説明

非水系顔料分散組成物

【課題】ポリマーの顔料への吸着性に優れた非水系顔料分散組成物、及び非水系顔料分散用ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】〔1〕顔料(A)、非水系溶媒(B)、及び反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)由来の構成単位を含む共重合体((c1)成分)と、片末端に、(c1)成分の反応性官能基と反応しうる官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン((c2)成分)とを反応させることにより得られるポリマー(C)を含有する非水系顔料分散組成物、及び〔2〕ビニルモノマー(c1b)と(c1a)とを反応させて、該ビニルモノマー由来の構成単位を含む共重合体を製造する工程(I)、得られた共重合体と(c2)成分とを反応させて、該(c2)成分が該共重合体にグラフト結合したグラフト共重合体を製造する工程(II)を有する非水系顔料分散用ポリマーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系顔料分散組成物、及び非水系顔料分散用ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体顔料を有機溶剤中に分散するためにポリマー材料が有用であることは、従来から知られており、溶剤系ペイント組成物を調合するための顔料分散物を形成するために使用されてきた。そのような分散剤は、主に自動車の外装用の溶剤ペイントや、液晶ディスプレーのカラーフィルター用のインキに幅広く使用されている。特にカラーフィルターの分野においては、近年の液晶ディスプレーは高品質化のため高い彩度、明度が求められ、カラーフィルター中の顔料にも微細化及び顔料の高濃度化が要求されている。このような分散剤用のポリマーとしては、グラフトポリマーが良好な性能を有することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)(A−1)アルコール性水酸基を有するモノマー、(A−2)マクロモノマー及び(A−3)これらと共重合可能な他のモノマーの共重合体であるバインダーポリマー、(B)顔料並びに(C)感放射線性化合物を含有する感放射線性組成物が開示されている。
特許文献2には、有機溶剤中に、有機顔料と、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、窒素原子含有基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとの共重合体とが分散されてなる顔料分散組成物が開示されている。
また、特許文献3には、マクロモノマーを主鎖にグラフトさせたグラフトコポリマーであって、主鎖にアミド官能基を顔料固定基として含む、顔料分散剤に適したポリマー組成物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−140654号公報
【特許文献2】特開平10−339949号公報
【特許文献3】特表2003−517063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の組成物では、顔料へのポリマーの吸着性が低いため、顔料表面に固定化されていない分散剤が露光後の樹脂物性を低下させるという問題がある。
本発明は、ポリマーの顔料への吸着性に優れた非水系顔料分散組成物、及び非水系顔料分散用ポリマーの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕顔料(A)、非水系溶媒(B)、及び下記(c1)成分と(c2)成分とを反応させることにより得られるポリマー(C)を含有する、非水系顔料分散組成物。
(c1)成分:反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)由来の構成単位を含む共重合体
(c2)成分:片末端に、(c1)成分の反応性官能基と反応しうる官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン
〔2〕下記工程(I)及び(II)を有する、非水系顔料分散用ポリマーの製造方法。
工程(I):窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)と反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)とを反応させて、該ビニルモノマー(c1a)及び(c1b)由来の構成単位を含む共重合体を製造する工程
工程(II):工程(I)で得られた共重合体と、該共重合体の反応性官能基と反応しうる官能基を片末端に有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン((c2)成分)とを反応させて、該(c2)成分が、該共重合体にグラフト結合したグラフト共重合体を製造する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリマーが顔料に強固に吸着した非水系顔料分散組成物、及び非水系顔料分散用ポリマーの効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の非水系顔料分散組成物は、顔料(A)、非水系溶媒(B)、及び前記ポリマー(C)を含有する。以下、これらの各成分について説明する。
[顔料(A)]
本発明に用いられる顔料(A)は、無機顔料及び有機顔料いずれであってもよい。また必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料が挙げられる。アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表される、ジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。
顔料(A)は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測してその平均をその粒子の粒子径として求め、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積を、求めた粒子径を一辺とする立方体と近似して体積平均粒子径を求め、それを平均一次粒子径とする。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254(前記式(1)において、X1及びX2が塩素原子、Y1及びY2が水素原子である化合物)、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Igaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
上記の顔料(A)、特にジケトピロロピロール系顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
[非水系溶媒(B)]
本発明に用いられる非水系溶媒(B)は特に限定されないが、特にカラーフィルター用の油性インクとして用いる場合、沸点が100℃以上の高沸点有機溶媒を用いることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、以下の(i)〜(v)等が挙げられる。
(i)エチレングリコールアルキルエーテル類(セロソルブ類):エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等
(ii)ジエチレングリコールアルキルエーテル類(カルビトール類):ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等
(iii)アルコール類:エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等
(iv)アルカンジイルグリコールジアルキルエーテル類:プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等
(v)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート類:エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等
上記非水系溶媒(B)の中では、ポリマー(B)の溶解性又は分散性と顔料(A)の分散性の観点から、(iv)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)が特に好ましい。
これらの非水系溶媒(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
[ポリマー(C)]
本発明に用いられるポリマー(C)において、(c1)成分である特定の共重合体は、ポリマー(C)の主鎖を構成し、顔料(A)を非水系溶媒(B)中に分散させる際に、顔料(A)への吸着部分となるものである。(c2)成分である特定のポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレンは、主鎖にグラフトする側鎖を構成し、主として耐熱性を向上させるものである。
ポリマー(C)は、(c1)成分の反応性官能基と(c2)成分をカップリング反応させることにより得ることができ、具体的には、下記工程(I)及び工程(II)を有する方法(高分子反応法)により製造されることが好ましい。
工程(I):窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)と反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)とを反応させて、該ビニルモノマー(c1a)及び(c1b)由来の構成単位を含む共重合体を製造する工程
工程(II):工程(I)で得られた共重合体と、該共重合体の反応性官能基と反応しうる官能基を片末端に有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン((c2)成分)とを反応させて、該(c2)成分が、該共重合体にグラフト結合したグラフト共重合体を製造する工程
【0013】
[(c1)成分]
(c1)成分は、反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)由来の構成単位を含む共重合体であり、上記のように、反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)と、窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。(c1)成分が上記構成を有することにより、ポリマー(C)の顔料吸着性を維持しながら、残存する反応性官能基を利用して、ポリマー修飾等が可能となる。
【0014】
[反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)]
反応性官能基を含有するビニルモノマーとしては、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基を含むビニルモノマー等が挙げられる。
エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、N−グリシジル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、アリルグリシジルエーテル等のアリルエーテル類、1,2−エポキシ−5−ヘキセン等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリル又はそれらの両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を意味する。
イソシアネート基を含有するビニルモノマーとしては、昭和電工株式会社製のイソシアネートモノマーである、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(製品名:カレンズMOI)、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(製品名:カレンズMOI−BP)、メタクリル酸 2−([1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(製品名:カレンズMOI−BM)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(製品名:カレンズAOI)等が挙げられる。
【0015】
カルボキシ基を含有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等が挙げられる。
リン酸基を含有するビニルモノマーとしては、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
スルホン酸基を含有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
アミノ基を含有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
これらの中では、反応性、重合速度の面から、エポキシ基を含有するビニルモノマーが好ましく、グリシジル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、特にグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
[窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)]
窒素原子を含有するビニルモノマーとしては、アミド結合を有するビニルモノマーが好ましく、より具体的には、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類、ビニルピリジン類、含窒素スチレン系モノマー、含窒素(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド2−メチルプロピルスルホン酸、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルピロリドン類としては、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0017】
ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられ、含窒素スチレン系モノマーとしては、p−スチレンスルホンアミド、p−アミノスチレン、アミノメチルスチレン等が挙げられる。
含窒素(メタ)アクリル酸エステルとしては、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジアルキルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中では、顔料への吸着性の観点から、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類が好ましく、N−ビニルピロリドンが特に好ましい。
【0018】
[その他のモノマー(c1c)]
(c1)成分は、モノマー(c1a)由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)由来の構成単位を含む共重合体であるが、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記モノマーと共重合可能なその他のモノマー(c1c)を共重合させることができる。
その他のモノマー(c1c)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のスチレン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中では、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコール性水酸基を有するモノマーが好ましい。
モノマー(c1a)、(c1b)及び(c1c)の各々は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(c1)成分中のモノマー(c1a)、(c1b)、及び(c1c)由来の構成単位の含有量は、特に制限はないが、(c1a)由来の構成単位が通常5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、(c1b)由来の構成単位が通常5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、(c1c)由来の構成単位が通常0〜80重量%、好ましくは5〜75重量%である。
【0019】
[(c1)成分の製造]
(c1)成分の製造方法としては、窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)と反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)、及び必要に応じて、更にその他のモノマー(c1c)とを反応させて、該モノマー(c1a)、(c1b)、及び必要に応じて更に(c1c)由来の構成単位を含む共重合体を製造する工程(I)による方法が好ましい。
また、上記全成分を一度に添加して反応させてもよいが、工程(I)全体を数段階に分けて、各成分を分割して添加し、反応させることが好ましい。
【0020】
重合方法としては特に制限はなく、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等を採用しうるが、特に溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系等が挙げられる。また必要に応じて、連鎖移動剤等を用いることもできる。連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類が挙げられる。
反応温度は、用いる重合開始剤、溶媒の種類等により適宜選択できるが、通常50〜100℃の範囲が好ましい。
【0021】
(c1)成分の数平均分子量は、本発明の組成物の分散体としての保存安定性及び顔料の分散速度の低下を抑制する観点から、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1000〜30,000、より好ましくは2000〜20,000、更に好ましくは2000〜10,000である。また、(c1)成分の重量平均分子量は、同様の観点から、好ましくは1000〜150,000、より好ましくは1500〜90,000、より好ましくは2000〜60,000、更に好ましくは4000〜40,000である。
(c1)成分のエポキシ価は、(c2)成分との反応性等の観点から、19〜375mgKOH/gが好ましく、40〜350mgKOH/gがより好ましく、50〜300mgKOH/gが更に好ましい。(c1)成分の数平均分子量やエポキシ価は、モノマー(c1a)、(c1b)等の共重合条件を調節することにより所望のものを得ることができる。
原料となるビニルモノマー(c1a)及び(c1b)、更に必要に応じて(c1c)は、一括添加して反応させてもよいが、組成をコントロールするために、分割添加して反応させてもよい。
【0022】
[(c2)成分]
(c2)成分は、片末端に、(c1)成分の反応性官能基と反応しうる官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレンである。
(c1)成分の反応性官能基と反応しうる官能基としては、カルボキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられ、(c1)成分の反応性官能基の種類を考慮して、適宜選択することができる。
(c1)成分の反応性官能基がエポキシ基であるとき、(c2)成分は、片末端にカルボキシ基を有する重合体(片末端カルボン酸型の重合体)又は片末端にアミノ基を有する重合体(片末端アミノ基型の重合体)であることが好ましい。
(c1)成分の反応性官能基がイソシアネート基であるとき、(c2)成分は、片末端にヒドロキシル基を有する重合体(片末端ヒドロキシル基型の重合体)又は片末端にアミノ基を有する重合体(片末端アミノ基型の重合体)であることが好ましい。
【0023】
片末端カルボン酸型の重合体としては、片末端にカルボキシ基を有する、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、又はポリ(メタ)アクリル酸ステアリル等の片末端カルボン酸型のポリ(メタ)アクリル酸アルキル類、あるいは片末端カルボン酸型ポリスチレン等が挙げられる。
片末端アミノ基型の重合体としては、片末端にアミノ基を有する、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、又はポリ(メタ)アクリル酸ステアリル等の片末端アミノ基型のポリ(メタ)アクリル酸アルキル類、あるいは片末端アミノ基型ポリスチレン等が挙げられる。
片末端ヒドロキシル基型の重合体としては、片末端にヒドロキシル基を有する、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、又はポリ(メタ)アクリル酸ステアリル等の片末端ヒドロキシル基型のポリ(メタ)アクリル酸アルキル類、あるいは片末端ヒドロキシル基型ポリスチレン等が挙げられる。
これらの中から、使用する溶媒との溶解性が高いポリマーを選択して使用することができる。例えば、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)やジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)を使用する場合は、片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル、片末端カルボン酸型ポリスチレン等を使用することが好ましい。
【0024】
(c2)成分には、必要に応じて、官能基を有する他のモノマーを少量共重合することもできる。これらのモノマーとしては、(c1)成分を構成するモノマーである、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール性水酸基を有するモノマー(c1c)、メタクリル酸等のカルボキシ基を有するモノマー(c1a)、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有するモノマー(c1a)等が挙げられる。それらの共重合量は(c1)成分と(c2)成分とのカップリング反応の妨げにならない程度であれば特に制限はないが、0〜10重量%が好ましい。
【0025】
[(c2)成分の製造]
(c2)成分の製造方法に特に制限はなく、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等を採用しうるが、特に溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いる溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤は、(c1)成分の製造で記載したものと同じである。片末端にカルボン酸を導入するために、4,4’−アゾビス(4−シアノ酪酸)等のカルボン酸を含む重合開始剤や、メルカプトプロピオン酸等のカルボン酸を含む連鎖移動剤を使用することが好ましく、片末端にアミノ基を導入するために、アミノエタンチオール等の連鎖移動剤、片末端にヒドロキシル基を導入するために、メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を使用することが好ましい。
反応温度は、用いる重合開始剤、溶媒の種類等により適宜選択できるが、通常50〜100℃の範囲が好ましい。
(c2)成分の数平均分子量は、本発明の組成物の分散体としての保存安定性及び増粘抑制の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは500〜10,000、より好ましくは700〜5000、更に好ましくは700〜2000である。また、(c2)成分の重量平均分子量は、同様の観点から、好ましくは1000〜50,000、より好ましくは1000〜20,000、より好ましくは1000〜10,000、更に好ましくは1000〜5000である。
また、(c1)成分の反応性官能基に対する(c2)成分の官能基のモル比〔(c2)成分の官能基/(c1)成分の反応性官能基)〕は、未反応(c2)を抑制する観点から、0.05〜1.0が好ましく、0.1〜0.9がより好ましく、0.2〜0.8が更に好ましい。
【0026】
[ポリマー(C)の製造]
ポリマー(C)は、(c1)成分の反応性官能基と、該反応性官能基と反応しうる(c2)成分の官能基とのカップリング反応により製造される。具体的には、工程(I)で得られた共重合体と、該共重合体の反応性官能基と反応しうる官能基を片末端に有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン((c2)成分)とを反応させて、該(c2)成分が、該共重合体(主鎖)に側鎖としてグラフト結合したグラフト共重合体(ポリマー(C))を製造する工程(II)によることが好ましい。
カップリング反応の際には、触媒を用いてもよい。特にエポキシ基とカルボン酸の反応の場合やイソシアネート基とヒドロキシル基の反応の場合には、触媒を添加することが好ましい。エポキシ基とカルボン酸の反応の触媒としては、第四級アンモニウム塩、第三級アミン、アルカリ金属の水酸化物、無機酸、スルホン酸、カルボン酸、固体酸、固体塩基等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のハロゲン化物が挙げられ、第三級アミンとしては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
上記触媒の中では、第四級アンモニウム塩、第三級アミンが好ましく、第四級アンモニウムハライドがより好ましく、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が特に好ましい。触媒の添加量については特に制限はないが、カルボン酸に対して、0.5〜200mol%が好ましい。
イソシアネート基とヒドロキシル基の反応の場合の触媒としては、ピリジンなどのアミン類やジブチルスズジラウレートなどの有機金属類が上げられる。触媒の添加量については特に制限はないが、イソシアネート基に対して、0.05〜200mol%が好ましい。
【0027】
溶媒としては、(c1)成分、及び(c2)成分を溶解するものであれば、特に制限はない。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系の濃度に特に制限はないが、全量中の(c1)成分と(c2)成分の合計量は、粘度上昇を抑制して均一に反応を進行させる観点及び反応時間を短縮する観点から、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。反応温度も特に制限はないが、反応速度の観点から、60℃以上であることが好ましい。
カップリング反応の進行は、各反応性官能基を定量することにより確認することができる。例えばエポキシ基を有する(c1)成分とカルボキシ基を有する(c2)成分を用いる場合は、反応系中の酸価、エポキシ基を測定することにより、また、アミノ基を有する(c2)成分を用いる場合は、アミン価を測定することにより、カップリング反応の進行状況を確認できる。
なお、得られた共重合体(ポリマー(C))に少量の水を加えて加熱することにより、主鎖である工程(I)で得られたポリマーに残された未反応の反応性官能基(エポキシ基等)を加水分解することも可能である。
【0028】
上記の方法で得られたポリマー(C)における、全構成単位中の(c1a)成分由来の構成成分の含有量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは0〜65重量%、より好ましくは0〜50重量%、更に好ましくは0〜45重量%である。
ポリマー(C)の全構成単位中の(c1b)成分由来の構成成分の含有量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
ポリマー(C)の全構成単位中の(c2)成分由来の構成単位の含有量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは50〜80重量%である。
ポリマー(C)の重量平均分子量は、顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは1000〜1000,000、より好ましくは2000〜800,000、更に好ましくは5000〜700,000である。
【0029】
[顔料分散組成物]
本発明の顔料分散組成物は、顔料(A)、非水系溶媒(B)、及びポリマー(C)を含有する。
顔料分散組成物中の顔料(A)の割合は、良好な着色性及び粘度を得る観点から、1〜30重量%が好ましく、2〜20重量%がより好ましい。
非水系溶媒(B)の含有量は、良好な着色性及び粘度を得る観点から、顔料分散組成物中の全固形分に対して、100〜10000重量%が好ましく、200〜1000重量%がより好ましい。
ポリマー(C)の含有量は、良好な粘度及び塗膜物性を得る観点から、顔料(A)に対し1〜300重量%が好ましく、2〜200重量%がより好ましく、5〜100重量%が更に好ましい。
【0030】
本発明の顔料分散組成物の製造方法に特に制限はないが、ポリマー(C)と非水系溶媒(B)とを予め予備分散し、得られた予備分散体に粒径の大きい粉末である顔料(A)を混合し、本分散処理して組成物を得ることが好ましい。
予備分散で用いる分散機に特に制限はなく、公知の種々の分散装置を用いることができるが、顔料(A)の微細化の観点から、ペイントシェーカーやビーズミル及び高圧式分散機が好ましい。
得られた予備分散体を更に微細化するための本分散処理においては、メディア式分散機を用いることが好ましい。用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、高分子材料、金属等が挙げられるが、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの粒径としては、0.003〜0.1mmが好ましく、0.005〜0.09mmがより好ましく、0.01〜0.08mmが更に好ましい。
本分散に用いるメディア式分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル等が好ましく、市販機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0031】
本発明の顔料分散組成物は、顔料(A)、非水系溶媒(B)、ポリマー(C)以外に、バインダー、多官能モノマー(硬化成分)、光重合開始剤等を含有することもできる。
バインダーとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(例えば、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体等)、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物等を挙げることができる。その重量平均分子量は、5000〜200,000が好ましい。バインダーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して20〜80重量%が好ましい。
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等を挙げることができる。多官能モノマーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類を挙げることができる。特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して0.2〜10重量%が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「%」は特記しない限り「重量%」を意味する。
なお、製造例で得られたポリマーの分子量、不揮発分、エポキシ価、及び吸着率の測定は、以下の方法により行った。
(1)ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定
カラムとして昭和電工株式会社製、K−804Lカラムを2本直列で用い、溶媒として、1mmol/LのファーミンDMを含有するクロロホルムを用いたGPC法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)不揮発分の測定
シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10gを量り取り、そこにポリマー溶液2gを入れ、ガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2時間乾燥する。乾燥後の重さを量り、次式より得られた値を不揮発分とした。
不揮発分={[サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレ+ガラス棒+無水硫酸ナトリウムの重さ))]/サンプル量}×100
【0033】
(3)エポキシ価の測定
ポリマー溶液に塩酸を加え、クロルヒドリン化により消費された量を水酸化カリウムのmg数で表示した。
(4)吸着率の測定
調製した顔料分散組成物を、遠心分離機(日立工機株式会社製、商品名:himac CP56G)を用いて、30000rpmで3時間遠心分離し、遠心分離前の固形分及び上澄み液の固形分を前記(1)の不揮発分に準じて算出し、次式によりポリマーの顔料表面への吸着率を算出した。なお、仕込みの固形分量とは、使用した顔料とポリマーの合計量である。
【0034】
【数1】

【0035】
製造例1−1〔ポリ(グリシジルメタクリレート・2−ヒドロキシエチルメタクリレート・N−ビニルピロリドン)(c1成分)の合成〕
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにN−ビニル−2−ピロリドン(以下、「VP」という)38.9g、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という)4.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」という)11.3g、メルカプトエタノール(連鎖移動剤)0.4g、エタノール75.7gを仕込み、窒素置換を行った。77℃で攪拌しながら、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、アゾ系重合開始剤、商品名:V−65)1.5gをエタノール9.8gに溶解した溶液を添加した。
次に、上記で得られたモノマー溶液を77℃で攪拌しながら、VP 58.4g、GMA 19.8g、HEMA 56.6g、メルカプトエタノール1.0g、前記重合開始剤2.5g、エタノール173.2gを混合した溶液を、90分かけて滴下した。
滴下終了後に更に、GMA 15.8g、HEMA 45.3g、メルカプトエタノール0.5g、前記重合開始剤1.0g、エタノール65gを混合した溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、77℃で攪拌後、前記重合開始剤0.3gとエタノール7.5gを加えた。更に77℃で1時間攪拌した後、前記重合開始剤0.3gとエタノール7.5gを加えた。更に1時間攪拌した後、冷却し、ポリ(GMA−HEMA−VP)(C1成分)のエタノール溶液を得た。
得られた(C1成分)の数平均分子量は5800、重量数平均分子量は12400、不揮発分は50%、エポキシ価は28mgKOH/gであった。
【0036】
製造例1−2〜1−5
製造例1−1において、表1に示す条件に変えた以外は、製造例1−1と同様の操作を行い、ポリマー溶液を得た。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
製造例2−1〔片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル(c2成分)の合成〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル200g、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)14.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という)25gを仕込み、窒素置換したあと、80℃で攪拌しながら、メタクリル酸メチル800g、3−メルカプトプロピオン酸56.9g、PGMEA 400g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)8gを3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、前記重合開始剤8g、3−メルカプトプロピオン酸3.6g、PGMEA 400gを加えた。更に、80℃で2時間攪拌し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル溶液を得た。
得られたポリマー溶液の酸価は21mgKOH/gであり、得られたポリマーの数平均分子量は1700、重量平均分子量は3000、不揮発分は38%であった。
製造例2−2
製造例2−1で仕込みの3−メルカプトプロピオン酸を25.6g、滴下モノマー液中の3−メルカプトプロピオン酸を102.2gに代え、同様の操作で合成を行い、目的のポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の酸価は33mgKOH/gであり、得られたポリマーの数平均分子量は1000、重量平均分子量は1700、不揮発分は44%であった。
【0039】
製造例2−3〔片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル(c2成分)の合成〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル700g、3−メルカプトプロピオン酸49.77g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCA」という)350gを仕込み、窒素置換したあと、75℃で攪拌しながら、メタクリル酸メチル2800g、3−メルカプトプロピオン酸199.1g、BCA 1400g、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)28gを3時間かけて滴下した。更に前記重合開始剤28g、3−メルカプトプロピオン酸12.6g、BCA 1400gを1時間かけて滴下した。更に、75℃で2時間攪拌し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル溶液を得た。
得られたポリマー溶液の酸価は19.72mgKOH/g、得られたポリマーの数平均分子量は1700、重量平均分子量は3000、不揮発分は53%であった。
【0040】
製造例3−1〔エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるポリマー(C)の製造〕
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに製造例1−1のポリマー溶液60g、製造例2−1のポリマー溶液86g、PGMEA 66g、エタノール66g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)3gを仕込み、90℃で15時間攪拌した。冷却後、エバポレーターにて(バス温63℃、圧力92kPa)、エタノールを留去し、ポリ(HEMA−VP−MMA)溶液を得た。エタノール留去前のポリマー溶液の酸価は1.8mgKOH/gであった(反応率84%)。
また、得られたポリマーの数平均分子量は5000、重量平均分子量は33000、不揮発分は40%であった。計算によるポリマー組成と合わせて、結果を表2に示す。
【0041】
製造例3−2〜3−5〔エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるポリマー(C)の製造〕
製造例3−1において、表2に示す条件に変えた以外は、製造例3−1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
比較製造例1(片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸メチルの合成)
製造例2−1と同様にして得られた末端カルボン酸型ポリメタクリル酸メチル溶液450g、グリシジルメタクリレート(GMA)18.4g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)6.2g、メトキシフェノール0.6g、PGMEA 10gを、還流冷却器、温度計、空気導入管、攪拌装置を取り付けた4つ口フラスコに仕込み、空気バブリングを行いながら、90℃で12時間攪拌し、片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルを得た。
得られたポリマー溶液の酸価は0.11mgKOH/gであり、得られたポリマーの数平均分子量は1800、重量平均分子量3200、不揮発分は60%であった。
【0044】
比較製造例2−1〔マクロモノマー法によるポリ(HEMA−VP−MMA)の製造〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、PGMEA10gを仕込み、窒素置換した後、78℃で攪拌しながら、VP12.7g、比較製造例1のマクロモノマー溶液120.9g、HEMA 14.8g、PGMEA 41g、前記重合開始剤2g、メルカプトエタノール0.4gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、前記重合開始剤2g、PGMEA 45gを添加し、78℃で3時間攪拌し、更に90℃で30分攪拌した。冷却後、ポリ(HEMA−VP−MMA)のポリマー溶液を得た。
得られたポリマーの数平均分子量は7200、重量平均分子量は31000、不揮発分は40%であった。
【0045】
比較製造例2−2〔マクロモノマー法によるポリ(HEMA−VP−MMA)の製造〕
比較製造例2−1で滴下モノマー液を、VP 10.7g、比較製造例1のマクロモノマー溶液130g、HEMA 10.8g、PGMEA 41g、前記重合開始剤2g、メルカプトエタノール0.4gに代えて重合を行い、ポリ(HEMA−VP−MMA)のポリマー溶液を得た。
得られたポリマーの数平均分子量は9400、重量平均分子量は41000、不揮発分は40%であった。
【0046】
実施例1
C.I.ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:Igaphor Red BK-CF)20g、製造例3―1のポリマー溶液50g(ポリマーとして20g)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート128.6gを直径0.3mmのジルコニアビーズ400gと一緒に500ccのポリ瓶に量り、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)で3時間振とうし、金網でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。更に得られた予備分散体100gを直径0.05mmのジルコニアビーズ100gと一緒に250ccのポリ瓶に量り、18時間振とうした。金網でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散組成物を得た。
【0047】
実施例2〜5及び比較例1〜2
実施例1において、表2に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散組成物を得た。
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた顔料分散組成物について、下記方法により評価を行った。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から、本発明の非水系顔料分散組成物は、ポリマーの顔料への吸着性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の非水系顔料分散組成物は、ポリマーの顔料への吸着性に優れ、各種の基板(カラーフィルターのブラックマトリックス、ガラス基板等)への密着性、塗膜物性も優れているため、液晶表示素子や固体撮像素子等のカラーフィルター用色材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)、非水系溶媒(B)、及び下記(c1)成分と(c2)成分とを反応させることにより得られるポリマー(C)を含有する、非水系顔料分散組成物。
(c1)成分:反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)由来の構成単位を含む共重合体
(c2)成分:片末端に、(c1)成分の反応性官能基と反応しうる官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン
【請求項2】
(c1)成分中の反応性官能基がエポキシ基又はイソシアネート基であり、該エポキシ基と反応しうる(c2)成分中の官能基がヒドロキシル基、カルボキシ基又はアミノ基である、請求項1に記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項3】
ポリマー(C)の全構成単位中の(c2)成分由来の構成単位の含有量が、30〜95重量%である、請求項1又は2に記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項4】
(c2)成分の数平均分子量が500〜20,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項5】
反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)がグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項6】
窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)がN−ビニルピロリドンである、請求項1〜5のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項7】
ポリマー(C)が、更にアルコール性水酸基を含有するビニルモノマー(c3)由来の構成単位を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項8】
アルコール性水酸基を含有するビニルモノマー(c3)が(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルである、請求項7に記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項9】
非水系溶媒(B)がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び/又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである、請求項1〜8のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項10】
顔料(A)がジケトピロロピロール系顔料である、請求項1〜9のいずれかに記載の非水系顔料分散組成物。
【請求項11】
下記工程(I)及び(II)を有する、非水系顔料分散用ポリマーの製造方法。
工程(I):窒素原子を含有するビニルモノマー(c1b)と反応性官能基を含有するビニルモノマー(c1a)とを反応させて、該ビニルモノマー(c1a)及び(c1b)由来の構成単位を含む共重合体を製造する工程
工程(II):工程(I)で得られた共重合体と、該共重合体の反応性官能基と反応しうる官能基を片末端に有するポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレン((c2)成分)とを反応させて、該(c2)成分が、該共重合体にグラフト結合したグラフト共重合体を製造する工程

【公開番号】特開2009−120823(P2009−120823A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272234(P2008−272234)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】