説明

食品の保存方法及びこの目的のために有用な一種以上のフィトステロール及び/又はフィトスタノールを含む組成物

【課題】食品の保存方法及びこの目的のために有用な一種以上のフィトステロール及び/又はフィトスタノールを含む組成物を提供すること。
【解決手段】食品を、微生物の成長に起因する劣化、及び前記食品内に存在し得るいずれかの構成成分の脂肪又は油の酸化の両方から保存する方法であって、一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物を前記食品に添加することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、食物保存、及び製造又は加工後すぐに消費されない食物の性質強化の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
今日、ほとんどの食品が作られ、そして次に消費者による購入及び最終使用前に長い期間にわたって輸送及び貯蔵を要する。それらの食品は、製品の品質を保つための温度、湿度などに関して最も理想的な条件下で必ずしも貯蔵される訳ではなく、それ故に劣化及び腐敗を受ける。この劣化又は腐敗は、製品内の微生物汚染又は様々な化学反応の結果であり得る。
微生物汚染は、腐敗性及び/又は病原性細菌、ウィルス、酵母菌又はカビの結果であり得る。例えば、いくつかの大腸菌の菌株は、腹部の痙攣、微熱、吐き気及び倦怠感と関係がある幼児における下痢、及びヒトの胃−腸炎を引き起こすことが何年も知られている。大腸菌は、食物汚染を導く水において発見され得る。それはしばしば乳製品及び肉から単離される。
【0003】
サルモネラ菌は、家禽及び豚に広くまん延するグラム陰性菌であるが、しかしそれらの生物の環境要因は、水、土壌、昆虫、工場又は台所表面、生肉及び海産物などをまた含む。それらは、今日世界で最も重要で及び届出の義務のある食中毒であると考えられている腸内感染症であるサルモネラ症の原因である。
セレウス菌は、肉、牛乳、野菜、魚、及びでんぷん食物を含む多種多様な食物において問題となるグラム陽性菌である。それは、下痢、腹部の痙攣、痛み及び吐き気を引き起こす。
リステリア菌は、妊娠した女性及び高齢者に特に危険である。このグラム陽性菌の徴候は、敗血症、髄膜炎、脳炎、又は妊娠した女性の子宮内もしくは頸部感染症を含む。この精神作用生物(psychtroph)は、生乳、チーズ、アイスクリーム、生野菜、生肉、発酵させた生肉のソーセージなどのような食物において発見され得る。3℃程も低い温度で育つその能力は、冷蔵された食物における増殖を可能にする。
病原性及び腐敗性細菌の両方が生の食物材料において発生し得るが、しかし熱加工は、細菌の量を劇的に減少させる傾向がある。加工後、ほとんどの食物は、それらが食物取り扱い環境において病原菌に触れ得るとき、包装、流通、及び最終消費の前の再汚染に対し危険にさらされている。最も清潔な加工設備においてさえ、選ばれた病原菌は、たいてい非常に低い水準で、既に加工された食物を汚染し得る。耐冷性病原菌及び精神作用生物、主として多種のリステリア種の場合、それらはその後最終消費まで流通及び貯蔵の間の食物で無検査で育ち得る。食品中で育つそのような病原菌が多い程、その食品の消費者の間で感染の危険性がより高い。
これは、すぐに食べられる肉及び乳製品に関して、そのような食物が消費前に消費者によって再び加熱又は加工されないので特に心配である。そのような場合、最も起こり得る危険は、冷蔵下でよく育つリステリア種からのものである。どんな病原菌でも高い水準の消費は、特に幼児、高齢者、妊娠した女性、及びどんな免疫力が低下した人の間でも感染の危険を増加すると認められる。1998年、おそらく食物から感染したリステリア症に起因するおよそ500人の死者が米国でいたと推定される。
加えて、より短い調理時間、安全に対する消費者の需要、及び積極的な訴訟の利用に向かう傾向は、食物連鎖における危険を減らすための食物産業での圧力を増している。この
問題に対抗するために、食品製造業者は食物加工の間又は後に抗微生物剤を含めるための試みをした。
【0004】
ガス又はオイルから製造されるような商業用の酢酸、アセテート、及びより特に酢酸ナトリウムが、特に温度及び/又は高酸性度のような第一の障害との組み合わせにおいて使用されるとき、多くの食物経由の病原菌、特にサルモネラ菌及び大腸菌に対して抗菌性を有するとして知られる。しかし、それらの化合物は、それらがリステリア菌、乳酸菌、酵母菌及びカビのような微生物に対して第一の障害として使用される場合、効果が弱い。
食物中の酢酸及び酢酸塩の防腐性は、文献において開示される。特に、特許文献1は、食用酢、アルコール、及び発酵剤の発酵溶液中に溶解したカルシウム成分を含む食物及び飲料防腐剤に関する。特許文献2は、防腐剤(ソルビン酸、安息香酸、そのアルカリ金属塩及びその混合物から選ばれる)、フルーツジュース、ポリリン酸塩及び水を混合することからなる、改善した微生物安定性を有する非炭酸飲料製品の製造方法に関する。前記方法は、非炭酸の希釈されたジュース飲料中の微生物の成長を抑制することを目的とする。
【0005】
1992年及び1993年、特許文献3及び特許文献4は、処理された食品の保存期限を延ばすためにプロピオン酸細菌の代謝物質の使用を開示した。それらの代謝物質は、グラム陰性菌に対し優れた効果を明らかにするが、しかし残念なことにグラム陽性菌に対しては効果をもたらさない。特許文献5は、殺菌剤としてナイシン組成物の使用を提案した。特許文献6;特許文献7及び特許文献8は、キレート剤との組み合わせにおける連鎖球菌属又はぺジオコックス属由来のバクテリオシン又は合成の同等抗菌剤の組み合わせを含む抗菌性組成物を開示する。該組成物は、直接適用によるかそれとも食物表面と密接に接触するように置かれる軟質のフィルム包装上に組成物を導入することにより処理する食物の表面に適用される。特許文献9は、抗菌物として抗生物質(ナイシンのような)とリゾ
チームの組み合わせを提案する。この場合、抗菌剤が菌細胞を損傷すること及び殺すことをより効果的にするために、リゾチームは細胞壁を破壊し、そして標的細胞の構造的完全性を弱める。特許文献10は、ホップの脂溶性ベータ酸抽出物の食物の6ないし50質量ppmでの食物中のリステリア菌に対する静細菌性効果を理由に、それらの使用を開示する。加えて、特許文献11及び特許文献12は、化学的に水素化された特定のホップの酸誘導体がリステリア種に対し抗菌性を有し得ることを示唆する。
【0006】
微生物学的汚染の問題は、特に肉産業で顕著である。肉は、容易に微生物で汚染され、及び菌の成長に対し理想的環境である。サルモネラ属、カンピロバクター属、リステリア属、クロストリジウム属、大腸菌O157:H7等のような病原菌が存在し得る。サルモネラ属及びカンピロバクタージェジュニは、細菌性の下痢の主要な原因である。リステリア属の摂取は高い死亡率を招く。多くの人々に報道でおなじみの大腸菌O157:H7は、また特に重大であり、及び発生数が増加している。
細菌が肉製品と接触する最初の機会とそのような製品の消費者による最終的な消費の間の時間は、あるいは腐敗性、あるいは病原性のそれら様々な形態の細菌の増殖を可能にする。肉における望ましくない細菌の成長は、健康上の懸念だけでなく肉製品の市場性に影響を及ぼす感性的懸念が存在する。例えば、腐敗性細菌の成長は特定のエステル、硫化水素、窒素化合物、フチュリック酸(futuric acid)、プロピオン酸、ギ酸、並びに他の望まないガス及び酸の細菌生成が起因して望ましくない悪臭を生み出す。他のそのような細菌の成長もまた肉の表面を変色させる。さらに、透明のプラスチック包装において包装された肉が腐る場合、その包装はしばしば腐敗性細菌によって生成されたガスの発生が起因して膨張する。
【0007】
1992年の終り及び1993年の初めに、ワシントン及びいくつかの他の西部の州において大腸菌O157:H7感染症の非常に大きな発生は起こった。4つの州において確認された500以上の感染症が、溶血性尿毒症症候群(HUS)、及び4人の死亡を伴い
発生した。この発生は、同一ファーストフードチェーンの複数の小売店で出された過熱が不十分なハンバーガーが原因とされ(非特許文献1),食物安全性、及び特に大腸菌O157:H7を大衆に、産業に、及び規制的に有名なものにした。
その後、塩漬けサラミ及びレタスのような従来腸管感染症に関連しなかったいくつかの食物を含む大腸菌O157:H7に対する“新しい”媒体が認められ、この細菌の耐性を検証している(非特許文献2)。
さらに、大腸菌O157:H7の発生と関係のある食品分析は、感染量が低く、多分数百細胞未満であることを明らかにしている(非特許文献3)。低感染量に対する付加的な証拠は、大腸菌O157:H7のヒトからヒトへの感染性である。要因のこの組み合わせは、最も重大な既知の食物媒体病原体として大腸菌O157:H7をランク付けている。
O157:H7感染の主な発生源は、牛製品、最も一般的には加熱が不十分な牛のひき肉を介する(非特許文献4)。
【0008】
病原性細菌問題への取り組みにおける食肉産業のやり方は、多角的である。米国の食品安全性及びインスペクションサービス(FSIS)により認可された抗菌性処理は、湯、蒸気及び乳酸(2.5%まで)のような有機酸を含む。解体肉の汚染除去に対する乳酸のような有機酸又は塩素の使用は、それらが細菌の総数を減らし及び安全であるから広く研究されている。有機酸噴霧の主な欠点の一つは、酸の高濃縮が官能的品質の損失を導くことである。加えて、変色及び酸の味がする境界は、約2パーセントから開始する。
冷凍食品、及び特に肉は、食物の表面に存在し得るいくつかの細菌の成長を遅らせることにおいて効果的な方法であることが証明されている。しかしながら、肉の冷凍、特に長期間の冷凍は、多くの望ましくない影響を有する。肉製品を冷凍することによって、肉内部の水は結晶化し、タンパク質の変性及び細胞段階で肉への他の損傷を引き起こす。さらに、解凍肉の風合い、堅さ及び味は、新鮮な肉のそれより望ましくない。
付加的な技術は、肉の表面細菌叢を破壊する目的で発達している。例えば、クレイトンの特許文献13は、細菌レベルを減らし、そしてそれにより肉製品の保存期限を延ばすために酢酸噴霧を使用する殺菌システムを開示している。ブッシュの特許文献14は、向精神性の腐敗性細菌を破壊するため肉表面に熱く、希釈された酸溶液を適用するための方法を開示する。
特許文献15は、肉表面での嫌気性細菌の成長を遅らせるためにアルギン酸材料のフィルムにおける肉製品のカプセル化を教示する。
【特許文献1】米国特許第5,811,147号明細書
【特許文献2】米国特許第5,431,940号明細書
【特許文献3】米国特許第5,096,718号明細書
【特許文献4】米国特許第5,260,061号明細書
【特許文献5】米国特許第5,217,950号明細書
【特許文献6】米国特許第5,573,797号明細書
【特許文献7】米国特許第5,593,800号明細書
【特許文献8】米国特許第5,573,801号明細書
【特許文献9】米国特許第5,458,876号明細書
【特許文献10】米国特許第5,286,506号明細書
【特許文献11】米国特許第5,370,863号明細書
【特許文献12】米国特許第5,455,038号明細書
【特許文献13】米国特許第4,852,216号明細書
【特許文献14】米国特許第3,924,044号明細書
【特許文献15】米国特許第3,991,218号明細書
【非特許文献1】Center for Disease Control and Prevension[1993]Update:Multistate Outbreak of Escherichia coli O157:H7 Infection from Hamburgers−Western United State、1992−1993、Morbidity Mortality Weekly Report、42:258−263
【非特許文献2】Tarr,P.I.その他[1997]“Verotoxigenic Escherichia coli infection:U.S.overview”J.Food Protection60:1466−1471
【非特許文献3】Center for Disease Control and Prevension[1995]、“Surveillance for outbreaks of Escherichia coli O157:H7 infections preliminary summary’94,Surveillance Summery No.SS−5”
【非特許文献4】Boyce,T.G.その他[1995]“Current Concepts:Escherichia coli O157:H7 and the hemolytic uremic syndrome”The New Eng.J.Med.333:364−368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
長い保存期限を有する食品は、扱う人、荷送人、及び卸売業者が、そのような食物が腐敗する前に輸送し、及び売ることの出来る時間的余裕がある。肉のような食品の保存期限を延ばすための努力は、伝統的に、上記で議論されたように食物の表面に存在する細菌の数を減らすことに集中している。
食品の微生物腐敗は、決定的に重要ではあるものの、食品製造、輸送及び消費の分野において取り組まれる必要がある唯一の問題ではない。油及び脂肪を含有する食品は、空気の存在下で(及び特に上昇した温度で)貯蔵中及び調理中にかなりの酸化をする傾向がある。
上記問題の点から見ると、一般の食物用途において適当な使用レベルで活性であり、及び高レベルでさえ人に無毒である抗微生物性の組成物で食物を処理するための方法に対する技術的な必要性が存在する。より特に、それらの製品のために存在する加工手順に都合よく組み込まれ得る効果的な処理に対する必要性が存在する。さらに、食品、特に新鮮な肉及び肉副産物を、選択的にそのような食品中及び上に存在する腐敗性及び病原性細菌の数を減らすことにより保存するための方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、食品を、微生物の成長に起因する劣化、及び前記食品内に存在し得るいずれかの構成成分の脂肪又は油の酸化の両方から保存する方法であって、一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物を前記食品に添加することを含む方法を提供する。
本発明は、さらに抗微生物有効量の一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物を含む食品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
もう一つの側面において、本発明は、有効量の一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物とともに前記食物材料を混合又は形成することを含む粒状食物材料の微生物汚染を低減する方法を提供する。
さらにもう一つの側面において、本発明は一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又は両方の混合物を含む調製した食品を提供し、ここで前記食品は、該食品を調製するための加工段階後及び消費前の貯蔵の間に、フィトステロール及び/又はフィトスタノールを含まない同一の食品と比較して減少した数の病原性及び/又は腐敗性微生物を含有する。
驚いたことには、フィトステロール及びフィトスタノールは、食品の品質を保つことに関して複合的な利益を示すことが発見されている。各々の利益が個々に重要と考えられる一方、それらの効果の組み合わせが最も著しく食物産業に影響を与えるだろう。本発明を通して、無毒であり、天然由来であり、及び食品のいかなる官能特性にも悪影響を及ぼさない薬剤により食品中の微生物成長を減少するための手段が提供される。これまで、フィトステロール及びフィトスタノールは、この作用において十分に理解されていない。それらの抗微生物の作用を示すことと同時に、ここで述べられるような薬剤は、前記食品内に存在し得るいかなる脂肪及び油成分の酸化をも防ぎ又は減少させる。さらに、食品がエマルジョンを含む場合、そこに存在するフィトステロール及び/又はフィトスタノールは、製造後相分離からエマルジョンを安定化させることが発見されている。
加えて、いくつかのフィトステロールは、ヒトを含む多くの哺乳類種に与えた場合に、血しょうコレステロールレベルを減少するそれらの能力故にかなりの注目を受けている。心臓血管の病気の治療及び高コレステロール血症、高脂質血症、アテロスクレローゼ、高血圧、血栓症のようなその基礎症状に関してだけでなく、II型糖尿病、痴呆症(アルツハイマー病を含む)、及び癌(結腸及び前立腺)のような他の病気の治療及び防止において今記録されるフィトステロールのさらに広範囲な治療上の有利性がある。従って、食品中の薬剤の抗微生物作用と同時に生じるかなりの副次的利益がある。
それらの効果及び他の大きな有利性は、以下で明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、本発明実施において当業者を助けるために提供される。しかしながら、この詳細な説明は、本発明の範囲を必要以上に制限するために解釈されるべきではない。ここで議論される態様への改良及び変化は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなしに当業者によりなされ得る。別途に定義されない限り、ここで使用される全ての技術及び科学用語は、本発明に付随する当業者により一般に理解されるものと同様な意味を有する。
【0013】
ここで使用される、“動物”は、動物界の任意の構成員、好ましくはヒトを意味する。
ここで使用される、“食物”又は“食品”又は“食物材料”は、ヒトの使用を含む動物の使用のための任意の安全な摂取可能な製品を意味し、“機能性食品”、健康補助食品、栄養補助食品、自然健康食品及び“デザイナー食品”を含む。
ここで使用する、“機能性食品”は、証明された生理学的な利益を有し及び/又は病気の危険を減らす以外は通常の食餌療法の一部として消費される従来の食物と外見が似ている製品を意味する。
ここで使用される、“デザイナー食品”は、機能性食品と同様の意味を有する。
ここで使用される、“栄養補助食品”は、丸剤、粉末、頓服水剤の形態及び一般的に食品とは関係ない他の医療用形態で調製されるが、生物学的な利益を有し又は病気に対する予防を提供する非医薬品製品を意味する。
世界中のどこでも、栄養補助食品、機能性食品、自然健康食品、及びデザイナー食品は、病気の予防及び治療を含む医療又は健康の利益を提供すると考えられる食物又は食品成分であり得る。
ここで使用される、用語“微生物”は、当業者が食品及び/又は栄養補助食品中で減らすことを選ぶ任意の単細胞生物又は多細胞寄生生物を指す。他に示されない限り微生物は、腐敗性及び病原性微生物の両方を指す。
ここで使用される、用語“抗微生物”は、殺生性(例えば、微生物細胞又は微生物細胞の構成要素を殺す)、バイオスタティックな(例えば、微生物細胞の更なる成長を防ぐ)、又はその組み合わせである化合物、薬剤、治療、方法又は効果を指す。そのようなものとして、“抗微生物有効量”は、一つ以上の次の効果:静細菌性、殺細菌性、静真菌性、殺真菌性、抗寄生生物性及び抗ウィルス性を有するとここで記載される化合物、または薬剤の量を指す。
ここで使用される、用語“フィトステロール”は、制限無しで全てのステロール、例えば:シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール(ジヒドロブラシカステロールを含む)、デスモステロール、カリノステロール(chalinosterol)、ポリフェラステロール(poriferasterol)、クリオナステロール(clionasterol)、エルゴステロール、コプロステロール、コジステロール(codisterol)、イソフコステロール(isofucosterol)、フコステロール(fucosterol)、クレロステロール(clerosterol)、ネルビステロール(nervisterol)、ラトステロール(lathosterol)、ステラステロール(stellasterol)、スピナステロール(spinasterol)、コンドリラステロール(chondrillasterol)、ペポステロール(peposterol)、アベンナステロール(avenasterol)、イソアベンナステロール(isoavenasterol)、フェコステロール(fecosterol)、ポリナスタステロール(pollinastasterol)、及び異性体を含むその全ての天然又は合成形態及び誘導体を含む。用語“フィトスタノール”は、全ての天然又は合成形態及び誘導体、並びに異性体を含む飽和又は水素化ステロールを指す。フィトステロール及びフィトスタノールへの改良、すなわち、側鎖を含むことも本発明の範囲内に収まると理解される。例えば、本発明の範囲は、明らかに24ベータ−エチルシトスタノール、24−アルファ−エチル−22−デヒドロシトスタノールを含む。明細書を通して判別がつかない場合、及び他に指定がない限り、用語“フィトステロール” は、ステロール及びスタノールの両方を包含するとまた理解される。
最も好ましい形態において、ステロールは、その飽和した形態であり及びシトスタノール、好ましくはベータ−シトスタノールである。
【0014】
本発明に従って使用するためのそれらのステロール及びスタノールは、様々な自然源からもたらされ得る。例えば、それらはコーン油及び他の植物性油のような植物油(水性植物を含む)、小麦の胚種油、大豆抽出物、米抽出物、米ぬか、菜種油、ヒマワリ油、ゴマ油及び魚(及び他の海産源)油の加工から得られ得る。それらはまた菌類、例えばエルゴステロールに由来され得る。従って、本発明はステロールのどの一種の源にも限定されるものではない。米国特許第4,420,427号明細書は、メタノールのような溶媒を使用する植物性油スラッジからのステロール調製を教える。もう一つの方法として、フィトステロール及びフィトスタノールは、例えば、参照によりここで盛り込まれる米国特許第5,770,749号明細書に記載されるように林業の副産物であるトール油ピッチ又は石けんから得られ得る。
ここで使用されるようなフィトステロール及びフィトスタノールは、遊離形態又は一つ以上のそれらのエステル化形態であり得、すなわち所望により、フィトステロール及びフィトスタノールは食品の形成に先立ってエステル化され得る。このエステル化段階は、ある場合において、フィトステロール及び/又はフィトスタノールを、様々な食品へのフィトステロールの組み込みを容易にし得る脂肪及び油により溶けやすくする。
【0015】
フィトステロール及び/又はフィトスタノールエステルを形成するために、多くの方法が技術的に知られている。例えば、一つ以上の適する脂肪酸又はそれらの低沸点アルコールとのエステルは、選ばれたフィトステロール及び/又はフィトスタノールと共に凝縮され得る。多種多様な脂肪酸又はそれらのエステルは、うまく使用され及び一つ以上のカルボキシル末端基を有する一つ以上のアルキル鎖から成る全ての脂肪酸を含み得る。それらの脂肪酸は、天然あるいは合成のものであり及び次の化学式により表される:
a)R1−COOH(モノカルボン酸)、式中:
R1は、CH3−、CH3CH2−又はCH3(CH2)nCH2−(式中、n=3ないし25)により表される枝分かれしてない飽和アルキル基を表し;もしくは
R1は、CnH2n+1(式中、n=1ないし25は、基R1において含有する炭素原子の数を表す。)により表される枝分かれした飽和アルキル基を表し;枝分かれは典型的に
は限定はされないが一つ以上のメチル基側鎖を指し;もしくは
R1は、式CnH2n−2m+1(式中、n=1ないし25はR1における炭素原子の数を表し、及びm=不飽和度である。)により表される枝分かれしてない又は枝分かれした不飽和アルキル基を表し、;又は
b)HOOC−R2−COOHは、ジカルボン酸を表わし、式中:
R2は、CH2−、又は−CH2CH2−、又は−CH2(CH2)nCH2(式中、n=3ないし25)により表される枝分かれしてない飽和アルキル基を表し、;もしくは
R2は、−CnH2n−(式中、n=1ないし25は基R2において含有する炭素原子の数を表す。)により表される枝分かれした飽和アルキル基を表し;枝分かれは典型的には限定はされないが一つ以上のメチル基側鎖(枝分かれ)を指し;もしくは
R2は、式CnH2n−2m(式中、n=1ないし25はR2における炭素原子の数を表し、及びm=不飽和度である。)枝分かれしてない又は枝分かれした不飽和アルキル基を表し;又は
c)式
【化1】

[この式において:
R3は、−CnH2n−1−(式中、n=1ないし25は基R3において含有する炭素原子の数を表す。)により表される枝分かれした飽和アルキル基を表し;枝分かれは典型的に限定はされないが一つ以上のメチル基側鎖を指し;もしくは
R3は、CnH2n−2m−1−(式中、n=1ないし25はR3における炭素原子の数を表し、及びm=不飽和度である。)により表される枝分かれした不飽和アルキル基を表す。
]により表されるトリカルボン酸;又は
d)上記で定義されるような、分子において1、2又は3個のヒドロキシル基を含有し得るモノ−、ジ−、又はトリカルボン酸。
【0016】
好ましい形態において、酸は直鎖の又は枝分かれした不飽和の又は飽和の、脂肪族又は芳香族酸である。より好ましくは酸は、とりわけ、次のリストから選ばれる:
バレリアン酸、イソバレリアン酸、ソルビン酸、イソカプロン酸、ラウリン酸、ミレスチン酸(myrestic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、アスコルビン酸、アラキン酸、ベヘン酸、セロチン酸、オクタコサン酸、ペンタデカン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸。本発明の範囲内で最も好ましい脂肪酸は、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油及びコーン油(リノール酸)、紅花油、ヒマワリ油、オリーブ油及びホホバ油(リノレン酸及びアラキドン酸)及び菜種油(エルカ酸)のような自然源から得られ得るリノール酸、リノレン酸及びアラキドン酸である。
他の芳香族酸は、明らかに本発明の範囲内と考えられる。
フィトステロールをエステル化することを望むのであれば、本発明に従いエステル化フィトステロール又はフィトスタノール、すなわち飽和脂肪を形成するために脂肪酸を使用することにおいて特に有利な点は、飽和脂肪がリポタンパク質リパーゼ活性を強めるという事実にある。後者酵素の活性は、内臓の脂肪形成を減らす。
フィトステロールエステルを形成するための一例として、選ばれたフィトステロール及び酸又はその揮発性アルコールとのエステルは、フィトステロールの凝縮を可能にする反応条件下で酸と一緒に混合され得る。食用油脂産業において幅広く使用されるそれらのエステルを調製する最も好ましい方法は、米国特許第5,502,045号明細書(参照することにより本明細書に含まれる)に記載される。遊離フィトステロール、脂肪酸エステル又はその混合物及びナトリウムエチラートのようなエステル交換触媒以外の物質が使用されないので、その技術は最終的にヒトによる消費のための製品を調製するために極めて適する。要するに、本発明の範囲内での使用に適応されたこの好ましい方法は、温度90ないし120℃で植物性油脂肪酸エステル(好ましくはメチルエステル)とともにフィトステロールを加熱すること、そして次にナトリウムエチラートのような適する触媒を添加することを含む。前記触媒は、次に技術的に知られている技術の一つ、例えば水を加えること及び/又はろ過/遠心分離によって除去/破壊される。
本発明に従い使用され得る別の方法は、参照することにより本書にまた含まれる米国特許第4,588,717号明細書に記載される。好ましい方法は、フィトステロールを脂肪酸と混合し、混合物をおよそ1ないし3時間、約大気圧で約15℃ないし約45℃の温度に至らせることである。
従って、当然のことながら、可能な最も広範な定義は、遊離フィトステロール及びフィトスタノール、脂肪族又は芳香族酸とのエステル化フィトステロール及びフィトスタノール(それによってそれぞれ脂肪族又は芳香族エステルを形成する)、フェノール酸エステル、桂皮酸エステル、フェルラ酸エステル、フィトステロール及びフィトスタノールグリコシド並びにアシル化グリコシド又はアシルグリコシドを含むが但しこれに限定されない、ここで使用されるような用語“フィトステロール”及び“フィトスタノール”に一致する。また、当然のことながら、ここで使用されるような用語“フィトステロール”は、単数であろうと複数であろうと、指示されない限り、フィトステロール及びフィトスタノールを含む。
【0017】
本発明の好ましい形態において、抗微生物及び抗酸化効果の両方を最大にするためは、商品に添加されるフィトステロール成分は、遊離ステロール(及び/又は遊離スタノール)とステロールエステル(及び/又はスタノールエステル)の組み合わせである。好ましくは、その組み合わせが、遊離ステロールを少なくとも50質量%含む。より好ましくは、ステロール成分が、遊離ステロールを50ないし95質量%含む。遊離ステロール対ステロールエステル部分の平衡は、また所望により1:1で成し遂げられ得る。脂肪ベースの食品及び油においてここで記載されるような遊離ステロール及びステロールエステルを平衡に保つことに考慮がなされることが最も重要である。そのような用途において、100%ステロールエステルの使用は、間違いなく好ましくない。そういった場合には、50質量%以上の遊離ステロールが好ましい。
最も好ましい形態において、脂肪をベースとした食物、油及びスプレッドにおける使用のためには、組成物は2つの部分を含むブレンドである:
1)“遊離”ステロール及び/又はスタノール部分 − ブレンドの50質量%以上である;
2)ステロール及び/又はスタノールエステル部分 − ブレンドの50%未満である;好ましくは45%未満。
好ましい態様において、“遊離”部分が、好ましくは平均しておよそ60ないし90%の遊離ステロール及びおよそ15ないし25%の遊離スタロール(シトスタノール及びカンペスタノール(campestanol))を含む。より好ましい態様において、“遊離”部分が、好ましくは平均しておよそ80%の遊離ステロール及びおよそ20%遊離スタノール(シトスタノール及びカンペスタノール)を含む。
好ましい態様において、 “エステル”部分が、好ましくは平均してエステル形態にお
いておよそ60ないし90%のステロール及びエステル形態においておよそ5ないし15%のスタノール(シトスタノール及びカンペスタノール)を含む。より好ましい態様にお
いて、エステル部分が、好ましくは平均してエステル形態においておよそ90%以上のステノール及びエステル形態においておよそ10%以下のスタノール(シトスタノール及びカンペスタノール)を含む。
好ましい態様において、遊離ステロール/スタノール及びステロール/スタノールエステルがともにブレンドされる場合、組成物がおよそ10ないし25%のスタノール(集合的にエステル及び遊離形態で)、より好ましくは12ないし18%、及び最も好ましくはおよそ16%含む。
【0018】
使用の方法
フィトスタノールが、食品に加えられ、又は食品中又は上に組み込まれる手段は、主に食品の特定の種類によるだろう。そのような組み込みは、多くの場合、その後の添加もまた可能であり得るけれども、食品の製造時に起こるだろう。新鮮な肉、魚及び家禽用途に関する製造は、動物が食料品店及びレストランの取り引きに使用するための部分に加工される食肉解体後の全ての段階であることを意味すると理解される。
フィトステロールは、噴霧、注入、浸漬、塗布、コート、混転、油漬け、混合、ポンピングにより、キャリア又は分散媒を用いての分散により様々な食品に適用され又は組み込まれ得る。それらの方法の種類は、特に、しかし排他的にではないが、肉、魚及び家禽用途に対し充てる。
いくつかの食品へのフィトステロールの組み込みは、それらが高疎水性であり、及び限られた範囲内で油及び脂肪中においてだけ溶けるという事実により複雑にされ得る。これは、技術的に詳細に概説されるように、及びフィトステロールの細砕、フィトステロールの湿式又は乾式磨砕、フィトステロールの粒径減少(例えば、マイクロ流動化又はマイクロ化)、噴霧乾燥、凍結乾燥、及びフィトステロールのエステル化によるものを含む多くの異なる方法において問題を解決するために努力され得る。
それらの溶解性を高めるためのフィトステロールの細砕又は磨砕は、イーライリリーの米国特許第3,881,005号明細書及び米国特許4,195,084の両方において記載される。それらの溶解性を高めるためのフィトステロールのエステル化は独国特許第2035069号明細書/1971年1月28日(米国特許3,751,569号明細書に類似している)に記載される。ありとあらゆる可能なエステル化プロセスを概説する多数の他の特許及び学術誌がある。
【0019】
参照により内容全体がここに組み込まれる、フォーブス メディ−テック インコーポレーテッドが2000年2月3日に出願したPCT/CA00/00096は、衝撃力を使用することによって食品への組み込みに対し極めて適する極微粒子を均一に与えるフィトステロール及び/又はフィトスタノールの微小粒子の調製方法を教示する。そのように調製されたフィトステロール/スタノールは、油ベースの配送システムだけでなく他の媒体及びフィトステロールが混合され得る食品の種類に対しありとあらゆる選択肢のチャンスを与える水溶液系においてより優れた溶解性を有することが発見された。フィトステロールの粒径は、分散した又は懸濁したフィトステロールを含む半流動性、流動性又は粘性の分散媒が、空気噴霧又は空気式(pneumatic)ノズル又はマイクロフルイダイザー(microfluidzer)を通して押出されて、せん断力によって減少され得る。粒径の減少は、高速攪拌機又はコロイドミルにおける急降せん断勾配(steep shearing gradient)によってもまた達成され得る。
さらに、フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、マイクロ流動化技術を使用して配送分散媒体又は “基礎材料の基材”へ組み込まれる場合、この基礎材料の基材は
、さらにありとあらゆる食物及び飲料品を調製するために容易に及び効果的に使用され得る。例えば、フィトステロール及び/又はスタノールは、さまざまな濃度、しかし最も好ましくは12%までの濃度で、マイクロ流体技術を使用して牛乳に組み込まれ、それにより安定した分散液を与える。そのように調製された牛乳は、次にアイスクリーム、バター及びチーズ用クリーム及びヨーグルト及び他の乳製品のような他の製品を作るために適し
た基礎材料である。基礎材料の基材がカカオバターのような脂肪であるとき、フィトステロール及び/又はフィトスタノールは、マイクロ流動技術を使用しその中に組み込まれ、及び続いてチョコレート及び他の砂糖菓子を作るために使用され得る。基礎材料の基材が脂肪又は脂肪ブレンド、例えばラード、ラードのフレーク、パーム油、パーム核油、綿実油、ココナッツ油、大豆油、コーン油、菜種油等である場合、本発明の方法を使用してエマルジョンが形成され、該エマルジョンは続いてシリアルバーを調製するために使用され得る。微小粒子フィトステロール/スタノールの使用は、食品技術においてほぼ際限がない。
加えて、フィトステロール及び/又はフィトスタノールを含む食用エマルジョンは、マイクロ流体技術を使用し形成され得る。例えば、及びさらに以下に記載されるように、フィトステロール及び/又はフィトスタノールは、油及び脂肪に乳化され、及び続いてサラダ及び野菜ドレッシングのようなドレッシング、マヨネーズ、乳性及び非乳性スプレッド、チョコレート及び他の砂糖菓子並びに飲料品を製造するために使用され得る。
好ましい形態において、基礎材料の基材又は配送分散媒へのフィトステロール及び/又はフィトスタノールの組み込みは下記の通りである:粉末形態、好ましくは100μm前後の粒径のフィトステロール及び/又はフィトスタノールは、バッチミキサー、好ましくはT50 Ultra Turrexのような高速シアーミキサー(high shear mixer)を使用して配送分散媒(例えば、上記に記載されるような脂肪、油又は水溶液)に配合され又は懸濁される。その次に、ブレンドはポンプ又は圧縮空気を使用してマイクロフルイダイザーインターアクションチャンバー(microfluidizer interaction chamber)に押出される。マイクロ流動化は、15,000ないし23,000PSI、最も好ましくは20,000PSI前後の圧力下で行われる。チャンバーを通るいくつかの通路が、好ましいフィトステロール/スタノール粒径、すなわち20マイクロ以下、最も好ましくは10ないし20マイクロの範囲内を達成するために要求され得る。
【0020】
参照により内容が全てここに組み込まれるフォーブス メディ−テック インコーポレーテッドが2000年11月3日に出願したPCT/CA00/01298は、食用油及び脂肪組成物にフィトステロール及び/又はフィトスタノールを組み込む方法を記載し、該組成物中にそれらのフィトステロール又はフィトスタノールは、十分に完全に溶解されるが、該方法は、
a)溶融材料を形成するためにフィトステロール及び/又はフィトスタノールを加熱すること;
b)食用油又は脂肪を加熱すること;
c)加熱した食用油又は脂肪と溶融材料を混合すること;及び
d)そのように形成された組成物を冷却すること
を含む。
この方法は、脂肪ベース又は油ベースの食品基材にフィトステロールを溶解するために本発明に関して非常に有用である。多種多様な食用油及び脂肪が、フィトステロールを溶解することに使用され得る。これは、植物もしくは動物もしくは海産由来のあらゆる食品用油又は脂肪、又はその混合物を含む。前述の一般的な考えを制限することなく、ひまわり油、菜種油、大豆油、オリーブ油、コーン油、紅花油、ゴマ油を含む全てのサラダ及び料理用の油は、この方法によりそこに組み込まれたフィトステロールを有し得る。動物又は植物性脂肪材料の有向低温エステル化又は転位、続く高融解固体の除去により得られる油も、また使用し得る。
この融解組み込み方法の重要な特徴は、加熱油又は脂肪との混合に先立って溶融材料を形成するためフィトステロールの実際の加熱である。一般に、フィトステロール/スタノールは、約120℃ないし160℃、最も好ましくは135ないし140℃の温度でこの溶融状態に加熱され得る。ほとんどのフィトステロールの融点は、約138℃である。そのように形成されたこの溶融材料は、次にあらかじめ90℃ないし190℃、より好まし
くは100℃ないし120℃の温度に加熱された油に加えられる。溶融フィトステロールを含む油“組成物”は、次に室温まで冷却される。結果として生じる製品は、フィトステロールが実質的に完全に室温で溶け、溶けたままにある油である。
【0021】
様々な食品への組み込みを助けるために、フィトステロールは、エマルジョン、懸濁液、溶液、固体分散液、マクロエマルジョン、マイクロエマルジョン、自己乳化系、水素化脂質系に溶解され又は分散され、シクロデキストリンもしくは胆汁酸塩と包接複合体を形成させる又はヒドロトロープを形成させ得る。
それらの溶解性/分散性を高める技術に先立って、フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、供給源から分離され、及び沈殿、ろ過及び乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥又は他の従来の加工技術を通して固体粉末に形成されることが好ましい。この粉末形成は、次に選ばれた配送媒体におけるフィトステロール及び/又はフィトスタノールの溶解性及び分散性を高めるために物理的に改良され得る。
多くの食品へのフィトステロールの組み込みは、エマルジョンの形成により最も良く達成される。フィトステロールベースのエマルジョンは、以下のようなマイクロ流体技術を使用し調製され得る:フィトステロール及び/又はスタノールは、油(又は流体)相に分散又は懸濁される;油(又は流体)相は、次に“ブレンド”を形成するために乳化剤及び増粘剤などのような所望による原料と共に流体又は半流体(又は油)相とが混ぜ合わされる;ブレンドは、次にエマルジョンを形成及び安定させるために適した圧力でマイクロフルイダイザーに取り込まれる。油相が食用油及び脂肪、最も好ましくは植物性油を含むことが好ましい。フィトステロールベースのエマルジョンの多くの種類は、一種以上のフィトステロール及び/又はスタノールを含む乳性及び非乳性スプレッドの形成を含むこのプロセスを使用して調製され得ることが考えられる。
一旦そのようなエマルジョンが形成されると、以下のように更にマイクロフルイダイザーを通ることにより炭水化物殻中にカプセル化され得る:上記で記載されたエマルジョンを一種以上の炭水化物、好ましくはポリサッカリド(例えば:でんぷん、イヌリン、グリコーゲン)及び/又はグルコース、フルクトース等のような一種以上の単一砂糖を含む溶液又は懸濁液(適当な懸濁液はコーンシロップである。)とブレンドすること、及びそのように形成されたブレンドを適当な圧力でマイクロフルイダイザーに取り込むことである。それに続く噴霧乾燥後、結果として生じる製品は、外側の炭水化物の殻にカプセル化されたフィトステロール及び脂肪又は油の核である。このカプセル化製品は、次に食品において使用され得る。
【0022】
本発明は、一つの局面において、食品を、微生物の成長に起因する劣化、及び前記食品内に存在し得るいずれかの構成成分の脂肪又は油の酸化の両方から保存する方法であって、一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物を前記食品に添加することを含む。
別の局面において、本発明は、有効量の一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物とともに前記食物材料を混合又は形成することを含む、粒状食物材料の微生物汚染を低減する方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、一種以上のフィトステロール、フィトスタノール又は両方の混合物を含む調製された食品であって、ここで前記食品は、該食品を調製するための加工段階後及び消費前の貯蔵の間に、フィトステロール及び/又はフィトスタノールを含まない同一の食品と比較して減少した数の病原性及び/又は腐敗性微生物を含有するところの食品を提供する。
本発明の方法に影響を受け易い微生物は、原核生物、菌類及びカビ、及び酵母菌を含む。しかしながら、本発明の焦点は、明らかに食品媒介微生物にあると理解される。典型的な原核生物の例としてはこれらに限定されないが、桿菌属、カンピロバクター属、コリネバクテリウム属、エシェリキア属、ヘモフィルス属(ハエモフィラス属(Haemophillus))、ヘリコバクター属、レジオネラ菌、リステリア属、マイコバクテリア属
、マイコプラズマ属、シュードモナス属、サルモネラ属、志賀菌属、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、トリパノプラズマ属、ビブリオ属、及びイェルシニア属(例えば、疾病対策センターウェブサイト:http://www.cdc.govで提供する微生物属の一覧表参照。)を含む。本発明の方法を使用し処理され得る典型的な菌類は、これらに限定されないが、放線菌類、アスペルギルス属、ボトリチス属、カンジダクラドスポリウム属、クリプトコックス属、フザリウム属、ケカビ属、アカパンカビ属、ペニシリウム属、リゾビウム属、リゾクトニア属(Rhyzoctonia)、クモノスカビ属、白癬菌類(例えば、小胞子金属、表皮糸状菌属及び白癬菌属)、酵母菌属、及びストレプトミセス属を含む。本発明の方法を使用し個体数において減少し得るさらなる単細胞及び/又は寄生生物は、これらに限定されないが、多種の藻類、変形菌類、及び水生菌類、並びにクリプトスポリダ属(Cryptosporidia)、ジアリダ属、プラスモディウム属、トキソプラズマ属(Toxoplamsa)のような寄生生物を含む。
本発明の方法は、食品中の一種以上のウィルス個体数を減少するためにも用いられ得る。本発明の方法及び組成物に影響を受けやすいウィルスは、これらに制限はされないが、A型肝炎及びノルウォークウィルス(カリチウィルス属類が一番あり得るが)等を含む。一般論については、ドルベッコ アンド ギンズバーグ バイオロジー(Dulbecco and Ginsberg Virology(デイビス、ドルベッコ、エイゼン及びギンズバーグのウィルス学からの再版、第三版(1980)Harper and Row,Philadelphia,Pa.))参照。
【0023】
ここで使用される用語“保存期限”は、食品が小売消費者に売れ得る状態にとどまる期間を意味する。伝統的な食肉加工において、新鮮な肉及び肉の副製品の保存期限は、動物が食肉処理された後、約30ないし40日間であるこの期間の間、肉を冷凍することは、主として病原性細菌及びそれほどではないにせよ腐敗性細菌の成長を止める及び/又は遅らせる。しかしながら、約30ないし40日間の後、冷凍はもはや効果的に許容水準以下に腐敗性細菌の増殖を抑制できない。この期間後肉の表面に存在する腐敗性微生物は、肉表面でタンパク質及び糖類を同化し、望ましくない副生成物を生み出し始め得る。腐敗性微生物は、肉を変色させ得、そのような肉をヒトが消費する魅力を失せ及び消費に望ましくなくする。
ここで使用される用語“腐敗性微生物”は、食品を腐らせる微生物のどの種類をも指す。腐敗性微生物は、食品をヒト又は動物が消費するのに適さなくする及び望ましくなくするような程度に成長及び増殖し得る。微生物は、食品表面上で砂糖及びタンパク質を同化することにより、そのような表面上で増殖し得る。それらの成分を代謝させることによって、腐敗性微生物、特に細菌は、二酸化炭素、メタン、窒素化合物、酪酸、プロピオン酸、乳酸、ギ酸、硫黄化合物、及び他の望ましくないガス及び酸を含む副生成物を作り出す。そのような副生成物の生成は、肉表面の色を変え、しばしば肉を赤色から茶、灰又は緑色に変化させる。腐敗性細菌によって発生するガス状の副生成物は、腐敗した肉に望ましくないにおいを与える。肉製品の表面上の腐敗性細菌の成長に起因する肉の色及びにおいの変化が、しばしばそのような肉を消費者に売るのに満足できないものにする。
腐敗性微生物の抑制に加えて、食品加工産業における別の重要な関心事は、病原性細菌を含む病原性微生物の成長を抑制することである。ここで使用される、用語“病原性微生物”は、動物又はヒトにおいて病気又は疾病を引き起こす能力のある食品毒作用生物を示す。用語病原性微生物は、食物に感染し及びそれによって病気又は疾病を引き起こす細菌、並びに病気又は疾病を引き起こす毒を生成する細菌を含むと理解されるだろう。食品上の病原性細菌の増殖は、ボツリヌス中毒症により引き起こされるヒトの死亡者数によって明らかにされるように重度の疾病を引き起こし得、及び致命的になり得る。腐敗性及び病原性微生物は、本発明の方法の標的とされる。
病原性及び腐敗性細菌は、好気性、嫌気性又は条件的であり得、そして従って、食物包装から又は食物貯蔵環境から酸素の除去のみでは、全ての種類の望ましくない細菌を効果的に除去しないだろう。さらに食品貯蔵における温度の調節は、数種類の病原性及び腐敗
性細菌が多様な温度で成長できるのでそのような細菌の成長を妨げるために完全に効果的である訳ではない。非常な高温への暴露は、ほとんどの細菌を殺すことにおいて効果的であると知られる一方、そのような暴露は、必然的に食品を調理することによって食品の少なくとも一部に損害を与え得る。高い温度は、いくつかの肉製品の望ましい熟成に必要とされる変性酵素に作用し得る。さらに、特定の病原性細菌は、高い温度への暴露によって死滅されない毒を生成する。このように、食品の温度を上げることは、食品の病原菌汚染の悪影響を排除することにおいて実用的な方法ではない。
【0024】
食品
食品は、食品中又は上で病原性微生物及び/又は腐敗性微生物の増殖の影響を受け易い食品及び/又は酸化劣化する傾向がある又は劣化し易い食品を含む。そのような食品は、これらには制限されないが:肉、野菜、果物、穀物及び穀物由来の製品、牛乳製品、ビール、フルーツジュース、乳製品、マーガリン及びスプレッド(乳性及び非乳性)、ピーナッツ及び他のバター、ショートニング、ソース、焼いた食品、油で揚げた製品、砂糖菓子及びチョコレートを含む。
従って、本発明の方法に従い処理され得る食品の例は以下のものを含む:
1)乳製品−チーズ、バター、牛乳及び他の乳製品飲料、スプレッド及び乳製品混合物、
アイスクリーム及びヨーグルトのような;
2)脂肪ベースの製品−マーガリン、黄色のスプレッド(yellow spread)
、マヨネーズ、ショートニング、調理用及び揚物用油及びドレッシングのような;
3)肉−ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽、魚及び甲殻海産物を含む;
4)穀類ベース製品−それらの物品が調理され、焼かれ又は別な方法で加工されていよう
となかろうと穀物(例えば、パン及びパスタ)を含む;
8)菓子類−チョコレート、キャンデー、チューインガム、デサート、非乳製品トッピング(例えばCool Whip(登録商標))、シャーベット、砂糖ごろも及び他の充てん材のような;
9)飲料−登録商標Boost(登録商標)及びEnsure(登録商標)の下で売られているような健康補助食品及びミール・リプレイスメント(meal replacement)飲料;及び
10)その他の製品−卵及び卵製品、スープ、前もって下ごしらえされたパスタソース、前もって作られた食事、ポテトチップス、クラッカー及びスナック食品等のような加工された食品。
【0025】

本発明の方法は、特に肉の処理において有用である。動物又はヒトの消費のための肉製品の調製において、一番の関心事は、表面上に存在する微生物、特に細菌の数を減少することである。食品上の細菌の抑制がとても重要な理由は、細菌の特定の種類、すなわち病原性及び腐敗性細菌は、そこで増殖することによって肉の保存期限を縮め、それによって悪臭、変色又は毒性を引き起こす望まれていない副生成物を生成することである。
ここで使用される、用語“肉”は、制限無くウシ、ヒツジ、ブタ、家禽、魚及び甲殻海産物からの肉を含む、ヒト又は動物によって消費される動物界の動物からのあらゆる新鮮な肉製品又は肉の副生成物を指す。従って、本発明の用途は、肉加工施設での哺乳類の食肉処理され又はその後に別の加工段階で加工された肉に関するが、本発明が魚、家禽及び海産物を含む他の食用肉製品の加工における用途を有することが明確に理解されるべきである。
食肉加工業において、大腸菌、サルモネラ属、糞便大腸菌群(F.coliforms)、リステリア属、ブドウ球菌属、F.連鎖球菌属、炭疽菌、大腸バランチジウム、カンピロバクターコリ、カンピロバクタージェジュニ、野兎病菌、肉胞子虫属、カギナシサナダ、カギサナダ、トキソプラスマ、旋毛虫、イェルシニアエンタロコリネア(Yersiniaenterocolinea)、偽結核エルジニア菌、ブルセラ属、クラミジア点
状出血、レプトスピラ属及びクロストリジウム属を含む多くの種類の細菌が食中毒を引き起こすと知られる。それらの病原性細菌は各々群を成し及び異なる条件下で増殖するが、それらのいずれか又は全ては肉加工施設に存在し得る。例えば、リステリア属は一般に、クーラー及び肉加工区域のような冷たく湿潤な環境で見られる。ブドウ球菌は、しばしば牛毛、糞便物質中、感染傷中及び内部膿瘍で見られ、そしてときには食物取り扱い者の貧しい衛生習慣と関係がある。
プスードモネイド(Pseudomonades)、乳酸桿菌属及び大腸菌のような低温細菌(psychotropic bacteria)を含む腐敗性細菌は、肉の変色及び望ましくないにおいを発生することによって肉製品の保存期限に影響を及ぼす。それらの細菌は、典型的に動物の生棲場所では一般的なことである土壌、飲食物及び糞便物質において見つけられる。
【0026】
酸化防止効果
加えて、及びここで記載される方法の抗微生物効果に対し相補的に、本発明は、特に熱を受けさせる場合の脂肪及び油の酸化を減少するための手段を提供する。さらに、脂肪、油又は食品へのフィトステロールの添加は、脂肪酸化の間に形成される酸化による遊離基及び/又はペルオキシドを除去することによってそこに存在する脂肪酸部分を保護する。ここに記載される方法の二重の利益のこの部分は、特に例えば焼くこと、調理すること及び揚げることによって加熱を受ける脂肪及び油ベースの食品においてもっとも顕著である。
脂肪及び油はこれらに制限はされないが、植物性油及び堅果油、(例えば、菜種油、ひまわり油、綿実油、オリーブ油、ココナッツ油、大豆油、カカオバター、パーム油、ピーナッツ油、クルミ油、アマニ油(flaxseed oil)、あまに油(linseed oil)、コーン油、紅花油のような)、魚油及び動物油(ラード、バター、牛脂、グリース)を含む。
用語“脂肪”は、3つのグリセロール部分のために、普通、トリグリセロール又はトリアシルグリセロール(TAGs)と呼ばれるものを指す。これらはグリセロール主鎖に結合する3つの脂肪酸分子を含む脂質の一形態である。グリセロール主鎖上の位置は、sn−1、sn−2及びsn−3(立体異性体の番号付け)と指定される。脂肪は、また1個のグリセロール及び2個の脂肪酸を含有するジアシルグリセロール、並びに1個のグリセ
ロール及び1個の脂肪酸を含有するモノアシルグリセロールの形態を取ることも出来る。
脂肪酸は、グリセロールのヒドロキシル基の一つに結合し得る末端のカルボキシル基を有する炭素原子の鎖で作られている。炭素原子の数は、典型的に直鎖上に配列する4と26個の炭素原子の間で変わる。しばしば、脂肪酸は鎖長によって分類される:短鎖と呼ばれるものは10個の未満の炭素原子を有し、中鎖は10ないし14個の炭素原子を有し、及び長鎖は14個より多い炭素原子を有する。一般に、天然に生じる脂肪酸は、鎖において偶数の炭素原子を有する、しかしいくつかの例外が生じる。例えば、バレリアン酸、5個の炭素が飽和した脂肪酸が、ときどき発酵製品及び乳脂で発見され得る。
【0027】
炭素原子間の結合の種類が、また脂肪酸の定義付けの手助けとなる。飽和脂肪酸(SFA)は、水素原子を最大数含有し;それらは炭素間に二重結合を含有しない。不飽和脂肪酸は、それらが少なくとも一つの二重結合を有するから水素原子を最大数未満含有し;それらの脂肪酸は、一価不飽和、もしくはMUFA、(1個の二重結合)又は多価不飽和、もしくはPUFA、(二重結合1個以上)と称する。多価不飽和脂肪酸は多数の二重結合を含有し、この種類の脂肪酸を有する食品をより酸敗性にしがちにする。
それらの二重結合は、シス又はトランス幾何学的形状として生じ得る。より一般的なシス幾何学形状において、二重結合を有する炭素原子に結合した両方の水素原子は、鎖の同じ側に位置し、ベンド及びより柔軟な分子を生じる。トランス位置は、鎖の反対側に位置する2個の水素原子を有する。これはトランス脂肪酸の鋭くない二重結合角及びより直鎖の鎖を作り、結果として容易に密集するより硬質な分子を生じる。乳及び他の動物脂肪並
びにわずかな植物脂肪は、いくつかのトランス脂肪酸を含有するが、ほとんど水素化脂肪に由来する。それらは、主にオレイン酸、エライジン酸(t9−18:1)及びバクセン酸のトランス異性体から成る。
水素化は、二重結合を除去し及び炭素に水素原子を付加し、液体油を固体脂肪の形に変え、そして酸化への抵抗を増加する。前記プロセスは、不規則に水素原子を挿入し;部分的な水素化は、多価不飽和及び一価不飽和(両方共トランス異性体を有する)及び飽和脂肪酸の混合物を与える。水素化の程度が増加するにつれて、一価不飽和物及びトランス脂肪酸は増加し、及び飽和物はわずかに増加するが、多価不飽和物のレベルが減少する。
脂肪及びその脂肪酸の化学的性質は、脂肪の性質に影響する。TAGsの化学的及び物理的性質は、関連した脂肪酸部分の鎖長及び飽和度及びグリセロール主鎖上の脂肪酸の位置によって決定されることが認められている。
例えば、三個の脂肪酸因子が融点に影響する:鎖長が長くなるほど、融点が高くなる;飽和の程度が高くなるほど、融点が高くなる;及びトランス幾何学形状もまた融点を上げる。オレイン酸(9c−18:1)の融点は13℃であり、エライジン酸(9t−18:1)は44℃であり、及び飽和ステアリン酸(18:0)は70℃である。
TAG構造上の関連する脂肪酸によって占有される位置もまた、両方の性質に極めて寄与する。例えば、ラード及び牛脂において、それらの両方共類似の脂肪酸組成物を有する;主要な脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸である。ラードにおいては、パルミチン酸はほぼ独占的にsn−2に生じ及び外側の位置にオレイン酸が生じるが、牛脂においては飽和物がsn−1,3位置に分布される。ラード特有のTAG構造は、フレーク状態が要求されるパイ生地のようなパン菓子商品のために非常に望ましい結晶構造を提供する。
【0028】
ヒトの食事は、“必須”脂肪酸と呼ばれる2つだけの脂肪酸:リノール酸及びアルファ−リノール酸を必要とする。人体はそれらを合成できず、及び血液凝固、血圧、心拍数、免疫応答及び多くの他の生物学的作用を調整するのを助ける化合物であるエイコサノイドを生成するためにそれらを必要とする。
リノール酸(18:2n−6)は、その一番目の二重結合が脂肪酸のオメガ端、又はメチル基(−CH3)端から6番目で生じるから“オメガ−6,”又は“n−6,”と呼ばれる。ひまわり、紅花、コーン、大豆及びピーナッツのような植物性及び堅果油は、かなりの量を含有し、従って、ほとんどのアメリカ人は、彼らの食事でリノール酸及びオメガ−6脂肪酸を適正レベル取る。アルファ−リノール酸(18:3n−3)は、その一番目の二重結合がオメガ端から三番目にくるから、“オメガ−3,”又は“n−3,”の脂肪酸である。それは、例えば、アマニ油(51%リノール酸)、菜種油(9%)、大豆油(7%)及びクルミ(7%)において見つけられ得る。
リノール酸は、エネルギーを生成するために体で酸化され、又は酵素によってガンマ−リノール酸(GLA)、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)及びアラキドン酸(AA)のような長鎖PUFAsに分解され得る。体は、これは多少非能率なプロセスであるけれどもアルファ−リノール酸をエイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)に分解するために同じ酵素を使用する。それゆえに一部の専門家は、それら2つの長鎖オメガ−3sの直接取り入れを提案する。
大豆、カノーラ及びアマニ油は、比較的にリノレン酸を高いレベル含有する。長鎖(Ic)オメガ−3PUFAsEPA(20:5n−3)及びDHA(22:6n−3)は、魚油、特に冷水魚において見られる。調査は、食事において魚由来のIcPUFAsを含むことが冠状動脈性心臓病及び卒中を減らし得、及び他の病気(失読症、動脈硬化及びぜんそくを含む)に有益な効果を有し得る。オメガ−3PUFA油は、脳及び網膜の発達及び機能も助ける。
【0029】
脂肪及び油は食品産業で、家庭での食事の支度で及びレストランで幅広く使用される。高飽和油は、それらの劣る安定性及びそれらが二重結合を有さない又は少し有する油より
早く劣化する事実のためにより望ましくないと考えられているけれども、ほとんど全ての油は、揚げることに使用し得る。油及び脂肪及びそれらを含有する食品の保存期限及び料理安定性のどんな手段も食品産業に非常に重大である。そのような手段は、本発明の方法によってここに記載される。
油及び脂肪に対する2つの主な劣化プロセスは、酸化及び加水分解である。加水分解において、脂肪酸は、水の存在(すなわち、揚げる状態)下、高温でトリアシルグリセリドから加水分解され、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、及びグリセロールを生じる。それらの分解生成物は、それらは食品からの水の油又は脂肪への乳化をより増大させるので、残っているトリアシルグリセリドの劣化を加速するだろう。油又は脂肪の酸化において、二重結合の隣りの炭素原子は酸化され、結果として炭化水素鎖の破断を、及びアルデヒド、ケトン、アルコール、短鎖脂肪酸、及び油及び脂肪に異臭引き起こし得る他の化合物を含む揮発性化合物の形成をもたらす。ポリマー形成である劣化プロセスの三番目の種類は、油の色を暗くし及び最終的に粘度の増加及び該油での固化を導き得る。しかしながら、この劣化プロセスは、揚げる状態によって加速されるが、重合が油に影響を及ぼすよりかなり前に他の二つの劣化プロセスが食べるに適さない油を与えるので、ほとんど重要でない。
【0030】
本発明のプロセスは、重要であり及び食品産業の多くの部門:
油、脂肪及び原料の供給者、フードサービス(ホテル、レストラン及び公共施設)の経営者、及び食品産業(特にスナック及び十分に揚げた及び標準に揚げた食品(par−fried foods))で大いに役に立つであろう。産業の及び市販の両方のレベルで揚げた食品及び使用した油の量は、膨大である。米国は、1年間に2.5ミリオンメートルトン(MMT)(5×109lb)を超える、その大部分は揚げられた、スナック食品を
生産している(SFA 1997 State of the Snack Food Industry Report,.Snack Food Association Alexandria VA)。米国には揚げる用の脂肪及び油を毎年およそ1MMT(2×109lbs)使用する500,000以上の公共の及び商業用のレストランがある
(O‘Brien R.1993 Foodservice use of fats and oils INFORM4(8):913−921)。
脂肪及び油は、揚げた食品の質感及び口当たり特性を良くするために他の成分のフレーバーを運ぶこと、高めること及び放出することに、並びに他の原料と相互に作用し合うことに関与する。上記に記載したように、それらは食事の必須脂肪酸、脂溶性ビタミン(A,D,E及びK)及びエネルギーを提供する。従って、脂肪及び油は食品において重要な機能的及び感覚的役割を果たし、及び本発明は、それらの全体性を保つ為の手段を提供することにより、これらの利益を得る助けとなる。加熱の(特に良く揚げる)間の油における熱酸化的変化は結果として必須脂肪酸の著しい損失を招くことが判明したため、本発明の特別な価値は、室温貯蔵ばかりでなく、より決定的には、様々な加熱プロセスの間においてもこれらの脂肪酸を酸化及び劣化から保護することにある(イルワンディ他 2000 JACOS 77:527−533)。
本発明の範囲内でフィトステロール及び/又はフィトスタノールが食品に加えられ得、及びこれは油、特に液体食用油及び様々な脂肪、特に室温で硬いものへのフィトステロール及び/又はフィトスタノールの直接添加を含む。
食品に加えるフィトステロール及び/又はフィトスタノールの量は、食品の種類を含む多くの因子によるものの、一般にフィトステロール及び/又はフィトスタノールが食品の質量に基づき合計で0.05ないし10%の間となる量で加えられることが好ましい。
【実施例】
【0031】
本発明は、下記の限定的でない実施例によって説明される:
実施例1:フィトステロール及び/又はフィトスタノールの微粒子を含むヨーグルトの調製
カンペステロール(14.5%)、カンペスタノール(2.4%)、ベータ−シトステロール(50.9%)及びシトスタノール(18.9%)を有する植物性ステロール/スタノールの組成物(以下、“レデュコル(登録商標:Reducol)”と言う)を1:7ないし1:8の比において脂肪を含まない粉乳と混合した。牛乳混合物の約6Lを全乳、脱脂粉乳及び粉乳を含むレデュコルから調製した。牛乳をピアソンのスクエア法を使用し、0.75ないし1%の脂肪、12ないし13%の固体及び0.5ないし1%のレデュコルに標準化した(Hyde,KA and Rothwell,J.1973,In Ice Cream,Churchill Livingstone Ltd,London U.K.)。牛乳混合物は粉乳を再水和するために30分間室温のままにし、そして次にそれをマイクロフルイディクス社(Microfluidics Corporation),ニュートン、マサチューセッツ州(Mass.)から商業的に入手可能な高速マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を使用し均質化した。次に、牛乳を次に30分間(バッチ処理/バット(vat))69℃(156°F)で低温殺菌し、44℃に冷却し、そして30分間までこの温度で保った。
1:1の比でブルガリア菌及びサーモフィルス菌を含有する約3質量%の活性ヨーグルト培養物を注意深く温かい牛乳混合物に導入した。穏やかな攪拌後、植菌した牛乳を125mlの容器に分配し、ほぼ上端まで充てんした。容器をアルミニウムリード線を用いて熱的に封をし、そして優れた等速空気循環装置及び温度制御器を装備した培養器に置いた。充てんされた容器を固く、滑らかなゲルが形成されるまで、3ないし5時間44℃のままにした。培養中、pHを定期的に測定した。pHが約4.5に達したとき、ヨーグルトを培養器から回収し、急いで冷却し、そして4℃で貯蔵した。
【0032】
実施例2:フィトステロール及び/又はフィトスタノールの微粒子を含む植物性スプレッド/エマルジョンの調製
濃度範囲50ないし80%においてレデュコルを有する大豆油及びパーム油の混合物をエマルジョンを作るために使用した。水素化植物性油のほんの少し(2ないし5%)を望ましい質感を得るために加え得た。2種類のエマルジョン:低脂肪スプレッドの作成に好ましい水中油型及び何らかの他の用途に好ましい油中水型を生じ得た。レシチン、ポリソルベート及びラクチレートのような適当な乳化剤又は安定剤を、エマルジョンを安定化するために使用した。ガム(キサンタンガム、イナゴマメガム、グァーガムなど)、ゼラチン、ペクチン及び寒天のような増粘剤もまた加え得る。スプレッドを着色するために、ベータ−カロチン、カラメル色及びFD&C黄色染料を使用し得る。さらに、油相にビタミンA及びD並びに必須多価不飽和脂肪酸を混入することが可能である。
スプレッドの組成は以下の通りである:
植物性油(液体) 50ないし80%
植物性、飽和脂肪 0ないし5%
レデュコル 9ないし15%
乳化剤 0.2ないし1%
増粘剤 0ないし10%
バターフレーバー、着色剤、塩 要求に応じさまざま
水 100%まで

全ての原料をT50 Ultra Turrexのような高速シアーバッチミキサーを装備するステンレススチール容器中で混ぜ合わせた。配合が完了し、及び混合物がヘビークリームの堅さを有した後、ブレンドを二時間そのままにしておくことによってマーガリンの堅さに調節された。乳剤を安定化するため及び付随してレデュコル成分の粒径を小さくするため、スプレッドをマイクロフルイダイザーにおいて均質化した。
【0033】
実施例3:フィトステロール及び/又はフィトスタノールの微粒子を含むシリアルバーの調製
レデュコルが、27%(及びもしかすると以上)まで脂肪中に分散され得ることが、本願における出願人によって見出された。この理由のため、脂肪ベースの結合剤を有するシリアルバーが研究された。この脂肪成分は、次にシリアルバーの強度及び弾性を保つために適する結合剤を形成するために炭化水素及び所望により他の原料と組み合わせられ得る。a)結合剤
一般に、シリアルバーにおける脂肪結合剤の組成は、20ないし85質量%の脂肪、及び20ないし60質量%の炭水化物の範囲である。シリアルバーの強度を1%までのモノグリセリド及びジグリセリドを加えることで改善したが、しかしながら、それらはトリグリセリドと比較して比較的高融点を有するので、少ない割合でのみ使用すべきである。所望により様々な乳化剤、塗膜形成物(例えばカゼイン酸ナトリウム又は代わりに卵アルブミン、大豆タンパク)、着色及びフレーバー成分、ビタミン及び無機物を加えた。
結合剤の組成は以下の通りである:
レデュコル含有脂肪 40%
スクロース 22%
水 28%
カゼイン酸ナトリウム 5%
レシチン 2%
グリセリン 3%
それらの原料を室温で混合し又は水中で煮沸したスクロースに加えた。塗膜形成物/スクロースシロップ(連続相)中に脂肪球(不連続相)を分散することを目的に、適したミキサー(例えばホバートミキサー(Hobart mixer))を使用し、混合をしっかり行った。この混合プロセスの間、脂肪はカプセル化された。このプロセスが完全かどうか断定するために、60℃の水に分散剤1滴を垂らす。脂肪が放出された場合、混合は完全ではなく、そして続けられるべきである。
a)シリアルバー
さまざまな割合での、オートムギ、クリスプ シリアル(crisp cereals)(コーン及び小麦フレーク、ライスクリスピー(登録商標:Rice Krispies))、ナッツ、レーズン及びフルーツの組み合わせが“食用微粒子”を構成する。全ての食用微粒子はインスタントであるべきである。シリアルは、大豆又はカノーラ油のような不飽和油中に押出され、焼かれ又はあぶられ得る。

シリアルバーの組成
結合剤(レデュコルを有する) 40%
食用微粒子 55%
水 5%
食用微粒子:
ロールドオート 40%
カリカリした米(Crisped rice) 15%
パフ大麦 15%
サイコロ状乾燥りんご 15%
みじん切りにしたココナッツ 7.5%
レーズン 7.5%

全てそれらの原料をニーリング装置(kneeling device)及び回転ボウルを装備したホバートミキサー中で完全に混合した。結合剤を40ないし50℃まで加熱し及び最初にボウルに入れ続いて他の原料を入れた。食用粒子の大きさの減少させずに完全な混合をすることが、混合する時間を設定するための基準に使用されるべきである。混合が完了した後、混合した材料を成形型(10×50×0.6cm)に入れ、そしてローラーで圧延した。型から取り除いた後、それを4×10cmのインスタントのシリアルバーに切った。成形及び切断後、バーを乳製品ベース及びチョコレートの覆いを使用して一重
又は二重に覆った。バーは包装前に15ないし20分間10℃で安定化されるべきである。
【0034】
実施例4:フィトステロール及び/又はフィトスタノールの微粒子を含むチョコレート菓子の調製
チョコレートは、カカオバターの連続相における砂糖及びカカオ微粒子の分散物である。固体粒子は、チョコレートを滑らかな質感にするために一般に直径20μm未満であるべきである。
レデュコル含有のチョコレートを作るために、レデュコルをカカオ粒子(粒径を小さくするためにここで記載されるようないずれかの衝撃付加プロセスを経た)と混合し及びそのまま使用され得るか、及びもう一つの方法としてレデュコルはマイクロ流動化技術を使用してカカオバターに練り込まれ得た。プレーン、ホワイト又はミルクチョコレートを作り得た。
最初の取り組みでは、微粒子レデュコルをカカオ粉末、砂糖、粉乳、乳化剤(大豆レシチン)、塗膜形成物及びフレーバー剤(例えば天然又は人工のバニリンフレーバー)と混合した。乾燥混合をT50 Ultra Turrexのようなバッチミキサーを使用して行った。その後に、カカオバター及び牛乳を加え、そして調合物を完全に混合した。混合の後、チョコレートの塊を成形のために粘度調節し及び使用した。
二番目の取り組みでは、レデュコルをカカオバターに直接練り込んだ。カカオバターを製粉してないレデュコル粉末と混合し、そして次に実施例2において記載された手順を使用して粒径が10ないし20ミクロンの範囲になるまでマイクロフルイダイザー(M−110Y マイクロフルイディクスインターナショナル社(Microfluidics International Co.),Newton、Mass、USA)を通した。
一旦レデュコルを含有するバターが作り出されると、それを次にチョコレートを調製するのに使用した。
【0035】
実施例5:フィトステロール及び/又はフィトスタノールの微粒子を含む大豆飲料の調製
大豆飲料は、ろ過された、又は浄化された水と大豆丸ごとからできている。それは添加されたカルシウム、ビタミンD、ビタミンB−12及び天然又は人工のフレーバーを含有し得る。この実施例において、大豆飲料にレデュコルが混入された。
レデュコルをバッチミキサー(T50 Ultra Turrex)を使用して0.5ないし6%の濃度範囲で、好みの大豆飲料と混合した。試料を次にマイクロフルイダイザーにかけ、そして乳化した。
【0036】
実施例6:油における溶解−大豆油中のフィトステロール
乳化剤を必要とせずに、油中に溶解したフィトステロールを含む多数の組成物を調製した。
A)上記で言及されたような“レデュコル”を大豆油における溶解のために選んだ。この組成物0.5グラム(5%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.5グラムの大豆油(95%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
B)レデュコル0.6グラム(6%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.4グラムの大豆油(94%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
C)レデュコル0.7グラム(7%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.3グラムの大豆油(93%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2
分間混合した。
D)レデュコル0.8グラム(8%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.2グラムの大豆油(92%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
E)レデュコル0.9グラム(9%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.1グラムの大豆油(91%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
F)レデュコル1.0グラム(10%w/w)をおよそ140℃で油浴の加熱下溶融状態に加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.0グラムの大豆油(90%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
そのように形成した5%w/wフィトステロールは、認識可能な沈殿物又は結晶を含まない透明な溶液を生じ、及び乳化剤なしで最も好ましい組成物であった。対照試料組成物は、匹敵する%割合を有する成分で調製したが、熱をおよそ3分間適用するとともに単に油及びフィトステロールを添加することによって作られた。対照試料と比べて、本発明の方法によって調製された各々の組成物は、より透明であり、フィトステロールがより溶解されたことを示した。
【0037】
実施例7:油における溶解−大豆油中のフィトステロール及び乳化剤
3種類の乳化剤を試験した:エマルトップ(登録商標:EMULTOP)(リソ−PC混入レシチン);エピクロン200(登録商標:EPIKURON200)(98%より多くのホスホリピドを含む。)及びホスホデルム(登録商標:Phosphoderm)(アルコール中およそ80%のホスホリピド)。それら3つの各々を0.01%w/wないし1%w/wの範囲の量で試験した。フィトステロールの量は5ないし10%w/wの範囲だった。各所定量のエピクロン及び5%w/wのフィトステロールに対し以下に記載される手順を全ての組成物に適用し得、もちろん3つの成分の異なる百分率が置き換わる。加えて、一連の以下の表は、各々の組成物の調製において使用された乳化剤、フィトステロール及び油の正確な比率を記載する。
A)上記で示されるようなフィトステロールの混合物、レデュコルを大豆油における溶解のため選んだ。0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。0.1グラムのエピクリオン200(1%w/w)、98%以上のホスホリピドを有する乳化剤、を溶解したフィトステロールに添加し及び攪拌した。十分に混合した後、フィトステロール/ホスホリピドをおよそ140℃で9.4グラムの大豆油(94%w/w)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
B)0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。0.05グラムのエピクリオン200(0.5%)を溶解したフィトステロールに添加し及び攪拌した。十分に混合した後、フィトステロール/ホスホリピドをおよそ140℃で9.45グラムの大豆油(94.5%)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
C)0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。0.03グラムのエピクリオン200(0.3%)を溶解したフィトステロールに添加し及び攪拌した。十分に混合した後、フィトステロール/ホスホリピドをおよそ140℃で9.47グラムの大豆油(94.7%)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
D)0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。0.01グラムのエピクリオン200(0.1%)を溶解したフィトステロールに添加し及び攪拌した。十分に混合した後、フィトステロール/ホスホリピドをお
よそ140℃で9.49グラムの大豆油(94.9%)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
E)0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。0.001グラムのエピクリオン200(0.01%)を溶解したフィトステロールに添加し及び攪拌した。十分に混合した後、フィトステロール/ホスホリピドをおよそ140℃で9.499グラムの大豆油(94.99%)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
F)0.5グラムのレデュコル(5%w/w)をおよそ140℃で油浴加熱下、溶融状態まで加熱した。溶融フィトステロールブレンドをおよそ140℃で9.5グラムの大豆油(95%)に加えた。最終組成物を、温度は100ないし110℃に下げたが、約2分間混合した。
最良の結果、すなわち認識可能な沈殿物又は結晶を含まない透明な組成物は、フィトステロール7%w/w以下及び乳化剤としてレシチン(エマルトップ)0.30%w/wで、並びにフィトステロール8%w/w以下及び乳化剤としてアルコール中ホスホリピド(ホスホデルム(PHOSPHODERM))0.30%w/wで得た。
注目すべきは、フィトステロールが多くのそれらの組成物において十分に完全に溶解され得た一方、組成物の色はいくつかの種類の乳化剤添加によって強められ得たことである。例えば、炭化水素存在下でレシチンは高温で黄褐色化され、結果として暗褐色の油を生じる。同様に、油の色はホスホデルムの添加によって強化され得る。
【0038】
実施例8:ヨーグルト
カンペステロール、カンペスタノール、β−シトステロール及びシトスタノールから成るフィトステロールブレンドを油中に溶解し、そして次に1:7ないし1:8の割合で無
脂肪粉乳と混合した。約6Lの牛乳混合物を全乳、脱脂乳及び上で述べたように粉乳を含有するレデュコルから調製した。牛乳は、ピアソンのスクエア法(Hyde,K.A.and Rothwell,J.,1973,In Ice Cream,Churchill Livingstone Ltd.,London,U.K.)を使用し、0.75ないし1%の脂肪、12ないし13%の固体及び0.5ないし1%のフィトステロールブレンドに標準化した。牛乳混合物は粉乳を再水和するために30分間室温のままにし、そして次にそれを高速シアーバッチミキサー(分散エレメントS50N,IKA Works Inc.,Wilmington,NC,USAを装備したUltra−Turrax T50)を使用して均質化した。一段式ホモジナイザー、二段式ホモジナイザー又は高圧マイクロフルイダイザーのような他の装置も、もう一つの方法として牛乳混合物の均質化のために使用し得る。次に、牛乳混合物を30分間69℃(156F)で低温殺菌し(バッチ/バット)、44℃に冷却し、そして15分間この温度に保った。
1:1の割合でブルガリア菌及びサーモフィルス菌を含有する活性ヨーグルト培養物の約3質量%を注意深く温かい牛乳混合に取り込んだ。穏やかに混合した後、植菌した牛乳を125g容器に分配し、上部近くまで充てんした。容器をアルミニウムリード線を使用して熱的に封をし、そして優れた等速空気循環装置及び温度制御器を装備した培養器に置いた。充填された容器は堅く、滑らかなゲルを形成するまで3ないし5時間44℃のままにした。培養の間、pHを定期的に測定した。pHが約4.5に達したとき、ヨーグルトを培養器から回収し、急いで冷却し、そして4℃で貯蔵した。
【0039】
実施例:9 パン
油(クリスコ)中に溶解したカンペステロール、カンペスタノール、β−シトステロール及びシトスタノールを含むフィトステロールブレンド(“レデュコル”としてここで言及される)0.6%及び1.2%を含有するパンをパン焼き機(Black&Decker,Model#B2005)を使用し調製した。フィトステロール組成物(クリスコに加えてフィトステロール)を以下に示す割合で他の原料とともに混合した。
【表1】

原料をパン焼き機のパン焼き皿で混ぜ合わせた。パン生地の調製及びパン焼きを製造仕様書に従って行った。
【0040】
実施例:10 シリアルバー
それぞれ3%及び1.5%のレデュコルを含有した総質量20g及び40gのシリアルバーを調製した。カンペステロール、カンペスタノール、β−シトステロール及びシトスタノールから成るレデュコルを部分的に水素化した植物性油に溶解した。油/レデュコルブレンドを30℃に冷却し、そして高速シアーバッチミキサー(分散エレメントS50N,IKA Works Inc.,Wilmington,NC,USAを装備したUltra−Turrax T50)を使用して乳化した。次に、2つの油ブレンド(9.4%及び18.8%のレデュコル)をさらに高圧マイクロフルイダイザーを使用し20,000PSIで乳化した。シリアルバーを結合剤(40%)、水(5%)及び食用粒子(55%)を混ぜ合わせることによって製造した。以下の結合剤2種類の実施例をシリアルバーの作成に使用した。
スクロースを含有する結合剤
レデュコル(9.4%又は18.8%)を含有する油 40%
スクロース 22%
水 28%
カゼイン酸ナトリウム 5%
レシチン 2%
グリセリン 3%

グルコースを含有する結合剤
レデュコル(9.4%又は18.8%)を含有する油 40%
グルコースシロップ 50%
カゼイン酸ナトリウム 5%
レシチン 2%
グリセリン 3%

レデュコルを含有する脂肪を40ないし80℃で溶かす一方、水/グルコースシロップ中のスクロースを100℃に加熱した。熱い砂糖溶液をボウル(ホバートミキサー,Model N50)に入れ、そして脂肪を加え、続いて残りの結合剤原料全てを加えた。

食用粒子
ロールドオート 20ないし40%
カリカリした米(Crisped rice) 10ないし20%
パフ大麦 10ないし20%
サイコロ状乾燥りんご 10ないし20%
みじん切りにしたココナッツ 5ないし10%
レーズン 5ないし10%
各種ナッツ 5ないし10%

混合が完了した後、混合した材料を成形型に置き、そしてローラーで圧延した。型から取り除いた後、すぐ食べられる様々なサイズのシリアルバーに切断した。
【0041】
実施例:11 スプレッド
6%のレデュコルを含有するライトマーガリン(60%脂肪)を5ないし10kgのバッチで製造した。カンペステロール、カンペスタノール、β−シトステロール及びシトスタノールを含むレデュコルを油に溶解した。透明な脂肪溶液を供給タンク(20L)に入れ、40ないし45℃に冷却し、そして(S50N,IKA Works Inc.,Wilmington,NC,USAを装備したUltra−Turrax T50)を使用し攪拌した。次に水留分(40%)を加え、そして温度を60℃に調節した。ブレンドをボテーター(votator)におき、そして8ないし10℃で加工した。マーガリンの組成物は以下に記載される。
【表2】

【0042】
実施例12:チョコレート
6%のレデュコルを含有するミルクチョコレートを20ないし50kgのバッチで製造した。カンペステロール、カンペスタノール、β−シトステロール及びシトスタノールを含むレデュコルを大豆油中に溶解した。ブレンド(20%レデュコル)を次に高圧マイクロフルイダイザーを使用して20,000PSIで乳化した。チョコレートは外殻(42質量%,レデュコル無し)及び核心(69%,レデュコル)から構成した。チョコレートの外殻を、加熱タンク中で砂糖(45%)、全粉乳(20%)、カカオバター(23%)、カカオマス(12%)、大豆レシチン(0.3%)及び純バニラ(0.1%)を混合することによって作った。全ての原料を融解し、粘度調節しそして型に置いた。核心を外殻についてと同様の割合で砂糖、カカオバター、全粉乳、カカオマス、大豆レシチン及び純バニラを混合することによって調製した。混合物を融解し、そして粘度調節した。その結果として、レデュコル/大豆油ブレンドを1:1の割合でチョコレートと混合し、そして前もってレデュコル無しでチョコレートを充てんした型に置いた。チョコレートピースを冷却し、包み、そして箱に梱包した。成形システムを使用し、10ないし12gのチョコレートピースを製造した。
【0043】
実施例13:牛乳における微生物の低減
乳飲料を以下の処理可変要素を適用して作った(乳脂肪2%及び無脂乳固形分8.9%):フィトステロール/フィトスタノール混合物(ベータ−シトステロール、ベータ−シ
トスタノール、カンペステロール及びカンペスタノール、以下“フィトステロール”という)の添加(0、0.26%、0.72%)、マイクロ流動化圧力の適用(0、5,000PSI)、安定剤の添加(0、0.016%)、及び4±1℃で貯蔵(0、9日間、18日間)。
脱脂乳に分散させた20パーセントのフィトステロール/フィトスタノールを20,000PSI(M−110Y型 マイクロフルイダイザープロセッサ、マイクロフルイディクス インターナショナル コーポレーション、マサチューセッツ州)でマイクロ流動化し、及びこの調製物をフィトステロール/フィトスタノール処理乳飲料の配合に使用した。
乳飲料は、牛乳60.3%(乳脂肪3.25%,無脂乳固形分8.71%)、脱脂乳36.702%、脱脂粉乳0.257%、安定剤0.016%:カッパ−カラゲーナン(kappa−carrageenan)(フード・スペシャルズ、ミシサーガ、オンタリオ州)、水1.465%、及び脱脂乳に20%の予備分散したフィトステロール1.26%から成る。
脱脂乳を連続して穏やかに攪拌しながら40℃まで加熱した。フィトステロール(脱脂乳4部に対しフィトステロール1部)を継続的に60ないし65℃に温度が上げつつ徐々に添加した。手動ブレンダー(Rival Ultra Blend IB953−CN、Sedalia、Missouri)を用いて、混合物をフィトステロール粒子が牛乳に滑らかに組み込まれるまで1ないし2分間注意深く分散した。過剰な泡立ちを避けるために細心の注意を払った。次に、懸濁液を2分間65ないし70℃に加熱し泡をおさめ、20,000PSIでマイクロ流動化し、そして次に穏やかに攪拌しながら再び75℃まで加熱した。
12の配合物の各々に対し乳飲料5リットルを調整した。牛乳、脱脂乳及び水を混合し、そして35℃に温めた。前もって配合した脱脂粉乳及びカッパ−カラゲーナンを添加し、そして次に連続して穏やかに攪拌しながら60ないし65℃に加熱した。フィトステロール20%を含有する所定量の牛乳を注ぎ、65ないし70℃に加熱し、5000PSIでマイクロ流動化し、そして30分間65ないし70℃で低温殺菌した。乳飲料をすぐに連続して穏やかに攪拌しながら4℃に冷却し、100mL、500mL及び1Lの高密度ポリエチレン容器に詰め、そして次に4±1℃で貯蔵した。
各々の乳飲料配合物からの試料を9日及び18日たった乳飲料で集め、そして総バクテリア数及び大腸菌数を分析した。
案の定、大腸菌は4±1℃で18日間の貯蔵の間中、全ての乳飲料において観測されなかった。しかしながら、総平板菌数(Total plate count)(TPC)は、貯蔵とともに増えたように見え、及びフィトステロールを有する乳飲料では低いことが観測された。フィトステロール無しの乳飲料はフィトステロールで処理した飲料と比較して高い細菌数を含有したことが観測された。0.24%及び0.72%のフィトステロールを有する乳飲料は、9日間の貯蔵でそれぞれ32CFU/g及び30CFU/g TPCを有し;及び18日間で、それぞれ4×103CFU/g及び2.8×103CFU/gを有した;一方フィトステロール無しの牛乳は9日間で103ないし104、及び18日間の貯蔵で106を含有した。さらに、フィトステロールの静細菌性の性状は用量依存性
であり、及びフィトステロールの疎水性構造に関係し得る。
【0044】
実施例14:酸化防止効果
揚げ油の熱的酸化が原因の必須脂肪酸の損失に対する保護においてフィトステロールの効果を測定するために試験に取り組んだ。
様々な油(パラフィン油、菜種油、大豆油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり水素化油及び菜種/パーム油ブレンド)にフィトステロール混合物で混入した。それらの混合物をベータ−シトステロール68.5%、シトスタノール18.5%、カンペステロール8%及びカンペスタノール1.5%を含んだ。油は次に15分ないし96時間100ないし200℃の間で加熱した。
結果:
中鎖(60%)トリグリセリド油[リノール酸(8.3%)リノレン酸(6.9%)]
【表3】

図1は酸化状態(優れたその構成、高い酸化度合いを生じる)の指標であるマロンアルデヒドの形成を示す。フィトステロール/スタノールの混合を含む油について、マロンアルデヒドの形成が対象と比較して極めて減少したことが図1から明らかである。同様に、図4において示されるように、ペルオキシドの形成は、フィトステロール/スタノール混合物を含む油について極めて減少した。図2及び図3は、対照と比較してフィトステロール/スタノール混合を追加した油において、2つの異なった温度で脂肪酸損失の明らかな減少度合いを示す。
【0045】
実施例15:遊離ステロール/ステロールエステルを有する低脂肪マーガリン/スプレッドの調製
4%の遊離フィトステロール及び6.4%のフィトステロールエステルの混合物を含む低脂肪(36%)のマーガリン/スプレッドを下記の原料及び手順によって調製した:
原料
脂肪相
カノーラ油(供給元:‘クリア ヴァレー(Clear Valley)’高オレイン酸カノーラ油) 34.500%
フィトステロールエステル(ウッド ステロール エステル;ロット番号:GR12633161) 6.400%
レデュコル(登録商標:Reducol)(ロット番号:PG07632203、コード10001599000) 4.000%
マグファット(Magfat)CAF50(供給元:Premium Vegetable Oils Berhad) 1.500%
バターバド(Butter Buds)32X(供給元:バターバド) 0.500%
β−カロチン5014080(供給元:BASF) 0.003%

水相
水 52.801%
ソルビン酸カリウム 0.120%
脱脂粉乳 (供給元:Dairymans) 0.100%
塩(供給元:Cargill) 0.050%
クイックセット D8 ゼラチン 250 ブルーム (供給元:PB Leiner) 0.020%
無水クエン酸(供給元:Jungbungzlaur) 0.006%
装置
・混合装置を有するスェプト(Swept)表面タンク(Lee Industri
es 25U kettle TDC/2−25)
・混合装置を有する規定のバッチング(Batching)タンク(Gersten
berg&Agger Perfector SSHE装置の一部)
・ポンプ(Moynoブランド)
・レルコ プレート(Relco Plate)/フレーム パステライザー(Fr
ame Pasteurizer)
・Gerstenberg&Agger Perfector SSHE装置(3段
階のもの)
・Pinworker(Gerstenberg&Agger Perfector
SSHE装置の一部)
マーガリンの加工
・塩、ゼラチン、脱脂粉乳及び水を一緒に混合した
・前記水の混合物を60℃(141F)まで加熱し、そして溶液が透明になるまで攪
拌した
・クエン酸及びソルビン酸カリウムを水に加えた
・15秒間76.66℃(170F)で低温殺菌した
・カノーラ油、レデュコル及びマグファット CAF50をスウェプト(Swept
)表面乳化タンクで一緒に混合した
・前記油の混合物を80℃(177F)まで加熱し、そして均質な油を得るまで攪拌
した
・β−カロチン(すなわち色の連続的な観察とともに少しずつ)を加え、そしてバタ
ーバドを油の混合物中に入れ、そして十分に混合した
・前記油を60℃まで冷却し、そしてフィトステロールエステルを油の混合物に加え

・水の混合物を油の混合物に加え、そしてエマルジョンが均一になるまで高速攪拌機
で混合した。
・乳化混合物をスウェプト表面熱交換器及びピンウォーカー(任意)にポンプで送り
込んだ。
レデュコル(登録商標:Reducol)
・無水ベースで総ステロール>99%(w/w)
・シトスタノール 無水ベースで15ないし35%(w/w)
・シトステロール 無水ベースで<80%(w/w)
・カンペステロール 無水ベースで<25%(w/w)
・カンペスタノール 無水ベースで<15%(w/w)
・スチグマステロール 無水ベースで<2%(w/w)
・他のステロール/スタノール 無水ベースで<3%(w/w)
フィトステロールエステル(レデュコルエステル)
・一般的なステロール
○総ステロール/スタノール >99%
○シトスタノール <15%
○シトステロール <80%
○スチグマステロール <2%
○カンペステロール <25%
○カンペスタノール <5%
○他のステロール/スタノール <3%
・エステル化に使用するひまわり油(GMO無し)(脂肪酸分画)
○<C16 最大1%
○C16:0 5ないし8%
○C16:1 0ないし1%
○C18:0 3ないし6%
○C18:1 18ないし28%
○C18:2 60ないし70%
○C18:3 0ないし1%
○>C18 0ないし2%
・ エステル化度
○シトステロールエステル 最小95%
○遊離ステロール 最大5%
・不飽和度
○エステルの主要な脂肪酸成分は多価不飽和脂肪酸であった(C18:1及びC
18:2)
・マーガリンにおけるフィトステロールの総濃度
○遊離ステロールベースにより最大8%
・レデュコル 4.0%
・レデュコルエステル 6.4%
○遊離ステロールベースにより最小6%
・レデュコル 3.0%
・レデュコルエステル 4.8%
この実施例の範囲内で、レデュコルエステルは、主にスタノールエステルではないフィトステロールエステルから構成された。
【0046】
実施例16:遊離ステロール/ステロールエステルを含有するチョコレート
レデュコル/レデュコルエステルを含有するミルクチョコレートを20ないし50kgのバッチで製造した。レデュコル/レデュコルエステルを大豆油中に溶解した。次にブレンドを高圧マイクロフルイダイザーを使用して20,000PSIで乳化した。チョコレートは外殻(42質量%、レデュコル無し)及び核心(69%、レデュコル/レデュコルエステル)から構成した。チョコレートの外殻は、加熱タンクにおいて砂糖(45%)、全粉乳(20%)、ココアバター(23%)、カカオマス(12%)、大豆レシチン(0.3%)及び純バニラを混合することにより作った。全ての原料を融解し、粘度調節しそして型に置いた。核心を外殻についてと同様の割合において砂糖、ココアバター、全粉乳、カカオマス、大豆レシチン及び純バニラを混合することにより調製した。混合物を溶解し、そして粘度調節した。その結果、レデュコル/レデュコルエステル/大豆油ブレンドを1:1の割合でチョコレートと混合し、そして前もってレデュコル無しのチョコレートで満たされた型に入れた。チョコレートピースを次に冷却し、包みそして箱に梱包した。成形システムを使用し、10ないし12gのチョコレートピースを製造した。
【0047】
実施例17:植物性油における遊離ステロール/ステロールエステルの組み合わせを使用した酸敗性試験
ビヴォラ(登録商標:Vivola)、中鎖トリグリセリド(MCT)を含有する登録所有権混合物、カノーラ及びオリーブ油をこの研究の基礎として使用した。植物性油の酸敗性を12ヶ月にわたりペルオキシド及びp−アニシジンのレベルの両方を測定することによって試験した。3グループの試験を行った:1)ステロール無し及びステロールエステル無しの対照油;2)5.44%ステロールエステル;及び3)2.72%ステロール及びスタノールエステルを配合した1.7%レデュコル(遊離ステロール及びスタノール)(“ブレンド”)
その結果は明らかに見てとれ得る。図5は、ブレンドが対照及びエステル単独の両方と比較して12ヶ月にわたり極めて優れた酸敗防止への効果(より低いペルオキシドレベル)を有することを示す。図6は、ブレンドが対照及びエステル単独の両方と比較して12ヶ月以上極めて優れた酸敗防止への効果(より低いp−アニシジンレベル)を有することを示す。最も重要なことに、それはエステル単独では油の安定した効果を有しないことが見てとれ得る。
【0048】
実施例18:遊離ステロール/ステロールエステルを含む低脂肪(36%)植物性スプレッドの微生物及び酸敗性試験
8ヶ月間4℃で貯蔵した2.72%ステロール及びスタノールエステルをブレンドした8
%までのフィトステロール(1.7%レデュコル(遊離ステロール及びスタノール))を有する低脂肪スプレッド(“ブレンド”)の微生物学評価
標準平板菌数測定−食物MFHPB−18の微生物試験簡便法
大腸菌−食物MFHPB−31の微生物試験簡便法
サルモネラ菌−食物MFHPB−20の微生物試験簡便法
酵母菌及びカビ−食物MFHPB−32の微生物試験簡便法
結果は36週間以上にわたり著しく減速した微生物成長を示す。
【表4】

*<何も検出されず、その後検出限界がくることを示す
表:8ヶ月間4℃で貯蔵したフィトステロール(8%)を含有する低脂肪(36%)植物性スプレッドの微生物評価
このスプレッドの酸敗性を、またパルミチン酸の発現として評価した。遊離脂肪酸を測定し、パルミチン酸を%として表現した。
【表5】

遊離脂肪酸値を公定法及びAOCS、米国油化学会、第5版、1993−1997推奨案に従い測定した。
明らかに、全ての試料(同じ構成要素)は8ヶ月にわたる試験でわずかな酸敗性を示し
た。
全体的に見て、それらの結果は本発明の著しい有利性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、何も追加されない油(対照);ステロール、ローズマリー、又はビタミンEが追加された油を用いた、105℃で2時間の間の油におけるマロンアルデヒドの形成を示す棒グラフである。
【図2】図2は、何も追加されない油(対照);ステロール、ローズマリー、又はビタミンEが追加された油を用いた、105℃で2時間の間の油における脂肪酸の消失を示す棒グラフである。
【図3】図3は、何も追加されない油(対照);ステロール、ローズマリー、又はビタミンEが追加された油を用いた、180℃で2時間の間の油における脂肪酸の消失を示す棒グラフである。
【図4】図4は、何も追加されない油(対照);ステロール、ローズマリー、又はビタミンEが追加された油を用いた、180℃で5時間の間の油におけるペルオキシドの形成を示す棒グラフである。
【図5】図5は、過酸化物価により判断される12ヶ月にわたる植物油の酸敗性抑制を示す棒グラフである。
【図6】図6は、p−アニシジンにより判断される12ヶ月にわたる植物油の酸敗性抑制を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を、微生物の成長に起因する劣化、及び前記食品内に存在し得るいずれかの構成成分の脂肪又は油の酸化の両方から保存する方法であって、一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物を前記食品に添加することを含む方法。
【請求項2】
前記フィトステロールが、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール(ジヒドロブラシカステロールを含む)、デスモステロール、カリノステロール(chalinosterol)、ポリフェラステロール(poriferasterol)、クリオナステロール(clionasterol)、エルゴステロール、コプロステロール、コジステロール(codisterol)、イソフコステロール(isofucosterol)、フコステロール(fucosterol)、クレロステロール(clerosterol)、ネルビステロール(nervisterol)、ラトステロール(lathosterol)、ステラステロール(stellasterol)、スピナステロール(spinasterol)、コンドリラステロール(chondrillasterol)、ペポステロール(peposterol)、アベンナステロール(avenasterol)、イソアベンナステロール(isoavenasterol)、フェコステロール(fecosterol)、ポリナスタステロール(pollinastasterol)、及び異性体を含む、それらの全ての天然又は合成形態及び誘導体から成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィトスタノロールが、全ての飽和した又は水素化したフィトステロール及び異性体を含む、それらの全ての天然又は合成された形態及び誘導体から成る群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、脂肪族酸エステル、芳香族酸エステル、フェノール酸エステル、桂皮酸エステル、フェルラ酸エステル、フィトステロール/フィトスタノールグリコシド、及びフィトステロール/フィトスタノールアシルグリコシドから成る群から選ばれる形態にある請求項1に記載の方法。
【請求項5】
添加する前記フィトステノールが、一種以上の遊離フィトステロール及びフィトスタノール(“遊離ステロール”)及び一種以上のエステル化フィトステロール及びフィトスタノール(“エステル化ステロール”)を含む組成物の形態にある請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、50(質量)%以上の遊離ステロールを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、50ないし90質量%の間の遊離ステロールを含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、約1:1の割合で遊離ステロール及びエステル化ステロールを含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、合わせて食品の0.05質量%ないし10質量%の間の量で加えられる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記食品が、脂肪ベースである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記食品が、液体食用油である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記食品が、飲料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記食品が、粒状食物材料である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記食品が、乳製品、マーガリン、ピーナッツ及び他のバター、ショートニング、肉、家禽、魚、海産物、ソース、果物、野菜、穀物、穀物由来の製品、焼いた食品、油で揚げたスナック製品、砂糖菓子及びチョコレートから成る群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記食品が、ひき肉である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記食品が、栄養補助食品である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、細菌、ウィルス、酵母菌及びカビの成長に対して効果的である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物の抗微生物有効量を含む食品。
【請求項19】
前記フィトステロールが、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール(ジヒドロブラシカステロールを含む)、デスモステロール、カリノステロール(chalinosterol)、ポリフェラステロール(poriferasterol)、クリオナステロール(clionasterol)、エルゴステロール、コプロステロール、コジステロール(codisterol)、イソフコステロール(isofucosterol)、フコステロール(fucosterol)、クレロステロール(clerosterol)、ネルビステロール(nervisterol)、ラトステロール(lathosterol)、ステラステロール(stellasterol)、スピナステロール(spinasterol)、コンドリラステロール(chondrillasterol)、ペポステロール(peposterol)、アベンナステロール(avenasterol)、イソアベンナステロール(isoavenasterol)、フェコステロール(fecosterol)、ポリナスタステロール(pollinastasterol)、及び異性体を含む、それらの全ての天然又は合成形態及び誘導体から成る群から選ばれる、請求項18に記載の食品。
【請求項20】
前記フィトスタノールが、全ての飽和した又は水素化したフィトステロール及び異性体を含む、それらの全ての天然又は合成された形態及び誘導体から成る群から選ばれる請求項18に記載の食品。
【請求項21】
前記フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、脂肪族酸エステル、芳香族酸エステル、フェノール酸エステル、桂皮酸エステル、フェルラ酸エステル、フィトステロール/フィトスタノールグリコシド、及びフィトステロール/フィトスタノールアシルグリコシドから成る群から選ばれる形態にある請求項18に記載の食品。
【請求項22】
前記フィトステロール及び/又はフィトスタノールが、合わせて食品の0.05質量%ないし10質量%の間の量で存在する請求項18に記載の食品。
【請求項23】
前記食品が、脂肪ベースである請求項18に記載の食品。
【請求項24】
前記食品が、液体食用油である請求項18に記載の食品。
【請求項25】
乳製品、マーガリン、ピーナッツ及び他のバター、ショートニング、肉、家禽、海産物、
ソース、果物、野菜、穀物、穀物由来の製品、焼いた食品、油で揚げたスナック製品、砂糖菓子及びチョコレートから成る群から選ばれる請求項18に記載の食品。
【請求項26】
添加する前記フィトステノールが、一種以上の遊離フィトステロール及びフィトスタノール(“遊離ステロール”)及び一種以上のエステル化フィトステロール及びフィトスタノール(“エステル化ステロール”)を含む組成物の形態にある請求項18に記載の食品。
【請求項27】
前記組成物が、50(質量)%以上の遊離ステロールを含む請求項26に記載の食品。
【請求項28】
前記組成物が、50ないし90質量%の間で遊離ステロールを含む請求項26に記載の食品。
【請求項29】
前記組成物が、約1:1の割合で遊離ステロール及びエステル化ステロールを含む請求項26に記載の食品。
【請求項30】
粒状食物材料の微生物汚染を低減する方法であって、有効量の一種以上のフィトステロール、フィトスタノール、又はその混合物とともに前記食物材料を混合又は形成することを含む方法。
【請求項31】
前記粒状食物材料が、ひき肉である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ひき肉が、牛肉である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ひき肉が、豚肉である請求項30に記載の方法。
【請求項34】
添加する前記フィトステノールが、一種以上の遊離フィトステロール及びフィトスタノール(“遊離ステロール”)及び一種以上のエステル化フィトステロール及びフィトスタノール(“エステル化ステロール”)を含む組成物の形態にある請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、50(質量)%以上の遊離ステロールを含む請求項34に記載の方法
【請求項36】
一種以上のフィトステロール、フィトスタノール又は両方の混合物を含む調製された食品であって、ここで前記食品は、該食品を調製するための加工段階後及び消費前の貯蔵の間に、フィトステロール及び/又はフィトスタノールを含まない同一の食品と比較して減少した数の病原性及び/又は腐敗性微生物を含有するところの食品。
【請求項37】
前記微生物が、細菌、ウィルス、カビ及び酵母菌から成る群から選ばれる請求項36に記載の食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525976(P2007−525976A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551696(P2006−551696)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000151
【国際公開番号】WO2005/074726
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(501309163)フォーブス メディ−テック インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】