説明

非接触式ICカード

【課題】 ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、且つICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができる非接触式ICカードを提供する。
【解決手段】 本発明の非接触式ICカードは、アンテナ9を備えた面と反対側の絶縁シート3の面に第3の樹脂シート4cを積層し、アンテナ9を備えた絶縁シート3の面に第2の樹脂シート4bを積層し、絶縁シート3にフリップチップ実装したICチップ1及び補強板2、並びにICチップ接合用接着剤6及び補強板接合用接着剤7を内包し、補強板2と第1の伝熱部16を接触させ、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を第2の樹脂シート4bに埋設し、第2の樹脂シート4bに第1の樹脂シート4aを積層し、一体化して作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式ICカードは、一般に、樹脂シートを積層して構成するカード基材内部に、非接触方式の通信機能を備えたICチップとアンテナを埋設して構成されており、ICカードの取り扱いにおいて、ICカードの曲げ、外部からの衝撃や圧力等でICチップが破損してしまう場合がある。特に、ICチップをトランスファーモールド等の樹脂封止をせず、アンテナを設けた絶縁シート(いわゆるインレットシート)に、ICチップを直接接合するフリップチップ実装で作製した非接触式ICカードでは、ICチップは、カード基材を構成する樹脂シートで覆われているだけであり、ICカードに対する曲げ等の外力からICチップを保護する保護手段が必要となる。
【0003】
ICカードに対する曲げ等の外力からICチップを保護する保護手段を備えた非接触式ICカードとしては、金属板及び樹脂板をICチップの面に設けて補強した非接触式ICカードが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−156265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、非接触式ICカードの処理速度の高速化に伴い、処理する情報量も飛躍的に増大した。これらの処理を行うICチップは、その動作時にICチップの回路内を流れる電流によってICチップ自体が発熱する場合があった。しかし、非接触式ICカードは、ICチップ及びICチップと電気的に接続するアンテナがカード表面に露出せず、熱伝導率が低い樹脂シートで覆われており、ICチップで発生した熱を放熱することが困難な為に、ICチップが高温になる可能性があり、ICチップの誤動作や、樹脂シートで構成されるカード基材の変形が発生する場合があるという問題があった。
【0006】
しかしながら、従来の非接触式ICカードでは、この問題に対する十分な対策が講じられていなかった。例えば、特許文献1等のような従来の非接触式ICカードでは、ICチップの補強を目的として金属板を設けているだけであり、ICチップの放熱が考慮されていなかった。
【0007】
更に、上記の金属板は、ICチップに貼り付けてカード基材に埋設される構成である為に、金属板の厚みを薄くする必要があった。また、金属板は、ICカードに対する曲げ等の外力からICチップを保護する目的で設けられており、高い剛性を備える必要があった。つまり、この金属板は、厚みが薄くとも、高い剛性を備えていなければならなかった。
【0008】
高い剛性を備えた金属板は、金属板の面積が大きいほど強い剛性を示す為、ICカードに曲げの外力が加わった際に、金属板の端部を覆うカード基材の表面にクラック等の損傷が発生する可能性があり、放熱に適した任意の大きさとすることができず、十分なICチップの放熱効果を得られない場合があった。
【0009】
上述のように、従来の非接触式ICカード、特に、フリップチップ実装で作製した従来の非接触式ICカードでは、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、且つICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができないという問題があった。
【0010】
本発明は、これら問題点を鑑みなされたものであって、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、且つICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができる非接触式ICカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ICチップのフリップチップ実装面と反対側の面に、ICチップの面を覆い、高い剛性を有する材料で構成された補強板を設け、更に、ICチップと補強板の周囲に熱伝導率の高い材料で構成された放熱板を設け、更に、熱伝導率の高い材料で構成され、補強板と放熱板を繋ぎ、補強板から放熱板への熱を伝える伝熱部を設けることで、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、且つICチップに発生した熱を補強板から伝熱部を介して放熱板へ伝えることにより、ICチップに発生した熱を、補強板、伝熱部、放熱板に拡散させ、放熱することができ、ICチップを冷却できる。
【0012】
更に、本発明では、伝熱部及び放熱板に、200〜400W/m・K(0℃)と、高い熱伝導率を有する金、銀、銅、アルミニウムの少なくとも1つで構成される金属板を用いることで、ICチップに発生した熱の放熱を確実にすることができる。
【0013】
更に、本発明では、補強板のICチップ非接合面、伝熱部の補強板非接触面、及び放熱板の片面あるいは両面に対し、面内に複数の凸部または凹部を設けることにより、表面積を増加させ、ICチップに発生した熱をより拡散させ、より放熱することができる。
【0014】
更に、本発明では、補強板に、ヤング率が190〜210GPaと、高い剛性を有するステンレス板を用いることで、ICカードに対する曲げ等の外力に対するICチップの補強を確実にできる。
【0015】
本発明によれば、非接触方式の通信機能を備えたICチップ及びアンテナを備え、絶縁シートに前記アンテナを設けてなるインレットシートに前記ICチップを実装し、前記ICチップと前記アンテナを電気的に接続し、前記インレットシートを樹脂シートで挟み、積層一体化して構成される非接触式ICカードであって、前記ICチップの実装面と反対側の面に補強板を設け、前記ICチップ及び前記補強板の周囲に放熱板を設け、前記補強板と前記放熱板との間に前記補強板から前記放熱板に熱を伝える伝熱部を設けたことを特徴とする非接触式ICカードが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記伝熱部及び前記放熱板は、金、銀、銅、アルミニウムの少なくとも1つで構成したことを特徴とする上記の非接触式ICカードが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記補強板、前記伝熱部及び前記放熱板は、少なくとも一方の面に複数の凸部または凹部を備えたことを特徴とする上記の非接触式ICカードが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記補強板は、ステンレス板で構成されることを特徴とする上記の非接触式ICカードが得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ICチップのフリップチップ実装面と反対側の面に剛性を有する材料で構成された補強板を設けることで、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、更に、ICチップ及び補強板の周囲に熱伝導率の高い材料で構成された放熱板及び伝熱部を設けることで、ICチップに発生する熱を放熱し、ICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができる非接触式ICカードが得られる。
【0020】
更に、伝熱部及び放熱板を金、銀、銅、アルミニウムの少なくとも1つで構成することで、放熱効果をより高め、補強板、伝熱部及び放熱板の少なくとも一方の面に複数の凸部を設けることで、放熱効果をより高め、補強板をステンレス板とすることで、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷防止を確実にすることができる非接触式ICカードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の非接触式ICカードの構成を説明する断面図。
【図2】本発明の非接触式ICカードの製造工程を説明する図。
【図3】本発明の非接触式ICカードに係る放熱板を説明する斜視図。
【図4】本発明の非接触式ICカードに係る伝熱部及び放熱板を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照し、本発明の非接触式ICカードについて説明する。
【0023】
まず、本発明の非接触式ICカードの構成について説明する。図1は、本発明の非接触式ICカードの構成を説明する断面図である。
【0024】
本発明の非接触式ICカードは、ICチップとの接続部であるアンテナ端部8を有するアンテナ9、及びアンテナ9を備えた絶縁シート3で構成するインレットシートと、アンテナ端部8と電気的に接合するバンプ5を備えたICチップ1と、絶縁シート3とICチップ1を接着するICチップ接合用接着剤6と、バンプ5を備えた面と反対側のICチップ1の面に設ける補強板2と、ICチップ1と補強板2を接着する補強板接合用接着剤7と、補強板2を挿入する凹部(図示せず)を有し、補強板2と接触してICチップ1の熱を伝える第1の伝熱部16と、ICチップ1の熱を放熱する放熱板10と、第1の伝熱部16及び放熱板10と接合し、ICチップ1の熱を第1の伝熱部16から放熱板10に伝える第2の伝熱部17と、非接触式ICカードのカード基体を構成する第1の樹脂シート4a、第2の樹脂シート4b及び第3の樹脂シート4cで構成される。
【0025】
本発明の非接触式ICカードは、アンテナ9を備えた面と反対側の絶縁シート3の面に第3の樹脂シート4cを積層し、アンテナ9を備えた絶縁シート3の面に第2の樹脂シート4bを積層し、絶縁シート3にフリップチップ実装したICチップ1及び補強板2等を第2の樹脂シート4bに内包し、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を第1の樹脂シート4aに埋設し、補強板2と第1の伝熱部16を接触させるようにして第2の樹脂シート4bに第1の樹脂シート4aを重ね、加圧し、加熱し、積層一体化して作製する。
【0026】
ICチップ1は、非接触式の通信機能を有するものであれば良く、何れの周波数を用いたものでも良く、適宜選択するのが良い。小型化等を考慮すれば、例えば、13.56MHz、960MHz、2.45GHz等の周波数を用いた非接触式の通信機能を有するICチップを用いることができる。
【0027】
バンプ5は、半田バンプや鍍金による金バンプ、あるいは金ワイヤーを使用したボールバンプが使用でき、適宜選択するのが良い。
【0028】
アンテナ9は、銅箔やアルミ箔などの金属箔をエッチング加工して作製したエッチングアンテナが良く、ICチップ1の通信周波数及び通信特性に合わせて、適宜選択するのが良い。
【0029】
絶縁シート3は、ポリ塩化ビニル(PVC)シート、共重合ポリエステル(PETG)シート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シート等を使用できる。特に、自己融着性を有するPVCシート及びPETGシートは、積層の際に接着シートを必要とせず、製造コストの観点で優れている。更に、環境保護の観点からハロゲンを用いない素材を選択するのであれば、PETGシートが適している。
【0030】
ICチップ接合用接着剤6は、ICチップ1と絶縁シート3の接着に適した接着剤であれば良く、例えば、異方性導電フィルム(ACF)、非導電性フィルム(NCF)、異方性導電ペースト(ACP)、非導電性ペースト(NCP)が使用でき、適宜選択するのが良い。
【0031】
補強板2は、ICチップ1の主面を覆い、ICチップ1の主面と同等の面積を有し、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぐ事のできる、高い剛性を有する板材であれば良く、ICカードの薄型化を考慮すれば、例えば、30μm程度の厚みで、ヤング率が190〜210GPa程度の高い剛性を有する板材が好ましく、ステンレス板等を用いることができる。
【0032】
補強板接合用接着剤7は、高い熱伝導性を有し、ICチップ1と補強板2の接着に適した接着剤であれば良く、例えば、高熱伝導性放熱シリコーン接着剤や、高熱伝導性エポキシ接着剤等が使用できる。
【0033】
第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10は、共に、高い熱伝導性を有する板材であれば良く、例えば、熱伝導率が200〜400W/m・K(0℃)程度の高い熱伝導性を有する板材が好ましく、金、銀、銅、アルミニウムの何れかの材質からなる板材、あるいはそれらの材質を組み合わせた板材が使用できる。尚、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10は、それぞれに異なる材質の板材を用い、第1の伝熱部16と第2の伝熱部17、第2の伝熱部17と放熱板10を溶接し、接合して作製しても良いが、製造コストを考慮すれば、一種類の板材を用い、予め設計した、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を接合して構成される形状に、打ち抜いて作製するのが好ましい。
【0034】
第1の伝熱部16は、補強板2の主面以上の面積を有した板材に、補強板2の主面と接する底面を有する凹部を切削して作製する。第1の伝熱部16は、面内に設ける凹部を貫通孔とし、補強板2の厚み方向の4つの面と、第1の伝熱部16の貫通孔の内壁の4面が接触するように構成しても良い。第1の伝熱部16の大きさは、ICカードの曲げ等の外力で発生する可能性がある、第1の伝熱部16と第1の伝熱部16を内包するカード基材との間の剥離を考慮し、適宜選択するのが良い。例えば、第1の伝熱部16の大きさは、補強板2の主面外形寸法より1〜2mm程度大きくした寸法とすることができる。尚、第1の伝熱部16の形状は、四角形、円形、その他の形状であっても良く、何れの形状でも同様の効果が得られる。
【0035】
放熱板10は、ICカードの曲げ等の外力で、放熱板10と放熱板10を内包するカード基材との間に剥離が発生する可能性を考慮し、放熱板10の大きさを適宜選択するのが良い。更に、放熱効率を考慮して複数個設けることが望ましい。例えば、放熱板10は、縦寸法が3mmであり、横寸法が3mmである板材を第1の伝熱部16の周りに4つ設けることができる。尚、放熱板10の形状は、四角形、円形、その他の形状であっても良く、何れの形状でも同様の効果が得られる。
【0036】
第2の伝熱部17は、ICカードの曲げ等の外力で、第2の伝熱部17と第2の伝熱部17を内包するカード基材との間に剥離が発生する可能性を考慮し、第2の伝熱部17の大きさを適宜選択するのが良い。第1の伝熱部16から放熱板10への伝熱効率を考慮すれば、第1の伝熱部16の一辺と放熱板10の一辺をつなぐ第2の伝熱部17を複数の小片で構成しても良い。尚、第2の伝熱部17の形状は、四角形、円形、その他の形状であっても良く、何れの形状でも同様の効果が得られる。
【0037】
第1の樹脂シート4a、第2の樹脂シート4b及び第3の樹脂シート4cは、ポリ塩化ビニル(PVC)シート、共重合ポリエステル(PETG)シート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シート等が使用できる。特に、自己融着性を有するPVCシート及びPETGシートは、積層の為の接着シートを必要とせず、製造コスト削減の観点で優れている。更に、環境保護の観点からハロゲンを用いない素材を選択するのであれば、PETGシートが適している。
【0038】
第1の樹脂シート4aは、予め、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を挿入する凹部をシート面内に設けるのが好ましい。尚、予め、熱プレス機等で加圧し、加熱して、凹部を設けていない第1の樹脂シート4aに、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を埋め込んでも良い。
【0039】
第2の樹脂シート4bは、予め、ICチップ1及び補強板2等を挿入する貫通孔をシート面内に設けるのが好ましい。尚、予め、熱プレス機等で加圧し、加熱して、貫通孔を設けていない第2の樹脂シート4bに、ICチップ1及び補強板2等を埋め込んでも良い。
【0040】
次に、本発明の非接触式ICカードの製造工程について説明する。図2は、本発明の非接触式ICカードの製造工程を説明する図であり、本発明の非接触式ICカードの分解断面図である。
【0041】
本発明の非接触式ICカードは、次のように作製される。図2のように、絶縁シート3にアンテナ9及びアンテナ端部8を設けてインレットシートを作製し、絶縁シート3のアンテナ端部8近傍にICチップ接合用接着剤6を設け、既存のフリップチップ実装の技術を用い、ICチップ1に設けたバンプ5をアンテナ端部8に接合するとともに、ICチップ接合用接着剤6を介してICチップ1を絶縁シート3に接着し、バンプ5を備えた面と反対側のICチップ1の面に補強板接合用接着剤7を設け、補強板接合用接着剤7を介して補強板2をICチップ1に接着する。
【0042】
次に、アンテナ9を備えた面と反対側の絶縁シート3の面に第3の樹脂シート4cを重ね、第2の樹脂シート4bにICチップ1及び補強板2等を挿入する貫通孔19を設け、絶縁シート3にフリップチップ実装したICチップ1及び補強板2等を貫通孔19に挿入するようにして、絶縁シート3に第2の樹脂シート4bを重ねる。
【0043】
次に、第1の伝熱部16の面内に補強板2を挿入する凹部18を設け、第1の伝熱部16の厚み方向の面に第2の伝熱部17を設け、第2の伝熱部17の厚み方向の面に放熱板10を設ける。
【0044】
次に、第1の樹脂シート4aの面内に、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を挿入する凹部20を設け、凹部20に第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を挿入し、第1の伝熱部16の凹部18に補強板2を挿入するようにして、第2の樹脂シート4bに第1の樹脂シート4aを重ね、加圧し、加熱し、積層一体化して作製する。
【0045】
上述のような構成により、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、ICチップに発生する熱を放熱し、ICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができる非接触式ICカードが得られる。
【0046】
次に、本発明の非接触式ICカードに係る補強板、伝熱部、放熱板に施す放熱効果を高める方法について、放熱板を基に説明する。図3は、本発明の非接触式ICカードに係る放熱板を説明する斜視図である。
【0047】
本発明の非接触式ICカードに係る放熱板10は、エッチング加工、切削加工、レーザー加工、プレス加工等の加工手段を用い、放熱板10の一方の面に複数の縦溝と複数の横溝を作製して格子状の溝を設け、面内に四角柱状の凸部15を複数個作製する。凸部15の形状は、三角柱、円柱、その他の形状であっても良く、何れの形状でも同様の効果が得られる。また、放熱板10の両面に凸部15を設けても良い。尚、凸部15を凹部としてもよい。
【0048】
放熱板10を上述のような構成とすることにより、放熱板10の表面積を増加させ、ICチップに発生した熱をより拡散させ、より放熱することができる非接触式ICカードが得られる。尚、図1に示す、補強板2のICチップ非接合面、第1の伝熱部16の補強板非接触面、及び第2の伝熱部17の片面あるいは両面に対しても、上述のように、面内に凸部15(凹部でもよい)を設ける構成とすることにより、表面積を増加させ、ICチップに発生した熱をより拡散させ、より放熱することができる非接触式ICカードが得られる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
図2に示すように、厚みが200μmであり、長さ寸法が2mmであり、幅寸法が2mmであり、無線通信の周波数が13.56MHzの非接触式ICカード用のICチップをICチップ1とし、ICチップ1の回路側の面にワイヤボンディング装置で直径20μmのボールバンプを作製し、バンプ5とした。
【0051】
次に、厚みが100μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートを絶縁シート3とし、絶縁シート3の片面に銅箔を貼り付けた後、エッチング加工をし、厚みが25μmで、13.56MHzの無線通信の周波数に対応したアンテナ9、及びアンテナ端部8を作製し、非接触式ICカード用のインレットシートを得た。
【0052】
次に、絶縁シート3に設けたアンテナ端部8を含むICチップ1実装領域に、非導電性ペースト(NCP)からなるICチップ接合用接着剤6を厚さ35μmで塗布し、ICチップ1のバンプ5を設けた面を絶縁シート3に向けてICチップ1実装領域に押し当て、バンプ5とアンテナ端部8を接合するとともに、ICチップ接合用接着剤6を介して絶縁シート3にICチップ1を接着し、絶縁シート3上に実装高さが235μmの樹脂ポッティングによるフリップチップ実装を行った。
【0053】
次に、厚みが30μmであり、長さ寸法が2mmであり、幅寸法が2mmであり、ヤング率が200GPaのステンレス板を補強板2とし、絶縁シート3上にフリップチップ実装されたICチップ1の非実装面に、高熱伝導性エポキシ接着剤からなる補強板接合用接着剤7を厚さ20μmで塗布し、補強板2を塗布した補強板接合用接着剤7に重ねて接着し、補強板を設けたICチップを備えた非接触式ICカード用のインレットシートを得た。
【0054】
次に、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10は、図4に示すようにして作製した。図4は、本発明の非接触式ICカードに係る伝熱部及び放熱板を説明する平面図である。
【0055】
図4に示すように、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10は、厚みが50μmであり、熱伝導率が400W/m・K(0℃)の銅板を打ち抜き加工し、長さ寸法が3mmであり、幅寸法が3mmの第1の伝熱部16と、第1の伝熱部16の4辺からそれぞれ延伸してなり、長さ寸法が1mmであり、幅寸法が0.5mmの第2の伝熱部17と、4つの第2の伝熱部17のそれぞれに繋がり、長さ寸法が1.5mmであり、幅寸法が1.5mmの放熱板10を得た。更に、第1の伝熱部16の片面中央に、深さが5μmであり、長さ寸法が2mmであり、幅寸法が2mmの凹部18を切削して設けた。
【0056】
次に、図2に示すように、作製した補強板を設けた非接触式ICカード用のインレットシートの非実装面に、厚みが200μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートからなる第3の樹脂シート4cを重ね、作製した補強板を設けたICチップを備えた非接触式ICカード用のインレットシートの実装面に、厚みが280μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートであり、長さ寸法が2.05mmであり、幅寸法が2.05mmの開口部を有する貫通孔19に面内に設けた第2の樹脂シート4bを、貫通孔19にICチップ1及び補強板2等を収納するようにして重ねた。
【0057】
次に、厚みが200μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートからなる第1の樹脂シート4aの片面を切削し、厚みが50μmであり、第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10の形状に沿った凹部20を設け、図4に示す第1の伝熱部16、第2の伝熱部17及び放熱板10を凹部20に挿入し、第1の伝熱部16に設けた凹部18に補強板2を挿入するようにして、第2の樹脂シート4bに第1の樹脂シート4aを重ね、0.5MPaで加圧し、120℃まで加熱した後、加圧したまま室温まで冷却し、積層一体化して、厚みが780μmのカード基材を作製した。
【0058】
次に、カード打ち抜き機を用いて、作製したカード基材を、長さ方向の寸法が85.60mmで、幅方向の寸法が54.00mmのカード状に打ち抜き、非接触式ICカードを作製した。ICカードの寸法は、JIS規格によれば、長さ方向の寸法は85.47mm以上85.72mm以下であり、幅方向の寸法は53.92mm以上54.03mm以下であり、厚さは680μm以上840μm以下である。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、実施例1の非接触式ICカードにおいて、図3に示すように、放熱板10の面に、レーザー加工機を用いて、深さが10μmであり、幅寸法が10μmの直線状の溝を20μm間隔で、放熱板10の長さ方向、及び幅方向にそれぞれ複数併設し、高さが10μmであり、長さ寸法が20μmであり、幅寸法がμmの底面を有する四角柱からなる凸部15を複数個設け、第1の伝熱部16及び第2の伝熱部17の面にも、放熱板10と同様にレーザー加工を行い、凸部15を複数個設けた以外は、実施例1と同様にして非接触式ICカードを作製した。
【0060】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で、第1の伝熱部、第2の伝熱部及び放熱板を用いない非接触式ICカードを作製した。実施例1の非接触式ICカードと同様にして、補強板(厚さ=30μm、長さ寸法=2mm、幅寸法=2mm)を設けたICチップを備えた非接触式ICカード用のインレットシートを作製した後、作製した補強板を設けた非接触式ICカード用のインレットシートの非実装面に、厚みが200μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートからなる第3の樹脂シートを重ね、作製した補強板を設けたICチップを備えた非接触式ICカード用のインレットシートの実装面に、厚みが280μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートであり、長さ寸法が2.05mmであり、幅寸法が2.05mmの開口部を有する貫通孔に面内に設けた第2の樹脂シートを、貫通孔にICチップ及び補強板等を収納するようにして重ねた。
【0061】
次に、実施例1の第1の伝熱部、第2の伝熱部及び放熱板を使用せず、第1の樹脂シートを、厚みが200μmであり、長さ寸法が200mmであり、幅寸法が100mmのPETGシートに変更し、第2の樹脂シートに第1の樹脂シートを重ね、0.5MPaで加圧し、120℃まで加熱した後、加圧したまま室温まで冷却し、積層一体化して、厚みが780μmのカード基材を作製した。
【0062】
次に、カード打ち抜き機を用いて、作製したカード基材を、長さ方向の寸法が85.60mmで、幅方向の寸法が54.00mmのカード状に打ち抜き、非接触式ICカードを作製した。
【0063】
(比較例2)
比較例2では、放熱効果を目的とし、比較例1の非接触式ICカードに用いた補強板の寸法を、長さ寸法が3mm、幅寸法が3mmに変更し、比較例1の非接触式ICカードに用いた第2の樹脂シートに設けた貫通孔の開口部の寸法を長さ寸法が3mmであり、幅寸法が3mmに変更した以外は、比較例1と同様にして非接触式ICカードを作製した。
【0064】
(連続動作試験評価)
作製した非接触式ICカードに対して、リーダーライタから全メモリ領域の書き換えを連続して実施し、1分後、1時間後、24時間後、48時間後において、ICチップを埋設した部分の非接触式ICカードのカード表面温度を測定し、その結果を表1に記載した。更に、ICチップをフリップチップ実装し、ICチップが露出した状態の非接触式ICカード用のインレットシートを、作製した非接触式ICカードの放熱効果を比較評価する為の基準サンプルとし、非接触式ICカードと同様に、リーダーライタから全メモリ領域の書き換えを連続して実施し、1分後、1時間後、24時間後、48時間後におけるICチップの表面温度を測定し、その結果も表1に記載した。
【0065】
【表1】

【0066】
評価の結果、表1に示すように、基準サンプルは、1時間後に40℃となり、24時間後に48℃となり、48時間後に55℃となるのに対して、実施例1は、1時間後の温度測定で38℃と、基準サンプルの温度とほぼ等しい温度になっており、放熱が効率よく行われた。更に、実施例1は、48時間後の温度が47℃と、基準サンプルの温度より7℃低く、放熱効果によりICチップを冷却することができた。
【0067】
実施例2は、1時間後の温度測定で38℃となっており、基準サンプルの温度とほぼ等しい温度になっており、放熱が効率よく行われた。更に、実施例2は、48時間後の温度が45℃と、基準サンプルの温度より10℃低く、実施例1よりも優れた放熱効果を示し、ICチップをより冷却することができた。
【0068】
比較例1及び比較例2は、1時間後の温度測定が約30℃となっており、ICチップの放熱が不十分である。更に、比較例1及び比較例2は、48時間後の温度が約60℃と、基準サンプルの温度より5℃高く、ICチップで発生する熱がカード基材に蓄熱され、ICチップがより高い温度に晒された。
【0069】
(強度試験評価)
作製した非接触式ICカードに対して、JISX6305に基づいた、2000回連続のICカードの曲げ試験をカード10枚の試料毎に実施し、カード基材の外観異常(カード表面のクラック、変形、剥離)、及び通信不能(ICチップの損傷)の発生を確認して評価し、その結果を表2に記載した。
【0070】
【表2】

【0071】
評価の結果、表2に示すように、実施例1及び実施例2では、曲げ試験によるカード基材の外観異常及び通信不能の発生がなく、実施例1及び実施例2は、ICカードに対する曲げの外力からICチップを保護することができた。
【0072】
比較例1では、曲げ試験によるカード基材の外観異常及び通信不能の発生がなく、比較例1は、ICカードに対する曲げの外力からICチップを保護することができた。しかし、比較例2では、カード基材の損傷が3枚発生し、通信不能が2枚発生しており、ICカードに対する曲げの外力からICチップを保護することができなかった。
【0073】
上記の比較より、従来の技術による比較例1は、曲げの外力からICチップを保護することができたが、ICチップの発生する熱を放熱することができず、放熱効果を目的として比較例1の補強板を大きくした比較例2は、曲げの外力からICチップを保護することができず、十分な放熱効果も得られなかったが、本発明に係る実施例1及び実施例2によれば、ICカードに対する曲げ等の外力によるICチップの損傷を防ぎ、ICチップに発生する熱を放熱し、ICチップの発熱による誤動作、及びカード基材の変形を防ぐことができた。
【0074】
以上、図面を用いて本発明の実施例を説明したが、本発明は、この実施例に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当事者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1 ICチップ
2 補強板
3 絶縁シート
4a 第1の樹脂シート
4b 第2の樹脂シート
4c 第3の樹脂シート
5 バンプ
6 ICチップ接合用接着剤
7 補強板接合用接着剤
8 アンテナ端部
9 アンテナ
10 放熱板
15 凸部
16 第1の伝熱部
17 第2の伝熱部
18 凹部
19 貫通孔
20 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触方式の通信機能を備えたICチップ及びアンテナを備え、絶縁シートに前記アンテナを設けてなるインレットシートに前記ICチップを実装し、前記ICチップと前記アンテナを電気的に接続し、前記インレットシートを樹脂シートで挟み、積層一体化して構成される非接触式ICカードであって、前記ICチップの実装面と反対側の面に補強板を設け、前記ICチップ及び前記補強板の周囲に放熱板を設け、前記補強板と前記放熱板との間に前記補強板から前記放熱板に熱を伝える伝熱部を設けたことを特徴とする非接触式ICカード。
【請求項2】
前記伝熱部及び前記放熱板は、金、銀、銅、アルミニウムの少なくとも1つで構成したことを特徴とする請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項3】
前記補強板、前記伝熱部及び前記放熱板は、少なくとも一方の面に複数の凸部または凹部を備えたことを特徴とする請求項1乃至2に記載の非接触式ICカード。
【請求項4】
前記補強板は、ステンレス板で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非接触式ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−108054(P2011−108054A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263432(P2009−263432)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】