説明

風力タービン塔及び摩擦鍛造を利用した組立方法

【課題】摩擦鍛造接合を用いた格子型風力タービン塔を提供すること。
【解決手段】本開示の実施形態は、塔部材(16)に接続するために摩擦鍛造接合部(54)を用いて格子型構造体(20)を生成するためのシステムを含む。本システムは、ファスナー(36)を係合及び回転させて、ファスナー(36)と2以上の加工物(16)との間の鍛造境界面66で摩擦熱を発生させるための回転アクチュエータ(38)を含む。本システムはまた、接合されることになる加工物(16)にファスナー(36)を押し付けるプレス機(66)と、ファスナー(36)及び開口(56)を付加的に加熱することができるヒーター(42)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される発明の対象は、風力タービン塔及び摩擦鍛造を利用した関連する組立方法に関する。
【0002】
風力タービン塔は、風力エネルギーを取り込むためにかなりの高度で風力タービンを支持する管状支柱又は格子構造を含むことができる。タービン支柱は、格子構造よりも比較的組み立てが単純で容易である。しかしながら、管状支柱は、格子構造よりもより多くの鋼材を使用するので、鋼材価格の高騰化に伴いコスト的に不利になる。格子構造は使用する鋼材は少ないが、多数の継手があることに起因して相対的により複雑である。これらの継手は、建造期間を長くし、摩耗が生じ且つメンテナンスを要する場所となる可能性がある。例えば、風力タービン塔に向かう風により引き起こされる振動によって、時間の経過と共にボルト連結が緩む場合がある。ボルト連結は、アーク溶接継手と置き換えることができる。残念ながら、アーク溶接継手にもまた幾つかの欠点がある。
【背景技術】
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5971252号明細書
【特許文献2】米国特許第6213379号明細書
【特許文献3】米国特許第6230958号明細書
【特許文献4】米国特許第6742697号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0125297号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0164081号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】The Friction Stitch Welding Process; www.gibo.demon.co.uk/robhaz/welding.html
【発明の概要】
【0006】
最初の請求項に記載された本発明の技術的範囲に属する特定の実施形態を以下で要約する。これらの実施形態は、請求項に記載された本発明の範囲を限定するものではなく、むしろこれらの実施形態は、本発明の実施可能な形態の要約を提供する目的に過ぎない。実際に、本発明は、以下に記載する実施形態と類似した又は異なるものとすることができる様々な形態を包含することができる。
【0007】
一実施形態では、システムは、複数の交差部材を備える格子構造体と、複数の交差部材の第1の部材と第2の部材の間の摩擦鍛造接合部とを含む。
【0008】
別の実施形態では、システムは、複数の交差部材を備える格子構造体の第1及び第2の部材を接合する摩擦鍛造部を含む。
【0009】
別の実施形態では、システムは、格子構造体の第1及び第2の部材に向けてスタッドを線形的に移動するよう構成されたプレス機と、第1及び第2の部材の両方を含む境界面に沿ってスタッドを回転させて、摩擦及び熱を発生させ、該境界面にて摩擦鍛造接合を精製するよう構成された駆動部と、摩擦鍛造接合の生成に対して、スタッド、第1の部材、第2の部材、又はこれらの組合せを予熱又は後加熱するよう構成されたヒーターと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】摩擦鍛造接合を用いた改善された格子型塔を製作するためのシステムの一実施形態を示すブロック図。
【図2】図1に示す摩擦鍛造システムの一実施形態を示すより詳細なブロック図。
【図3】図2の摩擦鍛造システムで接合できる種々の構造要素を示す、図1の格子型塔の一部の斜視図。
【図4】図2の摩擦鍛造システムで形成できる摩擦鍛造接合の種々の実施形態を示す断面図。
【図5】図2の摩擦鍛造システムで形成できる摩擦鍛造接合の種々の実施形態を示す断面図。
【図6】図2の摩擦鍛造システムで形成できる摩擦鍛造接合の種々の実施形態を示す断面図。
【図7】図2の摩擦鍛造システムで形成できる摩擦鍛造接合の種々の実施形態を示す断面図。
【図8】図2の摩擦鍛造システムで形成できる摩擦鍛造接合の種々の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、図面全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むと更に理解できるであろう。
【0012】
次に、本発明の1以上の特定の実施形態を以下で説明する。これらの実施形態の説明を簡単にする目的で、必ずしも実施の特徴全てが本明細書で説明される訳でない場合がある。何れかの技術又は設計プロジェクトと同様に、このような何らかの実際の実装の開発において、システム及びビジネスに関連した制約への準拠など、実装毎に異なる可能性のある開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装時固有の決定を行う必要がある点は理解されたい。更に、このような開発の取り組みは、複雑で時間を要するものであるが、本開示の利点を有する当業者にとっては、設計、製作、及び製造の日常的な業務である。
【0013】
本発明の種々の実施形態の要素について言及する際に、単数形で記載されたものであっても、その要素が1以上存在することを意味する。本明細書において数詞のない表現は、数量の限定を意味するものではなく、むしろ参照する要素の少なくとも1つが存在することを意味する。用語「備える」、「含む」及び「有する」は、包括的なものであり、記載した要素以外の付加的な要素が存在し得ることを意味する。
【0014】
本開示の実施形態は、風力タービン塔のような格子構造の構造用部品を連結するための摩擦鍛造技術を利用する。改善された風力タービン塔は、同量の鋼材を用いた管状塔と比べて高度な機械的強度をもたらす。更に、風力塔の構成部品は、遙かに大きな管状構造物のセクションと比べて、作製及び建造現場への輸送をより容易にすることができる。このようにすると、風力塔は、約120m、150m又はそれ以上のハブ高さで作製することができる。本明細書で開示される摩擦鍛造技術は、迅速且つ容易に実施され、振動荷重下で信頼性のある連結を提供することができる。以下で検討するように、摩擦鍛造技術は、互いに対して部品を移動させることで摩擦を引き起こすことによって、電気アーク、火炎なしで部品を互いに接合する熱を発生させる。例えば、ある部品(例えば、スタッド)は、摩擦によって部品を互いに鍛造させるのに十分な熱が発生するまで、別の部品と相対的に回転することができる。結果として生じる摩擦鍛造接合部は、溶接に特有の表面だけでなく、部品間の境界面全体に沿って延びる。従って、摩擦鍛造接合部が堅牢となり、ボルト連結、アーク溶接継手などよりも信頼性を高くすることができる。
【0015】
図1は、摩擦鍛造接合部を用いて改善された格子形塔を製作するシステムの実施形態を示すブロック図である。図1は、摩擦鍛造接合部の特定の実施形態に従って構成される格子塔12によって支持された風力タービン10を示す。塔12は、脚部材14及び交差部材16を含む。幾つかの実施形態では、風力タービン10の中心から地表面までの塔高さ18は、約120〜150m又はそれ以上とすることができる。他の実施形態では、高さ18は、120m未満であってもよい。塔12は、何れかのタイプの塔構造を含むことができる。例えば、塔12は、三角(3面)塔、四角(4面)塔、テーパ付き自立塔、支線付き塔、その他とすることができる。風力タービン10は、複数の風力タービン10及び塔12を備えたウィンドファーム上に位置付けることができる。
【0016】
塔12は、互いに重ねて垂直方向にスタックされた複数の塔セクション20を含む。矢印12で示すように、塔12は、個々の塔セクション20を地表面で製作し、次いで塔セクション20を所定位置に引き上げることによって構成することができる。各塔セクション20は、構造鋼部材の交差パターンを有した格子フレームワークを含む。鋼部材は、塔建造システム24を用いて互いに結合され、該システム24は、脚部材14及び交差部材16などの種々の構造部材を接合するための摩擦鍛造システム26を含む。摩擦鍛造システム26は、図2に関連して以下で詳細に説明する。特定の実施形態では、摩擦鍛造システム26は、可搬性であり、及び/又は手動で位置決めすることができる。従って、摩擦鍛造システム26は、塔セクション20の鍛造中に手で位置決めすることができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、摩擦鍛造システム26及び/又は塔部材14及び16は、位置決めシステム28により自動的に位置決めしてもよい。位置決めシステム28は、例えば、ロボットアームを含むことができる。位置決めシステム28及び摩擦鍛造システム26は共に、制御システム30により制御することができる。制御システム30は、1以上のプロセッサを含むことができ、摩擦鍛造システム26及び位置決めシステム28のオペレーションを制御する電気信号を送信することができる。更に、ユーザインターフェース32は、制御システム30に通信可能に結合され、塔建造システム24のユーザ制御を行うことができる。
【0017】
図2は、図1に示す摩擦鍛造システム26の一実施形態を示す詳細ブロック図である。摩擦鍛造システム26は、2以上の塔部材14、16を連結するのに使用される。以下で更に説明されるように、摩擦鍛造システム26は、固定の塔部材14、16と回転するファスナー36との間に発生する摩擦熱を用いて、ファスナー36を隣接する2以上の塔部材14、16に鍛造することにより作動する。従って、摩擦鍛造システム26は、ファスナー36を回転させるための回転アクチュエータ38と、ファスナー36及び塔部材14、16間の圧縮を維持するためのプレス機40とを含む。回転アクチュエータ38は、電気モータ、油圧モータ、又は空気圧(例えば、空気)モータ、又は燃焼機関とすることができる。プレス機40は、ファスナーと塔部材14、16との間の圧力を維持するあらゆる装置とすることができる。例えば、プレス機40は、手動で、電気的に、又は油圧的に作動することができるバネ及び/又はリニアアクチュエータを含むことができる。幾つかの実施形態では、プレス機40は、摩擦鍛造プロセス中にファスナー36及び塔部材14、16間の圧力を増減するよう構成することができる。他の実施形態では、プレス機40は、実質的に定常圧力を維持することができる。
【0018】
摩擦鍛造システム26はまた、ヒーター42を含むことができる。実施形態において、ヒーター42は、誘導加熱器とすることができ、従って、交流電流によって通電される1以上の誘導コイルを含み、ファスナー及び/又は塔部材14、16を加熱する電磁場を発生することができる。図4に関して以下で検討するように、ファスナー36を回転させる前に、ヒーター42を用いて鍛造区域を予熱することができる。このようにすると、回転アクチュエータ38が使用するエネルギーを低減することができる。ヒーター42はまた、鍛造後熱処理を行って摩擦鍛造により生じる残留応力を低減し、これにより鍛造領域の材料特性を変えるのに用いることができる。加えて、予熱処理が使用される場合、熱は、摩擦鍛造接合の周囲の比較的広範囲の区域に広がることができる。従って、摩擦鍛造プロセスによって発生する熱は、より緩慢に拡散することになる。このようにすると、鍛造の冷却特性は、鍛造後熱処理と同様に制御することができる。
【0019】
幾つかの実施形態において、プレス機40、回転アクチュエータ38、及びヒーター42の1以上は電気的に制御することができる。従って、摩擦鍛造システム26は、コントローラ44を含むことができ、該コントローラは、摩擦鍛造プロセスを制御するようプログラムされた1以上のプロセッサを含むことができる。コントローラ44はまた、摩擦鍛造システム26のユーザ制御を可能にするユーザインターフェース32を含むことができる。加えて、コントローラ44は、制御システム30により少なくとも部分的に制御することができ、該制御システム30は、摩擦鍛造システム26及び/又は塔部材14、16を位置決めシステム28によって位置決めするプロセスと摩擦鍛造プロセスを統合することを可能にする。他の実施形態では、プレス機40、回転アクチュエータ38、及びヒーター42は、手動で通電及び制御することができる。
【0020】
摩擦鍛造システム26はまた、鍛造プロセス中の接合温度を測定するための温度センサ37を含むことができる。例えば、温度センサ37を用いて、連結されることになる材料が、鍛造温度、すなわち2つの材料が再結晶化して共に連結する温度に達したかどうかを判断することができる。別の実施例では、温度センサ37を用いて、予熱段及び鍛造後熱処理段中の誘導加熱プロセスを制御することができる。温度センサ37は、鍛造境界面での温度の正確な推定値を得ることができるように、ファスナー36に対して配備することができる。一実施形態では、鍛造境界面の温度は、ファスナー36の露出面の温度を直接測定し、鍛造境界面の温度を外挿することによって推定することができる。温度センサ37は、サーミスタ又は熱電対のような何らかの好適な温度センサとすることができる。温度センサ37からの温度データは、鍛造プロセスの自動制御のためにコントローラ44に送られて処理することができる。例えば、摩擦鍛造プロセスの種々の段は、予めプログラムされた温度目標又は温度対時間プロフィールに応答してトリガすることができる。更に、鍛造圧力、回転速度、ヒーター出力、その他もまた、測定温度プロフィール及び/又は所望の温度プロフィールに基づくことができる。幾つかの実施形態では、摩擦鍛造システム26のユーザに表示する目的で温度データを処理することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、摩擦鍛造システム26はまた、鍛造区域を部分的に又は完全に内包するエンクロージャ46を含むことができる。エンクロージャ46を用いて、外部環境から鍛造区域を隔離することによって鍛造区域の加熱特性の制御をより正確にすることが可能になる。幾つかの実施形態では、エンクロージャ46によって、ヒーター42は、1回で2つ以上の摩擦鍛造接合を加熱することが可能になり、従って、鍛造プロセスの全体の持続時間が短縮される。幾つかの実施形態では、エンクロージャ46はまた、摩擦鍛造システム26を塔部材14、16に接して保持するクランピング装置を含むことができる。
【0022】
図3は、図2の摩擦鍛造システムで接合できる種々の構造要素を示す塔12の一部の斜視図である。図3は、フランジ52によって共に連結された2つの塔セクション20を示している。図3に示すように、塔脚部材14は管状とすることができ、各脚部材14の端部は、塔セクション20を結合するためのフランジ52を含むことができる。塔脚部材14はまた、交差部材16の取り付けを可能にするラグ50を含むことができる。交差部材16は、L字形断面を有することができる。しかしながら、部材14、16は、L字形、矩形、円形、三角形、又は他の断面など、あらゆる好適な断面を有することができる。塔脚部14及び交差部材16は、例えば、ASTM572グレード50鋼などの何らかの高強度構造用鋼で作ることができる。更に、塔脚部14及び交差部材16はまた、低温靱性を示し、従って、零下約30又は40°Fを下回る温度で動作可能な鋼材で作ることができる。フランジ52及びラグ50は、従来の溶接技術により脚部材14に締結することができる。
【0023】
種々の塔部材14、16は、摩擦鍛造システム26によって共に接合することができる。従って、塔12は、複数の摩擦鍛造接合部54を含むことができる。例えば、交差部材16は、摩擦鍛造接合部54によってラグ50に締結することができる。加えて、フランジ52もまた、摩擦鍛造接合部54によって共に締結することができる。図4〜8に関して、種々のスタイルの摩擦鍛造接合部54を以下で説明する。
【0024】
図3に示す塔設計は、開示される実施形態を用いて建造することができる実施可能な塔設計の1つの例証に過ぎず、開示される実施形態に限定することを意図したものではない。例えば、交差部材16は、ラグ50ではなく、脚部14に直接締結してもよい。別の実施例において、塔セクション20は、フランジ52ではなくスリーブ又はブレースを用いてこれらセクションを連結することによって結合することができる。何れの場合においても、塔部材取り付け具の一部又は全ては、本明細書で説明される摩擦鍛造技術を用いて作ることができる。
【0025】
図4A及び4Bは、本発明の実施形態による摩擦鍛造接合部54の一実施形態を示す断面図である。図4Aは、摩擦鍛造プロセスによって連結されることになる、2つの加工物(例えば、ラグ50及び交差部材16)に関連したファスナー36を示している。図4Aの図では、ラグ50及び交差部材16を含むが、他の実施形態では、加工物の何れの組合せを含んでもよい点は理解されるであろう。ファスナー36は、高強度鋼材など、あらゆるタイプの好適な金属とすることができる。幾つかの実施形態において、ファスナー36、ラグ50、及び交差部材16は、同じ材料で作ることができる。しかしながら、他の実施形態では、ファスナー36、ラグ50、及び交差部材16は、異なる材料とすることができる。
【0026】
摩擦鍛造プロセスを開始する前に、ラグ50及び交差部材16は、互いに保持又はクランプすることができる。幾つかの実施形態において、支持体を用いて適切に位置合わせした状態で、ラグ50及びファスナー36を共に保持することができる。加工物、すなわちこの場合はラグ50及び交差部材16の適切な位置合わせは、接合されることになる加工物の全ての表面との間で凹部又は開口56を定める。図4Aの実施形態において図示するように、開口56は、テーパー付き貫通孔で交差部材16を事前穿孔することによって形成されたキャビティとすることができ、貫通孔の内部表面が開口56の側部58を形成し、ラグ50の上面が開口56の底面60を形成するようにする。ファスナー36の側部62は、開口56のテーパーに一致するようにテーパーが付けられ、ファスナー36の底部63は、開口56の平坦な底面60、すなわちラグ50の上部と一致するように平坦にすることができる。このようにして、ファスナー36は、ラグ50及び交差部材16の両方の一部と強固に摩擦接触する。
【0027】
摩擦鍛造プロセスの間、ファスナー36は、矢印65で示すように開口56内に圧入され、矢印67で示すように回転されて、ファスナー36とラグ50との間、及びファスナー36と交差部材16との間で摩擦を引き起こすことができる。回転速度は、摩擦鍛造中に加わる軸方向圧力のレベルと、部品の接触表面積の直径及び大きさを含む加工物の寸法に依存することができる。幾つかの実施形態では、回転速度は、接触面での相対表面速度を5〜50フィート/秒の範囲で提供するよう選択することができる。従って、所望の表面速度を達成するのに使用される回転速度は、回転部材の直径に依存することができる。特定の実施形態において、ファスナーの回転速度は12000〜24000rpmとすることができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、ファスナー36が開口56内に圧入される軸方向の力は、摩擦鍛造プロセスの間に変わる場合がある。例えば、回転摩擦によって連結部分の温度が上昇する加熱段階中に、ファスナー36の回転速度又はファスナー36の相対表面速度に比例して、軸方向の力が漸次的に増大することができる。ファスナー36及び加工物が鍛造温度に達すると、軸方向の力は、周囲の材料の局所的な据え込みを許容して鍛造を達成するのに十分な圧縮応力を加えるレベルにまで増大することができる。
【0029】
ファスナー36と開口56との間の摩擦によって生成される熱によって、回転ファスナー36と固定ラグ50及び交差部材16との間の境界面における金属の温度が上昇する。ある時間期間後、金属が鍛造温度に達すると、図4Bに示すように、ファスナー36がラグ50及び交差部材16と接合する。例えば、圧力、回転速度、及び予熱に応じて、ファスナー36は、約5、10、15、20、30、40、50又は60秒未満でラグ50及び交差部材16と接合することができる。摩擦鍛造プロセスの間、鍛造境界面でファスナー36及び加工物の表面上に存在する可能性のある汚泥又は他の不純物は、開口56から排出される。排出される材料は、「フラッシュ」として定義することができる。幾つかの実施形態において、ラグ50及び/又は交差部材16は、フラッシュを受け入れるための小さな凹部を含むことができる。
【0030】
加えて、上記で説明するように、摩擦鍛造システム26は、ヒーター42を用いて、ファスナー36の回転前に鍛造区域を予熱することができる。鍛造区域を予熱することにより、鍛造境界面を鍛造温度にまでするのに使用される回転エネルギー量を低減することができる。幾つかの実施形態において、ヒーターは、鍛造区域の鍛造温度を最大で約600〜700℃又はそれ以上の最大で鍛造温度の値にまで上昇させることができる。
【0031】
図4Bは、図4Aにおいて上記で説明した摩擦鍛造プロセスで生成される摩擦鍛造接合部の一実施形態を示す。図4Bに示すように、ファスナー36は、鍛造境界面66にてラグ50及び交差部材16に接合される。摩擦鍛造プロセスの結果として、ファスナー36と交差部材16との間、及びファスナー36とラグ50の表面との間の境界面において熱機械的に影響を受けるゾーン64が存在する。熱機械的に影響を受けるゾーン64は、鍛造境界面66の回りの区域であり、ここでは、金属の結晶構造が摩擦及び熱によって変更されている。
【0032】
一般に、熱機械的に影響を受けるゾーン64の強度及び高度特性は、摩擦鍛造プロセスによって変更される可能性がある。従って、幾つかの実施形態において、摩擦鍛造接合部54は、鍛造後熱処理を受ける場合があり、ここでは熱機械的に影響を受けるゾーン64の温度及び/又は冷却速度をヒーター42を用いて制御することができる。幾つかの実施形態において、ヒーター42は、摩擦鍛造接合部54の温度を約500〜750℃又はそれ以上にまで上昇させることができる。その結果、連結される加工物の厚み1インチ当たりに最大で約2時間と15分の時間期間の間、摩擦鍛造接合部54の温度を維持することができる。加えて、鍛造前熱処理は、鍛造境界面66からの熱がより緩慢に放散されるように、鍛造境界面66の回りの金属を加熱することによって摩擦鍛造接合部54の冷却速度に影響を及ぼすことができる。従って、上記で検討した鍛造前熱処理は、鍛造後熱処理を利用することなく、所望の強度及び高度特性を得ることができるように、鍛造区域の冷却速度に影響を及ぼすよう構成することができる。
【0033】
図4Bに示すように、鍛造境界面66は、表面下の材料接合であり、これはアーク溶接又は融接技術では実施することはできない。換言すると、アーク溶接は、アークが形成されて熱を発生することができる表面でしか部品を接合することができない。従って、境界面66の表面積は、アーク溶接よりも実質的に広く且つより深い。更に、鍛造境界面66は、部品内への深さがあるので、2次元ではなく3次元的である。例えば、図示の鍛造境界面66は、テーパー又は円錐形状を有する。鍛造境界面66はまた、連結される部品よりも低い温度で溶融するろう付け材料を使用するろう付け継手とも異なっている。詳細には、鍛造境界面66は、どのような中間材料(例えば、ろう付け)なしで部品を互いに直接接合する。従って、鍛造境界面66は、格子塔12を改善するためには特に有用で、信頼性があり、且つ強固である。
【0034】
図4A及び4Bが、摩擦鍛造技術の一実施形態のみを提示していること、及に本発明の開示事項の範囲内にある多くの変形形態が実施可能であることは理解されるであろう。あらゆる実施可能な実施形態を提示することは、本発明の開示事項の範囲内にはないが、図5〜8は、本発明の技術的範囲に属する複数の代替の摩擦鍛造接合部54構成を示している。
【0035】
図5は、ラグ50が部分的に事前穿孔された摩擦鍛造接合部50の一実施形態を示している。この実施形態では、開口56(鍛造境界面66で表記されている)は、交差部材16及びラグ50の両方を事前穿孔することにより形成される。図4Aと同様にして、開口56の側壁は、ファスナー36のテーパーに一致するようテーパーが付けられる。この実施形態では、ラグ50の事前穿孔は、部分的にラグ50を貫通して、開口56の下側部分を生成する。このようにして、鍛造境界面66の表面積が増大し、結果として潜在的により強力な接合を得ることができる。更に、図5の構成は、図4A及び4Bの構成と比べて、ファスナー36の回転軸から更に離れて摩擦加熱が増大する傾向になるので、ファスナー36及びラグ50間の鍛造境界面66でより高温になり易い場合がある。幾つかの実施形態において、交差部材16及びラグ50は、別個に事前穿孔し、後で位置合わせして開口56を形成してもよい。交差部材16及びラグ50を位置合わせするために、ファスナー36は、交差部材16及びラグ50が横方向に移動可能にされている間、開口56内に圧入することができる。このようにして、開口56は、交差部材16及びラグ50の適切な位置合わせを可能にすることができる。
【0036】
図6は、複数の構造部材が共に締結され且つ部材全てが事前穿孔された摩擦鍛造接合部54の一実施形態を示している。図5と同様に、交差部材16及びラグ50が事前穿孔されて開口56(鍛造境界面66で表記されている)を形成しており、開口56の側壁は、ファスナー36のテーパーと一致するようテーパーが付けられている。しかしながら、図6において、部材の全ては、開口56が、図5に示すようなキャビティではなく、テーパー付き貫通孔であるように穿通される。図6に示すように、摩擦鍛造技術を用いて、同じ摩擦鍛造接合部54で複数の部材を連結することができる。各摩擦鍛造接合部54で行われる接続の数を増やすことによって、塔12の摩擦鍛造接合部54の全体の数が低減され、従って、塔12の総組立時間を低減することができる。図6に示すように、交差部材16は、ラグ50の両側に摩擦鍛造接合することができ、複数の交差部材16は、ラグ50の片側にスタックすることができる。上記で検討したように、開口56を用いて、交差部材16及びラグ50の適切な位置合わせを可能にすることができる。例えば、ファスナー36は、部材が横方向に移動可能な間、開口56内に入れ込むことができる。
【0037】
図7は、肩部70の上にネジ付きスタッド又は突出部68を含み、開口56にはファスナー36の下に位置付けられた凹部72が含まれる、摩擦鍛造接合部54を示している。ネジ付き突出部68を用いて、電線管、照明器具、アンテナ、その他など、別の構造部材又は非構造部材を含む固定具を塔12に取り付けることができる。この実施形態では、ファスナー36は、ボルト締結される固定具を交差部材16から一定の距離離れて離間ささせるための肩部70を含むことができる。更に、突出部68は、ネジ付きスタッドではなく、フック、ループ、又は他の何れかのタイプの締結装置を含むことができる。凹部72は、開口56をファスナー36よりもラグ内により深く延ばすことによってラグ50内に形成することができ、凹部72のテーパーが開口56のテーパーに続くようにされる。凹部72は、少なくとも2つの目的を果たす。最初に、開口56をファスナー36の深さよりも深く延ばすことによって、ファスナー36が鍛造境界面66に十分に接触する前に開口56の底面に達する可能性が低減され、事前穿孔孔の機械公差を緩めることができる。更に、凹部72はまた、鍛造境界面66からのフラッシュを放出することができるキャビティを設けることができる。
【0038】
図8は、ファスナー36が交差部材16及びラグ50の両方を完全に貫通して延びて、開口56の両側にネジ付き突出部68を含む、摩擦鍛造接合部54の一実施形態を示す。上述のように、ネジ付き突出部68を用いて、他の構造部材又は非構造部材を取り付けることができる。更に、この実施形態において、ネジ付き突出部68を用いて、交差部材16をラグ50に締結する冗長的な方法を提供することができる。例えば、突出部68は、両側にワッシャー及びナットを受けることができ、ナットが部材16及びラグ50を共に圧縮することができるようになる。ナットはまた、突出部68にスポット溶接してもよい。
【0039】
図4〜8で示されるように、本発明の実施形態は、広範な摩擦鍛造接合部54構成を含むが、本明細書で説明される構成は、網羅的に記載するものではない。他の種々の実施形態は、他の特徴及び特徴の組合せを含むことができる。
【0040】
本明細書で説明される鍛造プロセスの幾つかの特徴は、取り付け技術よりも優れた利点を提供することができる。例えば、摩擦鍛造プロセスは固相プロセスであり、連結部品もファスナーも何れも溶融点まで加熱されることはなく、むしろ低温の鍛造温度である。次いで、鍛造境界面66において、必要とされる場合に直接熱が生成される。これらの理由から、本明細書で説明された摩擦鍛造プロセスによって生成される熱の量は、アーク溶接又は融接などの溶接技術と比べて比較的少なくすることができ、結果として、締結された加工物の変形が殆ど又は全くなく、使用するエネルギーが遙かに少なくなる。加えて、摩擦鍛造プロセスは、表面処理、溶剤、溶加材、又はシールドガスなしで用いることができる。摩擦鍛造接合部54はまた、通常の溶接プロセスよりもより反復可能でより信頼性があり、結果として溶接と比べ欠陥の可能性が低減される。
【0041】
摩擦鍛造ファスナーは、ボルトと比べると、振動による緩み又は疲労の影響を受けず、多数のボルト接続の定期点検の必要がなくなり、これにより信頼性を高めながら塔12のメンテナンスコストが低減される。従って、本明細書で説明される実施形態は、格子型風力タービン塔を製作する経済的及び信頼性のある方法を提供する。詳細には、風力タービン塔は、約100〜120mを超える高さを有する。
【0042】
本発明の技術的作用は、振動荷重によって引き起こされる脆弱化に耐性があり、従来の溶接技術と比べて製作が迅速且つ容易で、より信頼性がある摩擦鍛造接合の形成を含む。別の技術的作用は、このような摩擦鍛造接合を用いた格子型風力タービン塔の製作である。
【0043】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0044】
14、16 塔部材
26 摩擦鍛造システム
36 ファスナー
37 温度センサ
38 回転アクチュエータ
40 プレス機
42 ヒーター
44 コントローラ
46 エンクロージャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交差部材(16)を備える格子構造体(20)と、
前記複数の交差部材(16)の第1の部材(16)と第2の部材(16)との間の摩擦鍛造接合部(54)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記格子構造体(20)を有する風力塔(12)と、該風力塔(12)に結合された風力タービン(10)とを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記風力塔(12)を複数備えたウィンドファームをなす、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記摩擦鍛造接合部(54)が、第1の部材(16)、第2の部材(16)又はその両方に対して少なくとも部分的に表面下にある、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記摩擦鍛造接合部(54)が、第1の部材(16)を少なくとも部分的に貫通して延びる管状幾何形状(66)を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記摩擦鍛造接合部(54)が、第1の部材(16)を完全に貫通し、第2の部材(16)を少なくとも部分的に貫通して延びる管状幾何形状(66)を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記摩擦鍛造接合部(54)が、第1及び第2の部材(16)の両方を完全に貫通して延びる管状幾何形状(66)を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
前記摩擦鍛造接合部(54)が、円錐幾何形状(66)を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項9】
第1及び/又は第2の部材(16)の開口(56)内に配置されたスタッド(36)を備え、前記摩擦鍛造接合部(54)が前記開口(56)内に配置され、前記スタッド(36)が、前記摩擦鍛造接合部(54)とは関係のない第1のファスナー(68)を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
第1のファスナー(68)が、前記摩擦鍛造接合部(54)とは関係のない第1のネジ付き部分を有する、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167496(P2010−167496A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8633(P2010−8633)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】