説明

顔画像照合装置

【課題】入力顔画像の照合精度を向上させた顔画像照合装置を実現する。
【解決手段】順次取得された複数の入力顔画像を予め登録された登録顔画像と照合する顔画像照合装置であって、複数の登録人物のそれぞれについて、登録顔画像としてこの登録人物の顔向きが相互に異なる複数の顔画像を記憶する記憶部と、入力顔画像ごとに、登録顔画像との類似度を算出する類似度算出手段と、類似度が所定以上の登録顔画像に投票するとともに、複数の入力顔画像の時間的に連続する所定数分について登録顔画像ごとに投票値を集計して投票集計値を求める投票手段と、投票集計値によって複数の登録人物のいずれかを入力顔画像の人物として決定する人物決定手段と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔画像処理装置に関し、特に、複数の入力画像中の人物の顔画像を照合する顔画像照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスの部屋の入り口などにおいて、利用者が扉の前に立って認証装置による認証を受け、認証されると入室が許可される入退室管理システムが利用されている。この入退室管理システムでは、扉の前で入室しようとしている利用者の顔を扉の近くなどに設置された認証用カメラで撮影し、撮影した画像から抽出された入力顔画像と予めシステムに登録されている入室許可対象者の顔画像とを照合する。そして、入力顔画像の人物がシステムに登録されている入室許可対象者の登録顔画像のいずれかと一致すると、撮影された人物は、入室が許可されるべき者として認証され、扉の電気錠が解錠されるので部屋に入ることができる。
【0003】
ここで、顔画像同士の照合を精度良く実施するためには、顔画像に映されている人物の顔向きが互いに同じ方向を向いていることが好ましい。互いに異なる方向を向いた顔が映されている顔画像を用いて照合処理を行うと、目、鼻、口などの顔の特徴的な部位の顔画像上の形状および位置が異なっているために、照合精度が低下するおそれがある。加えて、顔向きによっては顔画像中に見えない特徴的な部位があることもあり、照合精度が一層低下するおそれがある。
【0004】
そこで、登録する複数の人物のそれぞれについて顔向きが異なる複数の登録顔画像を用意し、それぞれの顔向きの登録顔画像と入力顔画像との類似度に基づいて、最も類似する登録顔画像の人物を入力顔画像の人物であると判定する顔画像認証装置がある(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された顔画像認証装置によれば、様々な顔向きの登録顔画像から入力顔画像と最も類似度が高い登録顔画像の人物が特定され、入力顔画像と同じ顔向きの登録顔画像が最も類似すると判定されることが期待される。
【0005】
また、顔画像だけでなく指紋画像など人物に関する複数の固有データを利用して、撮影した人物と登録されている人物との照合を行う顔特定装置が開示されている(特許文献2を参照)。この顔特定装置では、カメラなどで取得した顔画像および指紋画像などの特定対象の人物に関する複数の固有データと予め装置に登録されている人物に関する同様の固有データとの複数の類似度を算出し、算出した複数の類似度を統合して、特定対象の人物と登録されている人物との照合を行う。複数の類似度を統合する方法として、類似度の総和を算出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−245338号公報
【特許文献2】特開2005−242890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された顔画像認証装置では、入力顔画像と、入力顔画像に映っている人物と異なる人物で入力顔画像に映っている顔向きと異なる顔向きの登録顔画像との類似度が想定以上に高くなる場合がある。このため、この顔画像認証装置は、入力顔画像の人物を他人であると誤って判定したり(他人受け入れ)、逆に本人でないと判定したり(本人棄却)して照合に失敗することがある。この照合の失敗は、顔の表情や照明の多少の変化があっても本人であると判定できるように、入力顔画像と登録顔画像との多少の違いを許容して一致すると判定するために起きると考えられる。
【0008】
一方、特許文献2に記載された顔特定装置は、顔向きを考慮しておらず、単純に各登録人物について複数の類似度の平均、総和もしくは積などを求めて、類似度の統合を行う。したがって、この顔特定装置では、入力顔画像と入力顔画像と異なる人物で異なる顔向きの登録顔画像との類似度が非常に高くなると、その非常に高い類似度が統合後の類似度に影響を及ぼすおそれがある。その結果、入力顔画像の人物と異なる人物の統合後の類似度が非常に高くなり、入力顔画像の人物を他人であると誤って判定する他人受入れや本人棄却が発生してしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、入力顔画像の照合精度を向上させた顔画像照合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための本発明の一つの実施形態によれば、順次取得された複数の入力顔画像を予め登録された登録顔画像と照合する顔画像照合装置が提供される。かかる顔画像照合装置は、複数の登録人物のそれぞれについて、登録顔画像としてこの登録人物の顔向きが相互に異なる複数の顔画像を記憶する記憶部と、入力顔画像ごとに、登録顔画像との類似度を算出する類似度算出手段と、類似度が所定以上の登録顔画像に投票するとともに、複数の入力顔画像の時間的に連続する所定数分について登録顔画像ごとに投票値を集計して投票集計値を求める投票手段と、投票集計値によって複数の登録人物のいずれかを入力顔画像の人物として決定する人物決定手段と、を有する。
【0011】
かかる顔画像照合装置において、人物決定手段は、登録人物ごとの投票集計値の総和が最大の登録人物を入力顔画像の人物として決定することが好ましい。
【0012】
また、かかる顔画像照合装置において、人物決定手段は、投票集計値が最大の登録人物を入力顔画像の人物として決定することが好ましい。
【0013】
さらに、かかる顔画像照合装置において、人物決定手段は、投票手段が集計する入力顔画像の時間的に連続する所定数に基づき予め定めた照合用閾値を投票集計値が超えている登録人物を入力顔画像の人物として決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力顔画像の照合精度を向上させた顔画像照合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係るウォークスルー型の入退室管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例に係る登録顔データの一例を示す図である。
【図3】撮像部が歩行中の人物を時系列に撮影した複数の入力画像を示す図である。
【図4】本実施例に係る投票手段の投票処理を示す図である。
【図5】人物Aの入力顔画像と人物Aの登録顔データの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブルを立体棒グラフで示す図である。
【図6】人物Aの入力顔画像と人物Bの登録顔データの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブルを立体棒グラフで示す図である。
【図7】人物Aの入力顔画像と人物Cの登録顔データの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブルを立体棒グラフで示す図である。
【図8】人物A〜Cの登録顔データと時刻t、t+1およびt+2における人物Aの入力顔画像および時系列投票テーブルと投票集計テーブルとの関係を示す図である。
【図9】本実施例に係る顔データ登録装置による登録顔データの登録処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本実施例に係る顔照合装置による顔照合処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願の発明者は、入力顔画像と入力顔画像の人物本人の様々な顔向きの登録顔画像との類似度は、顔向きが同じ場合に最も高いが、入力顔画像の顔向きに角度が近い場合においてもある程度高いという知見を得た。さらに、他人の顔画像であっても、同じ顔向きおよびそれに角度が近い顔向きの登録顔画像との類似度はある程度高くなるという知見を得た。また、上述したように、入力顔画像と、入力顔画像に映っている人物と異なる人物で入力顔画像に映っている顔向きと異なる顔向きの登録顔画像との類似度が非常に高くなった場合においても、この高い類似度を示した登録顔画像の顔向きと異なる顔向きの登録顔画像との類似度は高くならないという知見を得た。
【0017】
これらの知見に基づいて、本発明に係る顔画像照合装置は、登録人物ごとに複数の顔向きの登録顔画像を有する登録顔データを記憶する。かかる顔画像照合装置は、取得した入力画像ごとに、入力顔画像と登録されている各登録人物の様々な顔向きの登録顔画像との類似度を求め、この類似度に基づいて入力顔画像に類似する登録顔画像を選択し、選択した登録顔画像に対応する人物と顔向きに対して投票を行う。そして、顔画像照合装置は、投票の結果、最も多く投票された人物を入力顔画像の人物であると判定する。これにより、本発明に係る顔画像照合装置は、入力顔画像が入力顔画像の人物と全く顔向きが異なる他人の登録顔データに対して類似度が非常に高くなった場合でも、この他人を入力顔画像の人物であると誤って判定するのを防止することができ、顔照合の照合精度を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る顔画像照合装置は、特に、利用者が認証のためにゲートなどの入り口の前で立ち止まらなくても、歩行中の利用者を入り口の天井付近に設置した認証用カメラなどで自動的に連写し、撮影された利用者の複数の顔画像を用いて顔認証を行う「ウォークスルー」型の入退室管理システムの顔照合装置に適用可能である。ウォークスルー型の入退室管理システムでは、利用者は、例えば、廊下の天井付近に設置された認証用カメラの撮影領域を通過するだけで、いわゆるウォークスルーで認証されて入室を許可されることが可能となる。このため、利用者は、入り口付近の認証用カメラの前で一旦立ち止まり、正面方向などの予め決められた方向に顔を向ける必要がないので、ウォークスルー型の入退室管理システムは、利用者に非常に高い利便性をもたらす。このようなウォークスルー型の入退室管理システムでは、カメラの撮影領域を通過する利用者の時間と共に刻々と顔向きが変わる複数の画像が撮影されるので、本発明に係る顔画像照合装置は、顔向きの異なる複数の入力顔画像とシステムに予め登録されている顔向きの異なる複数の登録顔画像との類似度に基づいて、上述したように顔照合を行うことができる。
【0019】
以下、本発明に係る顔画像照合装置をウォークスルー型の入退室管理システムの顔照合装置に適用した一実施例について、図を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係るウォークスルー型の入退室管理システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、かかるウォークスルー型の入退室管理システム1は、撮像部10および30と、顔データ登録装置20と、顔照合装置40と、顔照合結果処理部50と、を有する。撮像部10と顔データ登録装置20、撮像部30と顔照合装置40、顔データ登録装置20と顔照合装置40および顔照合装置40と顔照合結果処理部50の間は、それぞれ、種々の形式の通信ケーブルもしくは内部配線などの有線通信、あるいは、電波もしくは赤外線などの無線通信によって接続することができる。
【0021】
撮像部10は、例えば、CCD素子もしくはC−MOS素子などの撮像素子、光学系部品、A/D変換器などを含む公知のカメラを用いることができる。このカメラは、近赤外波長帯に感度を有する白黒タイプでもよいが、肌色部分の抽出が容易になるよう可視光波長帯に感度を有するカラータイプが好ましい。また、カメラの解像度などの精度は、顔データ登録装置20および顔照合装置40の記憶容量、処理能力、顔照合装置40が所望する顔照合の精度などに応じて適切なものを用いることができる。さらに、登録用画像は、多階調の画素値で表されるカラー画像でもグレースケール画像でもよいが、8ビット程度の輝度分解能を持つカラー画像が好ましい。
【0022】
撮像部10は、入室が許可される社員などの入室許可対象者を撮影し、得られた2次元画像データを顔データ登録装置20が登録する登録人物の登録用画像として通信などを介して顔データ登録装置20に送る。
【0023】
顔データ登録装置20は、例えば、いわゆるコンピュータなどの情報処理装置によって構成することができる。顔データ登録装置20は、撮像部10から受け取った登録人物の登録用画像を用いて、登録人物の様々な顔向きの登録顔画像を有する登録顔データと顔向きに関する角度情報を生成する。そして顔データ登録装置20は、生成した登録顔データおよび角度情報をCD−ROM、DVD−R/Wおよび/もしくはフラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体あるいは通信などを介して顔照合装置40に登録することができる。
【0024】
図1に示すように、顔データ登録装置20は、画像入力インタフェース部210と、制御部220と、記憶部230と、登録顔データ出力インタフェース部240と、を有する。
【0025】
画像入力インタフェース部210は、制御部220が撮像部10から登録人物の登録用画像を受け取るインタフェース部である。したがって、画像入力インタフェース部210は、撮像部10と顔データ登録装置20とを接続する通信の方式に従って、例えば、LAN、ユニバーサルシリアルバス(USB)、SCSI、無線LANもしくは赤外線通信などに対応する適切な通信インタフェースアダプタなどを含んで構成される。
【0026】
制御部220は、プロセッサとその周辺回路を含んで構成され、プロセッサが記憶部230に記憶された各種プログラムを実行することによって、顔データ登録装置20の登録顔データの登録処理を制御する。プロセッサおよび記憶部230は、マイクロプロセッサもしくはASICなどを含んで構成されてもよい。プロセッサが実行するプログラムは、CD−ROMおよび/もしくはDVD−R/Wなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体もしくは通信などによって提供されて記憶部230に記憶されてもよく、ファームウェアとして提供されてもよい。
【0027】
制御部220は、撮像部10から画像入力インタフェース部210を介して登録人物の登録用画像を受け取り、受け取った登録用画像を用いて登録人物の様々な顔向きの登録顔画像を生成し、登録顔データとして記憶部230に記憶させる。また、制御部220は、記憶部230に記憶させた登録顔データを登録顔データ出力インタフェース部240を介して顔照合装置40に送ることができる。
【0028】
図2は、本実施例に係る登録顔データ422の一例を示す図である。各登録顔データ422は、例えば、登録人物の識別情報などの各登録人物に関する人物情報に対応付けて記憶される。図2に示すように、登録顔データ422は、様々な顔向きの登録顔画像を含む。この例では、真正面を向いた「角度A13」の登録顔画像を中心に、上下方向(ピッチ角)と左右方向(ヨー角)にそれぞれ15度刻みで±30度まで顔向きを変えた5×5=25種類の顔向きの登録顔画像が登録顔データ422に含まれる。したがって、例えば、図2に示した登録顔データ422が100人分登録されている場合、25×100=2500枚の登録顔画像が登録顔データ422として記憶部230に記憶されることになる。
【0029】
なお、以下、顔向きの種類は図2に示した25種類として説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、撮像部10の撮影範囲、顔データ登録装置20および顔照合装置40の記憶容量、処理能力および顔照合装置40の所望の照合精度などに応じて、ピッチ角およびヨー角の刻み幅や範囲を任意に変えて登録顔画像の数を増減することができる。例えば、制御部220は、撮像部10の撮影範囲がピッチ角±30度およびヨー角±45度であれば、ピッチ角およびヨー角の刻み幅をそれぞれ15度として、5×7=35種類の顔向きの登録顔画像を生成してもよい。さらに、制御部220は、7×7=49種類もしくは9×9=81種類の顔向きの登録顔画像を生成してもよい。ただし、照合精度の観点からは、ピッチ角およびヨー角の刻み幅は15度以下が好ましい。
【0030】
登録顔データ422の各登録顔画像は、その顔向きに対応付けて記憶部230に記憶される。例えば、制御部220は、図2に示すように25種類の顔向きに「角度A1」〜「角度A25」という識別名もしくは識別番号などの顔向き識別情報を割り当て、この顔向き識別情報に各登録顔画像を対応付けて記憶部230に記憶させることができる。
【0031】
また、制御部220は、各顔向き識別情報に、その顔向きのピッチ角とヨー角との組み合わせを角度情報として対応付けて記憶部230に記憶させることができる。例えば、図2に示すように、ピッチ角=0度およびヨー角=0度の真正面を向いた顔向き「角度A13」を中心として、25種類の顔向き「角度A1」〜「角度A25」は、15度刻みで±30度までの5種類のピッチ角と5種類のヨー角との25種類の組み合わせに対応付けられる。
【0032】
図2の例では、「角度A11」は、向かって左に角度30度の顔向きでピッチ角=0度およびヨー角=−30度、「角度A15」は、向かって右に角度30度の顔向きでピッチ角=0度およびヨー角=+30度、「角度A3」は、上に30度の顔向きでピッチ角=−30度およびヨー角=0度、「角度A23」は、下に30度の顔向きでピッチ角=+30度およびヨー角=0度の組み合わせの角度情報に対応付けられる。
【0033】
なお、制御部220は、例えば、上記5種類のピッチ角およびヨー角にそれぞれ0〜4の番号を付けて0〜4の2個の番号の組み合わせを顔向き識別情報とし、ピッチ角およびヨー角の刻み幅および個数を角度情報として記憶してもよい。
【0034】
図1に示すように、制御部220は、登録用顔画像抽出手段2210と、3次元顔モデル生成手段2220と、登録顔データ生成手段2230と、を有する。制御部220は、記憶部230に記憶されたこれらの手段を実行するプログラムをプロセッサが実行することによって、顔データ登録装置20における登録顔データ422の登録処理を制御する。
【0035】
登録用顔画像抽出手段2210は、撮像部10から画像入力インタフェース部210を介して受け取った登録用画像から、人物の顔が写っている顔領域を登録用顔画像として抽出する。
【0036】
顔領域を抽出するために、登録用顔画像抽出手段2210は、公知の様々な方法を用いることができる。例えば、登録用顔画像抽出手段2210は、登録用画像中の部分領域から1つもしくは複数の特徴量を算出し、その特徴量が人物の顔に対応すると考えられる所定の条件を満たす場合に、その部分領域を顔領域として抽出してもよい。具体的には、登録用顔画像抽出手段2210は、例えば、Sobelフィルタなどを用いてエッジ画素抽出を行い、その部分領域内におけるエッジ画素の方向分布、またはそのエッジ近傍の輝度分布などの特徴量を算出することができる。また、予め、人物の顔を撮影した複数の画像から、これらの特徴量の値を求めてその範囲を決定することにより、上述した所定の条件を予め決定することができる。
【0037】
顔領域を抽出するための別の方法として、登録用顔画像抽出手段2210は、予め準備した顔領域のテンプレートを用いて登録用画像とのテンプレートマッチングを行ったり、登録用画像のエッジ画像から顔もしくは頭部領域の輪郭形状のエッジ分布を検出したりすることによって、顔領域を抽出してもよい。また、登録用顔画像抽出手段2210は、これらの公知の方法を組み合わせて顔領域を抽出してもよい。
【0038】
3次元顔モデル生成手段2220は、登録用顔画像抽出手段2210から受け取った登録用顔画像から3次元顔モデルを生成する。3次元顔モデルとは、登録顔データ生成手段2230が登録人物の頭部を再現して様々な顔向きの登録顔画像を生成するためのものである。
【0039】
3次元顔モデルを生成するために、3次元顔モデル生成手段2220は、様々な公知の3次元顔モデル生成方法のいずれかを用いることができる。例えば、3次元顔モデル生成手段2220は、特開2009−211151号公報に記載されているように、顔の凹凸情報および特徴点の3次元配置情報などを含む3次元顔形状データに、登録用顔画像の肌の色およびテクスチャ情報などをマッピングして、3次元顔モデルを生成することができる。
【0040】
登録顔データ生成手段2230は、3次元顔モデル生成手段2220から受け取った3次元顔モデルから登録顔データ422を生成する。
【0041】
このために、登録顔データ生成手段2230は、3次元顔モデルから様々な顔向きの2次元顔画像を取得する様々な公知の方法のいずれかを用いることができる。例えば、登録顔データ生成手段2230は、上述の特開2009−211151号公報に記載されているように、3次元顔モデルの頭部を様々な方向に変えて再現し、これを2次元空間に投影することによって様々な顔向きの登録顔画像を生成することができる。ここで、登録顔画像は、画素値などの画像データそのものでもよいが、特徴点の配置情報および/もしくテクスチャ情報などの登録人物の顔の特徴を示す画像データから取得可能な任意の情報を含んでもよい。
【0042】
記憶部230は、顔データ登録装置20が各種動作を実行するためのプログラムおよびデータを記憶し、例えばRAM、ROMおよび/もしくはEPROMなどの半導体メモリを含んで構成される。また、記憶部230は、ハードディスクなどの磁気記憶媒体、ならびに/あるいは、CD−ROMおよび/もしくはDVD−R/Wなどの光記憶媒体と、そのアクセス装置とを含んでもよい。
【0043】
登録顔データ出力インタフェース部240は、制御部220が生成した登録顔データ422を顔照合装置40に送るインタフェース部である。したがって、登録顔データ出力インタフェース部240は、画像入力インタフェース部210と同様に、顔データ登録装置20と顔照合装置40とを接続する通信の方式に従って適切な通信インタフェースアダプタなどを含んで構成される。なお、登録顔データ422がコンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって顔データ登録装置20から顔照合装置40に渡される場合、登録顔データ出力インタフェース部240はなくてもよい。
【0044】
撮像部30は、顔照合装置40が照合する歩行中の人物を複数回撮影し、撮影して取得した複数の2次元画像データを入力画像として通信などを介して顔照合装置40に順次送る。
【0045】
本実施例において、撮像部30は、例えば、オフィスビルの入室を管理する部屋の入り口前の廊下の天井付近に設置された1つもしくは複数の監視カメラであり、例えば、CCD素子もしくはC−MOS素子などの撮像素子、光学系部品、A/D変換器などを含む公知のカメラを用いることができる。撮像部30のカメラは、撮像部10のカメラと同様に、近赤外波長帯に感度を有する白黒タイプでもよいが、肌色部分の抽出が容易になるよう可視光波長帯に感度を有するカラータイプが好ましい。また、撮像部30のカメラの解像度などの精度は、監視領域の状況や所望する顔照合の精度に応じて適切なものを用いることができる。さらに、入力画像は、登録用画像と同様に、多階調の画素値で表されるカラー画像でもグレースケール画像でもよいが、8ビット程度の輝度分解能を持つカラー画像が好ましい。撮像部30は、監視領域を所定の時間間隔(例えば、100msec)ごとに撮影し、取得した監視画像を入力画像として顔照合装置40に順次送ることができる。
【0046】
図3は、オフィスビルなどで入室を管理する部屋の入り口前の廊下の天井付近に設置された監視カメラが、歩行中の部屋の利用者を時系列に撮影した複数の入力画像を示す図である。図3には、時刻t、t+1およびt+2の各時刻において、監視カメラが撮影領域を移動する利用者の顔を撮影して得られた入力顔画像421t0、421t1および421t2が示されている。監視カメラの前を通過する利用者の顔向きは時間と共に少しずつ変わるため、入力顔画像421t0、421t1および421t2には少しずつ顔向きが異なる利用者の顔が映っている。
【0047】
顔照合装置40は、例えば、いわゆるコンピュータなどの情報処理装置によって構成することができる。そして顔照合装置40は、撮像部30から受け取った入力画像中の人物が、顔照合装置40に登録されている入室許可対象者などの登録人物と一致するか否かを照合し、照合結果を通信などによって顔照合結果処理部50に送る。
【0048】
図1に示すように、顔照合装置40は、画像入力インタフェース部410と、記憶部420と、登録顔データ入力インタフェース部430と、制御部440と、顔照合結果出力インタフェース部450と、を有する。
【0049】
画像入力インタフェース部410は、制御部440が撮像部30から入力画像を受け取るインタフェース部である。したがって、画像入力インタフェース部410は、上述の画像入力インタフェース部210と同様に、撮像部30と顔照合装置40とを接続する通信の方式に従って適切な通信インタフェースアダプタなどを含んで構成される。
【0050】
記憶部420は、顔照合装置40が各種動作を実行するためのプログラムおよびデータを記憶し、上述の記憶部230と同様に、例えばRAM、ROMおよび/もしくはEPROMなどの半導体メモリを含んで構成される。また、記憶部420は、ハードディスクなどの磁気記憶媒体、ならびに/あるいは、CD−ROMおよび/もしくはDVD−R/Wなどの光記憶媒体と、そのアクセス装置とを含んでもよい。
【0051】
上述したように、記憶部420には、顔データ登録装置20が生成した登録顔データ422が顔データ登録装置20からコンピュータ読み取り可能な記憶媒体あるいは通信などを介して送られ記憶されている。
【0052】
登録顔データ入力インタフェース部430は、制御部440が顔データ登録装置20から通信などによって登録顔データ422を受け取るインタフェース部である。したがって、登録顔データ入力インタフェース部430は、上述の画像入力インタフェース部210と同様に、顔データ登録装置20と顔照合装置40とを接続する通信の方式に従って適切な通信インタフェースアダプタなどを含んで構成される。なお、登録顔データ422がコンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって顔データ登録装置20から渡される場合、登録顔データ入力インタフェース部430はなくてもよい。
【0053】
制御部440は、上述の制御部220と同様に、プロセッサとその周辺回路を含んで構成され、プロセッサによって記憶部420に記憶された各種プログラムを実行することによって、顔照合装置40の顔照合処理を制御する。プロセッサが実行するプログラムは、制御部220と同様に提供されて記憶部420に記憶される。
【0054】
図1に示すように、制御部440は、入力顔画像抽出手段4411と、類似度算出手段4412と、投票テーブル更新手段4413と、投票手段4414と、人物決定手段4415と、を有し、記憶部420に記憶されたこれらの手段を実行するプログラムをプロセッサが実行することによって、顔照合装置40における顔照合処理を制御する。制御部440は、撮像部30から画像入力インタフェース部410を介して入力画像を順次受け取り、受け取った入力画像を記憶部420に記憶された登録顔データ422と照合し、その照合結果を顔照合結果出力インタフェース部450を介して顔照合結果処理部50に送る。
【0055】
入力顔画像抽出手段4411は、撮像部30から画像入力インタフェース部410を介して受け取った入力画像から、上述の登録用顔画像抽出手段2210と同様に人物の顔が写っている顔領域を抽出して入力顔画像とする。この入力顔画像は、上述した登録顔画像と同様に、入力画像から得られる入力画像の人物の顔の特徴を示す任意の情報を含んでもよい。
【0056】
類似度算出手段4412は、入力顔画像抽出手段4411が抽出した入力顔画像と記憶部420に記憶されているすべての登録顔データ422のすべての顔向きの登録顔画像との類似度を算出する。そして、類似度算出手段4412は、算出した類似度を登録顔画像の人物および顔向きに対応付けて類似度テーブルとして記憶部420に記憶する。ここで、類似度テーブルとは、1人分の登録顔データ422ごとに用意され、各登録顔データ422に含まれるすべての登録顔画像の顔向きの数だけ類似度が記憶される領域を有するテーブルである。記憶部420には、記憶部420に記憶されているすべての登録顔データ422に対応する登録人物の人数分の類似度テーブルが記憶されている。
【0057】
類似度は、入力顔画像と登録顔画像とが類似するほど、線形的もしくは非線形的に増加もしくは減少する値であればよい。以下では、類似度は、類似するほど増加する値として説明する。本実施例では、入力顔画像および各登録顔画像は2次元顔画像であるので、類似度算出手段4412は、一般的な方法を用いて類似度を算出することができる。
【0058】
例えば、類似度算出手段4412は、特徴点の配置情報およびテクスチャ情報などの画像の特徴を用いて入力顔画像と登録顔画像との類似度(すなわち、入力顔画像に映った顔と登録顔画像に映った顔との類似度)を求めることができる。類似度算出手段4412は、それぞれの特徴を単独で用いて類似度を求めてもよいが、複数の特徴を併用した方が類似度の精度が高くなるため、本実施例では複数の特徴を併用して類似度を求める。
【0059】
画像間の類似度を算出する具体的な計算方法は、目的に応じて様々な方法がある。例えば、特徴点の配置情報およびテクスチャ情報の2つの画像の特徴を用いる場合、次の式(1)のように類似度を求めることができる。
類似度(p,q)=αF(p,q)+βG(p,q) (1)
【0060】
ここで、p、qは比較対象の画像、α、βは所定の係数、F()は特徴点の位置の一致の度合いを評価する関数、G()はテクスチャの一致の度合いを評価する関数である。
【0061】
上記関数F()は、例えば、入力顔画像および登録顔画像の各特徴点の座標について、対応する特徴点間のユークリッド距離の総和の逆数を求める関数でもよい。
【0062】
また、上記関数G()は、例えば、特許第2690132号公報に開示されているように、入力顔画像および登録顔画像の対応する特徴点近傍のテクスチャ同士を比較して、そのヒストグラムマッチングにおける差の逆数を求める関数でもよい。あるいは、上記関数G()は、入力顔画像および登録顔画像の両目と両口角点とを結んだ逆台形の領域について、大きさ、輝度および色を正規化したヒストグラムマッチングの差の逆数を求める関数でもよい。
【0063】
なお、上述したように、類似度算出手段4412は、他の顔画像の特徴を用いて類似度を算出する場合、上記F()およびG()の代わりに、その特徴の一致の度合いを求めるのに適した関数を用いて類似度を算出することができる。あるいは、類似度算出手段4412は、入力顔画像と登録顔画像とのパターンマッチングによって入力顔画像と登録顔画像との類似度を算出してもよい。
【0064】
投票テーブル更新手段4413は、記憶部420に記憶された投票集計テーブルから過去に取得された入力画像に関する古い投票値を取り除く。ここで、投票集計テーブルとは、1人分の登録顔データ422ごとに用意され、各登録顔データ422に含まれるすべての登録顔画像の顔向きの数だけ投票集計値が記憶される領域を有するテーブルである。したがって、記憶部420に記憶されているすべての登録顔データ422に対応する登録人物の人数分の投票集計テーブルが記憶部420に記憶されている。投票集計テーブルには、その時点までに順次撮影された複数の入力画像に関して、入力顔画像に類似するすべての登録顔画像の人物および顔向きに対応して集計された投票値が、投票集計値として、後述の投票手段4414によって記憶されている。投票手段4414による投票値の集計方法および投票集計テーブルへの記憶方法については、後の投票手段4414の説明で詳述する。
【0065】
例えば、投票テーブル更新手段4413は、所定時間ごとに、投票集計テーブルに記憶されている投票集計値のそれぞれに1より小さい所定の比率を掛けることができる。これにより、投票テーブル更新手段4413は、それ以前に取得された入力画像に関して累積された各投票値がその後に取得される入力画像に関して累積されていく各投票値に与える影響を徐々に減らすことができ、時間の経過と共に投票集計テーブルから古い投票値を取り除いていくことができる。
【0066】
また、最新の所定枚数以内の入力画像に関して時系列投票テーブルが記憶部420に記憶されている場合、投票テーブル更新手段4413は、所定時間ごとに記憶されている時系列投票テーブルのうち一番古い入力画像に関する時系列投票テーブルを破棄することによって、投票集計テーブルから最も古い投票値を取り除くことができる。ここで、時系列投票テーブルとは、1人分の登録顔データ422ごとに用意され、各登録顔データ422に含まれるすべての登録顔画像の顔向きの数だけ投票値が記憶される領域を有するテーブルである。したがって、記憶部420に記憶されているすべての登録顔データ422に対応する登録人物の人数分の時系列投票テーブルが、記憶部420に、入力画像の撮影時刻ごとに入力画像の枚数分記憶されている。時系列投票テーブルには、それぞれの撮影時刻に撮影された入力画像に関して、入力顔画像に類似するすべての登録顔画像のそれぞれの人物および顔向きに対応して投票値が後述の投票手段4414によって記憶される。投票集計テーブルに記憶されている投票集計値は、それぞれ、時系列投票テーブルに記憶されている投票値を、人物および顔向きごとに最新の所定枚数以内の入力画像のすべてについて集計した値である。したがって、投票テーブル更新手段4413は、一番古い入力画像に関する時系列投票テーブルを破棄することによって、投票集計テーブルから最も古い投票値を取り除くことができる。なお、上記所定枚数は、10枚程度が好ましい。また、投票テーブル更新手段4413が投票集計テーブルの更新に時系列投票テーブルを使用しない場合、時系列投票テーブルはなくてもよい。投票手段4414による投票値の時系列投票テーブルへの記憶方法については、下記の投票手段4414の説明で詳述する。
【0067】
図4は、本実施例に係る投票手段4414の投票処理を示す図である。図4(a)は、登録顔データ422の例を示し、図4(b)および図4(c)は、それぞれ、この登録顔データ422の人物に対応する時系列投票テーブル4241および4242の例を示す。上述したように、時系列投票テーブルは常に必要ではないが、以下では、投票手段4414が投票集計テーブルの投票集計値に加算していく投票値を説明するのに用いる。
【0068】
投票手段4414は、記憶部420に記憶された類似度テーブルの類似度を読み出し、類似度が所定の投票用閾値以上である登録顔画像を入力顔画像421に類似すると判定する。所定の投票用閾値は、例えば、テスト用の入力画像と登録顔画像との類似度の平均値および分散を求め、平均値に分散の2倍を加えた値とすることができる。
【0069】
また、投票手段4414は、類似度テーブルに記憶されたすべての類似度のうち上位N個以内の登録顔画像を入力顔画像421に類似すると判定してもよい。この場合、Nは、正の整数であり、登録顔画像の総数の例えば1〜3%であるのが好ましい。例えば、上述したように全部で2500枚の登録顔画像が登録顔データ422として記憶部420に記憶されている場合、Nは25〜75でもよい。
【0070】
あるいは、投票手段4414は、人物ごとに類似度が上位所定数以内の登録顔画像を入力顔画像421に類似すると判定してもよい。この場合の所定数Mは、正の整数であり、1〜3などでもよい。
【0071】
例えば、投票手段4414は、図4(a)に示した登録顔画像のうち、符号4221に示す1つの登録顔画像のみを入力顔画像421に類似すると判定したとする。これは、登録顔データ422の人物が入力顔画像421の人物と異なる場合に起きやすい。この場合、投票手段4414は、投票集計テーブルの登録顔画像4221の顔向き「角度A12」に対応する投票集計値に、例えば、投票値”1”を加算する。図4(b)の時系列投票テーブル4241には、登録顔画像4221の顔向き「角度A12」に対応する箇所に、加算される投票値”1”が示され、他は”0”である。
【0072】
同様に、投票手段4414は、図4(a)に示した登録顔画像のうち、符号4222で示す枠で囲まれた9つの登録顔画像を入力顔画像421に類似すると判定したとする。これは、登録顔データ422の人物が入力顔画像421の人物と同じである場合に起きやすい。すなわち、入力顔画像421の人物が登録顔データ422の人物本人であるため、登録顔画像の顔向きが多少異なっても入力顔画像421に類似すると判定されたことを示す。
【0073】
この場合、投票手段4414は、投票集計テーブルの登録顔画像4222の顔向き「角度A6」〜「角度A8」、「角度A11」〜「角度A13」および「角度A16」〜「角度A18」に対応する投票集計値に、例えば、投票値”1”を加算することができる。図4(c)の時系列投票テーブル4242には、登録顔画像4222の顔向き「角度A6」〜「角度A8」、「角度A11」〜「角度A13」および「角度A16」〜「角度A18」に対応する9箇所に、加算される投票値”1”が示され、他は”0”である。
【0074】
次に、入力顔画像と入力顔画像と異なる人物で異なる顔向きの登録顔画像との類似度が突出して高いため入力顔画像の人物を他人と誤って判定してしまう誤判定が、投票手段4414の投票によっていかに回避されるかについて説明する。
【0075】
図5〜図7は、それぞれ、時刻tにおける人物Aの入力顔画像421at0と、人物A〜Cの登録顔データ422a〜cの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブル423a〜cを立体棒グラフで示した図である。ここで、入力顔画像421at0の顔向きは「角度A12」であるとする。
【0076】
図5には、人物Aの入力顔画像421at0と本人である人物Aの登録顔データ422aの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブル423aの例が示されている。図5の類似度テーブル423aでは、登録顔データ422aが入力顔画像421at0の人物A本人のものであるため、入力顔画像421at0と同じ顔向き「角度A12」の登録顔画像422a1との類似度423a1が最も高い値を示している。また、類似度423a1の周囲の顔向きの登録顔画像422a2との類似度も一定以上の高い値を示している。これは、登録顔データ422aが入力顔画像421at0の人物A本人のものであるため、顔の特徴点配置情報や色情報(テクスチャ)などが共通しており、多少顔向きが異なっても類似度が高くなるからである。
【0077】
図6には、時刻tにおける人物Aの入力顔画像421at0と他人である人物Bの登録顔データ422bの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブル423bの例が示されている。図6の類似度テーブル423bでは、登録顔データ422bの人物Bが入力顔画像421at0の人物Aと異なるため、類似度は図5の類似度テーブル423aほど高くない。それでもなお、登録顔画像422b1および422b2と入力顔画像421at0との類似度423b1および423b2が所定の投票用閾値以上になっている。
【0078】
類似度テーブル423bの類似度のうち、類似度423b1は、他に比べてやや高い値を示している。これは、登録顔画像422b1の顔向き「角度A12」が入力顔画像421at0と同じであるため、顔画像の特徴点の配置が類似するので類似度が高くなったと考えられる。登録顔画像422b2の類似度423b2については後述する。
【0079】
図7には、時刻tにおける人物Aの入力顔画像421at0と他人である人物Cの登録顔データ422cの各登録顔画像との類似度が記憶された類似度テーブル423cの例が示されている。図7の類似度テーブル423cでは、図6の類似度テーブル423bと同様に、登録顔データ422cの人物Cが入力顔画像421at0の人物Aと異なるため、類似度は図5の類似度テーブル423aほど高くない。それでもなお、登録顔画像422c1と入力顔画像421at0との類似度423c1が所定の投票用閾値以上になっている。
【0080】
類似度テーブル423cの類似度のうち、類似度423c1は、他に比べてやや高い値を示している。これは、図6の登録顔画像422b1と同様に、登録顔画像422c1の顔向き「角度A12」が入力顔画像421at0と同じであるため、顔画像の特徴点の配置が類似するので類似度が高くなったと考えられる。
【0081】
一方、図6の類似度テーブル423bにおいて、類似度423b2が他に比べて突出して類似度が高い。これは、鼻尖点のように、抽出に失敗すると直ちに他の特徴点の位置情報に影響を与えてしまう顔の特徴点の抽出に失敗した場合に発生しやすい。このような場合、人物Aの入力顔画像421at0から抽出された特徴点の配置と、人物Bの異なる顔向きの登録顔画像422b2から抽出された特徴点の配置とが互いに非常に接近してしまい、また、結果として特徴点近傍のテクスチャ同士が類似してしまうことで、類似度が想定以上に高くなることがある。
【0082】
図5および図6の例では、人物Aのやや向かって左を向いた顔向き「角度A12」の入力顔画像421at0と人物Aよりも丸顔である人物Bの向かって右を向いた顔向き「角度A15」の登録顔画像422b2との類似度423b2が、本人の同じ顔向き「角度A12」の登録顔画像422a1との類似度423a1より高くなっている。この場合、入力顔画像421at0と各登録顔データ422a〜cの各登録顔画像との類似度のうち、単純に最も高い値を示すものを選択すると、人物Bが入力顔画像421at0の人物であると誤って判定されることになる。
【0083】
このような誤判定を防止するため、投票手段4414は、類似度テーブルに記憶された類似度を参照して類似すると判定した登録顔画像を選択し、選択した登録顔画像に対応づけられた人物と顔向きに対して投票する。この投票手段4414の投票処理は、複数の入力顔画像について行う。
【0084】
図8は、人物A〜Cの登録顔データ422a〜cと時刻t、t+1およびt+2における人物Aの入力顔画像421t0〜2ならびに時系列投票テーブル424at0〜2、424bt0〜2および424ct0〜2と投票集計テーブル425a〜cとの関係を示す図である。図8の人物A〜Cの登録顔データ422a〜cおよび時刻tにおける入力顔画像421t0は、図5〜図7の人物A〜Cの登録顔データ422a〜cおよび入力顔画像421t0に対応する。図8を参照しながら、投票手段4414によって入力顔画像421at0〜2の人物A本人の登録顔画像に投票が集まる様子を説明する。
【0085】
図8に示すように、時刻tにおいて、顔向き「角度A12」の人物Aの入力顔画像421at0が得られたとする。そして、この入力顔画像421at0と人物A〜Cの登録顔データ422a〜cのそれぞれについて、図5〜7で示したように、類似度テーブル423a〜cに記憶された登録顔画像422a2、422b1、422b2および422c2が入力顔画像421at0に類似する登録顔画像として選択されたとする。この場合、投票手段4414は、時系列投票テーブル424at0〜ct0に示すように、人物A〜Cのそれぞれに対して投票集計テーブルの登録顔画像422a2、422b1、422b2および422c1の顔向きに対応する投票集計値に、例えば、投票値“1”を加算する。
【0086】
例えば、図8の時系列投票テーブル424at0において「○」で囲まれた投票値“1”は、人物Aの顔向き「角度A12」に対応しており、入力顔画像421at0の人物A本人の入力顔画像421at0と同じ顔向き「角度A12」とその近傍の顔向きの登録顔画像が入力顔画像421at0に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることを示している。また、時系列投票テーブル424bt0および424ct0において「△」で囲まれた投票値“1”は、人物BおよびCの顔向き「角度A12」に対応しており、入力顔画像421at0の人物Aとは他人の人物BおよびCであるが入力顔画像421at0と同じ顔向き「角度A12」の登録顔画像が入力顔画像421at0に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることを示している。さらに、時系列投票テーブル424bt0において「□」で囲まれた投票値“1”は、人物Bの顔向き「角度A15」に対応しており、入力顔画像421at0の人物Aと他人の人物Bで異なる顔向き「角度A15」の登録顔画像が偶発的に入力顔画像421at0に類似してしまい投票値“1”が加算されることを示している。
【0087】
時刻t+1では、人物Aの顔向きが少し変わり、顔向き「角度A11」の入力顔画像421at1が得られたとする。このため、入力顔画像421at1は、入力顔画像421at1の人物Aの登録顔データ422aのうちで入力顔画像421at1と同じ顔向き「角度A11」の登録顔画像との類似度が最も高く、顔向き「角度A11」に角度が近い顔向きの登録顔画像との類似度も一定以上の高い値になる。
【0088】
この場合、時系列投票テーブル424at1において「○」で囲まれた投票値“1”は、入力顔画像421at1と同じ人物Aで同じ顔向き「角度A11」に対応しており、入力顔画像421at1の人物A本人の入力顔画像421at1と同じ顔向き「角度A11」とその近傍の顔向きの登録顔画像が入力顔画像421at1に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることを示している。また、時系列投票テーブル424bt1および424ct1において「△」で囲まれた投票値“1”は、人物BおよびCの顔向き「角度A11」に対応しており、入力顔画像421at1の人物Aとは他人の人物BおよびCであるが入力顔画像421at1と同じ顔向き「角度A11」の登録顔画像が入力顔画像421at1に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることを示している。
【0089】
時刻t+2では、人物Aの顔向きがさらに変わり、顔向き「角度A21」の入力顔画像421at2が得られたとする。このため、入力顔画像421at2は、入力顔画像421at2の人物Aの登録顔データ422aのうちで顔向き「角度A21」の登録顔画像との類似度が最も高く、顔向き「角度A21」に角度が近い顔向きの登録顔画像との類似度も一定以上の高い値になる。
【0090】
この場合、時系列投票テーブル424at2において「○」で囲まれた投票値“1”は、人物Aの顔向き「角度A21」に対応しており、入力顔画像421at2の人物A本人の入力顔画像421at2と同じ顔向き「角度A21」とその近傍の顔向きの登録顔画像が入力顔画像421at2に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることが示されている。また、時系列投票テーブル424bt2および424ct2において「△」で囲まれた投票値“1”は、人物BおよびCの顔向き「角度A21」に対応しており、入力顔画像421at2の人物Aとは他人の人物BおよびCであるが入力顔画像421at2と同じ顔向き「角度A21」の登録顔画像が入力顔画像421at2に類似すると判定されて投票値“1”が加算されることを示している。さらに、時系列投票テーブル424ct2において「□」で囲まれた投票値“1”は、人物Cの顔向き「角度A25」に対応しており、入力顔画像421at0の人物Aと異なる人物Cで異なる顔向き「角度A25」の登録顔画像が、図5の登録顔画像422b2と同様に、偶発的に入力顔画像421at2に類似してしまい投票値“1”が加算されることを示している。この人物Cの顔向き「角度A25」の登録顔画像の入力顔画像421at2との類似度は、入力顔画像421at2と同じ人物Aで同じ顔向き「角度A21」の登録画像の類似度より高いとする。
【0091】
図8に示される例において単純に入力顔画像との類似度が一番高い登録顔画像の人物を入力顔画像の人物であると判定すると、入力顔画像421at0と人物Bの顔向き「角度A15」の登録顔画像との類似度が入力顔画像421at0と人物Aの顔向き「角度A12」の登録顔画像との類似度より高いので、入力顔画像421at0の人物は人物Bであると誤って判定されてしまう。また、入力顔画像421at2と人物Cの顔向き「角度A25」の登録顔画像との類似度が入力顔画像421at2と人物Aの顔向き「角度A21」の登録顔画像との類似度より高いので、入力顔画像421at2の人物は人物Cであると誤って判定されてしまう。
【0092】
そこで、本発明に係る投票手段4414は、投票集計テーブル425a〜cに示すように、人物A〜Cのそれぞれについて、時系列投票テーブル424at0〜2、424bt0〜2および424ct0〜2で示された時刻t、t+1およびt+2における投票値の総和をそれぞれ算出して、算出した投票値の総和を投票集計値としてそれぞれ投票集計テーブル425a〜cに記憶する。すると、投票集計テーブル425a〜cに記憶された投票集計値のうち、人物Aの顔向き「角度A16」および「角度A17」の投票集計値が“3”となり、最大である。これは、ウォークスルー型認証のように、撮影領域を通過する利用者の顔を時系列に撮影すると、撮影された利用者の顔向きは変化するものの、その変化は緩やかになるからである。したがって、入力顔画像の人物Aに対する投票値に関しては、入力顔画像と同じ顔向きとその顔向きに角度が近い顔向きにおいて投票値が加算されるため、投票の結果、投票集計値は高くなる。一方、人物BおよびCに対しては、投票集計テーブル425bおよび425cに示すように、人物Aのように高い投票値にならない。これは、ウォークスルー型の顔認証のように顔向きが少しずつ異なる複数の入力顔画像が得られる場合においても、入力顔画像と入力顔画像の人物と他人の登録顔画像との類似度が入力顔画像の人物本人の登録顔画像との類似度より高くなるのは、上述したように特徴点の抽出の失敗などにより突発的に起きるため、他人の登録顔画像との類似度は、入力顔画像と少し顔向きが異なると直ちに低くなるという傾向があるからである。
【0093】
人物決定手段4415は、投票手段4414による投票結果が記憶された投票集計テーブルより、投票集計値が最大である人物を最も多く投票された人物として選び、入力顔画像の人物であると決定する。例えば、図8の投票集計テーブル425a〜cでは、人物決定手段4415は、最大の投票集計値”3”を有する投票集計テーブル425aに対応する人物Aを選択する。そして、人物決定手段4415は、その最大の投票集計値”3”を所定の照合用閾値と比較し、最大の投票集計値”3”が照合用閾値以上であれば、人物Aを入力顔画像421t0〜2の人物、すなわち、入力画像に映った人物であると決定する。照合用閾値は、投票手段4414において用いられる時系列投票テーブルの枚数に応じて定められ、例えば、その枚数の30%とすることができる。
【0094】
なお、人物決定手段4415は、投票集計テーブルにおける各顔向きの投票集計値をさらに人物ごとに合計して最大の総和を得た人物を入力顔画像の人物として選択してもよい。例えば、図8に示される例では、人物Aの投票集計テーブル425aで各顔向きの投票集計値を合計すると21、人物Bの投票集計テーブル425bで各顔向きの投票集計値を合計すると4、人物Cの投票集計テーブル425cで各顔向きの投票集計値を合計すると4になる。この場合、人物ごとの投票集計値の総和が最大の21となる人物Aが入力顔画像421at0〜2の人物として選択される。なお、投票集計テーブルに登録人物の人数分の投票集計値を記憶する領域を用意し、この投票集計テーブルにおいて、投票手段4414が入力顔画像に類似する登録顔画像に対応する人物に対して投票しても同様の結果が得られる。さらに、人物決定手段4415は、すべての投票集計テーブルに記憶されている各顔向きに対する投票集計値のうち最大の投票集計値を有し、かつ、投票集計テーブルにおける各顔向きの投票集計値を人物ごとに合計して最大の総和を得た登録人物を入力顔画像の人物としてもよい。
【0095】
また、上述の例では、投票手段4414は、各時刻において人物ごとかつ顔向きごとに投票された結果を、複数の入力画像にわたって累積して総和を算出している。しかしながら、投票手段4414は、投票する顔向きを入力顔画像の顔向きとその顔向きに角度が近い顔向きに限定し、限定された顔向きの投票値の総和を人物ごとに算出してもよい。すなわち、投票手段4414は、各時刻において類似度テーブルに記憶された類似度に基づいて入力顔画像に類似すると判定された登録顔画像の顔向きに対して投票し、投票値の総和が最大となった顔向きをその時刻における入力顔画像の顔向きであると推定する。投票手段4414は、この推定した顔向きから一定範囲内の角度の顔向き(例えば「4近傍」「8近傍」もしくは「24近傍」など)に限定して、各時刻における各人物に対する投票値の総和v_sum(i、t)を求める。ここで、添え字iは登録された人物に関する識別子、tは時刻を表す。そして、投票手段4414は、全撮影時刻、例えば図8の例ではt、t+1およびt+2の3つの時刻について、人物ごとのv_sum(i、t)、v_sum(i、t+1)およびv_sum(i、t+2)の全総和v_sum_all(i)を求める。このとき、投票手段4414は、例えば、投票集計テーブルにおいて登録顔画像の顔向きが推定した入力顔画像の顔向きに近いほど大きな重みを投票値に付けて人物ごとの投票値の全総和を集計してもよい。
【0096】
この場合、人物決定手段4415は、その人物ごとの全総和v_sum_all(i)のうち最大値に対応する人物iを入力顔画像の人物であると判定する。これにより、登録顔画像の顔向きが多少違っても、入力顔画像の本人であれば類似度が高くなる一方、他人であれば類似度が低くなるという特性を活かして、顔照合の照合精度を向上させることができる。また、ウォークスルーで時系列に撮影された入力顔画像のように、顔向きの変化が緩やかな場合だけでなく、顔向きが急に変化する場合でも、推定した顔向きに角度が近い顔向きについてのみ投票値の総和を求めるので、顔照合の照合精度を高めることが可能となる。
【0097】
上述したように、投票手段4414は、入力顔画像421at0〜2に類似すると判定された登録顔画像の各人物および各顔向きについて投票値を集計する。これにより、本発明に係る顔照合装置40は、図6の登録顔データ422bの登録顔画像422b2のように、人物Aと顔の形状が異なる人物Bの異なる顔向き「角度A15」の登録顔画像と人物Aの入力顔画像421at0の類似度が想定外に高くなったとしても、人物Bが入力顔画像421at0〜2の人物として誤って判定されるのを回避できる。
【0098】
顔照合結果出力インタフェース部450は、制御部440が顔照合の照合結果を、顔照合結果処理部50に送るためのインタフェース部である。したがって、顔照合結果出力インタフェース部450は、上述の画像入力インタフェース部210と同様に、顔照合結果処理部50と顔照合装置40とを接続する通信の方式に従って適切な通信インタフェースアダプタなどを含んで構成される。
【0099】
顔照合結果処理部50は、顔照合装置40から通信を介して照合結果を受け取り、この照合結果に基づいて適切な処理を行う。顔照合結果処理部50は、顔照合装置40と分離した1つもしくは複数の装置でもよく、顔照合装置40と一体でもよい。
【0100】
例えば、顔照合結果処理部50は、電気信号によってドアの施錠/解錠を行う電気錠でもよい。そして、顔照合装置40が入力画像中の人物が登録されている入室許可対象者のいずれかであるという照合結果を電気信号によって電気錠に送ると、電気錠は、ドアを解錠して入室を許可し、そうでない場合、電気錠は、ドアに施錠をしたまま入室を禁止することができる。
【0101】
また、例えば、顔照合結果処理部50は、ディスプレイ、ランプ、アラームもしくはスピーカなどのユーザ出力装置を有する警報装置などでもよい。そして、顔照合結果処理部50は、顔照合装置40から入力画像中の人物が入室許可対象者のいずれでもないという照合結果を受け取った場合、照合結果を適切な形式でユーザ出力装置に出力して、入室許可対象者でない者が入室しようとしたことを職員や保安員などに報知してもよい。
【0102】
次に、図9および図10を参照しながら、本実施例のウォークスルー型の入退室管理システム1の処理の流れについて説明する。
【0103】
図9は、本実施例に係る顔データ登録装置20による登録顔データ422の登録処理の一例を示すフローチャートである。図9を参照しながら、本実施例のウォークスルー型の入退室管理システム1における顔データ登録装置20の登録顔データ422の登録処理について説明する。顔データ登録装置20の制御部220は、撮像部10から画像入力インタフェース部210を介して登録用画像を受け取ると、以下の処理を開始する。
【0104】
制御部220は、撮像部10から受け取った登録用画像を登録用顔画像抽出手段2210に渡す。そして、登録用顔画像抽出手段2210は、受け取った登録用画像から顔領域を抽出して登録用顔画像を生成する(ステップS110)。
【0105】
3次元顔モデル生成手段2220は、登録用顔画像抽出手段2210が抽出した登録用顔画像のデータを3次元顔形状データにマッピングして、登録人物の3次元顔モデルを生成する(ステップS120)。
【0106】
登録顔データ生成手段2230は、3次元顔モデル生成手段2220が生成した3次元顔モデルの頭部を様々な方向に変えて再現して生成した様々な顔向きの登録顔画像を登録顔データ422として記憶部230に記憶させる(ステップS130)。
【0107】
制御部220は、すべての登録人物の登録用画像についてステップS110〜ステップS140の処理を繰り返した後、記憶部230に記憶されたすべての登録顔データ422を登録顔データ出力インタフェース部240を介して顔照合装置40に送ることができる。
【0108】
なお、制御部220は、上述したように、撮像部10から撮影した登録人物の登録用画像が送られると、随時、送られた登録用画像を登録用顔画像抽出手段2210に渡してもよいが、これらの登録用画像はビデオテープもしくはハードディスクなどの記憶媒体に録画データとして一旦保存されてもよい。そして制御部220は、記憶部媒体に保存された録画データを記憶部230のアクセス装置などによって読み取り、読み取った録画データから1フレームずつ切り出して登録用画像として登録用顔画像抽出手段2210に渡してもよい。
【0109】
図10は、本実施例に係る顔照合装置40による顔照合処理の一例を示すフローチャートである。図10を参照しながら、本実施例のウォークスルー型の入退室管理システム1における顔照合装置40の顔照合処理について説明する。登録人物の登録顔データ422は、図9で説明したように顔データ登録装置20によって生成されて、顔照合装置40の記憶部420に記憶されているものとする。顔照合装置40の制御部440は、撮像部30から画像入力インタフェース部410を介して入力画像を順次受け取ると、以下の処理を実行する。
【0110】
制御部440は、撮像部30から受け取った入力画像を入力顔画像抽出手段4411に渡す。そして、入力顔画像抽出手段4411は、受け取った入力画像から、上述した登録用顔画像抽出手段2210と同様に人物の顔領域を抽出し入力顔画像として記憶部420に記憶する(ステップS210)。
【0111】
なお、ステップS210において、入力画像中に複数の人物が撮影されている場合、入力顔画像抽出手段4411は、入力画像から複数の顔領域を抽出する。この場合、制御部440は、入力画像に含まれる複数の入力顔画像のそれぞれについて、ステップS210〜S270の処理を繰り返す。
【0112】
類似度算出手段4412は、入力顔画像抽出手段4411が抽出した入力顔画像と記憶部420に記憶されている各登録人物の登録顔データ422の様々な顔向きの登録顔画像との類似度をそれぞれ算出する。そして、類似度算出手段4412は、算出した類似度を、登録人物ごとに各登録顔画像の顔向き識別情報に対応付けて類似度テーブルに記憶する(ステップS220)。例えば、登録されている登録人物が100人で、図2に示したように1人につき25枚の登録顔画像が登録されている場合、類似度算出手段4412は、25×100=2500枚の登録顔画像と入力顔画像との類似度を求めて類似度テーブルに記憶してもよい。
【0113】
投票テーブル更新手段4413は、過去に取得した入力画像に関して投票集計テーブルの投票集計値に加算された古い投票値を投票集計テーブルから取り除く(ステップS230)。
【0114】
投票手段4414は、類似度算出手段4412が類似度テーブルに記憶した類似度を参照して入力顔画像に類似する登録顔画像を選択し、選択した登録顔画像の人物および顔向きに対して投票集計テーブルで投票する(ステップS240)。ステップS210において入力画像から複数の入力顔画像が抽出され、抽出された複数の入力顔画像のそれぞれについて画像追跡を行っている場合、投票手段4414は、追跡する入力顔画像ごとに、上述の投票集計テーブルでの投票を行ってもよい。
【0115】
人物決定手段4415は、投票手段4414が投票した投票集計テーブルを参照して、投票集計値が最大である人物を入力顔画像の人物として選択する(ステップS250)。
【0116】
人物決定手段4415は、ステップS250で選択した最大の投票集計値が照合用閾値以上であるか否かを判定する(ステップS260)。
【0117】
最大の投票集計値が照合用閾値未満の場合(ステップS260のNo)、制御部440は、ステップS210に戻り、撮像部30から入力画像を受け取る。そして、制御部440は、受け取った入力画像を入力顔画像抽出手段4411に渡し、ステップS210〜S270の処理を繰り返す。
【0118】
最大の投票集計値が照合用閾値以上の場合(ステップS260のYes)、人物決定手段4415は、選択した最大の投票集計値に対応する人物を入力画像に入力顔画像の人物であると決定して照合結果として出力する(ステップS270)。制御部440は、人物決定手段4415から入力顔画像の人物が登録人物のいずれかであると判定されたことおよび/もしくは入力顔画像の人物であると判定された登録人物に関する人物情報などを照合結果として受け取り、この照合結果を顔照合結果出力インタフェース部450によって顔照合結果処理部50に送り、処理を終了する。
【0119】
本発明に係る顔画像照合装置によれば、入力顔画像と入力顔画像と異なる人物で顔向きが異なる登録顔画像との類似度が非常に高いため入力顔画像の人物を他人と誤って判定してしまう他人受け入れもしくは本人棄却を防止することができるので、顔照合の照合精度を向上させることができる。
【0120】
なお、本発明に係る顔画像照合装置は、ウォークスルー型の入退室管理システムだけでなく、利用者が部屋の入り口の前で一旦立ち止まって入室の許可を得るための顔認証を行う入退室管理システムの顔照合装置に適用することができる。この顔照合装置では、例えば、部屋の入り口前などに設置された複数のカメラによって様々な角度から撮影された様々な顔向きの利用者の画像を複数の入力画像として、上述したウォークスルー型の入退室管理システムの顔照合装置と同様の顔照合処理を行うことができる。
【0121】
また、本発明は、店舗内の店内監視システムなどにおいて監視カメラの監視画像から不審者を検出するために顔照合を行う顔照合装置などに適用することができる。この店内監視システムの顔照合装置では、過去に不正行為を行った前歴のある要監視対象者などの顔画像を登録顔データとして予め登録しておき、監視画像から抽出された入力顔画像と予め登録された登録顔画像とを照合する。この場合、顔照合装置は、監視カメラから時系列に撮影された複数の監視画像を入力画像として、上述の顔照合装置と同様に顔照合を行うことができる。また、この顔照合装置は、店舗内の複数の場所に設置された複数の監視カメラが撮影した複数の監視画像を入力画像とすることができる。そして顔照合装置は、入力画像中の人物が登録顔データが登録されている要監視対象者のいずれかであると判定すると、その旨を警報装置などの顔照合結果処理装置を通じて店員や保安員などの監視者に報知する。
【0122】
また、例えば、上述の店内監視システムにおいて、撮像部から送られた入力画像は、ビデオテープもしくはハードディスクなどの記憶媒体に録画データとして一旦保存されてもよい。この場合、顔照合装置の制御部は、記憶媒体に保存された録画データを記憶部のアクセス装置などによって読み取り、読み取った録画データから1フレームずつ切り出して入力画像とすることができる。そして顔照合装置は、上述したように入力画像中の人物が登録顔データの登録人物であるか否かを照合することによって、保存された録画データ中に要監視対象者などの不審者が写っていないか分析することができる。
【0123】
さらに、上述した実施例では、顔データ登録装置20と顔照合装置40とは別個の装置であったが、本発明に係る顔データ登録装置20と顔照合装置40とは同一の装置でもよい。この場合、顔データ登録装置用の撮像部10、画像入力インタフェース部210、制御部220および/もしくは記憶部230は、それぞれ、顔照合装置40用の撮像部30、画像入力インタフェース部410、制御部440および/もしくは記憶部420と共通でもよい。また、登録顔データ出力インタフェース部240および登録顔データ入力インタフェース部430は不要である。例えば、店内監視システムの一実施例において、顔データ登録装置の制御部は、店舗内の監視カメラなどの撮像部から受け取った監視画像に不審者が含まれていると判定した場合、この監視画像を登録用画像として登録顔データの登録処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、認証システムおよび監視システムなどにおける様々な顔照合装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 ウォークスルー型入退室管理システム
10 撮像部
20 顔データ登録装置
30 撮像部
40 顔照合装置
50 顔照合結果処理部
210 画像入力インタフェース部
220 制御部
230 記憶部
240 登録顔データ出力インタフェース部
410 画像入力インタフェース部
420 記憶部
430 登録顔データ入力インタフェース部
440 制御部
450 顔照合結果出力インタフェース部
2210 登録用顔画像抽出手段
2220 3次元顔モデル生成手段
2230 登録顔データ生成手段
4411 入力顔画像抽出手段
4412 類似度算出手段
4413 投票テーブル更新手段
4414 投票手段
4415 人物決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次取得された複数の入力顔画像を予め登録された登録顔画像と照合する顔画像照合装置であって、
複数の登録人物のそれぞれについて、前記登録顔画像として該登録人物の顔向きが相互に異なる複数の顔画像を記憶する記憶部と、
前記入力顔画像ごとに、前記登録顔画像との類似度を算出する類似度算出手段と、
前記類似度が所定以上の前記登録顔画像に投票するとともに、前記複数の入力顔画像の時間的に連続する所定数分について前記登録顔画像ごとに投票値を集計して投票集計値を求める投票手段と、
前記投票集計値によって前記複数の登録人物のいずれかを前記入力顔画像の人物として決定する人物決定手段と、
を有することを特徴とする顔画像照合装置。
【請求項2】
前記人物決定手段は、前記登録人物ごとの前記投票集計値の総和が最大の登録人物を前記入力顔画像の人物として決定する、請求項1に記載の顔画像照合装置。
【請求項3】
前記人物決定手段は、前記投票集計値が最大の登録人物を前記入力顔画像の人物として決定する、請求項1または2のいずれか1項に記載の顔画像照合装置。
【請求項4】
前記人物決定手段は、前記投票手段が集計する前記入力顔画像の時間的に連続する所定数に基づき予め定めた照合用閾値を前記投票集計値が超えている登録人物を前記入力顔画像の人物として決定する、請求項2または3のいずれか1項に記載の顔画像照合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−215896(P2011−215896A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83602(P2010−83602)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】