説明

非水二次電池などの集電積層体の導電性保護層形成用ペースト

【課題】高電圧仕様においても電池特性を損なわずに腐食から集電体を保護できる集電積層体の導電性保護層形成用ペースト、該導電性保護層を有する集電積層体、電極積層体、およびリチウム二次電池や電気二重層キャパシタなどの非水二次電池を提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンと導電性フィラー(b)とを含む集電体保護用の導電性保護層形成用ペースト、および該導電性保護層形成用ペーストを塗布して得られる導電性保護層(A)が集電体(B)上に設けられてなる集電積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの非水二次電池や電気二重層キャパシタなどの集電積層体の導電性保護層形成用ペースト、集電積層体及び電極積層体、さらにはリチウム二次電池及び電気二重層キャパシタなどの非水二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池には、アルミニウム箔などの正極集電体上にリチウム含有複合酸化物などの正極活物質を含む正極合剤層が設けられている正極と、アルミニウム箔などの負極集電体上に炭素質材料などの負極活物質を含む負極合剤層が設けられている負極と、リチウム塩などの電解質塩と有機溶媒とを含む非水電解液とが備えられている。
【0003】
このような構成のリチウム二次電池において、電解液中に含まれるリチウム塩などの電解質の作用により、集電体が陽極酸化されて腐食し、サイクル特性や電池容量が低下してしまうという問題がある。
【0004】
こうした集電体の腐食を防止又は抑制するために、特許文献1では、複素環式化合物を含む表面保護層を集電体上に形成することが提案されている。また、特許文献2では、集電体上に、電解質塩であるリチウムイミド塩による正極集電体(アルミニウム箔)の腐食を防止するために、貴金属、合金、導電性セラミックス、半導体、有機半導体及び導電性ポリマーから選ばれる少なくとも1種の材料を含む保護層を形成することが提案されており、導電性ポリマーとしてはポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリジスルフィド、ポリパラフェニレンが例示されている。導電性ポリマーを用いた保護層の形成法の1つとして、溶媒に導電性ポリマーと結合剤とドーパン(芳香性スルホン酸エステル)とを溶解した混合溶液をキャスティング又は塗布し、加熱乾燥する方法が例示されている。
【0005】
また、特許文献3には、カーボンブラックを含むスラリーを集電体にスプレー塗装して導電性接着膜を形成することが記載されている(段落[0039])。
【0006】
さらに特許文献4には、集電体保護層を形成するペーストの結着剤としてエポキシ樹脂を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−162833号公報
【特許文献2】特開2002−203562号公報
【特許文献3】特開2008−117574号公報
【特許文献4】特開2006−303381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、近年、電池に対する要求特性が厳しくなり、さらなる高電圧化(たとえば4.35V以上)が求められている。高電圧仕様になると、集電体の腐食はさらに進み、その保護が重要な課題となる。
【0009】
また、小型で高電気容量のリチウム二次電池としては、電極を巻いた方式(巻回型又はスパイラル型)が主流であり、したがって、電極に高い柔軟性が求められている。
【0010】
この観点から、特許文献1に記載されている複素環式化合物の表面保護層では酸化電位の点で不充分であり、また、特許文献2に記載の材料では、電極が硬くなり柔軟性に欠けるほか、リチウムイミド塩がアルミニウム箔を腐食することを防止する点では有効であるが高電圧で使う場合、不充分である。
【0011】
特許文献3にはカーボンブラックを配合することは記載されているが、結着剤については全く記載がない。
【0012】
特許文献4で結着剤として使用するエポキシ樹脂は耐電圧が低く、上記のような高電圧が要求される仕様(用途)には使用が困難である。
【0013】
本発明は、高電圧仕様においても電池特性を損なわずに、腐食から集電体を保護できる集電積層体の導電層形成用ペースト、該導電層を有する集電積層体、電極、及びリチウム二次電池や電気二重層キャパシタなどの非水二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレンと導電性フィラー(b)とを含む集電体保護用の導電性保護層形成用ペーストに関する。
【0015】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、また、ポリテトラフルオロエチレンと導電性フィラー(b)に加えて、更に、溶剤を含むもの(以下、「導電性保護層形成用ペースト(I)」)ともいう。)であることが好ましい。
【0016】
導電性保護層形成用ペースト(I)において、上記導電性フィラー(b)は、PTFE100質量部に対して5〜1000質量部含まれていることが好ましい。
【0017】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(a)と導電性フィラー(b)を含むもの(以下、「導電性保護層形成用ペースト(II)」)ともいう。)であることが好ましい。
【0018】
導電性保護層形成用ペースト(II)において、上記導電性フィラー(b)は、PTFE分散体(a)中のPTFE粒子100質量部に対して5〜1000質量部含まれていることが好ましい。
【0019】
導電性保護層形成用ペーストは、結着剤として、さらにテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及び、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含んでいてもよい。
【0020】
導電性保護層形成用ペーストにおいて、導電性フィラー(b)は、粒子状フィラー、繊維状フィラー、又はこれらの組合せであってもよい。好ましくは、導電性カーボンフィラーである。
【0021】
本発明はまた、本発明の導電性保護層形成用ペーストを塗布して得られる導電性保護層(A)が集電体(B)上に設けられてなる集電積層体にも関する。
【0022】
導電性保護層(A)の体積抵抗率は、0.001〜50Ω・cmであることが好ましい。
【0023】
本発明は更に、本発明の集電積層体の導電性保護層(A)上に、電極合剤層(C)が設けられてなる電極積層体にも関する。
【0024】
本発明はそして、正極、負極及び非水電解液を備え、正極及び負極の少なくとも一方が本発明の電極積層体である非水二次電池、特にリチウム二次電池、又は電気二重層キャパシタにも関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導電性保護層形成用ペーストによれば、高電圧仕様においても電池特性を損なわずに腐食から集電体を保護できる集電積層体、電極積層体、及びリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で作製した本発明の集電積層体の酸化電位(CV)測定の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、PTFEと導電性フィラー(b)を含むことによって、高電圧仕様においても電池特性を損なわずに、集電体を腐食から保護することができる。また、導電性保護層形成用ペーストから得られる保護層は、電極の柔軟性を損なわない点でも有利である。
【0028】
以下、各成分について説明する。
【0029】
PTFEとしては、TFEの単独重合体でも、また極少量のヘキサフルオロプロピレン(HFP)やパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などの他のモノマーで変性された変性PTFEでもよい。分子量は繊維化し得る程度の高分子量であればよく、たとえば100万〜500万程度である。
変性PTFEは、他のモノマーに基づく重合単位が1モル%未満の重合体である。
【0030】
PTFEは、PTFE水性分散体から得られるPTFE粒子であることが好ましい。このようなPTFE水性分散体としては、後述するPTFE水性分散体(a)があげられる。PTFE粒子の平均一次粒子径は、0.1〜0.5μmであることが好ましい。平均一次粒子径は、光レーザー散乱法で測定した値である。
【0031】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、PTFEに加えて、結着剤として、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びテトラフルオロエチレン(TFE)−フッ化ビニリデン(VdF)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。集電体との密着性の観点から、より好ましくは、TFE−HFP共重合体(FEP)、及び、TFE−VdF共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。なお、FEP、及び、TFE−VdF共重合体は、TFE以外のモノマーに基づく重合単位が1モル%以上の共重合体である。
【0032】
他の樹脂の割合は、PTFE(固形分)100質量部に対して300質量部以下、さらには200質量部以下であり、下限は10質量部程度が好ましい。これらの樹脂を併用する場合は、集電体との密着性がさらに向上する。
【0033】
そのほか、非フッ素系のゴムを併用してもよい。
【0034】
(b)導電性フィラー
本発明に用いる導電性フィラー(b)は、体積抵抗率が1×10−9〜1Ω・cmのフィラーである。好ましい体積抵抗率は1×10−8〜1×10−1Ω・cmである。
【0035】
導電性フィラー(b)は、粒子状フィラー、繊維状フィラー、又は、これらの組合せであってもよい。
【0036】
中でも、導電性フィラー(b)としては、導電性カーボンフィラーが好ましい。
【0037】
粒子状の導電性カーボンフィラーとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ナノポーラスカーボン、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、ファーネスブラック、チャネルブラックなどが例示でき、なかでも耐薬品性及び導電性が良好で、組成物の流動性も良好な点からは、ナノポーラスカーボン及びグラファイトからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、また耐薬品性及び導電性が良好な点からは、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。平均粒子径としては0.02〜50nm、さらには0.025〜40nmであることが、導電性が良好な点から望ましい。カーボンフィラーの平均粒子径は、有機溶剤に分散したのち光レーザー散乱法で測定することができる。
【0038】
繊維状の導電性カーボンフィラーとしては、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが例示でき、なかでも、導電性が良好な点から、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、カーボン繊維、特に気相法で製造した炭素繊維がコストパフォーマンスが良好な点から好ましい。繊維状カーボンは平均繊維径が0.1〜200nm、さらには1〜200nmであることが、導電性が良好な点から好ましい。また、50nm以下であることも好ましい。さらに、平均繊維長/平均繊維径の比率は、5以上、さらには10以上であることが、導電性が良好な点から好ましい。また、1000以下、さらには500以下であることが、組成物の調製が容易である点から好ましい。
【0039】
また、導電性フィラー(b)としては、なかでもケッチェンブラック、アセチレンブラック、ナノポーラスカーボン、グラファイト、カーボン繊維、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーからなる群から選ばれる少なくとも1種であるフィラーが好ましい。
【0040】
粒子状カーボンフィラーと繊維状カーボンフィラーは併用してもよい。併用するときには、たとえば後述する保護膜の導電性の縦横比がさらに制御しやすくなるほか、保護膜の導電性が単独使用よりも、より一層向上するという効果が奏される。粒子状カーボンフィラー/繊維状カーボンフィラーの混合比(質量比)としては、10/90以上、さらには20/80以上であることが、組成物に良好な流動性を与える点から好ましい。また、90/10以下、さらには80/20以下であることが保護膜における導電性の縦横比の制御が容易な点から好ましい。
【0041】
本発明の導電性保護層形成用ペーストにおいて、導電性フィラー(b)の配合量は、PTFE100質量部に対して5〜1000質量部であることが好ましい。5質量部を下回るときは保護膜の導電性が不十分となるおそれがあり好ましくない。一方、1000質量部を超えると、組成物の調製が難しくなるおそれがあり好ましくない。より好ましい上限としては、成形時の安定性が良好な点から、500質量部であり、更に好ましくは300質量部であり、特に好ましくは200質量部であり、導電性保護層形成用ペーストの調製が容易である点から、100質量部が最も好ましい。
【0042】
本発明の導電性保護層形成用ペーストにおいては、導電性カーボンフィラーと金属系フィラーとを併用してもよい。金属系フィラーを併用する場合、導電性フィラー(b)と金属系フィラーとの合計が、PTFE100質量部に対して5〜1000質量部であることが好ましい。上限は、500質量部であることがより好ましく、300質量部であることが更に好ましく、200質量部であることが特に好ましく、100質量部であることが最も好ましい。
導電性カーボンフィラーと金属系フィラーとの組合せとしては、粒子状カーボンフィラーと粒子状及び/又は繊維状の金属系フィラーとの組み合わせ、繊維状カーボンフィラーと粒子状及び/又は繊維状の金属系フィラーとの組み合わせであり、要求性能に応じて適宜選択する。また、混合比も各フィラーの導電性の程度や重量、生成した導電層の弾性、柔軟性などを考慮して適宜選定すればよい。
【0043】
導電性フィラー(b)に加えて、又はその一部に代えて非導電性(体積抵抗率が1Ω・cmを超える)のフィラーを併用してもよい。非導電性のフィラーとしては、非導電性のカーボンフィラー、非導電性の無機酸化物フィラー、非導電性の樹脂フィラーなどをあげることができる。具体的には非導電性のカーボンブラック、非導電性のオースチンブラック、非導電性のグラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、非導電性のカーボンナノチューブ、非導電性の黒鉛化カーボンブラックなどの非導電性のカーボンフィラー;シリカ、シリケート、クレー、ケイソウ土、モンモリロナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、脂肪酸カルシウム、酸化チタン、ベンガラ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの非導電性の無機酸化物フィラー;ポリエチレン、耐熱エンジニアリングプラスチックス、PTFEを基にするテトラフルオロエチレンとエチレンからなるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などのフルオロポリマー、ポリイミドなどの非導電性の樹脂フィラーなどをあげることができる。配合量は、配合することによる効果と、導電性フィラー(b)の導電性の程度や重量、生成した導電層の弾性、柔軟性などを考慮して適宜選定すればよい。
【0044】
本発明の導電性保護層形成用ペーストには、さらに、加工助剤、及び架橋によって硬化する接着剤(シランカップリング剤、エポキシ、フェノール樹脂系)などを本発明の目的を損なわない限り使用してもよい。
【0045】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、ポリテトラフルオロエチレンと導電性フィラー(b)に加えて、更に、溶剤を含む導電性保護層形成用ペースト(I)であることが好ましい。溶剤は、通常、水、有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤である。
乾燥工程の短縮、低温化の観点からは、溶剤は、水、又は、水と有機溶剤との混合溶剤が好ましく、水であることがより好ましい。
カーボンの分散性向上の観点からは、溶剤は、有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤が好ましく、有機溶剤であることがより好ましい。
溶剤の量は、塗装に適切な濃度となる量であればよい。
【0046】
有機溶剤としては、たとえばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸ブチル、エチルセロソルブ、メチルセロソルブなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライムなどのエーテル類などの極性溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒が例示できる。アルコール類なども併用してもよい。
【0047】
本発明の導電性保護層形成用ペーストは、ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(a)と導電性フィラー(b)を含む導電性保護層形成用ペースト(II)であることも好ましい形態の一つである。
【0048】
本発明の導電性保護層形成用ペースト(II)は、PTFE水性分散体(a)に導電性フィラー(b)を加えて調製される。したがって、溶剤は水である。ただ、塗布性を向上させる点から有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、導電性保護層形成用ペースト(I)で例示したものがあげられる。たとえばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸ブチル、エチルセロソルブ、メチルセロソルブなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライムなどのエーテル類などの極性溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒が例示できる。アルコール類なども併用してもよい。
【0049】
ポリテトラフルオロエチレン分散体(a)中のポリテトラフルオロエチレン(固形分)100質量部に対して導電性フィラー(b)が5〜1000質量部含まれているものであることが好ましい。上限は500質量部であることがより好ましく、300質量部であることが更に好ましく、200質量部であることが特に好ましく、100質量部であることが最も好ましい。
【0050】
(a)PTFE水性分散体
PTFE水性分散体(a)としては、乳化重合で得られたPTFE水性分散体(ディスパージョン)が好ましい。水性分散体中のPTFE粒子は一次粒子(平均粒径が0.1〜0.5μm)として分散していることが好ましい。
【0051】
PTFE水性分散体の固形分(PTFE粒子)濃度としては、水性分散体の安定性が良好な点から1〜80質量%、さらには10〜70質量%程度が好ましい。
【0052】
本発明の導電性保護層形成用ペーストの調製は、通常の混合方法により各成分を混合すればよい。
【0053】
たとえば、本発明の導電性保護層形成用ペーストは、PTFE水性分散体(a)に導電性フィラー(b)を加えて調製することができる。また、塗布性を向上させる点から、PTFE水生分散液(a)に導電性フィラー(b)を加える前又は後に、有機溶剤を加えて調製してもよい。この場合、溶剤は水又は水と有機溶剤との混合溶剤である。
また、PTFE水性分散体(a)を有機溶剤に転相してオルガノゾルとして、その後、導電性フィラー(b)を加えてもよい。この場合、溶剤は、有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤である。
【0054】
本発明における導電性保護層(A)は、本発明の導電性保護層形成用ペーストを集電体(B)に適用して形成され、集電積層体を構成する。
本発明の導電性保護層形成用ペーストから形成される導電性保護層(A)は、集電体を保護するために設けられるものであり、集電体と電極合剤層(C)との間に設けられる層であることが好ましい。
【0055】
導電性保護層(A)において、PTFEと導電性フィラー(b)の配合割合は、上記の導電性保護層形成用ペーストで説明した割合である。PTFE及び導電性フィラー(b)以外の成分の配合割合も上記の導電性保護層形成用ペーストと同じである。
【0056】
導電性保護層(A)の形成方法は、従来公知の方法でよい。たとえばローラーコート法、刷け塗り法、ディップコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、コイルコート法、カーテンフローコート法などにより集電体に塗布し、周囲温度で自然乾燥させるか加熱乾燥させることにより保護層を形成する。
【0057】
こうして得られる導電性保護層(A)は、体積抵抗率を0.001〜50Ω・cmの範囲で制御することができ、必要に応じて0.001〜10Ω・cm、さらには1Ω・cm以下という高導電性の保護層を提供できる。
【0058】
導電性保護層(A)の厚さは、0.5〜50μmの範囲で適宜選定すればよく、たとえば抵抗を低くする観点から0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、電極の作成の点から50μm以下、さらには10μm以下が好ましい。
【0059】
つぎに集電体(B)について説明する。
【0060】
本発明は、電解液中のリチウム塩により腐食が進行する材料に対して特に有効である。かかる集電体(B)を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム又はその合金、ステンレス鋼、ニッケル又はその合金、チタン又はその合金、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン又はチタンを処理させたものが用いられる。これらの中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が特に保護される集電体(B)としてあげられる。これらの材料は表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体(B)表面に凹凸を付けることにより接着性が上がるため好ましい。集電体(B)の厚さは、通常5〜30μmの範囲である。
【0061】
本発明の集電積層体は、正極に使用しても負極に使用してもよい。特に、集電体の腐食が激しい正極に用いるときに大きな効果が奏される。
【0062】
本発明はまた、本発明の集電積層体の導電性保護層(A)上に、電極合剤層(C)が設けられてなる電極積層体にも関する。
【0063】
電極合剤層(C)を形成する電極合剤は電極活物質と結着剤を含み、さらに要すれば、他の材料を配合して調製される。本発明においては、従来公知の正極合剤及び負極合剤を使用できるが、特に高電圧仕様の電極合剤の場合に有効である。
【0064】
正極活物質としては特に、高電圧を産み出すリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく、たとえば式(1):LiMn2−b(式中、0.9≦a;0≦b≦1.5;MはFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・マンガンスピネル複合酸化物、式(2):LiNi1−c(式中、0≦c≦0.5;MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・ニッケル複合酸化物、又は式(3):LiCo1−d(式中、0≦d≦0.5;MはFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・コバルト複合酸化物が好ましい。
【0065】
なかでも具体的には、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiNi0.8Co0.15Al0.05、又はLiNi1/3Co1/3Mn1/3が、エネルギー密度が高く、高出力なリチウム二次電池を提供できる点から好ましい。
【0066】
そのほか、LiFePO、LiNi0.8Co0.2、Li1.2Fe0.4Mn0.4、LiNi0.5Mn0.5、LiVなどの正極活物質でもよい。
【0067】
正極活物質の配合量は、正極合剤の50〜99質量%、さらには80〜99質量%が、電池容量が高い点から好ましい。
【0068】
負極活物質としては炭素材料があげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物や金属窒化物などもあげられる。炭素材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、メソカーボンマイクロビーズ、炭素ファイバー、活性炭、ピッチ被覆黒鉛などがあげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物としては、スズやケイ素、チタンを含む金属化合物、たとえば酸化スズ、酸化ケイ素、チタン酸リチウムなどがあげられ、金属窒化物としては、Li2.6Co0.4Nなどがあげられる。
【0069】
負極活物質の配合量は、負極合剤の50〜99質量%、さらには80〜99質量%が、電池容量が高い点から好ましい。
【0070】
結着剤としては、フッ素系樹脂や非フッ素系樹脂、ゴムなどがあげられる。
【0071】
フッ素系樹脂としては、PTFE及びPVdFからなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。PTFEはテトラフルオロエチレンの単独重合体であってもよいし、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)やパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などの他の単量体が少量共重合された変性PTFEであってもよい。
【0072】
非フッ素系樹脂としては、ポリアクリル酸などがあげられる。また、ゴムとしてはエチレン−プロピレン/ジエン共重合体ゴム(EPDM)やスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)などもあげられる。
【0073】
結着剤の配合量は、電極合剤の0.5〜15質量%、さらには0.5〜10質量%が、電池容量が高い点から好ましい。
【0074】
他の成分としては、電極合剤の密着性を向上させるためや活物質の利用率向上のためのTFE−HFP共重合体樹脂、ETFE、VdF系共重合体樹脂などのフッ素樹脂;柔軟性を向上させるためのフッ素ゴムやアクリルゴム;耐電圧を向上させるための酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂;リチウム二次電池の電極の製造に使用する添加剤、たとえば電極作成には導電材、増粘剤、他の重合体、界面活性剤などがあげられる。導電材としては、たとえばアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック;グラファイト、炭素繊維などの炭素質材料があげられる。
【0075】
電極合剤層(C)の形成は、これらの成分を要すれば適切な溶剤を用いて適宜混合し、均一な混合物として電極合剤形成用組成物を調製し、集電積層体の導電性保護層(A)上に、スピンコート、ブレードコート、ロールコート、ディップコートなどの方法で行うことができる。
【0076】
乾燥処理された電極は、通常、要すればさらに圧延処理された後、切断処理され、所定の厚さと寸法に加工されてリチウム二次電池用電極が得られる。圧延処理及び切断処理は、通常の方法でよい。
【0077】
本発明の電極積層体は、集電体がPTFEを結着剤とする保護層で電解液中のリチウム塩から保護されているため、高い作動電圧でも集電体の腐食を抑制でき、サイクル特性などの電池特性の劣化を抑えることができる。
【0078】
また、本発明は非水二次電池、特にリチウム二次電池にも関する。本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及び非水電解液を備えており、正極及び/又は負極として本発明の電極積層体を用いたものである。
【0079】
なお、本発明の電極以外の電極を正極又は負極の一方に用いる場合、それらの正極又は負極は従来公知の電極を用いることができる。しかし、好ましくは柔軟性の課題が大きい正極に本発明の電極を用いることが好ましい。
【0080】
非水電解液も、電解質塩と電解質塩の溶解用の有機溶媒を含む電解液でリチウム二次電池に使用される非水電解液であれば特に制限されない。
【0081】
電解質としては、たとえばLiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SOなどの公知の電解質塩が例示でき、有機溶媒としては、たとえばエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭化水素系溶媒;HCFCFCHOCFCFH、CFCOOCF、CFCOOCHCFなどのフッ素系溶媒、これらの混合溶媒などが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0082】
本発明のリチウム二次電池にはセパレータを配置してもよい。セパレータとしては特に制限はなく、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどがあげられる。また、Liデントライトによって起こる短絡などの安全性向上を目的として作られたセパレータ上にアラミド樹脂を塗布したフィルムあるいはポリアミドイミド及びアルミナフィラーを含む樹脂をセパレータ上に塗布したフィルムなどもあげられる(たとえば特開2007−299612号公報、特開2007−324073号公報参照)。
【0083】
本発明のリチウム二次電池は、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウム二次電池、携帯電話、携帯情報端末などの小型のリチウム二次電池などとして有用である。
【0084】
また本発明は、本発明の電極を用いた電気二重層キャパシタにも関する。電気二重層キャパシタの基本構造は、電極として本発明の電極を用いるほかは従来のものと同じである。
【実施例】
【0085】
つぎに実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
本発明において採用した測定方法、評価方法は以下のとおりである。
【0087】
(膜厚測定)
(株)ミツトヨ製のクイックマクロMDQ−30Mを用いて測定する。
【0088】
(体積抵抗率の測定)
三菱化学アナリテック(株)製のLoresta−GPを使用し、4端子法で体積抵抗率を測定する。
【0089】
(酸化電位測定)
集電積層体を0.5×0.7cmの大きさに切断し、ニッケル線を抵抗溶接で溶接してCV用の電極を作製する。また、測定用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/メチルエチルカーボネート(MEC)(=30/70体積%)の電解質塩溶解用溶媒に電解質塩としてLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように加えた電解液を使用する。
【0090】
BAS社製のボルタンメトリー用密閉セル(VC−4)を用い、作用極に上記で作製したCV用の電極を配置し、対極・参照極にLiを用い、上記電解液を3ml入れて測定セルを作製する。作製したセルをポテンショ−ガルバノスタット(ソーラトロン社の1287型)を用い、25℃(一定)にて3Vから5.3Vまで5mV/secでスキャンし、電流変化を測定する。
【0091】
実施例1
PTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製D210C)(a)を固形分濃度20質量%に調整したPTFE水性分散体100gに、導電性フィラー(b)としてのアセチレンブラック(平均粒子径35nm)を50g、増粘剤としてアクリル系樹脂(A10H)を2g入れて導電性保護層形成用ペーストを調製した。ついで、このペーストを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、片面に導電性含フッ素樹脂層(厚さ5μm)を形成し、熱風乾燥機で80℃にて10分間乾燥した。また、反対(裏)面にも同様にして調製したペーストを塗布して乾燥したのち、プレスを行い、両面に導電性含フッ素樹脂層(合計厚:10μm)を形成し、真空乾燥機で真空に引いたのち、120℃にて1時間乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
得られた正極集電積層体について、酸化電位(CV)を測定した。結果を図1に示す。
【0093】
参考例
導電性保護層が形成されていないアルミニウム箔について、実施例1と同様に酸化電位を測定した。結果を図1に示す。
【0094】
図1の結果から、アルミニウム箔だけの参考例では4.7V付近に大きなピークを持ち、この段階で酸化されていると考えられるが、導電性保護層を形成した実施例1では5.3Vまで大きなピークが見られない。このことから、導電性保護層を形成することによりアルミニウム箔が酸化されていないことが分かる。
【0095】
実施例2
PTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製D210C)(a)とFEP水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製ND110)を固形分比率(質量比)で6/4に混合し、ついで固形分濃度20質量%に調整した水性分散体100gを調製した。導電性フィラー(b)としてのアセチレンブラック(平均粒子径35nm)を50g、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を1g入れて導電性保護層形成用ペーストを調製した。ついで、このペーストを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、片面に導電性含フッ素樹脂層(厚さ5μm)を形成し、熱風乾燥機で80℃にて10分間乾燥した。また、反対(裏)面にも同様にして調製したペーストを塗布して乾燥したのち、プレスを行い、両面に導電性含フッ素樹脂層(合計厚:10μm)を形成し、真空乾燥機で真空に引いたのち、250℃にて10時間乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例3
PTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製D210C)(a)とFEP水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製ND110)を固形分比率(質量比)で6/4に混合し、ついで、メチルイソブチルケトン(MIBK)に転相し、さらに固形分濃度20質量%に調整したオルガノゾルを100g調製した。これに導電性フィラー(b)としてのアセチレンブラック(平均粒子径35nm)を50g入れて導電性保護層形成用ペーストを調製した。ついで、このペーストを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、片面に導電性含フッ素樹脂層(厚さ5μm)を形成し、熱風乾燥機で80℃にて10分間乾燥した。また、反対(裏)面にも同様にして調製したペーストを塗布して乾燥したのち、プレスを行い、両面に導電性含フッ素樹脂層(合計厚:10μm)を形成し、真空乾燥機で真空に引いたのち、250℃にて10時間乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
実施例4
実施例2において、アセチレンブラックに代えてケッチェンブラックを用いたほかは同様の方法で導電性保護層形成用ペーストを調製し、実施例2と同様にして正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)に塗布し乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例5
実施例2において、アセチレンブラックに代えて気相法炭素繊維(平均繊維長:15μm、平均繊維径:150nm。昭和電工(株)製のVGCF(登録商標))を用いたほかは同様の方法で導電性保護層形成用ペーストを調製し、実施例2と同様にして正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)に塗布し乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
実施例6
実施例2において、アセチレンブラックの配合量を150gに変更したほかは同様の方法で導電性保護層形成用ペーストを調製し、実施例2と同様にして正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)に塗布し乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
実施例7
実施例2において、アセチレンブラックの配合量を2.5gに変更したほかは同様の方法で導電性保護層形成用ペーストを調製し、実施例2と同様にして正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)に塗布し乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
実施例8
PTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製D210C)(a)とP(TFE−VDF)〔TFE−VdF共重合体〕水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製VT470)を固形分比率(質量比)で6/4に混合し、ついで、メチルイソブチルケトン(MIBK)に転相し、さらに固形分濃度20質量%に調整したオルガノゾルを100g調製した。これに導電性フィラー(b)としてのアセチレンブラック(平均粒子径35nm)を50g入れて導電性保護層形成用ペーストを調製した。ついで、このペーストを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、片面に導電性含フッ素樹脂層(厚さ5μm)を形成し、熱風乾燥機で80℃にて10分間乾燥した。また、反対(裏)面にも同様にして調製したペーストを塗布して乾燥したのち、プレスを行い、両面に導電性含フッ素樹脂層(合計厚:10μm)を形成し、真空乾燥機で真空に引いたのち、250℃にて10時間乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
実施例9
PTFE水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製D210C)(a)とP(TFE−VDF)水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製VT470)を固形分比率(質量比)で8/2に混合し、ついで、N−メチルピロリドン(NMP)に転相し、さらに固形分濃度20質量%に調整したオルガノゾルを100g調製した。これに導電性フィラー(b)としてのアセチレンブラック(平均粒子径35nm)を50g入れて導電性保護層形成用ペーストを調製した。ついで、このペーストを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、片面に導電性含フッ素樹脂層(厚さ5μm)を形成し、熱風乾燥機で80℃にて10分間乾燥した。また、反対(裏)面にも同様にして調製したペーストを塗布して乾燥したのち、プレスを行い、両面に導電性含フッ素樹脂層(合計厚:10μm)を形成し、真空乾燥機で真空に引いたのち、250℃にて10時間乾燥し、導電性保護層が両面に形成された正極集電積層体を作製した。得られた正極集電積層体について、体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1から、得られた積層集電体の導電性保護層は、すべて50Ω・cm以下の高導電性保護層になっていることが分かる。
【0105】
実施例10
実施例1で作製した本発明の正極集電積層体上にLiNi1/3Mn1/3Co1/3とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製。商品名KF−1000)を90/3/7(質量%比)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状とした正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥して正極合剤層(厚さ50μm)を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形して、正極積層体を製造した。
【0106】
得られた正極積層体を用いて次の要領でコイン型リチウム二次電池を作製し、放電容量とサイクル特性を調べた。結果を表2に示す。
【0107】
(コイン型電池の作製)
正極積層体を打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き、円状の正極を作製する。
【0108】
別途、人造黒鉛粉末(日立化成(株)製。商品名MAG−D)に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形し、打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き円状の負極を作製する。
【0109】
上記の円状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して負極と対向させ、電解液(EC/MEC=30/70体積%の電解質塩溶解用溶媒にLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように加えた電解液)を注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウム二次電池を作製する。
【0110】
(電池特性の測定)
コイン型リチウム二次電池について、つぎの要領で放電容量とサイクル特性を調べた。
【0111】
(放電容量)
充放電電流をCで表示した場合、5mAを1Cとして以下の充放電測定条件で測定を行う。評価は、比較例1の放電容量の結果を100とした指数で行う。
【0112】
充放電条件
充電:1.0C、4.7Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:1C 3.0Vcut(CC放電)
【0113】
(サイクル特性)
サイクル特性については、上記の充放電条件(1.0Cで4.7Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)で行う充放電サイクルを1サイクルとし、最初の5サイクル後の放電容量と100サイクル後の放電容量を測定する。サイクル特性は、つぎの計算式で求められた値をサイクル維持率の値とする。
サイクル維持率(%)=100サイクル放電容量(mAh)/5サイクル放電容量(mAh)×100
【0114】
実施例11
実施例2の正極集電体を用いたほかは実施例10と同様にして、正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0115】
実施例12
実施例4の正極集電体を用いたほかは実施例10と同様にして、正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0116】
実施例13
実施例5の正極集電体を用いたほかは実施例10と同様にして、正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0117】
実施例14
実施例6の正極集電体を用いたほかは実施例10と同様にして、正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0118】
実施例15
実施例7の正極集電体を用いたほかは実施例10と同様にして、正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0119】
比較例1
導電性保護層を形成していないアルミニウム箔を用いた以外は実施例10と同様にして正極積層体及びコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。
【0120】
比較例2
エチレンカーボネート/ジメトキシエタン(50/50体積%)の混合溶媒に、1,2,4−トリアゾールを0.03mol・dm−3を溶解した溶液を調製した。ついで、その溶液の中に比較例1で作製した正極積層体を浸漬させた後、取り出し、その正極積層体を使用して実施例10と同様にしてコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0121】
比較例3
アルミニウム箔集電体の両面に低温焼成により厚さが10μmのポリパラフェニレン製の保護層を形成した。その、保護層を形成させたアルミニウム箔集電体の上に実施例10の正極合剤スラリーを塗布し、実施例10と同様にしてコイン型リチウム二次電池を製造し、実施例10と同様にして電池特性(放電容量、サイクル特性)を調べた。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
表2より、実施例の電池は4.7Vで充放電させても比較例と同等以上の放電容量が得られており、また、サイクル特性も向上していることが分かる。これより、アルミニウム箔に本発明の導電性保護層を設けることにより、集電体を酸化劣化から保護することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンと導電性フィラー(b)とを含む集電体保護用の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項2】
更に、溶剤を含む請求項1記載の集電体保護用の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項3】
さらにテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、及び、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む請求項2記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項4】
前記導電性フィラー(b)が、粒子状フィラー、繊維状フィラー、またはこれらの組合せである請求項2又は3記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項5】
前記導電性フィラー(b)が、導電性カーボンフィラーである請求項2〜4のいずれかに記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン100質量部に対して導電性フィラー(b)が5〜1000質量部含まれている請求項2〜5のいずれかに記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項7】
ポリテトラフルオロエチレン水性分散体(a)と導電性フィラー(b)を含む請求項1記載の集電体保護用の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項8】
さらにテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、及び、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む請求項7記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項9】
前記導電性フィラー(b)が、粒子状フィラー、繊維状フィラー、またはこれらの組合せである請求項7又は8記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項10】
前記導電性フィラー(b)が、導電性カーボンフィラーである請求項7〜9のいずれかに記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項11】
前記ポリテトラフルオロエチレン分散体(a)中のポリテトラフルオロエチレン(固形分)100質量部に対して導電性フィラー(b)が5〜1000質量部含まれている請求項7〜10のいずれかに記載の導電性保護層形成用ペースト。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の導電性保護層形成用ペーストを塗布して得られる導電性保護層(A)が集電体(B)上に設けられてなる集電積層体。
【請求項13】
前記導電性保護層(A)の体積抵抗率が0.001〜50Ω・cmである請求項12記載の集電積層体。
【請求項14】
請求項12または13記載の集電積層体の導電性保護層(A)上に、電極合剤層(C)が設けられてなる電極積層体。
【請求項15】
正極、負極および非水電解液を備え、正極および負極の少なくとも一方が請求項14記載の電極積層体であるリチウム二次電池。
【請求項16】
正極、負極および非水電解液を備え、正極および負極の少なくとも一方が請求項14記載の電極積層体である電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−84523(P2012−84523A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203115(P2011−203115)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】