説明

鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置及び方向指示器自動解除方法

【課題】方向指示器の方向指示の解除動作について、自動的に且つ交差点の道路形態によることなく適切なタイミングで行うことが可能な方向指示器自動解除装置を得る。
【解決手段】位置情報検出手段56と地図情報記憶手段55から車両の現在位置が交差点位置であることを判定し、ヨーレート検出手段57から車両の旋回開始状態と車両の進行方向を検出し、地図情報記憶手段55の交差点情報と車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、進行方向に対しての現交差点の終了位置を算出し、ヨーレート検出手段57の出力値が所定値以下で所定時間出力した場合を旋回終了時と判断し、車速を基に旋回開始位置からの車両の移動量距離を求め、移動距離が前記交差点の終了位置を通過したことを検出した時、方向指示器51の動作を解除する制御を制御部4で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両の方向指示器において、方向指示動作を自動的に解除する方向指示器自動解除装置に関し、特に、交差点内において方向指示動作を自動的に適切なタイミングで解除する機構を備えた方向指示器自動解除装置、及び、方向指示動作を自動解除させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪車においては、方向指示器の方向指示動作を、右左折後の操舵装置の戻りの回転を利用することで停止(解除)する機構が一般的に装備されている。
一方、自動二輪車等の鞍乗り型車両(車輪を傾けて方向変更を行う車両)においては、ライダーが自ら方向指示器のスイッチを戻すことで方向指示動作を停止(解除)する機構が一般的であるが、車体の傾斜角やハンドルの操舵角を検知し、右左折後に方向指示器の方向指示動作を信号処理回路により自動的に行う自動解除機構が提案されている。
【0003】
この自動解除機構としては、例えば、方向指示器の方向指示の解除動作を制御する信号処理回路において、コーナリング時の切れ角の変化の状態を検出し、ハンドルの切れ角が第1の設定値(第1の基準)よりも大きくなってハンドル切れ角の積算を行い、その積算値が第2の設定値(第2の基準)よりも大きくなった後にハンドル切れ角が所定角以下になったことを条件として、方向指示動作を解除するための出力信号が出力される構成が特許文献1に開示されている。
【0004】
この構成によれば、第1の基準によってコーナリングが正規に開始されたかどうかを判断し、第2の基準によってコーナリングがほぼ終了したかどうかを判断するので、コーナリングで発生する信号と、ハンドルの動きによる単なるノイズ信号とを確実に区別することで、方向指示器の解除動作の信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−61465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、右左折を行う交差点の形状や大きさ等の道路形態は種種様々であり、道路の構造や形態に合わせた方向指示器の解除システムが求められていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、方向指示器の方向指示の解除動作について、自動的に且つ交差点の道路の構造や形態によることなく、より的確なタイミングで行うことが可能な鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置及び方向指示器自動解除方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1は、車両の進行方向を指示する方向指示器(51)と、前記方向指示器(51)の方向指示解除動作を制御する制御部(54)とを備えた鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、
車両の緯度経度の位置情報を得る位置検出手段(56)と、
交差点情報を含む地図情報を記憶した地図情報記憶手段(55)と、
位置情報検出手段(56)と地図情報記憶手段(55)から車両位置を特定する車両位置制御手段と、
を備え、
前記制御部(54)は、
前記位置情報検出手段(56)と前記地図情報記憶手段(55)から車両の現在位置が交差点内であるかを判断し、
車両の現在位置が交差点外であることを検出した時、前記方向指示器(51)の動作を解除する制御を行うことを特徴としている。
【0009】
請求項2は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、
車両のヨー挙動を検出するヨーレート検出手段(57)と、
車両の車速を検出する車速検出手段(58)と、
を備え、
前記制御部(54)は、
前記位置情報検出手段(56)と前記地図情報記憶手段(55)から車両の現在位置が交差点位置であることを判定し、
前記ヨーレート検出手段(57)から車両の旋回開始状態と車両の進行方向を検出し、
前記地図情報記憶手段(55)の交差点情報と前記車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、進行方向に対しての現交差点の終了位置を算出し、
前記ヨーレート検出手段(57)の出力値が所定値以下で所定時間出力した場合を旋回終了時と判断し、
前記車速を基に旋回開始位置からの車両の移動距離を求め、
前記移動距離が前記交差点の終了位置を通過したことを検出した時、前記方向指示器(51)の動作を解除する制御を行うことを特徴としている。
【0010】
請求項3は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、前記位置検出手段はGPS受信機(56)であることを特徴としている。
【0011】
請求項4は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、前記地図情報記憶手段は、地図データベース(55)であることを特徴としている。
【0012】
請求項5は、請求項4の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、前記地図データベース(55)は、車両に搭載されたナビゲーションシステム(60)から得られる情報であることを特徴としている。
【0013】
請求項6は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、前記方向指示器(51)は、手動式の解除機構を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項7は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、車両の経度緯度の位置情報は、車両間通信用送受信器(70)により他車両から得ることを特徴としている。
【0015】
請求項8は、請求項1の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、交差点情報を含む地図情報は、車両間通信用送受信器(70)により他車両から得ることを特徴としている。
【0016】
請求項9は、鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装方法において、
前記車両に搭載されたナビゲーションシステム(60)のナビゲーションシステム情報から現車両位置が交差点範囲内であると特定し、
前記車両のヨー挙動を検出するヨーレート検出手段(57)の信号から車両の旋回開始時と旋回終了時を算出し、
前記ヨーレート検出手段(57)の信号から車両の進行方向を特定し、
前記ナビゲーションシステム情報から車両が進行する方向の交差点終了位置を算出し、
前記旋回開始位置からの車両移動距離を算出し、
前記車両移動距離が前記交差点終了位置の範囲を超えた場合に前記車両の方向指示器(51)の動作を解除することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、位置検出手段(GPS受信機56)と地図情報記憶手段(地図データベース55)から車両の現在位置が交差点位置内であるかどうかを判断し、車両の現在位置が交差点外であることを検出した時、前記方向指示器(51)の動作を解除する制御を行うこことで、交差点規模を認識することで道路の構造(大きさや幅員)等の影響を受けることなく、的確なタイミングと位置で方向指示器を自動的に解除することができる。
【0018】
また、位置検出手段(GPS受信機56)と地図情報記憶手段(地図データベース55)から車両の現在位置が交差点位置であることを判定し、ヨーレート検出手段(ヨーレートセンサ57)から車両の旋回開始状態と車両の進行方向を検出し、地図情報記憶手段(地図データベース55)の交差点情報と車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、進行方向に対しての現交差点の終了位置を算出し、前記ヨーレート検出手段(ヨーレートセンサ7)の出力値が所定値以下で所定時間出力した場合を旋回終了時と判断し、車速検出手段(車速センサ58)からの車速を基に旋回開始位置からの車両の移動距離を求め、この移動距離が交差点の終了位置を通過したことを検出した時、制御部(車両位置判定ECU54)が方向指示器(51)の動作を解除する制御を行うことで、車両の現在位置が交差点外であることを確実に検出することができるので、交差点規模を認識することで道路の構造(大きさや幅員)等の影響を受けることなく、的確なタイミングと位置で方向指示器を自動的に解除することができる。
【0019】
また、方向指示器(51)を自動で解除可能としたため、手動操作の解除忘れが無くなり、利便性の向上を図ることができるとともに、後続車に対しても安心感がより向上する。
【0020】
方向指示器自動解除装置で使用されるナビゲーションシステム(60)は、車両位置の認識ができればよいので、地図画像表示のティスプレイ装置を備える必要がない(地図データベース(55)とGPS受信機(56)があれば成立する)ので、比較的安価なシステムで実現することができる。
【0021】
また、車両の緯度経度の位置情報や、交差点情報を含む地図情報について、車両間通信を利用して他車両から得ることで、二輪車等に高価なナビゲーションシステムが不要となり、交差点における的確な位置で方向指示器を自動的に解除するシステムを簡素且つ低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の方向指示器自動解除装置が搭載された自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る方向指示器自動解除装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
【図3】一般的な交差点の構造を示す平面説明図である。
【図4】本発明の方向指示器自動解除方法の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
本発明の方向指示器自動解除装置は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に搭載されるものである。図1に、本発明の方向指示器自動解除装置が搭載された自動二輪車1の左側面図を示す。
【0024】
自動二輪車1のメインフレーム(車体フレーム)2の前端に設けた筒状のヘッドパイプ3内に、略同軸状にステアリングステム4が回動自在に挿入されている。ステアリングステム4には、左右一対のフロントフォーク5が連結されている。
【0025】
フロントフォーク5の下部には、前輪WFが軸支される。各フロントフォーク5の上部には、それぞれ外側に延設するハンドルバー6が取り付けられ、ステアリングステム4を中心として、ハンドルバー6と一対のフロントフォーク5及び前輪WFとを左右に一体的に回動させるステアリング機構が構成される。
【0026】
メインフレーム2の中央付近には、後方上方に延びるシートレール7が接合されている。メインフレーム2の上には、燃料タンク8が配置され、前記シートレール7の上には、乗員シート9が配置されている。ステアリングステム4の前部および側部およびメインフレーム2の前部はフロントカウル10で覆われ、前記シートレール7の上部および側部はリヤカウル11で覆われている。
【0027】
フロントカウル10には、左右の灯火器で一対となる前方側方向指示器51Fが装着されている。各灯火器は、ハンドルバー6の左側位置に装着された方向指示器動作スイッチ52により選択された側の灯火器が点滅して点灯するようになっている。
【0028】
また、シートフレーム7の後部位置に連結されたステーには、左右の灯火器で一対となる後方側方向指示器51Rが装着されている。後方側方向指示器51Rの各灯火器は、上述した方向指示器動作スイッチ52の操作により前方側方向指示器51Fと同じ側の灯火器が同期して点滅点灯する。
【0029】
メインフレーム2の下方には、エンジン12が懸架されており、メインフレーム2の後部下方には、ピポット軸13を中心に上下方向に揺動自在にスイングアーム14が枢支されている。スイングアーム14の後端には後輪WRが支持され、この後輪WRは従動スプロケット15を有しており、エンジン12の動力が変速機を介して後輪WRに伝達される駆動チェーン16が従動スプロケット15に掛け渡されている。
また、スイングアーム14とメインフレーム2との間にはリンク機構を介して互いを連結するリヤクッションユニット17が配設されている。
【0030】
エンジン12のクランク軸31の後方位置には、クランク軸31に連動するメインシャフト32及びカウンタシャフト33を有する変速機が装着されている。
そして、カウンタシャフト33の近傍位置には、電動二輪車の速度である車速を検知する車速センサ(車速検出手段)58が設置されている。車速センサ58は、カウンタシャフト33の回転数を検出し、この回転数に係数を乗算することで後輪車輪速度を計算し、後輪車輪速度の移動平均から車速を求めるよう構成される。
【0031】
エンジン12の上方には、吸気管18及びエアクリーナ19が配設され、エアクリーナ19を介して吸入される空気と燃料とから生成される混合気の燃焼によってエンジン12が駆動される。エンジン12の燃焼ガスは、気筒毎に設けられた排気管20によって車体下方の集合管21に導かれ、車体の側面上方に向かって延設される排気膨張室と消音器とが一体的に形成されたマフラ22に導かれて排出される。
【0032】
乗員シート9の下方位置には、車両位置判定ECUを有するナビゲーション装置60、及び、ナビゲーション装置60や上述した方向指示器51等の自動二輪車1に搭載される各種電装品に電源電圧を供給するバッテリ24が載置されている。
また、乗員シート9の後方のリヤカウル11内には、車両間通信用送受信器70及びこれに接続されるアンテナが装着されている。
【0033】
本発明の方向指示器自動解除装置は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に搭載されるものであり、車両の進行方向を指示する方向指示器51と、方向指示器51の動作をさせる方向指示器動作スイッチ52と、方向指示器動作スイッチ52に基づいて方向指示器51の点灯を制御するリレー53と、車両の地図上の位置を判定する車両位置判定ECU(制御部)54と、地図データベース(地図情報記憶手段)55と、車両の緯度経度情報を得るGPS受信機(位置検出手段)56と、車両の進行方向の変化を測定するヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)57と、車両の速度を測定する速度センサ(車速検出手段)58と、車両の走行軌跡データを保持する走行軌跡データ59を備えて構成されている。
【0034】
車両位置判定ECU54、地図データベース55、GPS受信機56、ヨーレートセンサ57、走行軌跡データ59は、車両に搭載されたナビゲーションシステム60で代用することができる。また、この場合のナビゲーションシステム60は、車両の緯度経度情報から交差点における車両の現在位置が把握できればよいので、ディスプレイ等の画像表示装置を備える必要はない。
【0035】
また、車両位置判定ECU54に接続される車両間通信用送受信器70を備えることで、緯度経度の情報や地図情報は、車両間通信を使用することで地図データベース55及びGPS受信機56を備えた他の車両(近くを走行中の四輪車を含む車両)からのデータ通信(車両間通信)で得るようにしてもよい。この場合、車両間通信用送受信器70に接続されたアンテナ71を介して他車が有している緯度経度の情報や地図情報を随時データ通信で受信し、得られたデータを車両位置判定ECU54内の記録部に格納し、データ受信する毎に緯度経度の情報及び地図情報を更新できるよう構成する。
【0036】
方向指示器51は、車両の前方及び後方にそれぞれ配置された一対の灯火器で構成されている。各灯火器は、方向指示器動作スイッチ52で右折選択時にリレー53を介して点滅する灯火部と、左折選択時にリレー53を介して点滅する灯火部を備え、車両位置判定ECU54からの動作停止信号によりリレー53を介して点灯停止(解除)するように構成されている。
【0037】
方向指示器動作スイッチ52は、レバーを倒す等の機械的な手動操作で右折選択又は左折選択を行う機構を有し、機械的操作による電気信号(操作情報)をリレー53に出力することで方向指示器51の灯火器の点灯動作を開始させるとともに、その操作情報を車両位置判定ECU54へ出力するように構成されている。
また、方向指示器51の方向指示器動作スイッチ52の解除(右折選択又は左折選択の停止)は、手動操作で解除可能(解除機構を備えた構成)に形成されている。
【0038】
リレー53は、方向指示器動作スイッチ2に基づいて方向指示器51の点灯を制御するとともに、車両位置判定ECU54からの動作停止信号により方向指示器51の点灯停止(解除)を行う。
【0039】
地図データベース55は、地図情報記憶手段であり、ナビゲーションシステムで使用する地図情報が記憶されるとともに、各交差点における交差点範囲を記録している。
交差点範囲とは、図3に斜線で示した横断歩道より外側を含む領域(一般的に交差点内と判断される領域)であり、十字、Y字、T字等の交差点の形状、交差する道路形状、幹線道路であるか否か等の道路の種類、道路レーン数等の交差点規模、交通量等により様々な形状の範囲となっており、個別の交差点毎にその範囲が決められ、地図データベース55の地図情報として登録されるものである。
【0040】
GPS受信機56は、衛星から車両の緯度経度情報を得ることで車両の現在位置を特定する位置検出手段であるが、精度良く現在位置を特定するため、走行方向や距離で位置の補正を行うジャイロセンサを併せ持つようにしてもよい。
【0041】
ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)57は、車両のヨー挙動による傾斜角度を検出することで、車両が旋回中であるか否か等の車両の進行方向の変化を測定するものである。
また、ヨーレートセンサ57の信号から車両の進行方向を特定する。
【0042】
車速センサ58は、車両の変速機(トランスミッション部)等に取り付けられており、車両の速度をパルスとして出力する。
【0043】
車両の走行軌跡データを保持する走行軌跡データ59は、車両がこれまで走行してきた情報(時間、緯度、経度、速度、進行方向、加速度、どの道路(リンク)上のどの位置(ノードからの距離)を一定時間(例えば10秒)保持し、順次古いデータを順に新しいデータと入れ替える機能を持つ。
【0044】
車両位置判定ECU54は、地図データベース55から車両周辺の道路情報を受信するとともに、GPS受信機56からの緯度経度情報と、ヨーレートセンサ57からの鉛直方向の回転速度情報を受け取ることで車両の現在位置(緯度、経度、どの道路(交差点)のどの位置)を標定する機能(車両位置を特定する車両位置制御手段)を有することで、車両の現在位置が交差点位置であるかどうかを判定することができる。
【0045】
また、車両位置判定ECU54は、ヨーレートセンサ57からの情報(回転速度)を受け、現在車両が旋回中であるかを判定することができる。このデータを積分することで、車両の現在の方向(進行方向)を知ることができる。この車両方向と旋回状態と地図情報を組み合わせて判断することで、交差点のどの辺りを通過しているかを特定することができる。
車両位置判定ECU54は、車速センサ58から車両の走行速度を知ることができる。
車両位置判定ECU54は、ヨーレートセンサ57からの出力が想定している値よりも小さい値を一定時間出力した場合に、旋回を終了し交差点を曲がった時点であると特定する。
【0046】
車両位置判定ECU54では、地図データベース55の交差点情報と車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、車両がどの道路へと進路を変更したかを判断し、進行方向に対しての現交差点の終了位置(終了位置までの距離)を算出する。
また、交差点を曲がった時点(旋回開始時)と、車両速度を組み合わせることで交差点内における車両の旋回開始からの移動距離を計算する。
そして、車両位置判定ECU54は、計算された移動距離が算出された交差点の終了位置(終了位置までの距離)を通過したことを検出することで、右折又は左折を終了したタイミングを的確に判断し、方向指示器51の動作を解除する動作停止信号を出力する。
【0047】
また、車両位置判定ECU54は、車両の現在位置情報と走行軌跡データ59から車両がどの道路からどの道路へ移動したかを判定することができる。これに地図データベース55から得られる交差点の構造情報を組み合わせることで、方向指示器51が必要であるかどうか、方向指示器51の動作を停止(方向指示解除動作)する必要があるかどうかが判別できる。
【0048】
また、車両位置判定ECU54は、方向指示器動作スイッチ52からの信号を受信することで、方向指示器51の点灯時の点滅周期を変更可能に制御することができ、バッテリの劣化等による点滅周期の変動を抑えることが可能となる。同時に、従来はリレー53で行われていた方向指示器51の点滅周期の制御を不要とし、リレー53の機能を簡素化することができる。
【0049】
また、方向指示器51の解除(停止)を車両位置判定ECU54で制御することで、方向指示器動作スイッチ52のキャンセル機構(例えば、プッシュウインカキャンセルのメカニカル部分)を簡素化することができる。
【0050】
次に、上述の方向指示器自動解除装置の動作について、図3の交差点図及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。
車両走行中においてはGPS受信機56により車両位置が標定され、緯度経度、走行中の道路等が確定され(ステップS1)、交差点内であるかどうかが判断される。すなわち、車両に搭載されたナビゲーションシステム60のナビゲーションシステム情報から現車両位置が交差点範囲内であるかどうかを常時監視している。
【0051】
車両が図3に示すような交差点に下方側から近づいた場合、ライダーは直進、右折、左折を行うかを判断し、右左折を行う場合には方向指示器動作スイッチ52のレバーを操作する。方向指示器動作スイッチ52の操作によりリレー53を介して方向指示器51が点灯する。
【0052】
ライダーが方向指示器動作スイッチ52のレバーを操作した後、車両が交差点旋回中であるかが判断され(ステップS2)、旋回中でない場合にはこの交差点を通過し、進行方向上で近傍に次の交差点があるかどうかが判断され(ステップS3)、交差点がない場合にはステップS1に戻り、この処理が繰り返される。
【0053】
また、ステップS3において、次の交差点があった場合は、交差点までの距離が予め設定された閾値以下であるかどうかが判断され(ステップS4)、閾値以下でない場合はステップS1に戻り、この処理が繰り返される。
更に、ステップS4において、次の交差点までの距離が閾値以下である場合、ヨーレートセンサ7から検出されるヨーレートが閾値以上であるかどうかが判断され(ステップS5)、閾値以上でない場合はステップS1に戻り、この処理が繰り返される。
【0054】
車両に搭載されたナビゲーションシステム60のナビゲーションシステム情報から現車両位置が交差点範囲内であると特定されステップS2において旋回中である場合、又は、ステップS5において検出されたヨーレートが予め設定された閾値以上である場合、交差点旋回中であると判断する(ステップS6)。すなわち、ヨーレートセンサ57からの信号(ヨーレート)から車両の旋回開始時が判断される。
【0055】
次に、ヨーレートが閾値以下であるかどうかが判断され(ステップS7)、閾値以下でない場合は交差点旋回中が維持されていると判断し、ステップS6に戻る。
ステップS7においてヨーレートが閾値以下である場合、交差点旋回終了であると判断する(ステップS8)。すなわち、ヨーレートセンサ57からの信号(ヨーレート)から車両の旋回終了時が判断される。
【0056】
ステップS8において交差点旋回終了であると判断した場合、車両進行方向により進行道路(レーン位置)を確定し(ステップS9)、ナビゲーションシステム情報から車両が進行する方向の交差点終了位置を算出することで、進行道路に対しての交差点終了位置までの交差点終了距離の計算を行う(ステップS10)。
すなわち、車両位置は、GPS受信機56と地図データベース55により特定され、地図データベース55により交差点規模が認識されているので、進行方向に対しての現交差点の終了位置として、交差点において右左折を行う場合に旋回位置から交差点を脱出するために必要な距離(交差点終了距離)が計算される。
【0057】
また、図3に示されるように、右折(R)と左折(L)とで旋回開始位置からの移動距離(図3における実線部分)が異なるので、各交差点における右左折を行う場合の交差点終了距離は、交差点において車両が走行する道路のレーン位置や右左折での状況等でそれぞれ異なる距離(交差点終了距離)が算出される。
続いて、車速により旋回開始位置からの車両移動距離を計算する(ステップS11)。
【0058】
次に、交差点終了距離と車両移動距離との比較を行うことで交差点の終了位置を通過したか否かを判断する(ステップS12)。すなわち、車両移動距離が交差点終了距離より大きい場合に交差点の終了位置を通過したと判断する。
ステップS12で交差点の終了位置を通過しない場合は、ステップS11に戻り、前記車両移動距離が前記交差点終了位置の範囲を超えた場合は、終了位置を通過した(図3における斜線部分の外に出た)と判断し、車両位置判定ECU4からの動作解除信号により車両の方向指示器51の動作の解除(方向指示器停止)を行う(ステップS13)。
【0059】
上述した方向指示器自動解除装置によれば、GPS受信機56と地図データベース55から車両の現在位置が交差点位置であることを判定し、ヨーレートセンサ57から車両の旋回開始状態と車両の進行方向を検出し、地図データベース55の交差点情報と車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、進行方向に対しての現交差点の終了位置を算出し、前記ヨーレートセンサ57の出力値が所定値以下で所定時間出力した場合を旋回終了時と判断し、車速センサ58からの車速を基に旋回開始位置からの車両の移動距離を求め、この移動距離が交差点の終了位置を通過したことを検出した時、車両位置判定ECU54からリレー53を介して方向指示器51の動作を解除する制御を行うので、道路の構造(大きさや幅員)等の影響を受けることなく、的確なタイミングと位置で方向指示器を自動的に解除することができる。
また、方向指示器51を自動で解除可能としたため、手動操作の解除忘れが無くなり、利便性の向上を図ることができるとともに、後続車に対しても安心感がより向上する。
【0060】
方向指示器自動解除装置で使用されるナビゲーションシステム60は、車両位置の認識ができればよいので、地図画像表示のティスプレイ装置を備える必要がない(地図データベース55とGPS受信機56があれば本システムが成立する)ので、比較的安価なシステムで実現することができる。
【0061】
上述した方向指示器自動解除装置では、ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)57により検出した車両の旋回開始時から車両移動距離を算出し交差点終了位置を検出するようにしたが、GPS受信機(位置検出手段)56と地図データベース(地図情報記憶手段)55)から車両の現在位置が交差点内であるかを判断し、車両の現在位置が交差点外であることを検出した時に、車両位置判定ECU(制御部)54により方向指示器51の動作を解除する制御を行うようにしてもよい。
この場合、ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)57が不要となるため、より簡易な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…自動二輪車、 51…方向指示器、 52…方向指示器動作スイッチ、 53…リレー、 54…車両位置判定ECU(制御部)、 55…地図データベース(地図情報記憶手段)、 56…GPS受信機(位置検出手段)、 57…ヨーレートセンサ(ヨーレート検出手段)、 58…車速センサ(車速検出手段)、 59…走行軌跡データ、 60…ナビゲーションシステム、 70…車両間通信用送受信器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向を指示する方向指示器(51)と、前記方向指示器(51)の方向指示解除動作を制御する制御部(54)とを備えた鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置において、
車両の緯度経度の位置情報を得る位置検出手段(56)と、
交差点情報を含む地図情報を記憶した地図情報記憶手段(55)と、
位置情報検出手段(56)と地図情報記憶手段(55)から車両位置を特定する車両位置制御手段と、
を備え、
前記制御部(54)は、
前記位置情報検出手段(56)と前記地図情報記憶手段(55)から車両の現在位置が交差点内であるかを判断し、
車両の現在位置が交差点外であることを検出した時、前記方向指示器(51)の動作を解除する制御を行う
ことを特徴とする鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項2】
前記方向指示器自動解除装置は、
車両のヨー挙動を検出するヨーレート検出手段(57)と、
車両の車速を検出する車速検出手段(58)と、
を備え、
前記制御部(54)は、
前記位置情報検出手段(56)と前記地図情報記憶手段(55)から車両の現在位置が交差点位置であることを判定し、
前記ヨーレート検出手段(57)から車両の旋回開始状態と車両の進行方向を検出し、
前記地図情報記憶手段(55)の交差点情報と前記車両の進行方向の検出結果から進行する道路を確定し、進行方向に対しての現交差点の終了位置を算出し、
前記ヨーレート検出手段(57)の出力値が所定値以下で所定時間出力した場合を旋回終了時と判断し、
前記車速を基に旋回開始位置からの車両の移動距離を求め、
前記移動距離が前記交差点の終了位置を通過したことを検出した時、前記方向指示器(51)の動作を解除する制御を行う請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項3】
前記位置検出手段はGPS受信機(56)である請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項4】
前記地図情報記憶手段は、地図データベース(55)である請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項5】
前記地図データベース(55)は、車両に搭載されたナビゲーションシステム(60)から得られる情報である請求項4に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項6】
前記方向指示器(51)は、手動式の解除機構を備えた請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項7】
車両の経度緯度の位置情報は、車両間通信用送受信器(70)により他車両から得る請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項8】
交差点情報を含む地図情報は、車両間通信用送受信器(70)により他車両から得る請求項1に記載の鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装置。
【請求項9】
鞍乗り型車両の方向指示器自動解除装方法において、
前記車両に搭載されたナビゲーションシステム(60)のナビゲーションシステム情報から現車両位置が交差点範囲内であると特定し、
前記車両のヨー挙動を検出するヨーレート検出手段(57)の信号から車両の旋回開始時と旋回終了時を算出し、
前記ヨーレート検出手段(57)の信号から車両の進行方向を特定し、
前記ナビゲーションシステム情報から車両が進行する方向の交差点終了位置を算出し、
前記旋回開始位置からの車両移動距離を算出し、
前記車両移動距離が前記交差点終了位置の範囲を超えた場合に前記車両の方向指示器(51)の動作を解除する
ことを特徴とした鞍乗り型車両の方向指示器自動解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−207360(P2011−207360A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77575(P2010−77575)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】