説明

非互着性ゴム組成物ペレット

【課題】 少なくともゴム類、補強材、軟化材を含むゴム組成物を熱可塑性ポリマーで被覆し、切断することによって得られる非互着性ゴム組成物ペレットにおいて、非互着性ゴム組成物ペレットと加硫剤等を混練した際、未溶融の熱可塑性ポリマーを発生し難い非互着性ゴム組成物ペレットを提供する。
【解決手段】 下記(1)及び(2)の条件にて測定された物性値を有する熱可塑性ポリマーを用いる。
(1)DSC測定において、150℃で2分間保持した後、5℃/分で20℃まで冷却し、2分間保持し、次いで、20℃から5℃/分で150℃まで昇温した際に得られる結晶融解ピーク温度(℃)<90℃
(2)JIS K7206に準拠し、荷重10N、昇温速度50℃/hで測定されたビカット軟化温度(℃)>40℃

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック、シリカ等の補強材とオイル等の軟化材を含むゴム組成物のペレットに関する。特に保管、輸送又は加工装置への供給などの際の取扱いに優れた非粘着性ゴム組成物ペレット、さらに概ペレットを用いて得られた加硫ゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
非互着性ペレットとして、粘着性ポリマーを熱可塑性ポリマーで被覆し、加圧変形後、切断することによって、ほとんど互着しない非互着性ペレットが得られることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、粘着性ポリマーはタルク、マイカ等の無機充填材、オイル等を含有できること、となっている。さらに被覆するための熱可塑性ポリマーは結晶性オレフィン系ポリマーが好ましく、そのDSCによる結晶融解ピーク温度は、互着防止の観点から60℃以上、特に好ましくは120℃以上、となっている。
【0004】
しかしながら、粘着性ポリマーがゴム類と無機充填材、オイル等の混合物であるゴム組成物を後工程において加硫を行う場合、非互着性ペレットに加硫剤等を混練する必要があり、この混練工程は、加硫剤による架橋反応が進行しない様、加硫剤の反応温度未満で行う必要がある。よって、高結晶融解ピーク温度を持つ熱可塑性ポリマーが被覆材の場合、熱可塑性ポリマーが分散し難いため、ブツとなる問題があった。また逆に、高結晶融解ピーク温度を持つ熱可塑性ポリマーよりも高温で行った場合、加硫剤の架橋反応が進行し、ゴム組成物の粘度が上昇してしまうスコーチと呼ばれる不良現象を生ずる問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−199706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、少なくともゴム類、補強材、軟化材を含むゴム組成物を熱可塑性ポリマーで被覆し、切断することによって得られる非互着性ゴム組成物ペレットにおいて、非互着性ゴム組成物ペレットと加硫剤等を混練した際、未溶融の熱可塑性ポリマーを発生し難い非互着性ゴム組成物ペレットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、熱可塑性ポリマーの結晶融解ピーク温度が90℃未満、かつビカット軟化温度が40℃よりも高い熱可塑性ポリマーを被覆材に用いることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくともゴム類、補強材、軟化材を含むゴム組成物を芯材として、概芯材を熱可塑性ポリマーで被覆し、切断して得られるペレットにおいて、下記(1)及び(2)の条件にて測定された物性値を有する熱可塑性ポリマーを用いることを特徴とする非互着性ゴム組成物ペレットに係るものである。
(1)DSC測定において、150℃で2分間保持した後、5℃/分で20℃まで冷却し、2分間保持し、次いで、20℃から5℃/分で150℃まで昇温した際に得られる結晶融解ピーク温度(℃)<90℃
(2)JIS K7206に準拠し、荷重10N、昇温速度50℃/hで測定されたビカット軟化温度(℃)>40℃
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくともゴム類、補強材、軟化材を含むゴム組成物を熱可塑性ポリマーで被覆し、切断することによって得られる非互着性ゴム組成物ペレットにおいて、非互着性ゴム組成物ペレットと加硫剤等を混練した際、未溶融の熱可塑性ポリマーを発生し難い非互着性ゴム組成物ペレットを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるゴム類としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、SBSゴム、水添SBSゴム、液状重合スチレン−ブタジエンゴムなどのスチレン系ゴム、その他、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ビニルピリジンゴム、シリコーンゴム、ブタジエン−メチルメタクリレートゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
【0011】
前記スチレン系ゴムとしては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)などが挙げられる。用いるゴム類の中でもエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴムは、低コストかつ耐候性に優れることから特に好ましい。
【0012】
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴムに用いるα−オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどがあげられ、その一種を単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。なお、中でもプロピレン及び1−ブテンが好ましい。
【0013】
また、用いられる非共役ジエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンが例示されるが、これらに限定されるものではない。
さらにエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンの組成比は目的の加硫ゴム製品に応じて適宜、設定することが可能である。
【0014】
これらエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴムの製造方法としては、公知のオレフィン重合触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法が挙げられる。
【0015】
このゴム類は単独でも使用できるが、他のゴム類、あるいは構造の異なる同種のゴム類を混合して用いる場合もある。
【0016】
また、用いられる補強材としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カーボンブラック等の無機充填材や、シリカ、ガラス繊維等の補強用短繊維等をあげることができる。これらは、単独でもかまわないが、混合して用いてもかまわない。
【0017】
カーボンブラックは補強効果が高いことから特に好ましい。カーボンブラックの種類としては、ゴムの分野で通常用いられる、SRF(N770)、GPF(N660)、FEF(N550)、HAF(N330)、ISAF(N220)、SAF(N110)、FT(N880)及びMT(N990)をあげることができる。好ましくは平均粒子径が50nm以上のカーボンブラックであり、該平均粒子径が50nm未満であると、カーボンブラックの分散不良を生じ易く、混練加工性及び押出加工性が悪影響を及ぼす場合がある。添加量は、ゴム類100重量部あたり10phr以上200phr以下である。含有量が10phr未満であると十分な補強効果が得られない。
【0018】
さらに、用いられる軟化材としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、コールタールピッチ、ヒマシ油、アマニ油、サブ、密ロウ、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、アタクチックポリプロピレン、及びクマロンインデン樹脂、を例示することができる。中でも、プロセスオイルが特に好ましい。プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマテック系オイル等をあげることができる。
【0019】
ゴム組成物として、さらに混合可能なのは、酸化亜鉛、ステアリン酸、金属石けん、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、パラフィンワックス等の加工助剤、アミン系、フェノール系、イミダゾール系、リン系などの老化防止剤、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ハロゲン化合物などの難燃剤、粘着付与剤、補強材用カップリング剤、等である。
【0020】
本発明のゴム組成物を被覆するに用いる熱可塑性ポリマーとしては、示差走査熱量測定(DSC)において結晶融解ピークが90℃未満に観察され、ビカット軟化点が40℃よりも高い熱可塑性ポリマーが好ましい。結晶融解ピーク温度が90℃未満であれば、ゴム組成物ペレットに加硫剤、発泡剤等を混練する工程において、その加工温度を90℃未満とすることが可能なため、加硫剤による架橋反応が進行し難く、最終混練物のスコーチが発生し難いため好ましい。
【0021】
更にはビカット軟化点が40℃より高温であれば、ペレット同士の互着を防止するに満足するため好ましい。さらにDSCによる結晶融解ピーク温度が70℃未満に観察される熱可塑性ポリマーがより好ましい。
【0022】
この様な物性を有する熱可塑性ポリマーとしては、例えば、結晶性オレフィン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンらがあげられる。これらの中でも、原料価格、加工の容易さから結晶性オレフィン系ポリマーが好ましい。
【0023】
前記の結晶性オレフィン系ポリマーとしては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの他、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−デセン−1共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体。エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体などが挙げられる。これらの結晶性のオレフィン系ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、α,β−不飽和カルボン酸、脂環族カルボン酸、無水マレイン酸又はこれらの誘導体で変性されたポリマーであってもよい。
【0024】
また、これらの結晶性オレフィン系ポリマーの製造方法としては、公知のオレフィン重合触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等が挙げられる。特にメタロセン系錯体などの活性サイトが均一である触媒で重合された結晶性オレフィン系ポリマーが好ましい。
【0025】
本発明における熱可塑性ポリマーには、必要に応じて炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カーボンブラック等の無機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、増核剤、防曇剤、難燃剤などを含ませることもできる。
【0026】
前記、ゴム組成物を得る際に用いられる装置には、バンバリーミキサー等の密閉式混合機、一軸スクリュー、同方向、異方向の二軸スクリュー押出機、多段混合域を備えた二軸スクリュー押出機等がある。特にゴム組成物の混練とシート成形が連続で可能なことから、スクリュー押出機が好ましい。
【0027】
得られたゴム組成物をシート状にする方法としても、これらに限定されるものではないが、例えば、スリット状、あるいはサーキュラー状ダイスの備わった押出機を用いてシート化する方法やカレンダーロールによりシート化する方法が挙げられる。
【0028】
積層シートの作製方法についても、これらに限定されるものではないが、例えば、少なくとも2本の加熱ロールを用いて、ゴム組成物を連続的にシート状に成形しつつ、そのシート状ゴム組成物の両表面に熱可塑性ポリマーのフィルムを供給し、貼合して得られる。又は、ゴム組成物を芯層とし、熱可塑性ポリマーを表層として積層し、スリット状、あるいはサーキュラー状ダイスにてシート化する多層押出成形が挙げられる。多層押出成形はゴム組成物の混練と熱可塑性ポリマーとの積層化が連続で可能なことから、特に好ましい。
【0029】
また、熱可塑性ポリマーからフィルムを得る方法としては、これらに限定されるものではないが、例えばTダイ法又はインフレーション法など公知の方法が適用可能である。フィルムの厚みは、一般的に約1〜500μm、好ましくは約5〜300μm、特に好ましくは約10〜100μmである。
【0030】
上記フィルムは、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、テンター延伸法やチューブラー延伸法などの公知の方法によって得ることができ、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、二軸延伸フィルムにおいては、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれであってもよい。
【0031】
さらに、上記フィルムは多層フィルムでもよい。多層フィルムは公知の共押出法又はラミネート法によって得ることができる。
【0032】
熱可塑性ポリマーをゴム組成物シートに貼合する際の加熱ロールのサイズは特に制限はなく、ロール面長及びロール直径は任意に選択することができる。加熱ロール表面は、鏡面仕上げ、粗面仕上げのいずれでもよい。近接した加熱ロール表面間の距離は、成形しようとするシート厚みによって適宜調整することができる。
【0033】
加熱ロールの加熱温度は、好ましくは約30℃〜150℃、より好ましくは約40℃〜100℃である。なお、単位時間当たりの成形量が多いと、加熱不足となる場合があるが、この場合は加熱ロールの直径を大きくとる、加熱ロール本数を3本以上に増やすなどの方法、あるいはゴム組成物を供給段階で予備加熱するなどの方法を採用すればよい。
【0034】
前記シート状の被覆体の厚みは、フィルムを含めた総厚みで好ましくは約0.5mm〜10mm、より好ましくは約0.8mm〜5mmである。なお、通常はフィルムで覆われている面の形状が四角形となる。
【0035】
押出機により多層成形された積層シートの熱可塑性ポリマー層の厚みは、約200μm以下、好ましくは約100μm以下である。
【0036】
以下、上記の積層シートを切断して、ペレットを製造する方法について説明するが、いずれの積層シートについても同様にして製造することができ、これらに限定されるものではない。
【0037】
積層シートは、約30〜150℃の温度で、切断部を加圧変形後、切断することによってペレットを製造する。
【0038】
積層シートの温度は、例えば、積層シートの製造時の温度を保持して、加熱ローラを通して加熱して、上下に設置した加熱器で加熱して、及び/又は切断部を加熱することによって、約30〜150℃にされる。
【0039】
積層シートの加圧変形及び切断を同一の刃で行う場合について説明する。
【0040】
まず、切断刃によって切断部を徐々に加圧して、切断刃の先端を被覆体に押込む。これによって、表面の熱可塑性ポリマーフィルムは延伸し、切断部のゴム組成物は周辺に押出され、上下の熱可塑性ポリマーフィルムは接近する。次いで、更に加圧することによって、最終的に被覆体を切断する。被覆体の変形は、変形前の厚さの約10〜30%にするのが好ましい。
【0041】
得られるペレットの断面は、ほぼ熱可塑性ポリマーフィルムで覆われ、ゴム組成物の露出は僅かである。
【0042】
積層シートに高い圧力をかけて一気に切断すると、積層シートが十分に変形する前に切断してしまい、切断面の熱可塑性ポリマーフィルムによる被覆が不十分になる。また、最初にかける圧力が弱く、変形が十分でない状態で切断しても同様に切断面の被覆は不十分になる。従って、ある程度の圧力をかけて上下の熱可塑性ポリマーフィルムが接近した状態にした後に切断を行う。
【0043】
積層シートにかける圧力は、連続して徐々に加えて十分に変形した後に切断されるように調整しても良いし、初めに変形する圧力をかけ、次に切断する圧力をかける2段階にしても良い。それぞれのかける圧力及び速度は、積層シートの種類によって変わり、予めテストして決定される。
【0044】
図1にこれらの方法を実施する装置の概略図を示す。
【0045】
送出しロール9及び支持ロール11によって被覆体1がアンビルロール5上に搬送される。被覆体を支持するアンビルロール5上には被覆ポリマー1を介してアンビルロール5と接する型押しロール6が配置されている。型押しロール6の表面には型押し刃が設けられており、これによって加圧して切断部を変形させる。被覆体の進行方向に対して型押しロール6の後方に切断ロール7が配置されている。切断ロール7の表面には切断刃が設けられており、これによって変形された切断部を切断する。成形されたペレットはコンベアからなるペレットキャッチャー8に落下し、集められる。
【0046】
ペレットの大きさについても特に制限されるものではないが、加工装置に定量供給することを考慮すると、フィルムで覆われている面の一辺が約2mm〜10mmであることが好ましい。
【0047】
非互着性を完全なものとするために、得られた非互着性ゴム組成物ペレットに対し、その表面に、無機微粉体又は有機微粉体が打粉されていてもよく、また、液状の防着剤でもよい。粉体、又は液状の防着剤を塗布すると、ペレットの熱可塑性ポリマーで覆われていない部分に粉体、防着剤が付着し、非互着性を完全にする効果がある。
【0048】
粉体としては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、ステアリン酸カルシウム又はポリオレフィンパウダーが挙げられる。液状の防着剤としては精工化学社製ニューエイドDF−30等が挙げられる。
【0049】
非互着性ゴム組成物ペレットを用いた加硫ゴム製品は、概ペレットと加硫剤、加硫促進剤等をロール、ニーダーなどの通常の混練機を用いて、加硫剤の架橋反応が進行し難い、90℃未満で混合し、熱プレス、射出成形機、圧縮成形機、押出成形により成形し、通常、120℃以上、好ましくは140℃〜240℃の温度にて約1〜60分間加硫を行うことにより得られる。さらに加硫スポンジ製品は、概ペレットに加硫剤、加硫促進剤、発泡剤等を加硫ゴム製品同様混練、成形、発泡、加硫して得られる。特に押出機を用いて、連続的に混練、成形し、発泡、加硫する場合、概ペレットと加硫剤、加硫促進剤、発泡剤を押出機投入、混練し、ダイスにて成形する。続いて熱風加硫装置、あるいは/かつ高周波加硫装置で発泡、加硫を行うことができる。
【0050】
加硫ゴム製品を得るために用いられる加硫剤は、イオウや有機過酸化物などをあげることができる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ第三ブチルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、第三ブチルヒドロペルオキシドなどがあげられる。特に、ジクミルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどをあげることができる。通常、これらの加硫剤は、ゴム類100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部用いられる。
また、用いられる加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール−スルフエンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール−スルフエンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフエンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフエニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル−ジスルフイド、ジフエニルグアニジン、トリフエニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、オルソトリル−バイ−グアナイド、ジフエニルグアニジン−フタレート、アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア、2−メルカプトイミダゾリン、チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフエニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフエニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルキサントゲン酸亜鉛、エチレンチオウレアなどをあげることができる。さらにその一種を単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。通常、これら加硫促進剤は、ゴム類100重量部に対して0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜8重量部用いられる。
【0051】
さらに、加硫スポンジゴム製品を得るために用いられる発泡剤は、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、N,N’−ジメチルN,N’−ジニトロソ−テレフタルアミド、N,N’−ジニトロソ−ペンタメチレン−テトラミン、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム−アゾジカルボキシレート、ベンゼン−スルホニル−ヒドラジド、トルエン−スルホニル−ヒドラジド、トルエン−スルホニル−ヒドラジド誘導体、P−トルエン−スルホニル−セミカルバジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフエニルスルホン−3,3’−ジスルホニル−ヒドラジド、カルシウムアジド,4,4’−ジフエニル−ジスルホニルアジド−バラ−トルエン−マルホニルアジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン、及びヒドラゾジカルボンアミドなどがあげられ、その一種を単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。なお、安定した発泡倍率を得るには4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)が好ましい。通常、これら発泡剤はゴム類100重量部あたり、0.5〜20重量部の割合で用いられる。
【0052】
本発明における非互着性ゴム組成物ペレットを加硫ゴム製品、特にグラスランチャネル、ドアシールスポンジ、ウェザーストリップ等の自動車用部品、ガスケット等の建材用部品に適用すれば、連続的効率良く、安定的に生産可能となる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明における物性測定は、下記の方法で行った。
(I)熱可塑性ポリマーの結晶融解ピーク温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い以下の条件で測定した。
(1)試料約8mgを150℃で2分間保持した後、5℃/分の速度で20℃まで冷却し、2分間保持した。
(2)次いで、20℃から5℃/分の昇温速度で150℃まで昇温した。この(2)で観察される融解ピークの温度を結晶融解ピーク温度とした。
(II)熱可塑性ポリマーのビカット軟化点
JIS K7206に従い、荷重10N、昇温速度50℃/hで測定を行った。
(III)ペレット互着性評価
(1)100gのペレットを用意する。
(2)500mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに(1)のペレットを仕込み、荷重2kgの重りを載せる。
(3)重りを載せた状態で、40℃/24時間状態調整を行う。
(4)状態調整後、重りを外し、ビーカーからペレットを取出した時の下記の状態により互着性を判定した。
○:個々のペレットがバラバラと崩れて出てきた
△:ペレットが塊状で、塊を軽く押すと崩れた
×:ペレットが塊状で、塊を強く押さないと崩れなかった
【0055】
(IV)最終混練物のムーニー粘度(ML1+4100℃)
JIS K6300に従い測定した。
(V)スポンジ密度
JIS K6268に従い、水中置換法(A法)にて、釣下げ治具として針金を用いて測定した。
(VI)スポンジ外観
得られた加硫スポンジ成形製品における未溶融熱可塑性ポリマーによるブツの有無を製品表面の目視にて判定した。
○:ブツなし
×:ブツあり
【0056】
実施例1
(1)ゴム組成物の作製
表2の配合表に従いゴム類としては、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴムである住友化学(株)製エスプレン グレード名:5527F(C2含量=54重量%、共役ジエン含量=8.5重量%、ML1+4(125℃)=130)を用い、内容積1.5リットルのバンバリーミキサーでローター回転数60rpm/混練時間5分間の条件にて混練することによってゴム組成物を得た。
(2)ゴム組成物ペレットの作製
105℃に加熱したプレス成形機を用いて、150mm×150mm×3mm厚みのゴム組成物シートを作製し、熱可塑性ポリマーとして表1に示す住友化学(株)製LLDPEであるエクセレンFX、グレード名:CX4002(結晶融解ピーク温度=68℃、ビカット軟化点=47℃)からなる40μm厚みのフィルムでゴム組成物シートを挟み、110℃に加温したプレス成形を用いて概フィルムを貼合した。
得られた積層シートを図2に示す打抜き機を用いて打抜き、この打抜いたシートを90°回転させて、さらに打抜くことによって10mm×10mm×3mmサイズの直方体状のペレットを得た。
さらに液状の防着剤であるニューエイドDF−30(精工化学社製)の原液を7倍に薄めた水溶液に、得られたゴム組成物ペレットをディッピングすることにより、防着剤をペレット表面にコーティングした。
得られたゴム組成物ペレットの互着性評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(3)ゴム組成物ペレットを用いた加硫スポンジゴム成形品の作製
(2)にて得られたゴム組成物ペレットを表3に示す加硫剤、発泡剤等配合処方にて、ロール温度を表1に示す混練温度に設定したオープンロールを用いて最終ゴム組成物を得た。この最終ゴム組成物のムーニー粘度ML1+4100℃を測定した。結果を表1に示す。
この最終ゴム組成物を、チューブ状ダイス(内径=10mm、肉厚=1.2mm)を装着した45mm押出機によって、ダイス温度80℃、シリンダー温度60℃の条件で押出し、チューブ状の中空形状の成形体を得た。さらに該成形体を、220℃の熱風加硫装置中で10分間加熱し、中空スポンジを得た。得られた加硫スポンジゴム成形品の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1及び比較例2
熱可塑性ポリマーとして、住友化学(株)製LDPEであるスミカセン、グレード名:G202(結晶融解ピーク温度=107℃、ビカット軟化点=91℃)を用いた以外、実施例同様にゴム組成物ペレットを作製した。これを表1に示す通り比較例1では混練温度110℃、比較例2では混練温度70℃にて加硫剤、発泡剤等配合を混練し、最終ゴム組成物を得た。さらに実施例同様に加硫スポンジゴム成形品を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0059】
比較例3
熱可塑性ポリマーとして、住友化学(株)製LLDPEであるエクセレンFX、グレード名:CX5505(結晶融解ピーク温度=58℃、ビカット軟化点=28℃)を用いた以外、実施例同様にゴム組成物ペレットを作製した。これを混練温度60℃にて加硫剤、発泡剤等配合を混練し、最終ゴム組成物を得た。さらに実施例同様に加硫スポンジゴム成形品を得た。物性測定結果を表1に示す。
【0060】
比較例4
(1)ゴム組成物ペレットの作製
実施例同様のゴム組成物を用いて、熱可塑性ポリマーフィルムを貼合することなく、実施例同様にゴム組成物ペレットを作製した。得られたペレットを実施例同様に互着性の評価を行った。結果を表1に示す。
(2)ゴム組成物ペレットを用いた加硫スポンジゴム成形品の作製
原料に(1)で得られた熱可塑性ポリマー非被覆ゴム組成物ペレットを用いる以外、実施例同様に加硫スポンジゴム成形品を得た。最終混練物のムーニー粘度、得られた加硫スポンジゴム成形品の評価結果を表1に示す。
【0061】
表1で明らかな通り、実施例は、比較例1、2と同様ペレット互着性に優れる。しかし用いる熱可塑性ポリマーの結晶融解ピーク温度が低いため、加硫剤、発泡剤等の混練工程が低温で可能なことから、最終ゴム組成物の粘度は、混練工程の温度の高い比較例1とは異なり、比較例4の熱可塑性ポリマーを被覆しないゴム組成物ペレットから得られる最終混練物の粘度と同等である。さらに熱可塑性ポリマーの結晶融解ピーク温度よりも低温で混練工程を行った比較例2と異なり、実施例にて得られた加硫スポンジ成形製品は、スポンジ外観も良好であり、かつスポンジ密度も比較例4とほぼ同等である。また実施例のペレットは、被覆に用いた熱可塑性ポリマーのビカット軟化点が、比較例3に用いた熱可塑性ポリマーのビカット軟化点よりも高いことから、優れた非互着性をも示す。
【0062】
【表1】







【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に用いるゴム組成物ペレットの製造装置例の概略図である。
【図2】本発明の実施例に用いたゴム組成物ペレットの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0066】
[図1について]
1 積層シート
2 切断刃支持板
3 プレス
4 架台
5 アンビルロール
6 型押しロール
7 切断ロール
8 ペレットキャッチャー
9 送出しロール
10 ヒーター
11 支持ロール
[図2について]
1 エアシリンダー
2 カット刃
3 積層シート
4 打抜き台
5 スポンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム類、補強材、軟化材を含むゴム組成物を芯材として、概芯材を熱可塑性ポリマーで被覆し、切断して得られるペレットにおいて、下記(1)及び(2)の条件にて測定された物性値を有する熱可塑性ポリマーを用いることを特徴とする非互着性ゴム組成物ペレット。
(1)DSC測定において、150℃で2分間保持した後、5℃/分で20℃まで冷却し、2分間保持し、次いで、20℃から5℃/分で150℃まで昇温した際に得られる結晶融解ピーク温度(℃)<90℃
(2)JIS K7206に準拠し、荷重10N、昇温速度50℃/hで測定されたビカット軟化温度(℃)>40℃
【請求項2】
ゴム類がエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合ゴムであることを特徴とする請求項1記載の非互着性ゴム組成物ペレット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の芯材用組成物を、ダイスを有する押出機又はカレンダーロールによりシート状に成形し、熱可塑性ポリマーフィルムを芯材シートの上下表面に貼合し、概積層シートを賽の目状に切断することを特徴とする非互着性ゴム組成物ペレットの製造方法。
【請求項4】
芯材用組成物を押出機で混練し、熱可塑性ポリマーと多層押出してシート状に成形、概積層シートを賽の目状に切断することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非互着性ゴム組成物ペレットの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の非互着性ゴム組成物ペレットに少なくとも加硫剤を加え混練し、成形、加硫して得られる加硫ゴム製品の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の非互着性ゴム組成物ペレットに、少なくとも加硫剤と発泡剤を加え混練し、成形、発泡、加硫して得られる加硫スポンジゴム製品の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載の非互着性ゴム組成物ペレットと、少なくとも加硫剤とを押出機で混練し、成形、加硫を連続で行うことを特徴とする加硫ゴム製品の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2記載の非互着性ゴム組成物ペレットと、少なくとも加硫剤、発泡剤とを押出機で混練し、成形、発泡、加硫を連続で行うことを特徴とする加硫スポンジゴム製品の製造方法。
【請求項9】
請求項5又は請求項7記載の製造方法で得られた加硫ゴム製品。
【請求項10】
請求項6又は請求項8記載の製造方法で得られた加硫スポンジゴム製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−62255(P2007−62255A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253212(P2005−253212)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】