説明

面状発熱装置

【課題】暖房、加熱、乾燥などの熱源として用いることのできる面状発熱装置にあって、効果的に電極を配設できるようにして、発熱装置全体の特性を良好に維持しつつ耐久性、信頼性を向上することを目的とする。
【解決手段】複数の高分子抵抗体6,13,14をリード線で接続し、1個の端子部材19に複数本のリード線22,23を接続する箇所は複数箇所の接続部を設けて接続して、電気的に複数の高分子抵抗体6,13,14を一体化した構成としてあるので、それぞれの発熱部の電極5,11,12及び高分子抵抗体6,13,14配設における設計的な制約が低減でき、異形状の面状発熱体の性能を充分に引き出すと共に、基材廃棄ロスを廃止し、かつ耐久性等の信頼性を向上することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房、加熱、乾燥用などの熱源として用いることのできる面状発熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱装置は、図3、図4に示したように、高分子抵抗体50、及びこの高分子抵抗体50に給電するための一対の櫛形電極51,52をポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材53上に配置したものであった。
【0003】
前記櫛形電極51、52は導電性ペーストを印刷・乾燥して、また高分子抵抗体50は高分子抵抗体インクを印刷・乾燥してそれぞれ得たものである。さらに基材53と同様の材質の被覆材54で櫛形電極51,52及び高分子抵抗体50を被覆して保護する構成としている。
【0004】
基材53及び被覆材54としてポリエステルフィルムを用いる場合には、被覆材54に例えばポリエチレン系の熱融着性樹脂55をあらかじめ接着しておき、加熱ローラ56,57を介して熱時加圧することにより、前記基材53と被覆材54とを熱融着性樹脂55を介して接合するようにしていた。
【0005】
これにより、櫛形電極51,52及び高分子抵抗体50は外界から隔離され、長期的な信頼性を確保できるのである。
【0006】
さらに、具体的な製造方法を述べると、櫛形電極51,52及び高分子抵抗体50を上面に形成した基材53を左方向より2本の加熱ロール56,57間に導入する。一方、被覆材54は熱融着性樹脂55面を下面にして、上部より加熱ロール56,57間に導入する。基材53と被覆材54の接着は加熱ロール56,57の熱及び加圧力で熱融着性樹脂55を融解してのちに冷却することで行われる。
【0007】
この高分子抵抗体50を形成する高分子抵抗体インクとしては、ベースポリマーと、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散してなり、特にベースポリマーとして結晶性樹脂を用いてPTC特性を持たせたものが多い(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0008】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(抵抗が正の温度係数を有する意味のPositive Temperature Coefficientの頭文字を取っている)を意味しており、PTC特性を有する高分子抵抗体50は、自己温度調節機能を有する面状発熱装置を提供できる。
【特許文献1】特開昭56−13689号公報
【特許文献2】特開平6−96843号公報
【特許文献3】特開平8−120182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では、ポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材53に印刷した櫛形電極51,52及び高分子抵抗体50で面状発熱体を構成するため、面状発熱体の配設箇所が複数になる場合、例えば、メイン面状発熱体の両サイドに補助の面状
発熱体が配設されるような袖付き形状の面状発熱体が必要となるサイド付座席に用いるシートヒータでは、面状発熱体の櫛形電極51,52及び高分子抵抗体50の配設が電圧ドロップや強度を考慮すると設計的に制約を生じ、性能を損なう課題があった。
【0010】
つまり、図5のように、両サイドの面状発熱体に挟まれる面状発熱体即ち面状発熱体間に位置する面状発熱体のどちらかの一方の櫛形電極51が、電気の供給を受ける部分とつぎの面状発熱体に電気の供給をする部分の2箇所がどうしても必要となり、どちらかの一方の電極51が長くなり、電圧ドロップすることにより、面状発熱体の温度が低下し発熱特性が劣化することに加え、櫛形電極51を配設する部分が電気の供給を受ける部分とつぎの面状発熱体に電気の供給をする部分の2箇所となるために面状発熱体の発熱面積が減少することにより、面状発熱体全体の暖房特性が得られなくなってしまう心配があった。
【0011】
また、それに加え、面状発熱体間の基材53はつなぐ部分を残して廃棄するために基材ロスを発生するとともに、面状発熱体間をつなぐ基材53部分は、細くなり強度的に弱くなってしまい、印刷した櫛形電極51,52の断線や劣化を生じ耐久的に劣化してしまう心配があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、面状発熱体間の電極をリード線で接続することにより、効果的に電極を配設出来るようにして発熱体全体の特性を維持しつつ耐久性等の信頼性を向上することを目的とする。
【0013】
しかしながら、前記従来の構成では、ポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材50に印刷した櫛形電極51,52及び高分子抵抗体53で面状発熱体を構成するため、面状発熱体の抵抗体53配設箇所が複数になる場合、例えば、メインの高分子抵抗体53の両サイドに補助の高分子抵抗体53が配設されるような袖付き形状の面状発熱体が必要となるサイド付座席に用いるシートヒータでは、面状発熱体の櫛形電極51,52及び高分子抵抗体53の配設が電圧ドロップや強度を考慮すると設計的に制約を生じ、面状発熱装置の性能を損なう課題があった。
【0014】
つまり、図5のように、両サイドの高分子抵抗体53a,53dに挟まれ中央に位置する櫛形電極51・52及び高分子抵抗体53b,53cのどちらかの一方の櫛形電極51が、電気の供給を受ける部分とつぎの高分子抵抗体53cに電気の供給をする部分の2箇所がどうしても必要となり、どちらかの一方の櫛形電極51が長くなり、電圧ドロップすることにより、面状発熱体全体の温度が低下し発熱特性が劣化することに加え、櫛形電極51を配設する部分が電気の供給を受ける部分と、つぎの高分子抵抗体53に電気の供給をする部分の2箇所となるために高分子抵抗体53b,53cの発熱面積が減少することにより、面状発熱装置全体の特性が得られなくなってしまう心配があった。
【0015】
又、それに加え、高分子抵抗体53a,53b,53c,53d間の基材50はつなぐ部分を残して廃棄するために、高分子抵抗体53a,53b間、高分子抵抗体53b,53c間あるいは高分子抵抗体53c,53d間をつなぐ基材50部分は、細くなり強度的に弱くなってしまい、印刷した電極51,52の断線や劣化を生じ耐久的に劣化してしまう心配があった。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、抵抗体間の電極をリード線で接続することにより、効果的に電極を配設出来るようにして発熱装置全体の特性を維持しつつ耐久性等の信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本発明の面状発熱装置は、電気絶縁性基材上に印刷形成さ
れた電極、及びこの電極により給電される高分子抵抗体と、片面に電極の給電部に給電するリード線を接続し、もう一方の面に導電性樹脂材料を形成し電極に面接合するように構成した端子部材と、電極と端子部材及び高分子抵抗体を覆い電気絶縁性基材と密着させて配設した被覆材とを備え、電気絶縁性基材上に高分子抵抗体と電極を複数配設すると共に、この複数配設した電極の所定位置に端子部材を配設し、それぞれの端子部材同士をリード線で接続し、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化するように構成してある。
【0018】
上記した構成によって、1つの電気絶縁性基材上に複数の抵抗体と電極を配設し、この電極の所定位置に端子部材を配設し、それぞれの端子同士をリード線で接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化した構成としてあるので、それぞれの電極及び抵抗体の配設における設計的な制約が低減され、異なる形状の抵抗体を効果的につなぎ合わせることができるなど、異形状の面状発熱体の性能を充分に引き出すことができるようになる。
【0019】
つまり、複数の抵抗体をリード線で接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化することで、それぞれの抵抗体は隣り合う抵抗体の電気の供給を電気絶縁性基材に印刷する電極で行わずにリード線でパラレルに、あるいはシリーズに自由に接続できるようになり、設計的な制約が低減され、電極が長くなって電圧ドロップすることや、隣り合う抵抗体に電気の供給するために発熱面積が減少することの心配が無くなり、面状発熱体装置の特性を引き出せるようになる。
【0020】
又、抵抗体間をつなぐ部分の強度も、リード線で構成されるので、格段と強くすることができ、耐久的にも信頼性を向上することができるようになる。
【0021】
又、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続してあるので、半田付けの作業性が良く、接続箇所が多くなっても、端子部材の面積を大きくすれば、何箇所でも取り付けができる。
【0022】
つまり、1個の端子部材に複数本のリード線を1箇所の接続部に半田付けをする場合は、1本目のリード線を半田付けした後、2本目のリード線を半田付けする時、1本目のリード線がはずれやすく、作業性が悪い。さらに、複数本のリード線が重なるので、膨れて邪魔になる。
【0023】
しかしながら、1個の端子部材に複数本のリード線を複数箇所の接続部に半田付けする場合は、常に1本のリード線を1箇所の接続部に半田付けすることになり、リード線がはずれたり、半田付け部が膨れて邪魔になることはない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の面状発熱装置は、1つの電気絶縁性基材上に複数の抵抗体をリード線で接続して高分子抵抗体を電気的に一体化した構成としてあるので、それぞれの抵抗体の電極及び抵抗体の配設における設計的な制約が低減でき、異形状の面状発熱体の性能を充分に引き出すと共に、耐久性等の信頼性を向上することができるようになる。
【0025】
又、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続してあるので、半田付けの作業性が良く、接続箇所が多くなっても、端子部材の面積を大きくすれば、何箇所でも取り付けができる。
【0026】
つまり、1個の端子部材に複数本のリード線を1箇所の接続部に半田付けをする場合は、1本目のリード線を半田付けした後、2本目のリード線を半田付けする時、1本目のリード線がはずれやすく、作業性が悪い。さらに、複数本のリード線が重なるので、膨れて
邪魔になる。
【0027】
しかしながら、1個の端子部材に複数本のリード線を複数箇所の接続部に半田付けする場合は、常に1本のリード線を1箇所の接続部に半田付けすることになり、リード線がはずれたり、半田付け部が膨れて邪魔になることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
第1の発明の面状発熱装置は、電気絶縁性基材と、電気絶縁性基材上に印刷形成された電極及び電極により給電される高分子抵抗体と、片面に電極の給電部に給電するリード線を接続し、もう一方の面に導電性樹脂材料を形成し電極に面接合するように構成した端子部材と、電極と端子部材及び高分子抵抗体を覆い電気絶縁性基材と密着させて配設した被覆材とを備え、電気絶縁性基材上に高分子抵抗体と電極を複数配設すると共に、この複数配設した電極の所定位置に端子部材を配設し、それぞれの端子部材同士をリード線で接続し、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続して、複数の高分子抵抗体を電気的に一体化するように構成してある。
【0029】
そして、1つの電気絶縁性基材上に複数の抵抗体と電極を配設し、この電極の所定位置に端子部材を配設し、それぞれの端子部材同士をリード線で接続して複数の抵抗体を電気的に一体化した構成としてあるので、それぞれの電極及び抵抗体の配設における設計的な制約が低減され、異なる形状の抵抗体を効果的につなぎ合わせることができるなど、異形状の面状発熱装置の性能を充分に引き出すことができるようになる。
【0030】
つまり、複数の抵抗体をリード線で接続して高分子抵抗体を電気的に一体化することで、それぞれの抵抗体は隣り合う抵抗体の電気の供給を電気絶縁性基材に印刷する電極で行わずにリード線でパラレルに、あるいはシリーズに自由に接続できるようになり、設計的な制約が低減され、電極が長くなって電圧ドロップすることや、隣り合う抵抗体に電気の供給するために発熱面積が減少することの心配が無くなり、面状発熱装置全体の特性を引き出せるようになる。
【0031】
又、抵抗体間をつなぐ部分の強度も、リード線で構成されるので、格段と強くすることができ、耐久的にも信頼性を向上することができるようになる。
【0032】
又、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続してあるので、半田付けの作業性が良く、接続箇所が多くなっても、端子部材の面積を大きくすれば、何箇所でも取り付けができる。
【0033】
つまり、1個の端子部材に複数本のリード線を1箇所の接続部に半田付けをする場合は、1本目のリード線を半田付けした後、2本目のリード線を半田付けする時、1本目のリード線がはずれやすく、作業性が悪い。さらに、複数本のリード線が重なるので、膨れて邪魔になる。
【0034】
しかしながら、1個の端子部材に複数本のリード線を複数箇所の接続部に半田付けする場合は、常に1本のリード線を1箇所の接続部に半田付けすることになり、リード線がはずれたり、半田付け部が膨れて邪魔になることはない。
【0035】
第2の発明の面状発熱体は、特に第1発明の電気絶縁性基材上に高分子抵抗体と電極を複数配設するとともに、この複数配設した電極の所定位置に端子部材を面接合し端子部材同士をリード線で接続し、1個の端子部材に3本のリード線を接続する箇所は3箇所の接続部を設けて接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化するように構成し、且つ、端子部材同士を接続するリード線の一部或いは全体を被覆材とは別の保護部材で覆うよう
に構成としてある。
【0036】
そして、第1発明の端子部材同士をリード線で接続して、複数の抵抗体を電気的に一体化する効果に加え、端子部材同士を接続するリード線の一部或いは全体を被覆材とは別の保護部材で覆うように構成してあるので、さらに、抵抗体間をつなぐ部分の強度も、リード線で構成される上に保護部材で保護され、格段と強くすることができ、耐久的にも信頼性を向上することができるようになると共に、電極同士を接続するリード線が露出することにより引っ掛かりやすくなって、面状発熱装置を損ねたりする心配が無くなり、面状発熱装置の生産性や施工性などを向上することができるようになる。
【0037】
第3の発明の面状発熱装置は、特に第1〜2の発明の面状発熱装置に給電する電極のどちらか一方あるいは両方を閉回路となるように構成してある。
【0038】
そして、面状発熱装置に給電する電極のどちらか一方あるいは両方を閉回路のとなるように構成してあるので、電極に一部が何らかの理由で亀裂や断線状態となっても、電気が回り込んで供給されるために、面状発熱装置の発熱に大きな支障を与えることなく使用出来るようになり、面状発熱装置の耐久性を大幅に向上することができるようになる。
【0039】
第4の発明は、特に第1〜3の発明の端子部材の導電性樹脂材料が電極に対して熱接着性を示すとともに熱硬化性とした構成としてある。
【0040】
そして、前記端子部材の導電性樹脂材料が電極に対して熱接着性を示すとともに熱硬化性とした構成としてあるので、端子部材の導電性樹脂材料が電極に接合される前は未硬化の状態とし、面接合時に熱をかけることで接着が可能となり、リード線の取り付け時等の電極に熱をかけた時に熱接着して硬化させることにより、その熱硬化の過程において、揮発分が除去されているので発泡せず、緻密な構造となり、十分な強度が得られ、導電性樹脂材料の本来の接着強度を発揮でき、簡単な構成で端子部材が電極に確実に面接合できるようになる。
【0041】
第5の発明は、特に第1〜4の発明のリード線の取り付け部に絶縁性保護処理を施した構成としてある。
【0042】
そして、リード線の取り付け部に絶縁性保護材を塗布した構成としてあるので、リード線の取り付け部から電極及び電極により給電される高分子抵抗体が絶縁性保護材に保護され、外気と遮断されて構成されるようになり、湿気や異物による汚染劣化や、電極のマイグレーションによるショートなどの不具合を防止でき、より性能の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0044】
(実施の形態1)
図1、図2において、面状発熱装置は、メイン発熱部1と、その左方に配設された左サイド発熱部2と、右方に配設された右サイド発熱部3で構成されている。
【0045】
前記メイン発熱部1は、電気絶縁性基材4の上面に一対の電極5を形成するとともに、これら電極5と重なるように高分子抵抗体6を配置して構成したものである。前記電気絶縁性基材4はポリエステル不織布4aにポリエステルフィルム等をラミネートしたものであり、また、電極5はこの電気絶縁性基材4上に銀ペーストの印刷・乾燥により形成した。さらに、高分子抵抗体6は高分子抵抗体インクの印刷・乾燥により得たものである。
【0046】
そして、上記電気絶縁性基材4上の電極5、及び高分子抵抗体6には被覆材7が貼り合わされている。この被覆材7は、アクリル系の接着性樹脂層8を予め形成したポリエステルフィルム等の薄肉状電気絶縁性オーバコート材をラミネートしたものである。
【0047】
電極5は、対向するように幅が広い主電極5a,5bから交互に櫛形形状の複数の枝電極5c,5dを突設したものであり、これに給電することで、高分子抵抗体6に電流が流れ、発熱するようになる。
【0048】
高分子抵抗体6はPTC特性を有し、温度の変化に抵抗値が比例的に変化して所定の温度になるように自己温度調節機能を有するものであり、その結果、温度コントロールが不要で安全性の高い面状発熱体としての機能を有するようになる。
【0049】
前記電極の配設パターンは、図1に示すように、内側の主電極5bから外側に向けて形成した複数の櫛形形状枝電極5dと、外側の主電極5aから内側に向けて形成した複数の櫛形形状枝電極5cを交互かみあわせるようにしたものであり、さらに、外側に位置する主電極5aは閉回路の構成としてある。
【0050】
また、メイン発熱部1の左右に配設される左サイド発熱部2と右サイド発熱部3も同様に構成されている。
【0051】
すなわち、電気絶縁性基材9,10の上面にそれぞれ一対の電極11,12を形成するとともに、これら電極11,12と重なるように高分子抵抗体13,14を配置して構成したものである。前記電気絶縁性基材9,10はポリエステル不織布9a,10aにポリエステルフィルム等をラミネートしたものであり、また、電極11,12はこの電気絶縁性基材9,10上に銀ペーストの印刷・乾燥により形成した。さらに、高分子抵抗体13,14は高分子抵抗体インクの印刷・乾燥により得たものである。
【0052】
そして、上記電気絶縁性基材9,10上の電極11,12、及び高分子抵抗体13,14には被覆材15,16が貼り合わされている。この被覆材15,16は、アクリル系の接着性樹脂層17,18を予め形成したポリエステルフィルム等の薄肉状電気絶縁性オーバコート材をラミネートしたものである。
【0053】
電極11,12は、対向するように幅が広い主電極11a,11b、12a,12bから交互に櫛形形状の複数の枝電極11c,11d、12c,12dを突設したものであり、これに給電することで、高分子抵抗体13,14に電流が流れ、発熱するようになる。
【0054】
高分子抵抗体6はPTC特性を有し、温度の変化に抵抗値が比例的に変化して所定の温度になるように自己温度調節機能を有するものであり、その結果、温度コントロールが不要で安全性の高い面状発熱体としての機能を有するようになる。
【0055】
前記電極の配設パターンは、内側の主電極11b、12bから外側に向けて形成した複数の櫛形形状枝電極11d、12dと、外側の主電極11a、12aから内側に向けて形成した複数の櫛形形状枝電極11c、12cを交互かみあわせるようにしたものであり、さらに、外側に位置する主電極11a、12aは閉回路の構成としてある。
【0056】
そして、メイン発熱部1および左、右サイド発熱部2,3の主電極給電部分に端子部材19,20,21と面接合するとともに、それぞれの端子部材19,20,21にリード線22,23を接続している。
【0057】
これらのリード線22,23は同極となる左、右サイド発熱部2,3主電極給電部分からメイン発熱部1の主電極給電部分を介して電源へ接続するように構成してある。なお、中央の1個の端子部材19に2本のリード線と1本のリード線を接続する箇所は3箇所の接続部を設けた構成としてある。さらに、リード線22,23の取付部には、シリコン接着剤などの絶縁性保護材24,25,26を塗布してある。
【0058】
また加工法について、加工工程の順序としては基本的に同じなのでメイン発熱部1で説明すると、まず、この端子部材19の電極5の給電部分に接する面には導電性樹脂材料19aを形成してあり、この導電性樹脂材料19aによって電極5と端子部材19の間は電気的及び物理的に接合されていて、導電性樹脂材料19aは電極5に対して熱接着性を示すとともに、熱硬化性としてあり、共重合ポリエステルに導電性付与材として銀粉末を分散し、さらに、硬化剤としてイソシアネートを適量添加して作製された導電性ペーストを使用している。
【0059】
この段階の導電性樹脂材料19aは、イソシアネートによる硬化反応が生じないように低温で乾燥されているために、熱可塑性を保持しており、融点以上の温度で加圧すれば電極5との熱融着が可能である状態にある。この場合、特に、電極5に導電性樹脂材料19aは同種の樹脂を使用すると熱融着性は極めて良く、十分な熱融着強度が得られる。
【0060】
次に、ポリエステル不織布4aにラミネートされたポリエステルフィルム等の薄肉の電気絶縁性基材4をロール状に作成したものに、銀ペーストの印刷・乾燥により一対の電極5を形成する。
【0061】
次に、電極5に重なるように高分子抵抗体インクを印刷・乾燥により高分子抵抗体6を形成したのちに、電極5、高分子抵抗体6、及び電気絶縁性基材4と接着性を有するアクリル系接着剤等の接着性樹脂層7を予め形成されたポリエステルフィルム等の薄肉の電気絶縁性オーバコート材をラミネートした被覆材8を貼り合わせて形成して、発熱体本体部分が完成される。
【0062】
そして、発熱体本体部分の外形抜きを行った後、半田ごてで被覆材8を溶かしてリード線22,23を半田27で接続し、最後に、リード線
22,23の取り付け部にシリコン接着剤などの絶縁性保護材28を塗布したのち、端子部材同士を接続するリード線22,23の全体を被覆材8の上から別の保護部材29で覆うように配設して組み立てが完了する。
【0063】
そして、リード線22,23の接続は、同極となる左、右サイド発熱部2,3の主電極給電部分からそれぞれメイン発熱部1の主電極給電部分へ接続するリード線22,23を介し、メイン発熱部1の主電極給電部分から電源へ接続するリード線30が接続されるように構成してある。
【0064】
ここで、メイン発熱部1および左、右サイド発熱部2,3の主電極給電部分に端子部材を面接合すると共に、それぞれの端子部材にリード線22,23を接続し、これらのリード線は同極となる左、右サイド発熱部2,3の主電極給電部分からそれぞれメイン発熱部1の主電極給電部分へ接続するリード線22を介してメイン発熱部1の主電極給電部分から電源へ接続するリード線30が接続されるように構成してあるので、それぞれの面状発熱体の電極5,11,12、及び高分子抵抗体6,13,14の配設における設計的な制約が低減され、異なる形状の面状発熱体を効果的につなぎ合わせることができるなど、異形状の面状発熱体の性能を充分に引き出すことができるようになる。
【0065】
つまり、複数の高分子抵抗体6,13,14をリード線22で接続して、電気的に一体
化することで、それぞれの高分子抵抗体6,13,14は隣り合う高分子抵抗体6,13,14の電気の供給を電気絶縁性基材に印刷する電極で行わずにリード線でパラレルに、あるいはシリーズに自由に接続できるようになり、設計的な制約が低減され、電極が長くなって電圧ドロップすることや、隣り合う抵抗体に電気の供給するために発熱面積が減少することの心配がなくなり、面状発熱体全体の特性を引き出せるようになる。
【0066】
また、高分子抵抗体6,13,14間をつなぐ部分の強度も、リード線22,23で構成されるので、格段と強くすることができ、耐久的にも信頼性を向上することができるようになる。
【0067】
又、1個の端子部材19に複数本のリード線22,23を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続してあるので、半田付けの作業性が良く、接続箇所が多くなっても、端子部材19の面積を大きくすれば、何箇所でも取り付けができる。
【0068】
つまり、1個の端子部材19に複数本のリード線28を1箇所の接続部に半田付けをする場合は、1本目のリード線22,23を半田付けした後、2本目のリード線22,23を半田付けする時、1本目のリード線がはずれやすく、作業性が悪い。さらに、複数本のリード線が重なるので、膨れて邪魔になる。
【0069】
しかしながら、1個の端子部材19に複数本のリード線を複数箇所の接続部に半田付けする場合は、常に1本のリード線を1箇所の接続部に半田付けすることになり、リード線がはずれたり、半田付け部が膨れて邪魔になることはない。
【0070】
そして、端子部材19同士を接続するリード線22,23の全体を被覆材の上から別の保護部材29で覆うように構成してあるので、さらに、高分子抵抗体6,13,14間をつなぐ部分の強度も、リード線で構成される上に保護部材29で保護され、格段と強くすることができ、耐久的にも信頼性を向上することができるようになると共に、端子部材19を接続するリード線が露出することにより引っ掛かりやすくなって、面状発熱体を損ねたりする心配が無くなり、面状発熱体の生産性や施工性などを向上することができるようになる。
【0071】
さらに、この電極の配設パターンは、図1に示すように、中側に位置する主電極の中心から外に向けて配設した櫛形形状の複数の枝電極5dに、交互に位置するように、中側に位置する主電極5bを周囲から包囲するように位置させた外側に位置する主電極5aから内側に向けて配設した櫛形形状の複数の枝電極5dが配設してあり、外部からのストレスが多い外側に位置する主電極は閉回路の構成としてあるので、外側に位置する電極の一部が何らかの理由で亀裂や断線状態となっても、電気が回り込んで供給されるために、面状発熱体の発熱に大きな支障を与えることなく使用出来るようになり、面状発熱体の耐久性を大幅に向上することができるようになる。
【0072】
又、端子部材19の導電性樹脂材料19aが電極5,11,12に対して熱接着性を示すとともに、熱硬化性とした構成としてあるので、端子部材19の導電性樹脂材料19aが電極5,11,12に接合される前は未硬化の状態とし、面接合時に熱をかけることで接着が可能となり、リード線の取り付け時等の電極5,11,12に熱をかけた時に熱接着して硬化させることにより、その熱硬化の過程において、揮発分が除去されているので発泡せず、緻密な構造となり、十分な強度が得ら、導電性樹脂材料の本来の接着強度を発揮でき、簡単な構成で端子部材197が電極13に確実に面接合できるようになる。
【0073】
そして又、リード線の取り付け部に絶縁性保護材28を塗布し絶縁性保護処理を施した構成としてあるので、リード線の取り付け部から電極5及びこの電極5により給電される
高分子抵抗体6が絶縁性保護材に保護され、外気と遮断されて構成されるようになり、湿気や異物による汚染劣化や、電極13のマイグレーションによるショートなどの不具合を防止でき、より性能の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0074】
なお、端子部材の接着など複数の面状発熱体の説明をメイン発熱部で代表して説明したがこれは、他の右サイド発熱部と左サイド発熱部についても同様な効果が得られ、また、メイン発熱部と右サイド発熱部と左サイド発熱部の片側の電極をリード線で接続して複数の発熱部を電気的に一体化する構成で説明したが、これは両側の電極をリード線28aで接続してもよく、その他各部の構成も本発明の目的を達成する範囲であればその構成はどのようなものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明は複数の高分子抵抗体の電極をリード線で接続して複数の発熱部を電気的に一体化することにより、効果的に電極を配設出来るようにして、発熱体全体の暖房特性を維持しつつ、耐久性等の信頼性を向上することができ、使い勝手が大幅に向上するものであり、主に車輌に用いられるカーシートヒータやハンドルヒータ等の車輌用や暖房器具や加熱器具等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1における面状発熱装置の構成を示す平面図
【図2】同面状発熱装置の端子部近傍の断面図
【図3】(a)従来の発熱装置の構成を示す平面図、(b)同断面図
【図4】従来の面状発熱装置の被覆材の貼り合わせ時の概略構成図
【図5】従来の他の面状発熱装置を示す構成平面図
【符号の説明】
【0077】
4 電気絶縁性基材
5,11,12 電極
6,13,14 高分子抵抗体
7,15,16 被覆材
19,20,21 端子部材
19a 導電性樹脂材料
22,23 リード線
29 保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性基材上に印刷形成された電極、及びこの電極により給電される高分子抵抗体と、片面に前記電極の給電部に給電するリード線を接続し、もう一方の面に導電性樹脂材料を形成し前記電極に面接合するように構成した端子部材と、前記電極と端子部材、及び高分子抵抗体を覆い電気絶縁性基材と密着させて配設した被覆材とを備え、前記電気絶縁性基材上に高分子抵抗体と電極を複数配設するとともに、この複数配設した電極の所定位置に端子部材を配設し、それぞれの端子部材同士をリード線で接続し、1個の端子部材に複数本のリード線を接続する箇所は、複数箇所の接続部を設けて接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化するように構成した面状発熱装置。
【請求項2】
電気絶縁性基材上に高分子抵抗体と電極を複数配設すると共に、この複数配設した電極の所定位置に、端子部材を面接合し端子部材同士をリード線で接続して、電気的に複数の高分子抵抗体を一体化するように構成し、且つ、端子部材同士を接続するリード線の一部或いは全体を被覆材とは別の保護部材で覆うように構成した請求項1記載の面状発熱装置。
【請求項3】
電極のどちらか一方あるいは両方を閉回路となるように構成した請求項1〜2記載のいずれか1記載の面状発熱装置。
【請求項4】
端子部材の導電性樹脂材料が電極に対して熱接着性を示すとともに、熱硬化性とした請求項1〜3記載のいずれか1記載の面状発熱装置。
【請求項5】
リード線の取り付け部に絶縁性保護処理を施した請求項1〜4記載のいずれか1項記載の面状発熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−351459(P2006−351459A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178780(P2005−178780)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】