説明

駆動伝達機構及びこの駆動伝達機構を備えた画像形成装置

【課題】被回転駆動部材と、回転駆動部材とが動力連結するためのカップリングの容易な着脱性を実現しつつ、このカップリングで発生する振動を低減し、且つ、耐久性を確保することが可能な駆動伝達機構、及びこの駆動伝達機構を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転駆動軸に設けられる回転駆動部材の回転駆動突起と、被回転部材の被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材の被回転駆動突起とで動力連結する駆動伝達機構において、回転駆動突起及び回転駆動部材との間、又は、被回転駆動突起及び被回転駆動部材との間のいずれかに、回転駆動突起及び回転駆動部材と、又は、被回転駆動突起及び回転駆動部材と、一体的に構成される変形連結部が設けられ、この変形連結部は、回転駆動突起が被回転駆動突起と接触する際に、回転駆動部材又は被回転駆動部材に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されていて、且つ、弾性部材で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、又は、これらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置の改良に関し、より具体的には、画像形成装置で用いられる感光体ドラム、現像スリーブ、現像剤攪拌スクリューなどの被回転部材に、回転駆動源からの駆動力を伝達するための駆動伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ、又は、これらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置では、近年、フルカラー画像を形成したいとの需要が非常に高い。このようなフルカラー画像形成装置では、従来から様々な作像形式のものが知られているが、例えば、1つの感光体のまわりに複数のトナー色に対応する現像装置を備え、これら現像装置を用いて各色のトナー像を1つの感光体に付着させて合成トナー像を形成し、この合成トナー像を記録紙などの記録媒体に転写する所謂1ドラム型のものが知られている。また、その他にも、各トナー色数に対応する数の複数の感光体を備え、この感光体それぞれに個別に現像装置を配置し、各感光体上に単色のトナー像を形成した後に、順次これらのトナー像を転写する所謂タンデム型のものも知られている。1ドラム型とタンデム型とを比較すると、1ドラム型は、画像形成装置に用意する感光体が1つでよいことから、比較的に画像形成装置の小型化が容易であり、コストも低減しやすいとの長所があるが、その一方で、1つの感光体を用いて複数回の画像形成動作を実施する必要があることから、画像形成の高速化に対して問題がある。逆に、タンデム型は、大型化してしまう傾向があったり、製造コストの面で欠点があるものの、画像形成の高速化がしやすいという長所を有する。最近のユーザーは、フルカラーの画像形成装置であっても、モノクロ(単色)の画像形成装置と同等の画像形成速度を望んでいるため、タンデム型が注目されている。
【0003】
また、タンデム型の画像形成装置には、図1及び図2に概略で示すような、フルカラー画像形成に必要なトナー数に対応する数の感光体ドラム1(Y、C、M、K)それぞれに形成されたそれぞれのトナー像を、一旦、順次タイミングを併せて1次転写手段によって中間転写ベルト等の中間転写体15に1次転写した後、この中間転写体15に形成されたフルカラートナー像を2次転写手段を用いて記録媒体99に一括して2次転写する中間転写方式のものと、この中間転写方式のものとは相違して、図3及び図4に概略で示すような、記録媒体搬送ベルト60などで構成される記録媒体搬送経路を搬送されてくる記録媒体99に、各感光体ドラム1(Y、C、M、K)上に形成されたトナー像を直接的に順次転写していく直接転写方式のものとが知られている。これらの直接転写方式と中間転写方式とを比較すると、直接転写方式は、中間転写方式に比べ中間転写体15などを必要としないため、部品点数が少なくコスト的に長所があるものの、感光体ドラム1(Y、C、M、K)上に形成された各色トナー像を記録媒体99に対して順次直接的に転写していくため、搬送される記録媒体99が何らかの要因で位置変動してしまうと、形成されるべき画像に対して各色トナー像がずれてしまうという欠点を有している。一方で、中間転写方式では、部品点数が多くなるためコスト的には欠点となるが、2次転写位置を比較的自由に設置することが可能であることから、画像形成装置自体の設計自由度があがり、加えて、搬送される記録媒体99の位置が変動したとしても、既に各色トナー像を中間転写体15で合致させているため、形成されるべき画像がずれないという長所を有している。
【0004】
このように様々なタイプの画像形成方式を有する画像形成装置が知られているが、これらいずれの画像形成方式においても、感光体ドラム1(Y、C、M、K)あるいは現像スリーブ2(Y、C、M、K)、さらには現像剤攪拌スクリューなどの回転駆動力を付与されて、回転させられる被回転部材が存在すること、及び、近年画像形成装置の高画質化が進んできていることから、以前にもまして高画質化を要求する使用者が増えてきていることは共通している。また、この種の被回転部材は、メンテナンスや部品交換などを行うために着脱することが可能なように構成されるのが一般的であり、そのため、これら被回転部材に設けられた被回転駆動部材と着脱自在に構成されてカップリングする回転駆動部材とを有する駆動伝達機構が用いられるのが一般的である。
【0005】
ここで、先に記述したような着脱可能な被回転部材を使用して画像形成を行う画像形成装置の場合、より詳しくは、回転駆動源からの回転駆動力を伝達されて回転する回転駆動軸に設けられる回転駆動部材と、この回転駆動部材にカップリングして動力連結される被回転駆動部材であって、被回転部材の被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材とが着脱自在に構成される駆動連結機構を用いて、画像形成に必要な被回転部材の回転駆動を行う画像形成装置の場合においては、一般にバンディング(ジター)と称される画像ずれに起因する画像劣化が問題になっており、このバンディングは、回転駆動部材と、これにカップリングする被回転駆動部材との間で発生する振動によって生じてしまうことがわかっている。先に記述したように、近年では高画質化を要求する使用者が増えてきていることから、この振動をより低減することが求められている。
【0006】
この種の振動が生じてしまう大きな原因の一つとしては、回転駆動部材と、この回転駆動部材にカップリングする被回転駆動部材とを動力連結させる際に、これら部材間における回転軸中心を正確に合致乃至位置合わせすることができないことが挙げられる。例えば、一例として被回転部材である現像スリーブ2(Y、C、M、K)をあげると、当該現像スリーブには、これを製造する際の製造公差が存在したり、また、この現像スリーブを画像形成装置側に取付ける際にも取付公差が発生する。したがって、これら公差により、現像スリーブを回転させるために当該現像スリーブの被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材を、駆動源からの回転駆動力を受けて回転する回転駆動軸に設けられる回転駆動部材と正確に位置合わせするのは、事実上非常に困難である。また、これら部材間のカップリングを達成して動力連結させるために、被回転駆動部材及び回転駆動部材にそれぞれ設けられる被回転駆動突起及び回転駆動突起であって、互いに側面で接触する被回転駆動突起及び回転駆動突起とに関しても、それら部材が固有に有する製造公差や、これらを回転駆動部材又は被回転駆動部材に取付ける乃至組み付ける際の製造公差などが存在している。これらの公差のばらつきによってもまた、回転駆動部材と被回転駆動部材とが動力連結する際に、これらの間の回転軸中心はずれてしまう。
【0007】
この回転軸中心がずれることに起因して、回転駆動突起及び被回転駆動突起とで構成される回転駆動力を伝達するためのカップリングでは、例えば、図9に示すように、実際には360°の一回転毎に駆動を伝達している突起が異なって、乃至、切り替わるという現象が生じている。この回転駆動伝達用の回転駆動突起及び被回転駆動突起らが切り替わる際には、これら突起の間で、接触及び離間が行われるため、少なからず衝撃が発生し、この衝撃が各構成部材や画像形成装置本体などを伝播して、バンディングなどを発生させる振動として現れ、形成されるべき画像の劣化を引き起こすことになる。
【0008】
このような振動発生に起因するバンディングによる画像の劣化は、従来から問題視されており、この種の振動を低減させるための技術が種々考え出されてきている。例えば、特許文献1には、回転駆動力を動力連結するためにカップリングする部材間に設けられた突起部分自体に弾性体をまきつけることで、当該カップリングで生じる振動を低減する構成が開示されている。しかしながら、この構成では、被回転駆動部材側に設けられた突起部分とカップリングする、回転駆動部材側に設けられた突起部分自体に、(あるいはその逆に、)弾性体を設けているため、例えば、メンテナンスなどにより着脱することを前提として構成されている現像スリーブなどの被回転部材では、取り外し後に改めて当該被回転部材を取付ける際には、一方の突起部分と、これとカップリングする他方の突起部分の弾性体とが衝突することが考えられ、これらが衝突すれば、弾性体は変形し、さらには、変形した状態を維持したままでカップリングが行われてしまうという不具合が発生することが考えられる。弾性体が変形したままで取付けられてしまえば、当然ながら適切に振動を防止することができなくなるだけでなく、新たな振動の発生源にもなりかねない。
【0009】
また、特許文献2には、回転駆動部材と被回転駆動部材が動力連結のためにカップリングする爪部の形状にバネ性を持たせることで振動を低減する構成が開示されている。しかしながら、この構成では、形状によりバネ性を持たせた爪部におけるヒンジ部が常に回転駆動力を受けることになり、その結果、このカップリングに回転駆動力を付与・停止乃至解除したりすることで発生する繰り返し加重による耐久性に問題が生じてしまうことが考えられる。
【0010】
さらに、特許文献3には、回転駆動力を伝達するための駆動力伝達経路の途中にカップリング部材を配置し、当該カップリング部材が連結する連結部において、この連結部に直接的に弾性体を配置することで、振動を低減する構成が開示されている。しかしながら、この構成では、カップリング部の着脱が非常に困難であり、感光体ドラムや現像スリーブなどの設計当初から着脱することが予定されている被回転部材に対しては、適用することが難しいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、被回転部材の被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材の被回転駆動突起と、駆動源からの回転駆動力を伝達されて回転する回転駆動軸に設けられる回転駆動部材の回転駆動突起とがカップリングして接触することで、動力連結する駆動伝達機構において、このカップリングの容易な着脱性を実現しつつ、このカップリングで発生する振動を低減することが可能な駆動伝達機構であって、当該カップリングの耐久性を確保することが可能な駆動伝達機構、及びこの駆動伝達機構を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、
駆動源からの回転駆動力を伝達されて回転する回転駆動軸と、
前記回転駆動軸に設けられる回転駆動部材と、
前記回転駆動部材とカップリングする被回転駆動部材であって、前記回転駆動力を被回転部材に伝達するために、当該被回転部材の被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材と、を備えて成る駆動伝達機構であって、
前記回転駆動部材には、少なくとも2つの回転駆動突起が設けられており、前記被回転駆動部材には、少なくとも2つの被回転駆動突起が設けられており、前記回転駆動突起及び前記被回転駆動突起が互いにそれら側面で接触することで、前記回転駆動部材と前記被回転駆動部材がカップリングして、前記回転駆動軸と前記被回転駆動軸とが動力連結される駆動伝達機構において、
前記回転駆動突起及び前記回転駆動部材との間、又は、前記被回転駆動突起及び前記被回転駆動部材との間、の少なくとも一方に、変形連結部が設けられ、当該変形連結部は、前記回転駆動突起及び前記回転駆動部材と、又は、前記被回転駆動突起及び前記被回転駆動部材と、一体的に構成されること、
前記変形連結部は、前記回転駆動突起が前記被回転駆動突起と接触する際に、前記変形連結部と一体に構成される前記回転駆動突起又は前記被回転駆動突起が、やはり前記変形連結部と一体に構成される前記回転駆動部材又は前記被回転駆動部材に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されていること、及び、
前記変形連結部が、弾性部材で覆われていること、を特徴とする駆動伝達機構を提案する。
【0013】
また、本発明において、前記弾性部材が、少なくとも2つの回転駆動突起又は被回転駆動突起に対して設けられる少なくとも2つの変形連結部を一体的に覆うように構成されると好適である。
【0014】
さらにまた、本発明において、前記変形連結部が延在する方向に対して直交する方向に拡張する拡張部が、前記変形連結部の少なくとも一部に設けられると好適である。
【0015】
さらにまた、本発明において、前記弾性部材には、凸部が形成され、前記凸部に嵌合する嵌合溝が、前記回転駆動部材に又は前記被回転駆動部材に設けられていると好適である。
【0016】
さらにまた、本発明において、一体的に構成される前記回転駆動突起、前記回転駆動部材及び変形連結部、又は、一体的に構成される前記被回転駆動突起、前記被回転駆動部材及び変形連結部と、
前記弾性部材とが、二色成形によって作られると好適である。
【0017】
さらにまた、本発明において、上記の目的を達成するため、請求項1〜5に記載の駆動伝達機構を備えた画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、駆動源からの回転駆動力を被回転部材に伝達するためにカップリングする回転駆動部材及び被回転駆動部材と、これらに設けられる構成要素であって、互いの側面で接触する回転駆動突起及び被回転駆動突起とを有する駆動伝達機構において、回転駆動突起及び回転駆動部材の間に、又は、被回転駆動突起及び被回転駆動部材の間に、これらと一体的に構成される変形連結部を設け、当該変形連結部は、駆動源から伝達される回転駆動力を受けて回転駆動突起が被回転駆動突起と接触する際に、回転駆動部材又は被回転駆動部材に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されるので、回転駆動部材と被回転駆動部材との間で回転軸心間にずれが生じていたとしても、伝達される回転駆動力に応じた、変形連結部の回転接線方向の変形がこれらのずれ量を吸収して、当該ずれ量を慣わして回転するので、常に全ての回転駆動突起と被回転駆動突起とが接触して、回転駆動部材と被回転駆動部材とをカップリングさせることができるようになる結果、これら突起部が接触・離間する際に発生する衝撃による振動を効果的に低減することが可能となる。また、当該変形連結部を弾性部材で覆うことにより、変形連結部が回転接線方向に変形する際に発生する可能性のある振動をも吸収して防振することができるだけでなく、当該弾性部材が、変形連結部の変形を受け止めるので、この変形連結部の剛性及び耐久性の低下を防ぎ、その結果、当該変形連結部が破損することを効果的に低減することが可能になる。加えて、弾性部材は、変形連結部だけに設けられているので、互いの側面で接触することを予定されている回転駆動突起及び被回転駆動突起とが動力連結する際になんらこれを阻害する構成要素が存在しないため、容易に、且つ、確実に所望のカップリングを達成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる駆動伝達機構が設けられるような画像形成装置の一例を概略で示す断面図である。
【図2】図1で示した画像形成装置の作像部を概略で示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる駆動伝達機構が設けられるような画像形成装置の別の一例を概略で示す断面図である。
【図4】図3で示した画像形成装置の作像部を概略で示す斜視図である。
【図5】図1や図3に示される画像形成装置で用いられるプロセスカートリッジを概略で示す側面図である。
【図6】図1や図3に示される画像形成装置で用いられるプロセスカートリッジを概略で示す斜視図である。
【図7】従来から用いられてきた駆動伝達機構のカップリングを説明するための断面図であり、回転駆動部材が被回転駆動部材にカップリングする直前の図を示す。
【図8】本発明にかかる駆動伝達機構の被回転駆動部材を説明するための図であり、a)は、断面図を、b)は、正面図を示す。
【図9】従来の駆動伝達機構において、回転駆動部材と被回転駆動部材との回転軸中心がずれているために、回転駆動突起と被回転駆動突起とが接触・離間する状態を時系列で説明するための図であり、一回転の間の90°毎における回転駆動突起と被回転駆動突起との関係を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0021】
図1及び図2は、中間転写方式が採用されたタンデム型画像形成装置の概略図及びこの画像形成装置の作像部を概略で示す斜視図である。また、図3及び図4は、直接転写方式が採用されたタンデム型画像形成装置の概略図及びこの画像形成装置の作像部を概略で示す斜視図である。この種の画像形成装置は、従来から当業者にはよく知られた通常公知の画像形成装置であるため、以下ではその構成及び動作については詳細な説明は省略し、概略で説明する。
【0022】
まず、図1及び図2に示される画像形成装置100の概略構成を説明する。この図1に示した画像形成装置100本体の略中央部上側には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(K)の各色トナー像を形成するための画像形成手段として、4個の潜像担持体である感光体ドラム1(Y、C、M、K)が配設されている。これら4個の感光体ドラム1(Y、C、M、K)は、複数のローラに巻き掛けられた無端状の中間転写ベルト(中間転写体)15の上側でこの中間転写ベルト15に当接しながら、当該中間転写ベルト15の走行辺に沿って等間隔で離間されて並列配置されている。これら感光体ドラム1(Y、C、M、K)は、画像形成時には、例えば駆動モータなどの感光体駆動源40(Y、C、M、K)により反時計回りに回転駆動させられる。また、中間転写ベルト15を張架している複数のローラのうちの1つである中間転写体駆動ローラ22が、やはり図2に示される中間転写体駆動源20によって駆動される駆動ローラとして構成されていて、当該駆動ローラ22が回転駆動することにより、中間転写ベルト15は、図中時計回りに回転駆動させられる。
【0023】
また、この画像形成装置は当業者にはよく知られているため図1及び図2では詳細には図示しないが、各感光体ドラム1(Y、C、M、K)の周囲には、それぞれ、帯電ローラと、現像スリーブ2(Y、C、M、K)、現像ブレード、現像剤攪拌スクリューなどを有する現像装置と、クリーニングブラシ、クリーニングブレード、回収スクリューなどを有するクリーニング装置と、が感光体ドラム1(Y、C、M、K)の回転方向に順に並んで配設されているのが一般的である。図1及び図2では、各感光体ドラム1(Y、C、M、K)の他には、これら構成部材のうち現像スリーブ2(Y、C、M、K)のみを概略で示してある。さらに各感光体ドラム1(Y、C、M、K)に対向する位置であって、中間転写ベルト15の内側に一次転写手段としての一次転写ローラ(図示せず)が設けられている。
【0024】
さらにまた、この各感光体ドラム1(Y、C、M、K)の上側には、各トナー色の画像データに対応したレーザー光を、帯電ローラにより帯電された感光体ドラム1(Y、C、M、K)表面上に走査して、静電潜像を形成するための書き込み手段である露光装置(図示せず)が設けられている。この露光装置は、例えばレーザー光源やポリゴンミラーなどを有するレーザースキャン方式の露光装置とすることが可能であり、複数の半導体レーザー光源から、形成されるべき画像データに応じて変調されたビーム光を発し、絞りレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズ及びミラーなどの適宜適切な光学部材を介して感光体ドラム1(Y、C、M、K)表面に書き込み情報に応じた静電潜像を作り出す。
【0025】
ここで、各トナー色に対応する現像装置には、トナーとキャリアとの現像剤を攪拌する乃至搬送するための現像剤攪拌スクリューが設けられており、画像形成装置100に設けられたトナーカートリッジに連結されているトナー補給手段によりトナーが現像装置に補給される。この補給トナーあるいは既に現像装置に内蔵されているトナーは、前記した現像剤攪拌スクリューでキャリアと攪拌、搬送され、ブレードにより載せるべきトナー層の厚さを規制されて現像スリーブ2(Y、C、M、K)表面に現像剤の層を形成する。レーザービームにより各感光体ドラム1(Y、C、M、K)の表面に形成された静電潜像は、現像装置を通過する際に、この現像剤の層により所定のトナー画像として現像されることで顕像化される。
【0026】
また、画像形成装置100の下方には、記録紙などの記録媒体99が積層される給紙カセットが配設され、この給紙カセットから給送ローラなどの回転駆動により給送された記録媒体99は、レジストローラ対90まで搬送される。なお、これら給紙カセット及び給送ローラは図示されていないが、記録媒体99の搬送経路は、図1においては点線で示されている。このレジストローラ対90の記録媒体搬送方向下流側には、二次転写手段としての転写ローラ19が、中間転写ベルト15が掛け渡されるローラの一つである転写対向ローラ12に対向して設けられていて、この転写ローラ19と転写対向ローラ12との作用により、記録媒体99にフルカラートナー像が一括して転写される。さらに、二次転写部の搬送方向下流側には定着装置30が設けられている。
【0027】
次に、このように構成される画像形成装置の画像形成動作を概略で説明するが、各感光体ドラム1(Y、C、M、K)にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト15に転写する構成は、そのトナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、Y、M、C、Kの添え字は必要に応じて割愛する。
【0028】
まず、上記した感光体ドラム1が駆動源40により反時計回り方向に回転駆動され、このとき感光体ドラム1表面にやはり図示しない除電装置からの光が照射されて表面電位が初期化される。この表面電位を初期化された感光体ドラム1の表面が、今度は帯電ローラによって所定の極性に一様に帯電される。帯電された感光体ドラム1表面には、露光装置からのレーザ光が照射され、これによって感光体ドラム1表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム1に露光される画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及び黒の各トナー色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体ドラム1上に形成された静電潜像が現像装置の現像スリーブ2を通る際に、上記したように各色トナーが感光体1上に付与され、顕像化されたトナー像として可視化される。
【0029】
また、中間転写ベルト15は、図中時計回りに走行駆動させられるが、上記した一次転写ローラには、感光体ドラム1上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加される。これにより、感光体ドラム1と中間転写ベルト15との間に転写電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、その感光体ドラム1と同期して回転駆動される中間転写ベルト15上に静電的に一次転写される。このように、一次転写される各色のトナー像は、中間転写ベルト15の搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて中間転写ベルト15上に重ね合わされ、当該中間転写ベルト15上にフルカラー画像が形成される。なお、トナー像を転写した後の感光体ドラム1表面に付着する残留トナーは、クリーニング装置によって感光体ドラム1表面から除去され、次の画像形成に備えることになる。
【0030】
その一方で、給紙カセットなどの記録媒体積層部に積載された記録媒体束から、画像を形成される記録媒体が給送ローラなどによりレジストローラ対90まで給送されるが、その際には、未だ回転駆動を開始していないレジストローラ対90のニップ部に、搬送された記録媒体99の先端が突き当たり、所謂ループを形成することで、記録媒体99のレジストレーションが行われる。その後、中間転写ベルト15上に担持されたトナー像とのタイミングを取って、レジストローラ対90が回転駆動を開始し、二次転写部に向けて記録媒体99が送出される。本実施例では、転写ローラ19に中間転写ベルト表面のトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト15表面のトナー像が記録媒体99上に一括して転写される。トナー像を転写された記録媒体99は、定着装置30までさらに搬送され、当該定着装置30を通過するときに、この定着装置30に配置された定着ローラと加圧ローラとが有する熱と圧力との作用によって、トナー像が記録媒体99に永久画像として定着される。永久画像を定着された画像形成後の記録媒体は、画像形成装置100本体から排出トレイに排出される。
【0031】
次に、図3及び図4に概略的に記載される画像形成装置100について簡単に説明する。図3及び図4に示される画像形成装置は、直接転写方式の画像形成装置であり、図1及び図2に示された画像形成装置と比較した場合には、中間転写体15が存在しない点が大きな相違点である。したがって、同一の部材には同一の参照符号を付すことで説明は適宜省略する。
【0032】
図3に示される各感光体ドラム1(Y、C、M、K)には、先に記述したように露光装置によって静電潜像が作り出され、この静電潜像を担持する感光体ドラム1(Y、C、M、K)が現像装置を通過する際に各色トナーで現像される。この現像されて感光体ドラム1(Y、C、M、K)に担持されたトナー像は、給紙カセットから一枚ごとに分離・搬送されて、レジストローラ対90で待機している記録媒体99の搬送とタイミングを併せて、順次直接転写されるが、その際には、記録媒体99は、搬送ベルト駆動源80からの回転駆動力を受けて回転する搬送ベルト駆動ローラ81により、図中反時計回りに回転する搬送ベルト60上を搬送されてくる。なお、このトナー像を記録媒体99に転写するに際しては、先に記述した中間転写方式の一次転写と同じように、搬送ベルト60を挟んで各感光体ドラム1(Y、C、M、K)と対向する位置に設けられる転写ローラ(図示せず)の作用により、記録媒体99にトナー像が転写される。このように転写された記録媒体99は、定着装置30で熱と圧力とを受けて定着され、画像形成装置本体から排出トレイなどの排出部に排出される。
【0033】
ここで、この図1及び図2あるいは図3及び図4で示される画像形成装置100では、図5や図6に示されるようなプロセスカートリッジを用いて作像部を構成することも可能である。図5や図6は、プロセスカートリッジの一例を概略部分図で示したものであるが、ここに図示されるプロセスカートリッジは、感光体1と現像装置である現像ユニット200とを一体的に乃至ユニット化して構成したものであり、図中では、感光体ドラム1と、現像ユニット200に設けられる現像スリーブ2及び現像剤攪拌スクリュー5とが概略で示されている。
【0034】
図5及び図6に示されるプロセスカートリッジにおいて、まず、感光体ドラム1及び現像スリーブ2は、当該プロセスカートリッジに設けられたPG面板250に精度良く位置決めされるようになっている。このPG面板250とは、感光体ドラム1と現像スリーブ2とのギャップ乃至間隙を適切な位置に管理規制するために、プロセスカートリッジに設けられる部材である。このように、PG面板250を用いて、感光体ドラム1と現像スリーブ2とを精度良く位置決めすることで、これら構成部材間のギャップのバラツキを小さく保障することが可能であり、その結果、感光体ドラム1上に現像スリーブ2から付与されるトナー濃度のバラツキを低減することができる。
【0035】
また、現像ユニット200に関しては、PG面板250に精度良く位置決めされる現像スリーブ2を主基準とし、現像ユニット200に設けられる従基準ピン220を従基準として用いて、PG面板250を介してプロセスカートリッジ内で位置決めされる。次いで、この感光体ドラム1及び現像ユニット200を有するプロセスカートリッジ自体は、感光体ドラム1の回転軸を主基準とし、プロセスカートリッジ従基準ピン120を従基準として、画像形成装置100本体に対して位置決めされ、装着される。
【0036】
このプロセスカートリッジに設けられる被回転部材、すなわち図示した例では、感光体ドラム1、現像スリーブ2及び現像剤攪拌スクリュー5の3つの被回転部材を回転させるためには、これらの構成部材に回転駆動力を伝達する必要がある。そのため、駆動源からの回転駆動力を伝達される回転駆動軸を、被回転部材の被回転駆動軸に動力連結する必要があるが、この動力連結を達成するために、回転駆動軸に設けられた回転駆動部材と、被回転駆動軸に設けられた被回転駆動部材とをカップリングさせることになる。このカップリングを実現するために、被回転部材の被回転駆動軸は、図6から見て取れるように、着脱可能なプロセスカートリッジの外面から、この外面に対して回転可能に突出しており、この被回転駆動軸の突出部分に設けられた被回転駆動部材と、駆動源からの回転駆動力を伝達される回転駆動軸の回転駆動部材とをカップリングさせることで被回転部材は動力連結される。このカップリングは図6では、参照符号800で、現像スリーブ2および現像剤攪拌スクリュー5に対して概略的に示されている。
【0037】
このカップリング800をより詳細に図7に示すが、この図7は、回転駆動部材と被回転駆動部材とがカップリングを構成する直前の図を示していることに注意されたい。すなわち、図7に示されている状態から被回転駆動部材890側が回転駆動部材820側に移動することでカップリング800が達成される。また、この図7に示されるカップリング800は、従来から用いられてきたカップリング800を示す図であり、一例として現像剤攪拌スクリュー5に対するカップリングを示している。なお、このカップリング800は、現像剤攪拌スクリュー5だけに対応するするものではなく、感光体ドラム1や現像スリーブ2などの、着脱可能に構成された被回転部材に対しても適用可能なものである。
【0038】
この図7に示されているように、従来のカップリング800を用いた駆動連結機構は、駆動源からの回転駆動力をギア乃至歯車やプーリーなどの適宜適切な動力伝達部材を介して伝達され回転する回転駆動軸810と、この回転駆動軸810に相対回転不能に設けられる回転駆動部材820と、この回転駆動部材820とカップリングする被回転駆動部材890であって、被回転部材である現像剤攪拌スクリュー5に回転駆動力を伝達するために、現像剤攪拌スクリュー5の回転軸(被回転駆動軸)880に設けられる被回転駆動部材890と、を備えて成る。この回転駆動軸810に回転駆動部材820を取付ける際には、当該回転駆動軸810に接続ピン830を設け、この接続ピン830を、回転駆動部材820において対応する位置に設けられた係合溝822に挿入固定することで、回転駆動部材820を回転駆動軸810に相対回転不能に取付けている。また、被回転駆動部材890には、少なくとも2つの、図示した例では2つの被回転駆動突起891が設けられており、この被回転駆動突起891は、被回転駆動軸880の軸中心に対して対称に設けられている。さらに、回転駆動部材820には、少なくとも2つの、図示した例では2つの回転駆動突起821が設けられており、前記した被回転駆動突起891と互いに側面で接触することにより、回転駆動部材820と被回転駆動部材890とがカップリングし、その結果、回転駆動軸810と被回転駆動軸880が動力連結される。なお、プロセスカートリッジの着脱時に、回転駆動部材820の回転駆動突起821と、被回転駆動部材890の被回転駆動突起891とが衝突したとしても、プロセスカートリッジを取付けることが可能であるように、バネ840が回転駆動部材820の端部に取り付けてあり、仮に、突起821及び891が互いに接触したとしても、回転駆動部材820は、回転駆動軸810の軸線方向に退避することができるようになっている。
【0039】
この図7に示した従来の駆動連結機構では、駆動源からの回転駆動力を受ける回転駆動軸810に相対回転不能に取付けられた回転駆動部材820が、被回転駆動軸880に相対回転不能に取付けられた被回転駆動部材890に、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とを介して、動力連結している。これは、すなわち、駆動源からの回転駆動力を受けた回転駆動軸810が回転する際に、これら突起891及び821が側面で互いに接触することで、回転駆動力を伝達していることになる。
【0040】
このような構成において、回転駆動軸810と被回転駆動軸880との回転軸中心が正確に一致していれば、さらには、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とが設計と全く同一の正確な位置に取付けられていれば、回転駆動部材820と被回転駆動部材890と、及び、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とは正に正確に位置合わせされ、その結果、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とが常に所望の側面位置で接触して回転することが可能であるが、本明細書の導入部分で述べたように、現実的には、これら構成部材の製造及び取り付け時には必ず公差が存在するため、回転軸中心を正確に位置合わせすることは不可能であり、その結果、図9に示すように、回転駆動部材及び被回転駆動部材が1回転、すなわち360°回転する間には、被回転駆動部材に回転駆動力を伝達するための回転駆動突起821と被回転駆動突起891は、接触・離間を繰り返して、切り替わっている。このように突起らが切り替わることで、少なからず衝撃が発生し、この衝撃に起因する振動がプロセスカートリッジなどを介して作像部にまで伝播して、バンディングなどの悪影響を、形成されるべき画像に及ぼしていた。
【0041】
なお、図7や図9に示した例では、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とがそれぞれ2つの場合を示したが、これら突起の数が増えたとしても、突起らが接触・離間するタイミングが細かくなるだけであり、同様の問題が発生する。また、これら突起が1つの場合は、突起の接触・離間が生じず、突起の切り替えによる衝撃が発生しない代わりに、回転駆動軸810と共に回転する回転駆動突起821の回転により、被回転駆動突起891が予期せぬ方向に力を受けてしまうため、被回転部材が一回転の間に揺れ動く現象が生じてしまう。したがって、本願発明の対象は、少なくとも2つの突起を用いて回転駆動力を伝達する駆動伝達機構を対象とする。
【0042】
上記した振動の発生を効果的に防止するために、本願発明者らは、図8に示すような被回転駆動部材を発明した。この図8に示す被回転駆動部材は、これまで説明してきた被回転駆動部材と同様に、被回転駆動軸880に相対回転不能に取付けられるものであり、発明の理解を深めるために、図8では被回転駆動部材890のみを示す。なお、図8に示される被回転駆動部材は、(a)が断面図、(b)が正面図を示すものである。
【0043】
この図8に図示される被回転駆動部材890では、当該被回転駆動部材890と前記した被回転駆動突起891との間に設けられる変形連結部893であって、被回転駆動突起891及び被回転駆動部材890と一体的に構成される変形連結部893が設けられていることにまずは特徴がある。この変形連結部893は、その形状、材質などによって、バネ性乃至弾性を有していて、駆動源から伝達される回転駆動力を受けて回転駆動突起821が被回転駆動突起891と接触しカップリングするときに、当該回転駆動力に応じて発生する回転駆動突起821との接触力に応じて、被回転駆動部材890に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されている。図示した例では、被回転駆動突起891の断面形状よりも細い変形連結部893を採用することで、バネ性を変形連結部に持たせている。また、形状だけでなく、材質によってもバネ性を付加することが可能であり、変形連結部893と一体で構成される被回転駆動突起891及び被回転駆動部材890は、剛体でありながらも適度なバネ性を有する必要があることから、樹脂、特にPOM(ポリアセタール)やPA(ナイロン)などが好ましい材料として挙げられる。この変形連結部893によって、被回転駆動突起891が被回転駆動部材890に対して回転接線方向に相対変形可能な程度、言い換えれば、変形連結部893がその形状や材質に起因するバネ性を有していることで、被回転駆動突起891が回転接線方向に倒れることができる程度乃至変位量を決定するに当たっては、設計時に、あるいは、実機における実験を繰り返すことで、適切な形状及び材質を選択し、決定することができる。
【0044】
このように、カップリングする回転駆動部材820の回転駆動突起821と被回転駆動部材890の被回転駆動突起891が互いに側面で接触して、回転駆動力を伝達させる際に、変形連結部893が被回転駆動部材890に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されるので、回転駆動部材820と被回転駆動部材890との間で回転軸心間にずれが生じていたとしても、変形連結部893の回転接線方向の変形がこのずれ量を吸収して、当該ずれ量を慣わして回転するので、常に全ての回転駆動突起821と被回転駆動突起891とが接触して回転するように構成することが可能となり、その結果、これら突起部821及び891が接触・離間する際に発生する衝撃による振動を効果的に低減することが可能となる。
【0045】
また、この図8に図示される変形連結部893は、適度な弾性力を有する弾性部材895によって覆われている。この弾性部材895は、変形連結部893が回転駆動力を受けて回転接線方向に変形する際に、あるいは、この変形量が変動する際に、回転駆動突起821と被回転駆動突起891との間の変形乃至変動により発生する可能性のある振動をも吸収して防振するために設けられるものであり、加えて、この弾性体895が変形連結部893を覆うことで、変形連結部893の変形乃至変動を受け止めるので、例えば非常に細く構成されうる変形連結部893の剛性及び耐久性の低下を防ぎ、当該変形連結部893が折れたり破損するなどの危険性を効果的に低減する。したがって、弾性部材895の材質としては、防振効果を適切に発生することができるような適度な弾性と、変形連結部893が破損する危険性を低減できるような耐久性が必要となるため、ウレタン系エラストマーやポレオレフィン系エラストマーを採用するのが好ましい。
【0046】
さらに、カップリングする回転駆動突起821と被回転駆動突起891とは別位置に変形連結部893を設け、この変形連結部893だけを弾性体895が覆うので、回転駆動突起821と被回転駆動突起891とがカップリングする際に、これら部材のカップリングを阻害する構成要素は何ら存在せず、容易に、且つ、確実に所望のカップリングを達成することが可能になる。
【0047】
なお、図8に示す弾性部材895は、2つ設けられた被回転駆動突起891の2つの変形連結部893を一体的に覆うように構成されているが、この弾性部材895が有する作用・効果、すなわち、変形連結部893が回転駆動力を受けて回転接線方向に変形する際に、あるいは、この変形量が変動する際に、回転駆動突起821と被回転駆動突起891との間の変形乃至変動により発生する可能性のある振動をも吸収して防振すること、及び、変形連結部893の剛性及び耐久性の低下を防ぎ、当該変形連結部893が折れたりすることで破損されることを効果的に防止すること、との作用・効果によれば、2つの被回転駆動突起891の変形連結部893それぞれに個別に設けることも可能である。しかしながら、図8に示したように、全ての被回転駆動突起891の変形連結部893を一体的に覆うように構成する方が、全ての被回転駆動突起891の変形乃至変動を一体に受けることが可能になるので、弾性部材895と変形連結部893との変形量を低減することが可能となり、より効果的に変形連結部893の破損を防止することができるため好適である。
【0048】
さらに、図8に示した例では、変形連結部893には、当該変形連結部893が被回転駆動部材890から回転駆動突起891へ延在する方向に対して直交する方向に楔状に拡張する拡張部894が設けられているのが見て取れる。この拡張部894は、必ずしも必要なものではないが、この拡張部894を設けることで、弾性部材895が変形連結部893と接触する面積、言い換えれば、弾性部材895が変形連結部893に食いつく食いつき量を増加させることができるので、変形連結部893が変形する際に、この変形連結部893に接触している弾性部材895のずれを低減させることが可能となり、これら部材893及び895間の摺動による破損を効果的に低減することが可能となる。なお、図示した例では、変形連結部893一本あたり2つの拡張部894を設ける例を示したが、本願発明はこれに限定されることなく、実施可能である。すなわち、この拡張部894は、弾性部材895が変形連結部893に食いつく食いつき量を増加させることを目的として設けられるので、少なくとも変形連結部893の一部に設けられていればよく、1つでもあるいは2つ以上の複数個設けてもよい。
【0049】
また、図8に示した弾性部材895には、凸部896が設けられている。この凸部896は、被回転駆動部材890の当該弾性部材が配設される方向に突出する突設部898に設けられた嵌合溝に嵌合するように構成されている。このような構成を採用することで、比較的変形が容易な弾性部材895の一部を被回転駆動部材890と嵌合させて両者を固定しているので、この凸部896が抜け止めとなり、別部材を追加することなく比較的容易に被回転駆動部材890に、ひいては被回転駆動軸880に弾性部材895を固定することが可能となる。
【0050】
ここで、このように変形連結部893と弾性部材895とを備えた被回転駆動部材890を製造するにあたっては、所謂二色成形を用いて製造することが好ましい。二色成形は、当業者にはよく知られた成形方法ではあるが、簡単に説明すると、異なる2種の材料を同一コア上で一体に成形する成形方法であり、例えば一次側となる部分を1種目の材料で成形してから、二次側となる異なる2種目の材料を同一コア上で、一次側部分と一体的に成形する。図8に示した例では、最初に、変形連結部893及び被回転駆動突起891を含む被回転駆動部材890を一次側の部分として成形した後、同一のコア上で上部金型だけを取替えて二次側となる弾性部材895を被回転駆動部材890と一体に成形する。このような二色成形を用いることで、変形連結部893と弾性部材895とを備えた被回転駆動部材890を成形した後で、弾性部材895をはめ込むよりも、容易且つ短時間で製造することが可能となり、部品製造コストの低減を図ることができる。これは、特に、変形連結部893が楔状の拡張部894を備えているような複雑な形状の場合に有効である。
【0051】
これまで、好適な実施形態として被回転駆動部材890に変形連結部893を設け、この変形連結部893を弾性部材895で覆う構成を説明してきたが、本願発明はこれに限定されるものではない。図示はしないが、被回転駆動部材890に変形連結部893を設けるのでなく、カップリングする相手側、すなわち回転駆動部材820に変形連結部893を設けても同様の作用・効果を奏することが可能である。この場合は、今まで説明してきた被回転駆動部材890が回転駆動部材820に、被回転駆動突起891が回転駆動突起821に置き換わるだけである。すなわち、本願発明の特徴的な変形連結部893は、被回転駆動部材890側に設けてもよいし、回転駆動部材820側に設けてもよい。これは、言い換えれば、当該変形連結部893を、被回転駆動突起891及び被回転駆動部材890との間、又は、回転駆動突起821及び回転駆動部材820との間、の少なくとも一方に設け、且つ、この変形連結部893を、被回転駆動突起891及び被回転駆動部材890と、又は、回転駆動突起821及び回転駆動部材820と、一体的に構成することで、本願発明の目的を達成することが可能であることを意味する。その際には、変形連結部893を回転駆動部材820側又は被回転駆動部材890側のいずれの側に設けたとしても、この変形連結部893は、弾性部材895で覆われることになる。なお、このように、変形連結部を回転駆動部材側、被回転駆動部材側のいずれの側に設けることもできるが、上記した実施例で説明されるような被回転部材の被回転駆動部材側に変形連結部を設けると、画像形成装置本体側の回転駆動部材乃至回転駆動突起などに例えば金属製の耐久性の高い部材を採用することで、画像形成装置本体側の寿命を高く維持することが可能になるので、変形連結部を設けるのは被回転駆動部材側であるほうが好ましい。
【0052】
最後に、これまで、電子写真方式のフルカラープリンター100を例にとり、また、このプリンター100の現像剤攪拌スクリュー5を用いて、本願発明の駆動伝達機構の説明を行ってきたが、本願発明はこれに限定されるものではないことは当業者には明らかであろう。すなわち、本願発明の駆動伝達機構を、例えば感光体ドラム1や、現像スリーブ2に対しても採用することは可能であるし、あるいは、ベルトクリーニング装置や、感光体ドラム1をクリーニングするための感光体クリーニング装置などで用いられる被回転部材であって、比較的回転精度は要求されないが、振動の発生は抑えたい被回転部材に対しても適用することは可能である。さらに、被回転部材がプロセスカートリッジでユニット化して取り付けられている実施形態に限られるものでもない。被回転部材への回転駆動力を、回転駆動部材に設けられた回転駆動突起と被回転駆動部材に設けられた被回転駆動突起とのカップリングで行う駆動伝達機構であれば、適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、又は、これらの少なくとも2つの機能を有する複合機などの画像形成装置で用いられる被回転部材への回転駆動力を伝達するための駆動伝達機構に対して、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 感光体ドラム
2 現像スリーブ
5 現像剤攪拌スクリュー
810 回転駆動軸
820 回転駆動部材
821 回転駆動突起
880 被回転駆動軸
890 被回転駆動部材
891 被回転駆動突起
893 変形連結部
894 楔状拡張部
895 弾性部材
896 凸部
898 突設部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開平01−199023号公報
【特許文献2】特開2004−108481号公報
【特許文献3】特開2003−28241号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの回転駆動力を伝達されて回転する回転駆動軸と、
前記回転駆動軸に設けられる回転駆動部材と、
前記回転駆動部材とカップリングする被回転駆動部材であって、前記回転駆動力を被回転部材に伝達するために、当該被回転部材の被回転駆動軸に設けられる被回転駆動部材と、を備えて成る駆動伝達機構であって、
前記回転駆動部材には、少なくとも2つの回転駆動突起が設けられており、前記被回転駆動部材には、少なくとも2つの被回転駆動突起が設けられており、前記回転駆動突起及び前記被回転駆動突起が互いにそれら側面で接触することで、前記回転駆動部材と前記被回転駆動部材がカップリングして、前記回転駆動軸と前記被回転駆動軸とが動力連結される駆動伝達機構において、
前記回転駆動突起及び前記回転駆動部材との間、又は、前記被回転駆動突起及び前記被回転駆動部材との間、の少なくとも一方に、変形連結部が設けられ、当該変形連結部は、前記回転駆動突起及び前記回転駆動部材と、又は、前記被回転駆動突起及び前記被回転駆動部材と、一体的に構成されること、
前記変形連結部は、前記回転駆動突起が前記被回転駆動突起と接触する際に、前記変形連結部と一体に構成される前記回転駆動突起又は前記被回転駆動突起が、やはり前記変形連結部と一体に構成される前記回転駆動部材又は前記被回転駆動部材に対して回転接線方向に相対変形可能なように構成されていること、及び、
前記変形連結部が、弾性部材で覆われていること、を特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記弾性部材が、少なくとも2つの回転駆動突起又は被回転駆動突起に対して設けられる少なくとも2つの変形連結部を一体的に覆うように構成されることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記変形連結部が延在する方向に対して直交する方向に拡張する拡張部が、前記変形連結部の少なくとも一部に設けられることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記弾性部材には、凸部が形成され、前記凸部に嵌合する嵌合溝が、前記回転駆動部材に又は前記被回転駆動部材に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
一体的に構成される、前記回転駆動突起、前記回転駆動部材及び変形連結部、又は、一体的に構成される、前記被回転駆動突起、前記被回転駆動部材及び変形連結部と、
前記弾性部材とが、二色成形によって作られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の駆動搬送機構を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−99537(P2011−99537A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256094(P2009−256094)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】