駆動伝達装置
【課題】
駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置について、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行できるようにするとともに、コンパクト化を図る。
【解決手段】
駆動力を受けて回転する駆動体1と、駆動体1の両端面に接合され駆動体1と同軸線上で回転される従動体2,3と、駆動体1,従動体2,3の間に設けられ駆動体1の一方向の回転に従動体2,3を追従して回転させ他方向の回転に従動体2,3を追従して回転させないワンウエイクラッチ5と、駆動体1の内部に設けられワンウエイクラッチ5を切換制御するカム4とを備えている。ワンウエイクラッチ5は、両従動体2,3側で回転が追従される方向が逆向きである。
駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置について、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行できるようにするとともに、コンパクト化を図る。
【解決手段】
駆動力を受けて回転する駆動体1と、駆動体1の両端面に接合され駆動体1と同軸線上で回転される従動体2,3と、駆動体1,従動体2,3の間に設けられ駆動体1の一方向の回転に従動体2,3を追従して回転させ他方向の回転に従動体2,3を追従して回転させないワンウエイクラッチ5と、駆動体1の内部に設けられワンウエイクラッチ5を切換制御するカム4とを備えている。ワンウエイクラッチ5は、両従動体2,3側で回転が追従される方向が逆向きである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、駆動源であるモータや駆動源制御システムの性能の向上にともなって、1台のモータに駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置を連結して複数台の被駆動側機器を駆動させることで、駆動源の共有化,小規模化が図られるようになってきている。このため、駆動伝達装置における駆動力の伝達経路を切換える機能を奏する切換機構について、被駆動側機器に対応した種々改良の要請が生じてきている。。
【0003】
従来、駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、駆動部と駆動部の両側に配置された従動部との間に軸方向にスライドするピンを備え、駆動部と両従動部とがピンで選択的に連結される駆動伝達装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る駆動伝達装置は、駆動力を伝達しようとする従動部と駆動部とをピンのスライド操作で連結させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−15828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る駆動伝達装置では、駆動力の伝達経路の切換えにピンのスライド操作が必要であるため、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することができないという問題点がある。また、ピンのスライド操作のための操作部を外部に露出するように設けなければならないため、コンパクト性が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することのできるコンパクトな駆動伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る駆動伝達装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、駆動力を受けて回転する駆動体と、駆動体の両端面に接合され駆動体と同軸線上で回転される従動体と、駆動体,従動体の間に設けられ駆動体の一方向の回転に従動体を追従して回転させ他方向の回転に従動体を追従して回転させないワンウエイクラッチと、駆動体の内部に設けられワンウエイクラッチを切換制御するカムとを備え、ワンウエイクラッチは両従動体側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする。
【0011】
この手段では、ワンウエイクラッチが駆動体,従動体の間に設けられカムが駆動体の内部に設けられることで、ワンウエイクラッチ,カムが駆動体,従動体から露出されなくなる。そして、駆動体が正方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって一方の従動体のみが正方向に回転され、駆動体が逆方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって他方の従動体のみが逆方向に回転される。
【0012】
また、請求項2では、請求項1の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチは、駆動体の内部に設けられカムによって駆動体の軸方向へスライドされるスライダと、スライダに連結され駆動体の両端面から選択的に出没するクラッチピンと、従動体の駆動体への当接面に設けられてクラッチピンが係合するクラッチ溝とからなることを特徴とする。
【0013】
この手段では、ワンウエイクラッチがクラッチピン,クラッチ溝の係合構造とされクラッチピンがカムに規制されたスライダのスライドによって動作されることで、構造が簡素化される。
【0014】
また、請求項3では、請求項2の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチのスライダとクラッチピンとは弾性部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、ワンウエイクラッチのスライダ,クラッチピンの間に弾性部材が介装されることで、スライダ,クラッチピンの間に衝撃吸収機能が備えられる。
【0016】
また、請求項4では、請求項2または3の駆動伝達装置において、カムは駆動体の回転中心に駆動体の回転を支持する固定軸として配設され円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、カムが駆動体の回転を支持する固定軸とされ円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられることで、ワンウエイクラッチのスライダの動作が精密に案内される。
【0018】
また、請求項5では、請求項1〜4のいずれかの駆動伝達装置において、従動体はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時にクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられていることを特徴とする。
【0019】
この手段では、従動体にワンウエイクラッチのクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられることで、ワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時のクラッチピンの不測の動作を防止することができる。
【0020】
また、請求項6では、請求項5の駆動伝達装置において、シャッタ機構はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への係合時にクラッチピンの移動に応動してラッチ溝を開放するものであることを特徴とする。
【0021】
この手段では、シャッタ機構がワンウエイクラッチのクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放することで、シャッタ機構のクラッチ溝の開放のタイミングが正確になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る駆動伝達装置は、ワンウエイクラッチが駆動体,従動体の間に設けられカムが駆動体の内部に設けられることで、ワンウエイクラッチ,カムが駆動体,従動体から露出されなくなるため、全体がコンパクト化される効果がある。また、駆動体が正方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって一方の従動体のみが正方向に回転され、駆動体が逆方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって他方の従動体のみが逆方向に回転されるため、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することができる効果がある。
【0023】
さらに、請求項2として、ワンウエイクラッチがクラッチピン,クラッチ溝の係合構造とされクラッチピンがカムに規制されたスライダのスライドによって動作されることで、構造が簡素化されるため、製造が安価,容易となる効果がある。
【0024】
さらに、請求項3として、ワンウエイクラッチのスライダ,クラッチピンの間に弾性部材が介装されることで、スライダ,クラッチピンの間に衝撃吸収機能が備えられるため、ワンウエイクラッチの係合が円滑,非衝撃的に行われる効果がある。
【0025】
さらに、請求項4として、カムが駆動体の回転を支持する固定軸とされ円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられることで、ワンウエイクラッチのスライダの動作が精密に案内されるため、ワンウエイクラッチの動作の精度が高くなる効果がある。
【0026】
さらに、請求項5として、従動体にワンウエイクラッチのクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられることで、ワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時のクラッチピンの不測の動作を防止することができるため、ワンウエイクラッチの誤動作を防止することができる効果がある。
【0027】
さらに、請求項6として、シャッタ機構がワンウエイクラッチのクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放することで、シャッタ機構のクラッチ溝の開放のタイミングが正確になるため、ワンウエイクラッチのクラッチピンとシャッタ機構との衝突が防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る駆動伝達装置を実施するための形態の断面図であり、(A),(B)に要部の異なる動作状態が示されている。
【図2】図1の要部の動作を示す縦断面図であり、(A),(B)に逆方向への動作状態が示されている。
【図3】図1の一方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図4】図1の他方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図5】図1の要部の縦断面図である。
【図6】図1の他の要部の側面図である。
【図7】図1の他の要部の側面図である。
【図8】図7の一部拡大図である。
【図9】図1の他の要部の斜視図である。
【図10】図1の組込例を示す断面図である。
【図11】図10の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る駆動伝達装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
この形態では、被駆動側機器をチェーン駆動するに好適なものを示してある。
【0031】
この形態は、図1に示すように、駆動体1,従動体2,3,カム4,ワンウエイクラッチ5,シャッタ機構6を主要部として構成されている。そして、図10,図11に示すように、これ等の収容部が潤滑オイルを封入して設置を容易にするハウジング7に組込まれている。
【0032】
駆動体1は、図1,図6に示すように、リング形の駆動ギア1aの両側に円筒カップ形のケーシング1bが最中合わせに接合されてボルト1cで中空体に組付けられてなる。ケーシング1bは、図6に示すように、中心に軸受孔1baが穿孔され、軸受孔1baの周囲に120度の角度を介して放射状に3個の貫通孔1bbが穿孔されている。軸受孔1baには、カム4を支持するベアリング8が固定される。貫通孔1bbには、ワンウエイクラッチ5の後述のクラッチピン5bのピン本体5baのスライドを受けるスリーブ9が固定される。
【0033】
従動体2,3は、図1,図7,図9に示すように、駆動体1のケーシング1bの両端面(外側面)にそれぞれ当接される円盤形に形成されてなるもので、中心に軸受孔2a,3aが穿孔され、軸受孔2a,3aの周囲に120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個のオイル孔2b,3bが穿孔されている。軸受孔2a,3aには、カム4を支持するベアリング10が内周部に固定された従動ギア11,12が固定される。オイル孔2b,3bは、ハウジング7に封入されている潤滑オイルの流通を確保する。
【0034】
従って、従動体2,3は、カム4を介して駆動体1と同軸線上に配置されていることになる。
【0035】
カム4は、図1〜図5に示すように、小径部分4aである両端部がハウジング7に固定された段付きの固定軸として駆動体1,従動体2,3に貫通して配設されなるもので、中空体の駆動体1の内部に位置する大径部分4bの周面に周方向に刻設された案内溝4cが設けられている。案内溝4cは、平行な2条の主溝4caと主溝4caを斜め方向に連通する連絡溝4cbとからなる。案内溝4cの主溝4caは、図2に示すように、相対的に溝底の深い部分4caaと相対的に溝底の浅い部分4cabとが形成されて、溝底の深い部分4caaと溝底の浅い部分4cabとの間に段差部4cacが形成されている。なお、案内溝4cの主溝4caの溝底の浅い部分4cabは、主溝4caに対して連絡溝4cbが鋭角に交差する側に近接した一部分にのみ形成されている。
【0036】
従って、従動体2,3は、カム4に対して回転可能に支持されていることになる。
【0037】
ワンウエイクラッチ5は、図1〜図5,図7,図9に示すように、スライダ5a,クラッチピン5b,弾性部材5c,クラッチ溝5dからなる。スライダ5aは、図1,図5に示すように、変形のリング盤5aaと、リング盤5aaの中心部に穿孔されてカム4が挿通される中心孔5abと、駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbに対応してリング盤5aaの外周部付近に120度の角度を介して放射状に3個穿孔されクラッチピン5bのスライドを許容するスライド用孔5acと、リング盤5aaにスライド用孔5abとは60度の角度を隔てて120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個穿孔されたガイド孔5adと、ガイド孔5adに挿通されて両端部が駆動体1のケーシング1bに固定されてカム4と平行に配設された6本のガイドシャフト5aeと、リング盤5aaに120度の角度を介して隣接する2個のガイド孔5adの間にリング盤5aaの中心に向けて放射状にスライド可能に支持され先端がカム4の案内溝4bを移動する案内子5afと、案内子5afをリング盤5aaの中心方向(カム4の案内溝4b方向)に弾圧付勢するコイルスプリング5agとからなる。クラッチピン5bは、スライダ5aのスライド用孔5abに挿通されて駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbから選択的に出没される軸長をもった丸棒形の3本のピン本体5baと、ピン本体5baの両端部から少し中央寄りにそれぞれ固定されたリング形の弾性部材受5bbとからなる。弾性部材5cは、コイルスプリングからなるもので、クラッチピン5bのピン本体5baに外装されてクラッチピン5bの両側の弾性部材受5bbとスライダ5aのリング盤5aaとの間にそれぞれ弾圧装着されている。クラッチ溝5dは、図7,図9に示すように、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面(内側面)にオイル孔2b,3bを含んで周方向に円弧形に延びて刻設されクラッチピン5bのピン本体5baが係合されるもので、溝底の深さが一定の平坦部5daと、溝底の深さが傾斜して平坦部5daの一端部側にのみ設けられた傾斜部5dbとからなる。クラッチ溝5dの平坦部5daは、従動体2,3のオイル孔2b,3bが位置されている。クラッチ溝5dの傾斜部5dbは、図9に示すように、両側の従動体2,3で平坦部5daに対して逆に配置されている。
【0038】
シャッタ機構6は、図7,図8に示すように、シャッタ片6a,支軸6b,案内ピン6c,トーションコイルスプリング6dからなる。シャッタ片6aは、円弧片形に形成されて従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に当接され支軸6bで回動可能に支持されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを開閉するもので、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dに一部重なる円弧形の外周部分に曲線形の傾斜部6aaが設けられ、回動の先端部付近に案内ピン6cを受ける案内溝6abが設けられている。支軸6bは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの傾斜部5db付近に配置され、シャッタ片6aを回動の先端部がワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daの一部に重なることができるように支持している。案内ピン6cは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5da付近に配置され、シャッタ片6aの回動を案内する。トーションコイルスプリング6dは、支軸6bに同軸に装着されてシャッタ片6aと従動体2,3とに係止されて、シャッタ片6aをワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖する方向へ弾圧付勢している。
【0039】
さらに、この形態では、図10,図11に示すように、従動体2,3に固定された従動ギア11,12に中継ギア13,14を介して出力軸15,16,出力スプロケット17,18が噛合連結されている。出力スプロケット17,18は、ハウジング7から露出されている。また、駆動体1の駆動ギア1aには、駆動モータ19から傘歯車等の中継ギア20が噛合連結されている。
【0040】
この形態によると、ワンウエイクラッチ5が駆動体1,従動体2,3の間に設けられ、カム4が駆動体1の内部に設けられ、ワンウエイクラッチ5,カム4が駆動体1,従動体2,3から露出されなくなるため、全体がコンパクト化される。また、ワンウエイクラッチ5がクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合構造とされクラッチピン5bがカム4に規制されたスライダ5aのスライドによって動作されるため、構造が簡素化され製造が安価,容易となる。
【0041】
この形態では、図1(A)に示すように、駆動モータ19が一方向(正方向)に回転駆動されると、中継ギア20を介して駆動体1(駆動ギア1a)が正方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面右側の主溝4caを移動し(図2(A),図3(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面右側の主溝4caに変位して移動する(図2(B),図3(B)参照)。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afの移動については、コイルスプリング5agによって円滑性が確保され、固定軸として配設されているカム4の案内溝4cに案内されることによって精度が確保されている。
【0042】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面右側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面右側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面右側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dに係合される。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合については、クラッチピン5bのスライドが衝撃吸収機能を有する弾性部材5cの弾力を介し、クラッチピン5bのピン本体5baがクラッチ溝5dの傾斜部5dbから平坦部5daに滑込むように緩慢に侵入することによって、円滑性,非衝撃性が確保されている。なお、図8に示すように、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daに侵入したクラッチピン5bのピン本体5baは、シャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaに当接して、クラッチ溝5dを閉鎖しているシャッタ機構6のシャッタ片6aを自動的に開放する。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bのピン本体5baのシャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaへの当接については、傾斜部6aaが滑性のある曲線形であることによって衝撃が緩和されシャッタ機構6の円滑な動作が確保され、シャッタ機構6によるワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの開放のタイミングが正確になってワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bとシャッタ機構6のシャッタ片6aとの衝突が防止される。
【0043】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面右側の従動体2の正方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア11,中継ギア13,出力軸15を介して図面右側の出力スプロケット17の正方向への回転出力を生じさせる。
【0044】
駆動体1,従動体2の正方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面左側の従動体3がフリー回転可能な状態にっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面左側の従動体3に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0045】
また、図1(B)に示すように、駆動モータ19が他方向(逆方向)に回転駆動されると、中継ギア20を介して駆動体1(駆動ギア1a)が逆方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面左側の主溝4caに変位して移動し(図2(B),図4(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面左側の主溝4caを移動する(図2(A),図4(B)参照)。
【0046】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面左側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面左側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面左側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dに係合される。
【0047】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面左側の従動体3の逆方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア12,中継ギア14,出力軸16を介して図面右側の出力スプロケット18の逆方向への回転出力を生じさせる。
【0048】
駆動体1,従動体3の逆方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面右側の従動体2がフリー回転可能な状態にっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面右側の従動体2に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0049】
この形態によると、駆動力の伝達経路の切換えが操作部を設けなくとも駆動側の回転方向の切換に対応して自動的に実行されることになる。
【0050】
以上、図示した形態の外に、従動ギア11,12,中継ギア13,14,出力軸15,16,出力スプロケット17,18として他の駆動伝達構造を選択することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1
駆動体
2,3 従動体
4 カム
4c 案内溝
5 ワンウエイクラッチ
5a スライダ
5b クラッチピン
5c 弾性部材
5d クラッチ溝
6 シャッタ機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、駆動源であるモータや駆動源制御システムの性能の向上にともなって、1台のモータに駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置を連結して複数台の被駆動側機器を駆動させることで、駆動源の共有化,小規模化が図られるようになってきている。このため、駆動伝達装置における駆動力の伝達経路を切換える機能を奏する切換機構について、被駆動側機器に対応した種々改良の要請が生じてきている。。
【0003】
従来、駆動力の伝達経路を切換える機能を有する駆動伝達装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、駆動部と駆動部の両側に配置された従動部との間に軸方向にスライドするピンを備え、駆動部と両従動部とがピンで選択的に連結される駆動伝達装置が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る駆動伝達装置は、駆動力を伝達しようとする従動部と駆動部とをピンのスライド操作で連結させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−15828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る駆動伝達装置では、駆動力の伝達経路の切換えにピンのスライド操作が必要であるため、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することができないという問題点がある。また、ピンのスライド操作のための操作部を外部に露出するように設けなければならないため、コンパクト性が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することのできるコンパクトな駆動伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る駆動伝達装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、駆動力を受けて回転する駆動体と、駆動体の両端面に接合され駆動体と同軸線上で回転される従動体と、駆動体,従動体の間に設けられ駆動体の一方向の回転に従動体を追従して回転させ他方向の回転に従動体を追従して回転させないワンウエイクラッチと、駆動体の内部に設けられワンウエイクラッチを切換制御するカムとを備え、ワンウエイクラッチは両従動体側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする。
【0011】
この手段では、ワンウエイクラッチが駆動体,従動体の間に設けられカムが駆動体の内部に設けられることで、ワンウエイクラッチ,カムが駆動体,従動体から露出されなくなる。そして、駆動体が正方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって一方の従動体のみが正方向に回転され、駆動体が逆方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって他方の従動体のみが逆方向に回転される。
【0012】
また、請求項2では、請求項1の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチは、駆動体の内部に設けられカムによって駆動体の軸方向へスライドされるスライダと、スライダに連結され駆動体の両端面から選択的に出没するクラッチピンと、従動体の駆動体への当接面に設けられてクラッチピンが係合するクラッチ溝とからなることを特徴とする。
【0013】
この手段では、ワンウエイクラッチがクラッチピン,クラッチ溝の係合構造とされクラッチピンがカムに規制されたスライダのスライドによって動作されることで、構造が簡素化される。
【0014】
また、請求項3では、請求項2の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチのスライダとクラッチピンとは弾性部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、ワンウエイクラッチのスライダ,クラッチピンの間に弾性部材が介装されることで、スライダ,クラッチピンの間に衝撃吸収機能が備えられる。
【0016】
また、請求項4では、請求項2または3の駆動伝達装置において、カムは駆動体の回転中心に駆動体の回転を支持する固定軸として配設され円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、カムが駆動体の回転を支持する固定軸とされ円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられることで、ワンウエイクラッチのスライダの動作が精密に案内される。
【0018】
また、請求項5では、請求項1〜4のいずれかの駆動伝達装置において、従動体はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時にクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられていることを特徴とする。
【0019】
この手段では、従動体にワンウエイクラッチのクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられることで、ワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時のクラッチピンの不測の動作を防止することができる。
【0020】
また、請求項6では、請求項5の駆動伝達装置において、シャッタ機構はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への係合時にクラッチピンの移動に応動してラッチ溝を開放するものであることを特徴とする。
【0021】
この手段では、シャッタ機構がワンウエイクラッチのクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放することで、シャッタ機構のクラッチ溝の開放のタイミングが正確になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る駆動伝達装置は、ワンウエイクラッチが駆動体,従動体の間に設けられカムが駆動体の内部に設けられることで、ワンウエイクラッチ,カムが駆動体,従動体から露出されなくなるため、全体がコンパクト化される効果がある。また、駆動体が正方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって一方の従動体のみが正方向に回転され、駆動体が逆方向に回転されるとカムで切換制御されたワンウエイクラッチによって他方の従動体のみが逆方向に回転されるため、駆動力の伝達経路の切換えを自動的に実行することができる効果がある。
【0023】
さらに、請求項2として、ワンウエイクラッチがクラッチピン,クラッチ溝の係合構造とされクラッチピンがカムに規制されたスライダのスライドによって動作されることで、構造が簡素化されるため、製造が安価,容易となる効果がある。
【0024】
さらに、請求項3として、ワンウエイクラッチのスライダ,クラッチピンの間に弾性部材が介装されることで、スライダ,クラッチピンの間に衝撃吸収機能が備えられるため、ワンウエイクラッチの係合が円滑,非衝撃的に行われる効果がある。
【0025】
さらに、請求項4として、カムが駆動体の回転を支持する固定軸とされ円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられることで、ワンウエイクラッチのスライダの動作が精密に案内されるため、ワンウエイクラッチの動作の精度が高くなる効果がある。
【0026】
さらに、請求項5として、従動体にワンウエイクラッチのクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられることで、ワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時のクラッチピンの不測の動作を防止することができるため、ワンウエイクラッチの誤動作を防止することができる効果がある。
【0027】
さらに、請求項6として、シャッタ機構がワンウエイクラッチのクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放することで、シャッタ機構のクラッチ溝の開放のタイミングが正確になるため、ワンウエイクラッチのクラッチピンとシャッタ機構との衝突が防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る駆動伝達装置を実施するための形態の断面図であり、(A),(B)に要部の異なる動作状態が示されている。
【図2】図1の要部の動作を示す縦断面図であり、(A),(B)に逆方向への動作状態が示されている。
【図3】図1の一方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図4】図1の他方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図5】図1の要部の縦断面図である。
【図6】図1の他の要部の側面図である。
【図7】図1の他の要部の側面図である。
【図8】図7の一部拡大図である。
【図9】図1の他の要部の斜視図である。
【図10】図1の組込例を示す断面図である。
【図11】図10の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る駆動伝達装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
この形態では、被駆動側機器をチェーン駆動するに好適なものを示してある。
【0031】
この形態は、図1に示すように、駆動体1,従動体2,3,カム4,ワンウエイクラッチ5,シャッタ機構6を主要部として構成されている。そして、図10,図11に示すように、これ等の収容部が潤滑オイルを封入して設置を容易にするハウジング7に組込まれている。
【0032】
駆動体1は、図1,図6に示すように、リング形の駆動ギア1aの両側に円筒カップ形のケーシング1bが最中合わせに接合されてボルト1cで中空体に組付けられてなる。ケーシング1bは、図6に示すように、中心に軸受孔1baが穿孔され、軸受孔1baの周囲に120度の角度を介して放射状に3個の貫通孔1bbが穿孔されている。軸受孔1baには、カム4を支持するベアリング8が固定される。貫通孔1bbには、ワンウエイクラッチ5の後述のクラッチピン5bのピン本体5baのスライドを受けるスリーブ9が固定される。
【0033】
従動体2,3は、図1,図7,図9に示すように、駆動体1のケーシング1bの両端面(外側面)にそれぞれ当接される円盤形に形成されてなるもので、中心に軸受孔2a,3aが穿孔され、軸受孔2a,3aの周囲に120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個のオイル孔2b,3bが穿孔されている。軸受孔2a,3aには、カム4を支持するベアリング10が内周部に固定された従動ギア11,12が固定される。オイル孔2b,3bは、ハウジング7に封入されている潤滑オイルの流通を確保する。
【0034】
従って、従動体2,3は、カム4を介して駆動体1と同軸線上に配置されていることになる。
【0035】
カム4は、図1〜図5に示すように、小径部分4aである両端部がハウジング7に固定された段付きの固定軸として駆動体1,従動体2,3に貫通して配設されなるもので、中空体の駆動体1の内部に位置する大径部分4bの周面に周方向に刻設された案内溝4cが設けられている。案内溝4cは、平行な2条の主溝4caと主溝4caを斜め方向に連通する連絡溝4cbとからなる。案内溝4cの主溝4caは、図2に示すように、相対的に溝底の深い部分4caaと相対的に溝底の浅い部分4cabとが形成されて、溝底の深い部分4caaと溝底の浅い部分4cabとの間に段差部4cacが形成されている。なお、案内溝4cの主溝4caの溝底の浅い部分4cabは、主溝4caに対して連絡溝4cbが鋭角に交差する側に近接した一部分にのみ形成されている。
【0036】
従って、従動体2,3は、カム4に対して回転可能に支持されていることになる。
【0037】
ワンウエイクラッチ5は、図1〜図5,図7,図9に示すように、スライダ5a,クラッチピン5b,弾性部材5c,クラッチ溝5dからなる。スライダ5aは、図1,図5に示すように、変形のリング盤5aaと、リング盤5aaの中心部に穿孔されてカム4が挿通される中心孔5abと、駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbに対応してリング盤5aaの外周部付近に120度の角度を介して放射状に3個穿孔されクラッチピン5bのスライドを許容するスライド用孔5acと、リング盤5aaにスライド用孔5abとは60度の角度を隔てて120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個穿孔されたガイド孔5adと、ガイド孔5adに挿通されて両端部が駆動体1のケーシング1bに固定されてカム4と平行に配設された6本のガイドシャフト5aeと、リング盤5aaに120度の角度を介して隣接する2個のガイド孔5adの間にリング盤5aaの中心に向けて放射状にスライド可能に支持され先端がカム4の案内溝4bを移動する案内子5afと、案内子5afをリング盤5aaの中心方向(カム4の案内溝4b方向)に弾圧付勢するコイルスプリング5agとからなる。クラッチピン5bは、スライダ5aのスライド用孔5abに挿通されて駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbから選択的に出没される軸長をもった丸棒形の3本のピン本体5baと、ピン本体5baの両端部から少し中央寄りにそれぞれ固定されたリング形の弾性部材受5bbとからなる。弾性部材5cは、コイルスプリングからなるもので、クラッチピン5bのピン本体5baに外装されてクラッチピン5bの両側の弾性部材受5bbとスライダ5aのリング盤5aaとの間にそれぞれ弾圧装着されている。クラッチ溝5dは、図7,図9に示すように、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面(内側面)にオイル孔2b,3bを含んで周方向に円弧形に延びて刻設されクラッチピン5bのピン本体5baが係合されるもので、溝底の深さが一定の平坦部5daと、溝底の深さが傾斜して平坦部5daの一端部側にのみ設けられた傾斜部5dbとからなる。クラッチ溝5dの平坦部5daは、従動体2,3のオイル孔2b,3bが位置されている。クラッチ溝5dの傾斜部5dbは、図9に示すように、両側の従動体2,3で平坦部5daに対して逆に配置されている。
【0038】
シャッタ機構6は、図7,図8に示すように、シャッタ片6a,支軸6b,案内ピン6c,トーションコイルスプリング6dからなる。シャッタ片6aは、円弧片形に形成されて従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に当接され支軸6bで回動可能に支持されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを開閉するもので、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dに一部重なる円弧形の外周部分に曲線形の傾斜部6aaが設けられ、回動の先端部付近に案内ピン6cを受ける案内溝6abが設けられている。支軸6bは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの傾斜部5db付近に配置され、シャッタ片6aを回動の先端部がワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daの一部に重なることができるように支持している。案内ピン6cは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5da付近に配置され、シャッタ片6aの回動を案内する。トーションコイルスプリング6dは、支軸6bに同軸に装着されてシャッタ片6aと従動体2,3とに係止されて、シャッタ片6aをワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖する方向へ弾圧付勢している。
【0039】
さらに、この形態では、図10,図11に示すように、従動体2,3に固定された従動ギア11,12に中継ギア13,14を介して出力軸15,16,出力スプロケット17,18が噛合連結されている。出力スプロケット17,18は、ハウジング7から露出されている。また、駆動体1の駆動ギア1aには、駆動モータ19から傘歯車等の中継ギア20が噛合連結されている。
【0040】
この形態によると、ワンウエイクラッチ5が駆動体1,従動体2,3の間に設けられ、カム4が駆動体1の内部に設けられ、ワンウエイクラッチ5,カム4が駆動体1,従動体2,3から露出されなくなるため、全体がコンパクト化される。また、ワンウエイクラッチ5がクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合構造とされクラッチピン5bがカム4に規制されたスライダ5aのスライドによって動作されるため、構造が簡素化され製造が安価,容易となる。
【0041】
この形態では、図1(A)に示すように、駆動モータ19が一方向(正方向)に回転駆動されると、中継ギア20を介して駆動体1(駆動ギア1a)が正方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面右側の主溝4caを移動し(図2(A),図3(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面右側の主溝4caに変位して移動する(図2(B),図3(B)参照)。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afの移動については、コイルスプリング5agによって円滑性が確保され、固定軸として配設されているカム4の案内溝4cに案内されることによって精度が確保されている。
【0042】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面右側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面右側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面右側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dに係合される。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合については、クラッチピン5bのスライドが衝撃吸収機能を有する弾性部材5cの弾力を介し、クラッチピン5bのピン本体5baがクラッチ溝5dの傾斜部5dbから平坦部5daに滑込むように緩慢に侵入することによって、円滑性,非衝撃性が確保されている。なお、図8に示すように、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daに侵入したクラッチピン5bのピン本体5baは、シャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaに当接して、クラッチ溝5dを閉鎖しているシャッタ機構6のシャッタ片6aを自動的に開放する。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bのピン本体5baのシャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaへの当接については、傾斜部6aaが滑性のある曲線形であることによって衝撃が緩和されシャッタ機構6の円滑な動作が確保され、シャッタ機構6によるワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの開放のタイミングが正確になってワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bとシャッタ機構6のシャッタ片6aとの衝突が防止される。
【0043】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面右側の従動体2の正方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア11,中継ギア13,出力軸15を介して図面右側の出力スプロケット17の正方向への回転出力を生じさせる。
【0044】
駆動体1,従動体2の正方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面左側の従動体3がフリー回転可能な状態にっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面左側の従動体3に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0045】
また、図1(B)に示すように、駆動モータ19が他方向(逆方向)に回転駆動されると、中継ギア20を介して駆動体1(駆動ギア1a)が逆方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面左側の主溝4caに変位して移動し(図2(B),図4(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面左側の主溝4caを移動する(図2(A),図4(B)参照)。
【0046】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面左側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面左側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面左側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dに係合される。
【0047】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面左側の従動体3の逆方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア12,中継ギア14,出力軸16を介して図面右側の出力スプロケット18の逆方向への回転出力を生じさせる。
【0048】
駆動体1,従動体3の逆方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面右側の従動体2がフリー回転可能な状態にっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面右側の従動体2に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0049】
この形態によると、駆動力の伝達経路の切換えが操作部を設けなくとも駆動側の回転方向の切換に対応して自動的に実行されることになる。
【0050】
以上、図示した形態の外に、従動ギア11,12,中継ギア13,14,出力軸15,16,出力スプロケット17,18として他の駆動伝達構造を選択することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1
駆動体
2,3 従動体
4 カム
4c 案内溝
5 ワンウエイクラッチ
5a スライダ
5b クラッチピン
5c 弾性部材
5d クラッチ溝
6 シャッタ機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を受けて回転する駆動体と、駆動体の両端面に接合され駆動体と同軸線上で回転される従動体と、駆動体,従動体の間に設けられ駆動体の一方向の回転に従動体を追従して回転させ他方向の回転に従動体を追従して回転させないワンウエイクラッチと、駆動体の内部に設けられワンウエイクラッチを切換制御するカムとを備え、ワンウエイクラッチは両従動体側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチは、駆動体の内部に設けられカムによって駆動体の軸方向へスライドされるスライダと、スライダに連結され駆動体の両端面から選択的に出没するクラッチピンと、従動体の駆動体への当接面に設けられてクラッチピンが係合するクラッチ溝とからなることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチのスライダとクラッチピンとは弾性部材を介して連結されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項2または3の駆動伝達装置において、カムは駆動体の回転中心に駆動体の回転を支持する固定軸として配設され円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの駆動伝達装置において、従動体はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時にクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項5の駆動伝達装置において、シャッタ機構はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への係合時にクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放するものであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項1】
駆動力を受けて回転する駆動体と、駆動体の両端面に接合され駆動体と同軸線上で回転される従動体と、駆動体,従動体の間に設けられ駆動体の一方向の回転に従動体を追従して回転させ他方向の回転に従動体を追従して回転させないワンウエイクラッチと、駆動体の内部に設けられワンウエイクラッチを切換制御するカムとを備え、ワンウエイクラッチは両従動体側で回転が追従される方向が逆向きであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチは、駆動体の内部に設けられカムによって駆動体の軸方向へスライドされるスライダと、スライダに連結され駆動体の両端面から選択的に出没するクラッチピンと、従動体の駆動体への当接面に設けられてクラッチピンが係合するクラッチ溝とからなることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、ワンウエイクラッチのスライダとクラッチピンとは弾性部材を介して連結されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項2または3の駆動伝達装置において、カムは駆動体の回転中心に駆動体の回転を支持する固定軸として配設され円周面にワンウエイクラッチのスライダのスライドを案内する案内溝が設けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの駆動伝達装置において、従動体はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への非係合時にクラッチ溝を閉鎖するシャッタ機構が取付けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項5の駆動伝達装置において、シャッタ機構はワンウエイクラッチのクラッチピンのクラッチ溝への係合時にクラッチピンの移動に応動してクラッチ溝を開放するものであることを特徴とする駆動伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−216565(P2010−216565A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63716(P2009−63716)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(591218293)株式会社立和運輸倉庫 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(591218293)株式会社立和運輸倉庫 (7)
【Fターム(参考)】
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