説明

非水電解質二次電池および非水電解質、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム

【課題】高温環境下での使用に伴うガス発生を抑制できると共に、サイクル特性を改善できる非水電解質二次電池および非水電解質、並びにこれらを用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供する。
【解決手段】電解質は、電解液と、電解液を保持する高分子化合物とを含む、ゲル状の電解質である。電解液は、環状アルキレンカーボネートと、式(1)で表されるジニトリル化合物とを含み、環状アルキレンカーボネートの含有量は、電解液の全質量に対して、80質量%以上である。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質二次電池および非水電解質、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。さらに詳しくは、例えば非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含む非水電解質を用いた非水電解質二次電池、並びにこれらを用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Video Tape Recorder)、携帯電話またはノートパソコン等のポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
【0003】
中でも、充放電反応にリチウム(Li)の吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)は、鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。このリチウムイオン二次電池は、正極および負極と共に、イオン伝導媒体である電解質を備えている。
【0004】
二次電池の種々の性能を向上させるために、鋭意開発が進められている。例えば、外装部材にアルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムを使用するラミネート型電池は、軽量なためエネルギー密度を高めることができる。ラミネート型電池では、電解質として、電解液と共に高分子化合物を含有させることが行われている。このようなラミネート型ポリマー電池では、電解液によって、高分子化合物を膨潤させると、ラミネート型電池の変形を抑制することができ、特に、電解液により高分子化合物を膨潤させゲル化させたゲルポリマーを用いたゲル状電解質電池は広く使用されている。
【0005】
ところで、従来の最大4.2Vで作動するリチウムイオン二次電池では、正極に用いられるコバルト酸リチウムなどの正極活物質は、その理論容量に対して6割程度の容量を活用しているに過ぎない。このため、更に充電電圧を上げることにより、残存容量を活用することが原理的に可能である。実際に、充電時の電圧を4.25V以上にすることにより、高エネルギー密度化を実現できることが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0006】
通常、リチウムイオン二次電池では、正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が4.2Vから2.5Vの範囲で用いられている。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレータなどの優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
【0007】
しかし、リチウムイオン二次電池において4.25V以上の作動電圧で充放電を行うと、充電の進行に伴って、正極ではリチウムがより多く放出される。このため正極が熱的、電気的に不安定な状態におかれ、電解液の分解などの望ましくない副反応がより顕著となるため、ガス発生量の増加などと共に、充放電サイクルに伴う容量が損なわれるという問題が生じる。
【0008】
ラミネート型電池に使用する電解液では、ラミネート外装が軟らかく高温環境で膨れやすいため、沸点が高い環状炭酸エステルを80質量%以上含有させることが行われている。(例えば特許文献2参照)また、特許文献3には、環状炭酸エステルと同様に、高沸点であり高い誘電率を有するγ−ブチロラクトンを含有した電解液を用いた非水電解液二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/019713号パンフレット
【特許文献2】特開2001−167797号公報
【特許文献3】特開2000−235868号公報
【特許文献4】特開平10−214640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、充電電圧を4.25V以上に設定した電池では、正極表面近傍における酸化雰囲気が強まる結果、従来の電解液を使用した場合、特に高温環境において、ガス発生によるセルの変形が起こるという問題があった。また、この問題は充電電圧が高くなるほど、反応が促進されるため顕著となり、上述した環状炭酸エステルやγ−ブチロラクトンを用いた従来の電解液による抑制のみでは十分でない。
【0011】
また、変形が大きいと、内部でショートしやすくなり、電池として機能しなくなる。特許文献4に開示されているように、電極表面にセラミックスを塗布することでショートまでの強度が高くなるが、電極への電解液の含浸性が低下し、特性低下を引き起こす。
【0012】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、充電電圧を4.25V以上に設定しても、高温環境下での使用に伴うガス発生を抑制できると共に、サイクル特性を改善できる非水電解質二次電池および非水電解質、並びにこれらを用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本技術は、正極と、負極と、非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含む非水電解質とを備え、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内に設定されており、非水溶媒は、環状アルキレンカーボネートと、式(1)で表されるジニトリル化合物とを含み、環状アルキレンカーボネートの含有量は、非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質二次電池である。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
【0014】
本技術は、非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含み、非水溶媒は、環状アルキレンカーボネートと、式(1)で表されるジニトリル化合物とを含み、環状アルキレンカーボネートの含有量は、非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質である。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
【0015】
本技術では、非水電解液が、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上と、式(1)で表されるジニトリル化合物とを含有することにより、高温環境下での使用に伴うガス発生を抑制すると共に、サイクル特性を改善することができる。
【0016】
さらに、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質二次電池を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、高温環境下での使用に伴うガス発生を抑制することができると共に、サイクル特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本技術の実施の形態による非水電解質電池の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図1における巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【図3】本技術の実施の形態による電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図4】本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図5】本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電解質)
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
4.第4の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
5.第5の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例)
6.第6の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
7.他の実施の形態(変形例)
【0020】
1.第1の実施の形態
(電解質)
本技術の第1の実施の形態による電解質について説明する。本技術の第1の実施の形態による電解質は、イオン伝導性の非水溶媒を含む非水電解質であり、例えば、液状の電解質である非水電解液である。この非水電解液は、非水溶媒および電解質塩を含有する。非水溶媒は、ニトリル化合物と、環状アルキレンエステルとを含有する。本技術の第1の実施の形態による電解質は、例えば、非水電解質電池などの電気化学デバイスに使用される。
【0021】
(ニトリル化合物)
非水電解液は、非水溶媒として、式(1)で表されるジニトリル化合物のような、ニトリル基を2つ有する炭化水素化合物を含有する。非水電解液が式(1)で表されるジニトリル化合物を含有する場合、式(1)で表されるジニトリル化合物を1種で含有していても、2種以上で含有していてもよい。
【0022】
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
【0023】
なお、本技術に関わる、ニトリル基を有する炭化水素化合物として、例えば、特開平07−176322号公報には、シアノ基を2個以上有する有機化合物の添加により4.2Vを超える電圧での充電時に電解液の分解を抑制する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、低沸点溶媒である鎖状炭酸エステルを用いており、高温環境下での問題を改善できないので好ましくない。
【0024】
また、例えば、特開2004−179146号公報には、非水電解液中に、ニトリル化合物とS=O基含有化合物とを含有させる技術が開示されている。これにより、電池缶等の金属表面に腐食を抑制する保護被膜が形成され、腐食防止効果により、充電状態での保存特性を改善することが提案されている。しかしながら、この技術では、高電圧状態における言及はない。
【0025】
また、例えば、特開平2010−165653号公報には、非水電解液中に、両末端にニトリル基が結合した鎖式飽和炭化水素ジニトリル化合物と、環状カーボネート、環状エステルおよび鎖状カーボネートのうち少なくとも一つとを含有させる技術が開示されている。しかしながら、この技術では、本技術のように高温環境下での特性改善を目的とした、環状炭酸エステルの組成は特定されていない。
【0026】
式(1)で表されるジニトリル化合物は、炭化水素基の炭素数が大きくなるにつれて、ニトリル化合物自身の沸点が高くなり、ガス発生抑制などにおいて有利となる。一方、式(1)で表されるジニトリル化合物中の炭化水素基の炭素数が大きくなると、ニトリル基の濃度が相対的に低下するため、電解質の導電率を保てなくなる。したがって、式(1)におけるnは、2以上6以下であることが好ましい。
【0027】
式(1)で表されるジニトリル化合物としては、より具体的には、例えば、式(1)中のnが1であるマロノニトリル、式(1)中のnが2であるスクシノニトリル、式(1)中のnが3であるグルタロニトリル、式(1)中のnが4であるアジポニトリル、式(1)中のnが5であるピメロニトリル、式(1)中のnが6であるスベロニトリル、式(1)中のnが7であるアゼラニトリル、式(1)中のnが8であるセバコニトリル(n=8)、式(1)中のnが9であるウンデカンジニトリル、式(1)中のnが10であるドデカンジニトリル等のジニトリル化合物が挙げられる。これらの中でも、スクシノニトリル、アジポニトリル、スベロニトリル、セバコニトリルなどのジニトリル化合物が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。これらのジニトリル化合物は、1種で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。なお、式(1)で表されるジニトリル化合物は、具体的に例示した上記ジニトリル化合物に限定されるものではない。
【0028】
(ニトリル化合物の含有量)
式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量は、非水電解液の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。非水電解液中において、式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量が過度に少ないと、正負極上の活性点に対して効果が十分でなく、副反応すなわちガス発生を抑制することができない。また、ニトリル化合物の含有量が過度に多いと、非水電解液の抵抗が大きくなりすぎるために、放電容量やサイクル特性を劣化させる傾向にある。
【0029】
式(1)で表されるジニトリル化合物は、正負極上の活性点と同様に、電解質中の支持塩に対しても配位してイオンの解離を促進させる結果、導電率が向上する。したがって用いる電解質塩のモル濃度に比例して、サイクル特性を妨げない範囲で増量することが好ましい。ただし、活物質や電解質塩に配位できるニトリル化合物のモル濃度を超えて増量することは、サイクル特性などの電池特性を低下させるため好ましくない。
【0030】
(環状アルキレンカーボネート)
非水電解液は、式(1)で表されるジニトリル化合物と共に、非水溶媒の主溶媒として、比誘電率が30以上の高誘電率溶媒を含有する。これによりリチウムイオンの数を増加させることができるからである。このような高誘電率溶媒としては、例えば、環状アルキレンカーボネートが挙げられる。
【0031】
環状アルキレンカーボネートは、炭素−炭素多重結合を有さず、且つハロゲンを含有しない環状炭酸エステルであり、その具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、tert−ブチルエチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、安定性と粘度の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを主溶媒として用いることが好ましい。非水溶媒として、環状アルキレンカーボネートを使用する場合、1種を単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0032】
(環状アルキレンカーボネートの含有量)
非水電解液に含まれる環状アルキレンカーボネートの含有量は、非水電解液の全質量に対して、80質量%以上であり、80質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、電池の膨張を抑制し、かつ良好なサイクル特性とすることができる。
【0033】
環状アルキレンカーボネートとして、エチレンカーボネートを含む場合には、環状アルキレンカーボネートの全質量に対する、エチレンカーボネートの質量の割合は、20%以上60%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましく、30%以上40%以下であることが特に好ましい。エチレンカーボネートの含有量が、60%を超える場合には高温保存特性が悪化する傾向があり、また、20%未満である場合にはサイクル特性を含む電池容量が劣化する傾向にある。
【0034】
環状アルキレンカーボネートとして、エチレンカーボネート以外の他の環状アルキレンカーボネートを含有する場合には、環状アルキレンカーボネートの全質量に対する、他の環状アルキレンカーボネートの質量の割合は、40%以上80%以下であることが好ましい。他の環状アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネートなどを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0035】
(他の高誘電率溶媒)
非水電解液は、非水溶媒として、例示した上記高誘電率溶媒以外の他の高誘電率溶媒を含んでもよい。他の高誘電率溶媒としては、例えば、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどの炭素−炭素多重結合を有する環状炭酸エステル、クロロエチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート)、trans−4,5−ジフルオロ−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(ジフルオロエチレンカーボネート)、トリフルオロメチルエチレンカーボネートなどのハロゲン化環状炭酸エステル、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどのラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム、N−メチル−2−オキサゾリジノンなどの環式カルバミン酸エステル、並びにテトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、炭素−炭素多重結合を有する環状炭酸エステルを用いることが好ましく、特にビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどが好ましい。非水電解液中における炭素−炭素多重結合を有する環状炭酸エステルの含有量は、非水電解液の全質量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。また、ハロゲン化環状炭酸エステルを用いることが好ましく、特にフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネートなどが好ましい。非水電解液中におけるハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、非水電解液の全質量に対して、0.5質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。また、ラクトンを用いることが好ましく、特に、γ−ブチロラクトンを用いることが好ましい。非水電解液中におけるラクトンの含有量は、非水電解液の全質量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。上記他の高誘電率溶媒は、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0037】
(低粘度溶媒)
非水電解液は、非水溶媒として、粘度が1mPa・s以下の低粘度溶媒を含有していてもよい。低粘度溶媒は、高誘電率溶媒と混合して用いることが好ましい。これにより高いイオン伝導性を得ることができるからである。高誘電率溶媒に対する低粘度溶媒の比率(質量比)は、高誘電率溶媒:低粘度溶媒=85:15〜100:0の範囲内とすることが好ましい。この範囲内とすることで高温保存特性を維持しながら、放電容量などに、より高い効果が得られるからである。
【0038】
低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびメチルプロピルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどの鎖状カルボン酸エステル、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミド、N,N−ジエチルカルバミン酸メチルおよびN,N−ジエチルカルバミン酸エチルなどの鎖状カルバミン酸エステル、ならびに1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,3−ジオキソランなどのエーテルが挙げられる。これらの低粘度溶媒は1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0039】
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。電解質の抵抗が低下するからである。
【0040】
本技術の第1の実施の形態による電解質は、非水電解液により膨潤して非水電解液を保持する保持体となる高分子化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、非水電解液は、高分子化合物に保持され、非水電解液と高分子化合物とが一体となってゲル状の電解質を形成している。そして、非水電解液により膨潤する高分子化合物を含むことにより高いイオン伝導率を得ることができ、優れた充放電効率が得られると共に、電池の漏液を防止することができる。
【0041】
非水電解液に高分子化合物を添加して用いる場合、非水電解液と高分子化合物とをあわせた量に対する高分子化合物の含有量は、使用する高分子化合物の分子量等にもよるが、0.1質量%以上10質量%以下の範囲内とすることが好ましい。使用量が多すぎると、粘度が高くなりすぎて工程上困難を生じるとともに、非水電解液の割合が低下してイオン伝導度が低下しレート特性などの電池特性が低下する傾向にあり、逆に少なすぎると非水電解液の保持性が低下して液漏れの問題が生じることがある。上記範囲であれば、より高い充放電効率が得られる。また、後述する、セパレータの両面に高分子化合物を塗布して用いる場合は、非水電解液と高分子化合物の質量比を50:1〜10:1の範囲内とすることが好ましい。この範囲内とすることにより、より高い充放電効率が得られるからである。
【0042】
非水電解液を保持する高分子化合物としては、アルキレンオキシドユニットを有するアルキレンオキシド系高分子、ポリフッ化ビニリデンやその共重合体のようなフッ素系高分子等を用いることが好ましい。ポリフッ化ビニリデンの共重合体は、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体であり、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとの共重合体等が挙げられる。
【0043】
ゲル状の電解質を形成する方法としては、前記非水電解液をポリアルキレンオキシドのイソシアネ−ト架橋体等の高分子に浸すことによって得ることができるが、(1)重合性ゲル化剤を含有する非水電解液に紫外線硬化や熱硬化などの重合処理を施す方法や、(2)高分子化合物を非水電解液中に高温溶解したものを常温まで冷却することでゲル状の電解質を形成する方法のような、ゲル状電解質前駆体をゲル化処理する方法が好ましく用いられる。
【0044】
重合性ゲル化剤を含有する非水電解液を用いる(1)の方法の場合、重合性ゲル化剤としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を有するものがあげられる。具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートなどが使用でき、さらにトリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシレートトリアクリレートなどの3官能モノマー、ペンタエリスリトールアルコキシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンアルコキシレートテトラアクリレートなどの4官能以上のモノマーなども使用できる。中でも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するオキシアルキレングリコール系化合物が好ましい。
【0045】
一方、高分子化合物を非水電解液中に高温溶解したものを常温まで冷却することでゲル状の電解質を形成する(2)の方法の場合、このような高分子化合物としては、非水電解液に対してゲルを形成し電池材料として安定なものであればどのようなものであっても使用できるが、例えばポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドンなどの環を有するポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ポリマーなどが挙げられる。また上記の高分子化合物などの混合物、変性体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの高分子化合物の重量平均分子量は10000以上5000000以下の範囲であることが好ましい。分子量が低いとゲルを形成しにくくなり、分子量が高いと粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなるからである。なお、ゲル状の電解質として、上記高分子化合物と電解質塩によって形成した完全固体型の電解質を使用することも可能である。
【0046】
ゲル状の電解質は、セラミックス粉を含むことが好ましい。例えば、ゲル状の電解質を正極および負極の間に配置した電池では、ゲル状の電解質の機械的強度が向上し、両極の接触による電流の短絡が起きにくくなるからである。セラミックス粉としては、Al23、ZrO、TiO2、MgO2からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0047】
セラミックス粉の平均粒径は0.1μm以上2.5μm以下が好ましく、またセラミックス粉と高分子化合物の質量比は、セラミックス粉/高分子化合物=1/1以上5/1以下であることが好ましい。電池特性の低下を抑えて、目的とする強度が得られるからである。
【0048】
2.第2の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図1は、本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池の分解斜視構成を表しており、図2は、図1に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面を拡大して示している。この非水電解質電池は、例えば、充電および放電可能な非水電解質二次電池である。
【0049】
この非水電解質電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネート型と呼ばれている。
【0050】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレス等の金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0051】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着または接着剤によって互いに接着された構造を有している。
【0052】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0053】
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムまたは金属フィルムによって構成されていてもよい。
【0054】
図2は、図1に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解質36を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。
【0055】
なお、本技術の第2の実施の形態による非水電解質二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっていてもよい。
【0056】
また、本技術の第2の実施の形態による非水電解質二次電池では、一対の正極33および負極34当たり完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、4.20V以下でもよいが、4.20Vよりも高く、好ましくは4.25V以上4.50V以下の範囲内になるように設計されていてもよい。電池電圧を4.20Vより高くすることにより、完全充電時における開回路電圧が4.20Vの電池よりも、同じ正極活物質であっても、単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0057】
(正極)
正極33は、例えば、一対の面を有する正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層33Bは、正極集電体33Aの片面だけに設けられていてもよい。正極集電体33Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔または、ステンレス(SUS)箔等の金属箔を用いることができる。
【0058】
正極活物質層33Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤等の他の材料を含んでいてもよい。
【0059】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。高電圧を発生可能であると共に、高エネルギー密度を得ることができるからである。このリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、一般式LixMO2で表されるものが挙げられる。Mは1種類以上の遷移金属元素を含み、例えばコバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2またはLiNiO2などが挙げられる。
【0060】
さらに、リチウム遷移金属複合化合物としては、例えば、スピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、より具体的には、LidMn24(d≒1)などを挙げることができる。
【0061】
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、オリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩、より具体的には、LieFePO4(e≒1)などを挙げることができる。
【0062】
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、式(A)、式(B)または式(C)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(D)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(E)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。
【0063】
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k ・・・(A)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0064】
LimNi(1-n)M2n(2-p)q ・・・(B)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0065】
LirCo(1-s)M3s(2-t)u ・・・(C)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0066】
LivMn2-wM4wxy ・・・(D)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0067】
LizM5PO4 ・・・(E)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0068】
上記正極材料は、リチウムと、コバルト、ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種とを含む、リチウム複合酸化物を含有する芯粒子を中心部として、この中心部の表面の少なくとも一部に、リンと、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種とを含む化合物を含有する表面層が設けられていることが好ましい。すなわち、この正極材料は、リチウム複合酸化物を含有し、表面に、被覆元素として、リンと、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種とを含んでいる。これにより、この正極材料は、高いエネルギー密度を得ることができると共に、化学的安定性またはリチウムイオンの入出力における反応性を向上させることができるようになっている。
【0069】
表面層は、上述した被覆元素に加えて他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、リチウム、酸素(O)、またはリチウム複合酸化物を構成する元素などが挙げられる。表面層を構成する化合物は、1種でもよいが、2種以上を含んでいてもよい。被覆元素としてより好ましいのは、リンと、マンガン、マグネシウムおよびアルミニウムのうちの少なくとも1種である。より高い特性を得ることができるからである。被覆元素としてアルミニウムを含む場合には、表面におけるアルミニウムに対するリンの原子比(P/Al)は、0.3以上であることが好ましく、0.35以上12.7以下であればより好ましい。原子比が小さいと十分な効果を得ることができず、原子比が大きくなると改善効果が飽和するからである。
【0070】
また、被覆元素の含有量は内部よりも表面の方が高く、被覆元素が表面から内部に向かって減少していくように存在していることが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。表面層の量は、中心部に含まれるリチウム複合酸化物の質量に対して、0.2質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。量が少ないと十分な効果を得ることができず、多すぎると容量が低下してしまうからである。さらに、表面層における被覆元素の好適な被覆量は、その被覆元素種によって異なり、被覆元素に例えばリンとマンガンとを含む場合には、リチウム複合酸化物に対して0.2mol%以上6.0mol%以下であることが好ましく、リンとマグネシウムとを含む場合には0.2mol%以上4.0mol%以下であることが好ましい。あるいは、被覆元素としてリンとアルミニウムとを含む場合には、リンとアルミニウムとを含む被覆元素が、リチウム複合酸化物に対して合計で0.2mol%以上6.0mol%以下であることが好ましい。いずれも、量が少ないと十分な効果を得ることができず、多すぎると容量が低下してしまうからである。
【0071】
その他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガン等の酸化物や、二硫化チタンまたは硫化モリブデン等の二硫化物や、セレン化ニオブ等のカルコゲン化物や、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェン等の導電性高分子も挙げられる。もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0072】
(結着剤)
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエン等の合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース等が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0073】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されていてもよい。
【0074】
(負極)
負極34は、一対の面を有する負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層34Bは、負極集電体34Aの片面だけに設けられていてもよい。負極集電体34Aとしては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔を用いることができる。
【0075】
負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤等の他の材料を含んでいてもよい。この際、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量は正極33の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。なお、結着剤および導電剤に関する詳細は、正極33と同様である。
【0076】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンまたはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。さらに、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0077】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0078】
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0079】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0080】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0081】
スズ(Sn)の化合物またはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0082】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、さらに、他の金属化合物または高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、またはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどが挙げられる。
【0083】
(電解質)
電解質36は、非水溶媒および電解質塩を含む非水電解液と、非水電解液を保持する高分子化合物とを含むゲル状の電解質である。非水電解液、高分子化合物の詳細については、第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0084】
(セパレータ)
セパレータ35は、正極33と負極34とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。例えば、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜により構成されている。セパレータは、2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。また、セパレータとして、ポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜上にポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0085】
なお、多孔性ポリオレフィンフィルムとゲル状の電解質を併用した形のセパレータ35に非水電解液を含浸させてもよい。すなわち、非水電解液を保持するための高分子化合物を表面に被着させたセパレータ35を用いることができる。このようなセパレータ35を用いることにより、後に電池作製工程においてセパレータ35に非水電解液を含浸させた際に、セパレータ35表面に電解質36が形成される。このとき、非水電解液は、第1の実施の形態で説明した構成を有する。また、本技術では、セパレータ35を用いず、第1の実施の形態で説明したゲル状の電解質を正極33および負極34を隔離する層として用いてもよい。
【0086】
(非水電解質電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の3種類の製造方法(第1〜第3の製造方法)によって製造される。
【0087】
(第1の製造方法)
第1の製造方法では、まず、以下のように正極33および負極34を製造する。
【0088】
正極材料と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散して混合液を調製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体33Aに塗布し乾燥させたのち、ロールプレス機等により圧縮成型して正極活物質層33Bを形成し、正極33を得る。
【0089】
負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体34Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機等により圧縮成型して負極活物質層34Bを形成し、負極34を得る。
【0090】
次に、まず、第1の実施の形態で説明した非水電解液と、溶剤とを含む前駆溶液を調製する。この後、正極33および負極34のそれぞれの表面にこの前駆溶液を塗布した後、溶剤を揮発させて、電解質36となるゲル状の電解質を形成する。続いて、正極集電体33Aおよび負極集電体34Aにそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。ここで、正極リード31および負極リード32は、電解質36の形成前に正極集電体33および負極集電体34に取り付けておくようにしてもよい。
【0091】
続いて、電解質36が設けられた正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を形成する。最後に、例えば2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだ後、その外装部材40の外縁部同士を熱融着等で接着させて減圧下で封止し、巻回電極体30を封入する。このとき、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、非水電解質電池が完成する。
【0092】
(第2の製造方法)
第2の製造方法では、まず、正極集電体33Aおよび負極集電体34Aにそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。そして、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を形成する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだ後、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着等により接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回電極体30を収納する。
【0093】
続いて、第1の実施の形態で説明した非水電解液と、この非水電解液を保持する高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入する。最後に、外装部材40の開口部を熱融着等により封止し、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、電解質36となるゲル状の電解質を形成する。これにより、非水電解質電池が完成する。
【0094】
(第3の製造方法)
第3の製造方法では、まず、セパレータ35の両面に非水電解液を保持するための高分子化合物を塗布する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体または多元共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体等である。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。
【0095】
次に、正極集電体33Aおよび負極集電体34Aにそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付ける。そして、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を形成し、袋状の外装部材40の内部に収容する。この後、第1の実施の形態で説明した非水電解液を外装部材40の内部に注液し、外装部材40の開口部を熱融着等により封止する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、非水電解液が高分子化合物に含浸し、電解質36となるゲル状の電解質が形成され、これにより、非水電解質電池が完成する。
【0096】
第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、非水電解質電池の膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーや溶媒等が電解質36中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御されるため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質36との間において十分な密着性が得られる。このため、第3の製造方法を用いることがより好ましい。
【0097】
本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池では、電解質36を構成する非水電解液中に、環状アルキレンカーボネートと、式(1)で表されるジニトリル化合物とを含み、環状アルキレンカーボネートの含有量は、非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である構成とされている。この構成により、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧を4.25V以上4.50V以下の範囲に設定しても、高温保存時でのガス発生を抑制し、電池膨れ等の変形を抑制すると共に、サイクル特性を改善することができる。
【0098】
3.第3の実施の形態
本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池について説明する。本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池は、第2の実施の形態の電解質36に、セラミックス粉を添加した構成とした点以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、以下では、第2の実施の形態と異なる点を中心にその構成を詳細に説明する。
【0099】
(電解質)
本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池では、電解質36に、セラミックス粉が含有されている。すなわち、電解質36は、非水溶媒および電解質塩を含む非水電解液と、非水電解液を保持する高分子化合物とを含むゲル状の電解質であり、このゲル状の電解質にセラミックス粉が含有されている。
【0100】
電解質36にセラミックス粉を含有させることにより、電解質36の機械的強度が向上し、正極33および負極34の接触により電流の短絡が起きにくくなる。
【0101】
一方、電解質36にセラミックス粉を含有させると、電解質36の導電率が低下する傾向にある。これに対して、電解質36には、式(1)で表されるジニトリル化合物が含まれるため、式(1)で表されるジニトリル化合物が、正負極上の活性点と同様に、電解質中の支持塩に対しても配位してイオンの解離を促進させ、電解質36の導電率を向上させることができる。すなわち、電解質36中に含まれる式(1)で表されるジニトリル化合物によって、セラミックス粉を電解質36に含有させることによって導電率が低下した分を補うことができる。
【0102】
非水電解液中の式(1)で表されるジニトリル化合物は、用いる電解質塩のモル濃度に比例して、サイクル特性を妨げない範囲で、増量することがより好ましい。ただし、活物質や電解質塩に配位できるニトリル化合物のモル濃度を超えて増量することは、サイクルなどの電池特性を低下させるため好ましくない。以上の観点から、非水電解液中の式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量は、非水電解液の全質量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0103】
ジニトリル化合物がサイクル特性などの電池特性を妨げない範囲として、非水電解液中の電解質塩の含有量に対する式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量の質量百分率([ジニトリル化合物の質量/電解質塩の質量]×100[%])は、6.0%以上36%以下であることが好ましく、8.0%以上30%以下であることがより好ましく、8.0%以上25%以下であることが特に好ましい。この範囲で、サイクル特性などの電池特性を妨げることなく、高温保存時のガス発生を効果的に抑制することができる。
【0104】
本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池は、第2の実施の形態と同様の効果を有する。
【0105】
4.第4の実施の形態
本技術の第4の実施の形態による非水電解質電池について説明する。本技術の第4の実施の形態による非水電解質電池は、第1の実施の形態の非水電解液を高分子化合物に保持させたもの(電解質36)に代えて、第1の実施の形態の非水電解液をそのまま用いた点以外は、第2の実施の形態による非水電解質電池と同様である。したがって、以下では、第2の実施の形態と異なる点を中心にその構成を詳細に説明する。
【0106】
(非水電解質電池の構成)
本技術の第4の実施の形態による非水電解質電池では、ゲル状の電解質36の代わりに、非水電解液を用いている。したがって、巻回電極体30は、電解質36が省略された構成を有し、非水電解液がセパレータ35に含浸されている。
【0107】
(非水電解質電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下のように製造する。
【0108】
まず、例えば正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを両面に塗布し、乾燥させ圧縮成型して正極活物質層33Bを形成し正極33を作製する。次に、例えば正極集電体33Aに正極リード31を、例えば超音波溶接、スポット溶接などにより接合する。
【0109】
また、例えば負極材料と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体34Aの両面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製する。次に、例えば負極集電体34Aに負極リード32を例えば超音波溶接、スポット溶接などにより接合する。
【0110】
続いて、正極33と負極34とをセパレータ35を介して巻回して外装部材40の内部に挟み込んだのち、外装部材40の内部に、第1の実施の形態による非水電解液を注入し、外装部材40を密閉する。これにより、図1および図2に示す非水電解質電池が得られる。
【0111】
本技術の第4の実施の形態による非水電解質電池は、第2の実施の形態と同様の効果を有する。
【0112】
5.第5の実施の形態
(電池パックの例)
図3は、本技術の非水電解質二次電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0113】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0114】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この二次電池301aは本技術の二次電池である。なお、図3では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0115】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けても良い。
【0116】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0117】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0118】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、301組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0119】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0120】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0121】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0122】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303bをOFF状態とする。
【0123】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0124】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0125】
6.第6の実施の形態
上述した本技術の非水電解質電池およびこれを用いた電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0126】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0127】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源又は補助用電源として用いられる。
【0128】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0129】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0130】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0131】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0132】
(6−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図4を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0133】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0134】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0135】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0136】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0137】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0138】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0139】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0140】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0141】
(6−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図5を参照して説明する。図5に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0142】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0143】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0144】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0145】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0146】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0147】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0148】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0149】
本技術の具体的な実施例について詳細に説明するが、本技術はこれに限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で使用したジニトリル化合物は以下のとおりである。
化A:マロノニトリル
化B:スクシノニトリル
化C:グルタロニトリル
化D:アジポニトリル
化E:スベロニトリル
化F:セバコニトリル
化G:ドデカンジニトリル
【0150】
<実施例1−1>
以下の手順により、負極活物質として、炭素材料であるMCMB(メソカーボンマイクロビーズ)系黒鉛を用いて、図1および図2に示したラミネート型の二次電池を作製した。
【0151】
まず、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)94質量部と、導電剤としてグラファイト3質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを均質に混合してN−メチルピロリドンを添加し、正極合剤スラリーを得た。
【0152】
次に、得られた正極合剤スラリーを、正極集電体となる厚み10μmのアルミニウム箔上の両面に均一に塗布し、乾燥して片面当たり16mg/cm2の正極合剤層を形成した。これを幅50mm、長さ300mmの形状に切断して正極を作成した。
【0153】
また、負極活物質としてMCMB(メソカーボンマイクロビーズ)系黒鉛97質量部と、結着剤としてPVdF3質量部とを均質に混合してN−メチルピロリドンを添加し負極合剤スラリー得た。
【0154】
次に、得られた負極合剤スラリーを、負極集電体となる厚み10μmの銅箔上の両面に均一に塗布し、乾燥して片面当たり10mg/cm2の負極合剤層を形成した。これを幅50mm、長さ300mmの形状に切断して負極を作成した。
【0155】
電解液組成(EC/PC/VC/化A/電解質塩=45.275質量%/45.275質量%/1質量%/0.05質量%/8.4質量%)の電解液を、以下のように調製した。まず、エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)=1/1(質量比)で混合した主溶媒に六フッ化リン酸リチウムを0.6mol/kg(8.4質量%)溶解し、更にビニレンカーボネート(VC)を1質量%、化Aを0.05質量%になるように混合し、これにより電解液を得た。
【0156】
正極と負極とを、厚さ9μmの微多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介して巻回した後、アルミニウムラミネートフィルムからなる袋状の外装部材に入れたのち、電解液を2g注液し、その後、袋を熱融着して実施例1−1のラミネート型電池を作製した。
【0157】
<実施例1−2〜実施例1−8>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0158】
<実施例1−9〜実施例1−13>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0159】
<実施例1−14〜実施例1−15>
ビニレンカーボネート(VC)の代わりに、フルオロエチレンカーボネート(FEC)またはジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を用いた電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0160】
<実施例1−16〜実施例1−19>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0161】
<実施例1−20〜実施例1−21>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0162】
<実施例1−22〜実施例1−23>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0163】
<比較例1−1>
ニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0164】
<比較例1−2>
ビニレンカーボネート(VC)およびニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0165】
<比較例1−3>
化Aを増量し、その分、主溶媒のエチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0166】
<比較例1−4>
鎖状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)を添加し、その分、エチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにした点以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0167】
<実施例1−24〜実施例1−28、比較例1−5〜比較例1−8>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにし、充電の上限電圧を4.30Vを設定した点以外、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0168】
<実施例1−29〜実施例1−33、比較例1−9〜比較例1−12>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表1に示すようにし、充電の上限電圧を4.35Vを設定した点以外、実施例1−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0169】
(評価)
実施例1−1〜実施例1−33および比較例1−1〜比較例1−12の各ラミネート型電池について、以下の評価を行った。
【0170】
(初期容量および高温サイクル試験)
最初に、各電池を23℃の雰囲気中において0.2Cの電流で2サイクル充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、23℃の雰囲気中において300サイクルの充放電を繰り返し、2サイクル目の放電容量に対する300サイクルにおける放電容量維持率(サイクル維持率)を、(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)として求めた。充放電条件としては、0.2Cの電流で表1に記載の上限電圧まで定電流定電圧充電し、さらに上限電圧での定電圧で電流値が0.05Cに達するまで充電したのち、0.2Cの電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電した。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。
【0171】
(高温保存時の膨れの測定)
初回容量測定後の各電池を、23℃の雰囲気中において表1に記載の電圧を上限として3時間充電した後、充電状態において90℃の恒温槽中に4時間保存し、保存後の電池厚さと保存前の電池厚さとの差から、高温保存時のセル厚の増加率(高温保存時セル厚変化)を求めた。
【0172】
評価結果を表1に示す。
【0173】
【表1】

【0174】
表1から以下のことがわかる。実施例1−1〜実施例1−23では、電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有し、化Aのような式(1)で表されるジニトリル化合物を含有するため、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができた。
【0175】
一方、比較例1−1では、電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有するが、化Aのような式(1)で表されるジニトリル化合物を含有していないため、実施例1−1〜実施例1−8に比べると、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができなかった。特に、比較例1−1では、実施例1−1〜実施例1−8に比べて、高温保存時の膨れ特性が悪化した。同様に、比較例1−2では、電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有するが、式(1)で表されるジニトリル化合物を含有していないため、実施例1−9〜実施例1−13に比べると、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができなかった。特に、比較例1−2では、実施例1−9〜実施例1−13に比べて、高温保存時の膨れ特性が悪化した。
【0176】
比較例1−3では、電解液中に、式(1)で表されるジニトリル化合物を含有するが、環状アルキレンカーボネートの含有量が80質量%未満であるため、実施例1−1〜実施例1−8に比べると、高温保存時の膨れ特性および高温保存時のサイクル特性の両方を良好な特性とすることができなかった。特に、比較例1−3では、実施例1−1〜実施例1−8に比べて、サイクル特性が悪化した。
【0177】
また、実施例1−1〜実施例1−8によれば、電解液中の式(1)で表される化合物の含有量が3質量%以下の場合に、サイクル特性がより良好であった。実施例1−14〜実施例1−15によれば、電解液中に、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)を含有するため、さらに高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を向上させることができた。実施例1−16〜実施例1−19によれば、電解液中の環状アルキレンカーボネートの合計質量に対するECの質量の割合が大きくなるに伴い、サイクル特性が向上し、環状アルキレンカーボネートの合計質量に対するECの質量の割合が小さくなるに伴い、高温保存時の膨れ特性が向上した。実施例1−20〜実施例1−21によれば、電解液中に、鎖状のアルキレンカーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)を含むことにより、高温保存時の膨れ特性を維持したまま、サイクル特性をより改善することができた。
【0178】
実施例1−24〜実施例1−28では、電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有し、式(1)で表されるジニトリル化合物を含有するため、充電電圧を4.30Vに設定した場合において、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができた。実施例1−29〜実施例1−33では、電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有し、式(1)で表されるジニトリル化合物を含有するため、充電電圧を4.35Vに設定した場合において、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができた。
【0179】
充電電圧を4.25Vに設定した場合に比べ、充電電圧を4.30V、4.35Vに設定した場合の方が、本技術の電解液を用いた効果の度合いが大きかった。したがって、本技術の電解液組成は、電池の上限電圧を4.2Vを超えて高くなるほど効果的であり、高温保存時の膨れ特性を大幅に改善できることが確認できた。
【0180】
<実施例2−1>
実施例1−29と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0181】
<実施例2−2〜実施例2−6>
電解液の調整の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表2に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0182】
<実施例2−7〜実施例2−12>
電解液の調製の際、化Aを化Bに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0183】
<実施例2−13〜実施例2−18>
電解液の調製の際、化Aを化Cに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0184】
<実施例2−19〜実施例2−24>
電解液の調製の際、化Aを化Dに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0185】
<実施例2−25〜実施例2−30>
電解液の調製の際、化Aを化Eに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0186】
<実施例2−31〜実施例2−36>
電解液の調製の際、化Aを化Fに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0187】
<実施例2−37〜実施例2−42>
電解液の調製の際、化Aを化Gに変えた点以外は、実施例2−1〜実施例2−6と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0188】
(評価)
実施例2−1〜実施例2−42のラミネート型電池について、実施例1−29と同様にして、初期容量および高温サイクル試験、高温保存時の膨れの測定を行った。評価結果を表2に示す。
【0189】
【表2】

【0190】
表2から以下のことがわかる。電解液中に、環状アルキレンカーボネートを80質量%以上含有し、化A以外にも、化B〜化Gのような式(1)で表されるジニトリル化合物を含有することによって、高温保存時の膨れ特性およびサイクル特性の両方を良好な特性とすることができた。
【0191】
<実施例3−1>
ポリエチレンフィルムからなるセパレータの厚さを7μmとし、その両面に、電解液を保持するための高分子材料であるポリフッ化ビニリデンを2μmずつ塗布したものをセパレータとして使用した以外は実施例2−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0192】
<実施例3−2〜実施例3−7>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表3に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0193】
<実施例3−8〜実施例3−14>
電解液の調製の際、化Aを化Bに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0194】
<実施例3−15〜実施例3−20>
電解液の調製の際、化Aを化Cに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0195】
<実施例3−21〜実施例3−27>
電解液の調製の際、化Aを化Dに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0196】
<実施例3−28〜実施例3−33>
電解液の調製の際、化Aを化Eに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0197】
<実施例3−34〜実施例3−39>
電解液の調製の際、化Aを化Fに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0198】
<実施例3−40〜実施例3−45>
電解液の調製の際、化Aを化Gに変えた点以外は、実施例3−1〜実施例3−7と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0199】
<比較例3−1>
ニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表3に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0200】
<比較例3−2>
ビニレンカーボネート(VC)およびニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表3に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0201】
<比較例3−3>
電解化Aを増量し、その分、主溶媒のエチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表3に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0202】
<比較例3−4>
鎖状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)を添加し、その分、エチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表3に示すようにした点以外は、実施例3−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0203】
(評価)
実施例3−1〜実施例3−45および比較例3−1〜比較例3−4の各ラミネート型電池について、以下の評価を行った。
【0204】
(初期容量および高温サイクル試験)
最初に、各電池を23℃の雰囲気中において0.2Cの電流で2サイクル充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、23℃の雰囲気中において300サイクルの充放電を繰り返し、2サイクル目の放電容量に対する300サイクルにおける放電容量維持率(サイクル維持率)を、(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)として求めた。充放電条件としては、0.2Cの電流で表3に記載の上限電圧まで定電流定電圧充電し、さらに上限電圧での定電圧で電流値が0.05Cに達するまで充電したのち、0.2Cの電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電した。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。
【0205】
(高温保存時の膨れの測定)
初回容量測定後の各電池を、23℃の雰囲気中において表3に記載の電圧を上限として3時間充電した後、充電状態において90℃の恒温槽中に4時間保存し、保存後の電池厚さと保存前の電池厚さとの差から、高温保存時のセル厚の増加率(高温保存時セル厚変化)を求めた。
【0206】
(放電負荷特性の測定)
初回容量測定後の各電池について、1Cの電流で表3に記載の電圧を上限として3時間充電した後、0.2Cの電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電したときの放電容量(0.2C放電容量)を測定した。次に、同様の条件で充電した後、3Cの電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電したときの放電容量(3C放電容量)を測定し、負荷特性を、(3C放電容量/0.2C放電容量)×100(%)として求めた。この「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値であり、「3C」とは、理論容量を20分で放電しきる電流値である。
【0207】
(ゲル状電解質の導電率測定)
表3に記載した組成の電解液90質量部に、ポリフッ化ビニリデン10質量部を溶解してゲル状の電解質を作製し、このゲル状の電解質の23℃における導電率を測定した。
【0208】
評価結果を表3に示す。
【0209】
【表3】

【0210】
表3から以下のことがわかる。セパレータに電解液を保持するための高分子材料であるポリフッ化ビニリデンを塗布したラミネート型電池では、実施例2−1〜実施例2−42のように、ポリエチレンのみのセパレータを用いたラミネート型電池に比べて、膨れ特性およびサイクル特性が向上した。これは、正極/セパレータ/負極間が、接着されていることで保存中にガス発生しにくくなることや、充放電を繰り返しても、電極間距離を維持できるためと考えられる。
【0211】
<実施例4−1〜実施例4−45>
ポリエチレンフィルムからなるセパレータの厚さを7μmとし、その両面に、電解液を保持するための高分子材料であるポリフッ化ビニリデンと、セラミックス粉であるAl23を同量含む混合材料を2μmずつ塗布したものをセパレータとして使用した以外は実施例3−1〜実施例3−45と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0212】
<比較例4−1>
ニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表4に示すようにした点以外は、実施例4−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0213】
<比較例4−2>
ビニレンカーボネート(VC)およびニトリル化合物を添加しない電解液組成とした。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表4に示すようにした点以外は、実施例4−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0214】
<比較例4−3>
電解化Aを増量し、その分、主溶媒のエチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表4に示すようにした点以外は、実施例4−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0215】
<比較例4−4>
鎖状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)を添加し、その分、エチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)を減量した。すなわち、電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化Aの組成を表4に示すようにした点以外は、実施例4−1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0216】
(評価)
実施例4−1〜実施例4−45および比較例4−1〜比較例4−4の各ラミネート型電池について、実施例3−1と同様にして、初期容量および高温サイクル試験、高温保存時の膨れの測定、放電負荷特性の測定を行った。また、以下のように、ゲル状電解質の導電率測定を行った。
【0217】
(ゲル状電解質の導電率測定)
表4に記載した組成の電解液90質量部に、ポリフッ化ビニリデン10質量部を溶解し、さらにセラミック粉として、Al23をポリフッ化ビニリデンと同質量部(10質量部)添加したゲル状の電解質を作製した。このゲル状の電解質の23℃における導電率を測定した。
【0218】
評価結果を表4に示す。
【0219】
【表4】

【0220】
表4から以下のことがわかる。セパレータに電解液を保持するための高分子材料であるポリフッ化ビニリデンをセラミックス粉であるAl23を加えて塗布したラミネート型電池では、実施例2−1〜実施例2−42のように、ポリエチレンのみのセパレータを用いたラミネート型電池に比べて、膨れ特性およびサイクル特性が向上した。これは、正極/セパレータ/負極間が、接着されていることで保存中にガス発生しにくくなることや、充放電を繰り返しても、電極間距離を維持できるためと考えられる。また、Al23が電極界面に存在することで、充放電中の副反応も抑制しているためと考えられる。
【0221】
また、Al23添加の影響により、電解質の導電率が低下するが(例えば、比較例4−1と比較例3−1との比較参照)、実施例4−1〜実施例4−45では、電解液中に式(1)で表されるニトリル化合物を含有させることで導電率を向上させ、Al23添加により導電率が低下した分を補うことができた。
【0222】
<実施例5−1〜実施例5−35>
電解液の調製の際、主溶媒の組成、その他の溶媒の組成および化B、化D、化Eの組成、六フッ化リン酸リチウムの濃度(塩濃度)を表5に示すようにした点以外は、実施例4−1と同様にして、各ラミネート型電池を作製した。
【0223】
(評価)
実施例5−1〜実施例5−35の各ラミネート型電池について、実施例3−1と同様にして、初期容量および高温サイクル試験、高温保存時の膨れの測定、放電負荷特性の測定を行った。また、以下のように、ゲル状電解質の導電率測定を行った。
【0224】
(ゲル状電解質の導電率測定)
表5に記載した組成の電解液90質量部に、ポリフッ化ビニリデン10質量部を溶解し、さらにセラミック粉として、Al23をポリフッ化ビニリデンと同質量部(10質量部)添加したゲル状の電解質を作製した。このゲル状の電解質の23℃における導電率を測定した。
【0225】
評価結果を表5に示す。
【0226】
【表5】

【0227】
表5に示すように、電解質塩の含有量に対するジニトリル化合物の含有量の質量百分率([ジニトリル化合物の質量/電解質塩の質量]×100[%])が、6.0%以上36%以下で、サイクル特性および負荷特性を妨げることなく、導電率を高めることができた。一方、表4の実施例4−11、実施例4−24に示すように、上記質量百分率が大きすぎると、負荷特性が低下した。
【0228】
7.他の実施の形態(変形例)
本技術は、上述した本技術の実施の形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の実施の形態および実施例では、巻回構造を有する非水電解質電池を具体例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本技術は、1または複数の正極と負極とを積層しつづら折りにした電池素子を備える場合、または1または複数の正極および負極を積層した他の積層構造を有する非水電解質電池についても同様に適用することができる。
【0229】
また、上述の実施の形態および実施例では、フィルム状の外装部材を用いる場合について説明したが、缶の外装部材を用いてもよい。その場合、形状は円筒型、角型、コイン型またはボタン型など等どのような形状であってもよい。
【0230】
さらに、上述の実施形態および実施例では、電極反応にリチウムを用いる場合を説明したが、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)等の他のアルカリ金属、またはマグネシウムまたはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、またはアルミニウム等の他の軽金属を用いる場合についても、本技術を適用することができ、同様の効果を得ることができる。また、負極活物質としてリチウム金属を用いてもよい。
【0231】
本技術は、以下の構成をとってもよい。
[1]
正極と、
負極と、
非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含む非水電解質と
を備え、
一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内に設定されており、
上記非水溶媒は、
環状アルキレンカーボネートと、
式(1)で表されるジニトリル化合物と
を含み、
上記環状アルキレンカーボネートの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質二次電池。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
[2]
上記非水電解質は、上記非水電解液を保持する高分子化合物をさらに含むゲル状の電解質である[1]に記載の非水電解質二次電池。
[3]
上記ゲル状の電解質は、セラミックス粉を含有する[2]に記載の非水電解質二次電池。
[4]
上記環状アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[5]
上記環状アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートと、該エチレンカーボネート以外の他の環状アルキレンカーボネートとを含み、
上記環状アルキレンカーボネートの全質量に対する上記エチレンカーボネートの質量の割合は、20%以上60%以下である[1]〜[4]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[6]
上記セラミックス粉は、Al23、ZrO、TiO2、MgO2からなる群より選ばれる少なくとも1種である[3]〜[5]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[7]
上記式(1)における炭化水素基の数を示す上記nは、1以上6以下である[1]〜[6]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[8]
上記環状炭酸エステルの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上95質量%以下である[1]〜[7]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[9]
上記式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である[1]〜[8]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[10]
上記式(1)で表されるジトリル化合物の含有量に対する上記電解質塩の含有量の質量百分率([ジニトリル化合物の質量/電解質塩の質量]×100[%])は、6%以上36%以下である[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[11]
上記非水溶媒は、炭素−炭素多重結合を有する環状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも何れかをさらに含有する[1]〜[10]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[12]
上記正極は、リチウムと、コバルト、ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種とを有するリチウム複合酸化物と、該リチウム複合酸化物の表面に、リン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種からなる被覆元素とを有する正極材料を正極活物質として含有する[1]〜[11]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[13]
上記正極および上記負極を含む電極体がラミネートフィルムによって外装された[1]〜[12]の何れかに記載の非水電解質二次電池。
[14]
非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含み、
上記非水溶媒は、
環状アルキレンカーボネートと、
式(1)で表されるジニトリル化合物と
を含み、
上記環状アルキレンカーボネートの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
[15]
[1]に記載の非水電解質二次電池と、
上記非水電解質二次電池について制御する制御部と、
上記非水電解質二次電池を内包する外装を有する電池パック。
[16]
[1]に記載の非水電解質二次電池を有し、
上記非水電解質二次電池から電力の供給を受ける電子機器。
[17]
[1]に記載の非水電解質二次電池と、
前記非水電解質二次電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[18]
[1]に記載の非水電解質二次電池を有し、
上記非水電解質二次電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[19]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質二次電池の充放電制御を行う[18]に記載の蓄電装置。
[20]
[1]に記載の非水電解質二次電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質二次電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0232】
30・・・巻回電極体、31・・・正極リード、32・・・負極リード、33・・・正極、33A・・・正極集電体、33B・・・正極活物質層、34・・・負極、34A・・・負極集電体、34B・・・負極活物質層、35・・・セパレータ、36・・・電解質、37・・・保護テープ、40・・・外装部材、41・・・密着フィルム、100・・・蓄電システム、101・・・住宅、102a・・・火力発電、102b・・・原子力発電、102c・・・水力発電、102・・・集中型電力系統、103・・・蓄電装置、104・・・家庭内発電装置、105・・・電力消費装置、105a・・・冷蔵庫、105b・・・空調装置、105c・・・テレビジョン受信機、105d・・・風呂、106・・・電動車両、106a・・・電気自動車、106b・・・ハイブリッドカー、106c・・・電気バイク、107・・・スマートメータ、108・・・パワーハブ、109・・・電力網、110・・・制御装置、111・・・センサ、112・・・情報網、113・・・サーバ、200・・・ハイブリッド車両、201・・・エンジン、202・・・発電機、203・・・電力駆動力変換装置、204a・・・駆動輪、204b・・・駆動輪、204a、204b・・・駆動輪、205a、車輪・・・205b、208・・・バッテリー、209・・・車両制御装置、210・・・各種センサ、211・・・充電口、301・・・組電池、301a・・・二次電池、302a・・・充電制御スイッチ、302b・・・ダイオード、303a・・・放電制御スイッチ、303b・・・ダイオード、304・・・スイッチ部、307・・・電流検出抵抗、308・・・温度検出素子、310・・・制御部、311・・・電圧検出部、313・・・電流測定部、314・・・スイッチ制御部、317・・・メモリ、318・・・温度検出部、321・・・正極端子、322・・・負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含む非水電解質と
を備え、
一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内に設定されており、
上記非水溶媒は、
環状アルキレンカーボネートと、
式(1)で表されるジニトリル化合物と
を含み、
上記環状アルキレンカーボネートの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質二次電池。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
【請求項2】
上記非水電解質は、上記非水電解液を保持する高分子化合物をさらに含むゲル状の電解質である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
上記ゲル状の電解質は、セラミックス粉を含有する請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
上記環状アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
上記環状アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートと、該エチレンカーボネート以外の他の環状アルキレンカーボネートとを含み、
上記環状アルキレンカーボネートの全質量に対する上記エチレンカーボネートの質量の割合は、20%以上60%以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
上記セラミックス粉は、Al23、ZrO、TiO2、MgO2からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
上記式(1)における炭化水素基の数を示す上記nは、1以上6以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
上記環状炭酸エステルの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上95質量%以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
上記式(1)で表されるジニトリル化合物の含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
上記式(1)で表されるジトリル化合物の含有量に対する上記電解質塩の含有量の質量百分率([ジニトリル化合物の質量/電解質塩の質量]×100[%])は、6%以上36%以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
上記非水溶媒は、炭素−炭素多重結合を有する環状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも何れかをさらに含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
上記正極は、リチウムと、コバルト、ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種とを有するリチウム複合酸化物と、該リチウム複合酸化物の表面に、リン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛からなる群のうちの少なくとも1種からなる被覆元素とを有する正極材料を正極活物質として含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
上記正極および上記負極を含む電極体がラミネートフィルムによって外装された請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項14】
非水溶媒および電解質塩を含有する非水電解液を含み、
上記非水溶媒は、
環状アルキレンカーボネートと、
式(1)で表されるジニトリル化合物と
を含み、
上記環状アルキレンカーボネートの含有量は、上記非水電解液の全質量に対して、80質量%以上である非水電解質。
式(1)
NC−(CH2n−CN
(式中、nは1以上の整数である。)
【請求項15】
請求項1に記載の非水電解質二次電池と、
上記非水電解質二次電池について制御する制御部と、
上記非水電解質二次電池を内包する外装を有する電池パック。
【請求項16】
請求項1に記載の非水電解質二次電池を有し、
上記非水電解質二次電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項17】
請求項1に記載の非水電解質二次電池と、
前記非水電解質二次電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項18】
請求項1に記載の非水電解質二次電池を有し、
上記非水電解質二次電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質二次電池の充放電制御を行う請求項18に記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1に記載の非水電解質二次電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質二次電池に電力が供給される電力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−138335(P2012−138335A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178866(P2011−178866)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】