局所的な未成熟芽を伴う髄外疾患(緑色腫など);研究者の意見が被験者の最良の目的を保護するためであるという他の理由。
【0236】
それらの最初のHSP調製物の投与の前に、被験者に、それぞれ2日、5ヶ月、9ヶ月、10ヶ月及び1年にわたりGleevecTM治療を施した(カプセル剤形で一日400〜800mg、1日1回日用量400〜600mgを投与、又は各400mgを2回の日用量で800mgを投与)。上記基準を満たす被験者は、試験期間にわたってGleevecTM治療を受けることができた。続いて、被験者から、末梢単核細胞を採取するために末梢血管を用いてアファレーシスを行った。検体の大部分をhsp70−ペプチド複合体の精製に使用した。その後、自己由来hsp−70ペプチド複合体は、実質的に第5.3.1節に記載のようにして、ADP−アガロースプロトコールを用いて精製した。回収物の小さな画分をCTLアッセイの標的として使用した。50mgのhsp70−ペプチド複合体を2ヶ月間かけて合計8回被験者の前腕の皮膚に皮内投与し、さらにGleevecTM治療を行った(カプセル剤形で一日400〜800mg、1日1回日用量400〜600mgを投与、又は2日に1回800mgを投与)。血液サンプルを3回採取して免疫系の状態を確かめた。血液はワクチン接種の前、ワクチン接種の間、及び8回目のワクチン接種から1〜2週間後に採取した(図1参照)。処置の最後に、全被験者に骨髄について完全な血液学的及び細胞遺伝学的評価を行った(Silverら、1999, Blood 94 (5): 1517-1536参照)。
【0237】
実行可能性及び毒性データを採集するために、さらに、抗腫瘍免疫の発達について当技術分野で公知の方法に従って判定した。例えば、(1)自己由来bcr/abl陽性末梢単核細胞に対して応答性のIFN−γ産生CD8+Tリンパ球の末梢血における増大(例えば、Janetzkiら、2000, Int. J. Cancer 88:232-238参照);(2)HLA−A2陽性の患者におけるPR1−HLA−A2テトラマー法によるPR−1特異的CTLの増大(例えば、Clarkら、2001, Blood 98 (10):2887-2893、及びMolldremら、1999, Cancer Research 59:2675-2681参照);(3)末梢リンパ球の免疫表現型の変化(例えば、Akelら、2002, Clin. Lab. Haem. 24:362-367参照);並びに(4)骨髄からのフィラデルフィア染色体の細胞遺伝学的退行(例えば、Wangら、2002, British J. Haematology 118:771-777参照)。
【0238】
評価可能な5名の被験者における併用療法によって、以下の測定のように白血病細胞の完全な排除がもたらされた:処置患者から採取した末梢血又は骨髄におけるbcr/abl転写産物の有無を測定するRT−PCR分析(例えば、Merxら、2002, Leukemia 16:1579-1583;Wangら、2002, British Journal of Haematology 118:771-777;及びStentoftら、2001, Eur. J. Haemotol. 67:302-308を参照);GleevecTMの認可に使用される基準の1つである細胞遺伝学的応答(Silverら、1999, Blood 94 (5):1517-1536参照);あるいはRT−PCRと細胞遺伝学的応答の組み合わせ。以前の報告を検討すると、GleevecTM単独で処置した患者の10%未満が上記同基準を用いた応答を達成している。Drukerら、2002, Hematology (Am. Soc. Hematol. Educ. Program): 111-135, 114-115参照。
【0239】
本明細書で引用する全ての文献は、各個々の刊行物又は特許若しくは特許出願がその全ての目的のためにその全文が参照により組み込まれていると具体的かつ個々に示すのと同程度に、全ての目的のためにその全文を参照により本明細書に組み入れる。
【0240】
本発明の多数の改変及び変形は、当業者には明らかなように本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載した具体的な実施形態は、単なる例示を目的として提供したものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限され、またその均等の全範囲もかかる特許請求の範囲に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】第7節に記載した臨床プロトコールの概要を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における癌の治療方法であって、
(a)該被験体に、チロシンキナーゼ阻害剤を含む少なくとも1つの治療法を施すステップ、及び
(b)精製された熱ショックタンパク質調製物を投与するステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
癌が慢性骨髄性白血病である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
癌が慢性期にある、請求項2記載の方法。
【請求項4】
癌が軟部組織肉腫である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
癌がチロシンキナーゼレセプターc−kitを発現する消化管間質腫瘍である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
チロシンキナーゼ阻害剤がチロホスチン(tyrphostin)である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
チロシンキナーゼ阻害剤が、メシル酸イマチニブ、ハービマイシンA、ゲニステイン、アーブスタチン、及びラベンダスチンAからなる群より選択されるものである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
チロシンキナーゼ阻害剤がメシル酸イマチニブである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
メシル酸イマチニブが精製されたものである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
被験体が熱ショックタンパク質調製物を使用しない少なくとも1つの治療法による処置に対して非応答性であった、請求項1記載の方法。
【請求項11】
精製された熱ショックタンパク質調製物が、1以上の熱ショックタンパク質−ペプチド複合体を含み、該熱ショックタンパク質がhsp60、hsp70、hsp90、hsp110、gp96又はカルレティキュリンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
精製された熱ショックタンパク質調製物がhsp70を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
精製された熱ショックタンパク質が治療対象の被験体の自己由来のものである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
治療法が、熱ショックタンパク質調製物の最初の投与前に施される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
治療法が、熱ショックタンパク質調製物の投与と同時に施される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
治療法が、熱ショックタンパク質調製物の最初の投与後に施される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
被験体における慢性骨髄性白血病の治療方法であって、
(a)該被験体に、メシル酸イマチニブを含む少なくとも1つの治療法を施すステップ、及び
(b)精製された熱ショックタンパク質調製物を投与するステップ、
を含む上記方法。
【請求項19】
被験体がヒトである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
メシル酸イマチニブが毎日投与される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
メシル酸イマチニブが一日当たり400mg投与される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
メシル酸イマチニブが一日当たり600mg投与される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
メシル酸イマチニブが各日用量当たり400mgで二日間で800mg投与される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
メシル酸イマチニブが熱ショックタンパク質調製物の被験体への最初の投与の前に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項25】
メシル酸イマチニブが熱ショックタンパク質調製物の投与と同時に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項26】
メシル酸イマチニブが熱ショックタンパク質調製物の被験体への最初の投与の後に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項27】
一日当たり200mg〜800mgのメシル酸イマチニブの投与を受けている被験体においてCMLを治療する方法であって、該被験体に、hsp70−ペプチド複合体を含む熱ショックタンパク質調製物を投与することを含む、上記方法。
【請求項28】
hsp70−ペプチド複合体が該被験体から得た腫瘍細胞より単離されたものである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
熱ショックタンパク質調製物が1週間に1回投与される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
精製された熱ショックタンパク質調製物を含有する第1容器と、メシル酸イマチニブを含有する第2容器とを含むキット。
【請求項31】
熱ショックタンパク質調製物がhsp70−ペプチド複合体を含む、請求項30記載のキット。
【請求項32】
精製された熱ショックタンパク質調製物及びメシル酸イマチニブを含む医薬組成物。
【請求項33】
熱ショックタンパク質調製物がhsp−ペプチド複合体を含む、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
被験体における癌の治療方法であって、
(a)癌を患う被験体に精製された熱ショックタンパク質調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験者にワクチンではない治療法を施すステップ、
を含む上記方法。
【請求項35】
治療法が化学療法、放射線療法、生物学的療法又は免疫療法である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
ワクチンではない第2治療法を施すステップをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
熱ショックタンパク質調製物が、熱ショックタンパク質−ペプチド複合体の集団を含むものであり、該ペプチドが、該被験体のその種の癌の腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原の抗原性を示すものである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
HSP調製物が該被験体のその種の癌の癌組織から得られた熱ショックタンパク質−ペプチド複合体の集団を含むものである、請求項34記載の方法。
【請求項39】
熱ショックタンパク質−ペプチド複合体の集団が該被験体の癌組織から得られたものである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
熱ショックタンパク質調製物が治療法を施す前に投与される、請求項34記載の方法。
【請求項41】
熱ショックタンパク質調製物が、治療法を施さずに投与する場合には癌の治療に有効ではない量で投与するものである、請求項34記載の方法。
【請求項42】
被験体がHSP調製物を使用しない治療法による処置に対して非応答性であった、請求項34記載の方法。
【請求項43】
治療法がシクロホスファミドである、請求項34記載の方法。
【請求項44】
サイトカインの投与をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項45】
治療法がIL−12である、請求項36記載の方法。
【請求項46】
癌が、ヒトの肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、又はH鎖病である、請求項34記載の方法。
【請求項47】
被験体がヒトである、請求項34記載の方法。
【請求項48】
熱ショックタンパク質調製物が1以上のHSP−ペプチド複合体を含むものであり、HSPがhsp60、hsp70、hsp90、hsp110、gp96、gpr170又はカルレティキュリンである、請求項34記載の方法。
【請求項49】
被験体における感染性疾患の治療方法であって、
(a)感染性疾患を患う被験体に、精製された熱ショックタンパク質調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体に、ワクチンではない治療法を施すステップ、
を含む上記方法。
【請求項50】
被験体における癌の予防方法であって、その必要がある被験体に、精製された熱ショックタンパク質調製物とワクチンではない治療法を投与することを含む上記方法。
【請求項51】
被験体における感染性疾患の予防方法であって、その必要がある被験体に、精製された熱ショックタンパク質調製物とワクチンではない治療法を投与することを含む上記方法。
【請求項52】
癌の治療が必要な被験体において治療効果を改善する方法であって、
(a)該被験体に、(i)その種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す、又は(ii)該被験体の癌組織から単離した、HSP−ペプチド複合体の集団を含む精製された熱ショックタンパク質調製物を最適以下の量で投与するステップ、並びに
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体に、上記癌の治療に有効な量の1以上の治療法を施すステップ、
を含み、ステップ(b)を行わない場合には、上記最適以下の量が上記癌の治療に有効ではなく、またステップ(a)を行わない場合には、上記癌は上記治療法に応答しないものである、上記方法。
【請求項53】
治療法がシクロホスファミド及びIL−12である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
非ワクチン治療法を受けている被験体における該非ワクチン治療法を用いた治療の効果を改善する方法であって、該被験体にHSP調製物を投与することを含む、上記方法。
【請求項55】
治療法が、抗生物質、抗ウイルス薬、抗菌薬、化学療法剤、放射線療法、生物学的治療剤、又は免疫療法剤である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
被験体における癌の治療方法であって、
(a)該被験体に、該被験体の癌組織から得られた非共有結合HSP−ペプチド複合体の集団を含む精製されたHSP調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体に癌化学療法剤を投与するステップ、
を含む上記方法。
【請求項57】
ステップ(b)がサイトカインの投与をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項58】
薬剤及びサイトカインを同日に投与し、HSP調製物を別日に投与する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
薬剤がシクロホスファミドであり、サイトカインがIL−12である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
被験体がヒトである、請求項56記載の方法。
【請求項61】
HSP調製物が薬剤の1日以上前に投与される、請求項56記載の方法。
【請求項62】
HSP調製物が薬剤の少なくとも2週間前に投与される、請求項56記載の方法。
【請求項63】
(a)第1容器に、哺乳動物の癌組織から得られた非共有結合HSP−ペプチド複合体の集団を含む精製されたHSP調製物、
(b)第2容器に、精製された癌化学療法剤を含む組成物、並びに
(c)第3容器に、精製されたサイトカインを含む組成物、
を含むキット。
【請求項64】
被験体における癌の治療方法であって、
(a)癌を患う被験体に精製されたα2M調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体にワクチンではない治療法を施すステップ、
を含む、上記方法。
【請求項65】
被験体における癌の治療方法であって、
(a)該被験体に、該被験体の癌組織から得られた非共有結合α2M−ペプチド複合体の集団を含む精製されたα2M調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体に癌化学療法剤を投与するステップ、
を含む上記方法。
【請求項66】
被験体における感染性疾患の治療方法であって、
(a)感染性疾患を患う被験体に精製されたα2M調製物を投与するステップ、及び
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体にワクチンではない治療法を施すステップ、
を含む、上記方法。
【請求項67】
被験体における癌の予防方法であって、その必要がある被験体に、精製されたα2M調製物とワクチンではない治療法を投与することを含む上記方法。
【請求項68】
癌の治療が必要な被験体において治療効果を改善する方法であって、
(a)該被験体に、(i)その種の癌の腫瘍特異的抗原若しくは腫瘍関連抗原の抗原性を示す、又は(ii)該被験体の癌組織から単離した、α2M−ペプチド複合体の集団を含む精製されたα2M調製物を最適以下の量で投与するステップ、並びに
(b)ステップ(a)に続いて、該被験体に、上記癌の治療に有効な量の1以上の治療法を施すステップ、
を含み、ステップ(b)を行わない場合には、上記最適以下の量が上記癌の治療に有効ではなく、またステップ(a)を行わない場合には、上記癌は上記治療法に応答しないものである、上記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−501147(P2006−501147A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587325(P2003−587325)
【出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/012802
【国際公開番号】WO2003/090686
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(502433438)ユニバーシティー オブ コネティカット ヘルス センター (6)
【Fターム(参考)】