説明

風力発電装置の制御装置、風力発電装置、ウインドファーム、及び風力発電装置の制御方法

【課題】電力系統の低下した電圧を早急に回復させることを目的とする。
【解決手段】制御装置19は、系統電圧検出部22によって検出された系統電圧の値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に系統電圧検出部22による検出結果に基づいた電力系統18への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の制御装置、風力発電装置、ウインドファーム、及び風力発電装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウインドファームは、複数の風力発電装置を有し、風力発電装置で発電した電力を電力系統へ供給する。そして、電力系統に事故が生じる等の異常によって、電力系統の電圧の低下や周波数の低下が生じた場合、ウインドファームは、無効電流を供給することで低下した電圧を回復させる電圧サポート、及び有効電流を供給(Primary Frequency Control)することで低下した周波数を回復させる周波数サポートを行うことによって、電力系統を安定化させている。
特許文献1には、電力系統の周波数が低下した場合に、風力発電装置の出力をさらに電力系統へ供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7528496号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力系統に異常が生じると、電力系統の電圧の低下と周波数の低下とが発生すると考えられる。そして、電力系統の電圧及び周波数が低下した場合、風力発電装置は、これらを回復させるための電力(電流)の供給を行う。特に、電力系統の低下した電圧が、早急に回復されなければならない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる風力発電装置の制御装置、風力発電装置、ウインドファーム、及び風力発電装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の風力発電装置の制御装置、風力発電装置、ウインドファーム、及び風力発電装置の制御方法は以下の手段を採用する。
【0007】
すなわち、本発明に係る風力発電装置の制御装置は、ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置の制御装置であって、前記電力系統の電圧及び周波数の少なくとも一方を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に前記検出手段による検出結果に基づいた前記電力系統への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する出力電流制御手段と、を備える。
【0008】
本発明によれば、検出手段によって、電力系統の電圧又は周波数が検出される。電力系統は、ロータの回転により発電する風力発電装置からの電力の供給を受ける。
出力電流制御手段は、有効電流と無効電流とによって定められると共に検出手段による検出結果に基づいた電力系統への出力量を示す要出力電流を、電力系統へ出力するように風力発電装置を制御する。
【0009】
なお、風力発電装置が電力系統へ出力する電流のうち、有効電流は電力系統の周波数の増加に寄与する一方、無効電流は電力系統の電圧の増加に寄与する。
そして、出力電流制御手段は、検出手段によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、要出力電流に応じた無効電流を、電力系統へ出力するように風力発電装置を制御する。
【0010】
検出手段によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合とは、大型発電所の解列等、電力系統に事故等の異常が生じた場合である。すなわち、出力電流制御手段は、電力系統に異常が生じた場合、要出力電流の有効電流の大きさに係らず、要出力電流に応じた無効電流を風力発電装置から電力系統へ出力させる。
従って、本発明は、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる。
【0011】
また、本発明の制御装置は、出力電流制御手段が、前記風力発電装置で出力可能な有効電流と無効電流との範囲を前記要出力電流が超えている場合に、該要出力電流の無効電流に応じた無効電流を該範囲内で前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御してもよい。
【0012】
電力系統の電圧や周波数の低下量が大きいと、要出力電流が、風力発電装置で出力可能な範囲外となる場合がある。このような場合、風力発電装置は、要出力電流の有効電流と無効電流を満たす電流を電力系統へ出力することができない。
そこで、本発明は、要出力電流が、風力発電装置で出力可能な範囲を超えている場合に、要出力電流の無効電流に応じた無効電流を該範囲内で風力発電装置から電力系統へ出力させるので、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる。
【0013】
また、本発明の制御装置は、前記出力電流制御手段が、前記電力系統の電圧が予め定められた所定値に回復した後、該電圧及び該周波数が前記基準値に回復するまで、前記要出力電流に応じた有効電流を前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御してもよい。
【0014】
電力系統に異常が生じると、電力系統の電圧と共に電力系統の周波数が変化すると考えられる。しかし、電力系統の電圧の大きさがある程度大きい状態でないと電力系統の周波数を回復させるための有効電流(エネルギー)は吸収されにくい。そこで、出力電流制御手段は、電力系統の電圧が予め定められた所定値に回復した後、該電圧及び該周波数が基準値に回復するまで、要出力電流に応じた有効電流を前記電力系統へ出力するように風力発電装置を制御する。
従って、本発明は、電力系統の低下した周波数を早急に回復させることができる。
【0015】
一方、本発明にかかる風力発電装置は、ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置であって、上記記載の制御装置を備える。
【0016】
本発明によれば、上記記載の制御装置を備えるので、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる。
【0017】
さらに、本発明に係るウインドファームは、上記記載の風力発電装置を複数備え、複数の前記風力発電装置が、前記風力発電装置の出力、風速、及び前記ロータの回転数の何れかの大きさに応じて、前記電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに分けられる。
【0018】
本発明によれば、複数の前記風力発電装置が、風力発電装置の出力、風速、及びロータの回転数の何れかの大きさに応じて、電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに分けられる。なお、風力発電装置の出力、風速、及びロータの回転数の何れかの大きさとは、風力発電装置の出力、風速、及びロータの回転数を元に決定される関数の大きさを含む。
【0019】
このため、複数の風力発電装置は、電力系統に異常が生じた場合に、電圧を優先的に回復させるグループと周波数を優先的に回復させるグループとに分けられることができるため、より効率的に電力系統の電圧及び周波数を回復させることができる。
【0020】
また、本発明に係るウインドファームは、上記記載の風力発電装置を複数備え、複数の前記風力発電装置が、前記電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに予め分けられる。
【0021】
本発明によれば、複数の前記風力発電装置が、電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに予め分けられているので、簡易かつ効率的に電力系統の電圧及び周波数を回復させることができる。
【0022】
また、本発明に係る風力発電装置の制御方法は、ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置の制御方法であって、前記電力系統の電圧及び周波数の少なくとも一方を検出する第1工程と、前記第1工程によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に前記第1工程による検出結果に基づいた前記電力系統への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する第2工程と、を含む。
【0023】
本発明によれば、出力電流制御手段は、要出力電流の有効電流の大きさに係らず、要出力電流に応じた無効電流を風力発電装置から電力系統へ出力させるので、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電力系統の低下した電圧を早急に回復させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るウインドファームの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る系統電圧及び系統周波数が低下した場合のグラフである。
【図3】本発明の実施形態に係る要出力電流が発電可能曲線の範囲内にある場合を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る要出力電流の有効電流と無効電流が共に、風力発電装置で出力可能な有効電流及び無効電流以下であるものの、要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る要出力電流の有効電流が風力発電装置で出力可能な有効電流を超えるため、要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る要出力電流の無効電流が風力発電装置で出力可能な無効電流を超えるために、要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る要出力電流の有効電流と無効電流が共に、風力発電装置で出力可能な有効電流及び無効電流を超えるため、要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電力系統回復プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る風力発電装置のグループ分けの説明に要する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る風力発電装置の制御装置、風力発電装置、ウインドファーム、及び風力発電装置の制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るウインドファーム10の全体構成を示した図である。ウインドファーム10は、ロータ12の回転により発電する複数の風力発電装置14と、各風力発電装置14の運転状態を制御する制御装置であるSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)16とを備えている。本実施形態において、ウインドファーム10は、図1に示すように6台の風力発電装置14を備える場合を例に挙げて説明するが、台数は特に限定されない。
【0028】
なお、風力発電装置14は、他の風力発電装置14及び電力系統18に変圧器20を介して電気的に接続され、発電した電力を電力系統18へ供給する。
【0029】
風力発電装置14は、各々、制御装置19を備えている。なお、図1では、錯綜を回避するために、一の風力発電装置14にのみ対応する制御装置19を図示している。
【0030】
制御装置19は、SCADA16からの制御信号に応じて、対応する風力発電装置14を制御する。また、制御装置19は、電力系統18の電圧及び周波数を検出する系統電圧検出部22、及び系統電圧検出部22の検出結果に応じた電流を電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御する出力電流制御部23を備えている。なお、以下の説明では、電力系統18の電圧を系統電圧と称呼し、電力系統18の周波数を系統周波数と称呼する。
【0031】
ここで、例えば、大型発電所の解列等、電力系統18に事故(以下、「系統事故」という。)等の異常が生じることによって、図2に示すように、系統電圧及び系統周波数が基準値から変化する場合がある。なお、本実施形態では、一例として、系統電圧の基準値を1puとし、系統周波数の基準値を60Hzとする。
このような系統事故が発生した場合、制御装置19は、低下した系統電圧及び系統周波数が基準値に回復するように、風力発電装置14による電力系統18への電力の供給を制御する電力系統回復処理を行う。なお、風力発電装置14が電力系統18へ出力する電流のうち、有効電流は、系統周波数の増加に寄与する一方、無効電流は系統電圧の増加に寄与する。
【0032】
次に、有効電流Ipcと無効電流Iqcとによって定められると共に系統電圧検出部22による検出結果に基づいた電力系統18への出力量を示す要出力電流について説明する。
【0033】
要出力電流は、出力電流制御部23によって、系統電圧検出部22による検出結果に基づいて、系統電圧及び系統周波数が基準値となるように算出される。
すなわち、系統電圧が低下した場合、低下した系統電圧を回復させるために要出力電流の無効電流はより大きくなり、これに伴い、出力電流制御部23は、要出力電流の無効電流に応じた無効電流を風力発電装置14から電力系統18へ出力させる。一方、系統周波数が低下した場合、低下した系統周波数を回復させるために要出力電流の有効電流はより大きくなり、これに伴い、出力電流制御部23は、要出力電流の有効電流に応じた有効電流を風力発電装置14から電力系統18へ出力させる。
【0034】
図3は、横軸を有効電流、縦軸を無効電流とし、風力発電装置14で出力可能な有効電流と無効電流との範囲を発電可能曲線として示している。なお、発電可能曲線は、(1)式で示される。
【数1】

【0035】
そして、図3に示す例は、(2)式に示すように、要出力電流(Ipc,Iqc)が発電可能曲線の範囲内にある場合である。
【数2】

【0036】
この場合、要出力電流が発電可能曲線の範囲内にあるため、制御装置19は、出力電流制御部23によって、該要出力電流を出力するように風力発電装置14を制御する。
【0037】
そして、本実施形態に係る出力電流制御部23は、系統電圧検出部22によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、要出力電流に応じた無効電流を、電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御する。すなわち、出力電流制御部23は、系統事故が生じた場合、要出力電流の有効電流の大きさに係らず、要出力電流に応じた無効電流を風力発電装置14から電力系統18へ出力させる。
【0038】
しかしながら、図4〜7に示すように、系統電圧や系統周波数の低下量が大きいと、電力系統18の要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合がある。このような場合、風力発電装置14は、要出力電流の有効電流と無効電流を満たす電流を電力系統18へ出力することができない。
【0039】
図4に示す例は、(3)式に示すように、要出力電流の有効電流Ipcが風力発電装置14で出力可能な有効電流の最大値以下であり、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流の最大値以下であり、かつ電力系統18の要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合である。
【数3】

【0040】
このような場合、出力電流制御部23は、無効電流を優先して出力する無効電流優先モード(電圧サポート制御)又は有効電流を優先して出力する有効電流優先モード(周波数サポート制御)の何れか一方の制御を行う。
【0041】
無効電流優先モードは、系統周波数よりも系統電圧を優先して回復させる電圧サポート制御であり、風力発電装置14は、要出力電流の無効電流に応じた無効電流を発電可能曲線の範囲内で電力系統18へ出力する。そのため、図4の無効電流優先モードの動作点で示されるように、要出力電流の有効電流の大きさにかかわらず、無効電流が有効電流よりも優先して風力発電装置14から電力系統18へ出力される。
【0042】
一方、有効電流優先モードは、系統電圧よりも系統周波数を優先して回復させる周波数サポート制御であり、風力発電装置14は、要出力電流の有効電流に応じた有効電流を発電可能曲線の範囲内で電力系統18へ出力する。そのため、図4の有効電流優先モードの動作点で示されるように、要出力電流の無効電流の大きさにかかわらず、有効電流が無効電流よりも優先して風力発電装置14から電力系統18へ出力される。
【0043】
ここで、本実施形態に係る出力電流制御部23は、要出力電流が風力発電装置14で出力可能な電流の範囲を超えている場合に、要出力電流の無効電流に応じた無効電流を該範囲内で電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御する。すなわち、出力電流制御部23は、無効電流優先モードによって電圧サポート制御を行うことによって、系統電圧の回復を優先的に行う。
この主な理由は、系統電圧の大きさがある程度大きい状態でないと系統周波数を回復させるための有効電流(エネルギー)は吸収されにくいためである。
【0044】
図4に示す例では、電圧サポート制御によって風力発電装置14は、無効電流優先モードの動作点で示される発電可能曲線上の無効電流を電力系統18へ出力する。
【0045】
図5に示す例は、(4)式に示すように、要出力電流の有効電流Ipcが風力発電装置14で出力可能な有効電流を超え、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流の最大値以下であり、かつ電力系統18の要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合である。
【数4】

この場合も、本実施形態に係る風力発電装置14は、電圧サポート制御によって、無効電流優先モードの動作点で示される発電可能曲線上の無効電流を電力系統18へ出力する。
【0046】
図6に示す例は、(5)式に示すように、要出力電流の有効電流Ipcが風力発電装置14で出力可能な有効電流以下であり、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流を超え、かつ電力系統18の要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合である。
【数5】

この場合も、本実施形態に係る風力発電装置14は、電圧サポート制御によって、無効電流優先モードの動作点で示される発電可能曲線上の無効電流を電力系統18へ出力する。しかし、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流を超えているため、風力発電装置14から出力される無効電流は、出力可能な無効電流の最大値となる。一方、風力発電装置14から出力される無効電流は、0(零)となる。
【0047】
図7に示す例は、(6)式に示すように、要出力電流の有効電流Ipcが風力発電装置14で出力可能な有効電流を超え、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流を超え、かつ電力系統18の要出力電流が発電可能曲線の範囲外となる場合である。
【数6】

この場合も、本実施形態に係る風力発電装置14は、電圧サポート制御によって、無効電流優先モードの動作点で示される発電可能曲線上の無効電流を電力系統18へ出力する。しかし、要出力電流の無効電流Iqcが風力発電装置14で出力可能な無効電流を超えているため、風力発電装置14から出力される無効電流は、出力可能な無効電流の最大値となる。一方、風力発電装置14から出力される無効電流は、0(零)となる。
【0048】
次に図8を参照して、本実施形態に係る電力系統回復処理について説明する。
図8は、本実施形態に係る電力系統回復処理を行う場合に、制御装置19によって実行される電力系統回復プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、該電力系統回復プログラムは制御装置19が備える不図示の記憶手段の所定領域に予め記憶されている。
【0049】
なお、本実施形態に係る電力系統回復プログラムは、系統電圧検出部22で検出された系統電圧の値に、基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に開始される。
本実施形態では、上記条件を、一例として、図2に示すように系統電圧に0.2pu以下となる低下が150msec継続した場合とする。すなわち、上記条件を満たす場合に、電力系統18に異常が生じていると判断される。なお、上記条件を満たさない系統電圧の低下は、系統事故に起因しない一時的な系統電圧の低下、又は制御装置19による系統電圧の検出において発生したノイズ等と考えられる。
【0050】
そして、上記条件を満たす系統電圧の低下が検出されると、制御装置19は、電力系統回復プログラムを実行する。
【0051】
まず、ステップ100では、電圧サポート制御を行い、無効電流優先モードの無効電流に応じて、発電可能曲線上の無効電流を電力系統18へ出力する。
【0052】
次のステップ102では、系統電圧が所定値(例えば、0.9pu、図2も参照)に回復したか否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ104へ移行する一方、否定判定の場合は、ステップ100へ戻り系統電圧が所定値となるまで電圧サポート制御を実行する。
【0053】
ステップ104では、電圧サポート制御と周波数サポート制御とを組み合わせた制御である複合サポート制御を行う。
【0054】
なお、上述したように、系統電圧の大きさがある程度大きい状態でないと系統周波数を回復させるための有効電流(エネルギー)は吸収されにくい。そのため、本実施形態に係る電力系統回復処理では、上記のように、事故等の異常で電力系統18の電圧が著しく低下した場合は、まず電圧サポート制御によって、系統電圧を所定値まで回復させた後に電圧サポート制御と周波数サポート制御を複合して行うことによって系統周波数を回復させる。
【0055】
複合サポート制御では、必ずしも、無効電流よりも多くの有効電流を電力系統18へ供給する必要はないが、無効電流よりも多くの有効電流を電力系統18へ供給することによって、より効果的に系統周波数を基準値に回復させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る複合サポート制御では、図9に示すように、ウインドファーム10を構成する複数の風力発電装置14を、電力系統18へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに分ける。
本実施形態では、一例として、複合サポート制御が行われる場合ときにおける風力発電装置14の出力の大きさに応じて、複数の風力発電装置14を、有効電流優先モードで制御する周波数サポートグループ、及び無効電流優先モードで制御する電圧サポートグループに分ける。
複数の風力発電装置14に対する周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの分け方としては、例えば、ウインドファーム10全体の平均出力又は予め定められた閾値に対する上下で分けてもよいし、出力の高い順にN台の風力発電装置14を周波数サポートグループとし、他の風力発電装置14を電圧サポートグループとしてもよいし、出力の低い順にM台の風力発電装置14を電圧サポートグループとし、他の風力発電装置14を周波数サポートグループとしてもよい。
すなわち、より高い出力の風力発電装置14の方が有効電流を出力できるため、そのような風力発電装置14を周波数サポートグループとする。
【0057】
なお、複数の風力発電装置14は、風力発電装置14の出力の高低でグループ分けされずに、風力発電装置14の出力に密接に関連する風速でグループ分けされてもよい。この場合、周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの分け方としては、例えば、ウインドファーム10全体の平均風速又は予め定められた閾値に対する上下で分けてもよいし、風速の速い順にN台の風力発電装置14を周波数サポートグループとし、他の風力発電装置14を電圧サポートグループとしてもよいし、風速の遅い順にM台の風力発電装置14を電圧サポートグループとし、他の風力発電装置14を周波数サポートグループとしてもよい。
【0058】
また、複数の風力発電装置14は、風力発電装置14の出力に密接に関連するロータ12の回転数でグループ分けされてもよい。この場合、周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの分け方としては、例えば、ウインドファーム10全体の平均回転数又は予め定められた閾値に対する上下で分けてもよいし、回転数の高い順にN台の風力発電装置14を周波数サポートグループとし、他の風力発電装置14を電圧サポートグループとしてもよいし、回転数の低い順にM台の風力発電装置14を電圧サポートグループとし、他の風力発電装置14を周波数サポートグループとしてもよい。
【0059】
さらに、複数の風力発電装置14は、風力発電装置の出力、風速、及びロータの回転数を元に決定される関数の大きさに基づいてグループ分けされてもよい。
【0060】
次のステップ106では、系統電圧及び系統周波数が基準値に回復したか否かを判定し、肯定判定の場合は、本プログラムを終了する一方、否定判定の場合は、ステップ104へ戻り系統電圧及び系統周波数が基準値に回復するまで複合サポート制御を実行する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置19は、系統電圧検出部22によって検出された系統電圧の値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に系統電圧検出部22による検出結果に基づいた電力系統18への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御する。
これにより、制御装置19は、要出力電流の有効電流の大きさに係らず、要出力電流に応じた無効電流を風力発電装置14から電力系統18へ出力させるので、低下した系統電圧を早急に回復させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る制御装置19は、要出力電流が風力発電装置14で出力可能な電流の範囲を超えている場合に、要出力電流の無効電流に応じた無効電流を該範囲内で風力発電装置14から電力系統へ出力させるので、低下した系統電圧を早急に回復させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る制御装置19は、系統電圧が予め定められた所定値に回復した後、系統電圧及び系統周波数が基準値に回復するまで、要出力電流に応じた有効電流を電力系統18へ出力するように風力発電装置14を制御するので、低下した系統周波数を早急に回復させることができる。
【0064】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、系統電圧検出部22によって検出された系統電圧に基準値に対して予め定められた条件を満たす低下が生じた場合に、制御装置19が電力系統回復処理を実行する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、制御装置19は、系統周波数を検出する系統周波数検出部を備え、該系統周波数検出部によって検出された系統周波数に基準値に対して予め定められた条件を満たす低下が生じた場合に、電力系統回復処理を実行する形態としてもよい。この形態の場合、例えば、系統周波数に基準値の80%以下となる低下が150msec継続した場合に、制御装置19が電力系統回復処理を実行する。
また、系統電圧及び系統周波数の両方に基準値に対して予め定められた条件を満たす低下が生じた場合に、制御装置19が電力系統回復を実行する形態としてもよい。この形態の場合、例えば、系統電圧に0.2pu以下となる低下が150msec継続し、かつ系統周波数に基準値の80%以下となる低下が150msec継続した場合に、制御装置19が電力系統回復処理を実行する。
【0066】
また、上記実施形態では、複合サポート制御において、複数の風力発電装置14が、複合サポート制御が行われるときにおける風力発電装置14の出力等の大きさに応じて、電力系統18へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに分けられる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明は、これに限定されるものではなく、複数の風力発電装置14が、電力系統18へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに予め分けられている形態としてもよい。
この形態の場合、例えば、複数の風力発電装置14は、発電定格の大きい風力発電装置14が周波数サポートグループとされ、発電定格の小さいグループが電圧サポートグループとされてもよい。また、系統事故発生時の風力発電装置14の出力を確保するために、出力が予め制限される運転であるデロード(deload)運転されている風力発電装置14が周波数サポートグループとされ、デロード運転されていない風力発電装置14が電圧サポートグループとされてもよい。さらに、風力発電装置14の設置場所に応じて風力発電装置14がグループ分けされてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、複数の風力発電装置14を周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの2つのグループに分ける場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、複数の風力発電装置14を3以上のグループに分ける形態としてもよい。
この形態の場合、例えば、風力発電装置14の出力の大きさに応じて、風力発電装置14を電力系統18へ供給する無効電流の大きさが段階的に異なる複数のグループに分け、出力の大きいグループほどより周波数サポートの寄与を大きくする。これにより、より複雑な風況に応じてグループ分けをすることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、複数の風力発電装置14が周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの何れかに分けられる場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、複数の風力発電装置14の一部が周波数サポートグループ及び電圧サポートグループに分けられ、他の一部は周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの何れにも属さない形態としてもよい。
この形態の場合、周波数サポートグループ及び電圧サポートグループの何れにも属さない風力発電装置14は、電力系統回復処理には寄与しない。
【0069】
また、上記実施形態では、制御装置19が電力系統回復処理を実行する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、SCADA16が系統電圧又は系統周波数の少なくとも何れか一方を検出し、検出した値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、複数の風力発電装置14の各々に電力系統回復処理を実行させる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 ウインドファーム
12 ロータ
14 風力発電装置
16 SCADA
18 電力系統
19 制御装置
22 系統電圧検出部
23 出力電流制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置の制御装置であって、
前記電力系統の電圧及び周波数の少なくとも一方を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に前記検出手段による検出結果に基づいた前記電力系統への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する出力電流制御手段と、
を備える風力発電装置の制御装置。
【請求項2】
出力電流制御手段は、前記風力発電装置で出力可能な有効電流と無効電流との範囲を前記要出力電流が超えている場合に、該要出力電流の無効電流に応じた無効電流を該範囲内で前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する請求項1記載の風力発電装置の制御装置。
【請求項3】
前記出力電流制御手段は、前記電力系統の電圧が予め定められた所定値に回復した後、該電圧及び該周波数が前記基準値に回復するまで、前記要出力電流に応じた有効電流を前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する請求項1又は請求項2記載の風力発電装置の制御装置。
【請求項4】
ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置であって、
請求項1から請求項3の何れか1項記載の制御装置を備えた風力発電装置。
【請求項5】
請求項4記載の風力発電装置を複数備え、
複数の前記風力発電装置が、前記風力発電装置の出力、風速、及び前記ロータの回転数の何れかの大きさに応じて、前記電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに分けられるウインドファーム。
【請求項6】
請求項4記載の風力発電装置を複数備え、
複数の前記風力発電装置が、前記電力系統へ出力する有効電流と無効電流との比が異なる複数のグループに予め分けられるウインドファーム。
【請求項7】
ロータの回転により発電し、発電した電力を電力系統へ供給する風力発電装置の制御方法であって、
前記電力系統の電圧及び周波数の少なくとも一方を検出する第1工程と、
前記第1工程によって検出された値に基準値に対して予め定められた条件を満たす変化が生じた場合に、有効電流と無効電流とによって定められると共に前記第1工程による検出結果に基づいた前記電力系統への出力量を示す要出力電流に応じた無効電流を、前記電力系統へ出力するように前記風力発電装置を制御する第2工程と、
を含む風力発電装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−217290(P2012−217290A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81775(P2011−81775)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】