説明

非水系二次電池用電極板およびこれを用いた非水系二次電池

【課題】集電体に過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設け、短絡電流未満の電流が流れるとこの過電流遮断機能を有する部位が溶断する構成としたことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能であり、爆発、発火等を引き起こす事態を回避でき、安全性に優れた非水系二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極集電体20または負極集電体24の少なくともいずれか一方に、薄肉部24a,24bを設け、短絡電流未満の電流が流れるとこの薄肉部24a,24bが溶断する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池用電極板およびこれを用いた非水系二次電池に関し、特に安全性を高めた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウム二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量の二次電池を実現しているが、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、さらなる高容量化が望まれている。これらのリチウム二次電池において、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡することによる急激な温度上昇を抑止することが極めて重要である。
【0003】
従来、この対策として一般的には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなオレフィン系ポリマーを用いてセパレータを構成し、これを正極板と負極板との間に介在させることで、二次電池内に過大な電流が流れることで発生する発熱によりセパレータの微多孔を閉鎖する(シャットダウン機能)ことで安全性を確保している。しかしながら、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の融点が120〜170℃のポリマーをセパレータに用いた場合、シャットダウン後も温度上昇が続いてしまうと、セパレータ自体が溶融してしまい、電流遮断機能が消失してしまうという課題がある。
【0004】
前記課題に対し、電池反応を化学的に抑制する手段として、種々の提案がなされており、例えばアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の無水塩を耐電解液性のマイクロカプセル内に封入して電池内に収納することで、金属表面の活性を低下させ発火に対する消火力を持たせることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
次に、別の化学的抑制手段として、水酸基を有する化学物質または重合開始剤である化学物質を放出するマイクロカプセルを電解液あるいはセパレータ内に分散することで、温度上昇時に電解液を固化することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、別の化学的抑制手段として、過充電,過放電,温度上昇のいずれかにより硬化する熱変性高分子または電解重合性モノマーをマイクロカプセルに封入して電解液に添加することで、温度上昇時に電解液を硬化することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、別の化学的に抑制する手段として、例えば図4に示すように、正極集電体31に形成した正極活物質層32の表面、または負極集電体34に形成した負極活物質層35の表面の少なくとも一方の面に、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂36と、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂を溶解する溶媒Aと、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂を溶解しない溶媒Bと、難燃剤、消炎剤を内包した多孔質マイクロカプセル37とを含む溶液を塗布し乾燥させて多孔質膜を形成したものをセパレータ33として用いることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
一方、異常時に電流遮断する手段として、図5に示すように、熱敏感性抵抗体(図示せず)に120〜170℃の範囲に融点を持つ熱可塑性樹脂の隔壁で形成した中空バルーン表面にニッケルもしくは銅を被覆した導電性マイクロビーズにより構成される熱敏感性抵抗体層43を正極集電体41の表面に成形後、正極活物質層44を成形し、また負極集電
体42の表面に熱敏感性抵抗体層43を成形後、負極活物質層45を形成し、それらの間にセパレータ46を介して渦巻状に巻回することで、温度上昇時に抵抗値を増大させることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
あるいは、内部短絡による電池の発火、破裂を未然に防止する手段として、図6に示すように、集電体51に電極活物質52を塗布形成した正極板53の正極集電耳部54にヒューズ55を介して正極リード56を接続し、この正極集電耳部54およびヒューズ55に絶縁マスキング57を施すことで、内部短絡が発生した時にヒューズ55を溶断させることが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開昭63−86355号公報
【特許文献2】特開平6−283206号公報
【特許文献3】特開平9−45369号公報
【特許文献4】特開2004−119132号公報
【特許文献5】特開平10−50294号公報
【特許文献6】特開平8−50920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電池反応を化学的に抑制する、あるいは異常時に電流遮断する上述した従来技術においては、内部短絡等による電池の温度上昇時に速い応答速度で温度上昇に対応し電池反応の熱暴走を効果的に抑止することが困難であるという課題を有していた。
【0011】
さらに詳しくは、上述した特許文献1〜4における電池反応を化学的に抑制する従来技術においては、内部短絡等による電池の温度上昇時にマイクロカプセルの内包物質が効果的に放出されなかったり、または内包物質の放出が電池の温度上昇に追いつかなかったり、あるいは仮に内包物質が放出されてもこれが作用して起きる電池反応抑制効果を急激に発揮させることも困難であるため、電池反応の熱暴走を効果的に抑止することは難しい。
【0012】
また、上述した特許文献5における電池内での導電状態の阻害を物理的に行う従来技術においては、充放電反応を繰り返すうちに電極板における活物質合剤と集電体との密着性を低下させてしまう、あるいは活物質合剤中の導電性を低下させる懸念があり、結果としてサイクル特性等の電池特性を劣化させてしまうことになる。
【0013】
さらに、上述した特許文献6におけるヒューズを溶断させる従来技術においては、短絡箇所から発熱が起こり、この発熱反応が電極板全体に広がるまではヒューズが溶断しないため、正極集電体と負極活物質合剤との接触による急激な異常発熱を効果的に抑止することは難しい。
【0014】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたもので、正極集電体または負極集電体の少なくともいずれか一方に過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設け、短絡電流未満の電流が流れるとこの過電流遮断機能を有する部位で短絡発生箇所の少なくとも両端部が幅方向に亘って溶断させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能であり、爆発、発火等を引き起こす事態を回避でき、安全性に優れた非水系二次電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために本発明の非水系二次電池用電極板は、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板あるいは少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて
混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板からなる非水系二次電池用電極板であって、正極集電体または負極集電体の少なくともいずれか一方に短絡電流未満の電流が流れると短絡発生箇所の少なくとも両端部が幅方向に亘って溶断する過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非水系二次電池用電極板によると、正極集電体または負極集電体の少なくともいずれか一方に短絡電流未満の電流が流れると溶断する過電流遮断機能を有する部位を複数箇所形成したことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能であり、爆発、発火等を引き起こす事態を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板あるいは少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板からなる非水系二次電池用電極板であって、正極集電体または負極集電体の少なくともいずれか一方に短絡電流未満の電流が流れると短絡発生箇所の少なくとも両端部が幅方向に亘って溶断する過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設けたことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能である。
【0018】
本発明の第2の発明においては、過電流遮断機能を有する部位として正極集電体または負極集電体である金属箔上に複数の薄肉部を形成したもので構成したことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こり短絡電流未満の電流が流れた場合、この薄肉部を溶断させることで発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能である。
【0019】
本発明の第3の発明においては、過電流遮断機能を有する部位として正極集電体または負極集電体である金属繊維の不織布上に複数の繊維密度が小さい箇所を形成して構成したことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こり短絡電流未満の電流が流れた場合、この繊維密度が小さい箇所を溶断させることで発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能である。
【0020】
本発明の第4の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板と、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板と、セパレータと、非水溶媒からなる電解液により構成される非水系二次電池であって、正極集電体または負極集電体の少なくともいずれか一方に過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設けたことにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こり短絡電流未満の電流が流れた場合、この過電流遮断機能を有する部位を溶断させることで発熱に対して速い応答性で電流遮断することが可能であり、非水系二次電池の爆発、発火等を引き起こす事態を回避することができる。
【0021】
ここで「溶断」とは集電体に大電流が流れたときジュール熱により、集電体の大電流発生箇所が少なくとも幅方向に亘って溶解して電流遮断する機構を言う。
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。例えば、図1に示されるように本発明の非水系二次電池では、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板5
とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板7とをセパレータ9を介して渦巻状に巻回した電極群4を作製した後、この電極群4を有底円筒形の電池ケース1の内部に絶縁板15と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード8を電池ケース1の底部に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード6を封口板2に接続し、電池ケース1に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース1の開口部に封口ガスケット3を周縁に取り付けた封口板2を挿入し、電池ケース1の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口している。
【0023】
ここで本発明においては正極板5と負極板7との内部短絡を抑止するために、上記正極板5の集電体または負極板7の集電体の少なくとも一方に過電流遮断機能を有する部位を複数箇所形成し、短絡電流未満の電流が流れるとこの過電流遮断機能を有する部位が溶断する構成としている。
【0024】
まず図2(a)は電極群4の長手方向の部分断面を示したものであるが、上記過電流遮断機能を有する部位としては、例えば負極板26の幅方向に連続してなる薄肉部24a,24bを形成した負極集電体24に負極活物質合剤層25a,25bを塗布形成することで過電流遮断機能を有した負極板26を作製できる。一方、正極板22は正極集電体20に正極活物質合剤層21a,21bを塗布形成することで作製でき、この正極板22と上記負極板26の間にセパレータを介在させて電極群4を構成している。
【0025】
ここで図2(b)に示したように電極群4中に異物27が混入し内部短絡を起こした際には、セパレータ23を貫通して正極集電体20と負極活物質合剤層25aが接触することで異常発熱を引き起こす。このような内部短絡が発生した場合には、図2(c)に示したように負極集電体24に形成した薄肉部24a,24bが24c,24dのように溶断して電流遮断することができる。
【0026】
また図3(a)は電極群4の長手方向の部分断面を示したものであるが、上記過電流遮断機能を有する部位としては、例えば負極集電体28を金属繊維の不織布で構成し、かつ前記金属繊維の不織布上に複数の繊維密度が小さい箇所28a,28bを形成した負極集電体24に負極活物質合剤層25a,25bを塗布形成することで過電流遮断機能を有した負極板29を作製できる。ここで図2(b)に示したように電極群4中に異物27が混入し内部短絡を起こした際には、セパレータ23を貫通して正極集電体20と負極活物質合剤層25aが接触することで異常発熱を引き起こす。このような内部短絡が発生した場合には、図2(c)に示したように負極の集電体28に形成した繊維密度が小さい箇所28a,28bが28c,28dのように溶断して電流遮断することができる。
【0027】
次に、上記正極板22、負極板26,29の作製方法について、具体的に説明する。まず、正極板22については特に限定されないが、アルミニウムやアルミニウム合金製の箔や不織布等を用いることができ、厚みが5μm〜30μmを有する正極集電体20の片面または両面に、正極活物質、導電材、結着材とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させた正極合剤塗料を塗布、乾燥、圧延して正極活物質合剤層21a,21bを形成することにより作製される。
【0028】
正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0029】
このときの導電材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブ
ラック、各種グラファイトを単独あるいは組み合わせて用いても良い。
【0030】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着剤等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着剤中に混入させることも可能である。
【0031】
一方、負極板26,29についても特に限定されないが、圧延銅箔、電解銅箔、銅繊維の不織布等を用いることができ、厚みが5μm〜25μmを有する負極集電体24,28の片面または両面に、負極活物質、結着材、必要に応じて導電材、増粘剤とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させた負極の合剤塗料を塗布、乾燥、圧延して負極活物質合剤層25a,25bを形成することにより作製される。
【0032】
負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料および各種合金組成材料を用いることができる。
このときの負極用結着材としてはPVDFおよびその変性体をはじめ各種バインダーを用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体等を用いることもできる。
増粘剤としては、ポリエチレンオキシド(PEO)やポリビニルアルコール(PVA)などの水溶液として粘性を有する材料であれば特に限定されないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂およびその変性体が、合剤塗料の分散性,増粘性の観点から好ましい。
【0033】
さらに、電解液については、電解質塩としてLiPF6およびLIBF4などの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正負極板上に良好な皮膜を形成させる、あるいは過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。
【0034】
本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0035】
まず、正極活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電剤としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0036】
次いで、図2(a)に示したように、この塗料を厚みが15μm厚であるアルミニウム箔の正極集電体20の両面に塗布し、乾燥後に片面の合剤厚みが100μmとなる正極板22を作製した。さらに、この正極板22を総厚が165μmとなるようにプレスすることで、合剤片面厚みが75μmとなるように、アルミニウム箔の正極集電体20上に正極活物質合剤層21a,21bを形成した後、図1に示した円筒形のリチウムイオン二次電池で規定する幅にスリット加工し、正極板22を作製した。
【0037】
一方、負極活物質として人造黒鉛を100重量部、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着剤の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物
質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0038】
次いで、図2(b)に示したように、この塗料を負極板26の幅方向に連続してなる薄肉部24a,24bを等間隔で複数箇所に設けた厚みが10μmの銅箔の負極集電体24に塗布し、乾燥後に片面合剤厚みが110μmとなる負極板26を作製した。さらに、この負極板26を総厚が180μmとなるようにプレスすることで、合剤の片面厚みが85μmとなるように、負極集電体24上に負極活物質合剤層25a,25bを形成した後、図1に示した円筒形のリチウム二次電池で規定する幅にスリット加工し、負極板26を作製した。
【0039】
これらの正極板22、負極板26および厚みが20μmのセパレータ23を巻回構成し、所定の長さで切断して電池ケース1内に挿入し、EC・DMC・MEC混合溶媒にLiPF6を1MとVCを3重量部溶解させた電解液を、添加して封口し、図1に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0040】
上記円筒形のリチウムイオン二次電池を評価するために、図1の電極群4の中に意図的に平均粒子形が30μm前後の鉄粉を混入させ、この二次電池を過充電し二次電池の表面温度を測定した。その結果、表面温度が80℃以上に上昇した二次電池は無かった。その後、これらの二次電池の中で80℃以下ではあるが温度上昇があった二次電池を分解して内部を観察したところ、負極集電体24に設けられた薄肉部24a,24bの多くが溶融して切断されていた。
【0041】
この結果より上記円筒形のリチウムイオン二次電池において、図2(b)に示したように何らかの要因により電極群4中に異物27が混入し内部短絡を起こした場合には、セパレータ23を貫通して正極集電体20と負極活物質合剤層25aが接触することで、この接触箇所で急激な発熱反応が起こり、図2(c)に示したように負極集電体24に形成した薄肉部24a,24bが24c,24dのように溶断して電流遮断するため熱暴走反応は抑止されることになるものと考えられる。
【0042】
なお上記実施例1においては、過電流遮断機能を有した部位としての薄肉部24a,24bを負極集電体24のみに設けたが、これに限定されるものではなく、過電流遮断機能を有した部位としての薄肉部24a,24bを正極集電体20のみ、あるいは負極集電体24と正極集電体20の両方に設けも良いことは言うまでもない。
【0043】
また上記実施例1においては、過電流遮断機能を有した部位として負極板26の幅方向に連続してなる薄肉部24a,24bを等間隔に形成したが、これに限定されるものではなく、格子状あるいは特定形状を有した網目状に薄肉部を形成しても同様の効果を得ることが可能である。
【実施例2】
【0044】
まず、実施例1と同様な正極合剤塗料を用い、実施例1と同様の方法により、アルミニウム箔の正極集電体20の両面に正極活物質層21a,21bを形成し正極板21を作製した。
【0045】
次いで、図3に示したように実施例1と同様な負極合剤塗料を用い、この塗料を負極板29の幅方向に連続してなる繊維密度が小さい箇所28a,28bを等間隔で複数箇所設けた厚みが10μmである銅繊維の不織布28に塗布し、乾燥後に片面合剤厚みが110μmとなる負極板29を作製した。さらに、この負極板29を総厚が180μmとなるようにプレスすることで、合剤の片面厚みが85μmとなるように、銅繊維の不織布28上
に負極活物質合剤層25a,25bを形成した後、図1に示した円筒形のリチウムイオン二次電池で規定する幅にスリット加工し、負極板29を作製した。
【0046】
これらの正極板22、負極板29および厚みが20μmのセパレータ23を巻回構成し、所定の長さで切断して電池ケース1内に挿入し、EC・DMC・MEC混合溶媒にLiPF6を1MとVCを3重量部溶解させた電解液を、添加して封口し、図1に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0047】
上記二次電池を評価するために、図1の電極群4の中に意図的に平均粒子形が30μm前後の鉄粉を混入させ、この二次電池を過充電し二次電池の表面温度を測定した。その結果、表面温度が80℃以上に上昇した二次電池は無かった。その後、これらの二次電池の中で80℃以下ではあるが温度上昇があった二次電池を分解して内部を観察したところ、銅繊維の不織布28に設けられた繊維密度が小さい箇所28a,28bの多くが溶融して切断されていた。
【0048】
この結果より円筒形のリチウムイオン二次電池において、図3(b)に示したように何らかの要因により電極群4中に異物27が混入し内部短絡を起こした場合には、セパレータ23を貫通して正極集電体20と負極活物質合剤層25aが接触することで、この接触箇所で急激な発熱反応が起こり、図3(c)に示したように銅繊維の不織布からなる負極集電体28に形成した繊維密度が小さい箇所28a,28bが28c,28dのように溶断して電流遮断するため熱暴走反応は抑止されることになるものと考えられる。
【0049】
なお実施2においては、過電流遮断機能を有する部位として繊維密度が小さい箇所28a,28bを負極集電体28のみに設けたが、これに限定されるものではなく、過電流遮断機能を有する部位としての繊維密度が小さい箇所28a,28bを正極集電体20のみ、あるいは負極集電体28と正極集電体20の両方に設けても良いことは言うまでもない。
【0050】
また、実施例2においては過電流遮断機能を有する部位として負極板29の幅方向に連続してなる繊維密度が小さい箇所28a,28bを等間隔に形成したが、これに限定されるものではなく、格子状あるいは特定形状を有した網目状に繊維密度が小さい箇所を形成しても同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る非水系二次電池は、正極集電体または負極集電体の少なくとも一方に過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設け、短絡電流未満の電流が流れるとこの過電流遮断機能を有する部位で溶断させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、この過電流遮断機能を有する部位が発熱に対して、速い応答性で溶断することが可能であり、爆発、発火等を引き起こす事態を回避でき安全性に優れているため電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る円筒形二次電池の一部切欠斜視図
【図2】(a)本発明の一実施の形態における初期状態の電極板を示す模式図、(b)本発明の一実施の形態における内部短絡時の電極板を示す摸式図、(c)本発明の一実施の形態における集電体溶断時の電極板を示す摸式図
【図3】(a)本発明の別の実施の形態における初期状態の電極板を示す摸式図、(b)本発明の別の実施の形態における内部短絡時の電極板を示す摸式図、(c)本発明の別の実施の形態における集電体溶断時の電極板を示す摸式図
【図4】従来例における電極板を示す部分断面図
【図5】従来例における電極群を示す摸式図
【図6】従来例における電極板を示す摸式図
【符号の説明】
【0053】
1 電池ケース
2 封口板
3 ガスケット
4 電極群
5 正極板
6 正極リード
7 負極板
8 負極リード
9 セパレータ
15 絶縁板
20 正極集電体
21a,21b 正極活物質合剤層
22 正極板
23 セパレータ
24 負極集電体
24a,24b 集電体の薄肉部
24c,24d 集電体の溶断箇所
25a,25b 負極活物質合剤層
26 負極板
27 異物
28 負極集電体
28a,28b 集電体の金属繊維密度が小さな箇所
28c,28d 集電体の溶断箇所
29 負極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板あるいは少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板からなる非水系二次電池用電極板であって、前記正極集電体または前記負極集電体の少なくともいずれか一方に、短絡電流未満の電流が流れると前記短絡発生箇所の少なくとも両端部が幅方向に亘って溶断する過電流遮断機能を有する部位を複数箇所設けたことを特徴とする非水系二次電池用電極板。
【請求項2】
過電流遮断機能を有する部位として、正極集電体または負極集電体である金属箔上に複数の薄肉部を形成したもので構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極板。
【請求項3】
過電流遮断機能を有する部位として、正極集電体または負極集電体である金属繊維の不織布上に複数の繊維密度が小さい箇所を形成して構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極板。
【請求項4】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板と、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板と、セパレータと、非水溶媒からなる電解液により構成される非水系二次電池であって、前記正極集電体または前記負極集電体の少なくともいずれか一方に請求項1〜3のいずれかの記載の電極板を用いたことを特徴とする非水系二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−117685(P2008−117685A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301164(P2006−301164)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】