説明

音波撮像装置

【課題】海中での音波撮像装置において、海底堆積層が存在することによって生じる音波画像の位置のズレ・低いコントラスト(ぼやけ)・輪郭の歪み解消し、高精細・高解像度の音波画像を得る。
【解決手段】ソーナー送受信部300で受信した信号から底質計算部302で海底堆積層の物理パラメータを推定し、推定された物理パラメータから画像補償計算部304で堆積層の補正用データを生成する。補償画像処理部306は、この補正用データとソーナー受信信号307を用いて、堆積層の音波伝搬に起因する受信信号もしくは音波画像のズレや歪みが補正されたソーナー画像を生成する。さらに、対照情報生成部において、補正された音波画像と基準画像310を比較し、その残渣分をさらなる補正にフィードバックして補正の高精度化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波撮像装置に関し、特にソーナーなどの水中での音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底の堆積層の中の構造や、海底堆積層内の対象物を画像化するための手法として、音響的手法による画像化技術が検討されている。海底堆積層の内部には光が透過せず、また海水/堆積層の電磁気の透過率が著しく低いことから、海底堆積層内の画像化に対してはソーナー(SONAR)などを用いた音響的手法が第一選択となる。しかしながら、堆積物は海水に比べて著しく音波の減衰率が大きいという特徴を持っている。特に音波が高い周波数になるに従って指数関数的に減衰率が大きくなるため、ソーナー高周波化(短波長化)によってソーナー画像の空間分解能を向上させようという試みに対する大きな障壁となる。そのため、この障壁を越えて、高いコントラストかつ高いS/N比(信号/雑音比)で海底堆積層内の画像を生成するための音波撮像方式や信号処理方式/アルゴリズムが望まれている。
【0003】
海底堆積層の影響を考えた技術に関して、以下のものがある。特開2002-311136号公報には、上下に2分割されたソーナーの受信信号からラグタイムの差分を求め、目標が海底面上か、海底下に埋没しているかを、閾値を用いて判別する技術が開示されている。特開平9-304527号公報には、BL(Bottom Loss)データを用いて、反射損失から堆積層の密度や減衰係数で表される音響パラメータを推定する技術が開示されている。本技術によれば、堆積層が深さ方向に均質な特性を持つと仮定したときの、密度や減衰率を推算することができる。特開平10-221444号公報には、堆積層深度方向に周波数を少しずつ変化させた音波を照射することによって、深さ方向の密度分布を測定する技術が開示されている。また、WO1999004287A1には、堆積層に埋まっている被対象物に視点をおき、対象物の音響的な歪み変形が反射音信号への非線形歪みとして表れることを用いて、堆積層に埋没した物体を探知する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002-311136号公報
【特許文献2】特開平9-304527号公報
【特許文献3】特開平10-221444号公報
【特許文献4】WO1999004287A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、堆積層の物理的特性を推定する技術と、予め存在するデータベースとしての堆積層の特性と音響データとを照らし合わせて音響パラメータを推算する技術が知られている。しかしながら、海底堆積層内の音波伝搬の影響、すなわち堆積層が存在することによって生じる画像のズレや歪み分を、画像処理の中で補正する技術はなかった。
【0006】
本発明は、海底堆積層が存在することによって生じる音波画像の位置のズレ・低いコントラスト(ぼやけ)・輪郭の歪み解消し、高精細・高解像度の音波画像を形成することのできる音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音波撮像装置は、海底堆積層による音波伝搬の影響を補正する画像処理アルゴリズムを備える。この画像処理アルゴリズムでは、まず堆積層の物理パラメータを推定し、推定された物理パラメータからソーナー画像処理中の計算パラメータの補正を行う。この補正された計算パラメータを用いてソーナー画像の生成を行い、堆積層の音波伝搬に起因する受信信号もしくは画像のズレや歪みが補正されたソーナー画像を得る。さらに、補正されたソーナー画像と基準画像とを比較し、その残渣分をさらなる補正にフィードバックして補正の高精度化を行う。
【0008】
さらに、本発明の音波撮像装置は、前記の補償において推定された堆積層の物理パラメータを利用して、場所によって異なる堆積層の物理パラメータに対して、音波の送信条件を制御して与えることで、より好適な条件で音波の送受信を行う音波送波アルゴリズムを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、海底堆積層内の音波伝搬特性が音波画像に与える影響を補正して、画像のズレ分や歪みを解消し、音波画像の分解能、S/N比、コントラスト、及び海底堆積層内の物体の検出感度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、図1及び図2を用いて海中及び海底堆積層内の画像化について説明を行う。次に、図3から図8を用いて、本発明の音波撮像装置における画像処理アルゴリズムを詳しく説明する。その後、図9から図25を用いて、本発明における音波撮像装置の具体的な実施例について、画像処理アルゴリズム中の各種処理の説明及び堆積層内の音波伝搬シミュレーションの結果を交えて、さらに詳しく説明を行う。
【0011】
図1は、海中における音波撮像装置の概略図である。海中での音波撮像は、船体100や、航走体101に備え付けられたソーナー102を用いて行われる。船体100では例えば、船体の真下に備え付けられたハル型ソーナーなどが使用される。ハル型ソーナーでは、海水面の高さからのオペレーションしかできないため、近年、無人航走体(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、自律型航走体(AUV:Automatic Underwater Vehicle)と呼ばれる、無人/自動の航走体101を利用した海中・海底の音響撮像が盛んに検討されている。UUVやAUVを使用することで水深が深い所での音波画像取得が可能になる。ソーナー102からの送信音波103は、対象物104や海底面105に到達し、その反射音が受波音波106となって、ソーナー102において受波される。複数の方向や異なる場所において受信された受波音波106を合成することで、対象物104や海底面105の形状を反映した、ソーナー画像107が作られる。
【0012】
通常、このようなソーナー画像は海中の音波伝搬を仮定して作られる。例えば、ソーナー102から角度θ=60°で送波された送波音波に対する対象物104からの反射音波がソーナー102において0.1秒後に受波されたとき、対象物のソーナーからの水平距離dは、片道分の音波伝搬時間t=0.05[s]及び、海水中の音速c=1,522[m/s]を用いて、
d=c×t×cosθ=1,522[m/s]×0.05[s]×cos60°=38.05[m]
と計算され、ソーナー画像107の上に対象物の結像画像108として描出される。一方で、このような海中での音響画像取得においては、海底堆積層109の存在が問題となる。例えば、図1に示されるように対象物110が海底堆積層109に埋まってしまっている場合がある。このとき、対象物110をソーナー画像として結像させるに際し、周囲の海底堆積層109の内部での音波伝搬特性が大きく影響することは明らかである。
【0013】
図2を用いて、海底堆積層内部の音波伝搬特性がソーナー画像の生成に及ぼす影響を説明する。まず海中に対象物がある場合、ソーナー200から送信される音波201は、海中のみを伝搬して対象物202に到達する。そのため、図1のソーナー画像107と同様に、ソーナー画像203の中には対象物の結像204が行われる。一方で、堆積層205の中に対象物206が存在した場合、ソーナーからの送信音波207は海底堆積層に入射する。海底堆積層の音速は海中での音速と違うため、音波の屈折が生じて音の伝搬経路は海中のときと異なってしまう。また、海底堆積層内での音の減衰率は海中と比べて大きいため、音波の大きさも小さくなる。さらに、海底面は、海水と堆積層の間での密度不連続面となるため、海底面での反射も小さくない。これらの結果として、得られるソーナー画像208の中に表れる対象物206の結像画像209は、海中での結像画像と比べたときに、屈折による位置のズレ、小さい音波の大きさによる画像の低コントラスト(ぼやけ)、及び海底面での散乱に起因した画像の輪郭の歪みなどを生じてしまう。さらに、堆積層の特性によって、これら屈折、減衰及び散乱の程度がさらに大きくなると、海底堆積層内の対象物はソーナー画像の中に結像しない(像がない)場合もある。すなわち、海底堆積層内の画像化、もしくは海底堆積層内の対象物の結像を正確に行うためには、以下の不都合、すなわち、(a)海底堆積層の影響によってソーナー画像に位置ズレ・ぼやけ・輪郭の歪みを生じること、(b)海底堆積層の影響によって対象物がソーナー画像内に結像しないこと、の2点を解消する必要がある。
【0014】
本発明においては、2通りの方法で上記の不都合を解消する。まず、(1)ソーナー画像の生成処理中に堆積層の音波伝搬特性に起因するズレ分を補正し、堆積層の影響を補正した画像を作ること。次に、(2)堆積層の特性に対して好適な音波送波条件で音波を送信すること、である。図3〜図7は(1)の処理アルゴリズムの例について説明するものであり、図8が(2)の処理アルゴリズムの例について説明するものである。なお、図3〜図8には、画像処理アルゴリズム及びそのような画像処理アルゴリズムを備えた音波撮像装置の骨格を示し、アルゴリズム内部に表れるパラメータ・画像・データの詳細については後述する。
【0015】
図3に、本発明による音波撮像装置の実施例と共に、本発明による画像処理アルゴリズムの一実施例を示す。図3に示したアルゴリズムは、堆積層音波伝搬特性を補償する本発明の基本アルゴリズムである。本実施例においては、まず第1送受部として、ソーナー送受信部300が具備される。ソーナー送受信部300は音波を送波し受波を行う。音波を送波した方向に海底堆積層が存在する場合、図1,図2で示したように、受波信号は海底堆積層の影響を受ける。一方でこの場合、受波信号の中には、海底の音波伝搬特性の情報が含まれることも明らかである。そこで、ソーナーの受信信号301は第1計算部である底質計算部302に伝達される。後で詳しく説明を行うが、ここで「底質」とは堆積層内の密度分布や透水係数といった物理パラメータの一つもしくはその複数の物理パラメータの集合を表す。底質計算部302は、ソーナー送受信部が受信した受信信号に基づいて、堆積層の底質を表す物理パラメータすなわち演算用パラメータ303を推算する。
【0016】
次に、この演算用パラメータ303は、第2計算部である画像補償計算部304へと伝達される。画像補償計算部304では、堆積層の補正用データ305を計算する。補正用データ305は、例えばソーナー画像処理プロセスにおける堆積層の補償量や処理プロセス内部での補償係数である。次に、補正用データ305は第3計算部である補償画像処理部306へ伝達される。補償画像処理部306へは同時に、ソーナーの受信信号307も伝達される。補償画像処理部306では、ソーナーの受信信号を画像処理してソーナー画像を作成する時に、補正用データ305を用いて、堆積層の音波伝搬特性が補償された補正画像データ308を生成する。ここまでの補正画像データ308の生成プロセスにおいて、一次的な堆積層の底質を補償した処理が完了する。補償画像処理部306で生成されたソーナー画像は、画像表示部に表示される。
【0017】
本発明では、さらに補正画像データ308を第4計算部である対照情報生成部309に伝達する。対照情報生成部309には別途、基準画像310が入力される。対照情報生成部309においては、この基準画像310と堆積層の一次的な補償を行った補正画像データ308を比較して、対照情報311すなわち堆積層の補正効果を表す量を計算する。さらにこの対照情報311は第5計算部である底質パラメータ修正部312に伝達される。この底質パラメータ修正部においては、対照情報311を用いて、底質計算部302で計算された演算用パラメータの修正量もしくは修正後のより確からしい堆積層の底質を表す、修正された演算用パラメータを計算する。以上、図3に示した実施例によれば、堆積層の音波伝搬特性による影響が一次的に補正されたソーナー画像及び、修正された堆積層の物理パラメータを計算することができる。
【0018】
図4に、本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例のひとつを示す。図4は、図3における基準画像310についてより詳しい実施例を示すものである。基準画像310は対照情報生成部309に対して入力される画像データであるが、その画像データには2通りの実施例がある。
【0019】
まず、一方の実施例について図4を使って説明する。ここでは第6計算部である通常ソーナー画像処理部400が具備される。通常ソーナー画像処理部400では、ソーナー送受信部300が受信する音波信号に基づいて、図3に示した本発明による堆積層補正の一次的処理を通さずに、通常のソーナーによる音波画像を生成する。すなわち通常ソーナー画像処理部は、ソーナー送受信部の受信信号401(図3の307と同一の情報)の入力を受け、原画像すなわち通常のソーナー画像402を生成する。通常のソーナー画像402はそのまま、対照情報生成部309へ入力する基準画像310として使用することができる。対照情報生成部309においては、基準画像310としての通常のソーナー画像402と、補償画像処理部306から送られた補正画像308の比較を行い、通常ソーナー画像402からどれだけ補正が行われたかどうか、すなわち通常ソーナー画像402からの変化量を計算する。この補正量の大きさが、ここでの対照情報311となる。
【0020】
もう一方の実施例を、同じく図4を使って説明する。本実施例の場合、メモリ/記憶部である参照画像記憶部403を具備する。参照画像記憶部403には、予め用意された最適な補償画像が保持されており、この最適な補償画像404が基準画像として利用される。この最適な補償画像404は、そのまま対照情報生成部309へ入力する基準画像310として使用することができる。対照情報生成部309においては、基準画像310としての最適な補償画像404と、補償画像処理部306から送られた補正画像308の比較を行い、最適な補償画像404にどれだけ補正が近づいたかどうか、すなわち、最適な補償画像404との漸近の程度を表す量を計算する。この漸近の程度を表す量が、ここでの対照情報310となる。
【0021】
さらに図4を用いて、上記の2つの基準画像出力ブロックが両方具備された実施例について説明する。本実施例では、基準画像として、通常ソーナー画像402もしくは最適な補償画像404のどちらかを選択して使用する。この場合、図4に示したように、第6計算部である通常ソーナー画像処理部400とメモリ/記憶部である参照画像記憶部403の両方が具備され、さらに第4計算部である対照情報生成部309に対して入力される基準画像310を、原画像である通常ソーナー画像402とメモリ/記憶部に有する最適な補償画像404のいずれかに切り替える、第1入力切替部405を有する。
【0022】
図5に、本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例の一つとして、演算用パラメータのフィードバックループを備えた実施例を示す。ここでは、第5計算部である底質パラメータ修正部312で計算された修正された演算用パラメータ500を、新たに第2計算部である画像補償計算部304への入力として用いる。また、図5には、第2入力切替部である入力切替部501が具備されているが、この入力切替部501を用いて、底質計算部302で一次的に計算された底質である演算用パラメータ303と、前記修正された演算用パラメータ500のいずれかを切り替えて新たに画像補償計算部へ入力される演算用パラメータ502としてもよい。本実施例では、演算用パラメータのフィードバックループを備えることによって、ソーナーの送受信部300によって受信された受信信号301から一次的に推算された堆積層の物理パラメータを修正することにより、演算用パラメータをより実際の底質を表すと考えられる物理パラメータに近づけてゆくことが可能となり、よりズレが少なく、コントラスト比が向上し、さらに輪郭のぼやけの少ない、高画質・高分解能な堆積層の音波伝搬特性が補正されたソーナー画像を得ることができる。
【0023】
図6に、本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例のひとつとして、第2送受部である底質測定器600を具備する場合について説明する。底質測定器600は第1送受部とは別に、独立して音波の送受を行う送受信部であり、第1送受部とは異なる音波を海底堆積層に向かって送波し、海底堆積層からの反射音を受信する。底質測定器600で受信された信号は受信信号601として、第1計算部である底質計算部302に入力される演算用パラメータ603として利用することができる。
【0024】
第1送受部であるソーナー送受信部300では、ソーナー画像取得を行うために音波の送受を行うという制約がある。ソーナー送受信部300とは別に底質測定器600を備えることによって、底質パラメータの推算のみに特化した音波の送受信が可能となる。例えば、ソーナー送受信部300では、5kHzの周波数を送信し、一方で底質測定器600では100kHzの音波を送受信することが可能となる。これにより、ソーナー画像作成においてはソーナー送受信部300で受信された5kHzの送信音波に対する受信音波を用い、一方で底質推算すなわち本発明における演算用パラメータの推算においては底質測定器600で受信した100kHzの送信音波に対する受信信号を用いて、より詳細な底質を表す物理パラメータの推算を行うことができる。また、本実施例においては、ソーナー送受信部300で受信された受信信号301と底質測定器600で受信された受信信号601を切り替える第3入力切替部602を有し、いずれかの信号を、底質計算部302へ伝達される入力信号603とすることができるように構成してもよい。
【0025】
次に、図6を用いて本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例の一つとして、データベース部である既知密度分布データ604を具備する場合について説明する。予め、ソーナーの画像化を行う海域の底質が既知の場合がある。事前のオペレーションや底質調査によって、堆積層内の密度分布などの物理パラメータの情報が取得されている場合である。このとき、海底堆積層の底質データすなわち本発明における演算用パラメータを格納するデータベース部すなわち既知密度分布データ604を具備していてもよい。既知密度分布データ604は、第2計算部に対して入力する演算用パラメータ605を出力することができる。また、既知密度分布データ604は第2入力切替部501に対して既知の演算用パラメータ605として入力することができ、さらに、第2入力切替部501は、底質計算部302で計算された演算用パラメータ303と第5計算部で修正された演算用パラメータ500と既知の演算用パラメータ605のうちいずれか1つの演算用パラメータを切り替えて、第2計算部である画像補償計算部304に対して伝達される演算用パラメータ606として出力することができるように構成してもよい。
底質測定器600及び/又はデータベース部である既知密度分布データ604は、図3〜図5に示した音波撮像装置に付加してもよい。
【0026】
図7を用いて、本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例のひとつとして、演算用パラメータの調整部がある場合について説明する。本実施例においては、調整部である底質パラメータツマミ部700が具備される。ここで、底質パラメータツマミ部700は、第2計算部である画像補償計算部304に対して入力される演算用パラメータ(502,606など)の値を調整することができ、調整された演算用パラメータ702として画像補償計算部304に入力することができる。さらに、画像補償計算部304は、調整された演算用パラメータを用いて、補正用データ305を計算する。また、調整部である底質パラメータツマミ部700は、図3〜図6に示した音波撮像装置に付加してもよい。
【0027】
図7は、さらに、本発明の音波撮像装置の実施例及び画像処理アルゴリズムの実施例のひとつとして、演算用パラメータの表示部703がある場合について説明するものである。ここでは、第1計算部である底質計算部で計算された演算用パラメータ、前記データベース部に用意された演算用パラメータ(これらは、図7では底質パラメータ704として示している)及び前記調整部である底質パラメータツマミ部で調整された演算用パラメータ705のうち一つもしくは複数の組み合わせの演算用パラメータの値を表示する表示部である底質表示部703を具備する。この底質表示部703は、図3〜図6に示した音波撮像装置に付加してもよい。
【0028】
以上、図3〜図7を用いて本発明の音波撮像装置の実施例及び海底堆積層の画像補償アルゴリズムの実施例について説明を行ったが、海底堆積層の底質を表す物理パラメータが計算されることが本発明の特徴の一つであり、この物理パラメータは画像処理のみならず、ソーナーの送信条件の制御にも利用することができる。すなわち、ソーナーを使用するその場その場に応じて、堆積層の影響を考えたソーナー送信条件を決定するためにも利用することができる。
【0029】
図8に、上記を鑑みた本発明の音波撮像装置の実施例を示す。本実施例は、ソーナー送信信号制御部800を具備する。底質パラメータの計算は、図3〜図7に示した画像処理アルゴリズムのブロック801で行われる。ソーナー送信信号制御部800は、図3〜図7中で説明されたいかなる演算用パラメータの入力802受けてもよい。例えば、第1計算部である底質計算部において計算された底質の物理パラメータを推算した値である演算用パラメータであっても、データベース部に蓄えられた演算用パラメータであっても、第5計算部である底質パラメータ修正部において修正された演算用パラメータであってもよい。ソーナー送信信号制御部800では、伝達されたいずれかの演算用パラメータ802を用いて、対象とする堆積層に適した音波送信条件を決定する。例えば、ソーナー送受信部での送信音波の周波数として、5kHzが使用されているときに、計算された演算用パラメータから、海底堆積層内部に直線で伝搬する周波数を計算し、たとえば、好適な周波数が8kHzであった場合に、第1送受部であるソーナー送受信部300に、制御信号803を入力することで新たに、ソーナー送受信部300から制御された8kHzの周波数の送信音波804を送信することができる。
【0030】
これにより、より好適な音波照射条件において取得された受信信号に基づいて、海底堆積層音波伝搬特性を補償した画像処理を行うことが可能となり、よりズレが少なく、コントラスト比が向上し、さらに輪郭のぼやけの少ない、高画質・高分解能な堆積層の音波伝搬特性が補正されたソーナー画像を得ることができる。
【0031】
以上、図3〜図8を用いて、本発明による音波撮像装置及び海底堆積層音波伝搬特性を補正する画像処理アルゴリズムに関する骨格を示した。以下、図9〜図25を用いて、図3〜図8の中に表れる各ブロック、各種パラメータ、補正データやソーナー画像に関して発明の効果を交えながら説明を行う。
【0032】
最初に、図9を用いて、海底堆積層の「底質」に関して説明を行う。図9に示すように、海底堆積層900は、固体粒子901と、固体粒子の間に存在する海水などの液体である間隙流体902の混合物として、多孔質媒質を構成する。このような海底堆積層の「底質」を最も大きく特徴づけるパラメータとしては、海底堆積層を構成する固体粒子901の平均粒径dがある。一般的に平均粒径dの大きさが3.9μm以下のものをClay(泥)、62.5μm以上のものをSand(砂)、その間の平均粒径のものをSilt(シルト)と呼ぶ。海底堆積層の物理パラメータには他にも様々な量が存在するが、基本的にこの平均粒径dが海底堆積層の音波伝搬特性を大きく支配する。
【0033】
次に、重要な海底堆積層の「底質」を表すパラメータは間隙率βである。間隙率βは海底堆積層900に含まれる間隙流体902の体積分率を表す0〜1の量である。すなわち、海底堆積層の密度ρ(液体と固体の混合物としての密度)は、固体粒子901の密度ρr及び間隙流体902の密度ρfを用いて、以下の(1)式で表すことができる。
ρ=ρr(1−β)+ρfβ (1)
【0034】
この(1)式から明らかなように、間隙率βは海底堆積層の「混合物としての密度」と密接に絡んでおり、極めて重要な海底堆積層の物理パラメータである。一方で、海底堆積層の平均粒径dと間隙率βの間には一般的に、図9の下図に904で示すように、平均粒子径が大きくなるに従って、間隙率βが小さくなる、という相関関係がある。よって海底堆積層の平均粒径dがわかれば、おおよその間隙率βが予測でき、また間隙率βがわかれば、海底堆積層のおおよその平均粒径dを予測することができる。さらには、間隙率βはそのほかにも、後述の堆積層物理パラメータを予測するために重要なパラメータとなっており、海底堆積層の「底質」を表す最も重要なパラメータの一つである。
【0035】
次に、図10を用いて、送受部から送信される送信音波の周波数の選定について説明する。図10のグラフの横軸はHz(ヘルツ)で表した音波の周波数であり、縦軸は海底堆積層内の音波のdB/mで表した減衰率である。また、図中の線は、さまざまな底質における音波の減衰率のシミュレーション結果を表している。ここでの底質とは堆積物内の粒子の粒径を意味しており、粒径Sandから、順に粒径が小さくなる方向に、Silty Sand、Sandy Silt、Silt、Clayey Silt、Clayのケースを併せて示している。βと平均粒径が一次的には一対一対応することは図9において説明したとおりである。また図10中のプロット◇は、過去の実験データ(E. L. Hamilton, “Geoacoustic modeling of the sea floor,”J. Acoust. Soc. Am., 68(5), 1313-1340(1980))である。
【0036】
図10をみると、粒径の違いによる多少の値の大小はあるものの、周波数が高くなるに従って減衰率は大きくなっていることがわかる。ここで音波の周波数1MHzのときを見ると、減衰率はほぼ100dB/mとなっている。200dBの大きさの音波が堆積層に入射したときに、1mの深さに音波が伝搬して、返ってきたときに、往復で音波の大きさがほぼゼロになってしまうことを意味する。また、100kHzのときの減衰量はほぼすべての底質に対して10dB/m以上となっている。このとき、1mの往復で音波の減衰は20dB以上、すなわち、受信音波の大きさは1/10以下となってしまう。以上により、本発明においてソーナー送受信部からの音波の送信周波数は1MHz以下とする。さらに好ましくは、100kHz以下の周波数とする。
【0037】
図11を用いて、底質を表す重要な堆積層の物理パラメータである間隙率βの深さ方向分布について説明を行う。図9により、底質において間隙率の大きさβは、堆積物の固体粒子の径dと相関があることを説明した。一方で、間隙率βの大きさは、海底堆積層表面から深くなるにしたがって、徐々に小さくなって行くという特性を持っている。図11は異なる2カ所(場所A・場所B)の堆積層の間隙率の深さ方向分布を示したものである。図中のプロット◇は場所Aでの計測結果、プロット◆は場所Bでの計測結果を示している。これらの計測結果は、堆積層の深さzを用いて、以下の(2)式によって近似することができる。
β=βmin+(1−βmin)exp(−pz-q) (2)
【0038】
(2)式中のβminは、深いところでの最終間隙率に相当する。よって、図9の904のデータが示す間隙率βはこのβminに対応する。また、指数関数の係数であるpとqは、図11の近似曲線の形状を決定する値である。(2)式を用いることによって、深さ方向分布を含めた海底堆積層の間隙率分布をβmin、p、qという3つの定数を用いて表現することができる。すなわち、これらβmin、p、qという3つの値は、海底堆積層の底質を表す主要な3つのパラメータと考えることができる。例えば図11に示されている場所Aの間隙率分布の近似曲線1102はβmin=0.72、p=0.54、q=0.54であり、場所Bの近似曲線1103はβmin=0.52、p=0.37、q=0.74となり、これらβmin、p、qの値が決まることによって、堆積層内の間隙率分布を決定することができる。また、前述のように、間隙率βは堆積物の固体粒子の平均粒子径dと相関があることから、これらの値が決まることによって、海底堆積層がどのような底質であるかがわかることになる。
【0039】
このβmin、p、qが、本発明における演算用パラメータに対応する。ソーナー送受信部からの受信信号301を用いて、底質計算部302では、海底堆積層の間隙率分布である、βmin、p、qを計算する。次いで、これらの演算用パラメータが画像補償計算部(第2計算部)304へと伝達される。ここで、海底堆積層の深さ方向の物理パラメータの分布を示す値として、βmin、p、qを説明したが、本発明においては、海底堆積層の深さ方向の物理パラメータ分布を示す、いかなる複数のパラメータを演算用パラメータとして用いてもよいし、もちろん、(2)式以外の近似式を用いてもかまわない。
【0040】
図12を用いて、βmin、p、q以外の海底堆積層内の物理パラメータの推算について説明を行う。βmin、p、q以外にも、海底堆積層内の音波伝搬特性に影響を及ぼすたくさんのパラメータが存在するが、これらのパラメータはすべて、βmin、p、qを利用することによって推算が可能である。例えば、海底堆積層の透水係数kは、間隙率βを用いた次の(3)式で表される。
k=d2β3/180(1−β2) (3)
【0041】
よって、場所A、場所Bそれぞれの間隙率分布(図11で示したもの)を利用して図12の様に透水係数kの堆積層深さ方向の分布を場所Aでは実線1200のように、場所Bでは一点鎖線1201の様に計算することができる。また、透水係数以外にも、間隙寸法パラメータ、構造因子、体積弾性率、剛性率などの海底堆積層の音波伝搬を特徴づける主要なパラメータを間隙率βから計算することができるため、βmin、p、qを基本の演算用パラメータとすることで、海底堆積層内の物理パラメータを明らかにすることができる。
【0042】
このように、海底堆積層の深さ方向の物理パラメータの分布を示す値として、例えばβmin、p、qを選ぶことによって求められた海底堆積層の特性を用いて、堆積層内の音波伝搬がどの程度、堆積層がない場合と比べて異なっているのか、すなわち音波伝搬のズレ分を計算することができる。画像補償計算部(第2計算部)304では、前記の演算用パラメータ303の入力を受けて、海底堆積層内の音波伝搬に基因するソーナー画像のズレ分を計算する。図13、図14を用いて、まず音波のズレ分の計算について説明し。図15、図16を用いて画像補償におけるズレ分の計算方法の実施例について説明する。
【0043】
図13は、海底堆積層1300に対して、ソーナー1301から送信音波1302がθ=30°の入射俯角で照射された時の、堆積層内の音波伝搬特性の計算結果を示すものである。ここで座標系は、海底堆積層に平行な方向1303が音波の到達レンジの方向、海底堆積層表面と垂直な方向1304が海底堆積層の深さ方向である。また、グラフ130が堆積層深さに対する音速の変化を、グラフ131が堆積層深さに対して音波の到達するレンジの大きさを示したもの、さらにグラフ132が到達レンジに対して音波の強度がどのようになっているかを示したものである。
【0044】
まず、図13のグラフ130を見ると、異なる底質である場所A・場所Bにおいて、海底堆積層内の音速は大きく違うことがわかる。またこれらの音速は深さ方向に分布を持っている。実線1305は図11における場所Aの音速分布であり、一点鎖線1306は場所Bの音速分布である。1305,1306ともに、堆積層表面(0m地点)での音速1533m/s(海水中の音速)から、堆積層の深さが大きくなるに従って音速は徐々に大きくなってゆく。一方で、音速の変化の度合いは場所によって異なり、堆積層1m深さにおける音速は場所Aでは1555m/sであり、場所Bでは1660m/sとなっている。一方で、堆積層の間隙率分布(底質)がわかれば、このように底質の異なる場所に応じた、音速分布を計算することができる。さらに、グラフ130において、点線1307は堆積層が存在せず海水のみである時の音速を示している。当然、音速は1533m/sで一定である。よって場所Aの音速分布1305及び場所Bの音速分布1306と、海水中での音速1307を比較することで、堆積層が存在しないとき(海水のみのとき)と堆積層内の音速分布との差分値も計算することができる。
【0045】
次に、図13のグラフ131を見ると、音波が堆積層の中に伝搬するときに場所によって異なる屈折を受けて、異なるパスを通って進むことがわかる。実線1308は場所Aにおける堆積層内の音波の伝搬経路を示しており、一点鎖線1309は場所Bにおける堆積層内の音波の伝搬経路である。双方とも堆積層への入射俯角は30°である。場所Aにおいては、堆積層1mの深さにおいて15.6mの到達レンジであるが、場所Bにおいては16.5m程度の到達レンジとなっている。深さ1mの距離では1m近い場所のズレとなっていることがわかる。一方で、堆積層内の間隙率分布(底質)がわかれば、このように底質の異なる場所に応じた、音波の伝搬経路を計算することができる。さらに、グラフ131において点線1310は堆積層が存在せず海水のみであるときの音波の伝搬経路を示している。当然、物理パラメータが変化しないので、直線の伝搬経路となっている。よって、場所Aの伝搬経路1308及び場所Bの伝搬経路1309と、海水中での伝搬経路1310を比較することで、堆積層が存在しないとき(海水のみの時)と堆積層内の伝搬経路との差分値も計算することができる。
【0046】
次に、図13のグラフ132を見ると、音波の強さの変化度合いが場所によって異なることがわかる。実線1311は場所Aにおける音波の到達レンジに対するdB(デシベル)表記された音波の強さであり、一点鎖線1312は場所Bにおける音波の到達レンジに対するdB表記された音波の強さである。音波の強さは、堆積層に入射したときの音波の強さからの変化分で表している。すなわち、堆積層表面(0m地点)において、100dBの音波の強さであったとき、例えば場所Bでは15.6mの到達レンジにおいて、100−10dB=90dBの強さになっている。場所A、場所Bを比べると、音波の強さが−10dBとなる到達レンジは、場所Aにおいては15.6m、場所Bにおいては16.5m程度となっており、場所によって異なる音波の減衰となっていることがわかる。一方で、堆積層内の間隙率分布(底質)がわかれば、このように底質の異なる場所に応じた、音波の減衰量の分布を計算することができる。さらにグラフ132において、点線1313は堆積層が存在せず海水のみであるときの音波の強さの変化を示している。海水中は0.01dB/mと、とても小さい減衰率であるために、グラフ132に示すような高々数m程度のレンジ方向の移動に対して、音波の強さに変化は見られない。よって、場所Aの音波の強さの分布1311及び場所Bの音波の強さの分布と、海水中での音波の強さの分布1313を比較することで、堆積層が存在しないとき(海水のみの時)と堆積層内の音波の強さの分布の差分値も計算することができる。
【0047】
以上、図13のグラフ130、グラフ131、グラフ132を使って、場所に応じて異なる底質を持つ堆積層内で、音波の伝搬特性が大きく異なることが示されると同時に、堆積層の底質(ここでは深さ方向の間隙率分布)がわかれば、海水しかないときと比べて、どれだけの量、音波の伝搬特性がシフトしているか、すなわちズレ分を算出することができる。これらのズレ分は、堆積層がないと仮定して作られる通常ソーナー画像へのズレ分でもあり、これらのズレ分を補正することで、ソーナー画像の質を向上させることができる。
【0048】
図14、図15を用いて、前記の音波伝搬特性のズレ分をどのように画像の補償値として用いるか説明を行う。これは第2計算部である画像補償計算部304で計算する堆積層の画像補償値、すなわち補正用データ305の実施例に対応する。
【0049】
詳しい説明に先んじて、図14を用いてソーナーで堆積層内の画像を取得する形態について簡単に説明を行う。まず、ソーナー1400は画像を形成する際に、移動しながら画像を取得する。移動方向を1402に示している。また、ソーナーの移動方向をアジマス方向1403と呼ぶ。また、ソーナーから音波が照射される方向の水平距離をレンジ方向1404と呼ぶ。ソーナー1400から照射された音波の反射音を一本ずつ集めたものがソーナー画像1405である。ソーナー画像1405におけるアジマス方向1403及びレンジ方向1404も図中に示している。ソーナーから送信された音波は海水中1401を伝搬して、海底堆積層1406の表面に到達し投影面1407を形成する。海底面の画像化を行う場合は、この海底面の音波投影面1407からの反射音を一本一本集めたものとして、ソーナー画像1405が作成されるが、堆積層内の画像を取得するときには、音波が海底面に到達した後に、海底堆積層1406の中に伝搬し、海底堆積層内の音波投影面1408となることを考えなければならない。よってソーナー画像は海底堆積層内の音波投影面1408からの反射音信号1409を一本一本集めてソーナー画像1405を作成することになる。ここで、反射音信号1409にはこれまで説明してきたように、堆積層内音波伝搬の特性に起因した、音速、伝播経路及び減衰量などのズレ分が存在する。
【0050】
図15を使って、これらのズレ分の補償について説明する。図15には、本発明における補正用データの好適な実施例のうち3つ、すなわち音速補正用データ150、伝搬経路補正用データ151及び減衰量補正用データ152、を説明するものである。それぞれ、図13で説明した、堆積層内音速分布、堆積層内伝搬経路及び堆積層内の音波の強さの計算結果に対応した補正用データとなっている。
【0051】
まず音速補正用データ150について説明する。ここでは、図13のグラフ130で説明した、堆積層の底質から計算された音速分布を用いる。堆積層内の深さ方向の音速分布c(z)がわかることから、堆積層がない場合(海水のみの場合、1500)に距離Lの音波の伝搬時間は、海水の音速c0を用いて、t=L/c0秒かかるとき、堆積層内の場合(1501)、音波の伝搬時間t’は以下の(4)式から算出することができる。
【0052】
【数1】

【0053】
ここでθは堆積層への入射俯角の大きさ、zは堆積層深さ方向、Zは補正対象の堆積層深さであり、音波の伝搬方向の距離L(=Z/sinθ)の地点に対応する。
【0054】
これより、堆積層があることによって生じる音波の伝搬時間のズレ分を(t’−t)秒と求めることができる。このズレ分(t’−t)は、1502に矢印で示すようにソーナー画像を構成する任意の点について算出することができる。また、1503のように、ソーナー画像を構成する元の受信信号の一本一本の(一回の音波の送受に対応する)データに対して個別に与えることもできる。
【0055】
次に、伝搬経路補正用データ151について説明する。ここでは図13のグラフ131で説明した、堆積層内の底質から計算された音波伝搬経路を用いる。堆積層内に音波が伝搬するときには、海水のみの音波の伝搬経路1504と異なり、堆積層内で屈折を受け、1505のように伝搬経路が変わる。このとき、堆積層内深さZの地点において、伝搬経路の違いによるレンジ方向のズレ分1506を生じる。このレンジ方向ズレ分は、前出の音速分布に基因する画像のズレ分と同様に、1507に矢印で示すように、ソーナー画像上の任意の点について算出することができる。また、1508のように、ソーナー画像を構成する元の受信信号の一本一本の(一回の音波の送受に対応する)データに対して個別に与えることもできる。
【0056】
3つめに、減衰量補正用データ152について説明する。ここでは図13のグラフ132で説明した、堆積層内の底質から計算された音波の強さの分布を用いる。図13のグラフ132で説明したように、堆積層内に音波が伝搬するときには、海水のみの時と比べて、著しく音波が減衰し、また底質に応じてその減衰の度合いが異なる。このような減衰の度合の違いは、受信信号の強さと一対一対応し、最終的な画像の輝度を低下させる。このような減衰量の補正を行うときには、堆積層内の音波の伝搬距離が重要になってくる。図15の152に示すように、ソーナー1509から送信された音波は、堆積層への入射角度によって、堆積層内Zの深さにたどり着くまでの堆積層内の伝搬距離1510がa、b、c、dのように異なる。よって、a、b、c、dの順にレンジ方向の距離が大きくなるに従って、堆積層内で音波が受ける減衰量も大きくなる。よって、図15の下図に示すように横軸をレンジ方向、縦軸をソーナーが受信する音波の強さとすると、レンジ方向に対する受信音波の強さ1513は、レンジ方向長さが大きくなるに従って小さくなる。この傾向そのものは、音波が海水を伝わるときも同じである。しかしながら海底堆積層の減衰率は図13の132に示したように海水と比べて著しく大きいため、音波伝搬に伴う減衰の影響においては、実質的に海底堆積層内の減衰が支配的になる。よって曲線1513は、海底堆積層Zの地点における音波の減衰量として、ソーナー画像の補正用データとして用いることができる。この音波の減衰量は画像の輝度と対応し、1514に示すようにソーナー画像上の任意の点について輝度分布の補正量として算出することができる。また、1513の曲線をそのまま用いて、1515のようにソーナー画像を構成する元の受信信号の一本一本の(一回の音波の送受に対応する)データに対して個別に与えることもできる。
【0057】
ここまで、補正用データ305の形は、ソーナー画像上任意の点について補正量を算出して与える形もしくは、ソーナーの受信信号の個別の一本一本のデータに対して与える補正量であると説明したが、補正量を与える対象は、音波の受信信号〜ソーナー画像生成のプロセス中において表れるいかなるデータ形式であってもよい。また、補正用データの表す量としては、前記の音速補正用データ150、伝搬経路補正用データ151、減衰量補正用データ152のみならず、ソーナーの画像における堆積層内の音波伝搬によるズレを補償するいかなるデータであってもよい。
【0058】
本発明においては、さらに補正用データ305は第3計算部である補償画像処理部306に伝達される。補償画像処理部306には補正用データ305だけでなく、ソーナーの受信信号307も伝達される。ここでは、実際にソーナーの画像を合成する。さらに前記補正用データ305を利用して堆積層の音波伝搬特性の影響を補償した、補正画像データ308を生成する。
【0059】
以下、図16、図17を用いて、補正画像データ作成方法のうち2つに関して説明を行う。まず、図16(a)により、補正用データ305がソーナー画像の任意の点に対する補正量である場合について説明する。例えば補償画像処理部306においては、ソーナー送受信部からの受信信号1601と、補正用データ1602との和算を行う。ソーナーの送受信部からの受信信号1601には、ソーナー画像の一点一点の場所における堆積層によるズレ分1603が存在するが、補正用データ1602は、一点一点の場所におけるズレ分の補償量1604を値として持つ。そのため、ソーナー画像1601上の各画素の位置を補正用データ1602のズレ補償量1604に従って変位させることで、堆積層の音波伝搬に基因するズレ分を解消することができる。この補償後のデータをソーナー画像処理プロセス1605によって合成することで、堆積層補償がなされたソーナー画像、すなわち補正画像データ1606が生成される。この補正画像データは、図3における補正画像データ308と同一のものである。
【0060】
図17(a)は、補正画像データ作成方法の他の例として、ソーナーの受信信号の一本一本のデータに対して補正量として補正用データ305を与える方法の説明図である。ここでは、図13、図15で示された音波の強さの分布、すなわち減衰量に関する補正を例に説明する。1701はソーナー信号からの受信信号そのものである。時間が大きくなるにつれて、レンジ方向の遠方の対象物からの反射音となっている。この受信信号はレンジ方向遠方になるに従って、堆積層からの減衰量が大きくなることは図13、図15で説明した通りである。よって、受信信号1701の時系列の一点一点に対応した減衰補正量1702を補正用データとして用いることができる。ここで、受信信号1701と減衰補正量1702を乗算することによって、堆積層の減衰が補正された、補正された受信信号1703を計算する。この処理はソーナー画像を合成する際に用いられる一本一本の受信信号データ307に対して逐次行い、それらのデータをソーナー画像処理プロセス1704によって合成することで、堆積層の減衰量補正がなされたソーナー画像すなわち補正画像データ1705が生成される。この補正画像データは、図3における補正画像データ308と同一のものである。実際の応用に際しては、図15に示された3種類の補正のうち1種類を使用しても良いし、複数の補正を組み合わせて行っても良い。また、図15に示された音速/伝搬経路/減衰量の補正のみならず、周波数成分の変化/音波の非線形成分の変化/受信音波の波形歪みなど、堆積層の底質の違いによって表れる音波伝搬の特性の違いを反映した量を利用した補正であれば、いかなる補正をいかなる組み合わせで用いてもよい。
【0061】
以上のプロセスをもって、図3で説明した実施例において、(1)堆積層の底質を計算し、(2)底質に依存するソーナー画像の補正用データを作成し、(3)ソーナー受信信号と補正用データを用いて、堆積層の補正がされた補正画像データを作成する、という一次的な堆積層の底質を補償した処理が完了する。しかしながら、一次的に推算された演算用パラメータは、真の底質と近い値であるかもしれないが、必ずしも正しい値であるとは限らない。また、ソーナー画像処理のプロセス中に補正用データを入れる際に完全な形で堆積層の補正が行えないことが考えられる。また、図6で説明したように、堆積層の底質を表す演算用パラメータとして、第2送受部である底質測定器600を用いることもあり、またデータベース部である既知密度分布データ604を用いることもある。まとめると、一次的な堆積層補正のプロセスにおいて用いられる演算用パラメータは、対象の堆積層の底質に「近い」値であるが、一般的に真の値ではない。
【0062】
上記の様な演算用パラメータの不確かさ(真値からのズレ)が、どのような影響となって表れるかを以下に説明する。図16(b)及び図17(b)に、補正用データを用いないときのソーナー画像1608,1707を示す。補正画像データ1606は、補正を行わないソーナー画像1608と比べて画像中の対象物のズレが少なくなり、補正画像データ1705は、補正を行わないソーナー画像1707と比べて画像中の輝度ムラが少ない。一方で、完全には堆積層の音波伝搬の影響を解消することができず、補正画像データ1606においては、真の結像位置から未だズレ分の残渣や輪郭のぼやけが残ってしまう。補正画像データ1705においては、若干の輝度ムラやレンジ方向遠方で若干輝度が低い画像になってしまう。
【0063】
よって、本発明においては、一次的に補正された補正画像データを、基準画像と比較することで対照情報を生成する。その後、さらに対照情報を用いて修正された演算用パラメータを算出し、演算用パラメータを真値に近づけてゆくフィードバックループを加えた。この構成については、図3〜図5を用いて説明した通りである。ここで、対照情報は、前記補正画像データと前記基準画像データとの間の、画像差分値、画像相関量、画像の信号レベルのいずれか1つもしくはそれらの複数の組み合わせの値を比較することで生成される、補正画像と原画像データとの差が信号強度に変換された値であり、また、修正された演算用パラメータは、対照情報に基づいて、画像データの差分として表れる対照情報の値から計算された、海底堆積層の物理パラメータのいずれか一つもしくは複数のパラメータの組み合わせが信号強度に変換された値を計算し、第2計算部に入力される演算用パラメータとして用いることを特徴とする。以下、図18、図19を用いて、図3〜図5で説明した、補正画像データとの比較に用いる基準画像310、対照情報生成部(第4計算部)309で計算される対照情報311、底質パラメータ修正部(第5計算部)312において計算される修正された演算用パラメータ500について詳しく説明する。
【0064】
図18を用いて、基準画像310として、図4における通常ソーナー画像処理部(第6計算部)400で生成された通常のソーナー画像(原画像)402を用いる場合について説明する。この処理では、例えば図16で示すような真の結像位置からのズレ分の残渣や輪郭のぼやけをさらに解消することができる。図18には、堆積層補正が一次的になされた補正画像データ1801と通常ソーナー画像1800を示した。これら2つの画像において画像の質がどの程度向上したかを示す値を算出する。この値が対照情報生成部(第4計算部)309で計算される対照情報311である。ここでの対照情報311には2つの例が考えられる。一つは、対象物がどれだけはっきりと描出されているかを示す値である。具体的には、対象物のコントラスト値、輪郭のシャープさを表す、画像の微分値を計算する。もう一つは、対象物の位置のズレ分の補正の向上を表す量であり、これは対象物の重心の移動量1803などを用いることができる。これらの値は、「最適な値」は与えられていないものの、値が増えれば(もしくは減れば)画像の質が向上していることを示す値である。
【0065】
次に、対照情報311は底質パラメータ修正部(第5計算部)312に伝達され、ここで、堆積層の底質を表すパラメータである演算用パラメータの再推定を行い、修正された演算用パラメータを生成する。対照情報生成部309で計算された対照情報311を用いて、さらに画質の向上をもたらすように、演算用パラメータの修正を行う。図5に示すように、修正された演算用パラメータ500は入力切替部(第2入力切替部)501に伝達される。ここで、第1計算部302で計算された演算用パラメータといずれを演算用パラメータとして用いるかの切替を受け、画像補償計算部304へと送られ、再度補正画像の生成が行われる。図18においては、修正された演算用パラメータβmin、p、q(1804)が示されている。ここで、演算用パラメータの修正は、例えば、βmin、p、qの一つもしくは複数の値を1%ずつ変化させるという手法がとられる。また、演算用パラメータの修正は、対照情報311が画像の向上を示す方向に変化するように選ばれる。
【0066】
図18の下段のグラフは、計算回数(ループを回す回数:修正された演算用パラメータを用いて画像を再構成する回数)に対して、対照情報(例えばコントラスト値や微分値)の変化を示すものである。ここで、フィードバックループによる演算用パラメータ修正完了の設定については、2通りの方法がある。第1の方法は、計算回数に例えばn=10回などの上限を設けておく方法、第2の方法は、対照情報の値と通常ソーナー画像データにおける値1808との差1807がほぼ一定値に落ち着き、変化しなくなったときに計算を完了するという方法である。また、本実施例には、補正を行った結果、画像の質が落ちてしまったとき(1809)に、演算パラメータを再度修正することで、最適な方向に戻すこと(1810)ができるという大きな効果がある。
【0067】
図19を用いて、基準画像310として、図4における参照画像記憶部(メモリ/記憶部)403に予め用意された最適な画像404を用いる場合について説明する。この処理では、例えば図17に示したような堆積層内減衰量補正を行ったときに、一次的な堆積層補正では取り除けなかった、画像の輝度ムラを取り除くことができる。図19には、堆積層補正が一次的になされた補正画像データ1900と、参照画像記憶部に予め用意された最適な画像1901が示されている。ここで最適な画像は例えば、海水中において作成されたソーナー画像であってもよいし、堆積層補正が完全になされたソーナー画像の一つであってもよい。いずれにせよ、堆積層の影響がソーナー画像の中に存在しない形の画像データであればいかなる画像でもかまわない。
【0068】
ここで、ソーナー画像中の、アジマス方向の一本のデータ1902を取り出して、2つの画像1900,1901間の画像輝度値の差分をとる。もし、堆積層の影響が完全に解消されていれば、この値はすべてのレンジ方向についてゼロである。一方で底質パラメータの推算が完全でない時などには、取り除ききれない影響が、1903のようにレンジ方向に分布を持って表れてくる。これは、堆積層補償を行わないときのソーナー画像における輝度ムラ1904と比べると大きさは小さくなっているものの、取り切れない残渣1905が残っている。そこで、この残渣分1905が、ここでの対照情報生成部(第4計算部)で計算される対照情報311となる。また、この対照情報は、図18の説明の場合と同様に底質パラメータ修正部(第5計算部)312に伝達され、ここで、堆積層の底質を表すパラメータである演算用パラメータの再推定を行い、修正された演算用パラメータ1906を生成する。演算パラメータとして例えばβmin、p、q(1906)を用いることは図18の実施例と同様である。なお、基準画像310として参照画像記憶部(メモリ/記憶部)403に予め用意された最適な画像404を用いる場合には、参照画像との差分値である対照情報の値がゼロに近づくように、演算パラメータβmin、p、qを修正する。
【0069】
図19の下段のグラフは、計算回数(ループを回す回数:修正された演算用パラメータを用いて画像を再構成する回数)に対する対照情報(ここでは画像輝度値の差分)の変化を示すものである。前述のようにここでは最適な画像との差分値を対照情報として用いるために、この対照情報の値は、ゼロ(点線1910)の近傍にばらつく。よってこのゼロとの差分の1909が、ループを回す回数に従って徐々に小さくなって行くようなループ処理となる。この差分値(対照情報の値)がゼロに近づけば近づくほど、堆積層の補償が高精度で行われていることになる。よって、この対照情報との差分値がある閾値Tを下回ったときにループ処理を終了させればよい。図18の場合と同様に、経験的にループ回数n=10回などのように回数を予め決定してもよい。
【0070】
ここで、基準画像と補正画像データとの間で計算される対照情報に関しては、図18、図19において説明した対照情報の例以外にも、画像の差分値・相関係数・ノイズ成分の大きさの違いなど、いかなる画像間の差分を用いてよい。また、そのとき用いられる対照情報は、図18、図19の場合と同様に、対照情報の値から、底質パラメータ修正部(第5計算部)において演算用パラメータの再推定が行うことが可能な情報である。また、修正された演算用パラメータとしては、βmin、p、qについて説明したが、これは前述のように(2)式を用いて算出された、海底堆積層の深さ方向の物理パラメータの分布を示す値である。もちろん、先の演算用パラメータと同様、修正された演算用パラメータとしても海底堆積層の深さ方向の物理パラメータ分布を示す、いかなる複数のパラメータを修正された演算用パラメータとして用いてもよいし、もちろん、(2)式以外の近似式を用いてもかまわない。以上、本発明における堆積層補償の骨格、すなわち、(1)堆積層の底質パラメータから堆積層補正がされたソーナー画像を作成する、(2)画像補正の効果を判定し、フィードバックすることでさらに良好な堆積層補正がされたソーナー画像を作成する、というループについて説明を行った。
【0071】
次に、図20を用いて、演算用パラメータとして、図6に示した第2送受部である底質測定器600を用いる場合と、データベース部である既知密度分布データ604を用いる場合について説明する。まず図20(a)は、第2送受部である底質測定器が航走体2001に具備されている場合の例を示す。ここで航走体2001には、第1送受部であるソーナー送受信部2002も具備される。第1の実施例としては、このソーナー送受信部2002による受信信号を用いて底質を表すパラメータである演算用パラメータの推算を行う例が考えられる。これは、これまで図3〜図5の実施例で示した場合に対応する。このソーナー送受信部2002からソーナー音波が堆積層2003に対して送信され、また受信された音波に対して、前記ソーナー原画像の生成及び底質の補償された補正画像が生成される。ここで、図20(a)においては、さらに第2送受部である底質測定器2004が具備される。底質測定器2004は、堆積層2003に対して底質測定用の音波を送波し、受波する。またソーナー送受信部2002で受信した受信信号及び底質測定器2004で受信した受信信号は、入力切替部602以下の堆積層を補償したソーナー画像を生成するための画像処理ブロック2005に伝達される。
【0072】
ここで、第2送受部における音波の周波数は5kHz以上10MHz以下、さらに好ましくは100kHz以上10MHz以下である。底質測定器として音波の送受信を行う場合には、100kHz以下の比較的低周波の音波を用いて堆積層の内部に音波が十分透過することを目的とする場合と、100kHz以上の比較的高周波の音波を用いて、波長を短くすることで堆積層内部の密度分布や間隙率分布を、高い空間分解能で測定することを目的とする場合の2通りがある。そのため、底質測定器2004の周波数は、5kHz以上10MHz以下、さらに好ましくは100kHz以上10MHz以下である。
【0073】
次に、図20(b)においては、第2送受部である底質測定器2007は航走体2001から物理的に離れて設けられる。この場合、底質測定器は前記の第2送受部の代わりに、堆積物の内部のコアサンプルを取得して、密度分布や間隙率分布を物理的に測定する堆積物コアサンプラーであっても、音波の送受を用いるのでなく電磁式送受波器などの堆積物物理パラメータ測定器であってもよい。もちろん音波の送受を行っても良く、その場合、底質測定器2007の周波数は5kHz以上10MHz以下、さらに好ましくは100kHz以上10MHz以下とする。このとき、図20(a)と同様に、ソーナー送受信部2002で受信した受信信号及び底質測定器2007で受信した受信信号は、入力切替部602以下の堆積層を補償したソーナー画像を生成するための画像処理ブロック2005に伝達される。
【0074】
図20(c)は、予め用意されたデータベース部2009からの堆積層の底質を表す演算用パラメータを用いる場合の例を示している。これは図6における、既知密度分布データ604の情報を第2計算部である画像補償計算部304で使用する場合に対応する。この場合、底質測定器は使用せずに、ソーナー送受信部2002で受信した受信信号及びデータベース部2009に保持される演算用パラメータは、入力切替部501以下の堆積層を補償したソーナー画像を生成するための画像処理ブロック2005に伝達される。
【0075】
図21を用いて、音波を用いた堆積層の底質パラメータ測定方法の実施例をいくつか示す。図21(a)は、堆積層の底質によって減衰率が違うことを利用した底質推算方法の説明図である。ここで底質測定器2101から音波が照射される。左側は場所Aの堆積層2102を測定している図、右側は場所Bの堆積層2103を測定している図である。このとき、受信部において受信される受信音波の中には、堆積層の表面で反射した音波2104,2105のほかに、堆積層内部から帰ってくる音波2106,2107がある。ここで堆積層内部からの受信信号2106と2107には、受信レベルに大きさの違いが生じる。これは図10において示したとおり、堆積層の底質によって音波の減衰率が異なるためであり、内部からの音波の振幅2106と2107の値からそれぞれの底質パラメータを推算することができる。例えば、2104の値を10としたとき、2106の値が5だったときには、簡便に−6 dBの減衰量となり、図10のようなシミュレーション結果と照らし合わせることで、そのときの間隙率βの大きさを推算することができる。
【0076】
図21(b)は、堆積層の底質によって堆積層内の音波の到達レンジが変わることを利用した底質推算方法の説明図である。推算方法の説明に先立ち、図22を用いて、到達レンジが底質に対してどのように変わるかを説明する。
【0077】
図22は、堆積層の音波伝搬計算によるシミュレーション結果であり、堆積層の底質(堆積物密度)とソーナーの到達レンジの関係を表すグラフである。ここでソーナーの到達レンジとは、実際に音波画像が取得できる範囲と一対一対応する。グラフ中において、線2201、線2202及び線2203は、それぞれ音波の周波数がf1,f2及びf3の時に対応しており、数字が大きくなるに従って周波数は高くなっている。さらにグラフに示されるように、到達レンジの大きさも堆積層の底質に依存して大きく変わることがわかる。堆積物密度が小さいときには到達レンジが大きくなり、100m以上の到達レンジである場合もある。一方で、堆積物密度が大きいときには到達レンジは高々20mでしかないこともわかる。このように到達レンジの大きさが変わると言うことは、底質によって、ソーナーの期待される性能(どれだけ効率よく探査が行えるか)が大きく変わることに他ならない。また、図22のグラフから、この傾向が音波の周波数によっても同様に大きく変わることが明らかである。よって、ある周波数の音波による到達レンジを測定することができれば、堆積層の底質が逆算できることがわかる。
【0078】
図21(b)に戻ると、左側が堆積物密度が小さい場所A(密度=2.1)、右側が堆積物密度が大きい場所B(密度=1.7)である。このとき図22を見ると、周波数がf1の時、場所Aの到達レンジは45m、場所Bの到達レンジは20mである。図21に、場所Aの到達レンジ2110、場所Bの到達レンジ2111を図示している。ここで、ある参照対象物2109を堆積層の中に設置することで、その参照対象物2109がソーナー画像に見え始める位置が場所Aと場所Bとで異なることがわかる。場所Aにおいては、参照対象物はソーナーから比較的遠い距離2112の場所から見え始める。一方で場所Bにおいては、ソーナーからの距離2113が近くならないと参照対象物2109の画像は見えない。ここで、この距離2112及び距離2113は、堆積層の密度に依存した値になることがわかる。この距離をソーナー画像上で測ることにより、堆積層2102,2103の底質が推算できる。この場合は、距離から逆算して、堆積層の密度がそれぞれ場所Aでは2.1、場所Bでは1.7であることがわかる。
【0079】
図21(c)は、堆積層の底質によって堆積層表面での臨界角の大きさが変わることを利用した底質推算方法の説明図である。推算方法の説明に先立ち、図23を用いて、音波の臨界角が底質に対してどのように変わるかを説明する。
【0080】
図23は、堆積層の音波伝搬計算によるシミュレーション結果であり、堆積層の底質(堆積物密度)とソーナー入射臨界角の関係を表すグラフである。ここで、入射臨界角とは、堆積層の中に音波が伝わってゆかなくなる角度であり、入射臨界角以下の角度で堆積層に音波を入射しても、堆積層中に音波は透過してゆかない。グラフ中において、線2301,2302,2303,2304及び2305はそれぞれ、周波数がf1,f2,f3,f4及びf5のときの底質と臨界角の関係を示しており、f1からf5まで番号が大きくなるに従って周波数が高くなっている。図23のグラフより、底質に依存してソーナーの入射臨界角は大きく変わることがわかる。すなわち、堆積層の底質によって、堆積層中に伝わる音波の量は大きく変わることが示される。また、この傾向は音波の周波数によっても同様に大きく変わることがグラフに示されている。よって、ある周波数の音波臨界角の大きさがわかれば、堆積層の底質が逆算できることがわかる。
【0081】
ここで、図21(c)に戻ると、音波送波器2115から送信された音波は、ある一定の角度以下の入射角では全反射しか起こさない。そこで、レシーバ列2116を用意することで、グラフ2117に示すように、レシーバ位置によって信号強度が急激にあがる場所が存在する。そのレシーバ位置から、臨界角の測定が可能である。よって本実施例からは臨界角を測定することにより、堆積層の底質が推算できる。
【0082】
図24は、本発明の音波撮像装置における画像表示部、底質パラメータ表示部、入力切替部及び底質パラメータ調整部の例を示す図である。図24(a)に示すように、音波撮像装置2400には、基準画像を表示する基準画像表示部2401と補正画像を表示する補正画像表示部が具備されている。ただし、図24(b)に示すように、基準画像表示部2401はなくてもよく、補正画像表示部2402が具備されているだけでもよい。本例の音波撮像装置2400には、3つの入力切替部が設けられている。図の例では装置筐体に3つの入力切替部が用意されているが、装置内部で切替えを行ってもよく、音波撮像装置筐体に具備される入力切替部は0〜3のいずれの個数でもよい。ここでは、基準画像としてメモリ/記憶部の画像データとソーナー送受信部からの画像データを切り分ける第1入力切替部2404が具備される。また、演算パラメータの切替を、既知密度分布データ、第1計算部で計算された演算パラメータ、自動的な画質向上ループを行う場合の修正された演算パラメータ、調整部2407においてマニュアルで調整された、調整された演算パラメータの4つの演算パラメータの間で切り替える第2切替部2405が設けられている。最後に、第1計算部への入力として、ソーナー送受信部と底質測定器のどちらの受信信号を使うかを切り替える第3入力切替部2406が設けられている。
【0083】
さらに、音波撮像装置2400には、演算用パラメータの調整部2407が具備される。調整部2407は、つまみ部でも、レバーの形をとっていてもよく、実質的に演算用パラメータを調整可能であればよい。また調整される演算用パラメータは複数であってもよく、したがって演算用パラメータ調整部2407は複数存在してもよい。図示の例では、明示的に演算用パラメータとして、図11にて説明した堆積層の間隙率分布を表すパラメータであるβmin、p、qを調整する調整部を有し、更に演算用パラメータの表示部2408を有する。演算用パラメータの表示部2408においては、そのときの補正画像データの作成に用いられる演算用パラメータの物理的な値が表示される。ここでも表示される演算用パラメータは複数であってもよく、したがって演算用パラメータ(底質パラメータ)表示部2408は複数存在してもよい。ここでは、入力切替部2405の切替に従って、既知密度分布データ、第1計算部で計算された演算パラメータ、自動的な画質向上ループを行う場合の修正された演算パラメータ、調整部2407においてマニュアルで調整された、調整された演算パラメータの4つの演算パラメータのうちいずれかの演算パラメータが表示される。図24においては、入力切替部2405はAuto位置にあるため、修正された演算用パラメータの値が、表示部2408に表示されている。また、βminが0.72の時、pが0.54のとき、qが0.53の時の値が図24には表示されている。
【0084】
以上により、図24に示した音波撮像装置は、参照画像及び補償画像、さらには演算用パラメータを、オペレータが参照しながら、底質パラメータを調整することが可能となり、より真の画像に近い補償画像を得ることができ、また図5から図7に示したフィードバックループに従って、自動的により好適な堆積層の補正画像データを得ることもできる。
【0085】
図25を用いて、演算用パラメータを利用してソーナーの音波照射条件を変化させる方法について説明する。図25(a)は、底質に応じて、1回の走査による探索範囲を変更する例を示している。底質が推算されると、図21で説明したように、その底質に応じた到達レンジが推算できる。そのため、図25(a)の例では、たとえば底質A(2501)においては、5回の探索、底質B(2502)においては2回の探索というように、底質に応じた超音波送信条件の制御を行う。
【0086】
また、図22において説明したように、到達レンジは周波数によって可変である。図25(b)では、それを利用して周波数変更によるアダプティブな到達レンジ変更を行っている。左図に示すように、周波数A(2507)では、到達レンジ2504が短いため埋没物2506を画像化するには十分な到達レンジが稼げないとする。このとき、右図に示すように、周波数を制御し、周波数B(2508)に変更することによって、埋没物2506を画像化するに十分な到達レンジ2505をもった超音波の送受信を行うことができる。
【0087】
図25に示した方法のほか、堆積層の底質に依存したより高効率な音波送信・受信が可能となるようないかなる音波の照射条件の制御も本発明の範囲に属する。たとえば、減衰率を考慮した送信音圧の変更、ビームパターンの変更、音波パルスの波形の変更、音波送信間隔の変更、なども本発明の範疇である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】海中及び海底堆積層における音波撮像装置の概略図。
【図2】海底堆積層による音波画像のズレ分・歪み分を示す説明図。
【図3】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの基本実施例を示す図。
【図4】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの実施例を示す図。
【図5】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの実施例を示す図。
【図6】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの実施例を示す図。
【図7】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの実施例を示す図。
【図8】本発明による音波撮像装置及び画像処理アルゴリズムの実施例を示す図。
【図9】海底堆積層の底質パラメータを説明する図。
【図10】ソーナー周波数に対する堆積層内の減衰率を表すグラフ。
【図11】堆積層深さに対する間隙率の場所Aと場所Bにおける実測値を示す図。
【図12】堆積層内の物理パラメータの計算例を示す図。
【図13】場所の違いによる音速、到達レンジ、音波の強さの違いを示す図。
【図14】ソーナーによる堆積層内画像化を説明する図。
【図15】堆積層の画像補正パラメータを示す図。
【図16】補正画像データの一例を示す図。
【図17】補正画像データの一例を示す図。
【図18】対照情報と演算パラメータ修正の一例を示す図。
【図19】対照情報と演算パラメータ修正の一例を示す図。
【図20】底質測定器とデータベース部の実施例を示す図。
【図21】底質測定器による底質推算方法の実施例を示す図。
【図22】到達レンジと密度の関係を示す図。
【図23】入射臨界角と密度の関係を示す図。
【図24】本発明による音波撮像装置の表示部の例を示す図。
【図25】ソーナー送信信号制御の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0089】
100 船体
101 航走体
102 ソーナー
103 ソーナーからの送信音波
104 対象物
105 海底面
106 ソーナーへの受信音波
107 ソーナー画像
108 ソーナー画像上の対象物の結像画像
109 海底堆積層
110 海底堆積層に埋まった対象物
200 ソーナー
201 ソーナーからの送信音波
202 対象物
203 海中対象物のソーナー画像
204 ソーナー画像上の対象物の結像画像
205 堆積層
206 海底堆積層中の対象物
207 海底堆積層に対して照射されたソーナーからの送信音波
208 海底堆積層に対象物がある場合のソーナー画像
209 ソーナー画像上の海底堆積層中の対象物
300 ソーナー送受信部(第1送受部)
301 ソーナーの受信信号
302 底質計算部(第1計算部)
303 演算用パラメータ
304 画像補償計算部(第2計算部)
305 補正用データ
306 補償画像処理部(第3計算部)
307 ソーナーの受信信号
308 補正画像データ
309 対象情報生成部(第4計算部)
310 基準画像
311 対照情報
312 底質パラメータ修正部(第5計算部)
400 通常ソーナー画像処理部(第6計算部)
401 ソーナー受信信号
402 通常のソーナー画像
403 参照画像記憶部(メモリ/記憶部)
404 最適な補償画像
405 入力切替部(第1入力切替部)
500 修正された演算用パラメータ
501 入力切替部(第2入力切替部)
502 切替後の演算用パラメータ
600 底質測定器(第2送受部)
601 底質測定器の受信信号
602 入力切替部(第3入力切替部)
603 底質計算部に入力される演算用パラメータ
604 既知密度分布データ(データベース部)
605 既知の演算用パラメータ
606 画像補償計算部に対して伝達される演算用パラメータ
700 底質パラメータツマミ部
701 演算用パラメータ調整信号
702 調整された演算用パラメータ
703 底質表示部(表示部)
704 底質表示部に入力される演算用パラメータ(底質パラメータ)
705 調整された演算用パラメータ
800 ソーナー送信信号制御部(信号制御部)
801 画像処理アルゴリズムのブロック
802 画像処理アルゴリズム中の任意の演算用パラメータ
803 ソーナー送受信部の制御信号
804 制御されたソーナー送信信号
900 海底堆積層の構造を示す図
901 海底堆積層内の固体粒子
902 海底堆積層内の間隙流体
904 平均粒子径dと間隙率βの関係
1102 場所Aの間隙率分布の近似曲線
1103 場所Bの間隙率分布の近似曲線
1200 場所Aにおける透水係数の堆積層深さ方向分布の推算結果
1202 場所Bにおける透水係数の堆積層深さ方向分布の推算結果
130 堆積層深さに対する音速の変化を表すグラフ
131 堆積層深さに対する到達レンジの変化を表すグラフ
132 音波の到達レンジに対する音波の強さの変化を表すグラフ
1300 海底堆積層
1301 ソーナー送受信部
1302 ソーナーからの送信音波
1303 音波送信方向の海底堆積層に水平な成分(到達レンジ方向)
1304 海底堆積層の深さ方向
1305 場所Aの音速分布
1306 場所Bの音速分布
1307 海水の音速
1308 場所Aの音波伝搬経路
1309 場所Bの音波伝搬経路
1310 媒質が海水の場合の音波伝搬経路
1311 場所Aにおける音波の到達レンジに対する音波の強さ
1312 場所Bにおける音波の到達レンジに対する音波の強さ
1313 堆積層が存在せず海水のみであるときの音波の強さの変化を表す図
1400 ソーナー
1401 海水中
1402 航走体(ソーナー)の移動方向
1403 アジマス方向
1404 レンジ報告
1405 ソーナー画像
1406 海底堆積層
1407 海底堆積層表面の音波投影面
1408 海底堆積層内の音波投影面
1409 海底堆積層内の音波投影面からの反射音信号
150 音速補正用データ
151 伝搬経路補正用データ
152 減衰量補正用データ
1500 海水のみの場合の音波伝搬時間
1501 堆積層がある場合の音波伝搬時間
1502 ソーナー画像任意の点に与えた音速補正量(t’−t)
1503 受信信号一本に対して与えた音速補正量
1504 海水のみの場合の音波の伝搬経路
1505 堆積層内の音波の伝搬経路
1506 深さZにおける海水の場合と堆積層の場合のレンジ方向位置の差分
1507 ソーナー画像任意の点に与えた伝搬経路補正量
1508 受信信号一本に対して与えた伝搬経路補正量
1509 ソーナー
1510 堆積層内の伝搬距離
1513 レンジ方向に対する受信音波の強さ
1514 ソーナー画像上の任意の点に与えた輝度分布補正量
1515 受信信号一本に対して与えた輝度補正量
1601 ソーナー送受信部からの受信信号
1602 補正用データ
1603 堆積層によるズレ分
1604 ズレ分の補償量
1605 ソーナー画像処理プロセス
1606 補正画像データ
1608 通常ソーナー画像
1701 ソーナーの受信信号
1702 減衰補正量
1703 補正された受信信号
1704 ソーナー画像処理プロセス
1705 補正画像データ
1707 通常ソーナー画像
1800 通常ソーナー画像
1801 堆積層補正が一次的になされた補正画像データ
1803 重心の移動量
1804 修正された演算用パラメータ
1807 通常ソーナー画像での値との対照情報の値の差分
1808 通常ソーナー画像における対照情報
1809 画像の質が落ちてしまったとき
1810 画像の質の再向上
1900 補正用画像データ
1901 予め用意された最適な画像
1902 アジマス方向の一本の画像データ
1903 堆積層補償を行ったあとの残渣の分布
1904 通常ソーナー画像における輝度ムラの分布
1905 残渣分の量
1906 修正された演算用パラメータ
1909 ゼロとの差分値
1910 縦軸ゼロの線
2001 航走体
2002 ソーナー送受信部
2003 堆積層
2004 底質測定器(第2送受部)
2005 画像処理ブロック
2007 底質測定器
2009 データベース部(既知密度分布データ)
2101 底質測定器
2102 場所Aの堆積層
2103 場所Bの堆積層
2104 場所Aの表面散乱
2105 場所Bの表面散乱
2106 場所Aの堆積層からの受信信号
2107 場所Bの堆積層からの受信信号
2109 参照対象物
2110 場所Aの到達レンジ
2111 場所Bの到達レンジ
2112 場所Aの対象物検知距離
2113 場所Bの対象物検知距離
2115 音波送波器
2116 レシーバ列
2117 レシーバ列の信号強度の分布
2201 周波数f1の時の底質とソーナー到達レンジの関係
2202 周波数f2の時の底質とソーナー到達レンジの関係
2203 周波数f3の時の底質とソーナー到達レンジの関係
2301 周波数f1の時の底質と臨界角の関係
2302 周波数f2の時の底質と臨界角の関係
2303 周波数f3の時の底質と臨界角の関係
2304 周波数f4の時の底質と臨界角の関係
2305 周波数f5の時の底質と臨界角の関係
2400 音波撮像装置筐体
2401 基準画像表示部
2402 補正画像表示部
2404 第1入力切替部
2405 第2入力切替部
2406 第3入力切替部
2407 演算用パラメータ調整部
2408 演算用パラメータ表示部
2501 底質Aの時の掃海計画
2502 底質Bの時の掃海計画
2504 周波数Aにおける到達レンジ
2505 周波数Bにおける到達レンジ
2506 対象物
2507 周波数Aの送信音波
2508 周波数Bの送信音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中の海底堆積層に向けて音波を送波し反射波を受波して受信信号を発生する第1送受部と、
前記第1送受部の受信信号に基づいて海底堆積層の物理パラメータを表す演算用パラメータを計算する第1計算部と、
前記演算用パラメータを用いて、海底堆積層内の音波伝搬によって生じるソーナー画像のズレ分を補正するための補正用データを生成する第2計算部と、
前記第1送受部から発生された受信信号に対して、前記補正用データを用いて前記ズレ分の補正を施した補正画像データを生成する第3計算部と、
前記補正画像データに基づくソーナー画像を表示する画像表示部と
を有することを特徴とする音波撮像装置。
【請求項2】
前記補正画像データを基準画像データと比較しズレ分の補正効果を表す対照情報を生成する第4計算部と、
前記対照情報に基づいて前記演算用パラメータを修正する第5計算部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の音波撮像装置。
【請求項3】
前記第1送受部の受信信号に基づいてソーナー画像データを生成する第6計算部を有し、前記第4計算部は前記基準画像データとして当該ソーナー画像データを用いることを特徴とする請求項2に記載の音波撮像装置。
【請求項4】
予め用意された画像データを保持する記憶部を有し、前記第4計算部は前記基準画像データとして前記記憶部に保持された画像データを用いることを特徴とする請求項2に記載の音波撮像装置。
【請求項5】
前記第2計算部は、前記演算用パラメータとして前記第5計算部によって修正された演算用パラメータを用いて前記補正用データを生成することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項6】
前記第1送受部と独立して海中の海底堆積層に向けて音波を送波し反射波を受波して受信信号を発生する第2送受部を有し、前記第1計算部は、前記第1送受部の受信信号に代えて前記第2送受部の受信信号に基づいて海底堆積層の物理パラメータを表す演算用パラメータを計算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項7】
前記第2送受部から送波する音波の周波数は5kHz以上10MHz以下であることを特徴とする請求項6に記載の音波撮像装置。
【請求項8】
海底堆積層の物理パラメータを測定する測定器を備え、前記第1計算部は、前記第1送受部の受信信号に代えて前記測定器によって測定された信号に基づいて海底堆積層の物理パラメータを表す演算用パラメータを計算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項9】
海底堆積層の物理パラメータを表す複数の演算用パラメータを保持するデータベース部を有し、前記第2計算部は、前記データベース部に保持された演算用パラメータを用いて前記補正用データを生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項10】
前記演算用パラメータの値を調整し、調整された演算用パラメータを前記第2計算部に出力する調整部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項11】
前記演算用パラメータの値を表示する表示部を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項12】
前記画像表示部は、前記ソーナー画像と並べて前記基準画像データに基づく画像を表示できることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項13】
前記演算用パラメータは、海底堆積層の密度、間隙率、あるいは透水係数の深さ方向の分布形状を決定する係数であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項14】
前記対照情報は、前記補正画像データと前記基準画像データとの間の、画像差分値、画像相関量、画像の信号レベルのいずれか1つもしくはそれらの複数の組み合わせの値を比較することで生成される、補正画像と原画像データとの差が信号強度に変換された値であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項15】
前記第5計算部では、前記対照情報に基づいて、画像データの差分として表れる対照情報の値から計算された、海底堆積層の物理パラメータのいずれか一つもしくは複数のパラメータの組み合わせが信号強度に変換された値を計算し、第2計算部に入力される演算用パラメータとして用いることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項16】
前記演算用パラメータの値を用いて、前記第1送受部から送波される音波の送信条件を制御する送信制御部をさらに有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の音波撮像装置。
【請求項17】
前記第1送受部で送信する音波の周波数は1MHz以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の音波撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−71957(P2010−71957A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243099(P2008−243099)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】