説明

非晶質シリカ

【課題】化粧料に配合されたとき、持続して優れたソフトフォーカス性を付与することができる新規な非晶質シリカ及びその製造法を提供する。
【解決手段】X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18乃至50nmであり、電子顕微鏡で観察した個々の粒子の円形度が0.70乃至0.85であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異な一次粒子径を有する球状の非晶質シリカ及びその製造方法に関するものであり、ソフトフォーカス性を付与するために化粧料に配合される添加剤等として特に好適に使用される球状の非晶質シリカ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ファンデーション、ベースメーカー、口紅などの化粧料では、ソフトフォーカス性と呼ばれる性質が要求される。このソフトフォーカス性とは、例えば化粧料を肌に塗って化粧膜を形成したとき、肌は見えるが、肌の表面がぼやけ、肌が有しているシミ、ソバカス、小皺などが見えないような性質であり、具体的には、全透過光のうち、直進せずに拡散した光の割合が大きいことを意味する。
【0003】
このようなソフトフォーカス性を付与するための剤としては、非晶質シリカに代表される無機粉末が使用されており、例えば、特許文献1には、球形のシリカなどがソフトフォーカス性を付与するのに有効であることが報告されている。また、特許文献2及び3には、ポリアクリルアミドやカルボキシメチルセルロースを凝集成長剤として使用し、この凝集成長剤の存在下でケイ酸アルカリを酸で中和することにより製造された球状非晶質シリカが開示されており、特許文献2及び3には、この球状非晶質シリカを化粧料用の填材として使用することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−199839号公報
【特許文献2】特開平05−193927号公報
【特許文献3】特開平07−232911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来公知の化粧料では、無機粉末等の配合によりソフトフォーカス性が付与されていたとしても、その持続性に問題があった。即ち、肌に塗られて化粧膜を形成したとき、経時と共に、汗などにより、ソフトフォーカス性を付与している剤が、その光学的性質が変化したり肌から脱落したりしてしまい、ソフトフォーカス性が損なわれてしまうのである。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来公知の非晶質シリカとは異なる粒子特性を有しており、特に化粧料に配合されたときには、持続して優れたソフトフォーカス性を付与することができる新規な非晶質シリカ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ケイ酸アルカリを凝集成長剤の存在下で酸と反応させて非晶質シリカを製造するに際して、部分中和により非晶質シリカの粒状物を生成し、次いで、反応系中に残存する未中和のケイ酸アルカリを徐々に中和することにより、生成している非晶質シリカの粒状物上に非晶質シリカを析出させるという手法を採用することにより、従来公知の球状非晶質シリカに比して一次粒子径が大きい新規な非晶質シリカが得られ、しかもこの新規な非晶質シリカは、化粧料に配合されたときに優れたソフトフォーカス性を付与すると同時に、その持続性も優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明によれば、X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18乃至50nmであり、電子顕微鏡で観察した個々の二次粒子の円形度が0.70乃至0.85であることを特徴とする非晶質シリカが提供される。
【0009】
本発明の非晶質シリカにおいては、
(1)レーザ回折散乱法で測定した体積換算での中位径(D50)が1乃至10μmの範囲にあること、
(2)吸油量が40ml/100g以上であり、嵩密度が0.25〜0.70g/cmであること、
が好ましい。
【0010】
また、本発明の非晶質シリカは、ソフトフォーカス性付与剤として化粧料に配合されること、特に、ソフトフォーカス性付与剤として、0.1乃至10重量%の量で化粧料に配合することができるばかりか、樹脂用配合剤として各種の樹脂に配合することもできる。
【0011】
本発明によれば、また、
ケイ酸アルカリ水溶液に、エーテル化度が0.5乃至2.5のカルボキシメチルセルロース及び部分中和量の酸水溶液を混合し、
前記混合液を放置してのケイ酸アルカリの部分中和によってシリカ微細粒子を含むゲル体を形成し、
前記ゲル体を解砕して、前記シリカ微細粒子と未中和のケイ酸アルカリを含む水性スラリーを形成し、
前記水性スラリーに、未中和のケイ酸アルカリからケイ酸分の全量が析出するに足る量の酸水溶液を徐々に添加し、未中和のケイ酸アルカリをゆっくりと中和することにより、前記シリカ微細粒子上にシリカを析出させて該微細粒子を粒成長せしめ、
粒成長したシリカ粒子を含む前記水性スラリーに酸水溶液を添加して酸洗浄を行い、
次いで、ろ過、水洗及び乾燥を行うことにより粒成長したシリカ粒子を得ることを特徴とする非晶質シリカの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非晶質シリカは、部分中和で生成した球状の非晶質シリカの粒状物の上にさらなる中和反応によって非晶質シリカを析出させることにより製造されるため、X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18乃至50nmの範囲にあり、従来公知の球状非晶質シリカに比して大きく、且つその一次粒子が結合して形成されている二次粒子、即ち、電子顕微鏡により観察される二次粒子の円形度は、0.70乃至0.85の範囲にあり、真球状からやや変形した形状を有している。
【0013】
上記のような特性を有している本発明の非晶質シリカは、一般に、レーザ回折散乱法で測定した二次粒子の中位径が1乃至10μmの範囲にあり、高い吸油量(40ml/100g以上)と低い嵩密度(0.25〜0.70g/cm)を有しているため、例えば、化粧料に配合したとき、多数の粒子が存在する結果、光が多重散乱しながら化粧膜を透過することとなり、従って、透過光のうち拡散光が占める割合が多くなり、優れたソフトフォーカス性を付与することができる。また、高い吸油量を有していることに関連して、汗などを速やかに吸収し、この結果、肌の表面から脱落せず、化粧膜中に安定に存在し、持続して優れたソフトフォーカス性を付与することができるという利点を有している。
【0014】
さらに、本発明の非晶質シリカは、一次粒子がやや大きく且つ二次粒子が真球状からやや変形した形状を有しており、従来公知の球状非晶質シリカに類似しているため、樹脂用配合剤として、各種樹脂(例えばフィルム形成用の樹脂や塗料用の樹脂)に配合することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】各非晶質シリカを所定量添加して得たポリプロピレンフィルムの、HazeとSCOFのバランスを示す図である。
【図2】各非晶質シリカを所定量添加して得たポリプロピレンフィルムの、Clarityとブロッキング力のバランスを示す図である。
【図3】アミノアルキド樹脂塗料に、各非晶質シリカを所定量添加して得た塗液の、粘度と塗膜の60°グロス値のバランスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<非晶質シリカの製造>
本発明の非晶質シリカは、ケイ酸アルカリ水溶液に、凝集成長剤と共に、部分中和量の酸水溶液を混合し(反応液調製工程)、この混合液(反応液)を放置しての部分中和によってシリカ微細粒子を含むゲル体を生成せしめ(ゲル化工程)、このゲル体を解砕し、上記のシリカ微細粒子を含む水性スラリーとし(スラリー化工程)、次いで、得られた水性スラリーに、酸水溶液を徐々に添加し、該スラリー中に存在している未中和のケイ酸アルカリをゆっくりと中和して、シリカ微細粒子上にシリカを析出せしめて粒成長せしめ(粒成長工程)、次いで酸洗浄し(酸洗浄工程)、最後にろ過、水洗し、乾燥を行う(回収工程)ことにより製造される。
【0017】
1.反応液調製工程;
反応液調製工程において、ケイ酸アルカリ水溶液は、シリカ源として使用されるものである。このケイ酸アルカリは、下記式(1):
O・mSiO (1)
式中、Rは、Na、K等のアルカリ原子、特にNa原子であり、
mは、1乃至4の数、特に2.5乃至3.5の数である、
で表されるモル組成を有するものであり、一般に、ケイ酸ナトリウムの水溶液が使用される。
【0018】
上記のケイ酸アルカリの組成は、反応液(混合液)の安定性と生成する粒状物の収率や粒子サイズに影響を与え、例えば、mの値(SiOのモル比)が上記範囲よりも小さいと、部分中和粒子の析出がしにくくなり、収率が低下したり粒子形状や粒子形態が不揃いになったりし易く、また部分中和に多量の酸が必要になり好ましくない。一方、mの値が上記範囲よりも大きくなると、混合液の安定性が低下して粒子形態が球状から大きく外れたものとなったり、粒径分布もシャープでなくなったりする等の不都合がある。ケイ酸アルカリの濃度は、混合液中でのSiOとしての濃度が3乃至10重量%、特に4乃至8.5重量%の範囲となるようにするのがよい。
【0019】
また、凝集成長剤としては、前述した特許文献3に記載されている製造方法と同様、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記載することがある)が使用される。即ち、ケイ酸アルカリの部分中和に際して、CMCを凝集成長剤として共存させると、ケイ酸アルカリの中和物が、収率よく定形の球状粒子に生長するのである。
【0020】
上記のような凝集成長剤として使用されるCMCは、エーテル化度が0.5乃至2.5、特に0.8乃至2.0の範囲にあるものでなければならない。即ち、CMCは、セルロースの水酸基にカルボキシメチル基が導入されたセルロースエーテルであって、セルロースグリコール酸とも呼ばれている。理論的には、セルロース単位当り3個の水酸基全部をエーテル化したエーテル化度3のCMCを製造することも可能である。市販されている多くのCMCのエーテル化度はおおよそ0.5乃至1.0の範囲であり、最近では1.0以上のものも広く市販されている。一般に、CMCとはそのナトリウム塩であるナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na−CMC)をさす場合が多く、エーテル化度が上記範囲内であれば、このようなエーテル化度が高いものも本発明の目的に有利に使用できる。例えば、エーテル化度が上記範囲外のCMCを用いた場合には、ろ過性が極端に悪化して得られるシリカ粒子を回収することが困難となったり、或いは粒子形状が不揃いになったりし、物性のバラツキが大きくなるなどの不都合を生じてしまい、これは特許文献3と同様である。
尚、CMCのエーテル化度の値はCMC工業会発行の灰分アルカリ法により得られた値である。
【0021】
また、用いるCMCの重合度は、10乃至3000、好ましくは200乃至1000であるのがよい。重合度が高いと、粒状物の生成析出、ろ過分離が困難となる傾向があり、また、重合度が低いと、凝集成長剤としての機能が低く、高収率で定形の球状シリカの微細シリカを析出させることが困難となる傾向がある。
【0022】
さらに、CMCは水に溶解しやすいので、用いるに際しては粉末のまま添加してもよいが、あらかじめ水溶液にしてから使用する方が、取り扱い易い。
【0023】
本発明において、上記のようなCMCの添加量は、そのエーテル化度等によっても異なるが、一般に、ケイ酸アルカリ溶液中の全シリカ当り、SiO重量基準で1乃至100重量%、特に5乃至35重量%となる量とするのがよい。この添加量が少なすぎると十分な凝集成長作用が得られず、一方あまり多いと混合液の粘度が高くなる傾向があり、経済的にも不利となる。前述した如く、エーテル化度の上昇に比例して凝集成長性が高くなる傾向からすれば、エーテル化度が高ければCMCの添加量を少なめにすることができ、結果的に混合液の粘度を低めにすることができるものと言える。
【0024】
ケイ酸アルカリの部分中和に用いる酸としては、種々の無機酸や有機酸の水溶液が使用されるが、経済的見地からは、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を用いるのがよく、これらの内でも、粒状物の収率や、粒径及び形態の一様さの点で硫酸が最も優れている。均質な反応を行うためには、希釈水溶液の形で用いるのがよく、一般に1乃至15重量%の濃度の酸水溶液が好適である。
【0025】
また、ここで用いる酸水溶液の量は、ケイ酸アルカリを部分中和する量であり、完全に中和する量であってはならない。混合液(反応液)にケイ酸アルカリを完全に中和する量の酸水溶液を添加し、ケイ酸アルカリを完全に中和してしまうと、球状の非晶質シリカの微細粒子を生成し得るとしても、この球状非晶質シリカの微細粒子上に新たに非晶質シリカを析出させることができなくなってしまい、この結果、球状非晶質シリカの微細粒子を粒成長させることができず、一次粒子径が小さくなり且つ二次粒子が真球状からやや変形した粒子形状を有する本発明の非晶質シリカを得ることができなくなってしまうからである。
【0026】
従って、用いる酸水溶液の量は、最終的に得られる非晶質シリカの一次粒子径(X線小角散乱法)が18乃至50nm、好ましくは20乃至50nmの範囲となるような量であり、一般的には、ケイ酸アルカリに含まれる全てのケイ酸をシリカとして析出させるために必要な酸量の20乃至95%、特に30乃至80%で使用することが好ましい。この範囲内で、酸水溶液の量を多くするほど、シリカの微細粒子上に粒成長工程で析出するシリカの量が少なくなり、従って、最終的に得られるシリカの一次粒子径が小さくなる傾向があり、逆に、酸水溶液の量を少なくするほど、シリカの微細粒子上に粒成長工程で析出する非晶質シリカの量が多くなり、従って、最終的に得られる非晶質シリカの一次粒子径が大きくなる傾向があり、これを利用して、最終的に得られる非晶質シリカの一次粒子径を調整することができる。
【0027】
また、本発明においては、前述したCMCとの組み合わせで、凝集成長助剤、例えば水溶性無機電解質或いはCMC以外の水溶性高分子などを使用することもできる。
【0028】
水溶性無機電解質としては、水溶性であって、ゾル等に対して凝集作用を有する無機の電解質であれば任意のものを使用することができるが、周期律表第1族、第2族、第3族、第4族金属或いは他の遷移金属の鉱酸塩或いは有機酸塩が使用され、その適当な例は次の通りである。
アルカリ金属塩、例えばNaCl、NaSO等のアルカリ金属の鉱酸塩;
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の鉱酸塩;
塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸チタニル等の他の
水溶性金属塩;
などである。
【0029】
これらの内でも、アルカリ金属塩は好適な凝集成長助剤の一つである。というのは、上記アルカリ金属塩は部分中和やその後の中和に際して副生する成分であり、最終的に得られる粒状のシリカを分離したろ液中に含有されており、これを再使用して混合液に添加することにより、回収CMCとともに有効に再利用できるからである。一方、多価金属塩は1価金属塩に比してゾルに対する凝集作用が大きく、1価金属に比して少量の添加でも部分中和シリカの凝集成長作用が大である。従って、多価金属種の混入が許容される場合には、多価金属塩を使用することも許容される。
【0030】
また、CMC以外の水溶性高分子としては、CMCとの相溶性が良いノニオン系の高分子、例えば、澱粉、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビヤガム、トラガントガム、プリテイシュガム、クリスタルガム、セネガールガム、PVA、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール等を例示することができる。
【0031】
本発明では、上記のような凝集成長助剤をCMCと併用することにより、後述するゲル化工程でのゲル化速度を速め、さらには、生成する粒子の均斉度を高めることができる。このような凝集成長助剤の量は、一般に、ケイ酸アルカリ溶液中のSiO重量基準で0乃至100重量%、特に0乃至20重量%の範囲で使用するのがよい。
【0032】
上述した各成分を混合して得られる反応液を調製するに際して、各成分の添加順序には制限がなく、例えばケイ酸アルカリ水溶液に酸を加えた後、CMCを加えてもよく、また逆にケイ酸アルカリ水溶液にCMCを加えた後、酸を加えてもよい。これらを同時に加えてもよいことは当然である。凝集成長助剤を用いる場合には、この凝集成長助剤は、各成分を添加するための水性媒体として用いてもよく、或いは酸中に予め添加しておいてもよい。
【0033】
2.ゲル化工程;
上記のようにして各成分を十分混合して、均質化させた後(通常、0.5乃至20分程度)、この反応液を静置することにより、ケイ酸アルカリの一部が中和(部分中和)され、凝集成長剤に沿って中和物(非晶質シリカ)が房状に粒状に析出し、該反応液はヨーグルト状のゲル体となる。このゲル体中に析出している粒状物は、ケイ酸アルカリの中和物である非晶質シリカの一次粒子同士が架橋して連なった粒状物(二次粒子)であり、この一次粒子は極めて微細であり、二次粒子は球状に近い均斉な粒子である。
【0034】
このゲル化条件としては、一般に0乃至100℃、特に10乃至40℃の温度で1乃至50時間、好適には3乃至20時間程度の放置が適している。一般に温度が低い程、析出粒子の一次粒子径が小さくなり、温度が高い程、析出粒子の一次粒子径が大きくなる。
【0035】
3.スラリー化工程;
本発明では、上記のようなゲル体を生成せしめた後、これを解砕して、上記の非晶質シリカの微細粒子が分散され且つ未中和のケイ酸アルカリを含む水性スラリーとする。即ち、ヨーグルト状のゲル体のままでは、ゲル体中に存在している未中和のケイ酸アルカリを酸と均一に反応させることができないからである。
【0036】
解砕の程度は、ヨーグルト状のゲル体が流動性を示す程度に行えばよく、例えば攪拌羽等による攪拌によって剪断力を与えることにより行われ、通常、室温下で数分、攪拌を行えばよい。解砕の程度(剪断力)が強すぎると、二次粒子が壊れてしまい好ましくない。
尚、かかる水性スラリーのpH(25℃)は、部分中和の程度によって異なるが、一般的には11〜12程度である。
【0037】
4.粒成長工程;
本発明においては、上記のようにして得られた水性スラリーに、酸水溶液をさらに添加し、該スラリー中に存在している未中和のケイ酸アルカリを中和せしめる。ここで、重要な点は、酸水溶液を徐々に添加することにより、該スラリー中に含まれる球状の非晶質シリカの微細粒子上にシリカを析出させ粒成長させることにあり、これによって、X線小角散乱法による一次粒子径が大きくなり、且つ二次粒子の円形度が低下し、真球からやや変形した形状のシリカ粒子を得ることができるのである。
【0038】
例えば、前述した特許文献3の実施例12(後述する比較製造例7に相当)や比較製造例1では、一端ゲル体を生成せしめ、攪拌分散によってゲル体を解砕して水性スラリーとした後に酸水溶液を一気に添加しているが、このような手段では、水性スラリー中に含まれる未中和のケイ酸アルカリが中和されて該中和物であるシリカが析出するが、凝集成長剤の溶出が同時に生じるなどの理由により、このシリカは、先に生成しているシリカ微細粒子上に析出せず独立して生成してしまい、この結果、シリカ微細粒子の粒成長が認められず、不均斉な微細シリカ粒子が均斉な球状シリカ粒子に混合した形態のものが得られるに過ぎない。即ち、目的とする大きな一次粒子径を有し且つ真球状からやや変形した均斉なシリカ粒子を得ることができないのである。
【0039】
しかるに、本発明では、水性スラリーに酸水溶液を徐々に添加し、未反応のケイ酸アルカリの中和物であるシリカをゆっくりと析出させることにより、該シリカを先に生成しているシリカ微細粒子の上に析出せしめて粒成長させることができ、これによって、目的とする一次粒子径及び円形度のシリカ粒子を得ることができるのである。
【0040】
本発明において、この段階で使用する酸水溶液の量は、用いたケイ酸アルカリ中のケイ酸分の全量を析出させるために必要な量から部分中和のために用いた量を差し引いた量であり、具体的には、ケイ酸分の全量を析出させるために必要な量の5乃至80%、特に20乃至70%である。
また、上記のような酸水溶液の添加速度は、最終的に得ようとするシリカ粒子の一次粒子径や円形度によって適度な範囲に設定することができるが、上記の量の酸水溶液を0.25時間以上かけて添加すべきであり、特に0.25乃至30時間、特に0.5乃至15時間で添加が終了するように添加速度を設定するのがよい。また、このときの水性スラリーの温度は、10乃至100℃、特に10乃至40℃程度の範囲に調整しておくことが好ましく、酸水溶液の添加は、撹拌下で行うことが、均一なシリカ粒子を得る上で好ましい。
【0041】
また、用いる酸水溶液としては、前述した反応液の調製に用いた酸水溶液と同様のものを用いることができ、1乃至15重量%の濃度の酸水溶液、特に硫酸が好適に使用される。
【0042】
上記のようにして、酸水溶液を徐々に添加し、酸水溶液の添加終了とほぼ同時に、残存するケイ酸アルカリに含まれるケイ酸がシリカとして析出し、粒成長工程が完結する。また、添加終了後、必要により、反応液を10乃至40℃程度の温度で1時間ほど静置することにより熟成してもよい。
また、シリカの析出が完了したときのスラリーpHは、10乃至11程度である。これは、酸による中和によって全てのケイ酸が析出したときにも、反応液の調製に用いたケイ酸アルカリ中のアルカリ成分が60乃至80%、特に60乃至75%程度しか中和されておらず、未中和のアルカリイオンがスラリー中に存在しているためである。
【0043】
5.酸洗浄工程;
このようにしてシリカを完全析出させた後は、再び、攪拌下にスラリー中に残存する未中和のアルカリを中和する量の酸水溶液を添加し、生成したシリカ粒子を酸洗浄する。即ち、この酸洗浄により、シリカ粒子表面に付着しているNaイオン等のアルカリ金属イオンが溶出し、シリカ粒子中に含まれているCMCや凝集成長助剤と共にシリカ粒子から分離される。従って、この工程では、酸水溶液は、徐々に添加する必要は無く、一気に添加してもよい。
【0044】
この酸洗浄に用いる酸水溶液も、前述したケイ酸アルカリの中和に用いた酸水溶液と同種のものでよく、この添加量は、通常、粒成長したシリカ粒子を含むスラリーのpHが2.5乃至4程度となる量でよく、攪拌処理時間は0.5乃至120分程度である。pHが2.5より低いと、CMCが析出してしまい、ろ過がしにくくなる。一方、pHが4よりも高いとろ過時でのアルカリの除去が不十分となってしまう。
【0045】
6.回収工程;
酸洗浄後には、常法にしたがって、ろ過、水洗及び乾燥を行い、さらに、必要により、焼成を行い、水分を完全に除去した後、ジェットミルなどによる乾式粉砕によって所定の粒度に調整し、目的とする本発明の非晶質シリカ粒子を得ることができる。尚、ろ液には、酸及びCMC、さらには凝集助剤が含まれているため、このろ液を、そのまま反応液の調製に再利用することができる。
【0046】
<非晶質シリカ>
上記のようにして得られる非晶質シリカは、部分中和によって析出した球状の非晶質シリカの微細粒子の上に未中和のケイ酸アルカリの中和によって生成したシリカが析出しているため、そのシリカ粒子の一次粒子径は、粒成長によって増大しており、さらに、個々の二次粒子は、微細な一次粒子の集合体であり且つ真球形状からやや変形した形状を有している。そのため、X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18乃至50nmであり、一次粒子径がこのような範囲にある非晶質シリカは、これまで合成されていなかった。さらに電子顕微鏡で観察した個々の二次粒子の円形度は、平均して、0.70乃至0.85の範囲にあり、円形度は1よりやや低い。
【0047】
尚、この円形度は、粒子断面(投影面)から、下記式:
円形度=4π×(面積)/(周囲長)
により算出される。この値が1であるとき、該粒子は完全な真球状となる。従って、円形度の平均が0.70乃至0.85であることは、この粒子が真球に近いが、真球状からはやや変形していることを意味している。
【0048】
また、上記のようにして得られた本発明の非晶質シリカは、凝集成長剤としてCMCが使用されているため、一次粒子の集合体である二次粒子内部に空隙を有しており、吸油量が高く且つ嵩密度が小さいという性質も有している。この吸油量及び嵩密度は、ゲル化工程と粒成長工程で中和に使用される酸水溶液の量バランスを変えることによって、二次粒子径及び円形度を維持しながら、用途に応じて調整できる。例えば、ゲル化工程に使用される酸水溶液の量を多くするほど、シリカの微細粒子上に粒成長工程で析出するシリカの量が少なくなり、従って、最終的に得られる非晶質シリカの吸油量が大きく、嵩密度が小さくなる。逆に、ゲル化工程に使用される酸水溶液の量を少なくするほど、シリカの微細粒子上に粒成長工程で析出する非晶質シリカの量が多くなり、従って、最終的に得られる非晶質シリカの吸油量が小さく、嵩密度が大きくなる。これを利用して、最終的に得られる非晶質シリカの吸油量、嵩密度を調整することができる。一般的には、その吸油量は40ml/100g以上、特に60乃至250ml/100gの範囲に調整され、嵩密度は0.25乃至0.70g/cm、特に0.30乃至0.65g/cmの範囲に調整される。
【0049】
また、本発明の非晶質シリカは、上記のように吸油量が大きいことから理解されるように、多孔質であり、例えば比圧0.96において吸着した窒素の容積としての細孔容積は、一般に、0.1cm/g以上、特に0.1乃至1.5cm/gの範囲にある。さらに、BET比表面積は50乃至500m/g、特に80乃至400m/gの範囲にある。
【0050】
上記のような特性を有している本発明の非晶質シリカは、各種の基材(例えば樹脂)に分散配合されて使用される場合、通常、レーザ回折散乱法で測定した体積換算での中位径(D50)が1乃至10μmの範囲となる程度に粒度調整されていることが好ましく、特に粒径が10μm以上の粗粒分が2%以下となるように粒度調整されていることが好適である。
【0051】
<用途>
上述した方法によって製造される本発明の非晶質シリカは、一次粒子径がやや大きく且つ円形度が低く、球形からやや変形しており、低い嵩密度を有しているため、ソフトフォーカス付与剤として、各種の化粧料に配合してソフトフォーカス性を高めることができる。即ち、化粧料に配合したとき、多数の粒子が存在する結果、光が多重散乱しながら化粧膜を透過することとなり、従って、透過光のうち拡散光が占める割合が多くなり、優れたソフトフォーカス性を付与することができるのである。
【0052】
尚、このような本発明の非晶質シリカの光学特性は、後述する実施例に示されているように、全光線透過率(Tt)および拡散透過率(Td)により評価することができる。例えば、本発明の非晶質シリカは、全光線透過率が93%以上と高く、拡散透過率も45%以上と高く、これは、本発明の非晶質シリカが、ソフトフォーカス性を高める上で極めて有用であることを示している。
【0053】
また、本発明の非晶質シリカはやや球形から変形しているばかりか、吸油量が高く、このため、汗などを速やかに吸収するという特性も有している。この結果、肌の表面から脱落せず、化粧膜中に安定に存在し、持続して優れたソフトフォーカス性を付与するという利点も有している。例えば、粒子の円形度が、前述した範囲よりも高い真球状のシリカでは、肌に塗布したとき脱落しやすく、一方、前述した範囲よりも低い不定形のシリカでは、肌に塗布する際の伸びが悪くなり、化粧料の特性を低下させてしまう。
【0054】
上述した非晶質シリカは、板状体に比べて円形度の高い球形状であることから、化粧料に配合したとき、板状体より高い滑り性を付与することができるという利点もある。
【0055】
本発明の非晶質シリカをソフトフォーカス性付与剤として化粧料に配合するときには、配合する化粧料の種類によっても異なるが、化粧料中に少なくとも0.1乃至10重量%の量で配合することにより、目的とするソフトフォーカス性を付与することができ、且つ肌に塗ったときに持続してソフトフォーカス性を発現させることができる。
【0056】
即ち、化粧料は、液体、乳液乃至クリーム、パウダー、固形物などの形態で使用されるものであり、このような化粧料の中でも、特にソフトフォーカス性が要求されるメイクアップ化粧料、ファンデーション、口紅などに、本発明の非晶質シリカはソフトフォーカス性付与剤として配合される。これらの化粧料は、一般に、その用途あるいは使用形態に応じて、膜形成用のポリマー、界面活性剤、増粘剤、水、保湿剤、香料、顔料乃至染料、シリコーンオイルなどの撥水性オイル成分、紫外線吸収剤などの化粧成分を適宜の量で含有しており、上記のような量で本発明の非晶質シリカを配合して、そのソフトフォーカス性を高めることができる。
【0057】
本発明の非晶質シリカは、上記のような化粧料にソフトフォーカス性付与剤として配合する用途以外にも、従来公知の非晶質シリカと同様、各種の用途に使用することができる。
例えば、低い嵩密度を活かして、樹脂用配合剤として、各種の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に配合し、当該樹脂により形成される成形品や樹脂塗膜などの特性を改善することができる。
【0058】
即ち、本発明の非晶質シリカは、嵩密度が低く、最密充填可能であるため、例えばフィルム形成用の樹脂に0.01乃至10重量%、特に0.02乃至2重量%の量で配合することにより、当該樹脂により成型される樹脂フィルムはアンチブロッキング性と透明性(Clarity)のバランス性に優れる(後述の実験例5を参照)。
なお、樹脂用配合剤を樹脂中に高濃度で配合したマスターバッチの場合は、配合量は前記よりも多くなることがある。
また、塗膜の形成に使用される塗料用の樹脂に艶消し剤として配合することにより、形成される樹脂塗膜の艶消し効果を付与することができるだけでなく、市販の艶消し剤と同じ添加部数を配合した場合に較べ塗液の粘度が低いため、高濃度で添加できるために艶消し性を高めることができる(後述の実験例6を参照)。艶消し剤としては、樹脂100重量部当り1乃至15重量部の量で配合することができる。
【0059】
本発明の非晶質シリカを樹脂用配合剤として用いる場合、必要に応じて表面処理を行っても良い。表面処理剤としては、これに限定されないが、下記の有機或いは無機の助剤を用いて行うことができる。
【0060】
有機の助剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等およびこれらのカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、各種ワックス類、シリコーンオイル、未変性乃至変性の各種樹脂(例えばロジン、石油樹脂等)等を例示することができる。その表面処理量(コーティング量)は、未処理の樹脂用配合剤当たり0.01乃至20重量%、特に0.1乃至10重量%の範囲が好適である。
【0061】
また、無機の助剤としては、エアロジル、疎水処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カルシア、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、A型、P型等の合成ゼオライト及びその酸処理物又はその金属イオン交換物から成る定形粒子を、上述した未処理の樹脂用配合剤にブレンド乃至マブシして使用することもできる。また、シラン系、チタニウム系或いはジルコニウム系のカップリング剤を用いることもできる。
これらの無機系助剤は、未処理の樹脂用配合剤当たり0.01乃至20重量%、特に0.1乃至10重量%の量で用いるのがよい。
【0062】
このような樹脂用配合剤は、単独で使用できるほか、各種の配合剤と併用して樹脂に配合することができる。配合方法に関しては、配合剤をそれぞれ別に配合しても、予めワンパックにして配合しても良い。
【0063】
併用される配合剤としてはこれに限定されないが、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤/防霧剤、紫外線吸収剤、光安定剤(ヒンダートアミン系等)、酸化防止剤(フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等)、脂肪酸及びその金属塩、アマイド/アミン(エルカ酸アミド等)、一価/多価アルコールの脂肪酸エステル、低融点樹脂、難燃剤、補強材、強化材等があり、それぞれ必要に応じて用いることができる。また、防虫剤、防虫忌避剤、防臭剤、防菌剤、防かび剤、香料、薬効成分等も使用することができる。
【0064】
さらに、塗料用樹脂の場合は、顔料、湿潤剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、乳化剤、皮張り防止剤、消泡剤、防腐剤、たれ防止剤、乾燥剤、色別れ防止剤、着色剤、防汚剤等も使用することができる。
【0065】
本発明の非晶質シリカは、上記用途以外にも、電子写真用トナー等の流動性改良剤、高級研磨剤、クロマト用担体、香料担体、パテ用充填剤、吸着剤、離型剤、ゴム用充填剤等としても使用することができる。
【実施例】
【0066】
本発明の優れた効果を次の実験例で説明する。なお、非晶質シリカの各種物性は、以下の方法で測定した。
【0067】
(1)一次粒子径(X線小角散乱法)
Rigaku製RINT−UltimaIIIを用い、
透過小角散乱法光学系選択スリット;
DS:1.0mm、
SS:0.2mm、
RS:0.1mm、
Cu管球、
40kV、
40mA、
走査軸2θ/θ(連続);
走査範囲:0.1°〜8°
走査速度(ステップ):0.02°/min
で測定した。
【0068】
(2)円形度
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた二次元の写真画像から、画像解析ソフト(三谷商事製WinROOF)を用い、下記式で定義される円形度を求めた。
円形度=4π×(面積)/(周囲長)
【0069】
(3)中位径(D50
Malvern社製Masterizer2000を使用し、溶媒に水を用いてレーザ回折散乱法で体積基準での中位径(D50)を測定した。
【0070】
(4)吸油量
JIS.K.5101−13−1:2004に準拠して測定した。
【0071】
(5)嵩密度
JIS.K.6220−1 7.7:2001に準拠して測定した。
【0072】
(6)細孔容積及び比表面積
Micromeritics社製TriStar 300を用いての窒素吸着法により測定を行った。
細孔容積は比圧0.96において吸着した窒素の容積とし、比表面積は比圧が0.05から0.35以下の吸着枝側窒素吸着等温線からBET法で解析した。
【0073】
(7)シリカ収率(%)
反応液の全重量(W0)と少量分取した重量(W1)をそれぞれ求めた。20時間の静置後にゲルを攪拌により解砕してスラリー化したものをろ過することにより、未反応のケイ酸ナトリウムおよびCMCを除去した。
得られたろ過ケーキを適量の水に再分散し、用いた3号ケイ酸ソーダ中のNaOの全量が中和されるに十分な13.6%硫酸を攪拌下に30秒かけて注加して酸洗浄を行った。次いで、ろ過、水洗を行い、酸洗浄されたろ過ケーキを750℃で焼成して非晶質シリカの重量(W2)を求めた。用いた3号ケイ酸ソーダ全量中のSiO重量をW3として、下記式からSiOベースの収量を算出した。
シリカ収率(%)=(W2/W3)×(W0/W1)×100
【0074】
<非晶質シリカの製造>
以下の製造例において、ケイ酸アルカリとして、3号ケイ酸ソーダ(SiO:22.8重量%、NaO:7.21重量%、残分:水)を用いた。
【0075】
(製造例1)
エーテル化度1.2、1%水溶液粘度70cP/25℃、純分93重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC−A)を用意し、2Lのステンレス製容器に、
水 698g、
3号ケイ酸ソーダ 219g、
塩化ナトリウム 10.0g(SiO重量に対し20%)、
CMC−A 6.45g(SiO重量に対し12%)
を投入し、この混合液を攪拌下に30℃に保持して反応液とした(反応液調製工程)。
この反応液に、13.6%硫酸66.2g(NaOの36モル%を中和する量)を90秒かけて注加した。
注加後、更に30秒攪拌した後、攪拌を停止し静置してゲル化を行い、ヨーグルト状のゲルを得た(ゲル化工程)。
【0076】
得られたゲルを、そのまま20時間静置した後、このゲルを攪拌により解砕しスラリー化した。(この段階ではケイ酸ソーダ中のケイ酸分の約半量がシリカとして析出した。)
このスラリーに対して、13.6%硫酸47.5g(用いた3号ケイ酸ソーダ中のNaOの61.8モル%までが中和される量)を、30℃環境下にて攪拌しながら7時間かけてゆっくり滴下し、シリカを完全に析出させた(粒成長工程)。
【0077】
次いで、13.6%硫酸70.3g(用いた3号ケイ酸ソーダ中のNaOの全量が中和される量)を、30℃環境下にて攪拌しながら30秒かけて注加し酸洗浄を行なった(酸洗浄工程)。
酸洗浄後のスラリーをろ過、水洗し、得られたケーキをるつぼに入れ、750℃で1時間焼成した。次いで微粉砕を行い、非晶質シリカ(E1)を得た。その製造条件及び各種物性を表1に示した。
【0078】
(製造例2〜5)
粒成長工程における硫酸の注加時間を表1にそれぞれ示すように変更した以外は製造例1と同様にして非晶質シリカ(E2〜E5)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0079】
(製造例6)
粒成長工程における硫酸の注加時間を2.7時間とし、酸洗浄後のスラリーをろ過、水洗して得られたケーキを、110℃で乾燥した以外は製造例2と同様にして非晶質シリカ(E6)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0080】
(製造例7)
平均分子量が70万〜100万のポリアクリルアミド(PAA)水溶液(濃度10重量%)を用意した。
反応液調製工程において、混合する水の量を644gに変更し且つCMCを上記のPAA水溶液60.0g(SiO重量に対し12%)に変更した以外は製造例1と同様にして非晶質シリカ(E7)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0081】
(製造例8)
エーテル化度1.42、1%、水溶液粘度135cP/25℃、純分88%のカルボキシルメチルセルロース(CMC−B)を用意した。
製造例1において、反応液の調製工程でのCMCを上記のCMC−B 14.2g(SiO重量に対し25%)に変更し、ゲル化工程での硫酸量を58.9g(3号ケイ酸ソーダ中のNaOの32モル%を中和する量)に変更し、粒成長工程での硫酸量を69.9g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの70モル%までが中和される量)に変更し、酸洗浄工程での硫酸量を64.4g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの105モル%までが中和される量に相当)にそれぞれ変更した。
上記の変更を行った以外は、製造例1と同様にして非晶質シリカ(E8)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0082】
(製造例9)
製造例1において、反応液調製工程で2Lのステンレス製容器に投入する各成分の処方を以下のように変更した。
水 585g、
3号ケイ酸ソーダ 307g、
塩化ナトリウム 3.50g(SiO重量に対し5%)、
CMC−B 5.57g(SiO重量に対し7%)、
さらに、ゲル化工程での硫酸量を99.2g(NaOの38.5モル%を中和する量)に変更し、粒成長工程での硫酸量を81.1g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの70モル%までが中和される量)、酸洗浄工程での硫酸量を72.1g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの98モル%までが中和される量)にそれぞれ変更した。
上記のような変更を行った以外は製造例1と同様にして非晶質シリカ(E9)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0083】
(製造例10)
製造例1において、反応液調製工程で2Lのステンレス製容器に投入する各成分(塩化ナトリウムは使用せず)の処方を以下のように変更した。
水 505g、
3号ケイ酸ソーダ 373g、
CMC−B 6.28g(SiO重量に対し6.5%)、
さらに、ゲル化工程の硫酸量を116g(NaOの37モル%を中和する量)に変更し、粒成長工程での硫酸量を77.6g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの61.8モル%までが中和される量)、酸洗浄工程での硫酸量を110g(用いたケイ酸ソーダ中のNaOの97モル%までが中和される量)にそれぞれ変更した。
上記のような変更を行った以外は製造例1と同様にして非晶質シリカ(E10)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表1に示した。
【0084】
(比較製造例1)
粒成長工程における硫酸の注加時間を0.01時間に変更した以外は製造例1と同様にしてそれぞれ非晶質シリカ(H1)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表2に示した。
【0085】
(比較製造例2)
製造例1乃至5と対比するために粒成長工程を省略して非晶質シリカを製造した。
即ち、ゲル化工程までを製造例1と同様に行ない、得られたゲルを20時間の静置後にゲルを攪拌により解砕してスラリー化したものをろ過することにより、未反応のケイ酸ナトリウムおよびCMCを除去した。
得られたろ過ケーキを水500gに再分散し、13.6%硫酸70.3gを攪拌下に30秒かけて注加して酸洗浄を行った。次いで、製造例1同様にろ過、水洗を行い、酸洗浄されたろ過ケーキを750℃で焼成、微粉砕して非晶質シリカ(H2)を得た。その製造条件及び各種物性を表2に示した。
【0086】
(比較製造例3)
反応液調製工程での水の投入量を644gに変更し且つCMC−AをPAA水溶液(製造例7参照)60.0g(SiO重量に対し12%)に変更した以外は、比較製造例2と同様にして粒成長工程を省略して非晶質シリカ(H3)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表2に示した。
【0087】
(比較製造例4)
CMCとして、エーテル化度1.44、1%水溶液粘度230cP/25℃、純分89%のもの(CMC−C)を用意した。
反応調製工程で用いるCMCを上記のCMC−C 6.74gに変更した以外は、比較製造例2と同様に粒成長工程を省いて非晶質シリカ(H4)を得た。得られた非晶質シリカの各種物性を製造条件と共に表2に示した。
【0088】
(比較製造例5)
製造例1(比較製造例2)において、反応液調製工程で2Lのステンレス製容器に投入する各成分の処方を以下のように変更した。
水 650g、
3号ケイ酸ソーダ 253g、
無水硫酸ナトリウム 6.0g(SiO重量に対し10.4%)、
CMC−A 9.93g(SiO重量に対し16%)、
さらに、ゲル化工程での酸による中和を、13.6%硫酸80.7g(NaOの38モル%を中和する量)を変更して製造例1(比較製造例2)と同様にゲル化を行い、ヨーグルト状のゲルを得た(ゲル化工程)。
次いで、酸洗浄工程での硫酸の量を81.1gに変更した以外は、比較製造例2と同様にして粒成長工程を省いて非晶質シリカ(H5)を得た。その製造条件及び各種物性を表2に示した。
【0089】
(比較製造例6)
比較製造例5において、750℃で1時間の焼成を、110℃での乾燥に変更して非晶質シリカ(H6)を得た。その製造条件及び各種物性を表2に示した。
【0090】
(比較製造例7)
この例は、特許文献3の実施例12と同様に非晶質シリカを製造した例である。
即ち、反応液調製工程で調製する反応液の処方を以下のとおりとして製造例1と同様に反応液を調製した。
水 659g、
3号ケイ酸ソーダ 219g、
CMC−A 11.3g(SiO重量に対し21%)、
この反応液に、13.6%硫酸110.4g(NaOの60%モル%を中和する量)を、30℃環境下にて攪拌しながら90秒かけて注加した。更に30秒攪拌した後攪拌を停止し静置したところ、プリン状のゲルが得られた(ゲル化工程)。
このゲルを、そのまま3時間静置した後、攪拌により解砕してスラリー化した。このスラリーに対し13.6%硫酸73.6g(NaOを100モル%まで中和する量)を攪拌しながら30秒かけて注加した。
得られたスラリーをろ過、水洗し、得られたたケーキをるつぼに入れ、500℃で2時間焼成した。次いで微粉砕して非晶質シリカ(H7)を得た。その製造条件及び各種物性を表2に示した。
【0091】
(対照品)
また、市販の非晶質シリカとして、旭硝子製サンスフェアH−122(H8)、触媒化成製シリカP−1500(H9)、朝日化学製ケミセレン(H10)、富士シリシア製サイロスフェアC-1504(H11)、マイクロン製の球状シリカ(H12)、信越化学製の球状シリカ(H13)を用意した。
また、後述するポリプロピレンフィルム用アンチブロッキング剤としての評価の対照品としてGrace Davison製SYLOBLOC45(H14)を、アミノアルキド樹脂塗料用の艶消し剤としての評価の対照品として水澤化学製ミズカシルP−73(H15)を用意した。
これらの対照品についての各種物性を表3に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
<ソフトフォーカス付与剤としての評価>
以下の実験例において、ソフトフォーカス性付与剤として、前述した製造例で製造された非晶質シリカE1、E8、E10、及び前述した対照品の非晶質シリカH8、H9、H10を用意した。
【0096】
上記で用意された各種のソフトフォーカス付与剤の全光線透過率(Tt)および拡散透過率(Td)を、以下のように測定した。
各種の非晶質シリカとシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96−1000cS、屈折率:1.40)とを、合計4gとなる割合で配合し、(株)東洋精機製作所製フーバーマーラで混練した。
混練により得られたペーストをOHPシートに50μmの太佑機械(株)製アプリケータで塗布し、ヘーズメータ(東洋精機製作所製)を用い、全透過率(Tt)とヘイズ(H)をそれぞれ3箇所測定し、さらに、下記式:
Td=Tt×H/100
により、拡散透過率(Td)を算出し、それぞれについて平均値を求めた。
その結果を、各非晶質シリカの各種の物性と共に、表4に示した。
【0097】
【表4】

【0098】
(実験例1−1)
非晶質シリカ(E1)を使用し、下記の処方によりパウダーファンデーションを得た。
【0099】
(パウダーファンデーション)
成分 配合量(重量%)
(1)シリコーン処理タルク 15.00
(2)シリコーン処理セリサイト 32.80
(3)シリコーン処理合成金雲母 10.00
(4)シリコーン処理酸化チタン 15.00
(5)シリコーン処理酸化鉄 3.00
(6)シリコーン処理酸化亜鉛 2.00
(7)ポリメタクリル酸メチル 7.00
(8)窒化ホウ素 3.00
(9)メチルパラベン 0.20
(10)非晶質シリカ(E1) 1.00
(11)メチルポリシロキサン 4.90
(12)コハク酸ジオクチル 4.00
(13)スクワラン 2.00
(14)香料 0.10
合計 100.00
【0100】
具体的には、上記の成分(1)〜(10)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、残りのバインダー成分(11)〜(14)を混合したものを添加、混合した後、再び粉砕してふるいに通した。これを金皿に圧縮成型して、パウダーファンデーションを得た。
【0101】
上記のようにして得られたパウダーファンデーションについて、女性パネラー10名に塗布してもらい、塗布直後と3時間後の小じわを隠す効果を下記の方法で評価した。その結果を、処方に用いた非晶質シリカの種類と共に、表5に示す。
【0102】
<小じわを隠す効果>
10人の専門パネラーにより官能評価を行い、下記の評価基準を用いて7段階に評価し、その平均値で評価した。
(評価基準)
7点:小じわを隠す効果が非常に高い
6点:小じわを隠す効果が高い
5点:小じわを隠す効果がやや高い
4点:普通
3点:小じわを隠す効果がやや低い
2点:小じわを隠す効果が低い
1点:小じわを隠す効果が非常に低い
【0103】
尚、表5中、◎は上記評点の平均値が6点以上、○は平均値が4点以上6点未満、△は3点以上4点未満、×は3点未満であったことを示す。
【0104】
(実験例1−2)
実験例1−1で採用した処方において、非晶質シリカ(E1)である成分(10)の配合量を5重量%とし、成分(2)にて全体の成分が100重量%になるよう調整した処方とした以外は、実験例1−1と全く同様にしてパウダーファンデーションを製造し、その評価を行った。その結果を表5に示す。
【0105】
(実験例1−3)
実験例1−1で採用した処方において、非晶質シリカ(E1)である成分(10)の配合量を10重量%とし、成分(2)にて全体の成分が100重量%になるよう調整した処方とした以外は、実験例1−1と全く同様にしてパウダーファンデーションを製造し、その評価を行った。その結果を表5に示す。
【0106】
(実験例1−4)
非晶質シリカをE1に代えてE8を用いた以外は、実験例1−2と全く同様にしてパウダーファンデーションを製造し、その評価を行った。その結果を表5に示す。
【0107】
(実験例1−5)
非晶質シリカをE1に代えてE10を用いた以外は、実験例1−2と全く同様にしてパウダーファンデーションを製造し、その評価を行った。その結果を表5に示す。
【0108】
(実験例1−6、1−7及び1−8)
非晶質シリカを対照品H8、H9及びH10に代えた以外は、実験例1−2と全く同様にしてパウダーファンデーションを製造し、その評価を行った。その結果を表5に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
表5から明らかなように、本発明の非晶質シリカを配合したパウダーファンデーション(実験例1−1〜1−5)は、塗布直後の小じわを隠す効果が非常に高いものであった。また、塗布した3時間後でもその効果は変わらず、経時的に肌上へ汗や皮脂が生じても小じわを隠す効果が低下しないことが明らかとなった。
それに対して、対照品(市販品)の非晶質シリカを用いて調製された実験例1−6および1−7のパウダーファンデーションは、塗布直後の小じわを隠す効果は高いものの、3時間後にはその効果が低くなっており、肌上に生じた汗や皮脂によってパウダーファンデーションが濡れてしまい、小じわを隠す効果が低減することが明らかとなった。
また、対照品(市販品)の非晶質シリカを用いて調製された実験例1−8のパウダーファンデーションは小じわを隠す効果が塗布直後、3時間後ともに不十分であった。
【0111】
(実験例2)
非晶質シリカ(E1)を使用し、下記の処方により化粧下地を調製した。
【0112】
(化粧下地)
成分 配合量(重量%)
(1)セスキステアリン酸メチルグルコシド 1.00
(2)ステアロイル乳酸ナトリウム 0.20
(3)硬化ナタネ油アルコール 3.50
(4)スクワラン 6.00
(5)ミリスチン酸オクチルドデシル 6.00
(6)メチルフェニルポリシロキサン 6.00
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 2.00
(8)トリイソステアリン酸ポリグリセリル 1.00
(9)ブチルパラベン 0.10
(10)精製水 52.94
(11)合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム 1.00
(12)ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.06
(13)キサンタンガム 0.20
(14)1,3−ブチレングリコール 10.00
(15)メチルパラベン 0.20
(16)ジグリセリン 5.00
(17)非晶質シリカ(E1) 4.00
(18)メチルポリシロキサン 0.50
合計 100.00
【0113】
具体的には、上記の処方において、水相成分(10)〜(13)を撹拌混合し、加熱して85℃に保つ。油相成分(1)〜(9)を混合し、加熱溶解して80℃とする。その後、この油相成分に前述の水相成分を加えて予備乳化し、ホモミキサーで均一に乳化した後、ホモミキサーを止め撹拌を続けながら、成分(15)を溶解した成分(14)〜(17)までの混合物を添加する。続いて、冷却を開始して約70℃で成分(18)を加え、さらに35℃まで冷却して化粧下地を得た。
【0114】
得られた化粧下地は、油分や多価アルコールを多く含みしっとり濡れた状態で塗膜を形成していたが、成分(17)として本発明の非晶質シリカを配合しているため、ソフトフォーカス性に優れ、小じわを隠しながら肌を整える機能の高いものであった。
【0115】
(実験例3)
非晶質シリカ(E1)を使用し、下記の処方により油性ファンデーションを調製した。
【0116】
(油性ファンデーション)
成分 配合量(重量%)
(1) 流動パラフィン 18.00
(2) パルミチン酸イソプロピル 15.00
(3) 液状ラノリン 4.50
(4) マイクロクリスタリンワックス 4.50
(5) セレシン 10.00
(6) カルナバロウ 2.00
(7) セスキオレイン酸ソルビタン 1.00
(8) パラベン 0.20
(9) 酸化チタン 15.00
(10)カオリン 8.50
(11)タルク 13.00
(12)酸化鉄 5.00
(13)非晶質シリカ(E1) 3.00
(14)香料 0.30
合計 100.00
【0117】
具体的には、上記処方において、成分(1)〜(8)を80℃で加熱融解し、これに(9)〜(12)を混合したものを加える。混合物をロールミルで練り、再度加熱融解し、これに(13)を加え、均一に混合する。これを脱泡した後、(14)を加え、中皿に流し込み冷却し、油性ファンデーションを得た。
【0118】
得られた油性ファンデーションは、油分を多く含んだ形態にもかかわらず、小じわを隠す機能の高いファンデーションであった。
【0119】
(実験例4)
非晶質シリカ(E1)を使用し、下記の処方により口紅を調製した。
【0120】
(口紅処方)
成分 配合量(重量%)
(1) セレシン 10.00
(2) マイクロクリスタリンワックス 2.00
(3) カルナウバロウ 1.00
(4) 合成炭化水素ワックス 2.00
(5) ダイマー酸イソプロピル 15.00
(6) トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン 33.85
(7) ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 3.50
(8) ビタミンE 0.10
(9) トリイソステアリン酸ポリグリセリル 12.00
(10) 着色料 6.50
(11) 合成金雲母 9.00
(12) 非晶質シリカ(E1) 5.00
(13) 香料 0.05
合計 100.00
【0121】
具体的には、上記処方の成分(9)〜(12)をローラーミルにて分散させる。その後、成分(1)〜(8)を加温融解して、成分(9)〜(12)の混合物と成分(13)を加え、よく混合する。ろ過し、高温で型に流し込み、冷却して成型したものを容器に充填して口紅を得た。
【0122】
得られた口紅は、油分に濡れた状態で粉体が配合されていてもソフトフォーカス性に優れ、唇の縦じわを見えにくくするものであった。
【0123】
<アンチブロッキング剤としての評価>
(実験例5−1〜5−9)
ポリプロピレン樹脂(ランダムPP、MFR=7g/10分)に、5重量%濃度になるよう非晶質シリカE1,E9或いはH14を添加し、二軸押出機(φ37mm)を用いて220℃溶融混合し、マスターバッチを得た。尚、非晶質シリカ以外の成分は添加していない。
このマスターバッチに、表6に記載の濃度になるようそれぞれ上記ポリプロピレン樹脂を溶融混合し、φ40mmの水冷式インフレーション成型機を使用して30ミクロン厚のPPフィルムを作成した。
作成したフィルムについて、ASTM D 1003−95に準拠してHazeを測定した。Hazeの値が小さいほど透明性に優れる。
また、ASTM D 1044−94に記載の測定装置にてClarityを測定した。Clarityの値が大きいほど鮮明性に優れる。測定装置はGardner社製 haze−gard plusを用いた。
さらに、作成したフィルムについて、ASTM D 1894−95に準拠し、フィルム外表面同士の摩擦係数(COF)を評価した。DCOFは動摩擦係数、SCOFは静摩擦係数を表しともに値が低いほど滑り性に優れる。測定装置は東洋精機製摩擦測定機TR−2を用いた。
さらにまた、作成したフィルムについて、ISO 11502−1995 method Bに準拠した方法でフィルムのブロッキング力を測定した。ただし、フィルム同士の熱圧着条件は6kPa、45℃、120時間とした。測定装置は島津製作所製オートグラフ AGS−H 20Nを用いた。
Haze、Clarity、摩擦係数、ブロッキング力の測定を行なった結果を表6に示す。またHazeとSCOFのバランスを図1に、Clarityとブロッキング力のバランスを図2に示した。
【0124】
【表6】

【0125】
<艶消し剤としての評価>
(実験例6−1〜6−6)
アミノアルキド樹脂塗料100重量部に対し、非晶質シリカE9或いはH15を所定の重量部数になるよう添加し、ホモディスパーを用いて2500rpmで5分間分散させた。上記塗料について、東機産業製B型粘度計TVB−10Mを用いて、30rpm、1分値における粘度を測定した。
次に上記塗料をブリキ版(JIS G 3301)上にアプリケータを用いて塗装し、140℃で2時間乾燥して約30ミクロン厚の塗膜を作成した。作成した塗膜光沢度についてJIS Z 8741(1997)に準拠し60°グロス値を測定した。グロスの値が小さいほど艶消し性能は高い。測定には日本電色工業製光沢計VG2000を用いた。塗液の粘度と塗膜の60°グロス値の結果を表7に、両者のバランスを図3に示す。
【0126】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線小角散乱法で測定した一次粒子径が18乃至50nmであり、電子顕微鏡で観察した個々の二次粒子の円形度が0.70乃至0.85であることを特徴とする非晶質シリカ。
【請求項2】
レーザ回折散乱法で測定した体積換算での中位径(D50)が1乃至10μmの範囲にある請求項1に記載の非晶質シリカ。
【請求項3】
吸油量が40ml/100g以上であり、嵩密度が0.25乃至0.70g/cmである請求項1に記載の非晶質シリカ。
【請求項4】
ソフトフォーカス性付与剤として化粧料に配合される請求項3に記載の非晶質シリカ。
【請求項5】
請求項3に記載の非晶質シリカがソフトフォーカス性付与剤として、0.1乃至10重量%配合されている化粧料。
【請求項6】
請求項1に記載の非晶質シリカからなる樹脂用配合剤。
【請求項7】
ケイ酸アルカリ水溶液に、エーテル化度が0.5乃至2.5のカルボキシメチルセルロース及び部分中和量の酸水溶液を混合し、
前記混合液を放置してケイ酸アルカリの部分中和によってシリカ微細粒子を含むゲル体を形成し、
前記ゲル体を解砕して、前記シリカ微細粒子と未中和のケイ酸アルカリを含む水性スラリーを形成し、
前記水性スラリーに、未中和のケイ酸アルカリからケイ酸分の全量が析出するに足る量の酸水溶液を徐々に添加し、未中和のケイ酸アルカリを中和することにより、前記シリカ微細粒子上にシリカを析出させて該微細粒子を粒成長せしめ、
粒成長したシリカ粒子を含む前記水性スラリーに酸水溶液を添加して酸洗浄を行い、
次いで、ろ過、水洗及び乾燥を行うことにより粒成長したシリカ粒子を得ることを特徴とする非晶質シリカの製造方法。
【請求項8】
未中和のケイ酸アルカリからケイ酸分の全量が析出に足る量の酸水溶液を0.25乃至30時間かけて添加する請求項7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184856(P2010−184856A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282117(P2009−282117)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【特許番号】特許第4521477号(P4521477)
【特許公報発行日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000193601)水澤化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】