説明

顔認証を用いた防犯システム

【課題】捜査対象者を各所で広範囲に、しかも警察官以外の多数の捜査協力者の協力も得て捜査できるとともに、捜査対象者の顔と所在地が特定できたとき、捕捉のための通報も適切に行えるようにする。
【解決手段】固定カメラ装置1で撮影した画像情報を、捜査管理サーバ7において捜査対象者リストデータベース5の顔情報と照合して、捜査対象者の顔認証を行う。捜査対象者を特定できた場合、固定カメラ装置からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて無線基地局3を特定し、捜査対象者所在情報を送信する。無線基地局3は、捜査対象者所在情報を在圏の携帯電話端末2に送信するとともに、携帯電話端末2から送信されてくる顔情報を捜査管理サーバ7へ転送する。捜査管理サーバ7は、携帯電話端末2からの顔情報を、認証した顔情報と照合して、携帯電話端末からの位置情報に基づき警備所端末4を特定し、捜査対象者が付近に居ることを報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捜査対象者の所在地をカメラの撮影画像から顔認証を利用して特定し、警察署等へ通報することで犯罪者等の検挙率の向上が図れる、顔認証を用いた防犯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2007−133595号公報)には、地域を巡回中の警察官が、不審者を発見したとき、所持している携帯電話でこの不審者の顔を撮像し、その撮像した不審者の顔画像を不審者の照会要求とともにセンタ装置に送信すると、センタ装置は、照会要求とともに送信されてきた顔画像をもちいて、データベースに登録されている登録者との顔照合を行い、不審者であると推定される人物の属性情報を照会結果として、警察官の携帯電話に送信する、不審者の照会システムが開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2007−219713号公報)には、指名手配者や行方不明者や不審者の探索・判別などを行うための、次のような照会システムが開示されている。
例えば警察官等がパトロール中などに撮像装置を装着し、この撮像装置は、例えば一定時間毎に撮像を行い、その撮像した画像データに人の顔が映っている場合には、その顔画像から顔特徴データを生成し、顔特徴データを含む照会情報を照会装置に送信する。照会装置側では、照会情報を受信した場合、照会情報に含まれている顔特徴データを用いて顔データベースを検索し、検索された人物情報を含む照会結果情報を生成し、撮像装置に返信する。撮像装置では、照会結果情報を受信することで、それを所持する警察官等に、照会結果の内容、例えば人物情報を提示する。
【0004】
しかし、これらの照会システムでは、警察官自身が、不審者等の顔を撮影して、その顔画像を送信し、照会することで、指名手配者や行方不明者や不審者などを特定できるに過ぎない。警察官のような警察業務に係る特定の人のみに頼った捜査では、犯罪者の検挙率を上げるには、自ずと限界がある。
【特許文献1】特開2007−133595号公報
【特許文献2】特開2007−219713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、捜査対象者を各所で広範囲に、しかも警察官以外の多数の捜査協力者の協力も得て捜査できるとともに、捜査対象者の顔と所在地が特定できたとき、捕捉のための通報も適切に行え、犯罪者等の検挙率の向上に大きく寄与できる、顔認証を用いた防犯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明の防犯システムは、通行人を撮影するため各所に設置され、撮影した画像情報と共に設置位置情報及び撮影時間情報を送信する固定カメラ装置と、無線基地局と、警備所に設置された警備所端末と、捜査対象者の顔情報を含む捜査対象者情報を保存した捜査対象者リストデータベースと、捜査管理サーバと、カメラ及びGPS機能を有し、カメラで撮影した画像をGPS(Global Positioning System):全地球測位システム)機能による位置情報と共に送信する携帯電話端末とを含む。
捜査管理サーバは、固定カメラ装置からネットワークを通じて送信されてきた画像情報を捜査対象者リストデータベースの顔情報と照合して捜査対象者の顔認証を行う顔認証手段と、これにて捜査対象者を特定できた場合、固定カメラ装置からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて送信対象の無線基地局を特定する無線基地局特定手段と、その特定した無線基地局へ、当該捜査対象者の捜査対象者所在情報をネットワークを通じて送信する送信手段とを備える。
無線基地局は、捜査管理サーバからの捜査対象者所在情報を在圏の携帯電話端末に送信するとともに、携帯電話端末から送信されてくる顔情報及び位置情報を捜査管理サーバへ転送する送信手段を備える。
前記捜査管理サーバは、さらに、携帯電話端末からの顔情報を顔認証手段で認証した顔情報と照合する認証顔情報照合手段と、これにて一致した場合、当該携帯電話端末からの位置情報に基づき警備所端末を特定する警備所端末特定手段と、その特定した警備所端末に当該捜査対象者が付近に居ることをネットワークを通じて報知する報知手段を有する。
【0007】
請求項2に係る防犯システムは、さらに、捜査協力者に関する情報を保存した捜査協力者データベースを含み、捜査管理サーバは、携帯電話端末からのGPS情報に基づき、捜査協力者データベースを参照して携帯電話端末を特定する捜査協力者端末特定手段をさらに備え、その特定した携帯電話端末へ無線基地局を通じて捜査対象者所在情報を送信する。
【0008】
請求項3に係る防犯システムは、捜査管理サーバが、さらに、上記のように認証顔情報照合手段で顔情報照合して一致した場合、当該携帯電話端末からの位置情報に基づき、報知対象の携帯電話端末を特定する携帯電話端末特定手段を備え、報知手段は、その特定した携帯電話端末に当該捜査対象者が付近に居ることを無線基地局を通じて報知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、各所に設置された固定カメラ装置で通行人を撮影し、その画像情報を、捜査管理サーバにおいて捜査対象者リストデータベースの顔情報と照合して、捜査対象者の顔認証を行い、捜査対象者を特定できた場合、固定カメラ装置からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて送信対象の無線基地局を特定し、その特定した無線基地局へ、当該捜査対象者の捜査対象者所在情報を送信する。これを受信した無線基地局は、捜査対象者所在情報を在圏の携帯電話端末に送信するとともに、携帯電話端末から送信されてくる顔情報を捜査管理サーバへ転送する。捜査管理サーバは、携帯電話端末からの顔情報を、先に認証した顔情報と照合し、一致した場合、当該携帯電話端末からの位置情報に基づき警備所端末を特定し、その特定した警備所端末に当該捜査対象者が付近に居ることを報知する。
従って、本発明によれば、各所に設置した固定カメラ装置を利用して捜査対象者の顔認証を行い、捜査対象者の顔と所在地を特定した後、その所在地の携帯電話端末を利用して、捜査対象者の再確認と詳細な居場所の特定を行ってから、最寄りの警備所(警察署や交番など)に通報することになるので、捜査対象者を各所で広範囲に、しかも警察官以外の多数の捜査協力者の協力も得て捜査できるとともに、捜査対象者の顔と所在地が特定できたとき、捕捉のための通報を適切に行え、犯罪者等の検挙率の向上に大きく寄与できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、捜査協力者に関する情報を保存した捜査協力者データベースを備え、携帯電話端末からのGPS情報に基づき、捜査協力者データベースを参照して携帯電話端末を特定するので、捜査協力者の協力を得ながら、捜査協力者の携帯電話端末を利用して捜査対象者の顔と詳細な居場所を適切に特定できる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、捜査対象者の再確認と詳細な居場所の特定を行ってから、その捜査対象者が付近に居ることを携帯電話端末にも報知するので、犯罪者等の検挙率の一層の向上と、犯罪再犯防止が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1に、本発明による防犯システムの一例の全体概要構成を示す。
この防犯システムは、通行人を撮影するため各所に設置された複数台の固定カメラ装置1と、カメラ及びGPS機能を有する携帯電話端末2と、その無線基地局3と、警察署や交番等の警備所に設置された警備所端末4と、捜査対象者(犯罪者等)の顔情報を含む捜査対象者情報を保存した捜査対象者リストデータベース5と、捜査協力者に関する情報を保存した捜査協力者データベース6と、捜査管理サーバ7とで構成される。
【0014】
図2にこれらの内部概要構成を示す。
固定カメラ装置1は、路上や商店街等に設置され、通常の防犯カメラと同様の撮影機能を有するカメラ部1aの他に、撮影した画像情報を設置位置情報及び撮影時間情報と共に、無線又は有線のネットワーク8を通じて捜査管理サーバ7へ送信する送信部1bを備えている。設置位置情報は、固定カメラ装置1の設置地点を示す情報と、固定カメラ装置1毎の固有の識別情報を含む。
【0015】
携帯電話端末2は、自身のカメラ2aで撮影した人物の顔画像(顔情報)を、その撮影時間情報及びGPS機能による位置情報と共に、無線送受信部2bから無線基地局3へ無線送信する。
【0016】
無線基地局3は、携帯電話端末2から送信されてくる顔情報及び位置情報を、無線又は有線のネットワーク8を通じて捜査管理サーバ7へ転送するサーバ送信部3aと、この捜査管理サーバ7から後述のように送られてくる捜査対象者所在情報を、在圏の携帯電話端末2へ無線送信する端末送信部3bとを備えている。
【0017】
警備所端末4は、その受信部4aが、無線又は有線のネットワーク8を介して捜査管理サーバ7と接続され、捜査管理サーバ7により後述のように特定された捜査対象者が付近に居ることを、捜査管理サーバ7から通知され、その旨を報知部4bにて報知する。その報知は、捜査管理サーバ7で特定された捜査対象者が、警備所端末4の設置地点付近に居ることが分かればよいので、警備所端末4としては、パーソナルコンピュータや携帯電話端末や移動通信端末や固定電話端末やファクシミリやテレビジョンモニタ装置などの、各種の情報受信機器が考えられる。
【0018】
捜査対象者リストデータベース5には、犯罪者等の捜査対象者の顔情報の他に、捜査に必要なその他の個人情報などが登録されている。この捜査対象者リストデータベース5は、例えば警察署等のホストコンピュータに備えられている場合には、無線又は有線のネットワークを介して捜査管理サーバ7に接続されるが、捜査管理サーバ7自体に備えることもできる。
【0019】
捜査協力者データベース6には、捜査に協力する捜査協力者の氏名、捜査協力者の携帯電話端末2の電話番号などが登録され、その登録した携帯電話端末2からのGPS機能による位置情報を、無線基地局3からの通信により管理できるようになっている。この捜査協力者データベース6も、例えば警察署等のホストコンピュータに備えられている場合には、無線又は有線のネットワークを介して捜査管理サーバ7に接続されるが、捜査管理サーバ7自体に備えることもできる。
【0020】
捜査管理サーバ7は、固定カメラ装置1からネットワークを通じて送信されてきた画像情報を捜査対象者リストデータベース5の顔情報と照合して捜査対象者の顔認証を行う顔認証部7aと、これにて捜査対象者を特定できた場合、固定カメラ装置1からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて送信対象の無線基地局3を特定する無線基地局特定部7bと、その特定した無線基地局3へ、当該捜査対象者の捜査対象者所在情報をネットワークを通じて送信する送信部7cと、携帯電話端末2からの顔情報を顔認証部7aで認証した顔情報と照合する認証顔情報照合部7dと、これにて一致した場合、当該携帯電話端末2からの位置情報に基づき警備所端末4を特定する警備所端末特定部7eと、同様に携帯電話端末2を特定する携帯電話端末特定部7fと、その特定した警備所端末4及び携帯電話端末2に当該捜査対象者が付近に居ることをネットワーク8を通じて報知する報知部7gとを有する。
【0021】
次に、この防犯システムの処理の流れを図2のフローチャートに従って説明する。
ステップS1において、固定カメラ装置1が、撮影した画像情報を設置位置情報及び撮影時間情報と共にネットワークを通じて捜査管理サーバ7へ送信する。
【0022】
ステップS2において、捜査管理サーバ7は、固定カメラ装置1から送信されてきた画像情報を、捜査対象者リストデータベース5に登録の顔情報と顔認証部7aにて照合して捜査対象者の顔認証を行い、捜査対象者を特定する。
【0023】
ここで特定できた場合、ステップS3に進み、固定カメラ装置1からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて、無線基地局特定部7bにより送信対象の無線基地局3を特定する。また、捜査協力者データベース6を参照し、登録されている捜査協力者の中から、通知対象の捜査協力者の携帯電話端末2を特定する。そして、その特定した無線基地局3へ、当該捜査対象者の捜査対象者所在情報及び捜査協力者携帯電話端末の電話番号を送信部7cからネットワークを通じて送信する。
【0024】
次のステップS4において、無線基地局3は、捜査管理サーバ7から送られてきた電話番号の在圏の捜査協力者携帯電話端末2に対して、捜査管理サーバ7から送られてきた捜査対象者所在情報を、端末送信部3bから無線送信し、捜査対象者が付近に居ることを通知する。
【0025】
次に、ステップS5において、捜査対象者所在情報を受け取った携帯電話端末2が、自身のカメラで撮影した人物の顔画像(顔情報)を、その撮影時間情報及びGPS機能による位置情報と共に無線基地局3へ無線送信する。無線基地局3は、これらの情報をネットワークを通じて捜査管理サーバ7へ転送する。
【0026】
次のステップS6において、捜査管理サーバ7は、無線基地局3を介して携帯電話端末2から送られてきた顔情報を、顔認証部7aにて前記のように認証されている顔情報と認証顔情報照合部7dで照合する。その際、携帯電話端末2から顔情報と共に送られてきた撮影時間情報及び位置情報も参照する。
【0027】
次のステップS7において、捜査管理サーバ7は、認証顔情報照合部7dで顔情報が一致した場合、当該携帯電話端末2からの位置情報に基づいて、警備所端末特定部7eにより警備所端末4を特定するとともに、同様に携帯電話端末特定部7fにより携帯電話端末2を特定する。そして、その特定した警備所端末4及び携帯電話端末2に、当該捜査対象者が付近に居ることをネットワーク8を通じて報知部7gにて報知する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による防犯システムの一例の全体概要構成図である。
【図2】その各部の内部概要構成を示すブロック図である。
【図3】処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 固定カメラ装置
1a カメラ部
1b 送信部
2 携帯電話端末
2a カメラ
2b 無線送受信部
3 無線基地局
3a ーバ送信部
3b 端末送信部
4 警備所端末
4a 受信部
4b 報知部
5 捜査対象者リストデータベース
6 捜査協力者データベース
7 捜査管理サーバ
7a 顔認証部
7b 無線基地局特定部
7c 送信部
7d 認証顔情報照合部
7e 警備所端末特定部
7f 携帯電話端末特定部
7g 報知部
8 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行人を撮影するため各所に設置され、撮影した画像情報と共に設置位置情報及び撮影時間情報を送信する固定カメラ装置と、無線基地局と、警備所に設置された警備所端末と、捜査対象者の顔情報を含む捜査対象者情報を保存した捜査対象者リストデータベースと、捜査管理サーバと、カメラ及びGPS機能を有し、カメラで撮影した画像をGPS機能による位置情報と共に送信する携帯電話端末とを含み、
前記捜査管理サーバは、前記固定カメラ装置からネットワークを通じて送信されてきた画像情報を前記捜査対象者リストデータベースの顔情報と照合して捜査対象者の顔認証を行う顔認証手段と、これにて捜査対象者を特定できた場合、前記固定カメラ装置からの設置位置情報及び撮影時間情報に基づいて送信対象の前記無線基地局を特定する無線基地局特定手段と、その特定した無線基地局へ、当該捜査対象者の捜査対象者所在情報をネットワークを通じて送信する送信手段とを備え、
前記無線基地局は、前記捜査管理サーバからの前記捜査対象者所在情報を在圏の前記携帯電話端末に送信するとともに、携帯電話端末から送信されてくる顔情報及び位置情報を前記捜査管理サーバへ転送する送信手段を備え、
前記捜査管理サーバは、さらに、前記携帯電話端末からの顔情報を前記顔認証手段で認証した顔情報と照合する認証顔情報照合手段と、これにて一致した場合、当該携帯電話端末からの位置情報に基づき前記警備所端末を特定する警備所端末特定手段と、その特定した警備所端末に当該捜査対象者が付近に居ることをネットワークを通じて報知する報知手段を有することを特徴とする、顔認証を用いた防犯システム。
【請求項2】
捜査協力者に関する情報を保存した捜査協力者データベースをさらに含み、捜査管理サーバは、携帯電話端末からのGPS情報に基づき、前記捜査協力者データベースを参照して携帯電話端末を特定する捜査協力者端末特定手段をさらに備え、その特定した携帯電話端末へ無線基地局を通じて捜査対象者所在情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の、顔認証を用いた防犯システム。
【請求項3】
捜査管理サーバは、さらに、携帯電話端末からの顔情報と顔認証手段で認証した顔情報とを認証顔情報照合手段で照合して一致した場合、当該携帯電話端末からの位置情報に基づき、報知対象の携帯電話端末を特定する携帯電話端末特定手段を備え、報知手段は、その特定した携帯電話端末に当該捜査対象者が付近に居ることを無線基地局を通じて報知することを特徴とする請求項1又は2に記載の、顔認証を用いた防犯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−206617(P2009−206617A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44667(P2008−44667)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】