説明

非線形センサを線形化するための装置

【課題】
【解決手段】
非線形センサからの信号を線形化するための装置が開示される。装置は、現象における線形変化に応答する指数的な曲線を有する特性を持つ信号を提供することができる非線形センサと、変換された信号を得るため非線形センサからの信号を対数的に変換するためのアナログ変換ユニットとを含む。変換ユニットは、pn接合を含み、変化ユニットは、非線形センサを流れる電流を測定し、かつ前記電流をpn接合を流れる電流に変換するように配置され、pn接合を流れる電流は、非線形センサを流れる電流と線形な関係を有し、変換された信号はpn接合の電圧である。この方法で、NTCサーミスタの抵抗値のような非線形性センサからの特性は、低コストで、低コストのADコンバータにより、高い分解能で、幅広い温度範囲でディジタル化され、大きな温度範囲で正確な温度測定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形センサを線形化するための装置または機器に関する。特に、非線形応答曲線を有するセンサの出力を、線形化された読み出し出力へ変換する装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば−40℃から200℃の非常に幅広い温度範囲でNTCサーミスタを線形化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度や圧力などの物理的なパラメータの値を表示するために、電気的に検出可能な特性を変化させることによって、そのようなパラメータに応答するトランスデューサを用いることが必要である。このような特性は、温度に感性のある抵抗変動や熱電対電圧を含む。たいていのセンサは、監視される入力現象または事象との線形関係から著しく逸脱したセンサ出力電圧もしくは電流のような顕著な非線形性の出力を表す。サーミスタや熱電対が線形の温度増加に応答して非線形の出力増加を示すことは良く知られている。
【0003】
非線形センサ出力を線形化させるためのシステムは、特許文献1によって知られている。監視された現象における線形変化に応答してセンサ出力が非線形の曲線を有するセンサを監視するプロセッサが開示されている。プロセッサは、出力信号を、監視された現象に比例する線形の出力値に変換する。非線形のセンサ信号は、ディジタル化された後に線形化される。
【0004】
さらに、多様な分野のアナログの線形化装置は、入力範囲にわたって非線形性を補正する。アナログの線形化装置は、制限された入力範囲で限られた数のセンサタイプに対し十分な正確性を与える。公知のアナログ線形化装置は、要求される補正情報を抵抗値に蓄積し、その抵抗値は、応答曲線の種々のセグメントと、応答曲線の各セグメントに特有の傾斜/オフセットとの間にブレークポイントを設定する。アナログの線形化は、典型的に、8つもしくはそれより少ないセグメントを有し、よくある入力範囲において数度内で大抵の温度感知エレメントを線形化することができる。特許文献2は、電子的な温度センサの非線形出力を補正するための回路を開示する。
【0005】
非特許文献1および特許文献3は、対数の増幅器を使用することにより非線形センサを線形化する装置を開示している。対数の増幅器は、出力電圧が入力電圧の自然対数のK倍である増幅を実行する。
【0006】
特許文献4は、センサの出力を所定の関係に適合させるための方法を開示する。マイクロプロセッサは、ADコンバータを介してサーミスタの電圧を読取る。多くのバイアス抵抗は、マイクロプロセッサの制御の下でサーミスタに直列に接続される。効果的なバイアス抵抗は、その時々で変化される。マイクロプロセッサは、バイアス抵抗のひとつに関連したサーミスタの電圧を同時に読み出す。マイクロプロセッサは、読出し電圧の重み付けされた和を形成する。何らかのバイアス抵抗を使用するとき、ADコンバータへ供給されるサーミスタの電圧は、開示された温度範囲において温度の線形変化に応答した曲線を有する特性を有し、その曲線は非線形である。
【0007】
COの空調(A/C)システムは、“冷却”と“ヒートポンプ”の双方を機能的にサポートすることができる。ヒートポンプは、機能的に、A/Cシステムが例えば車内を冷却するだけでなく温めることも可能にする。“冷却”モードでは、ラジエータは、A/Cシステム内でCOを冷却する。A/Cシステムは、“冷却”モードにあるCOの温度がおおよそ150℃であるとき、最も効率がよい。“ヒートポンプ”モードでは、ラジエータは、A/Cシステム内でCOを加熱しなければならない。ラジエータの温度が低くなればなるほど、システムはより効率的になる。しかしながら、ラジエータが正常に動作するのは、ラジエータの吸気口のCOの温度が0℃以上の場合のみである。温度が0℃より低くなるやいなや、氷がラジエータ上に形成されて、ラジエータの加熱機能が低下する結果となる。それゆえ、COA/Cシステムでは、0℃および150℃周辺の温度を正確に測定することができる温度センサが必要とされる。さらには、双方の温度範囲においてセンサの出力の温度感度が線形でありかつ同じ範囲にあることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,274,577号公報
【特許文献2】米国特許第6,099,163号公報
【特許文献3】米国出願公開第5,116,136号
【特許文献4】国際公開2006/135977号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「サーミスタに基づく線形温度−電圧コンバータ」、ジェイン エル シー、測定および制御学会、ロンドン、GB、vol.7, no.3、1989年7月1日、132−133頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、非線形センサ出力を線形化するための改良された装置を提要することである。
【0011】
本発明の他の目的は、高精度で広範囲の線形化の装置を提供することであり、COA/Cシステムが冷却およびヒートポンプの両機能を含むことを可能とする低温度および高温度を正確に測定することができるよう温度センサを搭載することを可能にする。
【0012】
本発明のさらなる目的は、現象の全体の範囲を通して傾斜が実質的に一定でありかつ断続がない応答曲線を有するディジタル出力信号を提供する線形化装置を提供することである。
【0013】
出力信号が所定の範囲内の監視された現象内の線形変化に応じて非線形の曲線を有する非線形センサを線形化するための装置が開示される。非線形曲線は、指数関数もしくは対数関数により近似され得る。装置は、非線形センサからの信号を変換するためのアナログ変換ユニットを含み、変換された信号を獲得し、この変換は、実質的に対数もしくは指数伝達特性を有し、変換された信号は、予め規定された範囲の現象における線形変化に応じた線形化された曲線を有する特性を持ち、その線形化された曲線は、線形関数によって近似され得る。さらに、変換ユニットは、pn接合を含み、変換回路は、非線形センサを流れる電流を計測し、かつ、その電流をpn接合を流れる電流に交換するように配置される。pn接合を通過する電流は、非線形センサを通過する電流と線形関係にあり、変換された信号は、pn接合間の電圧である。上述の従来のアナログ線形化回路では、ログアンプは、温度を表す非線形電圧信号を線形化するために使用される。ログアンプは、少なくともオペアンプと、抵抗と、トランジスタとを含む。トランジスタは、少なくとも2つのpn接合を含む。本発明によれば、少なくとも1つのpn接合は、非線形センサ信号の線形化を実行するために変換ユニット内に必要とされる。pn接合の電流/電圧特性は、指数曲線を描く非線形センサを流れる電流を、pn接合間の電圧に変換するために使用される。この変換は、ログ関数である。この方法で、非線形センサを流れる電流の指数伝達曲線は、おおよそ線形である伝達曲線を有する電圧信号へと変換される。
【0014】
ある実施例によれば、装置はさらに、変換された信号を受け取り、ディジタル信号値を得るために変換された信号をディジタル化する、センサ信号入力を有するADコンバータと、pn接合の電圧に対応する第1の基準信号を発生するように配置された第1の基準信号発生器とを含んでいる。pn接合は、変換ユニットのpn接合と一致する。第1の予め規定された電流は、このpn接合に供給される。装置はさらに、第2の基準信号を発生するように配置された第2の基準信号発生器を有し、第2の基準信号は、pn接合の電圧に対応する。第2の基準信号発生器のpn接合は、変換ユニットのpn接合と一致する。第2の予め規定された電流は、このpn接合に供給される。ADコンバータは、第1の基準信号発生器に結合された第1の基準信号入力と、第2の基準信号発生器に結合された第2の基準信号入力とを含む。ADコンバータは、センサ信号入力Vpn_ntcと第1の基準信号入力Vpn1との電圧差と、第2の基準信号入力Vpn2と第1の基準信号Vpn1との電圧差とに対応するディジタル信号値を発生させるよう配置される。接合間の電圧は、接合の飽和電流および温度に依存することが広く知られている。さらに、飽和電流は温度依存性があることも広く知られている。通常、周囲温度は変動するものである。この変動は、変換された信号を周囲温度に依存させる接合温度の変動になる。このような特徴は、2つの信号を提供する。ひとつは、第1の基準信号発生器のpn接合の接合温度とセンサによって測定された現象に依存する信号であり、もうひとつは、第1および第2の基準信号発生器の双方のpn接合の接合温度にのみ依存する信号である。双方の信号において、飽和電流の影響は著しく減少され、変換ユニット内の温度変動に対して信号の感度をより小さくさせる。他の実施例では、コンバータのpn接合と第1および第2の基準信号発生器のpn接合とは、同一のダイ上にある。これらの特徴は、ディジタル信号値における変換ユニットのpn接合の飽和電流の温度感度を低減させるために使用される。同一のダイ上にある接合は、実質的に同じ温度を有する。この結果、飽和電流の依存性とその対応する温度依存性は実質的に取り除かれる。
【0015】
ある実施例によれば、ADコンバータはさらに、第1の基準信号入力Vpn1とセンサ信号入力Vpn_ntcとの電圧差と、第1の基準信号入力Vpn1と第2の基準信号入力Vpn2との間の電圧差とに対応するディジタル信号値を発生させるよう配置される。これらの特徴によって、差動ADコンバータのドリフトを取り除くことができる。
【0016】
ある実施例によれば、装置はさらに、現象のための値を得るためにディジタル信号値を処理するよう配置された処理ユニットを含む。ある実施例では、処理ユニットは、次の方程式を実行するよう配置される:
【0017】
【数1】

【0018】
ここで、
比率(ratio)=現象を示す値、
Vpn_ntc − Vpn1=センサ信号入力Vpn_ntcと第1の基準信号入力Vpn1との間の差に対応するディジタル信号値、
Vpn2 − Vpn1=第2の基準信号入力値Vpn2と第1の基準信号入力値Vpn1との間の差に対応するディジタル信号値である。これらの特徴は、pn接合の温度依存性を取り除くために、また、pn接合の温度変化に対して鈍感であるディジタル値を提供するために用いられる。
【0019】
ある実施例によれば、処理ユニットは、前記予め規定された範囲の現象における線形変化に応答して、ディジタル出力信号の湾曲をさらに線形化するため、ディジタル領域における多項式に比率の値を与えることによって、感知された現象を表すディジタル出力信号のための値を計算するよう配置される。これらの特徴は、非線形センサの指数曲線とpn接合の対数I−V関数との間の不一致によるディジタル信号の非線形性をさらに減少させるのに役立つ。
【0020】
ある実施例によれば、非線形センサは、現象のための値が増加することに伴い伝導性が増加する材料で作られる感知素子を含む。
【0021】
その他の実施例では、非線形センサは、NTCサーミスタである。本発明は、非線形の応答を線形化するための解決を提供し、標準的な構成要素を用い標準化されたプロセスによって製造され得る安価な電子回路を用いて、摂氏の温度につき少なくとも3ないし5ビットで、−40℃から200℃の広い範囲で正確に温度を測定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、添付の図面を用いて例示的な実施例を使用し、以下で詳細に説明される。
【図1】図1は、本発明による非線形センサを線形化するための装置の回路図である。
【図2】図2は、NTCの非線形の特性と線形化された信号Vpn_NTCを表す。
【図3】図3は、線形化された信号Vpn_NTCとPN接合の温度との関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、非線形センサRNTCを線形化するための装置の回路図を表す。本発明に係る非線形センサは、現象または事象における線形の変化に応じて非線形の曲線を有する信号を提供するセンサである。非線形センサは、電気的に検出可能な特性を変化させることにより、温度、圧力、気流などといった現象または事象に応答するあらゆるトランスデューサであることができる。このような特性は、熱電対電圧と温度−感度の抵抗変化を含む。負の事象係数を有する非線形センサは、事象のための値の増加に伴って導電性が上昇する物質により作られる感知素子を含む。非線形の抵抗センサは、温度センサ、ガスセンサ、および湿度センサに利用されることができる。以下の説明において非線形センサは、負の温度係数(NTC)を有する抵抗RNTCである。
【0024】
図1で表された実施例において、抵抗RNTC間の電圧は、オペアンプOPAによって安定した状態に保たれる。基準電圧Vrefは、オペアンプOPAの非反転入力へ提供される。オペアンプの出力信号は、オペアンプの反転入力の電圧が非反転出力の基準電圧Vrefに類似するといった方法により、FET12を制御する。この方法で、NTC間の電圧は一定に保たれる。
【0025】
RNTCを流れる電流は、ダイオードDNTCに供給される。図2は、RNTCを流れる電流と、温度と、RNTCを流れる電流がダイオードDNTCに供給されたときのダイオードの電圧との関係を表す。X軸は温度を表し、左側のY軸は電流値を表し、そして右側のY軸はダイオードDNTCの電圧を表す。電流は、低い温度で感度が悪く、高い温度で非常に感度が良いということが理解され得る。
【0026】
ダイオード間の電圧は、以下のpn接合の方程式で近似され得る。
【0027】
【数2】

【0028】
ここで、
Vpn=pn接合の電圧、
k=ボルツマン定数、
q=電気素量、
T=pn接合のケルビンの絶対温度、
I=pn接合電流、
Is=飽和電流、である。
【0029】
オペアンプOPA、FET12およびダイオードDNTCは、アナログ変換ユニット101を形成する。変換ユニット101は、NTCへの接続により形成された入力を用いることで非線形センサを流れる電流を測定し、かつ前記入力で受け取られた前記電流をダイオードDNTC のpn接合を流れる電流へ変換するように配置される。図1に示された実施例では、pn接合を流れる電流は、非線形センサRNTCを流れる電流と同様である。図示しないが当業者には周知であるカレントミラーによって、センサを流れる電流は、センサを流れる電流と線形関係を有するもう1つの電流を得るように予め決められた因子により容易に複製され得る。この方法で、ダイオードDNTC を供給される電流は、適切な電流値へ適合されることができる。
【0030】
ダイオードDNTCは、アナログ信号領域においてRNTCを流れる電流の温度特性を、ダイオードのpn接合間の電圧Vpn_ntcに対応する変換された信号へと変換する。方程式[1]によって、対数変換がRNTCを流れる電流に適用される。図2は、方程式[1]による対数変換の結果を示し、非線形センサを流れる電流のpn接合間の電圧への変換を示す。DNTCの電圧の温度特性は、RNTCを流れる電流の非線形特性に関し線形化される。
【0031】
DNTCの電圧は、ADコンバータによって変換することができ、温度を表すディジタル信号値を得ることができる。この電圧は、簡単な11または12ビットのADコンバータによって容易にディジタル化されることができ、その反面、全体の温度範囲を通して摂氏度につき3ないし5ビットの要求される分解能に適合する。ディジタルのサンプルは、さらに線形化を改良するために処理されることができる。
【0032】
変換ユニット101によって、NTC電流は、アナログ領域のそれ自身の非線形曲線に反して対数的に増幅される。これは、線形に近いアナログ信号になり、かつNTC電流と線形関係を有する当初の非線形信号よりも摂氏の温度につきより高い分解能を有する線形ADコンバータによってディジタル化され得る。電圧Vpn_ntcから得られたディジタル化された信号は、もし、pn接合の温度が一定に維持されることができれば、幅広い温度範囲において十分な正確さをもって温度を測定するために使用されることができる。
【0033】
しかしながら、方程式[1]による対数変換は、2つの温度依存のパラメータ、すなわち、pn接合のケルビン絶対温度Tと飽和電流Isとを含む。両パラメータの値は、ダイオードが存在するダイの温度に依存する。動作条件では、ダイの温度は環境温度との関係を有する。車では、センサの環境温度は、エンジンの始動時に−20℃ないし30℃の範囲であり、エンジンが温められたときには100℃ないし160℃の範囲まで上昇し得る。図3は、ダイの温度に関する、図2で表されたVpn_ntc曲線の関係を表す。X軸は温度を表し、Y軸はダイオードDNTCの電圧を表す。ダイの温度Tdie、すなわちダイオードのpn接合の温度が所定の温度に保たれたときに得ることができる曲線が示されている。曲線の振幅は、ダイの温度Tdieに依存して全体の温度範囲でシフトする。
【0034】
飽和電流Isによる温度依存性を取り除くために、第1の基準信号発生器105が設けられる。図1において、第1の基準信号発生器105は、予め決められた電流Iref1を提供する電流源とダイオードD1との直列接続を含む。電流源により提供される所定の電流Iref1は、温度変化から独立していて、例えば−40℃から200℃の所定の範囲内のどの温度においても、実質的に同じ電流を提供する。所定の電流Iref1は、ダイオードD1に供給される。
【0035】
ダイオードD1のアノードは、アノードの電位を測定するために差動ADコンバータ104の入力に結合される。図1において、ダイオードDNTCのアノードは、差動ADコンバータ104のもうひとつの入力に結合される。さらに、ダイオードDNTCとD1との双方のカソードはグランドに結合される。差動ADコンバータ104は、センサ信号入力Vpn_ntcであるダイオードDNTCの電圧と、第1の基準信号入力Vpn1であるダイオードD1の電圧間の電圧差を測定する。
【0036】
ダイオードD1は、ダイオードDNTCのpn接合と一致するpn接合を有するため、双方のpn接合の飽和電流は同じ温度依存性を有する。
【0037】
一致されたダイオードDNTCとダイオードD1のVpn電圧を引くことによって、飽和電流が原因の温度依存性が取り除かれる。これは、次の方程式によって証明される。
【0038】
【数3】

【0039】
ここで、
Vpn_ntc=pn接合Dntcの電圧、
Vpn1=pn接合D1の電圧、
Intc=pn接合Dntcを流れる電流、
Iref1=pn接合D1を流れる電流。
【0040】
方程式[2]から、飽和電流Isによる温度依存性が取り除かれても、温度依存性のパラメータTが依然として存在することがわかる。ダイの温度を正確に測定することによって、パラメータTによるダイオードの電圧の変動を補償することができる。本発明によれば、温度依存パラメータTは、第2の基準信号発生器103を提供することによって取り除くことができる。図1において、第2の基準信号発生器103は、第2の予め決められた電流Iref2を提供する電流源とダイオードD2との直列接続を含む。電流源によって提供される第2の所定の電流Iref2は、温度変化から独立され、かつ、例えば−40℃ないし200℃の所定の範囲のどの温度でも実質的に同じ電流を提供する。所定の電流Iref2は、ダイオードD2に供給される。
【0041】
ダイオードD2のアノードは、アノードの電位を測定するために差動ADコンバータ104の入力に結合される。さらに、ダイオードD2のカソードはグランドに結合される。差動ADコンバータ104の他方の入力は、ダイオードD1のアノードに結合される。差動ADコンバータ104は、第2の基準信号入力Vpn2であるダイオードD2の電圧と、第1の基準信号入力Vpn1であるダイオードD1の電圧間の電圧差を測定する。
【0042】
ダイオードD2は、ダイオードDNTCおよびD1のpn接合と一致するpn接合を有するので、これらのpn接合の飽和電流は、同じ温度依存性を有する。コンバータ101のpn接合、すなわちダイオードDNTCのpn接合と、第1および第2の基準信号発生器105、103のpn接合とは、好ましくは同一のダイ上にある。この場合、pn接合の温度は実質的に同じである。
【0043】
一致したダイオードD2およびD1のVpn電圧を引くことによって、飽和電流が原因の温度依存性は、方程式[3]で証明されるように差動信号から取り除かれる。
【0044】
【数4】

【0045】
ここで、
Vpn2=pn接合D2の電圧、
Vpn1=pn接合D1の電圧、
Iref2=pn接合D2を流れる電流、
Iref1=pn接合D1を流れる電流。
【0046】
ダイの温度Tdieは、方程式[4]において示されるように、電圧差(Vpn2−Vpn1)から容易に決定することができる。
【0047】
【数5】

【0048】
ここで、
Vpn2=pn接合D2の電圧、
Vpn1=pn接合D1の電圧、
Iref2=pn接合D2を流れる電流、
Iref1=pn接合D1を流れる電流。
【0049】
結果として、ダイの温度は、測定された電圧差を定数で割ることによって決定することができる。
【0050】
2つの電圧差(Vpn_ntc − Vpn1)と(Vpn2 − Vpn1)は、ADコンバータ104によってディジタル化され、さらなる処理のために処理ユニット110へ提供される。ADコンバータ104は、14の有効なビットを有する16ビットのADコンバータであることができる。16ビットのADコンバータ104は、温度全体にわたり電圧差をディジタル化するのに十分であり、また、温度についての十分な分解能を提供するのに十分である。処理ユニット110は、ADコンバータ104から供給されたディジタル信号値を処理し、かつ非線形センサRNTCによる温度測定を表すディジタル出力信号のための値を計算するように配置される。処理ユニット110は、次の式を実行する。
【0051】
【数6】

【0052】
ここで、
比率(ratio)=温度を表す値、
Vpn_ntc − Vpn1=センサ信号入力Vpn_ntcと第1の基準信号入力Vpn1との差に対応するディジタル信号値、
Vpn2 − Vpn1 =第2の基準信号入力Vpn2と第1の基準信号入力Vpn1との差に対応するディジタル信号値。
【0053】
方程式[5]に方程式[2]および[3]を加えることにより、方程式[6]に達する:
【0054】
【数7】

【0055】
方程式[6]より、比率の値は、センサを流れる温度依存性の変化する電流INTCと、さらに温度依存性のない固定された電流Iref1およびIref2にのみ依存することがわかる。比率の値は、NTC電流を捕えるだけの次元のない数であり、ここでは、ダイの温度依存パラメータは完全に取り除かれる。比率の値は、測定された温度を示し、図2で表されたVpn_NTCの曲線と類似する曲線を有する。しかしながら、Vpn_NTCの曲線に反して、比率の曲線は、回路のpn接合の温度から独立している。比率の曲線は、図2に表されるように、10〜15%の非線形性を有しており、これは用途によっては十分であり得る。
【0056】
比率の曲線は、多項式を、計算された比率の値に適用することによって、さらに線形化されることができる。多項式を適用することで、ディジタル出力信号が計算され、測定範囲の全範囲で線形温度変化に対する感度は実質的に一定である。四次の多項式 temp=ax+bx+cx+dx+e によって、tempの値は、−40℃から200℃までの全体の温度範囲で1℃よりも小さい正確さで計算されることができる。ここでは、tempは、温度を示す値であり、a、b、c、d、eは、所定の定数であり、xは比率の値に対応する。好ましくは、計算されたtempの値は、測定された温度に対応するディジタルフォーマットである。そうであるならば、本発明による非線形センサを線形化する装置は、出力されたデータをさらに処理することなく、実際の温度もしくはその他の現象を表すためのディスプレイユニットに容易に接続されることができる。
【0057】
ダイオードDNTC、D1およびD2の電圧は、3つの差動ADコンバータによってディジタル化されることができる。図1では、1つの差動ADコンバータ104のみが電圧差(Vpn_ntc − Vpn1)および(Vpn2 − Vpn1)を2値化するために設けられている。これを可能にするため、選択器106が設けられ、選択器106は、ダイオードDNTCとダイオードD2の電圧間で、制御信号発生ユニット108により発生された制御信号の制御の下でスイッチする。さらに、チョッパー102がADコンバータ104の入力に提供される。チョッパーは、制御信号発生ユニットにより発生された制御信号の制御の下、ADコンバータ104へ供給される入力信号を置き換える。この方法では、(Vpn_ntc − Vpn1)および (Vpn1 − Vpn_ntc)のディジタル値は、ADコンバータ104の出力で入力可能にされる。ADコンバータの出力のディジタル信号値におけるバイアスドリフトは、処理ユニット110における(Vpn_ntc − Vpn1)および -(Vpn1 − Vpn_ntc)の平均値を決定することによって処理ユニット110内で取り除くことができる。同様の方法は、(Vpn1 − Vpn2)のディジタル値を決定するために適用される。制御信号発生ユニット108は、選択器106、チョッパー102、ADコンバータ104および処理ユニット110へ適切な制御信号を発生させるように配置され、それぞれの各部を同期させる。
【0058】
ここで、電圧差(Vpn_ntc − Vpn1)および(Vpn2 − Vpn1)のアナログ値が十分な正確さをもってサンプルされ得るときに、方程式[5]が十分な正確性をもって実行されることができ、(Vpn2 − Vpn1)の2値化された値は、処理ユニット110に正確な分割を実行させることのできる値に対応することに留意しべきである。標準のサーミスタRNTCを流れる電流は、1Vがサーミスタに印加されたときに、500nAから3.2mAまでの範囲にあるということがわかっている。第1の所定の電流Iref1は、好ましくは前記範囲の低い部分であり、第2の所定の電流Iref2は、好ましくは前記範囲の高い部分にある。ある実施例では、第1の基準電流Iref1は50uAであり、第2の基準電流Iref2は、0.5mAである。
【0059】
さらに、pn接合は、変換ユニット101内にあり、第1および第2の基準信号発生器105、103は、標準的なCMOS混合モードプロセスにより作られ得る。
【0060】
本発明による装置は、1つの現象を測定するためのセンサに採用することができる。この装置は、また2つもしくはそれ以上の現象を測定するためのセンサにも採用されることができる。そのようなセンサの一例は、温度および圧力の複合センサである。
【0061】
さらに、上記の本発明の実施例では、−40℃から200℃の温度範囲でのNTCの指数関数は、pn接合により提供された対数変換によって線形化され、それは方程式[1]に記載される。当業者であれば、所定の範囲における現象の線形変化に応答する曲線を有する特性を持つ信号を変換するための変換ユニットの配置をどのように適合させるのかを理解するであろう。ここでは、曲線は、変換ユニットで対数関数によって近似され、変換ユニットは、非線形センサからの対数信号を指数的に変換することで線形化された変換された信号を得る、この変換された信号は、十分な分解能を有する線形のACコンバータによってディジタル化され得る。
【0062】
本発明のいくつかの実施例が例示的な実施例によって説明された。これらの実施例に応じて説明された構成要素のさまざまな変更および修正は、添付の請求項により明らかにされる本発明の範囲から逸れることなく当業者によって実施されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形センサを線形化する装置であって、前記装置は、
予め規定された範囲の現象において線形変化に応答する曲線を有する特性を持つ信号を提供することを可能にする非線形センサであって、前記曲線は、指数もしくは対数関数により近似することができる、前記非線形センサと、
変換された信号を得るために非線形センサからの信号を変換するアナログ変換ユニットであって、前記変換は実質的に対数もしくは指数伝達特性を有し、前記変換された信号は予め規定された範囲の現象における線形変化に応じた線形化された曲線を有する特性を有し、前記線形化された曲線は線形関数により近似することができる、前記アナログ変換ユニットとを含み、
前記変換ユニットは、pn接合を含み、前記変換ユニットは非線形センサを流れる電流を測定し、かつ前記電流をpn接合を流れる電流に変換するように配置され、pn接合を流れる電流は、非線形センサを流れる電流と線形関係を有し、前記変換された信号は、pn接合の電圧であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
装置はさらに、
前記変換された信号を受け取り、ディジタル信号値を得るように前記変換された信号をディジタル化するための入力を有するADコンバータと、
第1の基準信号を発生するよう配置された第1の基準信号発生器であって、前記第1の基準信号は、pn接合の電圧に対応し、前記pn接合は、前記変換ユニットのpn接合に一致し、第1の所定の電流が前記pn接合に供給される、前記第1の基準信号発生器と、
第2の基準信号を発生するよう配置された第2の基準信号発生器であって、前記第2の基準信号は、pn接合の電圧に対応し、前記pn接合は、前記変換ユニットのpn接合に一致し、第2の所定の電流が前記pn接合に供給される、前記第2の基準信号発生器とを有し、
そして、前記ADコンバータは、前記第1の基準信号発生器に結合された第1の基準信号入力と、前記第2の基準信号発生器に結合された第2の基準信号入力とを含み、前記ADコンバータは、センサ信号入力Vpn_ntcと前記第1の基準信号入力Vpn1の電圧差(Vpn_ntc − Vpn1)、前記第2の基準信号入力Vpn2と前記第1の基準信号入力Vpn1の電圧差(Vpn2 − Vpn1)に対応するディジタル信号値を発生させるよう配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変換器のpn接合と、前記第1および第2の基準信号発生器のpn接合は同じダイ上にある、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ADコンバータはさらに、前記第1の基準信号入力Vpn1と第2信号入力Vpn_ntcとの電圧差(Vpn1 − Vpn_ntc)と、前記第1の基準信号入力Vpn1と前記第2の基準信号入力Vpn2との電圧差(Vpn1 − Vpn2)とに対応するディジタル信号値を発生するよう配列される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
装置はさらに、現象を表すディジタル値を得るためディジタル信号値を処理するゆに配置された処理ユニットを含む、請求項2ないし4いずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記処理ユニットは、次の方程式を実行するように配置され、ここで、比率(ratio)は、現象を表す値であり、Vpn_ntc − Vpn1は、センサ信号入力Vpn_ntcと第1の基準信号入力Vpn1との間の差に対応するディジタル信号値であり、Vpn2 − Vpn1は、第2の基準信号入力Vpn2と第1の基準信入力Vpn1との間の差に対応するディジタル信号値である、請求項4に記載の装置。
【数8】

【請求項7】
前記処理ユニットは、前記予め規定された範の現象における線形変化に応じたディジタル出力信号の曲線をさらに線形化するために、比率の値をディジタル領域の多項式に適用することによって、感知された現象を表すディジタル出力信号の値を計算するように配列される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
非線形センサは、現象の増加する値とともに導電性が上昇する材料から作られた感知部材を含む、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
非線形センサは、NTCサーミスタである、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
現象は温度である、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
装置は、−40℃から200℃の範囲の温度の線形変化に応答した線形曲線を備えるディジタル出力信号を発生するよう配置される、請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524006(P2011−524006A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511536(P2011−511536)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050295
【国際公開番号】WO2009/145629
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(506154029)センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】