説明

面発光型半導体レーザおよびその製造方法

【課題】簡易かつ安価に製造可能であり、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することの可能な面発光型半導体レーザを提供する。
【解決手段】基板10上に、下部第1DBR層12、下部第2DBR層13、下部クラッド層14、活性層15、上部クラッド層16、電流狭窄層17、上部DBR層18およびコンタクト層19がこの順に積層された積層構造20を備える。下部第1DBR層12は、電流注入領域17Bとの対向領域のうち一の領域に酸化部30を有しており、酸化部30の不均一な分布に対応した異方的な応力が活性層15に発生し、さらに、基本横モードの光場強度分布が酸化部30の方向に引き寄せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面からレーザ光を射出する面発光型半導体レーザおよびその製造方法に係り、特に、偏光方向の安定した光出力が要求される用途に好適に適用可能な面発光型半導体レーザおよびその製造方法に関する。
【0002】
面発光型半導体レーザは、従来の端面射出型のものとは異なり、基板に対して直交する方向に光を射出するものであり、同じ基板上に2次元アレイ状に多数の素子を配列することが可能であることから、近年、デジタルコピー機やプリンタ機用の光源として注目されている。
【0003】
従来、この種の面発光型半導体レーザは、半導体基板上に一対の多層膜反射鏡が形成されており、その対の多層膜反射鏡の間に発光領域となる活性層を有している。そして、一方の多層膜反射鏡には、活性層への電流注入効率を高め、しきい値電流を下げるために、電流注入領域を狭めた構造を有する電流狭窄層が設けられている。また、下面側にはn側電極、上面側にはp側電極がそれぞれ設けられ、p側電極にはレーザ光を射出するために光射出口が設けられている。この面発光型半導体レーザでは、電流は電流狭窄層により狭窄されたのち活性層に注入され、ここで発光し、これが一対の多層膜反射鏡で反射を繰り返しながらレーザ光としてp側電極の光射出口から射出される。
【0004】
ところで、上記した面発光型半導体レーザは、一般に、素子のばらつきにより偏光方向がばらついてしまう不均一性や、出力や環境温度により偏光方向が変化してしまう不安定性を有している。そのため、このような面発光型半導体レーザをミラーやビームスプリッタといった偏波依存のある光学素子に対して適用する場合、例えば、デジタルコピー機やプリンタ機用の光源として用いる場合には、偏光方向のばらつきが像の結像位置や出力に差異を生じさせ、にじみや色むらが発生してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題に対して、面発光型半導体レーザの内部に偏光制御機能を設け、偏光方向を一方向に安定化させる技術がいくつか報告されている。
【0006】
例えば、そのような技術の1つとして、(311)面を法線とし、ガリウムヒ素(GaAs)からなる特殊な傾斜基板を用いるものがある。このように特殊な傾斜基板を用いて面発光型半導体レーザを構成した場合、[−233]方向に対する利得特性が高くなり、レーザ光の偏光方向をこの方向に制御することが可能となる。また、レーザ光の偏光比も非常に高いものであり、面発光型半導体レーザの偏光方向を一方向に安定化させるために有効な技術である。
【0007】
また、特許文献1には、ポスト断面のサイズを光のモードサイズよりも小さくすることにより偏光を制御する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、光射出口から射出されるレーザ光の特性に影響の及ばないような金属コンタクト層の一部に不連続部を形成し、不連続部の境界に対して平行方向をなす偏光を得る技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特許第2891133号公報
【特許文献2】特表2001−525995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した傾斜基板は、(311)面を法線とする特殊な基板であるため、標準的な基板である(001)面基板などと比較して非常に高額なものである。また、このように特殊な傾斜基板を用いた場合、成長温度、ドーピング条件およびガス流量などのエピタキシャル成長条件も、(001)面基板の場合と全く異なるため、簡易に製造するのが困難である。
【0011】
また、上記特許文献1では、ポスト断面のサイズを光のモードサイズよりも小さくしているので、光出力が1mW程度と低くなってしまい、デジタルコピー機やプリンタ機用の光源のような高出力の要求される用途には適さない。
【0012】
また、上記特許文献2では、実施例として、光射出口の縁部から7μm離れた位置に4.0〜4.5μmの深さの溝(不連続部)を形成したものが記載されており、これにより溝に対して平行方向をなす偏光が得られたとしている。しかしながら、共振領域の短辺側の距離を回折損失効果が生じる程度まで小さくしなければ偏光方向を一方向に安定化させることができないため、回折損失効果が得られないような範囲(短辺側の距離が7μm)で形成された不連続部によっては、安定化させることができないと思われる。
【0013】
このように、従来の技術では、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化することが可能な高出力の面発光型半導体レーザを、簡易かつ安価に製造するのが困難であった。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易かつ安価に製造可能であり、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することの可能な面発光型半導体レーザおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の面発光型半導体レーザは、基板上に、第1多層膜反射鏡、活性層および第2多層膜反射鏡を基板側からこの順に含む積層構造を備えたものである。第1多層膜反射鏡および第2多層膜反射鏡の少なくとも一方は、電流注入領域と、電流注入領域を積層面内方向から囲む環状の電流狭窄領域とを含む電流狭窄層を有している。また、第1多層膜反射鏡および第2多層膜反射鏡の少なくとも一方は、電流狭窄領域との対向領域のうち一の領域に酸化部を有している。
【0016】
本発明の面発光型半導体レーザでは、第1多層膜反射鏡および第2多層膜反射鏡の少なくとも一方において、電流狭窄領域との対向領域のうち一の領域に酸化部が設けられている。これにより、酸化部による異方的な応力が活性層に発生するので、応力の向きと直交する方向の偏光成分が強められる一方、応力の向きと平行な方向の偏光成分が抑制される。これにより、レーザ光の偏光成分が一方向に固定される。さらに、基本横モードの光場強度分布が酸化部の方向に引き寄せられ、基本横モードの光場強度分布のピーク位置が電流注入領域の端縁の位置、ひいてはキャリア密度分布のピーク位置に近づくので、基本横モードのゲインを増大させることができる。
【0017】
本発明の面発光型半導体レーザの製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を含むものである。
(A)基板上に、第1多層膜反射鏡、活性層および第2多層膜反射鏡を基板側からこの順に含む積層構造を形成する工程
(B)積層構造の上面に、一カ所だけ幅の広い環状の開口部を有する被覆層を形成する工程
(C)被覆層をマスクとしてドライエッチングすることにより、積層構造に、開口部の幅に応じた不均一な深さの溝部を形成する工程
(D)溝部の側面を酸化することにより、第1多層膜反射鏡および第2多層膜反射鏡の少なくとも一方に、溝部の深さに対応して不均一に分布する酸化部を形成する工程
【0018】
本発明の面発光型半導体レーザの製造方法では、ドライエッチングにより開口部の幅に応じた不均一な深さの溝部が形成され、その後の酸化により溝部の深さに対応して不均一に分布する酸化部が形成される。これにより、酸化部による異方的な応力が活性層に発生するので、応力の向きと直交する方向の偏光成分が強められる一方、応力の向きと平行な方向の偏光成分が抑制される。これにより、レーザ光の偏光成分が一方向に固定される。さらに、基本横モードの光場強度分布が酸化部の方向に引き寄せられ、基本横モードの光場強度分布のピーク位置がキャリア密度分布のピーク位置に近づくので、基本横モードのゲインを増大させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の面発光型半導体レーザによれば、第1多層膜反射鏡および第2多層膜反射鏡の少なくとも一方において、電流狭窄領域との対向領域のうち一の領域に酸化部を設けるようにしたので、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することができる。また、基板は(n11)面基板(nは整数)などの特殊な基板である必要はなく、(100)面基板でもかまわないので、簡易かつ安価に製造することができる。
【0020】
本発明の面発光型半導体レーザの製造方法によれば、ドライエッチングにより開口部の幅に応じた不均一な深さの溝部を形成し、その後の酸化により溝部の深さに対応して不均一に分布する酸化部を形成するようにしたので、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することができる。また、基板は(n11)面基板(nは整数)などの特殊な基板である必要はなく、(100)面基板でもかまわないので、簡易かつ安価に製造することができる。
【0021】
このように、本発明の面発光型半導体レーザおよびその製造方法によれば、簡易かつ安価に製造可能であり、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係る面発光型の半導体レーザ1の上面図を表したものである。図2は図1の半導体レーザ1のA−A矢視方向の断面構成を、図3は図1の半導体レーザ1のB−B矢視方向の断面構成をそれぞれ表したものである。図4は下部DBR層11(後述)の断面構成の一例を表したものである。図5は図1の半導体レーザ1を上面から透かして見たときの、電流狭窄層17および酸化部30(後述)の平面構成を表したものである。なお、図1ないし図4は模式的に表したものであり、実際の寸法、形状とは異なっている。
【0024】
本実施の形態の半導体レーザ1は、基板10の一面側に、下部DBR層11、下部スペーサ層14、活性層15、上部スペーサ層16、電流狭窄層17、上部DBR層18およびコンタクト層19をこの順に積層してなる積層構造20(垂直共振器)を備えている。この積層構造20の上部、具体的には、下部DBR層11の一部、下部スペーサ層14、活性層15、上部スペーサ層16、電流狭窄層17、上部DBR層18およびコンタクト層19には、例えば幅20μm程度の円柱状のメサ部21と、そのメサ部21を取り囲む溝部22とがそれぞれ形成されている。
【0025】
なお、本実施の形態では、下部DBR層11が本発明の「第1多層膜反射鏡」の一具体例に相当し、電流狭窄層17および上部DBR層18が本発明の「第2多層膜反射鏡」の一具体例に相当する。
【0026】
溝部22は不均一な幅を有する環状の溝であり、その溝の幅に応じた(比例した)不均一な深さを有している。具体的には、図1に示したように、溝部22は、径方向の幅がLy、周回方向の幅がLxの溝22Aと、この溝22Aに連通し、かつ径方向の幅がΔRの溝22Bとを有している。つまり、溝部22は、一カ所だけ幅の広い箇所を有している。
【0027】
溝22Aは下部DBR層11の下部第1DBR層12(後述)にまで達する深さD1(図2参照)を有している。他方、溝22Bは下部第1DBR層12の内部にまで達しない深さD2(図3参照)を有している。すなわち、溝22Bの深さD2は溝22Aの深さD1よりも浅くなっており、その結果、メサ部21の高さが溝部22の深さに対応して不均一となっており、メサ部21の側面に露出する層構成が溝部22の深さに対応して相違している。なお、図3には、溝22Bが下部DBR層11の下部第2DBR層13(後述)にまで達している場合が例示されている。
【0028】
ここで、LxおよびLyは、後述のエッチング速度が遅くならない程度の大きさであることが好ましく、5μm以上であることが好ましい。また、ΔRはLxおよびLyより小さく、後述のローディング効果により溝22Bのエッチング速度が溝22Aのそれよりも遅くなる程度の大きさであることが好ましく、1μm以上3μm以下であることが好ましく、2μmであることがより好ましい。
【0029】
基板10は、例えばn型GaAs基板であり、このGaAs基板は、例えば(100)面基板であることが好ましいが、(n11)面基板(nは整数)などの特殊な基板であってもよい。
【0030】
下部DBR層11は、下部第1DBR層12および下部第2DBR層13を基板10側からこの順に積層した構造を有している。なお、本実施の形態では、下部第1DBR層12が本発明の「第3多層膜反射鏡」の一具体例に相当し、下部第2DBR層13が本発明の「第4多層膜反射鏡」の一具体例に相当する。
【0031】
下部第1DBR層12は、例えば、図4に示したように、低屈折率層12Aおよび高屈折率層12Bを1組として、それを複数組分積層して構成されたものである。低屈折率層12Aは例えば厚さがλ/4n(λは発振波長、nは屈折率)のn型Alx1Ga1−x1Asからなり、高屈折率層12Bは例えば厚さがλ/4n(nは屈折率)のn型Alx2Ga1−x2Asからなる。下部第2DBR層13は、例えば、低屈折率層13Aおよび高屈折率層13Bを1組として、それを複数組分積層して構成されたものである。低屈折率層13Aは例えば厚さがλ/4n(nは屈折率)のn型Alx3Ga1−x3Asからなり、高屈折率層12Bは例えば厚さがλ/4n(nは屈折率)のn型Alx4Ga1−x4Asからなる。なお、n型不純物としては、例えばケイ素(Si)またはセレン(Se)などが挙げられる。
【0032】
ここで、下部DBR層11内のAl組成の値x1〜x4は以下の式を満たす。これにより、下部第1DBR層12の低屈折率層12Aは下部第2DBR層13の低屈折率層13Aよりも酸化され易く、電流狭窄層17と同等かそれよりも酸化されにくい性質を有している。
【0033】
1≧x9≧x1>(x3,x10)>0.8>(x2,x4)≧0…(1)
【0034】
式(1)中の(x3,x10)はx3またはx10を意味し、(x2,x4)はx2またはx4を意味する。また、x9は電流狭窄層17を構成する材料に含まれるAl組成の値であり、x10は上部DBR層18の低屈折率層を構成する材料に含まれるAl組成の値である。また、0.8は低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との境界に対応するものである。
【0035】
ところで、本実施の形態では、下部第1DBR層12の各低屈折率層12Aのうち電流狭窄領域17A(後述)との対向領域の一の領域に酸化部30が形成されている。この酸化部30は、図2、図4に示したように、複数の酸化層30Aの積層構造となっており、メサ部21の側面から、電流注入領域17B(後述)の端縁との対向領域にまで達しない範囲内に形成されると共に、溝部22のうち深さが深い方の溝22Aに対応して形成されている。つまり、酸化部30は電流狭窄領域17Aとの対向領域内の一カ所に偏在して分布しており、その分布に応じた不均一な応力を活性層15に発生させるようになっている。
【0036】
酸化層30Aは、Al(酸化アルミニウム)を含んで構成されており、後述するように、メサ部21(溝部22)の側面側から低屈折率層12Aに含まれる高濃度のAlを酸化することにより得られるものである。従って、各酸化層30Aは下部DBR層11内において高屈折率層12Bを介して積層配置された多層膜を構成する。なお、メサ部21の側面のうち溝22Bと対向する部分には下部第1DBR層12が露出していないので、その部分のうち溝22Aと隣接する部分を除いた部分には酸化層30Aは分布していない。
【0037】
ところで、下部第1DBR層12の低屈折率層12Aは上記の構成に限られるものではなく、例えば、その光学厚さをλ/4に保った上で、図6(B)に示したような構成をとることも可能である。図6(B)に示したように、Alx5Ga1−x5Asからなる第1屈折率層12CおよびAlx6Ga1−x6Asからなる第2屈折率層12Dを基板10側からこの順に積層して構成した場合には、Al組成の値x2〜x6は以下の式(2)を満たす値に設定される。また、このようにした場合には、酸化層30Aは、積層構造20内で生じる定在波の腹P1(図6(A)参照)に対応する部分またはその近傍に位置する第2屈折率層12D内に形成されることになる。
【0038】
1≧x6=x9>(x5,x3,x10)>0.8>(x2,x4)≧0…(2)
【0039】
なお、式(2)中の(x6,x3,x10)はx6、x3またはx10を意味する。
【0040】
下部スペーサ層14は、例えばAlx7Ga1−x7As(0<x7<1)からなる。活性層15は、例えばGaAs系材料からなる。この活性層15では、後述の電流注入領域17Bと対向する領域が発光領域15Aとなり、その発光領域15A(電流注入領域17B)の端縁またはその近傍がキャリア密度分布のピークと対応している。上部スペーサ層16は、例えばAlx8Ga1−x8As(0<x8<1)からなる。これら下部スペーサ層14、活性層15および上部スペーサ層16は、不純物が含まれていないことが望ましいが、p型またはn型不純物が含まれていてもよい。p型不純物としては、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)などが挙げられる。
【0041】
電流狭窄層17は、メサ部21の側面から所定の深さまでの領域に電流狭窄領域17Aを有し、それ以外の領域(メサ部21の中央領域)が電流注入領域17Bとなっている。電流注入領域17Bは、例えばp型Alx9Ga1−x9As(0<x9≦1)からなる。電流狭窄領域17Aは、例えば、Al(酸化アルミニウム)を含んで構成され、後述するように、側面から被酸化層17Dに含まれる高濃度のAlを酸化することにより形成されるものである。従って、電流狭窄層17は電流を狭窄する機能を有している。
【0042】
また、電流注入領域17Aは、例えば、[011]方向および[01−1]方向に、対角線を有する四辺形(例えば菱形)状となっており、面内異方性を有している。このように電流注入領域15Bが[011]方向および[01−1]方向に対角線を有する四辺形となるのは、例えば、Alx7Ga1−x7Asの酸化速度が、[011]方向および[01−1]方向と、これらの方向と45度の角度をなす[001]方向および[010]方向とで異なるからである。ここで、電流注入領域17Aの幅(対角線の長さ)Doxは、高次横モード発振を抑制したい場合には、3μm以上8μm以下であることが好ましい。さらに、より一層高次横モード発振を抑制したい場合には、3μm以上5μm以下であることが好ましい。なお、電流注入領域17Bは、円形状となっていてもよい。また、電流狭窄層17は、積層構造20内で生じる定在波の節P2(図6参照)に対応する部分またはその近傍に形成されていることが好ましい。
【0043】
上部DBR層18は、低屈折率層および高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成されたものである。低屈折率層は例えば厚さがλ/4n(nは屈折率)のp型Alx10Ga1−x10As(0<x10<1)からなり、高屈折率層は例えば厚さがλ/4n(nは屈折率)のp型Alx11Ga1−x11As(0<x11<1)からなる。コンタクト層19は、例えばp型GaAsからなる。
【0044】
メサ部21の上面(コンタクト層19の上面)には、電流注入領域17Bとの対向領域に開口(光射出口24A)を有する環状の上部電極24が形成されており、メサ部21の側面および周辺の表面には、保護膜23が形成されている。保護膜23の表面上には、ワイヤ(図示せず)をボンディングするための上部電極パッド25と、接続部26とが設けられており、この上部電極パッド25と上部電極24とが、溝22B内に形成された接続部26を介して互いに電気的に接続されている。また、基板10の裏面には、下部電極27が設けられている。
【0045】
ここで、保護膜23は、例えば酸化物または窒化物などの絶縁材料からなる。上部電極24および上部電極パッド25は、例えば、チタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)をこの順に積層して構成されたものであり、メサ部21上部のコンタクト層19と電気的に接続されている。接続部26は、例えばめっきにより形成されている。下部電極27は、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金,ニッケル(Ni)および金(Au)とを基板10側から順に積層した構造を有しており、基板10と電気的に接続されている。
【0046】
また、本実施の形態では、上部電極24の開口内、すなわち、光射出口24Aに、横モード調整部50が設けられている。この横モード調整部50は、積層構造20の上面(コンタクト層19の上面)に接して設けられており、第1調整層51と、第2調整層52と、第3調整層53とを含んで構成されている。
【0047】
ここで、第1調整層51は、膜厚が(2a−1)λ/4n(aは1以上の整数,nは屈折率)で、屈折率nが積層構造20の最上層(例えばコンタクト層19)の屈折率より低い物質、例えばSiO(酸化シリコン)などの誘電体からなる。第2調整層52は、具体的には、膜厚が(2b−1)λ/4n(bは1以上の整数,nは屈折率)で、屈折率nが第1調整層51の屈折率nより高い材料、例えばSiN(窒化シリコン)などの誘電体からなる。従って、第1調整層51および第2調整層52からなる積層構造は、活性層15からの光を高反射率で反射する機能を有しており、横モード調整部50における高反射率領域に対応している。
【0048】
また、第3調整層53は、膜厚が(2c−1)λ/4n(cは1以上の整数,nは屈折率)で屈折率nが第1調整層51の屈折率nより高い材料、例えばSiN(窒化シリコン)などの誘電体からなる。従って、第3調整層53は、活性層15からの光を、第1調整層51および第2調整層52からなる積層構造よりも低い反射率で反射する機能を有しており、横モード調整部50における低反射率領域に対応している。
【0049】
なお、第2調整層52および第3調整層53は、同一の膜厚および材料により構成されていることが好ましい。後述のように、これらの層を一括形成することができ、製造工程を簡略化することができるからである。
【0050】
ところで、本実施の形態では、第1調整層51および第2調整層52からなる積層構造は、例えば図1の破線で示したように、円形状となっており、電流注入領域17Bの中央から酸化部30側にずれて設けられている。ここで、電流注入領域17Bが四辺形状となっている場合には、酸化部30が、電流注入領域17Bの一の対角線を延長した線上にずれて設けられていることが好ましい。第1調整層51および第2調整層52からなる積層構造の幅(直径)Hrは、電流注入領域17Bの幅(または対角線の長さ)をDoxとすると、以下の式(3),(4)を満たす範囲であることが好ましい。また、第1調整層51および第2調整層52からなる積層構造の中心と、電流注入領域17Bの中心との差分(ずれ量)は、1μm程度であることが好ましい。
【0051】
3μm≦Hr≦5μm…(3)
0.4≦Hr/Dox≦0.7…(4)
【0052】
本実施の形態に係る半導体レーザ1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0053】
図7(A),(B)〜図9(A),(B)は、その製造方法を工程順に表したものである。なお、図7(A)、図8(A)および図9(A)は製造過程の素子を図1のA−A矢視方向と同一の方向で切断した断面の構成を、図7(B)は図7(A)の上面構成を、図8(B)は図8(A)の上面構成を、図9(B)は図9(A)の上面構成をそれぞれ表したものである。
【0054】
ここでは、GaAsからなる基板10上の化合物半導体層を、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属化学気相成長)法により形成する。この際、III−V族化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMIn)、アルシン (AsH3)を用い、ドナー不純物の原料としては、例えば、HSeを用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば、ジメチルジンク(DMZ)を用いる。
【0055】
まず、基板10上に、下部第1DBR層12、下部第2DBR層13、下部スペーサ層14、活性層15、上部スペーサ層16、被酸化層17D,上部DBR層18およびコンタクト層19をこの順に積層したのち、コンタクト層19の表面に、不均一な幅を有する環状の開口Wを有するレジスト層Rを形成する(図7(A),(B))。この開口Wは、具体的には、径方向の幅がLy、周回方向の幅がLxの開口W1と、これに連通して、径方向の幅がΔRの円弧状の開口W2とからなる。
【0056】
次に、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)法により、コンタクト層19側からエッチングする。すると、開口Wの不均一な幅によってローディング効果が発生し、幅の狭い開口W2におけるエッチング速度が幅の広い開口W1におけるそれよりも遅くなる。その結果、開口W1に対応して深さD1の溝22Aが形成され、開口W2に対応して深さD2の溝22Bが形成される(図8(A),(B))。このようにして、溝22Aおよび溝22Bを形成することにより、これらの溝22Aおよび溝22Bに囲まれた部分にメサ部21が形成される。
【0057】
次に、水蒸気雰囲気中において、高温で酸化処理を行い、溝部22の内側から低屈折率層12Aおよび被酸化層17DのAlを選択的に酸化する。これにより被酸化層17Dおよび低屈折率層12Aの外縁領域が絶縁層(酸化アルミニウム)となり、電流狭窄層17および酸化部30が形成される(図9(A),(B))。
【0058】
このように、不均一な幅を有する環状の開口Wを有するレジスト層Rを利用してローディング効果を発生させることにより、一度のエッチングプロセスにより不均一な深さの溝部22を形成することができる。また、この不均一な深さの溝部22を利用して酸化処理を行うことにより電流狭窄層17と酸化部30とを同時かつ容易に形成することができる。
【0059】
次に、メサ部21の表面を含む表面全体に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition) 法により前述の誘電体を堆積させたのち、メサ部21上面のうち第1調整層51を形成する領域に対応する部分が残るように、堆積させた誘電体をエッチングにより選択的に除去する。これにより第1調整層51が形成される。
【0060】
次に、上記と同様の方法を用いて、第1調整層51上に第2調整層52を形成したのち、メサ部21上面のうち第1調整層51以外の領域に第3調整層53を形成し、さらに、メサ部21側面と、メサ部21周辺の表面に保護膜23を形成する。なお、上記誘電体は積層構造20の最上層の半導体に対して優れた選択性を有しており、さらに複雑な形状とする必要がないことから、エッチングにより第1調整層51を容易に形成することができる。
【0061】
なお、第2調整層52、第3調整層53および保護膜23を同一の膜厚および材料により構成する場合には、製造工程の簡略化の点から、これらの層を一括形成することが好ましい。
【0062】
次に、例えば真空蒸着法により、表面全体に前述の金属材料を積層させたのち、例えば選択エッチングによりメサ部21上面の中央領域に開口を有する上部電極24を形成すると共に、メサ部21周辺の表面上に上部電極パッド25および接続部26を形成する。
【0063】
次いで、基板10の裏面を適宜研磨してその厚さを調整した後、この基板10の裏面に下部電極24を形成する。このようにして、本実施の形態の半導体レーザ1が製造される。
【0064】
ところで、上記の製造工程において、エッチング時間を変化させて溝22Aの深さD1を変化させると、溝22Aの内面に露出する低屈折率層12Aの層数が変化する。従って、エッチング時間を長くして溝22Aの深さD1を深くすると、露出する低屈折率層12Aの層数が多くなり、逆にエッチング時間を短くして溝22Aの深さD1を浅くすると、露出する低屈折率層12Aの層数が少なくなる。このとき、溝22Bの深さD2もエッチング時間に応じて変化するが、上記した範囲内で変化させた場合には、溝22Bの内面には低屈折率層12Aが露出することはないので、低屈折率層12Aのうち溝22Bと対向する部分はほとんど酸化される虞はなく、溝22B同士が互いに対向する方向の応力が活性層15に発生する虞はない。従って、溝22Aの深さD1が浅くても溝22A同士が互いに対向する方向の応力を活性層15に発生させることが可能であり、また、溝22Aの深さD1に応じて(比例して)、溝22A同士が互いに対向する方向の応力を大きくすることができる。つまり、活性層15に発生させる異方的な応力の大きさを自由に設定することが可能である。
【0065】
また、図6(B)に例示したように、低屈折率層12AをAl組成の高い層と低い層との積層構造とした場合には、これらの層のAl組成を一定にした状態でこれらの層の厚さを変化させることにより、低屈折率層12Aの酸化速度を自由に制御することができる。そして、例えば、低屈折率層12Aを単一の層とした場合と同等の酸化速度にすることも可能であることから、低屈折率層12Aを単一の層とした場合に、下部DBR層11内のAl組成の値x1〜x4を、式(1)を満たすようにしたときと同様、低屈折率層12Aを低屈折率層13Aよりも酸化され易く、電流狭窄層17と同等かそれよりも酸化されにくい性質にすることができる。
【0066】
また、例えば、低屈折率層12AのうちAl組成の高い層のAl組成の値を電流狭窄層17のAl組成の値と同じにし、さらに低屈折率層12AのうちAl組成の低い層のAl組成の値を上部DBR層18の低屈折率層のAl組成の値と同じにすることも可能である。そして、そのようにした場合には、低屈折率層12Aを形成する際に、電流狭窄層17や上部DBR層18を製造する際に用いるドーピング条件およびガス流量などのエピタキシャル成長条件を利用することができるので、低屈折率層12Aを簡易に製造することができる。
【0067】
次に、本実施の形態の半導体レーザ1の作用および効果について説明する。
【0068】
本実施の形態の半導体レーザ1では、下部電極27と上部電極24との間に所定の電圧が印加されると、電流狭窄層17における電流注入領域17Bを通して活性層15に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この光は、一対の下部DBR層11および上部DBR層18により反射され、所定の波長でレーザ発振を生じ、レーザビームとして外部に射出される。
【0069】
ところで、本実施の形態では、下部DBR層11の下部第1DBR層12のうち電流狭窄領域17Aとの対向領域のうち一の領域(一箇所)に酸化部30が設けられている。これにより、酸化部30による応力が活性層15に不均一に発生するので、応力の向きと直交する方向の偏光成分が強められる一方、応力の向きと平行な方向の偏光成分が抑制される。その結果、レーザ光の偏光成分が一方向に固定される。さらに、図10(A)〜(E)に示したように、基本横モードの光場強度分布が酸化部30の方向に引き寄せられ、基本横モードの光場強度分布のピーク位置が電流注入領域17Bの端縁の位置、ひいてはキャリア密度分布のピーク位置に近づくので、基本横モードのゲインを増大させることができる。なお、図10(A)〜(E)は、横モード調整層50、電流狭窄層17および酸化部30と、キャリア密度分布および光場強度分布との関係を模式的に表したものである。従って、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することができる。
【0070】
また、図6(B)に例示したように、低屈折率層12Aを2層で構成し、Al組成の高い層を、積層構造20内で生じる定在波の腹P1に対応する部分またはその近傍に設けた場合には、屈折率の非対称性が強くなり、基本横モードの光場強度分布のピーク位置がより一層キャリア密度分布のピーク位置に近づくので、基本横モードのゲインをさらに増大させることができる。これにより、基本横モードの発振強度をさらに大きくすることができる。
【0071】
ところで、本実施の形態では、上記したように、基板は(n11)面基板(nは整数)などの特殊な基板である必要はなく、一般的な(100)面基板でもかまわないので、一般的な(100)面基板のドーピング条件およびガス流量などのエピタキシャル成長条件を用いることができる。これにより、簡易かつ安価に製造することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、酸化層30Aの層数を増やせば増やす程、異方的な応力を大きくすることができるので、活性層15に大きな応力を与えるために発光領域15Aと対応する領域にまで酸化部30を設ける必要はない。これにより、酸化部30によって光出力が低下する虞はほとんどなく、高出力のレーザ光を射出することができる。
【0073】
従って、本実施の形態では、半導体レーザ1を簡易かつ安価に製造可能であり、レーザ光の偏光方向を一方向に安定化すると共に高出力化することができる。
【0074】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態等では、上部電極24と上部電極パッド25とを連結する接続部26が溝22B内に形成されていたが、例えば図11、図12に示したように、溝22A内に形成されていてもよい。このとき、例えば図11、図12に示したように、コンタクト層19および上部電極24が積層構造20の上面のうち酸化部30との対向領域側の一の領域(例えば溝22A側の端縁)にだけ形成されていることが好ましい。このようにした場合には、図13(A)〜(E)に示したように、基本横モードの光場強度分布のピーク位置により効率的に電流を注入することができるので、基本横モードの発振強度を極めて大きくすることができる。
【0076】
また、上記実施の形態等では、上面側から見た溝22Aの形状がほぼ四辺形状となっていたが、例えば、図14に示したように扇形状としたり、図15に示したように釘の断面のような形状としたりすることも可能である。
【0077】
また、上記実施の形態等では、基板10上にメサ部21を1つだけ設けた場合について説明したが、複数のメサ部21をアレイ状に配置してもよい。例えば、図16(A)の半導体レーザ2に示したように、複数のメサ部21を一列に配置し、両端のメサ部21(中央以外のメサ部21)に対して、中央のメサ部21側に溝22Aを設け、中央のメサ部21側に酸化層30を偏在させると共に、第1調整層51および第2調整層52が中央のメサ部21側に偏在する横モード調整層50を設け、さらに、中央のメサ部21の周囲全体を溝22Bで囲むと共に、中央のメサ部21に対して、第1調整層51および第2調整層52がメサ部21の中央に配置された横モード調整層50を設けることが可能である。このようにした場合には、図16(B)に例示したように、両端のメサ部21(中央以外のメサ部21)から射出される光の基本横モードの光場強度分布が中央のメサ部21側に偏在するようになる。その結果、例えば、半導体レーザ2の光射出側にレンズを配置し、このレンズで、半導体レーザ2の各メサ部21から射出される光を受ける際に、全てのメサ部21に対して酸化層30および横モード調整層50を偏在させずに対称に設けた場合と比べて、カップリング効率を向上させることができる。
【0078】
また、上記実施の形態等では、コンタクト層19を積層構造20の最上層としていたが、コンタクト層19の中央領域に開口を設け、上部DBR層18の最上層を積層構造20の最上層としてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態等では、AlGaAs系の化合物半導体レーザを例にして本発明を説明したが、他の化合物半導体レーザ、例えばGaInP系、AlGaInP系、InGaAs系、GaInP系、InP系、GaN系、GaInN系、GaInNAs系などのなど化合物半導体レーザにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態に係る半導体レーザの上面図である。
【図2】図1の半導体レーザのA−A矢視方向の断面図である。
【図3】図1の半導体レーザのB−B矢視方向の断面図である。
【図4】図2の下部DBR層の断面構成の一例の拡大図である。
【図5】図2の酸化部および電流狭窄層の平面図である。
【図6】図2の下部DBR層の断面構成の他の例の拡大図である。
【図7】図1の半導体レーザの製造過程を説明するための断面図および上面図である。
【図8】図7に続く過程を説明するための断面図および上面図である。
【図9】図8に続く過程を説明するための断面図および上面図である。
【図10】キャリア密度分布と光場強度分布について説明するための模式図である。
【図11】一変形例に係る半導体レーザの上面図である。
【図12】図11の半導体レーザのA−A矢視方向の断面図である。
【図13】図11の半導体レーザにおけるキャリア密度分布と光場強度分布について説明するための模式図である。
【図14】他の変形例に係る半導体レーザの上面図である。
【図15】その他の変形例に係る半導体レーザの上面図である。
【図16】その他の変形例に係る半導体レーザの上面図である。
【符号の説明】
【0081】
1…半導体レーザ、10…基板、11…下部DBR層、12…下部第1DBR層、12A,13A…低屈折率層、12B,13B…高屈折率層、13…下部第2DBR層、14…下部クラッド層、15…活性層、15A…発光領域、16…上部クラッド層、17…電流狭窄層、17A…電流狭窄領域、17B…電流注入領域、17D…被酸化層、18…上部DBR層、19…コンタクト層、20…積層構造、21…メサ部、22…溝部、22A,22B…溝,23…保護膜、24…上部電極、24A…光射出口、25…上部電極パッド、26…接続部、27…下部電極、30…酸化部、30A…酸化層、50…横モード調整層、51…第1調整層、52…第2調整層、53…第3調整層、Lx,Ly,ΔR…幅、D1,D2…深さ、Dox…電流注入領域の幅、W,W1,W2…開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1多層膜反射鏡、活性層および第2多層膜反射鏡を前記基板側からこの順に含む積層構造を備え、
前記第1多層膜反射鏡および前記第2多層膜反射鏡の少なくとも一方は、電流注入領域と、前記電流注入領域を積層面内方向から囲む環状の電流狭窄領域とを含む電流狭窄層を有し、
前記第1多層膜反射鏡および前記第2多層膜反射鏡の少なくとも一方は、前記電流狭窄領域との対向領域のうち一の領域に酸化部を有する
ことを特徴とする面発光型半導体レーザ。
【請求項2】
前記酸化部は、多層膜からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項3】
前記積層構造は、前記電流狭窄層および前記酸化部を取り囲む溝部を有し、
前記溝部は、前記酸化部の分布に対応して不均一な深さを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項4】
前記酸化部は、多層膜からなり、
前記多層膜は、前記溝部のうち深さが深い部分に対応して形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項5】
前記溝部は、前記酸化部の分布に対応して不均一な幅を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項6】
前記酸化部は、多層膜からなり、
前記多層膜は、前記溝部のうち幅が広い部分に対応して形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項7】
前記溝部のうち深さが深い部分に対応する部分の幅は、1μm以上3μm以下である
ことを特徴とする請求項3に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項8】
前記第1多層膜反射鏡および前記第2多層膜反射鏡のうち前記酸化部を有する反射鏡は、相対的に酸化され易い第3多層膜反射鏡および相対的に酸化されにくい第4多層膜反射鏡を前記基板側からこの順に積層した構造を有し、
前記酸化部は前記第3多層膜反射鏡内に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項9】
前記第3多層膜反射鏡は、Alx1Ga1−x1Asからなる低屈折率層およびAlx2Ga1−x2Asからなる高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成され、
前記第4多層膜反射鏡は、Alx3Ga1−x3Asからなる低屈折率層およびAlx4Ga1−x4Asからなる高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成され、
前記x1〜x4は以下の式を満たす
ことを特徴とする請求項8に記載の面発光型半導体レーザ。
1≧x1>x3>0.8>(x2,x4)≧0…(1)
【請求項10】
前記第3多層膜反射鏡は、Alx5Ga1−x5Asからなる第1屈折率層およびAlx6Ga1−x6Asからなる第2屈折率層を有する低屈折率層ならびにAlx2Ga1−x2Asからなる高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成され、
前記第4多層膜反射鏡は、Alx3Ga1−x3Asからなる低屈折率層およびAlx4Ga1−x4Asからなる高屈折率層を1組として、それを複数組分積層して構成され、
前記x2〜x6は以下の式を満たす
ことを特徴とする請求項8に記載の面発光型半導体レーザ。
1≧x6>(x5,x3)>0.8>(x2,x4)≧0…(2)
【請求項11】
前記第2屈折率層は、前記積層構造内で生じる定在波の腹に対応する部分またはその近傍に形成され、
前記酸化部は、前記第2屈折率層内に形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項12】
前記電流狭窄層は、前記積層構造内で生じる定在波の節に対応する部分またはその近傍に形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項13】
前記積層構造の上面のうち前記酸化部との対向領域側の一の領域に、前記積層構造の上面と電気的に接続されたコンタクト層および電極を前記積層構造側からこの順に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項14】
前記積層構造の上面のうち前記電流注入領域との対向領域に、積層面内に高反射率領域と低反射率領域とを含む横モード調整層をさらに備え、
前記高反射率領域が前記電流注入領域の中央から前記酸化部側にずれて設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項15】
前記高反射率領域は、膜厚が(2a−1)λ/4n(aは1以上の整数,λは発光波長,nは屈折率)、屈折率nが前記第1多層膜反射鏡の表面のそれよりも低い値を有する第1調整層と、膜厚が(2b−1)λ/4n(bは1以上の整数,nは屈折率)、屈折率nが前記第1調整層のそれよりも高い値を有する第2調整層とをこの順に積層した構造を有し、
前記横モード調整部のうち反射率の低い領域は、膜厚が(2c−1)λ/4n(cは1以上の整数,nは屈折率)、屈折率nが前記第1調整層のそれよりも高い値を有する第3調整層を有する
ことを特徴とする請求項14に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項16】
前記第1調整層および第2調整層は互いに種類の異なる誘電体からなる
ことを特徴とする請求項15に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項17】
前記第1調整層は酸化物からなり、
前記第2調整層および第3調整層は窒化物からなる
ことを特徴とする請求項15に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項18】
基板上に、第1多層膜反射鏡、活性層および第2多層膜反射鏡を前記基板側からこの順に含む積層構造を形成する工程と、
前記積層構造の上面に、一カ所だけ幅の広い環状の開口部を有する被覆層を形成する工程と、
前記被覆層をマスクとしてドライエッチングすることにより、前記積層構造に、前記開口部の幅に応じた不均一な深さの溝部を形成する工程と、
前記溝部の側面を酸化することにより、前記第1多層膜反射鏡および前記第2多層膜反射鏡の少なくとも一方に、前記溝部の深さに対応して不均一に分布する酸化部を形成する工程と
を含むことを特徴とする面発光型半導体レーザの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−164466(P2009−164466A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2214(P2008−2214)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】