説明

非水系二次電池用電極板とその製造方法および製造装置

【課題】集電体に塗布領域と未塗布領域を形成する非水系二次電池用電極板の間欠塗布工程において、電極合剤塗料を供給する際に、電極合剤塗料がダイに急速に供給されることによりダイからの電極合剤塗料の吐出量が過剰となり、塗布領域の始端部が盛り上がることにより、始端部の塗布領域の厚みが厚くなるという課題を有していた。
【解決手段】塗布領域の始端部1および終端部4の厚みが電極合剤塗料3の塗布領域から金属箔2が露出した未塗布領域にかけて徐々に薄くなる構成とすることにより、電極合剤塗料3の塗布領域の始端部1が盛り上がることによって発生する圧力集中を原因とする電極板切断や電極合剤塗料3の剥離を防ぐことを目的とした非水系二次電池用電極板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから電極合剤塗料を吐出して集電体へ塗布するときにダイからの吐出と停止とを繰り返すことで、集電体に塗布領域と未塗布部とを交互に形成する非水系二次電池用極板とその製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に非水系二次電池用電極板の製造工程において、長尺のアルミニウム箔、銅箔の集電体に電極材料である正極活物質または負極活物質をペースト状にした電極合剤塗料を所定の間隔をもって間欠的に塗布する場合には、集電体に電極合剤塗料を塗布するダイとダイに電極合剤塗料を圧送する手段の間に開閉を交互に繰り返す間欠バルブを備えた製造装置を使用し、間欠バルブを開き圧送手段から電極合剤塗料をダイに供給し塗布して集電体に塗布領域を形成し、間欠バルブを閉じてダイへの電極合剤塗料の供給を停止して集電体に未塗布部を形成する。
【0003】
しかし、製造装置は未塗布部を形成するために間欠バルブを閉じる際に、電極合剤塗料が粘性を有するために集電体に残ろうとする粘性が働き塗布寸法規定外に塗布される塗布変形が発生するという課題や、間欠バルブを開くときに吸引されている電極合剤塗料の全てがダイへ急速に供給されダイの吐出口から吐出する電極合剤塗料が過剰となって塗布領域の始端側の厚みを局部的に厚くするという課題があり、この課題を解決するための方法については種々提案されている。
【0004】
例えば、図3に示すように始端部における活物質の合剤層22と未塗布部21の境界から0.5mm以上の所定範囲にわたり合剤層22の厚みをそれ以外の範囲より薄くし、終端部における合剤層22の厚みはそれ以外の範囲と同等とする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、図4に示すように、弁体31を有するピストン32と前記弁体31により液通路が閉鎖される弁座33と前記ピストン32を移動させるシリンダー34を備え、電極合剤塗料を供給または停止させる2方弁において前記弁体31をピストン32に軸心長手方向に移動可能に装着させた構成にすることにより、電極合剤塗料の供給を止める際は下流側に負圧を発生させ、電極合剤塗料の供給を開始させる際は正圧の発生を一時的に抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、図5に示すようにノズル41の吐出孔42に連通したマニフォールド43に連通した孔48に挿入されるピストン44を有し、そのピストン44を出し入れする圧縮空気により稼動するサックバック45とピストン44に取り付けられた弾性体46を備え、サックバック45がピストン44を上下動させてマニフォールド43の内部に圧力変化を生じさせることにより、走行する導電性集電体47上の各塗布領域の始端を制御する際に、弾性体46はピストン44が孔48に押し出される力に抵抗することで緩やかにピストン44を押すことにより、一気に電極合剤塗料が放出されることを防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−303622号公報
【特許文献2】特開2001−38276号公報
【特許文献3】特開2005−222911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の電極板では、始端部は活物質の合剤層22と未塗布部21の境界から0.5mm以上の所定範囲にわたり合剤層22の厚みをそれ以外の範囲より薄くする構成となっているが、終端部分に段差があるためにロールプレスによる圧延工程においてロールが跳ね集電体に大きな応力が加わり電極板の破断や合剤層の剥離の原因となるという課題があった。
【0008】
また、特許文献2の製造方法または製造装置では、弁体31を有するピストン32と前記弁体31により液通路が閉鎖される弁座33と前記ピストン32を移動させるシリンダー34を備え、電極合剤塗料を供給または停止させる2方弁において前記弁体31をピストン32に軸心長手方向に移動可能に装着させた構成にすることにより、電極合剤塗料の供給を止める際は下流側に負圧を発生させ、電極合剤塗料の供給を開始させる際は正圧の発生を一時的に抑制する構成となっているが、高速塗布時や電極合剤塗料の粘度が高い場合には塗布再開時にシリンダー34の移動による衝撃圧が発生し圧力増加により、塗布領域の始端の盛り上がりが発生するという課題を有していた。
【0009】
さらに、特許文献3の製造方法または製造装置では、ノズル41の吐出孔42に連通したマニフォールド43に連通した孔48に挿入されるピストン44を有し、そのピストン44を出し入れする圧縮空気により稼動するサックバック45とピストン44に取り付けられた弾性体46を備え、サックバック45がピストン44を上下動させてマニフォールド43内部に圧力変化を生じさせることにより、走行する導電性集電体47上の各塗布領域の始端を制御する際に、弾性体46はピストン44が孔48に押し出される力に抵抗することで緩やかにピストン44を押すことにより、一気に電極合剤塗料が放出されることを防ぐ構成となっているが、弾性体46の抵抗により塗布開始時間にタイムラグが発生するために、高速塗布に追随できず、塗布領域の始端の盛り上がりが発生するという課題を有していた。
【0010】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、塗布量を調節し、塗布領域の始端部、終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状に塗布した非水系二次電池用電極板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために本発明の非水系二次電池用電極板は、塗布領域の始端部、終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる構成としたこと特徴とするとするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非水系二次電池用正極板によると、塗布領域の始端部および終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる構成としたことにより、塗布領域の始端盛り上がりによる圧力集中によって発生する電極板の切断や活物質の剥離を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の発明においては、集電体に電極合剤塗料を塗布して形成した非水系二次電池用電極板であって、塗布領域の始端部および終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる構成としたにより、塗布領域の始端盛り上がりによる圧力集中によって発生する電極板の切断や活物質の剥離を防ぐことが可能となる。
【0014】
本発明の第2の発明においては、集電体に電極合剤塗料を塗布して形成する非水系二次電池用電極板の製造方法において、走行する集電体上に集電体の長手方向の一定間隔毎に未塗布部を設けながら塗布を行う工程において、電極合剤塗料の供給開始時にリリーフ機
構を駆動させて、電極合剤塗料をリリーフ機構内に引き込むことにより、塗布開始時に発生する衝撃圧を緩和し、塗布量を調節することで、塗布領域の始端部の厚みが徐々に厚くなる形状とし、かつ電極合剤塗料の供給停止時にリリーフ機構を駆動させて、電極合剤塗料をリリーフ機構内に引き込み、負圧を発生させて、塗布量を調節することで塗布領域の終端部を徐々に厚みが減少していく形状に塗布することを特徴としたことにより、塗布領域の始端盛り上がりを無くし電極合剤塗料を均一に塗布することが可能となる。
【0015】
本発明の第3の発明においては、集電体に電極合剤塗料を塗布するダイと電極合剤塗料を供給または停止させる間欠供給バルブを備える非水系二次電池の製造装置であって、前記間欠供給バルブが開放し、ダイに電極合剤塗料の供給を開始する時と供給を停止する時に駆動することにより電極合剤塗料に負圧を付与するリリーフ機構を備えたことを特徴とすることにより、塗布再開時に発生する衝撃圧をリリーフ機構により緩和することで圧力変化を無くし、塗布停止時に余剰電極合剤塗料をバルブ外に移送することで、塗布領域の終端部を電極板の全体の厚みよりも薄く、徐々に厚みが減少していく放物線を描く形状とすることができる。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。非水系二次電池用電極板は、図1に示すように集電体2となる金属箔にペースト状の活物質である電極合剤塗料3を塗布し、乾燥、圧延することにより形成されている。この活物質を塗布する塗布工程では、活物質の無い未塗布部を形成するために電極合剤塗料3の供給と停止を繰り返す間欠塗布を行っており、電極合剤塗料3の供給開始により塗布が開始され塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状となる始端部1を形成し、所定の長さ塗布した後に電極合剤塗料3の供給停止により塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状となる終端部4が形成される構成となっている。
【0017】
本発明では図2に示すように、電極合剤塗料の供給タンク11と電極合剤塗料を金属箔に塗布する塗布ダイ9の間にリリーフ機構5を備えた間欠バルブ10を設けることにより間欠塗布を行っている。活物質の塗布工程では供給タンク11より供給配管12を通して供給された電極合剤塗料3を間欠バルブ10内のピストン6を駆動させることにより供給弁体7を開放し、送液用配管13を通して塗布ダイ9へと電極合剤塗料3を供給することにより、塗布ダイ9に対向する形で設置されているバックアップロール14により供給される集電体15に活物質の塗布を行っており、未塗布部の形成時には、ピストン6を駆動させることにより供給弁体7を閉鎖し、排気弁体8を開放することにより、電極合剤塗料3の供給を停止し、余剰な電極合剤塗料3を循環用配管16から間欠バルブ10外に移送することにより未塗布部を形成して、非水系二次電池用電極板を構成している。
【0018】
本発明では、電極合剤塗料3の供給を開始するために供給弁体7を開放する時にピストン6の駆動により発生する衝撃圧により塗布領域の始端部に盛り上がりが発生することを防ぐために、ピストン6の動作と連動してリリーフ機構5を駆動させることにより電極合剤塗料3に負圧を付与し、衝撃圧を緩和し始端部の盛り上がりを防いでいる。また、ピストン6の駆動により供給弁体7が閉鎖される動作と連動してリリーフ機構5が駆動することにより、電極合剤塗料3に負圧を付与することで、電極合剤塗料3を間欠バルブ10内に引き込み、排気弁体8を開放し、余剰な電極合剤塗料3を間欠バルブ10外に移送することで、図1に示す塗布領域の始端部1、終端部4の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状を形成することができる。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の具体的実施例に基づいて、さらに詳しく説明する。集電体としてのアルミニウム箔に複合リチウム酸化物を正極活物質とする電極合剤塗料を図2に示す間欠バルブ10と塗布ダイ9を用いて塗布を行った。間欠バルブ10内のピストン6の駆動により
供給弁体7を開放することによる塗布ダイ9への電極合剤塗料の供給とピストン6の駆動により供給弁体7の閉鎖による塗布ダイ9への電極合剤塗料の供給停止を繰り返すことで、活物質の未塗布部と塗布領域を交互に形成した。
【0020】
このとき、電極合剤塗料の塗布開始時に供給弁体7の開放と連動してリリーフ機構5を駆動させる間欠塗布工法により、塗布速度30m/sで塗布を行い形成した図1に示す塗布領域の始端部1、終端部4の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状とした極板を実施例1とした。
【0021】
(比較例1)
集電体としてのアルミニウウム箔に複合リチウム酸化物を正極活物質とする電極合剤塗料を図4に示す間欠バルブと塗布ダイを用いて塗布を行った。間欠バルブ内のピストン32を駆動させることにより弁体31を開放することによる塗布ダイへの電極合剤塗料の供給とピストン32の駆動により弁体31の閉鎖による塗布ダイへの電極合剤塗料の供給停止を繰り返すことで、活物質の未塗布部と塗布領域を交互に形成する間欠塗布工法により、塗布速度30m/sで塗布を行い形成した極板を比較例1とした。
【0022】
上記の条件で作成した極板の塗布領域の始端部と塗布領域中央の厚みを測定し、塗布領域の始端部における盛り上がりの評価を行い、極板を圧延し、負極、セパレータと共に巻回を行い、極板の切れ、合剤剥離等の不良率の評価を行った結果を(表1)に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
(表1)の結果から明らかなように、電極合剤塗料の供給と停止時に駆動するリリーフ機構5をもつ実施例1の間欠バルブ9を用いて作成した極板の塗布領域の始端部1は電極板の全体の厚みよりも薄く、徐々に厚みが増大していく放物線を描く形状かつ、かつ塗布領域の終端部4を電極板の全体の厚みよりも薄く、徐々に厚みが減少していく放物線を描く形状となっているのに対して、リリーフ機構を持たない比較例1の間欠バルブを用いて作成した極板の塗布領域の始端部は中央部よりも厚くなり盛り上がった形状、かつ塗布領域の終端部は中央部と同じ厚みからのテーパ形状となっている。また、極板の塗布領域の始端部に盛り上がりがある比較例1の方が合剤剥離、極板切れ等の不良率が高くなっている。
【0025】
以上の結果により、電極合剤塗料の供給と停止時に駆動するリリーフ機構を間欠バルブに設けることにより、塗布領域の終端部を電極板の全体の厚みよりも薄く、徐々に厚みが減少していく放物線を描く形状とし、かつ塗布領域の始端部は電極板の全体の厚みよりも薄く、徐々に厚みが増大していく放物線を描く形状とすることが可能となり、始端形状が極板中央部よりも低くすることにより、極板切れや合剤剥離等の不良を削減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る非水系二次電池用電極板は、塗布領域の始端部、終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる形状とすることにより、合剤剥離や極板切れ等の不具合を削減することが可能であるので、間欠塗布を行う電極板の製造法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例における非水系二次電池用極板の断面図
【図2】本発明における一実施例における間欠塗布装置の概略の断面図
【図3】従来例における一実施例における塗布方法の概略図
【図4】従来例における間欠バルブの断面図
【図5】従来例における塗布装置の模式図
【符号の説明】
【0028】
1 始端部
2 金属箔
3 電極合剤塗料
4 終端部
5 リリーフ機構
6 ピストン
7 供給弁体
8 排気弁体
9 塗布ダイ
10 間欠バルブ
11 供給タンク
12 供給配管
13 送液用配管
14 バックアップロール
15 集電体
16 循環用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体に電極合剤塗料を塗布して形成した非水系二次電池用電極板であって、塗布領域の始端部および終端部の厚みが塗布領域から未塗布領域にかけて徐々に薄くなる構成としたことを特徴とする非水系二次電池用電極板。
【請求項2】
集電体に電極合剤塗料を塗布して形成する非水系二次電池用電極板の製造方法において、走行する集電体上に集電体の長手方向の一定間隔毎に未塗布部を設けながら塗布を行う工程で電極合剤塗料の供給開始時にリリーフ機構を駆動させて、電極合剤塗料をリリーフ機構内に引き込むことにより塗布開始時に発生する衝撃圧を緩和し塗布量を調節することで、塗布領域の始端部の厚みが徐々に厚くなる形状とし、かつ電極合剤塗料の供給停止時にリリーフ機構を駆動させて、電極合剤塗料をリリーフ機構内に引き込み負圧を発生させ塗布量を調節することで塗布領域の終端部を徐々に厚みが減少していく形状に塗布することを特徴とした非水系二次電池用電極板の製造方法。
【請求項3】
集電体に電極合剤塗料を塗布するダイと電極合剤塗料を供給または停止させる間欠供給バルブを備える非水系二次電池用電極板の製造装置であって、前記間欠供給バルブが開放し前記ダイに電極合剤塗料の供給を開始する時と供給を停止する時に電極合剤塗料に負圧を付与するリリーフ機構を備えたことを特徴とする非水系二次電池用電極板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−108678(P2010−108678A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277955(P2008−277955)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】