説明

非水系蓄電デバイス

【課題】大容量・高電圧であって信頼性に優れた非水系蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】この非水系蓄電デバイス11は、正極21、負極31及びセパレータ41を積層してなる電極積層体51を容器61内に収容し、その容器61内に有機電解質を注入してなる。負極電極32は、電極積層体51の厚さ方向から見て正極電極22よりも広面積である。負極電極32の外形線は、正極電極22の外形線の外側に位置している。負極集電体33は、電極積層体51の厚さ方向から見て負極電極32よりも広面積である。負極集電体33の外周部には、プレドープ用のリチウム金属が貼付されるリチウム金属貼付部37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量・高電圧の非水系蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電等の負荷平準化装置、コンピュータ等に代表される電子機器の瞬時電圧低下対策装置、電気自動車やハイブリッドカーのエネルギー回生装置などのような蓄電システムにおいては、エネルギー容量が大きくてかつ急速充放電が可能な蓄電デバイスが必要とされる。そして、このような用途に有望な蓄電デバイスの一種として、近年、非水系蓄電デバイスが注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
現在、この種の蓄電デバイスの主流は、電気二重層機能を使用したキャパシタ(いわゆる電気二重層キャパシタ)である。しかしながら、電気二重層キャパシタは、容量が小さくて電圧が低いため、大容量・高電圧を実現しようとすると装置全体が大型化するという問題がある。そこで、この問題を解決しうる新たな蓄電デバイスとして、リチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このタイプのリチウムイオンキャパシタでは、リチウムの吸蔵及び放出が可能な材料からなる負極電極を用い、その負極電極にリチウムをプレドープすることにより、負極電位を下げている。その結果、電池として高い電圧を得ることができ、これによりエネルギー容量も大きくすることができるようになっている。
【0004】
上記従来のリチウムイオンキャパシタは、正極、負極及びセパレータを積層してなる電極積層体を備えている。電流集中によるリチウム金属の析出を避けるため、一般的に負極は正極よりも大きく形成される。かかる電極積層体は例えば柔らかいアルミラミネート箔からなる容器内に収容され、その容器内はリチウムイオンを含んだ有機電解質で満たされている。
【0005】
ところで、負極電極に対するリチウムのプレドープは、一般的に、負極集電体における所定領域(例えば負極集電体における張出部分)にリチウム金属箔を貼り付けることにより行われている。その具体例としては、全ての負極集電体の表裏面にリチウム金属箔を貼り付けるといった方法などが従来採用されている。
【特許文献1】特許第385935号公報(図1等参照)
【特許文献2】特開2006−286919号公報(図1等参照)
【特許文献3】特許第3485935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のリチウムイオンキャパシタには下記の問題点があった。
【0007】
例えば、負極電極の面積が正極電極と同等またはそれ以下の場合、言い換えると負極電極の外形線が正極電極の外形線の内側に位置している場合には、負極電極側に電流集中が起こりやすい。その際、正極電極にリチウム金属が析出することはないが、負極電極についてはリチウム金属が析出してしまう。なお、この現象は小電流のときには認められず、大電流(具体的には100A以上)を流したときに顕著になる。それゆえ、信頼性向上の観点から、リチウム金属が析出しにくい構造を採用する必要がある。
【0008】
さらに、負極集電体上に貼付されたリチウム金属は、完全に拡散して無くなってしまうことが望ましいが、ときとして十分に拡散できずに溶け残ることがある。この場合、溶け残ったリチウム金属に対向して正極電極が配置されていると、正極電極が充放電に関与してしまい、リチウム金属析出のリスクが高くなる。その結果、充放電特性に悪影響を及ぼし、信頼性や性能が低下してしまう。
【0009】
また、全ての負極集電体の表裏面にリチウム金属箔を貼り付ける従来技術の場合、リチウム金属を確実にドープさせることができるという利点がある。その反面、リチウム金属箔は薄い小片であるため取り扱い性が悪く、これを負極集電体に直接貼り付けるのには非常に手間が掛かるという欠点がある。従って、生産性向上等の観点から、もっと簡単にプレドープができて困難なく製造可能な構造のリチウムイオンキャパシタが望まれていた。同時に、リチウム金属をできるだけ早く均一にドーピングできる構造が望まれていた。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大容量・高電圧であって信頼性に優れた非水系蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、炭素材料からなる正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な材料からなる負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記負極及び前記正極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータを積層することにより電極積層体が構成されている非水系蓄電デバイスにおいて、前記負極電極は、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記正極電極よりも広面積であり、かつその外形線が前記正極電極の外形線の外側に位置しており、前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記負極電極よりも広面積であり、かつその外周部にリチウム金属貼付部が設けられていることを特徴とする非水系蓄電デバイスをその要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によると、負極電極を正極電極よりも広面積とし、かつその外形線を正極電極の外形線の外側に位置させているため、大電流を流したときでも負極電極側への電流集中が回避され、リチウム金属の析出が防止される。また、負極集電体を負極電極よりも広面積とし、かつその外周部にリチウム金属貼付部を設けているが、当該リチウム金属貼付部と対向する位置には少なくとも正極電極は配置されていない。ゆえに、仮にリチウム金属が溶け残ったとしても、正極電極が充放電に関与するおそれはなく、好適な充放電特性が維持される。従って、大容量・高電圧という高い性能を有し、かつ、信頼性に優れた非水系蓄電デバイスを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記リチウム金属貼付部に貼付されるリチウム金属がプレドープ用であることをその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見たときの形状が矩形状であり、前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における対向した二辺の近傍にそれぞれ設けられていることをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項3に記載の発明によると、上記の離間した2箇所に設けたリチウム金属貼付部にリチウム金属を貼付することで、リチウムイオンが二方向から同時に供給されるため、リチウムイオンを早く均一にドーピングすることができる。よって、比較的容易にリチウムイオンのプレドープを行うことが可能なリチウムイオンキャパシタとすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見たときの形状が一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における前記一対の長辺の近傍にそれぞれ設けられ、前記負極集電体における前記一対の短辺のうちのいずれかには、負極外部端子に電気的に接続される接続部がそれぞれ突設されていることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項4に記載の発明によると、負極集電体における一対の短辺の近傍に設けた場合に比べて広面積のリチウム金属貼付部を形成しやすく、しかもリチウムイオンの移動距離が短くなるため、リチウムイオンを早く均一にドーピングすることができる。よって、比較的容易にリチウムイオンのプレドープを行うことが可能なリチウムイオンキャパシタとすることができる。また、この構成であると、集電体と外部端子との溶接部の抵抗が大きくなりにくいため、大きな電位差の発生を防ぐための工夫が不要になり、比較的容易に設計することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における片側面にのみ設けられていることをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項5に記載の発明によると、負極集電体における両側面にリチウム金属を貼り付ける場合に比べて、貼付作業に要する労力が半減する。このため、比較的製造しやすくて安価な非水系蓄電デバイスとすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記セパレータは、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記正極電極よりも広面積であり、かつその外形線が前記正極電極の外側に位置していることをその要旨とする。
【0021】
従って、請求項6に記載の発明によると、リチウム金属貼付部を設けた負極集電体の外周部とセパレータの外周部とが近接した状態となるので、そのリチウム金属貼付部にリチウム金属を貼付しておくと、リチウムイオンがセパレータ内を移動して速やかに拡散することができる。しかも、この構成によると、当該リチウム金属貼付部と同一面上にある負極電極にリチウムイオンを拡散させることができるばかりでなく、隣接する他の負極電極にもリチウムイオンを拡散させることができる。ゆえにこの構成は、片側面のみにリチウム金属を貼付する場合に有利である。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記セパレータは、前記リチウム金属貼付部が設けられた領域まで及んでいることをその要旨とする。
【0023】
従って、請求項7に記載の発明によると、リチウム金属貼付部を設けた負極集電体の外周部とセパレータの外周部とがいっそう近接して対面した状態となるので、そのリチウム金属貼付部にリチウム金属を貼付しておくと、リチウムイオンがセパレータ内を移動して速やかに拡散することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1〜7に記載の発明によると、大容量・高電圧であって信頼性に優れた非水系蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施形態]
【0026】
以下、本発明の非水系蓄電デバイスを、リチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタに具体化した一実施の形態を図1〜図4に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態のリチウムイオンキャパシタ11の平面図、図2は上記リチウムイオンキャパシタ11を構成する電極積層体51の断面図、図3は電極積層体51及びその構成部材の平面図及び分解断面図、図4は電極積層体51の部分拡大断面図である。
【0027】
図2等に示されるように、本実施形態のリチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタ11は、正極21、負極31及びセパレータ41を積層してなる電極積層体51を備えている。なお、正極21(負極31)の枚数は図示されたものに限定されず、これよりも多くても少なくてもよい。
【0028】
正極21は、炭素材料からなる正極電極22を正極集電体23上に形成した構造を有している。
【0029】
正極電極22を形成する炭素材料の例としては、適度な粉砕処理が施された各種の天然黒鉛、合成黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛材料、炭素化処理されたメソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、熱分解炭素、石油コークス、ピッチコークス及びニードルコークス等の炭素材料に黒鉛化処理を施した合成黒鉛材料、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの炭素材料は、必要に応じて導電剤及びバインダとともに混練され、成形される。
【0030】
上記導電剤としては各種黒鉛材料やカーボンブラックが挙げられるが、なかでも導電性カーボンブラック類を使用することが好ましい。その具体例としては、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等があるが、液体保持力に優れかつ電気抵抗が低いという点でアセチレンブラックを選択することが特に好ましい。
【0031】
上記バインダとしては、有機電解質に対して不溶のものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸ソーダ等の有機高分子化合物が好適である。
【0032】
上記正極集電体23は、正極電極22を支持しつつ集電を行うための部材であって、例えばアルミニウム、ステンレス等のような導電性金属箔あるいは導電性金属板の使用が好適である。ステンレスは、リチウムと合金化せず、かつ、電気化学的酸化が起こりにくいという点で、好適な材料であるといえる。
【0033】
正極集電体23は容器61内に収容可能な大きさであれば基本的に任意の平面視形状とすることができるが、通常は容器61の外形形状と同様の形状とされる。例えば、平面視矩形状の容器61を使用する場合には、それに合わせて正極集電体23も平面視矩形状とされる。正極集電体23の有する四辺のうちの一辺からは、接続部としてのタブ24が突出している。このタブ24は、導電性金属材料からなる正極外部端子25に対して溶接により接合される。
【0034】
負極31は、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な材料からなる負極電極32を負極集電体33上に形成した構造を有している。ここで、リチウムイオンを供給する金属としては、リチウム金属単体のみを指すばかりでなく、リチウム−アルミニウム合金のように、少なくともリチウムを含有し、リチウムイオンを供給することができる物質全てを広く指している。
【0035】
負極電極32はリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な材料によって形成される。その具体例としては、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、五酸化ニオブ(Nb)、チタン酸リチウム(LiTi12)、一酸化珪素(SiO)、一酸化錫(SnO)、錫とリチウムとの複合酸化物(LiSnO)、リチウム・リン・ホウ素の複合酸化物(例えばLiP0.40.62.9)、等がある。これらのなかでも、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料等の炭素材料は、可逆性が高い等の性質を有するため、負極材料として好適である。
【0036】
負極電極32を形成する炭素材料の例としては、適度な粉砕処理が施された各種の天然黒鉛、合成黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛材料、炭素化処理されたメソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、熱分解炭素、石油コークス、ピッチコークス及びニードルコークス等の炭素材料、またはこれらの混合物等がある。ここに列挙した負極電極32用の炭素材料は、必要に応じて導電剤及びバインダとともに混練され、成形される。なお、導電剤及びバインダとしては、正極電極22の説明の際に例示した材料をそのまま使用することができる。
【0037】
負極31及び正極21の間に介在されるセパレータ41は、有機電解質や電極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する非導電性の多孔体等からなる。通常、ガラス繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる布、不織布あるいは多孔体が用いられる。セパレータ41の厚さは、キャパシタの内部抵抗を小さくするために薄いほうが好ましいが、有機電解質の保持量、流通性、強度等を勘案して適宜設定することができる。
【0038】
かかるセパレータ41には通常液状の有機電解質が含浸されているが、漏液を防止するためにゲル状または固体状にした有機電解質を用いることもできる。ここで前記有機電解質は、ドーピングされうるリチウムイオンを生成しうる化合物を、非プロトン性有機溶媒に溶解させてなるものである。上記化合物としては有機リチウム塩を挙げることができ、その好適例としては、LiPFと表記されるリチウムヘキサフルオロフォスフェート、LiN(CFSOと表記されるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、LiN(CSOと表記されるリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド等がある。また、上記非プロトン性有機溶媒の好適例としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ビニレンカーボネート(VC)、アセトニトリル(AN)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びこれらの誘導体、あるいはそれらの混合溶媒等がある。
負極集電体33は負極電極32を支持しつつ集電を行うための部材であって、例えば銅、ニッケル、ステンレス等のような導電性金属箔あるいは導電性金属板の使用が好適である。負極集電体33は容器61内に収容可能な大きさであれば基本的に任意の平面視形状とすることができるが、通常は容器61の外形形状と同様の形状とされる。例えば、平面視矩形状の容器61を使用する場合には、それに合わせて負極集電体33も平面視矩形状とされる。負極集電体33の有する四辺のうちの一辺からは、接続部としてのタブ34が突出している。このタブ34は、導電性金属材料からなる負極外部端子35に対して溶接により接合される。
【0039】
本実施形態のリチウムイオンキャパシタ11では、正極21、負極31及びセパレータ41の寸法関係等について特徴的な構成を備えている。
【0040】
図2,図3に示されるように、負極31を構成する負極電極32は、電極積層体51の厚さ方向から見て(即ち平面視で)正極電極22よりも広面積であり、かつその外形線が正極電極22の外形線の外側に位置している。このような大きさにする理由は、電流集中によるリチウム金属の析出を避けるためである。
【0041】
負極集電体33は、電極積層体51の厚さ方向から見て負極電極32よりも広面積であり、かつその片側面の外周部にリチウム金属貼付部としてのリチウム貼付部37が設けられている。本実施形態では、リチウム貼付部37は、負極集電体33における対向した二辺の近傍にて、それぞれ帯状に設けられている。
【0042】
これらのリチウム貼付部37上には、帯状にカットされたプレドープ用リチウム金属としてのリチウム金属箔16が貼付される。リチウム金属箔16は、リチウム貼付部37に対して直接的に貼付されてもよいが、図示しない金属製支持体(例えば銅箔等)上に支持固定しておくことにより間接的に貼付されてもよい。後者の方法の利点は、リチウム金属箔16の取り扱い性が向上し、それを配置する労力が従来に比べて軽減されることである。かかる労力の軽減はいわばプレドープのために払う労力の軽減を意味するが、このことはリチウムイオンキャパシタ11の製造容易化にプラスに作用する。なお、プレドープが完了すると、通常、このリチウム金属箔16は溶解して消失してしまう。
【0043】
セパレータ41は、電極積層体51の厚さ方向から見て正極電極22よりも広面積であり、かつその外形線が正極電極22の外側に位置している。本実施形態では、セパレータ41の大きさは負極集電体33とほぼ同じ大きさとされている。従って、セパレータ41の外形線は、リチウム金属箔16が貼り付けられたリチウム貼付部37が設けられた領域まで及んだ状態となっている。
【0044】
各正極集電体23から突出する各タブ24は同じ辺の側に配置されるとともに、それらタブ24は1枚の正極外部端子25に溶接されている。その結果、各正極21が正極外部端子25に対して電気的に接続されている。各負極集電体33から突出する各タブ34は、各正極集電体23から突出する各タブ24と同じ辺の側に配置されるとともに、それらタブ34は1枚の負極外部端子35に溶接されている。その結果、各負極31が負極外部端子35に対して電気的に接続されている。そして、アルミラミネート箔からなる容器61内に上記電極積層体51を収容した場合、正極外部端子25の一端及び負極外部端子35の一端が容器61の一辺から突出するようになっている。
【0045】
次に、本実施形態のリチウムイオンキャパシタ11を製造する方法の一例を図3等に基づいて説明する。
【0046】
まず、正極21、負極31及びセパレータ41を積層してなる電極積層体51と、それを収容するための容器61とを準備しておく。
【0047】
正極21の作製は下記の手順で行う。まず、炭素材料、導電剤及びバインダを含む混合スラリーを用意し、これを正極集電体23である厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布して、正極電極22を形成する。正極電極22の乾燥及びプレスを行った後、金型で所定サイズに裁断して、正極21とする(図3(c)参照)。負極31の作製は下記の手順で行う。まず、炭素材料及びバインダを含む混合スラリーを用意し、これを負極集電体33である厚さ12μmの銅箔に塗布して、負極電極32を形成する。ただし、その際にはスラリーを塗らない部分を外周部に設定しておき、そこをリチウム貼付部37とする。負極電極32の乾燥及びプレスを行った後、金型で所定サイズに裁断して、負極31とする。リチウム貼付部37には、あらかじめリチウム金属箔16を接合しておく(図3(a)参照)。
【0048】
そして、正極21及びリチウム金属箔16付きの負極31間にセパレータ41(図3(b)参照)を介在させて積層し、電極積層体51とする(図3(d),(e)参照)。その後、各正極集電体23の各タブ24を正極外部端子25に超音波溶接し、かつ、各負極集電体33の各タブ34を負極外部端子35に超音波溶接する。
【0049】
次に、容器61の中に端子付きの電極積層体51を収容して開口部を閉じる。この後、真空引きを行いつつ有機電解質を注入し、容器61内の収容空間を有機電解質で確実に満たすようにする。さらに、容器61を密閉して所定時間保持し、プレドープを進行させる。本実施形態の場合、負極31の片側面にのみリチウム金属箔16を設けているにもかかわらず、電極両面にリチウムイオンを十分に行き渡らせることができ、プレドープを速やかに進行させることができる(図4の太線矢印を参照)。以上の結果、図1に示すリチウムイオンキャパシタ11が完成する。
【0050】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0051】
(1)本実施形態の場合、負極電極32を正極電極22よりも広面積とし、かつその外形線を正極電極22の外形線の外側に位置させている。そのため、100Aを越える大電流を流したときでも、負極電極32側への電流集中が回避され、リチウム金属の析出が防止される。また、負極集電体33を負極電極32よりも広面積とし、かつその外周部にリチウム貼付部37を設けているが、当該リチウム貼付部37と対向する位置には少なくとも正極電極22は配置されていない。ゆえに、仮にリチウムが溶け残ったとしても、正極電極22が充放電に関与するおそれはなく、好適な充放電特性が維持される。従って、大容量・高電圧という高い性能を有し、かつ、信頼性に優れたリチウムイオンキャパシタ11を提供することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、リチウム貼付部37を平面視矩形状の負極集電体33における対向した二辺の近傍にそれぞれ設けている。従って、このように離間した2箇所に設けたリチウム貼付部37にリチウム金属箔16を貼付することで、負極電極32に対しリチウムイオンが二方向から同時に供給される。そのため、リチウムイオンを早く均一にドーピングすることができる。よって、比較的容易にリチウムイオンのプレドープを行うことが可能なリチウムイオンキャパシタ11とすることができる。
【0053】
(3)本実施形態では、リチウム貼付部37を負極集電体33における片側面にのみ設けた結果、リチウム金属箔16を負極集電体33における片側面にのみ貼り付ける構成となっている。従って、負極集電体33における両側面にリチウム金属箔16を貼り付ける場合に比べて、貼付作業に要する労力が半減する。このため、比較的製造しやすくて安価なリチウムイオンキャパシタ11とすることができる。
【0054】
(4)本実施形態では、セパレータ41は、平面視で正極電極22よりも広面積であり、かつその外形線が正極電極22の外側に位置し、リチウム貼付部37が設けられた領域まで及んでいる。それゆえ、リチウム貼付部37を設けた負極集電体33の外周部とセパレータ41の外周部とが近接して対面した状態となる(図4参照)。よって、そのリチウム貼付部37にリチウムを貼付しておくと、リチウムイオンがセパレータ41内を移動して速やかに拡散することができる。即ち、この構成によると、セパレータ41が一種のリチウム拡散経路として機能する。しかも、この構成によると、当該リチウム貼付部37と同一面上にある負極電極32にリチウムイオンを拡散させることができるばかりでなく、隣接する他の負極電極32にもリチウムイオンを拡散させることができる。ゆえにこの構成は、片側面のみにリチウム金属箔16を貼付する本実施形態のような構造を採用する場合に、とりわけ有利である。
【0055】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、負極集電体33の外周部における片側面にのみリチウム金属箔16を貼付したが、図5に示す別の実施形態のように、負極集電体33の外周部における両側面にリチウム金属箔16を貼付した構成を採用してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、ラミネートフィルム製の容器61を用いてリチウムイオンキャパシタ11を構成したが、当該容器61のようなソフトケースに代わる収容体として、例えば、箱状のケース本体と上蓋とからなるハードケースを用いてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、正極外部端子25及び負極外部端子35を平面視で略正方形状の容器61における一辺から突出させた構成としたが、例えば、図6,図7に示す別の実施形態のリチウムイオンキャパシタ111のような構成としてもよい。即ち、このリチウムイオンキャパシタ111の場合、容器161が平面視で長方形状となっていて、正極外部端子25及び負極外部端子35がその容器161における一対の短辺からそれぞれ突出している。この実施形態では、容器161と同様に電極積層体151も長方形状となっており、その構成部材である負極集電体33も長方形状となっている。そして、負極集電体33における一対の長辺の近傍にはリチウム貼付部37が設けられ、そこにリチウム金属箔16が貼付されている。一方、負極集電体33における一対の短辺のうちのいずれかの近傍には、負極外部端子35に電気的に接続されるタブ34が突設されている。
【0059】
上記の構成であると、広面積のリチウム貼付部37を形成しやすく、しかもリチウムイオンの移動距離が短くなるため、リチウムイオンを早く均一にドーピングすることができる。よって、比較的容易にリチウムイオンのプレドープを行うことができる。また、この構成であると、負極集電体33と負極外部端子35との溶接部の抵抗が大きくなりにくいため、大きな電位差の発生を防ぐための工夫が不要になり、比較的容易に設計することができる
【0060】
・上記実施形態では、本発明をリチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタ11,111に具体化したが、リチウム以外のアルカリ金属をプレドープさせるタイプのアルカリ金属イオンキャパシタに具体化することもできる。あるいは、本発明を非水系二次電池や電気二重層キャパシタなどに具体化することもできる。
【0061】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0062】
(1)請求項1において、前記リチウム金属貼付部に貼付されるリチウム金属が、プレドープ用のリチウム金属箔であることを特徴とする非水系蓄電デバイス。
【0063】
(2)請求項1において、前記リチウム金属貼付部に貼付されるリチウム金属が、金属製支持体上に支持固定されたプレドープ用のリチウム金属箔であり、前記金属製支持体は、前記リチウム金属貼付部に接着剤を用いて接着されることを特徴とする非水系蓄電デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態のリチウムイオンキャパシタの平面図。
【図2】上記リチウムイオンキャパシタを構成する電極積層体の断面図。
【図3】(a)は負極、(b)はセパレータ、(c)は正極、(d)は電極積層体の平面図、(e)は電極積層体の分解断面図。
【図4】実施形態の電極積層体の部分拡大断面図。
【図5】別の実施形態の電極積層体の部分拡大断面図。
【図6】別の実施形態のリチウムイオンキャパシタの平面図。
【図7】別の実施形態の電極積層体の平面図。
【符号の説明】
【0065】
11,111…非水系蓄電デバイスとしてのリチウムプレドープ型リチウムイオンキャパシタ
21…正極
22…正極電極
23…正極集電体
31…負極
32…負極電極
33…負極集電体
34…接続部としてのタブ
35…負極外部端子
37…リチウム金属貼付部としてのリチウム貼付部
41…セパレータ
51,151…電極積層体
61,161…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料からなる正極電極を正極集電体上に形成した構造の正極と、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な材料からなる負極電極を負極集電体上に形成した構造の負極と、前記負極及び前記正極の間に介在されたセパレータとを備え、前記正極、前記負極及び前記セパレータを積層することにより電極積層体が構成されている非水系蓄電デバイスにおいて、
前記負極電極は、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記正極電極よりも広面積であり、かつその外形線が前記正極電極の外形線の外側に位置しており、前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記負極電極よりも広面積であり、かつその外周部にリチウム金属貼付部が設けられていることを特徴とする非水系蓄電デバイス。
【請求項2】
前記リチウム金属貼付部に貼付されるリチウム金属がプレドープ用であることを特徴とする請求項1に記載の非水系蓄電デバイス。
【請求項3】
前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見たときの形状が矩形状であり、前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における対向した二辺の近傍にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系蓄電デバイス。
【請求項4】
前記負極集電体は、前記電極積層体の厚さ方向から見たときの形状が一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における前記一対の長辺の近傍にそれぞれ設けられ、前記負極集電体における前記一対の短辺のうちのいずれかには、負極外部端子に電気的に接続される接続部がそれぞれ突設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水系蓄電デバイス。
【請求項5】
前記リチウム金属貼付部は、前記負極集電体における片側面にのみ設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水系蓄電デバイス。
【請求項6】
前記セパレータは、前記電極積層体の厚さ方向から見て前記正極電極よりも広面積であり、かつその外形線が前記正極電極の外側に位置していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水系蓄電デバイス。
【請求項7】
前記セパレータは、前記リチウム金属貼付部が設けられた領域まで及んでいることを特徴とする請求項6に記載の非水系蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−305648(P2008−305648A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151043(P2007−151043)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】