説明

面発光レーザ装置

【課題】消費電力が低い面発光レーザ装置を提供すること。
【解決手段】外部からの指令に従って演算を行い、該演算結果に従って電圧信号を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置に直接的に接続し、活性層を有し、前記演算処理装置に対する供給電圧と共通の電圧をバイアス電圧として前記電圧信号に重畳して生成した駆動電圧信号が前記活性層に供給される面発光レーザ素子と、を備える。好ましくは、前記バイアス電圧は、前記演算処理装置に供給されるコア電圧と共通の電圧である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、たとえば光インターコネクションにおいて使用される従来の面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。図6に示すように、この面発光レーザ装置400は、演算処理装置401と、面発光レーザ素子402と、演算処理装置401と面発光レーザ素子402との間に設けられたレーザ駆動装置403と、を備えている。
【0003】
演算処理装置401は、外部からの指令に従って演算を行い、その演算結果に従って差動電圧信号Vs401を出力する。また、演算処理装置401には、外部から供給電圧V401、V402が供給されている。供給電圧V401はたとえばI/O電圧の3.3V、供給電圧V402はたとえばコア電圧の1.5Vである。また、レーザ駆動装置403は、演算処理装置401が出力した差動電圧Vs401を増幅し、かつ供給されたバイアス電圧Vb401と重畳させて、駆動電圧信号Vd401として出力する。面発光レーザ素子402は、レーザ駆動装置403が出力した駆動電圧信号Vd401を供給されて、所望の波長のレーザ信号光を出力する。ここで、面発光レーザ素子402が出力するレーザ光は、その活性層の半導体材料のエネルギーバンドギャップに相当する波長を有している。また、面発光レーザ素子402に供給するためのバイアス電圧Vb401も、活性層の半導体材料のエネルギーバンドギャップに対応させたものとなる。たとえば、面発光レーザ素子のレーザ光の波長が850nm帯の場合は、通常3.3V程度のバイアス電圧Vb401が供給される。
【0004】
ここで、光インターコネクションの用途に限らず、面発光レーザ素子は、一層低消費電力であることが要求されている。このような低消費電力化を実現する方法として、活性層のエネルギーバンドギャップが一層低く、バイアス電圧を一層低くすることができる波長1000nm以上の面発光レーザ素子を用いる方法が検討されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.Suzuki et al., ”25-Gbps operation of 1.1-μm-range InGaAs VCSELs for high-speed optical interconnections”, OFA4, OFC2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の面発光レーザ装置は、面発光レーザ素子を低消費電力化しても、十分に低消費電力化できないという問題があった。すなわち、たとえば、図6に示す面発光レーザ装置400において、面発光レーザ素子402に供給すべきバイアス電圧をたとえば1.5Vに低減しても、レーザ駆動装置403には通常3.3V程度であるバイアス電圧Vb401を供給しているため、レーザ駆動装置403においてバイアス電圧Vb401を降圧して面発光レーザ素子402に供給しなければならない。その結果、レーザ駆動装置403において過剰に電力が消費されていた。さらに、通常、レーザ駆動装置403は、演算処理装置401が出力した差動電圧Vs401の変調振幅をたとえば±100mVから±200mVに増幅するために電力を消費している。その結果、たとえば面発光レーザ素子402の消費電力が100mW程度に低減されたとしても、レーザ駆動装置403の消費電力が500mW〜1Wと大きいため、面発光レーザ装置400全体としては十分に低消費電力化できなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、消費電力が低い面発光レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る面発光レーザ装置は、外部からの指令に従って演算を行い、該演算結果に従って電圧信号を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置に直接的に接続し、活性層を有し、前記演算処理装置に対する供給電圧と共通の電圧をバイアス電圧として前記電圧信号に重畳して生成した駆動電圧信号が前記活性層に供給される面発光レーザ素子と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る面発光レーザ装置は、外部からの指令に従って演算を行い、該演算結果に従って電圧信号を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置に接続し、活性層を有し、前記演算処理装置に対する供給電圧と共通の電圧をバイアス電圧として前記電圧信号に重畳して生成した駆動電圧信号を前記活性層に供給される面発光レーザ素子と、を備え、前記駆動電圧信号は、最大電圧が前記供給電圧の50%〜90%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る面発光レーザ装置は、上記の発明において、前記演算処理装置と前記面発光レーザ素子との間に設けられたレーザ駆動装置を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る面発光レーザ装置は、上記の発明において、前記バイアス電圧は、前記演算処理装置に供給されるコア電圧と共通の電圧であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る面発光レーザ装置は、上記の発明において、前記バイアス電圧は、前記面発光レーザ素子の活性層のエネルギーバンドギャップに対応させて、前記供給電圧から選択されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る面発光レーザ装置は、上記の発明において、前記電圧信号のピーク間電圧は200mV以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消費電力が低い面発光レーザ装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1に係る面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す面発光レーザ素子の模式的な断面図である。
【図3】図3は、図2に示す構造の面発光レーザ素子のI−V特性およびI−L特性を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係る面発光レーザ装置の模式的な斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態3に係る面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、従来の面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明に係る面発光レーザ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この面発光レーザ装置100は、演算処理装置101と、面発光レーザ素子102と、キャパシタ103a、103bと、インダクタ104とを備えている。
【0018】
演算処理装置101は、コア部101a、101bと、ROM部101cと、RAM部101dと、I/O部101eとを備えている。コア部101a、101bは、ROM部101cからプログラムを読み出し、I/O部101eから入力された外部からの指令に従って演算を行い、その演算結果に従って、I/O部101eからたとえば±100mVの振幅で変調された差動電圧信号Vs101を出力する。また、コア部101a、101bは、I/O部101eから入力された外部からの指令に従ってその他の演算も行ない、その演算結果をRAM部101dに書き出し、またI/O部101eから外部に出力する。また、演算処理装置101には、外部から供給電圧V101、V102が供給されている。供給電圧V102はインダクタ104を介して供給されている。供給電圧V101はたとえば3.3V、供給電圧V102はたとえば1.5Vである。供給電圧V101はI/O部101eに供給されるI/O電圧である。また、電圧V102はコア部101a、101bに供給されるコア電圧である。
【0019】
面発光レーザ素子102は、キャパシタ103a、103bを介して、演算処理装置101と直接的に接続している。そして、演算処理装置101が出力した差動電圧信号Vs101は、キャパシタ103a、103bを通過後に合成され、さらに演算処理装置101への供給電圧V102と共通の電圧をバイアス電圧Vb101として重畳される。これによって駆動電圧信号Vd101が生成され、生成された駆動電圧信号Vd101は面発光レーザ素子102に供給される。なお、キャパシタ103a、103bは、バイアス電圧Vb101の演算処理装置101への入力を防止し、インダクタ104は差動電圧信号Vs101の供給電圧V102の供給源への入力を防止している。
【0020】
そして、面発光レーザ素子102は、演算処理装置101に直接的に接続し、演算処理装置101が出力した差動電圧信号Vs101と、演算処理装置101への供給電圧V102と共通のバイアス電圧Vb101とを重畳した駆動電圧信号Vd101によって駆動し、所望の波長のレーザ信号光を出力する。このように、この面発光レーザ装置100は、レーザ駆動装置を用いず、すなわち演算処理装置101が出力した差動電圧信号Vs101を増幅せず、かつ供給電圧V102と共通のバイアス電圧Vb101を降圧せずに、駆動電圧信号Vd101を生成するようにしているので、レーザ駆動装置を用いた従来の面発光レーザ装置よりも大幅に消費電力が低いものとなる。
【0021】
なお、ここで、「面発光レーザ素子102が演算処理装置101に直接的に接続している」とは、演算処理装置101から出力された差動電圧信号Vs101が、レーザ駆動装置のような増幅、再生、降圧等を行なう装置を介さずに、直接的に面発光レーザ素子102に供給されるような接続が実現されている状態を意味し、差動電圧信号Vs101の特性を実質的に変化させないキャパシタ103a、103b等の素子が介挿されている場合を含むものである。
【0022】
つぎに、面発光レーザ素子102の具体的構成の一例について説明する。図2は、図1に示す面発光レーザ素子102の模式的な断面図である。
【0023】
図2に示すように、この面発光レーザ素子102は、基板1と、基板1上に形成された下部多層膜反射鏡である下部DBRミラー2と、バッファ層3と、n型コンタクト層4と、多重量子井戸構造を有する活性層5と、下部傾斜組成層6と、外周に位置する電流狭窄部7aと電流狭窄部7aの中心に位置する円形の電流注入部7bとを有する電流狭窄層7と、上部傾斜組成層8と、p型スペーサ層9と、p型電流経路層10と、p型スペーサ層11と、p型コンタクト層12とが順次積層した構造を有する。そして、活性層5からp型コンタクト層12までが円柱状のメサポストM1を構成している。
【0024】
基板1は、たとえばアンドープのGaAsからなる。また、下部DBRミラー2は、たとえばGaAs/Al0.9Ga0.1As層の34ペアからなる。また、バッファ層3は、たとえばアンドープのGaAsからなる。また、n型コンタクト層4は、たとえばn型GaAsからなる。また、活性層5は、たとえば1100nm帯のレーザ光用として、層数が3のInGaAs層と層数が4のGaAs障壁層が交互に積層した構造を有しており、最下層のGaAs障壁層はn型クラッド層としても機能する。また、電流狭窄層7については、たとえば電流狭窄部7aはAlからなり、電流注入部7bは、直径が6〜7μmであり、AlAsからなる。下部傾斜組成層6および上部傾斜組成層8は、たとえばAlGaAsからなり、厚さ方向において電流狭窄層7に近づくにつれてそのAl組成が段階的に増加するように構成されている。また、p型スペーサ層9、11とp型電流経路層10、p型コンタクト層12とは、たとえばそれぞれ炭素をドープしたp型、p型のGaAsからなる。なお、各p型またはn型層のアクセプタまたはドナー濃度はたとえば1×1018cm−3程度であり、p型層のアクセプタ濃度はたとえば1×1019cm−3以上である。なお、GaAsからなる各半導体層の屈折率は約3.45である。
【0025】
また、p型コンタクト層12上に、Pt/Tiからなり、中心に開口部13aを有するとともに、メサポストM1の外周と一致する外周を有するp側円環電極13が形成されている。p側円環電極13の外径は、たとえば30μmであり、開口部13aの内径は、たとえば11〜14μmである。
【0026】
また、p側円環電極13の開口部13a内には、たとえば誘電体である窒化珪素(SiN)からなる円板状の位相調整層14が形成されている。この位相調整層14は、光共振器を構成する下部DBRミラー2と上部DBRミラー15との間に形成される光の定在波の節や腹の位置を適正に調整する機能を有する。
【0027】
さらに、位相調整層14上からメサポストM1の外周にわたって誘電体からなる上部多層膜反射鏡である上部DBRミラー15が形成されている。上部DBRミラー15は、たとえばSiN/SiOの10〜12ペアからなるが、たとえばα−Si/SiOまたはα−Si/Alのペアを、その材料の屈折率に応じて99%程度の適切な反射率がえられるようなペア数にしたものでもよい。また、n型コンタクト層4は、メサポストM1の下部から上部DBRミラー15の外周側に延設しており、その表面にたとえばAuGeNi/Auからなる半円環状のn側電極16が形成されている。n側電極16は、たとえば外径が80μm、内径が40μmである。また、上部DBRミラー15が形成されていない領域には、表面保護のためにSiNなどの誘電体からなるパッシベーション膜17が形成されている。
【0028】
また、n側電極16に対して、パッシベーション膜17に形成された開口部を介して接触するように、Auからなる引き出し電極18が形成されている。一方、p側円環電極13に対しても、パッシベーション膜17に形成された開口部を介して接触するように、Auからなる引き出し電極18が形成されている。面発光レーザ素子102は、これらの引き出し電極18において、演算処理装置101と直接的に接続している。
【0029】
そして、面発光レーザ素子102は、引き出し電極18からn側電極16とp側円環電極13とを介して駆動電圧信号Vd101を印加し、電流を注入すると、電流は主に低抵抗のp型コンタクト層12とp型電流経路層10とを流れ、さらに電流経路が電流狭窄層7によって電流注入部7b内に狭窄されて、高い電流密度で活性層5に供給される。その結果、活性層5はキャリア注入されて自然放出光を発光する。自然放出光のうち、レーザ発振波長である1100nm帯の光は、下部DBRミラー2と上部DBRミラー15との間で定在波を形成し、活性層5によって増幅される。そして、注入電流がしきい値以上になると、定在波を形成する光がレーザ発振し、p側円環電極13の開口部13aから1100nm帯のレーザ信号光が出力する。
【0030】
なお、上述したように、面発光レーザ素子に供給するためのバイアス電圧は、活性層のエネルギーバンドギャップすなわちレーザ発振波長に対応させたものとする。必要なバイアス電圧は、この面発光レーザ素子102の場合、レーザ発振波長を1100nm(1.1μm)とすると、1.24/1.1すなわち約1.13Vであるから、バイアス電圧Vb101が1.5Vの場合にもこれを降圧させることなく直接的に使用することができる。なお、実際に印加すべきバイアス電圧は、レーザ発振波長に対応させた値に、さらに面発光レーザ素子の構造に起因する電圧降下を付加した値とする。
【0031】
なお、この面発光レーザ素子102は、上部DBRミラー15を誘電体で構成し、p側円環電極13から上部DBRミラーを通さないで活性層5に電流を注入している。その結果、従来のp型半導体からなる上部DBRミラーを通して電流を注入するものと比較して、電気抵抗および熱抵抗が小さくなるので、駆動電圧信号Vd101のバイアス電圧およびピーク間電圧が低くても、十分な消光比のレーザ光信号を出力することができる。
【0032】
図3は、図2に示す構造の面発光レーザ素子のバイアス電流−バイアス電圧(I−V)特性およびバイアス電流−レーザ光出力(I−L)特性を示す図である。なお、面発光レーザ素子の動作温度は25℃または90℃としている。図3において、線L1、L2がそれぞれ25℃、90℃におけるI−V曲線を示し、線L3、L4がそれぞれ25℃、90℃におけるI−L曲線を示している。図3に示すように、90℃においてレーザ出力が立ち上がる閾値近傍のバイアス電流において、立ち上がり部分のバイアス電圧は約1.2Vであり、バイアス電流をたとえば4mAとしても、1.5Vと低いバイアス電圧が得られている。
【0033】
なお、図3にも示されるように、面発光レーザ素子102の閾値バイアス電流や光出力等の特性は温度特性を有するため、たとえば閾値バイアス電流は使用温度(たとえば0℃〜90℃)において変化する。したがって、たとえば面発光レーザ素子102の温度変化に対応して電流振幅を調整する機能を持たせるようにすることが消費電力的に良い。
【0034】
また、たとえば、面発光レーザ素子102の閾値バイアス電流が、使用温度範囲の上限値においてもっとも低くなるように面発光レーザ素子102を設計してもよい。そうすると、面発光レーザ素子102の光出力は低温になるほど高くなるため、たとえば使用温度範囲の下限値において閾値バイアス電流が増加したとしても、バイアス電流を増加させることによって、上限値の温度の場合と同一の光出力を実現することができる。その結果、使用温度範囲における安定した光出力を、温度制御装置を使用せず一層の低消費電力で実現することができる。なお、上記のような面発光レーザ素子102の設計は、たとえば位相調整層14の厚さを適宜設定したり、活性層5の発光波長のピークと光共振器の反射中心波長とに差分を設けるという公知のデチューニング技術を適用したりする等の方法によって実現することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態1に係る面発光レーザ装置100は、従来の面発光レーザ装置よりも大幅に消費電力が低いものとなる。
【0036】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る面発光レーザ装置の模式的な斜視図である。この面発光レーザ装置200は、基板S上に搭載された、演算処理装置201と、面発光レーザ素子202と、キャパシタ203a、203bとを備えている。
【0037】
演算処理装置201は、図1に示す演算処理装置101と同様の構成を有する。また、キャパシタ203a、203bは、たとえばチップコンデンサである。また、面発光レーザ素子202は、図2に示す構造の面発光レーザ素子101が複数個だけ1次元的または2次元的に配列されたアレイ型の素子である。なお、基板Sには、演算処理装置201と面発光レーザ素子202とをキャパシタ203a、203bを介して直接的に接続するようにマイクロストリップラインが形成されている。演算処理装置201が出力した差動電圧信号は、このマイクロストリップラインによって、キャパシタ203a、203bを通過後に合成され、面発光レーザ素子202に供給される。
【0038】
また、演算処理装置201と面発光レーザ素子202とには、基板Sに形成された電源供給ラインLによって、共通の直流電圧が供給される。この共通の直流電圧は、演算処理装置201にはコア電圧として供給され、面発光レーザ素子202にはバイアス電圧として供給される。なお、このバイアス電圧は、演算処理装置201が出力した差動電圧信号と重畳されて、駆動電圧信号として面発光レーザ素子202に供給される。
【0039】
この面発光レーザ装置200も、演算処理装置201が出力した差動電圧信号を増幅せず、かつ供給電圧と共通のバイアス電圧を降圧せずに、駆動電圧信号を生成するようにしているので、大幅に消費電力が低いものとなる。
【0040】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る面発光レーザ装置について説明する。図5は、実施の形態3に係る面発光レーザ装置の構成を示すブロック図である。図5に示すように、この面発光レーザ装置300は、図1に示す面発光レーザ装置100と同様の演算処理装置101と、面発光レーザ素子102とを備え、さらに演算処理装置101と面発光レーザ素子102との間に設けられたレーザ駆動装置303と、を備えている。
【0041】
このレーザ駆動装置303は、演算処理装置101への供給電圧V102(たとえば1.5V)と共通の電圧を供給されている。このレーザ駆動装置303は、この供給された電圧をバイアス電圧として、演算処理装置101が出力した差動電圧信号Vs101と重畳させて、駆動電圧信号Vd101として面発光レーザ素子102に出力する。
【0042】
この面発光レーザ装置300は、レーザ駆動装置303を備えているものの、レーザ駆動装置303によって差動電圧信号Vs101の増幅は行なわない。また、レーザ駆動装置303は、駆動電圧信号Vd101の最大電圧が、供給電圧V102の50%〜90%になる程度にのみ降圧して、面発光レーザ素子102に供給する。このように、この面発光レーザ装置300は、差動電圧信号Vs101を増幅せず、供給電圧V102をあまり降圧せずに駆動電圧信号Vd101を生成するようにしているので、従来の面発光レーザ装置よりも大幅に消費電力が低いものとなる。
【0043】
なお、上記実施の形態において、面発光レーザ素子のバイアス電圧として、コア電圧を用いており、1.5Vとしているが、バイアス電圧は演算処理装置に供給される供給電圧であれば特に制限はされない。面発光レーザ素子の特性に整合させて、たとえば1.0V、1.2V、1.5V、1.8V、2.5V、3.3Vを適宜選択することができる。ただし、より低電圧であるたとえば1.0〜2.5Vのコア電圧をバイアス電圧とすることが好ましい。またさらに、バイアス電圧として使用できるコア電圧に応じて、コア電圧からできるだけ電圧降下させないように、面発光レーザ素子の活性層の材料、すなわちレーザ発振波長を選択することが好ましい。たとえば、バイアス電圧として1.2Vを使用する場合は、レーザ発振波長を1100nm帯から選択し、1.0Vを使用する場合は、1300nm帯から選択することが好ましい。
【0044】
また、演算処理装置が出力する電圧信号は、差動信号に限らず、シングルエンド信号でもよい。なお、電圧信号のピーク間電圧としては、200mV以下であれば、演算処理装置の消費電力の大幅な増加が防止されるので好ましい。
【0045】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態3に係る面発光レーザ装置において、実施の形態2のようなアレイ型の面発光レーザ素子を適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 下部DBRミラー
3 バッファ層
4 n型コンタクト層
5 活性層
6 下部傾斜組成層
7 電流狭窄層
7a 電流狭窄部
7b 電流注入部
8 上部傾斜組成層
9、11 p型スペーサ層
10 p型電流経路層
12 p型コンタクト層
13 p側円環電極
13a 開口部
14 位相調整層
15 上部DBRミラー
16 n側電極
17 パッシベーション膜
18 引き出し電極
100〜300 面発光レーザ装置
101、201 演算処理装置
102、202 面発光レーザ素子
103a、103b、203a、203b キャパシタ
104 インダクタ
101a、101b コア部
101c ROM部
101d RAM部
101e I/O部
303 レーザ駆動装置
L 電源供給ライン
L1〜L4 線
M1 メサポスト
S 基板
Vs101 差動電圧信号
V101、V102 供給電圧
Vb101 バイアス電圧
Vd101 駆動電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの指令に従って演算を行い、該演算結果に従って電圧信号を出力する演算処理装置と、
前記演算処理装置に直接的に接続し、活性層を有し、前記演算処理装置に対する供給電圧と共通の電圧をバイアス電圧として前記電圧信号に重畳して生成した駆動電圧信号が前記活性層に供給される面発光レーザ素子と、
を備えることを特徴とする面発光レーザ装置。
【請求項2】
外部からの指令に従って演算を行い、該演算結果に従って電圧信号を出力する演算処理装置と、
前記演算処理装置に接続し、活性層を有し、前記演算処理装置に対する供給電圧と共通の電圧をバイアス電圧として前記電圧信号に重畳して生成した駆動電圧信号を前記活性層に供給される面発光レーザ素子と、
を備え、前記駆動電圧信号は、最大電圧が前記供給電圧の50%〜90%であることを特徴とする面発光レーザ装置。
【請求項3】
前記演算処理装置と前記面発光レーザ素子との間に設けられたレーザ駆動装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の面発光レーザ装置。
【請求項4】
前記バイアス電圧は、前記演算処理装置に供給されるコア電圧と共通の電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の面発光レーザ装置。
【請求項5】
前記バイアス電圧は、前記面発光レーザ素子の活性層のエネルギーバンドギャップに対応させて、前記供給電圧から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ装置。
【請求項6】
前記電圧信号のピーク間電圧は200mV以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の面発光レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228533(P2011−228533A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98042(P2010−98042)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】