説明

香料組成物

【課題】 4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有する香料組成物、該香料組成物によって香気付された飲食品類、口腔用組成物、香粧品類及び医薬品類等の製品を提供する。
【解決手段】 4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物;該香料組成物よりなる飲食品用香料組成物、香粧品用香料組成物、医薬品類用香料組成物、口腔用組成物用香料組成物;該香料組成物によって香気付けされている香気付けした製品;該香料組成物を添加することによって他の香料組成物の香気を増強又は変調する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物、該香料組成物によって香気付された飲食品類、口腔用組成物、香粧品類及び医薬品類等の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種食品材料、食品添加物、飲食品(嗜好品を含む)、香粧品類、保険衛生材料、雑貨、医薬品類等の多様化に伴い、これらに用いる香料として従来にない新しい要望が高まり、嗜好性の高いユニークな香気を有した香料物質の開発が要求されてきている。特に最近、人々の自然志向が高まり、自然環境を特徴的にイメージするような、嗜好性の高いフルーティ様香料及びトロピカル様香料に関して、安全性の面からも、天然化合物由来、若しくは天然化合物と同一若しくは類似した新しい香料材料の開発が強く望まれていた。
【0003】
8−メルカプトメントンは、二つの不斉中心を有しており、光学異性体を含め計4種の異性体が存在する。これまでの研究においてBuchu油の精油成分として見出されており、天然物の絶対構造に関しては絶対構造既知であるd−プレゴン及びl−プレゴンから合成され、その旋光度から(1S,4R)−体が主成分であり、そのジアステレオマーである(1S,4S)−体も同時に検出されている。但し、その混合比については記載されていない(非特許文献1を参照)。
【0004】
また、これら4種のそれぞれについて合成法が確立され、官能評価が行われており、その結果、強さと香調により、いずれの異性体もそれぞれに特徴があることが報告されている。ここで、合成されたものは、天然体である(1S,4R)−体と(1S,4S)−体の混合比が43:57であり、非天然体である(1R,4S)−体と(1R,4R)−体の混合比が42:58である。(非特許文献2を参照)。
【0005】
これまでも、8−メルカプトメントンは香料として使用されてきている(特許文献1を参照)。しかしながら、これまで香料として使用されていた8−メルカプトメントンは、(1R)−体である。これは、天然から容易に安価で入手できるd−プレゴンを出発原料としているためであり、特許文献1においてもその参考例1で用いているプレゴンの旋光度が+22°であることからd−プレゴンであり、その混合比は、3:2である。また、参考例4においてイソプレゴン(α20=124.2°)を原料として8−メルカプトメントン(α20=−12.0°)をシス−トランス両混合物として得ている。但し、その混合比については不明である。
【特許文献1】特公昭49−24668号公報
【非特許文献1】J. Agric. Food Chem., 23(5), 943-50 (1975)
【非特許文献2】Z. Lebensm Unters Forsch., 194, 372-376 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多様化する賦香製品の要望を満足し得る嗜好性が高く優れた香料組成物を提供することにある。特に本発明は、4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有する香料組成物、該香料組成物によって香気付された飲食品類、口腔用組成物、香粧品類及び医薬品類等の製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、市場で汎用されている(1R)−8−メルカプトメントンとは異なるものであり、かつ天然由来からは容易にとりうることが困難であった、4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比率の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンが、創香性の高いユニークな香気を有し、他に使用する香料との調和性に優れていること、及びこれまで知られている天然あるいは加工飲食品由来の類似化合物では不充分であった深みのある質感やコク味を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の各発明を包含する。
【0008】
(1)4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【0009】
(2)化学純度が90%以上で且つ光学純度が90%e.e.以上であることを特徴とする(1)項記載の香料組成物。
【0010】
(3)上記(1)項又は(2)項に記載の香料組成物よりなる飲食品用香料組成物。
【0011】
(4)4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを10−5〜10ppb含有することを特徴とする(3)項記載の飲食品用香料組成物。
【0012】
(5)上記(1)項又は(2)項に記載の香料組成物よりなる香粧品用香料組成物。
【0013】
(6)4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを10−1〜10ppb含有することを特徴とする(5)項記載の香粧品用香料組成物。
【0014】
(7)上記(1)項又は(2)項に記載の香料組成物よりなる医薬品類用香料組成物。
【0015】
(8)上記(1)項又は(2)項に記載の香料組成物よりなる口腔用組成物用香料組成物。
【0016】
(9)上記(1)項〜(8)項のいずれか1項に記載の香料組成物によって香気付けされている香気付けした製品。
【0017】
(10)4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを10−8〜1ppb含有することを特徴とする飲食品類。
【0018】
(11)4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを10−4〜10ppb含有することを特徴とする香粧品。
【0019】
(10)製品がフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤又は雑貨から選ばれる1種である(9)項記載の香気付けした製品。
【0020】
(11)他の香料組成物に4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを添加することを特徴とする香料組成物の香気を増強又は変調する方法。
【0021】
(12)上記の他の香料組成物が、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料から選ばれる1種であることを特徴とする(11)項記載の香料組成物の香気を増強又は変調する方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを添加することにより、嗜好性の高いミーティ−、グリーン、グレープフルーツ、キャティ−、フローラル様な特有の強い香気・香味組成物が得られる。この組成物は、香料あるいは各種食品材料、食品添加物、飲食品、香粧品類、保険衛生材料等の香気付組成物として広い範囲に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
8−メルカプトメントンは、シクロヘキサン部位の1位及び4位が不斉炭素原子である化合物である。具体的には、(1S,4R)−8−メルカプトメントン、(1S,4S)−8−メルカプトメントン、(1R,4S)−8−メルカプトメントン及び(1R,4R)−8−メルカプトメントンがある。
本発明は、4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の比率の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有すること特徴とする香料組成物である。
【0024】
上記の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンのS体/R体の特定比率の混合物は、いずれも強く新鮮なパッションフルーツ様な特有な強い香気を示す。本発明で用いる光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンのS体/R体の特定比率の混合物は、極めて少量であっても効果を発揮するため、香料の賦香を必要とする各種飲食品及び香粧品類の基材に対して匂い付けをすることができる。なお、1位の立体の異なる(1R)−8−メルカプトメントンは、ゴム臭を伴うため効果が充分とは言えない。また、(1S)−8−メルカプトメントンにおいても、立体がS体/R体の混合比が65:35〜95:5から外れた比率の混合物は、匂い強度的に劣り効果が充分とは言えない。さらに好ましくはS体/R体の混合比は、70:30〜90:10の比率の範囲である。
また、光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの化学純度は90%以上であればよく、好ましくは95%以上であり、さらに光学純度は90%e.e.以上であればよく、好ましくは95%e.e.以上である。
【0025】
本発明で用いられる光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンのS体/R体の特定比率の混合物は、天然物から抽出して得たものを利用することもできるし、また化学的合成方法により得たものを利用することもできる。本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを多量に取得するためには化学的合成方法を用いて得たものを利用することが好ましい。本発明の(1S)−8−メルカプトメントンは、光学活性なl−プレゴンに硫化水素を付加することにより得ることができる下式で表される化合物である。
【0026】
【化1】

【0027】
しかしながら、天然に見出されるプレゴンはほとんど全てd−プレゴンであるので、本発明の(1S)−8−メルカプトメントンを製造するためには、光学活性なl−プレゴンを多量に合成する方法が必要とされる。
光学活性なl−プレゴンの製造方法としては、下記反応式で表されるように、l−シトロネラール(例えば、高砂香料工業株式会社製)を出発原料として、まず、ルイス酸による環化反応に付し、d−イソプレゴールとし、得られたd−イソプレゴールを、例えば、銅−亜鉛−アルミニウム触媒の共存下、脱水素反応と共に二重結合の異性化を行うことにより光学活性なl−プレゴンを得ることができる。
【0028】
【化2】

【0029】
また、下式で表されるように、ピペリテノンを不斉水素化することによっても光学活性なl−プレゴンを得ることができる(特開2002−30009号公報参照)。
【化3】

【0030】
かくして得ることができる光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンは、(1S,4R)−8−メルカプトメントンと(1S,4S)−8−メルカプトメントンとの混合物である。
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置が、S体/R体の特定比率の混合物は、上記のようにして得られる(1S)−8−メルカプトメントンについて、通常の分離精製法(例えば、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の方法)を適用することによって得ることができる。例えば、4位の立体がS体/R体の混合比が65:35〜95:5の比率の範囲、化学純度90%以上、光学純度90%e.e.以上である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを得る方法としては、蒸留によって目的とする比率で混留してくる留分を分取する方法がある。
【0031】
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置が、S体/R体の混合物は強く新鮮なパッションフルーツ様な特有の強い香気を示す。本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置がS体/R体の混合物は、少量で効果を発揮するため、香料の賦香を必要とする各種飲食料品及び香粧品類の基材に対して匂い付けを可能とする。なお、1位の立体の異なる(1R)−8−メルカプトメントンは、ゴム臭を伴ない効果が充分とは言えないし、また、(1S)−8−メルカプトメントンであっても、4位の立体配置のS体/R体の混合比が65:35〜95:5から外れた比率の混合物は、匂い強度的に劣り効果が充分とは言えない。さらに好ましくはS体/R体の混合比は、70:30〜90:10の比率の範囲である。
また、光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの化学純度は90%以上であればよく、好ましくは95%以上であり、さらに光学純度は90%e.e.以上であればよく、好ましくは95%e.e.以上である。
【0032】
さらに、本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置が、S体/R体の混合物は嗜好性の高い強く新鮮なパッションフルーツ様の特有の強い香気特性を有し、また顕著な香気持続性及び安定性を有し、これを配合することにより嗜好性の高い香気・香味組成物を提供することができる。さらに、本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置が、S体/R体の混合物を配合することにより、所望の芳香持続、残香性の作用効果は特に高められる。
【0033】
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置がS体/R体の混合物に、通常使用されている香料成分をさらに添加した香気・香味組成物も香気成分及び香味成分として使用できる。添加使用することができる他の香料としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などが挙げられ、特にフローラルグリーン系の香料組成物が好ましいが、例えば、「Arctander S.,“Perfume andFlavor Chemicals”,published by the author,Montclair,N.J.(U.S.A.)1969年」に記載されているような広い範囲の香料成分を使用することができる。代表的なものとしては、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ムスコン、テサロン(高砂香料工業株式会社)などがある。
【0034】
具体的には、本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置がS体/R体の混合物を、例えば、ベルガモット油、ガルバナム油、レモン油、ゼラニウム油、ラベンダー油、マンダリン油等の天然精油中に添加すると、天然精油が本来有する香気・香味にマイルドでこくがあり、新鮮な、嗜好性の高い、且つ拡散性、保留性を高めた持続的性のある新規な香料組成物を調製することができる。
【0035】
更に、例えば、各種合成香料、天然香料、天然精油、柑橘油、茶エキス、動物性香料等から調製される、例えば、ストロベリー、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、アップル、パイナップル、バナナ、メロン、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の如き飲食品用香料組成物に添加するとマイルドでこくのある天然らしさがあるフルーティ様、トロピカル様香気を付与し、更に、新鮮な、嗜好性の高い香気を付与し、且つ拡散性、保留性を高めた持続性の強調された香料組成物が調製できる。
【0036】
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体配置がS体/R体の混合物の香料組成物への配合量は、その調合香料の種類や目的により異なるが、一般的には、香粧品用香気・香味組成物においては、例えば、組成物中において10-1〜106ppb、好ましくは1〜10ppbとなる配合量であり、また、飲食品用香気・香味組成物においては、例えば、組成物中において10-5〜103ppb、好ましくは10-4〜10ppbとなる配合量が適当である。
【0037】
また、通常使用される他の香料保留剤の1種又は2種以上を配合しても良く、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド等と併用することも可能である。
【0038】
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントン単独あるいは該化合物を含む香料組成物及びフレーバー組成物を、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、雑貨;又は、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類に、そのユニークな香気香味を付与できる適当量を配合した、香気を付与した製品及びフレーバー付けした製品を提供できる。
【0039】
例えば、フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、など;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落とし、など;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバー、など;頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤、など;日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品、など;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料、などを挙げることができる。
【0040】
ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、など;石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸、など;身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ、など;浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド、等)、フォームバス(バブルバス、等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル、等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブ、などを挙げることができる。
【0041】
洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸、など;柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアー、など;洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤、など;台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤、など;漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤、等)、光学的漂白剤、など;エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレー、など;消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ、など;雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、などの種々の形態を挙げることができる。
【0042】
また、例えば、飲食品類としては、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓;和・洋菓子類、ジャム類、キャンディー類、ゼリー類、ガム類、パン類、コーヒー類、ココア類、紅茶類、ウーロン茶類、緑茶類の如き嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類、風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類など;口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;医薬品類としては、ハップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤、などの種々の形態を挙げることができる。
【0043】
本発明の光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンをフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、雑貨;又は、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類などに使用する場合、このままの状態、或いはこれらを、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解した液体状態;アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類と混合した状態;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤で乳化した乳化状態;アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜させた粉末状態;界面活性剤、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いて可溶化或いは分散化した可溶化状態或いは分散化状態;又はカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセル状態など;その目的に応じて任意の形状を選択して用いられている。
【0044】
さらに、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、上記香料組成物・フレーバー組成物を安定化且つ徐放性にして用いることもある。これらは、最終製品の形態、例えば、液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などに適したもので適宜に選択して用いられる。
なお、最終製品であるフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、雑貨、等への本発明の(1S)−8−メルカプトメントンの添加量は、それぞれ場合において期待される効果・作用に応じて任意に加減される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させることは可能である。
なお、下記に記載する処方においては、特に言及しない限り、%は質量%、部は質量部を意味するものとする。
【0046】
本実施例中の分析は、次の分析機器を用いて行った。
<旋光度>
機器:DIP−370(日本分光工業株式会社製)
<プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)>
機器:AM−400型(400MHz)(ブルッカー社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン
<赤外吸収スペクトル(IR)>
機器:Nicolet Avatar360 FT−IR(ニコレージャパン株式会社製)<質量スペクトル(MS)>
機器:M−80B質量分析計(イオン化電圧:20eV)(株式会社日立製作所製)
<ガスクロマトグラフ>
機器:HP−5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:PEG BC−WAX(0.25mm×50m)(ジーエルサイエンス株式会社製)
【0047】
合成例1:l−シトロネラールからl−プレゴンの合成
(1)d−イソプレゴールの合成
アルゴン気流下、300ml反応容器に臭化亜鉛1.44gを加え、次いでl−シトロネラール100g及びトルエン50mlを加えた後、110℃で17時間撹拌した。反応終了後、4%苛性ソーダ水50mlを加えた後、分液し、トルエンを留去した後、蒸留することにより、無色油状物としてd−イソプレゴール71gを得た。
(2)l−プレゴンの合成
(1)で得られたd−イソプレゴール50gを、銅−亜鉛−アルミニウム触媒200mgの共存下、150℃で8時間撹拌して、脱水素反応と共に二重結合の異性化を行うことによりl−プレゴン40g(収率81%)で得た。
【0048】
合成例2:ピペリテノンからl−プレゴンの合成
500mlのオートクレーブに、ピペリテノン150g(1mol)、Bis(1,5-cyclooctadiene)rhodium (I) hexafluorophosphate〔ビス{1,5−シクロオクタジエン}ロジウム(I)ヘキサフルオロリン酸塩(以下、[Rh(cod)]PFとする)18.6mg(0.04mmol)、(R)-(4,4'-Bi-1,3-benzodioxiol)-5,5'-diylbis(di(3,5-di-tert-butyl-4-methoxyphenyl)phosphine)〔(R)−(4,4‘−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5,5’−ジイルビス(ジ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、以下、(R)−DTBM−SEGPHOSとする〕47.2mg(0.04mmol)、tetramethylenebis(triphenylphosphoniumu bromide)〔テトラメチレンビス(トリフェニルホスホニウムブロミド)、以下、BrPPh(CHPPh3Brとする〕14.8mg(0.02mmol)、酢酸エチル7.5mlを加え、水素圧3MPa、50℃で20時間反応した。反応終了後、水素をパージし、反応溶液を濃縮、減圧下蒸留を行い、l−プレゴンを136.8g得た。収率90%。
【0049】
合成例3:l−プレゴンから(1S)−8−メルカプトメントンの合成
温度計とガス導入管を取り付けた反応器に、合成例1又は合成例2で得たl−プレゴン(3g、23mmol)と塩化メチレン(30ml)を仕込み、そこに無水塩化アルミニウム(612mg、0.2当量)を加えた後、ガス導入管より硫化水素ガスを3時間吹き込んだ。反応終了後、反応混合物の一部を取り、ガスクロマトグラフにて転化率を測定したところ、100%であった。
反応混合物から窒素により残留硫化水素を追い出した後、定法通り、希塩酸処理、水洗を経て、濃縮することにより粗生成物を得た。
得られた粗生成物を減圧蒸留(95℃/600Pa)することにより、純度96%の標記化合物2.8g(収率65%)を得た。
このものの4位の立体のS体とR体の比率は60:40であった。ここで得た4位の立体のS体/R体が60/40の(1S)−8−メルカプトメントン1.0gを、分取ガスクロマトグラフ装置を用いてリサイクル法によって精製した。
【0050】
(1S,4S)−8−メルカプトメントン(トランス体):
[α]20 +29.6°(c=1.5、CHOH)
MS(m/z):153(-SH)
IR (neat): 1709, 2583cm-1
1H-NMR (CDCl3, δppm): 0.96(3H, d), 1.40(3H, s),1.45(3H, s), 2.35(1H, s)
【0051】
(1S,4R)−8−メルカプトメントン(シス体):
[α]20 −43.5°(c=1.3、CHOH)
MS(m/z):153(-SH)
IR (neat): 1709, 2583cm-1
1H-NMR (CDCl3, δppm): 1.02(3H, d), 1.40(6H, s), 2.30(1H, s)
【0052】
合成例4:(1S)−8−メルカプトメントンの4位の立体のS体/R体の混合物の調製
合成例3で得られた4位の立体のS体/R体が60/40の(1S)−8−メルカプトメントン2.8gを減圧下にて前留分と後留分をカットし、主留分を沸点90℃/200Paで分留し、4位の立体のS体/R体が75/25の質量比である(1S)−8−メルカプトメントン2.0gを得た。
【0053】
合成例5:d−シトロネラールからd−プレゴンの合成
(1)l−イソプレゴールの合成
アルゴン気流下、300ml反応容器に臭化亜鉛1.44gを加え、次いでd−シトロネラール100g及びトルエン50mlを加えた後、110℃で17時間撹拌した。反応終了後、4%苛性ソーダ水50mlを加えた後、分液し、トルエンを留去した後、蒸留することにより、無色油状物としてl−イソプレゴール71gを得た。
(2)d−プレゴンの合成
(1)で得られたl−イソプレゴール50gを、銅−亜鉛−アルミニウム触媒200mgの共存下、150℃で8時間撹拌して、脱水素反応と共に二重結合の異性化を行うことによりd−プレゴン43g(収率87%)で得た。
【0054】
合成例6:ピペリテノンからd−プレゴンの合成
500mlのオートクレーブに、ピペリテノン150g(1mol)、[Rh(cod)]PF 18.6mg(0.04mmol)、(S)−DIBM−SEGPHOS 47.2mg(0.04mmol)、BrPPh(CHPPhBr 14.8mg(0.02mmol)、酢酸エチル7.5mlを加え、水素圧3MPa、50℃で20時間反応を行った。反応終了後、水素をパージし、反応溶液を濃縮、減圧下蒸留を行い、d−プレゴンを136.8g得た。収率90%。
【0055】
合成例7:d−プレゴンから(1R)−8−メルカプトメントンの合成
温度計とガス導入管を取り付けた反応器に、合成例5で得たd−プレゴン(3g、23mmol)と塩化メチレン(30ml)を仕込み、そこに無水塩化アルミニウム(612mg、0.2当量)を加えた後、ガス導入管より硫化水素ガスを3時間吹き込んだ。反応終了後、反応混合物の一部を取り、ガスクロマトグラフにて転換率を測定したところ、100%であった。
反応混合物を窒素により残留硫化水素を追い出した後、定法通り、希塩酸処理後、水洗を経て、濃縮することにより粗生成物を得た。
得られた粗生成物を減圧蒸留(95℃/600Pa)することにより、純度96%の標記化合物3g(収率70%)を得た。
このもののトランス体とシス体の比率は60:40であった。ここで得たトランス体/シス体が60/40の(1R)−8−メルカプトメントン1.0gを、分取ガスクロマトグラフ装置を用いてリサイクル法によって精製した。
【0056】
(1R,4R)−8−メルカプトメントン(トランス体):
[α]20 −29.7°(c=1.2、CHOH)
MS(m/z):153(-SH)
IR (neat): 1709, 2583cm-1
1H-NMR (CDCl3, δppm): 0.96(3H, d), 1.40(3H, s),1.45(3H, s), 2.35(1H, s)
【0057】
(1R,4S)−8−メルカプトメントン(シス体):
[α]20 +43.3°(c=1.1、CHOH)
MS(m/z):153(-SH)
IR (neat): 1709, 2583cm-1
1H-NMR (CDCl3, δppm): 1.02(3H, d), 1.40(6H, s), 2.30(1H, s)
【0058】
合成例8:(1R)−8−メルカプトメントンの4位の立体のR体/S体の混合物の調製 合成例7で得られた4位の立体のR体/S体が60/40の(1R)−8−メルカプトメントン2.8gを減圧下にて前留分と後留分をカットし、主留分とを沸点90℃/200Paで分留し、4位の立体のR体/S体が75/25の(1R)−8−メルカプトメントン2.0gを得た。
【0059】
実施例1
<香気質の評価>
前記各合成例で得た8−メルカプトメントンに関して、瓶口及び濾紙につけたものを経験5年以上を有する調香師7名により官能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
以上のように、(1R)−メルカプトメントンのゴム的で雑な臭気の弱点を排除し、(1S,4R)及び(1S,4S)−メルカプトメントンの双方の好ましい特徴を引き出し、両特徴を併せ持つ本発明化合物は強く新鮮なパッションフルーツを想起させ、きれいで瑞々しい嗜好性の高い特有な強い香気を有していた。
【0062】
実施例2
緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100部に対し、合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンの1ppbエタノール溶液を0.1部の割合で加えて、該(1S)−8−メルカプトメントンを0.001ppb含有する本発明の緑茶飲料を得た。このものは苦味及び渋みが軽減し、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持ったものであった。
【0063】
実施例3
(1)緑茶葉1Kgに温度90℃のお湯30リットルを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液を100倍の濃度に濃縮して、緑茶飲料用香味組成物を調製した。
(2)上記(1)で得られた緑茶用香味組成物100部に対し、合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンの10ppbエタノール溶液を0.002部加えて、該(1S)−8−メルカプトメントンを0.0002ppbを含有する本発明の茶飲料用の香味組成物を製造した。
(3)上記(2)で得られ香味組成物を、緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100部に対し1部の割合で添加して、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを添加含有する緑茶飲料〔(1S)−8−メルカプトメントンの濃度:約0.000002ppb〕を製造した。これにより得られた緑茶飲料は、緑茶独特の苦味及び渋みが軽減し、入れ立ての茶が持つ柔らかくふくよかなグリーン香を持った緑茶飲料であり、しかも24時間経過後も、その良好な香気が失われずに維持されていた。
【0064】
実施例4〜5、比較例1〜2
(1)下記の表2に示す緑茶飲料用の香味組成物において合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを加えて、(1S)−8−メルカプトメントンを0.10ppbの濃度で含有する実施例4の香味組成物を調整した。
また、上記(1S)−8−メルカプトメントンを加えないものを比較例1とした。
【0065】
【表2】

【0066】
(2)緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100部に、上記(1)で得られた香味組成物(実施例4、比較例1の香味組成物)を0.1部の量で加えて、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを0.001ppbの濃度で含有する緑茶飲料(実施例5)及び(1S)−8−メルカプトメントンを加えない緑茶飲料(比較例2)を製造した。
(3)上記(2)で得られた両緑茶飲料を、7人の専門パネラーによる官能比較評価を行った。その結果、添加した実施例5のものは比較例2のものには無い深みのある緑茶独特のコクが付与されているとパネラー全員が判定した。
【0067】
実施例6
ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100部に対し、合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンの10ppbエタノール溶液を0.002部の量で加え、該(1S)−8−メルカプトメントンを0.0002ppb含有する本発明のウーロン茶飲料を得た。このものは熟成感を伴い、深みのあるウーロン茶葉様のイメージする香気を持ったものであった。
【0068】
実施例7
(1)ウーロン茶葉1Kgに温度100℃のお湯30リットルを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液を100倍の濃度に濃縮して、ウーロン茶飲料用の香味組成物を調整した。
(2)上記(1)で得られた香味組成物100部に対して、合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンの10ppbエタノール溶液を0.002部加え、該(1S)−8−メルカプトメントンを0.0002ppbの濃度で含有する本発明のウーロン茶飲料用の香味組成物を製造した。
(3)ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100部に、上記(2)で得られた香味組成物1部を添加して、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを約0.000002ppbの濃度で含有するウーロン茶飲料を製造した。このウーロン茶飲料は、熟成感を伴い、深みのあるウーロン茶葉様をイメージする香気を有していた。しかも、24時間経過後も、その良好な香気が失われずに維持されていた。
【0069】
実施例8、比較例3
(1)下記の表3に示すウーロン茶飲料用の香味組成物において合成例4で得られた4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを加えて、該(1S)−8−メルカプトメントンを0.10ppbの濃度で含有する実施例8の香味組成物を調整した。また、該(1S)−8−メルカプトメントンを加えないものを比較例3とした。
【0070】
【表3】

【0071】
(2)ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100部に、上記(1)で得られた香味組成物(実施例8、比較例3の香味組成物)を0.1部の量で加えて、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを1ppbの濃度で含有するウーロン茶飲料(実施例9)及び前記(1S)−8−メルカプトメントンを加えない比較例4のウーロン茶飲料を製造した。
(3)上記(2)で得られたウーロン茶飲料を、7人の専門パネラーによる官能比較評価を行った。その結果、前記(1S)−8−メルカプトメントン添加した実施例9のものは比較例4のものには無い深みのあるウーロン茶独特のコクが付与されていたとパネラー全員が指摘した。
【0072】
実施例10
(1)この実施例10では、下記の表4に示す抹茶プリン用配合を用いて、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを添加含有させた抹茶プリンを製造した。
【0073】
【表4】

【0074】
(2)上記の表4に示した抹茶プリン用の配合のうち、砂糖、脱脂粉乳、抹茶、ゲル化剤及び乳化剤を予め粉体混合しておき、ホイップクリーム(植物性脂肪分40%)、全脂加糖練乳及び水の混合物に加えて、80℃で10分間加熱撹拌溶解し、次いで、残りの原料を混合した後、水にて全量を100部に補正し、14700kPaにて均質化し、容器に充填後、冷却固化して抹茶プリンを製造した。それにより得られた抹茶プリンは、熟成感を伴い、深みのある茶葉をイメージする香気を有する抹茶プリンであった。
【0075】
実施例11
<グレープフルーツフレーバー組成物の製造>
以下に示す処方でグレープフルーツフレーバーを製造し、合成例4で合成した4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントンを極微量添加したものを、無添加の比較例5と7人の専門パネラーによる官能比較評価を行った。
その結果、添加した実施例11のものには、比較例5のものには無いナチュラルな深みのある瑞々しさが付与されていたとパネラー全員が判定した。
【0076】
【表5】

【0077】
実施例12
<シャンプー用香料組成物の製造>
【表6】

【0078】
* 安息香酸ベンジル
** ジプロピレングリコール
【0079】
比較例6
実施例12の処方において、(1S)−8−メルカプトメントン10ppmDPG溶液の代わりにジプロピレングリコールを用いる以外には実施例12と同じ処方によりシャンプー用香料組成物を調製した。
【0080】
応用例1
<シャンプーの製造>
実施例12及び比較例6で調製したシャンプー用香料組成物を用い、下記成分を80℃にて均一になるまで加熱撹拌し、その後35℃まで冷却しシャンプーを調製した。
【0081】
[シャンプー組成物]
【表7】

【0082】
実施例12と比較例6の香料組成物を使用したものの評価結果
実施例12と比較例6との香料組成物を使用したものを比較評価した結果、前記(1S)−8−メルカプトメントンを含む実施例12の処方に基づく香料組成物を使用したシャンプーは、比較例6のシャンプ−にはない、拡散性に優れ、フレッシュでナチュラル感が付与されているとパネラー全員が判定した。
【0083】
実施例13、比較例7
<ボディ−シャンプー用香料組成物の製造>
【0084】
下記処方例2に示すように、4位の立体のS体/R体の混合比が75:25である(1S)−8−メルカプトメントン10ppmDPG(ジプロピレングリコール)溶液を用いて実施例13のボディーシャンプー用香料組成物を調製した。また、(1S)−8−メルカプトメントン10ppmDPG溶液の代わりにジプロピレングリコールを用いる以外には実施例13と同じ処方により比較例7のボディーシャンプー用香料組成物を調製した。
[処方例2]
【表8】

【0085】
応用例2
<ボディシャンンプーの製造>
実施例13及び比較例7の香料組成物を用い、下記組成のボディシャンプーを調製した。
【0086】
[ボディシャンプー組成物]
【表9】

【0087】
<実施例13と比較例7の香料組成物を用いたものの評価結果>
実施例13と比較例7との香料組成物を用いて製造したボディシャンプーを評価した結果、(1S)−8−メルカプトメントンを含む実施例13の処方に基づく香料組成物を使用したボディシャンプーには、比較例7のものにはない爽やかさがアップしたシトラス感が付与されているとパネラー全員が判定した。
【0088】
実施例14
<香水用香料組成物の製造>
[処方例3]
【表10】

【0089】
比較例8
実施例14の処方において、(1S)−8−メルカプトメントン10ppmDPG溶液の代わりにジプロピレングリコール(DPG)を用いる以外には実施例14と同じ処方により香水用香料組成物を調製した。
【0090】
応用例3
<化粧クリームの製造>
実施例14及び比較例8で調製した香水用香料組成物を用い、化粧クリームを調製した。
【0091】
[化粧クリーム]
【表11】

【0092】
<実施例14と比較例8の香料組成物を使用したものの評価結果>
実施例14の香料組成物を使用している化粧クリームには、比較例8のものを使用しているものにはない非常に拡散性のあるナチュラル感が付与されているとパネラー全員が判定した。
【0093】
実施例15、比較例9
<トロピカルフルーツ調香料>
【0094】
[トロピカルフルーツ調香料]
【表12】

【0095】
上記組成のトロピカルフルーツ調香料に、合成例4の75:25の(1S)−メルカプトメントン0.001%を加えた実施例15のものと、上記組成のトロピカルフルーツ調香料に、合成例7の75:25の(1R)−メルカプトメントン0.001%を加えたものを比較した結果、合成例4のものを添加した実施例15のトロピカルフルーツ香料は、爽やかなトロピカルフルーツ特有のトップノートの拡散性がアップし、ナチュラルな甘酸っぱさが強調されているとパネラー全員が判定した。
一方、合成例7の75:25の(1R)−メルカプトメントンを用いた場合比較例9のものはフレーバーの立ちが悪く、ナチュラル感に欠け、オイリーで全体に暗いトーンとなり沈んだ感じがしたとパネラー全員が判定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項2】
化学純度が90%以上で且つ光学純度が90%e.e.以上であることを特徴とする請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の香料組成物よりなる飲食品用香料組成物。
【請求項4】
4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを、10−5〜10ppb含有することを特徴とする請求項3記載の飲食品用香料組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の香料組成物よりなる香粧品用香料組成物。
【請求項6】
4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを、10−1〜10ppb含有することを特徴とする請求項5記載の香粧品用香料組成物。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の香料組成物よりなる医薬品類用香料組成物。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の香料組成物よりなる口腔用組成物用香料組成物。
【請求項9】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の香料組成物によって香気付けされている香気付けした製品。
【請求項10】
4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを、10−5〜1ppb含有することを特徴とする飲食品類。
【請求項11】
4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを、10−4〜10ppb含有することを特徴とする香粧品。
【請求項12】
製品がフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤又は雑貨から選ばれる1種である請求項9記載の香気付けした製品。
【請求項13】
他の香料組成物に4位の立体のS体/R体の混合比が65:35〜95:5の質量比の範囲である光学活性な(1S)−8−メルカプトメントンを添加することを特徴とする香料組成物の香気を増強又は変調する方法。
【請求項14】
上記の他の香料組成物が、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料から選ばれる1種であることを特徴とする請求項13記載の香料組成物の香気を増強又は変調する方法。


【公開番号】特開2006−225643(P2006−225643A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9933(P2006−9933)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】