説明

非晶質窒化珪素膜とその製造方法、ガスバリア性フィルム、並びに、有機エレクトロルミネッセンス素子とその製造方法および封止方法

【課題】十分なガスバリア性を示す高密度の非晶質窒化珪素膜を簡便な方法で提供すること。
【解決手段】高周波放電を利用したプラズマCVD法において、シランガスと、水素ガスと、アンモニアガスまたは窒素ガスの少なくとも一方とを含む混合ガスを用いて、電極間距離を50〜100mmとし、シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)を0.5〜3.0として非晶質窒化珪素膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れた非晶質窒化珪素膜とその製造方法に関するものであり、特にプラズマCVD法を用いて高密度の非晶質窒化珪素膜を製造する方法に関するものである。また、本発明は、ガスバリア性フィルム、並びに、有機エレクトロルミネッセンス素子とその製造方法および封止方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子や太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の有機デバイスにおいて、重くて割れやすいガラス基板に代わり、薄くて軽く柔軟性に優れた透明なプラスチックフィルムを基板に用いることが検討されている。透明プラスチック基板は、大面積化が容易であり、ロールトゥロール(Roll to Roll)の生産方式を適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。
【0003】
しかし透明プラスチック基板は、ガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。有機デバイスは、一般に構成材料が水や空気によって劣化や変質を起こしやすい。例えば、液晶表示素子の基板にガスバリア性が劣る基材を用いると、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を低下させてしまう。
【0004】
このような問題を解決するためには、上述のようなプラスチックフィルム基板自身にガスバリア機能を付与するか、或いはガスバリア性を持った透明なプラスチックフィルムでデバイス全体を封止すればよい。ガスバリア性フィルムとしては、一般にプラスチックフィルム上に金属酸化物薄膜を形成したものが知られている。液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)がある。これらは、いずれも水蒸気透過率1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし近年では、より高いバリア性が要求される有機エレクトロルミネッセンスディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持し且つ高バリア性、特に水蒸気バリア性で水蒸気透過率0.1g/m2/day未満の性能をもつ基材が要求されるようになっている。そこで高いガスバリア性の実現するために、より緻密な薄膜となる窒化珪素膜をスパッタリング法でプラスチックフィルム上に成膜する方法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
一方、化学気相堆積法(CVD法)による製膜技術が従来から知られており、例えば非晶質窒化シリコン膜をプラズマCVD法により製膜する技術が提案されている(特許文献4)。この方法によれば、大面積の非晶質窒化シリコン膜を高速で製膜することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭53−12953号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献2】特開昭58−217344号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】特開平6−136159号公報(第1頁〜第5頁)
【特許文献4】特開平5−275346号公報(第1頁〜第6頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高いガスバリア性を実現するために提案された窒化珪素膜の成膜法(特許文献3)は、スパッタリング法によるものであることから十分に満足の行くガスバリア性を示す窒化珪素膜を提供することはできない。このため、さらにより緻密な薄膜を成膜することが必要とされている。一方、プラズマCVD法による製膜法を開示した特許文献4には、非晶質窒化シリコン膜以外の膜を製膜することについては言及がない。本発明者らが、特許文献4の記載にしたがってプラズマCVD法による窒化珪素膜の成膜を試みたところ、十分なガスバリア性を示す高密度な窒化珪素膜を得ることは依然としてできなかった。
【0008】
このような従来技術の課題を解決するために、十分なガスバリア性を示す高密度な窒化珪素膜を簡便な方法で製膜することを本発明の目的として検討を進めた。さらに、そのような製膜法を利用することにより、ガスバリア性に優れたフィルムや耐久性が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することも本発明の目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明者らは、プラズマCVD法における原料ガスの流量比と、電極間距離を特定の範囲内に制御して製膜することにより、優れたガスバリア性を示す非晶質窒化珪素膜を製膜することができることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0010】
[1] 高周波放電を利用したプラズマCVD法による非晶質窒化珪素膜の製造方法において、シランガスと、水素ガスと、アンモニアガスまたは窒素ガスの少なくとも一方とを含む混合ガスを用いて、電極間距離を50〜100mmとし、シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)を0.5〜3.0として非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[2] 前記成膜した非晶質窒化珪素膜を40℃・相対湿度90%の条件下に3週間保管前後において、膜を構成する元素Si、O、Nの総量に対するOの割合の変化が、5%未満であることを特徴とする[1]に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[3] 前記混合ガスの圧力を1〜200Paとして非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする[1]または[2]に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[4] 前記高周波放電の周波数を10MHz〜80MHzとして非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[5] 前記プラズマCVD法の投入電力密度を4000〜25000W/m2として非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[6] 200℃以下の温度で非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の製造方法により製造される非晶質窒化珪素膜。
[8] 厚みが10〜1000nmであることを特徴とする[7]に記載の非晶質窒化珪素膜。
[9] 密度が2.4g/cm3以上であることを特徴とする[7]または[8]に記載の非晶質窒化珪素膜。
【0011】
[10] 可撓性基材の少なくとも一方の面に、[7]〜[9]のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜を有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
[11] 前記可撓性基材が、さらに有機層を有することを特徴とする[10]に記載のガスバリア性フィルム。
[12] [10]または[11]に記載のガスバリア性フィルム上に有機エレクトロルミネッセンス素子を製膜する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
[13] 有機エレクトロルミネッセンス素子に、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の製造方法により非晶質窒化珪素膜を製膜することにより前記有機エレクトロルミネッセンス素子を封止する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
[14] 前記有機エレクトロルミネッセンス素子を成膜後、大気に曝すことなく真空中で前記非晶質窒化珪素膜を製膜することを特徴とする[13]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
[15] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜を用いて封止した有機エレクトロルミネッセンス素子。
[16] [10]または[11]に記載のガスバリア性フィルムを基板に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
[17] [10]または[11]に記載のガスバリア性フィルムを用いて封止した有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非晶質窒化珪素膜は、高い密度を有していて、十分なガスバリア性を示し、耐酸化性も高い。本発明の非晶質窒化珪素膜の製造方法によれば、そのような優れた性質を有する非晶質窒化珪素膜をプラズマCVD法により簡便に製造することができる。また、本発明の製造方法を利用することにより、容易にガスバリア性フィルムや有機エレクトロルミネッセンス素子を製造したり、有機エレクトロルミネッセンス素子をしたりすることができる。また、本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を示し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】容量結合型プラズマCVD装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の非晶質窒化珪素膜とその製造方法等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、以下では有機エレクトロルミネッセンス素子を「有機EL素子」と表記する。
【0015】
<非晶質窒化珪素膜とその製造方法>
(プラズマCVD法)
本発明の製造方法では、プラズマCVD法により非晶質窒化珪素膜を製膜する。
プラズマCVD法としては、平行平板電極間にガスを導入し、さらに電力を投入してプラズマ放電を発生する容量結合型プラズマCVDを用いる。プラズマCVD法による製膜については、例えば化学工学会、CVDハンドブック、p.282(1991)に記載の方法を参照することができる。
【0016】
容量結合型プラズマCVD法による製膜装置として、例えば図1に示す装置を例示することができる。この装置によれば、可撓性基材上に窒化珪素膜をロール トゥ ロール(roll-to-roll)方式で製膜することができる。図1に示す容量結合型プラズマCVD装置(1)は、真空槽(2)を有しており、その中央部には可撓性基材であるプラスチックフィルム(6)を表面に接触させて基板側電極として働き、かつプラスチックフィルムを冷却するためのドラム型電極(3)が配置されている。また、上記真空槽(2)にはプラスチックフィルム(6)を巻くための送り出しロール(4)および巻き取りロール(5)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(6)はガイドロール(7)を介してドラム(3)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(6)はガイドロール(8)を介して巻き取りロール(5)に巻かれる。真空排気系としては排気口(9)から真空ポンプ(10)によって真空槽(2)内の排気が常に行われる。成膜系は、ドラム面に対向して設置され、ガス導入ノズル兼ねた構造を有するシャワーヘッド型RF電極と、それに接続されたRF電源(11)にオートマッチャーと、真空槽にボンベから一定流量のガスを導入するマスフローコントローラーからなるガス導入系からなる。ドラム型電極(3)には1MHz以下の低周波(LF)電源もしくは直流電源をバイアス印加用電源として接続することも可能である。
【0017】
(混合ガス)
本発明の製造方法では、シランガスと、水素ガスと、アンモニアガスまたは窒素ガスの少なくとも一方とを含む混合ガスを用いる。その際、シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)を0.5〜3.0に設定する。シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)は、0.5〜2.5であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましく、1.5〜2.0であることがさらに好ましい。シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)が0.5未満であると製膜される窒化珪素膜の耐酸化性が損なわれてしまい、逆に3.0超であると成膜速度が著しく低下するという問題がある。
【0018】
シランガスと水素ガスは合計で混合ガス中に10〜50%含まれていることが好ましく、15 〜40%含まれていることがより好ましく、20〜30%含まれていることがさらに好ましい。
また、混合ガスには、上記のシランガス、水素ガス、アンモニアガス、窒素ガス以外のガスが含まれていても構わない。そのようなガスとして、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを挙げることができる。
【0019】
(製膜条件)
本発明の製造方法では、プラズマCVD法による電極間距離を50〜100mmに設定する。
電極間距離は50〜100mmであることが好ましく、50〜80mmであることがより好ましく、60〜70mmであることがさらに好ましい。電極間距離が50mm未満であると窒化珪素膜の密度が低くなって十分なガスバリア性が得られなくなる。逆に電極間距離が100mm超であると窒化珪素膜の耐酸化性が悪化し、また膜面に微粒子が堆積するという問題がある。
【0020】
プラズマCVD法による窒化珪素膜の製膜時の混合ガス圧力は1〜200Paであることが好ましく、5〜150Paであることがより好ましく、10〜100Paであることがさらに好ましい。混合ガス圧力が1Pa以上であれば段差被覆性と成膜速度が向上するという利点があり、混合ガス圧力が200Pa以下であれば気相でのパーティクル成長を抑制できるという利点がある。
【0021】
また、高周波放電の周波数は10MHz〜80MHzであることが好ましく、27〜80MHzであることがより好ましく、27〜60MHzであることがさらに好ましい。高周波放電の周波数が10MHz以上であればプラズマ密度が高く成膜速度高いという利点があり、高周波放電の周波数が80MHz以下であれば大面積化において定在波が発生してもある程度制御可能であるという利点がある。
【0022】
さらに、電極面積(m2)あたりの投入電力(W)である投入電力密度は、4000〜25000W/m2であることが好ましく、7000〜20000W/m2であることがより好ましく、7000〜15000W/m2であることがさらに好ましい。投入電力密度が4000W/m2以上であればガスのプラズマ化が促進され、最適な活性種が形成されバリア性が向上し、また、成膜速度が向上するという利点があり、投入電力が25000W/m2以下であればガスの過分解による成膜に寄与しない活性種の形成を抑制することができるという利点がある。
【0023】
また、窒化珪素膜の製膜時の温度は、基材の耐熱性を考慮した範囲において高いほど好ましく、プラスチックフィルムでは熱変形が起こらない範囲で高いほど好ましい。たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)なら80℃、ポリエチレンナフタレート(PEN)なら100℃を超えない程度の温度を与えることが好ましい。
【0024】
(厚み)
本発明の製造方法によれば、窒化珪素膜を所望の厚みに製膜することができる。ただし、窒化珪素膜を厚く製膜しすぎると曲げ応力によるクラック発生や内部応力増加に伴う反り・変形等のおそれがあり、逆に薄く製膜しすぎると膜が島状に分布するため、いずれもガスバリア性が悪くなる傾向がある。このため、窒化珪素膜の厚みは、通常10〜1000nmの範囲内とし、20〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは、50nm〜200nmであり、さらに好ましくは80〜150nmである。なお、可撓性支持体上に窒化珪素膜を2層以上製膜する場合は、各々が同じ膜厚であってもよいし、異なる膜厚であってもよい。
【0025】
(密度とガスバリア性)
本発明の製造方法により製膜された非晶質窒化珪素膜の密度は、通常2.00〜3.00g/m2であり、2.40〜3.00g/m2であることが好ましく、2.45〜3.00g/m2であることがより好ましく、2.50〜3.00g/m2であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法により製膜された非晶質窒化珪素膜は、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.004g/m2・day以下であることが好ましく、0.002g/m2・day以下であることがより好ましく、0.0004g/m2・day以下であることがさらに好ましく、0.0001g/m2・day以下であることが特に好ましい。
【0026】
<ガスバリア性フィルム>
(基本構成)
本発明のガスバリア性フィルムは、可撓性基材の少なくとも一方の面に、上記の非晶質窒化珪素膜を有することを特徴とする。本発明のガスバリア性フィルムは、非晶質窒化珪素膜を2層以上有していてもよい。その場合、一方の面に2層以上有していてもよいし、両面にそれぞれ有していていもよい。可撓性基材上への非晶質窒化珪素膜は、上記の本発明の方法により製膜する。
【0027】
(可撓性基材)
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる可撓性基材は、可撓性を有し、且つその上に形成される層を保持できるものであれば特に制限はなく、例えば透明フィルムなどを使用目的等に応じて適宜選択することができる。透明な可撓性基材を構成する材料としては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂で特にポリエチルナフタレート樹脂(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAr)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例−4の化合物)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例−5の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。本発明では、ガラス転移温度が120℃以上の高分子材料で形成される可撓性基材を用いることが好ましい。
【0028】
本発明のガスバリア性フィルムには、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上である可撓性基材を用いることが好ましい。容量結合型プラズマCVDにより窒化珪素膜を成膜する際、基材表面にサーモテープを貼ってプロセスの最高温度をモニターしたときに50℃以下であることが観測されるが、Tgの異なる樹脂基板に全く同じ条件で成膜するとTg100℃付近を境にバリア能が著しく高くなり、120℃以上で顕著に良化する。いかなる理論にも拘泥するものではないが、これはサーモテープでは検知されない極表面の状態に対して何らかの影響を及ぼしているためであると推定される。可撓性基材のTgは120℃以上であることが好ましいが、より好ましくは200℃、さらに好ましくは250℃以上である。
【0029】
高耐熱性の可撓性基材を用いると、ガスバリア性フィルムにさらに珪素酸窒化物層や透明導電層を設置したりする際に基板加熱を行うことができるようになるため、成膜時の分子または原子の再配列を促すことができる。このため、より高品質なガスバリア性フィルムやガスバリア性透明導電フィルムが得られやすい。
【0030】
本発明における可撓性基材は、その性質上、水を取り込まないことが望ましい。すなわち水素結合性官能基を持たない樹脂から形成されていることが望ましい。可撓性基材の平衡含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
一般に積層するために可撓性基材を真空槽に入れると、可撓性基材表面より水・残留溶剤・表面吸着成分・微量の低分子残量成分が放出する。緻密な膜を製膜するためには放出成分を低減することが好ましい。具体的には成膜前に真空槽に導入したり、プレヒートしたりして放出成分を除去する前処理を行っておくことが有効である。この点で高耐熱性の基材を用いることは有効である。
【0032】
本発明に用いられる可撓性基材は、有機EL素子の発光面に用いる場合は可視光に対して透明であることが必要とされる。そのような可撓性基材の透明度は、波長500nmの可視光を80%以上透過することが好ましい。透明な可撓性基材の厚みは、透明度を確保するために適宜調整することができ、好ましくは5μm〜500μmであり、より好ましくは10μm〜300μmであり、さらに好ましくは50μm〜200μmである。
【0033】
(有機層)
本発明のガスバリア性フィルムには、有機層を好ましく設けることができる。有機層は、窒化珪素膜を形成する側に設けることが好ましく、窒化珪素膜に隣接して設けることがより好ましい。また、窒化珪素膜と有機層を交互に積層することも好ましい。このとき、窒化珪素膜の一部は別の無機膜に置換してもよい。
【0034】
有機層は、通常、ポリマーからなる層である。具体的には、ポリエステル、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂の層である。
【0035】
有機層の形成方法としては、通常の溶液塗布法、あるいは真空成膜法等を挙げることができる。溶液塗布法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコ−ト法、グラビアコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法(例えば、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパ−を使用する方法)により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。特にプラズマCVD法によれば、窒化珪素膜の製膜と連続して有機層の製膜を行うことができるため好ましい。
【0036】
本発明においてはポリマーを溶液塗布してもよいし、ポリマーの前駆体(例えば、モノマー)を製膜後、重合することによりポリマー層を形成させてもよい。
本発明に用いることができる好ましいモノマーとしては、アクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。アクリレートおよびメタクリレートの好ましい例としては、例えば、米国特許第6,083,628号明細書および米国特許第6,214,422号明細書に記載の化合物が挙げられる。
【0037】
以下に本発明に好ましく用いられるアクリレート、メタクリレートの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
モノマー重合法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。加熱重合を行う場合、基材となるプラスチックフィルムは相応の耐熱性を有する必要がある。
この場合、少なくとも、加熱温度よりもプラスチックフィルムのガラス転移温度(Tg)が高いことが必要である。光重合を行う場合は、通常、光重合開始剤を併用する。
【0044】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難となる傾向にあり、厚すぎると外力によりクラックを発生し、ガスバリア性が低下しやすい傾向がある。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、50〜5000nmが好ましく、200〜2000nmがより好ましい。また、2層以上の有機層をする場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
【0045】
(有機無機ハイブリッド層)
本発明のガスバリア性フィルムには、有機無機ハイブリッド層を設けることもできる。有機無機ハイブリッド層とはポリマーの中に金属化合物が分散した層のことである。有機無機ハイブリッド層は本発明においては有機層として定義される。ポリマーとしては、上記有機層で述べたポリマーを好ましく用いることができる。また、金属化合物としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSiおよび/またはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
有機無機ハイブリッド層の形成方法としては、塗布法、ゾルーゲル法、あるいはこれらの組み合わせを用いることができる。有機無機ハイブリッド層の厚みは、50〜5000nmが好ましく、200〜2000nmがより好ましい。
【0046】
(その他の機能層)
本発明のガスバリア性フィルムは、透明な可撓性基材と窒化珪素膜との間に、公知のプライマー層または無機薄膜層を設置することができる。前記プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。前記無機蒸着層としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ等の蒸着層が好ましい。前記無機蒸着層は真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することができる。
【0047】
さらに本発明のガスバリア性フィルムには、これら以外に、種々の機能層を設置してもよい。該機能層の例としては、反射防止層、偏光層、カラーフィルター、および光取出効率向上層等の光学機能層;ハードコート層や応力緩和層等の力学的機能層;帯電防止層や導電層などの電気的機能層;防曇層;防汚層;被印刷層などが挙げられる。これらの機能層は、透明な可撓性基材または窒化珪素膜に接するように設置してもよく、窒化珪素膜が設置された可撓性基材の反対側の面に設置してもよい。
【0048】
例えば、可撓性基材として平衡含水率の低い基材を用いる場合は、可撓性基材の帯電が起こりやすくなる傾向があるため、可撓性基材の表面に帯電防止層を好ましく設置することができる。ここでいう帯電防止層とは、50℃、相対湿度30%における表面抵抗値が1Ω/□〜1013 Ω/□である層をいう。前記帯電防止層の50℃、相対湿度30%における表面抵抗値は、1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることが好ましく、1×108/□〜1×1011Ω/□であることが好ましく、1×108Ω/□〜1×109Ω/□であることが特に好ましい。このような帯電防止層を設けることによって、パーティクルを吸着して製膜した膜の性能を損ねたり、接着によるハンドリング不良を生じたりすることを防ぐことができる。
【0049】
<有機EL素子>
有機EL素子は、基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。このような有機EL素子の詳細については、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0050】
本発明の非晶質窒化珪素膜や本発明のガスバリア性フィルムは、有機EL素子の製造に好ましく用いられる。具体的には、本発明のガスバリア性フィルムは、有機EL素子の基板として好ましく用いられる。また、本発明の非晶質窒化珪素膜と本発明のガスバリア性フィルムは、有機EL素子の封止に好ましく用いられる。すなわち、有機EL素子自体を支持体として、その表面に本発明の方法にしたがって非晶質窒化珪素膜を設けることにより封止を行うことができる。あるいは、本発明の方法にしたがって可撓性支持体上に非晶質窒化珪素膜を設けたガスバリア性フィルムを用いて、有機EL素子を封止することもできる。ガスバリア性フィルムを用いる場合は、固体封止法による封止のためのフィルムとして用いることもできる。固体封止法とは有機EL素子の上に保護層を形成した後、接着剤層とガスバリア性フィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤の種類については特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0051】
<その他の用途>
本発明の非晶質窒化珪素膜や本発明のガスバリア性フィルムは、有機EL素子以外にも様々な用途に用いることが可能である。例えば、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。そのようなデバイスの例としては、有機EL素子以外に、例えば液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
(実施例1)窒化珪素膜の製膜
直径100mm、厚さ500μmのSiウエハを用意し、その表面にプラズマCVD法で非晶質窒化珪素膜を1層設けることにより試料No.1〜21を作製した。具体的には、電極間距離を表1に示す通りに調整したプラズマCVD装置の真空チャンバーを、ドライポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力0.0001Paまで減圧した後に、チャンバー内にシランガス(SiH4:50sccm)、アンモニアガス(NH3:25sccm)、窒素ガス(N2:425sccm)および水素ガス(H2)を導入した。水素ガスの導入量は、シランガスに対する水素ガスの比(H2/SiH4)が表1に示す比となるように調整した。ただし、試料1〜5では水素ガスを導入しなかった。7100W/m2の放電電力を印加して、温度25℃、成膜圧力10Paで膜厚が150nmになるように成膜した。作製した各試料の物性を以下の方法で評価し、その結果を表1にまとめて示した。
【0054】
(1)密度
GIXR法により製膜された膜密度を測定し、以下の基準により評価した。
○ 密度が2.45g/m2以上
△ 密度が2.40g/m2以上、2.45g/m2未満
× 密度が2.40g/m2未満
【0055】
(2)水蒸気透過率
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W3/31)を用いて、40℃・相対湿度90%の条件下で各試料の水蒸気透過率を測定した。また、前記測定装置の測定限界である0.01g/m2/day以下の値は、次の方法を用いて補完した。まず、試料上に直に金属Caを蒸着し、蒸着Caが内側になるよう該フィルムとガラス基板を市販の有機EL用封止材で封止して封止試料を作成した。次に該封止試料を前記の温湿度条件に保持し、金属Caの光学濃度変化(水酸化あるいは酸化により金属光沢が減少)から水蒸気透過率を求めた。
【0056】
(3)耐酸化性
各試料を40℃・相対湿度90%の条件下で3週間保管した後、エッチングESCAにより表面自然酸化層を除いた膜中のSi,N,O組成を測定した。保管前に対して酸素組成比が増加しているか否かにより、以下の基準により評価した。
○ 酸素組成比の増加が5%未満
× 酸素組成比の増加が5%以上
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例2)ガスバリア性フィルムの製造
可撓性基材として、厚さ100μmのPET(東レ(株)製、ルミラーT60)とPEN(帝人デュポンフィルム(株)製、テオネックスQ65FA)を用意した。
図1に示すロール トゥ ロール方式の容量結合型プラズマCVD装置を用いて、各可撓性基材上に窒化珪素膜を形成した。すなわち、プラスチックフィルム(6)として上記各可撓性基材を設置し、これを送り出しロール(4)に掛け、巻き取りロール(5)まで通した。容量結合プラズマCVD装置(1)への基材の準備が終了した後、真空槽(2)の扉を閉めて真空ポンプ(10)を起動し、真空引きを開始した。到達圧力が4×10-4Paとなったところで、シランガス(SiH4:50sccm)、アンモニアガス(NH3:25sccm)、窒素ガス(N2:425sccm)および水素ガス(H2)を導入して高周波電源(11)をONし、10Paで60MHzの高周波を放電電力7100W/m2で印加し、放電の安定を確認してから、プラスチックフィルム(6)の走行を開始し、膜き取りロール(5)に巻き取り終わるまで窒化珪素膜の成膜を行った。
その結果、優れたガスバリア性と耐酸化性を有するロール状のガスバリア性フィルムが得られた。
【0059】
(実施例3)有機EL素子の製造
実施例2で製造したガスバリア性フィルムを25mm×25mmに切り出し、その表面に直流電源を用いてスパッタ法にてインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)の陽極を形成した(厚み0.2μm)。この陽極上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着法にて10nm設け、その上に正孔輸送層として、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンを真空蒸着法にて40nm設けた。この上にホスト材として4,4’−N,N’−ジカルバゾ−ルビフェニル、青発光材としてビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナート−N,C2'](ピコリネート)イリジウム錯体(Firpic)、緑発光材としてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、赤発光材としてビス(2 −フェニルキノリン)アセチルアセトナ−トイリジウムをそれぞれ100/2/4/2の質量比になるように共蒸着して40nmの発光層を得た。さらにその上に電子輸送材として2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]を1nm/秒の速度で蒸着して24nmの電子輸送層を設けた。この有機化合物層の上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でフッ化リチウムを1nm蒸着し、さらにアルミニウムを100nm蒸着して陰極を設けた。陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリード線を出して発光素子を作成した。該素子を窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ガラスキャップと紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)で封止して発光素子を作製した。
【0060】
(実施例4)有機EL素子の封止
実施例3におけるガラスキャップによる封止の代わりに、実施例1の試料7〜16の各製膜条件と同じ条件で厚み300nmの窒化珪素膜を製膜することにより封止した。これによって、ガラスキャップと同等の優れたバリア性を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の非晶質窒化珪素膜は、高い密度を有していて、十分なガスバリア性を示し、耐酸化性も高いため、応用範囲が極めて広い。本発明の非晶質窒化珪素膜の製造方法によれば、そのような優れた性質を有する非晶質窒化珪素膜をプラズマCVD法により簡便に製造することができるため、工業上の利用可能性が高い。また、本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を示し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は耐久性に優れているため、産業上の利用可能性も高い。
【符号の説明】
【0062】
1 容量結合型プラズマCVD装置
2 真空槽
3 ドラム型電極(接地もしくはバイアス電源を接続)
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 RF電源(オートマッチャー付き)
12 RF側電極
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波放電を利用したプラズマCVD法による非晶質窒化珪素膜の製造方法において、シランガスと、水素ガスと、アンモニアガスまたは窒素ガスの少なくとも一方とを含む混合ガスを用いて、電極間距離を50〜100mmとし、シランガスに対する水素ガスの流量比(H2/SiH4)を0.5〜3.0として非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項2】
前記成膜した非晶質窒化珪素膜を40℃・相対湿度90%の条件下に3週間保管前後において、膜を構成する元素Si、O、Nの総量に対するOの割合の変化が、5%未満であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項3】
前記混合ガスの圧力を1〜200Paとして非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする請求項1または2に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項4】
前記高周波放電の周波数を10MHz〜80MHzとして非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマCVD法の投入電力密度を4000〜25000W/m2として非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項6】
200℃以下の温度で非晶質窒化珪素膜を成膜することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法により製造される非晶質窒化珪素膜。
【請求項8】
厚みが10〜1000nmであることを特徴とする請求項7に記載の非晶質窒化珪素膜。
【請求項9】
密度が2.4g/cm3以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の非晶質窒化珪素膜。
【請求項10】
可撓性基材の少なくとも一方の面に、請求項7〜9のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜を有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項11】
前記可撓性基材が、さらに有機層を有することを特徴とする請求項10に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のガスバリア性フィルム上に有機エレクトロルミネッセンス素子を製膜する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
有機エレクトロルミネッセンス素子に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法により非晶質窒化珪素膜を製膜することにより前記有機エレクトロルミネッセンス素子を封止する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項14】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子を成膜後、大気に曝すことなく真空中で前記非晶質窒化珪素膜を製膜することを特徴とする請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項15】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の非晶質窒化珪素膜を用いて封止した有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
請求項10または11に記載のガスバリア性フィルムを基板に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項10または11に記載のガスバリア性フィルムを用いて封止した有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36460(P2012−36460A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178507(P2010−178507)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(510207025)
【Fターム(参考)】