説明

非対称CSCT

本発明によると、放射線検出器がスキャナの扇ビーム面に対して非対称に構成される非対称収集システムが使用される。有利には、これは、回転軸の方向における所定の検出器高さに対して散乱角度範囲を増大することを可能にすることができる。更に、これは、結合された体積吸収分布再構成及び後のコヒーレント散乱CT再構成に対して最適なデータフローを可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇ビームが関心の対象に当てられるコヒーレント散乱(coherent-scatter)コンピュータ断層撮影法(CSCT)の分野に関する。特に、本発明は、関心の対象を検査するCSCT装置、関心の対象を検査する方法及びCSCT装置を動作するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許広報US4751722号は、ビームの方向に対して1°ないし12°の角度内のコヒーレント散乱放射線の角度分布のレジストレーションの原理に基づく装置を記載している。米国特許公報US4751722号に記載されているように、弾性散乱放射線の主な部分は、12°未満の角度内に集中しており、前記散乱放射線は、明確な最大値を持つ特徴的な角度依存性を持ち、前記明確な最大値の位置は照射される物質自体により決定される。小さな角度におけるコヒーレント散乱放射線の強度の分布は、前記物質の分子構造に依存するので、(従来の透光テスト(transillumination)又はCTでは区別されることができない)等しい吸収能力を持つ異なる物質は、各物質に典型的なコヒーレント放射線の角度散乱の強度の分布によって区別されることができる。
【0003】
異なる対象材料を区別するためにこのようなシステムの改良された能力により、このようなシステムは、医療又は工業分野でより多くの応用を見つける。
【0004】
低角度散乱の主要な成分は、コヒーレント散乱である。コヒーレント散乱は、散乱サンプルの原子配置に依存する干渉効果を示すので、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)は、原理的に、2次元対象断面を横切る組織の分子構造における空間的変化を撮像する高感度な方法である。
【0005】
Harding他、“Energy-dispersive x-ray diffraction tomography” Phys. Med. Biol., 1990, Vol.35, No.1, 33-41は、多色性(polychromatic)放射線による対象内で励起されたコヒーレントX線散乱の固定角度におけるエネルギ解析に基づく断層撮影法である、エネルギ分散型X線回折断層撮影法(EXDT)を記載している。この方法によると、放射線ビームは、適切な開口システムを使用して作成され、鉛筆の形を持ち、したがってペンシルビームとも称される。ペンシルビーム源の反対側には、エネルギ解析に適した1つの検出器素子が、関心の対象により変更されたペンシルビームを検出するために配置される。
【0006】
CTと組み合わせた2次元検出器及び扇ビームの一次ビームを使用するコヒーレント散乱セットアップは、米国特許公報US6470067B1号に記載されている。多色性線源と組み合わせた角度分散セットアップの欠点は、ぼやけた散乱関数であり、これは、例えばSchneider他、“Coherent Scatter Computed Tomography Applying a Fan-Beam Geometry” Proc. SPIE, 2001, Vol.4320, 754-763に記載されている。
【0007】
医療用撮像又は非破壊試験の分野で競争力のあるモダリティになるために、実装される再構成アルゴリズムは、よい画質及び短い再構成時間の両方を保証するべきである。
【0008】
これまで、扇ビームCSCTで収集された投影データは、例えば代数的再構成法(ART)の助けで再構成される。ARTは、例えば、J. A. Grant他“A reconstruction strategy suited to x-ray diffraction tomography”, J.Opt. Soc. Am A12, 291-300 (1995)により高度に多用途であることが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改良されたCSCTシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載される本発明の例示的実施例によると、放射線源及び放射線検出器レイを有し、関心の対象を検査するCSCT装置が提供される。前記放射線源は、動作中に扇形放射線ビームを生成するように適合される。本発明のこの例示的実施例の一態様によると、前記放射線検出器レイは、前記扇形放射線ビームに関して非対称に構成されている。
【0011】
有利には、これは、放射線検出器アレイのサイズを減少する又はより小さな放射線検出器アレイを使用することを可能にすることができ、欠陥のある検出器素子の確率は前記放射線検出器アレイに設けられた検出器素子の数と共に増加するので、前記放射線検出器アレイの検出器素子に欠陥がある確率を減少する。更に、これは、より小さな放射線検出器アレイが使用されることができるので、前記CSCT装置のコストを減少することを可能にすることができる。
【0012】
例えば、CSCT装置に対して、前記放射線源及び前記放射線検出器が回転軸の周りで前記関心の対象の周りを回転する。−検出器面に対する−散乱事象の高さに依存して、散乱光子が前記検出器において測定されることができる−一次放射線の扇を含む面に対する−距離は増加し得る。したがって、測定され得る散乱角度は増加されることができる。
【0013】
請求項2に記載される本発明の他の例示的実施例によると、前記放射線検出器アレイは、スライス面が前記放射線検出器アレイと前記放射線検出器アレイの片側で交差するように構成される。特に、請求項3の例示的実施例に記載されるように、前記放射線検出器は、前記スライス面が、走査方向に前記放射線検出器アレイの幾何学的中心からオフセットされた前記放射線検出器アレイの部分において前記放射線検出器アレイと交差するように構成される。
【0014】
換言すると、前記放射線検出器アレイは、スキャナが移動する場合に、透過扇、即ち前記関心の対象を透過した放射線が、前記放射線検出器アレイの片側に衝突するように構成される。
【0015】
有利には、これは、初めに透過画像のような透過データをを決定し、前記透過データ又は透過画像を散乱測定に対する吸収補正に使用することを可能にすることができる。前記散乱測定は、前記関心の対象により前記扇ビームのスライス面の外に散乱された放射線の測定に関する。
【0016】
請求項4に記載される本発明の他の例示的実施例によると、前記放射線検出器は、複数の検出器ラインを有する。前記扇形放射線ビームは、前記関心の対象の透過後に前記放射線検出器レイに衝突するときに前記複数の検出器ラインの少なくとも2つの検出器ラインの幅を持つ。これにより、前記複数のラインの少数ラインが、前記関心の対象を透過した一次放射線を測定し、前記放射線検出器アレイに設けられた前記複数の検出器ラインの他のラインが散乱放射線を測定する。
【0017】
請求項5に記載される本発明の他の例示的実施例によると、前記放射線検出器アレイの第1の部分が円錐ビームデータ収集に使用され、前記放射線検出器の第2の部分が散乱放射線測定に使用される。有利には、両方の測定の組み合わせが、改良された画質を可能にすることができる。更に、これは、前記関心の対象を走査するのに要する走査時間を減少することを可能にすることができる。
【0018】
請求項6ないし9は、本発明の他の例示的実施例を提供する。
【0019】
請求項10に記載される本発明の他の例示的実施例によると、関心の対象を検査する方法が提供され、これによると、放射線源は、扇形放射線ビームを生成するように作動される。この場合、前記関心の対象により減衰された一次放射線及び前記関心の対象により散乱された散乱放射線の測定は、前記扇形放射線ビームに対して非対称に構成された放射線検出器を用いて実行される。
【0020】
請求項11及び12は、本発明による方法の他の例示的実施例を提供する。
【0021】
請求項13に記載される本発明の他の例示的実施例によると、CSCT装置を動作するコンピュータプログラムが提供され、ここで前記コンピュータプログラムが前記CSCT装置のプロセッサにおいて実行される場合、前記コンピュータプログラムは、例えば請求項10に記載の本発明による方法のステップを前記CSCTに実行させる。本発明によるコンピュータプログラムは、好ましくは、前記CSCT装置のプロセッサのワーキングメモリにロードされる。前記コンピュータプログラムは、CD−ROMのようなコンピュータ読取可能媒体に記憶されることができる。前記コンピュータプログラムは、WorldWideWebのようなネットワーク上に提示されることもでき、このようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされることができる。
【0022】
非対称な収集システム設計がコヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法に使用されることが、本発明の例示的実施例の要点と見なされることができる。特に、前記放射線検出器アレイは、扇ビーム面又は前記放射線ビームのスライス面の中心に合わせられていないが、この面に関して非対称に構成される。特に、前記放射線検出器アレイは、前記関心の対象を貫通する一次放射線ビームが、前記関心の対象がスキャナを通って移動される方向の反対方向、即ち走査方向と反対の方向に前記放射線検出器の第1の少数の検出器ラインの1つ又は第1の検出器ラインに衝突するように構成される。第一に、これは、回転軸の方向における所定の検出器高さに対する散乱角度範囲を増大することを可能にする。第二に、例えば、螺旋形データ収集が使用され、前記透過扇が前記検出器の前記スキャナが移動する側にある場合、結合された体積吸収分布再構成及び後のコヒーレント散乱CT再構成に対するデータフローは最適である。換言すると、透過画像が生成され、コヒーレント散乱CT再構成に必要とされる吸収補正に対して使用されることができる。本発明のこの例示的実施例の態様によると、前記扇形ビームは、前記放射線検出器アレイに衝突する場合に複数の検出器ラインをカバーする幅を持つことができ、これは、前記検出器の一部が半円錐ビームデータ収集に使用されることができ、同時に前記検出器の他の部分が散乱測定に使用されることができることを可能にする。
【0023】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【0024】
本発明の例示的実施例は、以下の図面を参照して以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明によるコンピュータ断層撮影装置の本発明の例示的実施例を示す。この例示的実施例を参照して、本発明は、手荷物内の爆発物のような危険な物質を検出する手荷物検査における応用について説明される。しかしながら、本発明は手荷物検査の分野における応用に制限されないが、例えば医療的応用における骨撮像又は組織の種類の識別のような他の医療又は産業的応用分野において使用されることもできる。
【0026】
図1に描かれたコンピュータ断層撮影装置は、扇ビームコヒーレント散乱コンピュータ断層撮影装置(CSCT)である。図1に描かれたコンピュータ断層撮影装置は、回転軸2の周りで回転可能なガントリ1を有する。ガントリ1はモータ3を用いて駆動される。参照符号4は、X線源のような放射線源を示す。
【0027】
参照符号5は、放射線源4から放射された放射線ビームを円錐形放射線ビーム6に形成する第1の開口システムを示す。更に、ダイアフラム又はスリットコリメータからなる他の開口システムが設けられる。開口システム9は、放射線源4から放射された放射線が扇ビーム11に形成されるようなスリット10の形式を取る。本発明のこの例示的実施例の変形例によると、第1の開口システム5は省略されてもよく、第2の開口システム9のみが設けられてもよい。
【0028】
扇ビーム11は、ガントリ1の中心に、即ち前記コンピュータ断層撮影装置の検査領域に配置された手荷物7を貫通し、検出器8に衝突するように向けられる。図1からわかるように、検出器8は、ガントリ1において、扇ビーム11のスライス面が検出器8の行又はライン15と交差するように放射線源4の反対に配置される。図1に描かれた検出器8は、複数の検出器素子を夫々有する検出器ライン15を含む4つの検出器ライン30を有する。検出器ライン30は、扇ビーム11の面に平行、即ち扇ビーム11のスライス面又は扇ビーム面に平行に配置される。検出器ライン30は、互いに平行に配置される。
【0029】
如何なる数の検出器ラインが設けられてもよいことに注意すべきである。検出器ライン30の数の増加は、走査時間を減少することができる。
【0030】
図1からわかるように、検出器8は、扇ビーム11の扇ビーム面に対して非対称に構成される。換言すると、扇ビーム11は検出器8の中心に衝突しないが、検出器8の中心に対してオフセットを持つようにして検出器8に衝突する。換言すると、ライン15は検出器8の中心ラインではないが、前記中心からオフセットされ、即ち検出器8の幾何学的中心から距離を隔てて配置される検出器8の前記複数の検出器ラインの1つのラインである。また、検出器ライン15が検出器8の幾何学的に真ん中のラインに平行であるが、距離を隔てて配置されると記載されることができる。
【0031】
検出器8は、手荷物7がコンベヤベルトにおいて前記スキャナを通って移動される方向32に反対の方向において扇ビーム11が検出器8の第1のライン15に衝突するように構成される。換言すると、検出器8は、ガントリ1において、前記放射線源により生成される扇ビーム11が、走査方向32、即ち手荷物7が扇ビーム面を通って移動される方向において検出器8の最後の検出器ライン15に衝突するように放射線源4の反対側に構成される又は向けられる。
【0032】
好ましくは、特に図1に描かれるような螺旋形データ収集が使用され、透過ビーム、即ち扇ビーム11が検出器8の走査が移動する側にある場合に、例えば、ここに参照により組み込まれるW. A. Kalender “Computed Tomography”, ISBN 3-89578-081-1, (2000)に記載されたような結合された体積吸収分布再構成、及びここに参照により組み込まれる欧州特許広報EP03100120.9号に記載されるこの後のコヒーレント散乱CT再構成に対するデータフローは、有利である。主に、前記関心の対象を貫通する間に前記関心の対象により減衰された放射線に関する検出器8の読み出しから生成される透過画像は、主として、前記関心の対象により散乱される散乱放射線に関する読み出しが使用されるコヒーレント散乱CT再構成における減衰の寄与に対する補正に使用されることができる。
【0033】
例えば、本発明の一態様によると、一次放射線に基づく減衰の寄与に対する補正は、以下のように実行されることができる。
【0034】
以下、変数α及びβは、検出器8及び放射線源4の回転面におけるx軸に関する角度線源位置、並びにX線の扇ビーム11内の扇角度を示す。更に、l0は前記X線源から散乱中心までの距離である。
【0035】
因子A(α,β,0,l0)は、前記線源から相互作用点x0までの経路に沿った入射放射線の減衰を計上する。因子B(α,β,a,l0)は、出て行く放射線に対する類似した減衰である。本発明の一態様によると、特に、前記散乱放射線の経路に沿った減衰が散乱角度に独立であり、残留一次ビームの減衰に等しく、B(α,β,a,l0)=B(α,β,0,l0)であると仮定される。この仮定は、前記体積における吸収値が既知でない場合にのみ行われる。以前の透過再構成を含む螺旋形収集の場合、前記一次ビームの減衰は既知であり、B(α,β,a,l0)の直接的な計算に使用されることができる。
【0036】
これは、小さな散乱角度、即ちおよそ0°ないし5°の範囲の散乱角度の場合に当てはまる。また、これは、理想的な空間的解像度に対して当てはまるが、z軸に沿った減衰の強すぎない変化には当てはまらない。減衰補正に対して、透過強度Itrans及び中心面の検出器素子(即ち一次放射線検出器、検出器ライン15)は、単純な透過型CTの場合に考慮され、入射放射線の強度I0及び一定の幾何学的効率ECT(α,β,0)=A/G2を用いて、
trans(α,β,0,l0)=I0(α,β,0)A(α,β,0,l0)×B(α,β,0,l0)ECT(α,β,0)
である。ここでG及びAは、前記X線源から焦点が中心にある検出器までの距離及び単一の検出器素子の面積を夫々示す。
【0037】
これは、U. van Stevendaal他、“A reconstruction algorithm for coherent scatter computed tomography based on filtered back-projection”(Med. Phys. 30, 9, September 2003)による再構成アルゴリズムに対して入力される散乱投影データPD(α,β,a)を導き、
【数1】

であり、但し全体の効率ξ(α,β,a,l0)=Eeff(α,β,a,l0)/ECT(α,β,0)、即ち
【数2】

であり、ここでEeff(α,β,a,l0)は、面外(off-plane)検出器素子に対する幾何学的効率因子である。
【0038】
有利には、コヒーレントに散乱されたX線の投影データは、減衰の寄与に関して補正されることができる。更に、全体の効率は、前記投影データにより正確に重み付けするために導入される。
【0039】
図1からわかるように、検出器8は、複数のシンチレータセルからなる複数の検出器ラインからなる検出器アレイであってもよい。
【0040】
開口システム5及び9の開口は、手荷物7の走査される領域が扇ビーム11内にあり且つ検出器8が扇方向に完全な走査領域をカバーするように検出器8の寸法に適合される。有利には、これは、手荷物7に当てられる不要な余剰放射線を防ぐことを可能にする。手荷物7の走査の間、放射線源4、開口システム5及び9、並びに検出器8は、矢印16により示される方向にガントリ1に沿って回転される。放射線源4、開口システム5及び9並びに検出器8を有するガントリ1の回転のために、モータ3は、計算ユニット18に接続されたモータ制御器17に接続される。
【0041】
図1において、手荷物7は、コンベヤベルト19上に配置される。手荷物7の走査中に、前記ガントリは、回転面を規定する回転軸2の周りで手荷物7の周りを回転すると同時に、コンベヤベルト19は、走査方向32に沿ってガントリ1の回転軸2に並行に手荷物7を移動する。これにより、手荷物7は、扇ビーム11を通って、即ちスライス面を通って移動される。更に、コンベヤベルト19上の手荷物7及びガントリ1の組み合わされた運動により、手荷物7は、螺旋形走査経路に沿って走査される。コンベヤベルト19は、単一のスライスを測定する走査中に停止されることもできる。
【0042】
検出器8は計算ユニット18に接続される。計算ユニット18は、検出結果、即ち検出器8の検出器素子からの読み出しを受け、検出器8から、即ち検出器ライン30からの走査結果に基づいて走査結果を決定する。
【0043】
図1に描かれた構成において、検出器ライン15は、前記関心の対象、即ち手荷物7により減衰された一次放射線を測定する。残りの検出器ライン30は、散乱放射線、即ち手荷物7により扇ビーム面11の外に散乱された放射線を測定する。したがって、検出器ライン15は、前記一次放射線、即ち手荷物7により引き起こされた減衰を測定するのに対し、残りの3つの検出器ラインは、手荷物7から散乱された前記散乱放射線を測定する。更に、計算ユニット18は、モータ3及び20又はコンベヤベルト19を用いてガントリ1の運動を調整するためにモータ制御ユニットと通信するように適合される。
【0044】
計算ユニット18は、更に、検出器8からの読み出しに基づいて手荷物7内の爆発物の検出に対して適合されてもよい。これは、前記検出器ラインの読み出しから散乱関数を再構成し、以前の測定の間に決定された爆発物の特徴的な測定値を含む表と比較することにより自動的に行われることができる。計算ユニット18が、検出器8から読み出された測定値が爆発物の特徴的な測定値と一致すると決定する場合、計算ユニット18は、ラウドスピーカ21を介して自動的に警報を出力する。
【0045】
有利には、図1に描かれた構成は、回転軸2の方向における−所定の検出器高さに対し−、即ち所定の幅を持つ所定数の検出器ライン30に対し、前記スキャナにより検出可能な散乱角度αを増加することを可能にすることができる。散乱角度αは、検出器ライン15に衝突する扇ビーム11の放射線、即ち前記一次放射線の面と、手荷物7における前記放射線の散乱により引き起こされる散乱放射線との間の角度として定義される。これは、更に図2及び3からもわかる。
【0046】
更に、図1のように螺旋形データ収集が使用され且つ前記スキャナが移動する場合に透過扇、即ち扇ビーム11が前記検出器の片側に衝突する構成において、結合された体積吸収分布再構成及び後のコヒーレント散乱CT再構成に対するデータフローは最適である。これは、一次透過から決定される透過画像が、前記散乱放射線を用いる他の計算の前に生成されることができ、この結果、前記透過画像が上述のように吸収補正に使用されることができるという事実による。
【0047】
図1に描かれたCSCTスキャナを用いて実行されることができる動作、特に、計算ユニット18を用いて実行される計算は、図2及び3を参照して以下に更に詳細に説明される。図2及び3の後の記載において、図1と同じ参照符号は、図2及び3における同じ又は対応する要素を示すために使用される。
【0048】
図2は、本発明を更に説明するために、図1のCSCTスキャナの幾何学的構成を描く単純化された概略的表現図を示す。
【0049】
図2に描かれるように、X線源4により放射される透過放射線(開口システム5及び9は明確性のために省略されている)は、手荷物7を貫通し、手荷物7を通って、最終的に検出器8のライン15に衝突する(図2は断面側面図を示す)。減衰された透過放射線は、図2からわかるように、ライン15及び30の延長線に垂直且つ走査方向32の反対の方向に見て検出器8の初めの検出器ラインである検出器ライン50により測定される。しかしながら、図2からわかるように、手荷物7を貫通する扇ビーム11の一部は、手荷物7において扇ビーム面11の外に散乱される。散乱放射線は、参照符号40で示される。散乱角度αは、扇ビーム面11内の前記透過放射線と散乱放射線40との間の角度として定義される。散乱放射線40は、散乱放射線検出器と称され且つ手荷物7を直接的に透過する放射線を測定しない検出器8の一部に衝突する。散乱放射線検出器ラインは、ラメラ(lamellae)を備えてもよい。
【0050】
有利には、図2から明らかなように、前記回転軸の方向における所定の高さ又は所定数の検出器ライン30及び15を持つ検出器8を考慮すると、散乱角度αの範囲は、検出器8が扇ビーム11において前記透過放射線に対して対称に構成される場合と比較して大幅に増加されることができる。
【0051】
更に、図2からわかるように、前記透過放射線又は前記透過扇は、システム運動方向、即ち走査方向32の反対の方向に見て検出器8の初めのライン15において測定されるので、透過画像は、後のコヒーレント散乱CT再構成において吸収補正を実行するために生成されることができる。
【0052】
本発明によると、検出器ライン15は、前記走査方向の反対方向における初めのライン又は走査方向32に見て最後のラインである必要はないことに注意すべきである。本発明によると、検出器8は、前記透過放射線又は扇ビーム面11が検出器8の幾何学的中心ラインに対してオフセットを持つようにして検出器8と交差するように構成される。検出器8の幾何学的中心ラインは、図2において参照符号38により示される。
【0053】
図3は、図1に描かれたCSCTスキャナに実装されることができる他の幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。図3は、検出器50の断面図を示す。
【0054】
図3からわかるように、複数の検出器ライン51を有する検出器50が設けられる。検出器50は、前記検出器ラインの一部53における検出器ライン51が前記関心の対象又は手荷物7を透過した一次放射線の直接的な透過放射線を検出するのに対し、検出器15の第2の部分における検出器ライン51が手荷物7により扇面の外に散乱された散乱放射線を検出するように扇ビーム11に対して非対称に構成される。
【0055】
更に、図3からわかるように、開口システム5及び9(単純及び明確にするために図3では省略されている)は、検出器50に衝突するときに検出器50の一部53における複数の検出器ライン51をカバーするようなサイズを持つ扇ビーム11が生成されるように適合される。この幅は、図3において参照符号52で示される。
【0056】
有利には、このような構成は、前記検出器の第1の部分53におけるライン51が半円錐ビームデータ収集に使用され、同時に検出器50の第2の部分54における検出器ライン51が散乱測定に使用されるような様式で使用されることができる。有利には、これは、改良された画質を可能にすることができ、更に、走査時間の減少を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明によるコンピュータ断層撮影装置の例示的実施例の概略的表現図を示す。
【図2】図1のコンピュータ断層撮影装置の幾何学的構成の概略的表現図を示す。
【図3】より大きな幅を持つ扇ビームが使用される図1のコンピュータ断層撮影装置の幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心の対象を検査するCSCT装置において、前記CSCT装置が、放射線源と、放射線検出器アレイとを有し、前記放射線源が扇形放射線ビームを生成するように適合され、前記放射線検出器アレイが前記扇形放射線ビームに対して非対称に構成されるCSCT装置。
【請求項2】
前記放射線ビームがスライス面における前記関心の対象を貫通し、前記放射線検出器アレイは、前記スライス面が前記放射線検出器アレイと前記放射線検出器アレイの片側で交差するように構成される、請求項1に記載のCSCT装置。
【請求項3】
前記関心の対象が、角度をなして前記スライス面と交差する走査方向に沿って前記スライス面に対して移動され、前記スライス面が前記放射線検出器アレイと交差する場所が、前記放射線検出器アレイの幾何学的中心に対してオフセットされ、前記場所が、前記走査方向において前記幾何学的中心からオフセットされる、請求項2に記載のCSCT装置。
【請求項4】
前記放射線検出器アレイが複数の検出器ラインを有し、前記扇形放射線ビームが、前記関心の対象を透過した後に前記放射線検出器に衝突するときに前記複数の検出器ラインの少なくとも2つの検出器ラインの幅を持つ、請求項1に記載のCSCT装置。
【請求項5】
前記放射線検出器アレイの第1の部分が円錐ビームデータ収集に使用され、前記放射線検出器の第2の部分が散乱放射線測定に使用される、請求項4に記載のCSCT装置。
【請求項6】
前記放射線源及び前記放射線検出器アレイが、前記関心の対象を受ける検査領域を通って延在する回転軸の周りで回転可能であり、前記放射線源が、走査中に前記放射線源の反対側に配置され、前記放射線源が、スライス面において前記検査領域内の前記関心の対象を貫通するように適合された扇形X線ビームを生成し、前記放射線検出器が、1つのラインに配置された複数の検出器素子を夫々有する複数の検出器ラインを含み、前記複数の検出器ラインが、前記スライス面に平行に配置され、前記関心の対象により減衰された一次放射線が前記複数の検出器ラインの第1のラインに衝突し、前記第1のラインが前記複数の検出器ラインの第2のラインではなく、前記第2のラインが前記放射線検出器アレイの幾何学的中心の近くに延在する、請求項1に記載のCSCT装置。
【請求項7】
前記第1のラインは、前記関心の対象が走査中に前記放射線検出器アレイに対して移動される方向において前記第1のラインから距離を隔てて配置される、請求項5に記載のCSCT装置。
【請求項8】
前記複数の検出器ラインの第3のラインが、前記関心の対象から散乱された散乱放射線を測定し、前記第3の検出器ラインは、前記関心の対象が走査中に前記放射線検出器アレイに対して移動される方向において前記第1の検出器ラインからオフセットされる、請求項5に記載のCSCT装置。
【請求項9】
前記第1のラインは、前記関心の対象が前記放射線検出器アレイに対して移動される方向において前記放射線検出器アレイの最後のラインである、請求項5に記載のCSCT装置。
【請求項10】
関心の対象を検査する方法において、前記方法が、扇形放射線ビームを生成するように放射線源を作動するステップと、前記扇形放射線ビームに対して非対称に構成された放射線検出器アレイを用いて前記関心の対象により減衰された一次放射線及び前記関心の対象により散乱された散乱放射線を測定するステップとを有する方法。
【請求項11】
前記放射線ビームがスライス面において前記関心の対象を貫通し、前記放射線検出器アレイは、前記スライス面が前記放射線検出器アレイと前記放射線検出器アレイの片側で交差するように構成され、前記関心の対象が、角度をなして前記スライス面と交差する走査方向に沿って前記スライス面に対して移動され、前記スライス面が前記放射線検出器アレイと交差する場所が、前記放射線検出器アレイの幾何学的中心ラインに対してオフセットされ、前記場所が、前記走査方向において前記幾何学的中心から距離を隔てている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線検出器アレイが複数の検出器ラインを有し、前記扇形放射線ビームは、前記放射線検出器アレイの第1の部分が円錐ビームデータ収集に使用され、前記放射線検出器の第2の部分が散乱放射線測定に使用されるように、前記関心の対象を透過した後に前記放射線検出器アレイに衝突する場合に前記複数の検出器ラインの少なくとも2つの検出器ラインの幅を持つ、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
CSCT装置を動作するコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータプログラムが前記CSCT装置のプロセッサ上で実行される場合に、前記コンピュータプログラムが、以下の動作、即ち扇形放射線ビームを生成するように放射線源を作動する動作と、前記扇形放射線ビームに対して非対称に構成された放射線検出器アレイを用いて関心の対象により減衰された一次放射線及び前記関心の対象により散乱された散乱放射線を測定する動作とを前記CSCT装置に実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508561(P2007−508561A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534864(P2006−534864)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051970
【国際公開番号】WO2005/034756
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】