説明

面状発熱体

【課題】温熱効果とテラヘルツ波による効果とが期待でき、しかも比較的安価に製造できる面状発熱体を提供する。
【解決手段】この面状発熱体10は、面状部材に、複数の結晶シリコンからなる粒体35と、電熱ヒーター線25とを取り付けて構成されている。純度が高い結晶シリコンからなる粒体を用いたことで、テラヘルツ波を効果的に放射させることができ、テラヘルツ波の照射による効果を得ることができると共に、電熱ヒーター線による温熱効果を得ることができる。また、電熱ヒーター線によって結晶シリコンからなる粒体が温められるので、粒体からのテラヘルツ波の放射量を増大させることができ、その効果をより高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコンからなる粒体と、電熱ヒーター線とを有する、例えば電気毛布などに利用される面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
面状発熱体の一種である、例えば電気掛毛布、電気敷毛布などは、例えば下記特許文献1に示されるように、上下2枚の毛布生地1を重ね合わせて、両者間に複数の接合部とトンネル部とを並列に、かつ、交互に形成し、トンネル部に発熱線を蛇行状に配設して構成されている。
【0003】
一方、従来から、特定の鉱石が放射線や遠赤外線を放出することが知られており、これらの鉱石を健康増進に利用した製品が知られている。例えば下記特許文献2には、珪石を溶融還元した還元物を冷却し、成形物とした入浴補助剤が開示されている。この入浴補助剤を浴槽に入れることによって、温浴効果が向上することが記載されている。
【0004】
また、特定の鉱石が周波数1THz(波長300μm)前後のテラヘルツ波を放射することが知られており、テラヘルツ波は、布、紙、器、プラスチック、陶磁器を透過する特性があることから、人体に対しても何らかの効果をもたらすことが期待されている。実際に、テラヘルツ波を照射する採石を利用した枕や、半導体向けに生産されたシリコンウェハを加工して形成されたネックレスやブレスレットなどが市販されており、ストレスを解消して睡眠を深くする効果があるとされている。
【0005】
なお、テラヘルツ波とは、光と電波の境界にある周波数領域(100GHz〜10THz)に位置する電磁波のことで、その波長が遠赤外線の領域(4〜1000μm)と一部重なるものである。遠赤外線は、体内の深部まで浸透する性質が知られており、こたつや肌着、健康器具、医療目的等で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−135466号公報
【特許文献2】特開2009−131505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の毛布などの面状発熱体は、遠赤外線などと併用したものは知られているが、テラヘルツ波と併用したものは知られていない。
【0008】
また、従来から利用されているテラヘルツ波を照射する鉱石は、水晶などの高価なものが多く、製品コストが高くなるという問題があった。また、比較的低コストの珪石などの採石は、不純物が多く、テラヘルツ波が効果的に照射されない可能性があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、温熱効果とテラヘルツ波による効果とが期待でき、しかも比較的安価に製造できる面状発熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の面状発熱体は、面状部材に、複数の結晶シリコンからなる粒体と、電熱ヒーター線とを取り付けたことを特徴とする。
【0011】
本発明の面状発熱体においては、前記面状部材が複数枚の布生地を接合したものからなり、前記粒体及び前記電熱ヒーター線が前記布生地の間に挟持されていることが好ましい。
【0012】
本発明の面状発熱体においては、前記結晶シリコンからなる粒体が最大径1〜15mmの粒体からなることが好ましい。
【0013】
本発明の面状発熱体においては、前記結晶シリコンからなる粒体が10〜150mmの間隔で配列されていることが好ましい。
【0014】
本発明の面状発熱体においては、毛布、シーツ、膝掛け、ショール、カーペットから選ばれた1種として用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、純度が高い結晶シリコンからなる粒体を用いたことで、テラヘルツ波を効果的に放射させることができ、テラヘルツ波の照射による効果を得ることができると共に、電熱ヒーター線による温熱効果を得ることができる。
【0016】
また、電熱ヒーター線によって加熱されて、結晶シリコンからなる粒体が温められるので、粒体からのテラヘルツ波の放射量を増大させることができ、その効果をより高めることができる。
【0017】
また、結晶シリコンからなる粒体は、周知の方法によって、人工的に製造することができるので、面状発熱体の製品コストを下げることができる。すなわち、純度が99.9999〜99.99999%(純度6〜7N)の太陽電池グレードの結晶シリコンや、純度が99.999999999%以上(純度11N)の半導体グレードの結晶シリコン等の、不純物が少ないものを用いることができるので、テラヘルツ波を効果的に放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の面状発熱体の一実施形態を示す説明図である。
【図2】(a)は図1のA−A矢示線における断面図、(b)は図1のB−B矢示線における断面図である。
【図3】本発明の面状発熱体の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】(a)は図3のC−C矢示線における断面図、(b)は図3のD−D矢示線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1及び図2を参照して、本発明の面状発熱体の一実施形態について説明する。
【0020】
図1及び図2(a),(b)に示すように、この実施形態における面状発熱体10は、複数の面状部材が積層された構造をなし、これらの面状部材に、複数の結晶シリコンからなる粒体35と、電熱ヒーター線25とが取り付けられている。具体的には、電熱ヒーター線25が取り付けられた面状部材20と、この面状部材20を挟み込むと共に、複数の結晶シリコンからなる粒体35が取り付けられた面状部材30とを備えている。
【0021】
図1及び図2(a),(b)に示すように、電熱ヒーター線25が取り付けられた面状部材20は、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、レーヨン等のセルロース系繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維などで長方形状に形成された一対の布生地21,21を有し、これらの布生地21,21の周縁部どうしを整合するように重ね合わせ、縦方向及び横方向に沿って格子状に縫着された縫合糸23により、互いに接合された構造となっている。そして、図1及び図2(b)に示すように、面状部材20の縦方向に沿って縫着された縫合糸23の間を通るようにして、電熱ヒーター線25が一対の布生地21,21の間に蛇行して配設されている。すなわち、図1に示すように、電熱ヒーター線25の一端が、面状部材20の所定角部から長手方向に沿って伸び、一方の短辺側で折り返されて、他方の短辺に至るまで伸び、更に一方の短辺側にまで伸びるという経路が繰り返されて、電熱ヒーター線25が蛇行状に配設されている。また、電熱ヒーター線25の他端は、面状部材20の上記角部に戻り、電熱ヒーター線25の両端が、コード接続部27に接続されている。
【0022】
このコード接続部27には、電気コード60が接続されるようになっている。この電気コード60は、その一端にコード接続部27への接続用のコネクタ61が取り付けられ、他端にコンセントに差し込まれるプラグ63が取り付けられていると共に、電熱ヒーター線25への通電及び電熱ヒーター線25の発熱温度を調整するための操作部65を有している。
【0023】
一方、結晶シリコンからなる粒体35が取り付けられた面状部材30は、前記面状部材20に適合した寸法で長方形状に形成され、前記面状部材20の両面に配設された一対の布生地31,31を有している。布生地31としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、レーヨン等のセルロース系繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、などを用いることができる。
【0024】
この実施形態では、面状部材30の片面側に配設された布生地31の内面に、複数の粒体35が所定間隔で配列され、接着部材37により固定されている。また、図2(a)に示すように、布生地31は球状の粒体35により押圧されて、その外面側に複数の凸部が形成されるようになっている。
【0025】
結晶シリコンからなる粒体35は、周知の流動床法、冶金法、水ガラス化法等により、製造された多結晶シリコンを所定形状に加工して形成したり、周知のCZ法(チョクラルスキー法)や、FZ法(フローティングゾーン法)等により、柱状に成長した単結晶シリコンのインゴットや、該インゴットから切り出されたウェハを、所定形状に加工して形成されている。この実施形態における粒体35は、球状をなしているが、角形のブロック状や、円板形や角形の板状や、円筒状などの形状であってもよい。粒体35の大きさは、特に限定されないが、分散配置させてテラヘルツ波が広い範囲で均一に照射できるようにすると共に、重量による圧迫感を与えたりせず、敷き毛布等として利用した場合には、指圧効果ももらすようにするため、粒体35の外径Dは、1〜15mmであることが好ましく、4〜8mmであることがより好ましい。なお、ここでいう外径とは、種々の形状とされた粒体35の、所定端部から最も離れた端部までの距離を意味する。例えば、球状であれば最大外径で、長法形状であれば、長手方向一端から他端までの長さである。また、前記外径Dが1mm未満では、指圧効果が小さいので好ましくなく、15mmを超えると、使用時に身体を痛めやすくなるので好ましくない(膝の靭帯などが痛みやすくなる)。
【0026】
そして、図1及び図2(a)に示すように、この粒体35は、前記面状部材30の長手方向に沿って所定間隔L(複数の粒体35の中心間の距離)で複数配列されていると共に、各列が面状部材30の幅方向に沿って所定間隔W(各列の粒体35の中心間の距離)で複数配列されている。例えば毛布の場合、粒体35の毛布の幅方向における配列数は、3〜4列程度が好ましく採用される。なお、上記間隔W又はLは、10〜150mmであることが好ましい。
【0027】
また、複数の粒体35を布生地31に固定するための接着部材37は、この実施形態の場合、図2(a)に示すような接着テープが採用されている。なお、接着部材37としては、接着テープに限らず、接着剤を介して面状部材30に固定してもよく、更に、粒体35に孔を設けて、この孔に糸やワイヤ等の紐状体を通して、面状部材30に固定してもよい。
【0028】
そして、電熱ヒーター線25が取り付けられた面状部材20の片面側に、複数の粒体35を取り付けた布生地31が配設され、同面状部材20の反対面側に布生地31が配設され、面状部材20が布生地31,31で挟み込まれ、それらの外周縁が縁取り部材50で覆われると共に、この縁取り部材50を介して互いに接合されて、面状発熱体10が構成されている。
【0029】
次に上記構造からなる面状発熱体10の作用効果について説明する。
【0030】
この面状発熱体10は、毛布や、シーツ、膝掛け、ショール、カーペット等として用いることができる。
【0031】
そして、前記電気コード60のコネクタ61を、コード接続部27に接続すると共に、電気コード60のプラグ63をコンセントに差し込んで、操作部65を操作して電熱ヒーター線25に電力を供給する。すると、電熱ヒーター線25が所定温度で発熱し、面状発熱体10が温められて、温熱効果を発揮する。
【0032】
また、面状部材30には、純度が高い結晶シリコンからなる粒体35が、複数取り付けられているので、各粒体35からテラヘルツ波が放射されて人体に照射され、例えば、血行を良くして肩こりや冷え性を改善したり、ストレスを解消して睡眠を深くしたり、などの効果を期待することができる。
【0033】
また、本発明では、結晶シリコンからなる粒体35が、電熱ヒーター線25の熱によって加熱されるので、テラヘルツ波の放射量を増大させることができ、電熱ヒーター線25による温熱効果と相まって、人体に対する効果をより高めることができる。
【0034】
また、結晶シリコンからなる粒体35は、前述したように、周知の流動床法やCZ法(チョクラルスキー法)等により、人工的に製造された多結晶シリコンや単結晶シリコンなどを、所定形状に加工することで形成することができるので、石英等の鉱石を用いた場合に比べて製品コストを下げることができる。
【0035】
また、この実施形態では、粒体35によって、面状部材30の外面側に複数の凸部が形成されているので、その上に寝そべることにより、身体の所定箇所が適度に押されて指圧効果を得ることができる。
【0036】
図3及び図4には、本発明の面状発熱体の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0037】
この実施形態の面状発熱体10aは、電熱ヒーター線25と、結晶シリコンからなる粒体35とが、一対の共通の布生地21,21の間に挟持されて、2枚の布生地21,21で構成されている点が、前記実施形態と異なっている。
【0038】
すなわち、この実施形態の面状発熱体10aにおける面状部材は、一対の布生地21,21が格子状に縫われた縫合糸23により接合され、この縫い目の間に形成されたトンネル状の空間に電熱ヒーター線25が蛇行して配置されると共に、片面の布生地21の内面であって電熱ヒーター線25が配設されていない部分に、接着部材37を介して複数の結晶シリコンからなる粒体35が固定され、一対の布生地21,21の間に電熱ヒーター線25と粒体35とが挟持された構造をなしている(図4(a),(b)参照)。
【0039】
この実施形態によれば、電熱ヒーター線25が挟持された布生地21,21の間に、複数の粒体35が挟み込まれているので、面状発熱体10aの構造を簡単にすることができると共に、その製品コストをより下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10,10a 面状発熱体
20 面状部材
21 布生地
23 縫合糸
25 電熱ヒーター線
27 コード接続部
30 面状部材
31 布生地
35 粒体
37 接着部材
50 縁取り部材
60 電気コード
61 コネクタ
63 プラグ
65 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状部材に、複数の結晶シリコンからなる粒体と、電熱ヒーター線とを取り付けたことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記面状部材が複数枚の布生地を接合したものからなり、前記粒体及び前記電熱ヒーター線が前記布生地の間に挟持されている請求項1記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記結晶シリコンからなる粒体が外径1〜15mmの粒体からなる請求項1又は2記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記結晶シリコンからなる粒体が10〜150mmの間隔で配列されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の面状発熱体。
【請求項5】
毛布、シーツ、膝掛け、ショール、カーペットから選ばれた1種として用いられる請求項1〜4のいずれか1つに記載の面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199053(P2012−199053A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62001(P2011−62001)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(596105976)株式会社ライズステップ (2)
【Fターム(参考)】