説明

駆動力伝達機構および画像形成装置

【課題】駆動力伝達部材の中心軸と入力部材の中心軸とのずれの許容範囲を大きくすることができる駆動力伝達機構および画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】駆動力伝達機構60は、回転駆動軸62Bと一体回転可能で、かつ回転駆動軸62Bの軸方向に進退可能で、かつ先端部64Cが軸方向と直交する方向に揺動可能で、先端部64Cが入力部材65の凹形状部65A内に係合する駆動力伝達部材64を有する。回転駆動軸62Bは、駆動力供給体に駆動力受動体(プロセスカートリッジ46)が装着された状態で、前記状態で駆動力伝達部材64の先端部64Cが進退方向から見て凹形状部65Aと少なくとも一部で重なり、駆動力伝達部材64の先端面F1には、その回転軸線L3から径方向にずれた位置に、凹形状部65Aの縁に内側から係合可能な突起64Gが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源を有する駆動力供給体からの駆動力を、当該駆動力供給体に着脱可能となる駆動力受動体に伝達する駆動力伝達機構と、この駆動力伝達機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トナー像を担持して回転する感光ドラム等を備えるプロセスカートリッジと、当該プロセスカートリッジが着脱可能となる装置本体と、装置本体に設けられた駆動源からプロセスカートリッジに駆動力を伝達する駆動力伝達機構とを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術における駆動力伝達機構は、プロセスカートリッジに回転可能に設けられる入力部材と、装置本体に回転可能に設けられる回転駆動軸と、当該回転駆動軸と一体回転可能で、かつカートリッジに向けて回転駆動軸の回転軸線と平行な方向に進退可能な駆動力伝達部材を備えている。
【0003】
さらに、この技術では、回転駆動軸の先端側が基端側よりも小径になるように形成されている。これにより、駆動力伝達部材が前進した際には、駆動力伝達部材と回転駆動軸の先端側部分との間に遊びができて、駆動力伝達部材が基端側を中心に揺動可能となるため、回転駆動軸の中心軸と入力部材の中心軸とが多少ずれた場合であっても両者が良好に係合して、駆動力を伝達することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−162913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、製造誤差等によりプロセスカートリッジの装着時に回転駆動軸の中心軸と入力部材の中心軸とが許容範囲を超えてずれた場合には、前進する駆動力伝達部材の先端部の回転中心付近が入力部材の凹形状部の縁に当接した後、その一部が凹形状部内に入り込むように傾いた姿勢で保持されるおそれがある。もしくは、駆動力伝達部材が前進時に揺動することで、先端部の回転中心付近が入力部材の凹形状部の縁に当接して、その一部が凹形状部内に入り込むように傾いた姿勢で保持されるおそれがある。
【0006】
そして、このように傾いた姿勢に保持された場合には、駆動力伝達部材に駆動力が伝達されても、凹形状部の縁に当接した先端部の回転中心を中心にして駆動力伝達部材が回転し続け、凹形状部内に入り込まず、駆動力が伝達されないという可能性もあった。
【0007】
したがって、従来技術においては、プロセスカートリッジと装置本体との位置決め部分を、高精度に製作しなくてはならない、あるいは、プロセスカートリッジの入力部材や、装置本体の回転駆動軸、及び駆動力伝達部材を製作する際の位置精度が要求されるといった課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、回転駆動軸の中心軸と入力部材の中心軸とのずれの許容範囲を大きくすることができる駆動力伝達機構および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る駆動力伝達機構は、駆動源を有する駆動力供給体と、当該駆動力供給体に着脱可能となる駆動力受動体との間に設けられ、前記駆動力供給体からの駆動力を前記駆動力受動体に伝達する駆動力伝達機構であって、前記駆動力受動体に回転可能に設けられ、前記駆動力供給体からの駆動力を受ける凹形状部を有する入力部材と、前記駆動力供給体に回転可能に設けられた回転駆動軸と、当該回転駆動軸と回転方向に一体回転可能で、かつ前記駆動力受動体に向けて当該回転駆動軸の回転軸線と平行な方向に進退可能で、かつ前記駆動力受動体側の先端部が前記回転軸線と直交する方向に揺動可能となるように前記回転駆動軸に支持され、当該先端部が前記凹形状部内に入り込んで係合することで前記入力部材と一体回転可能となる駆動力伝達部材と、を有し、前記駆動力供給体に前記駆動力受動体が装着されたとき、前記入力部材は、前記回転駆動軸の回転軸線にほぼ平行な回転軸線を有し、かつまだ前記駆動力伝達部材の先端部が前記凹形状部内に入り込んでいない状態で、前記回転軸線方向から見て前記凹形状部が前記駆動力伝達部材の先端部と少なくとも一部で重なる位置にあり、前記駆動力伝達部材の先端部の前記凹形状部側の先端面には、当該駆動力伝達部材の回転軸線から径方向にずれた位置に、前記凹形状部の縁に前記駆動力伝達部材の先端部が当接して傾いた場合に前記凹形状部の縁に内側から係合可能な突起が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記駆動力伝達機構を備え、前記駆動力供給体が、装置本体であり、前記駆動力受動体が、前記装置本体に着脱可能となるカートリッジであることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、駆動力伝達部材の先端面が入力部材の凹形状部の縁に当接し、駆動力伝達部材が斜めの姿勢で維持された場合であっても、その後、駆動力伝達部材が回転軸線を中心に回転することで先端面の突起が凹形状部の縁に内側から係合する。このような係合により、今度は、その係合部分を中心に駆動力伝達部材が回転するので、駆動力伝達部材のうち凹形状部の外側にはみ出した部分が凹形状部の内側に向けて回動して、駆動力伝達部材の先端部が入力部材の凹形状部内に確実に入り込む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動力伝達部材の先端面が凹形状部の縁に当接した場合であっても、駆動力伝達部材の先端部を確実に凹形状部に入り込ませることができるので、回転駆動軸の中心軸と入力部材の中心軸とのずれの許容範囲を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラーレーザプリンタを示す断面図である。
【図2】装置本体からドロワを取り出した状態を示す断面図である。
【図3】駆動力伝達機構を示す平面図である。
【図4】駆動力伝達機構を係合突起が含まれるような断面で切った断面図である。
【図5】駆動力伝達機構を突起が含まれるような断面で切った断面図(a)と、駆動力伝達部材の先端部を先端から見た図(b)と、凹形状部を開口側から見た図(c)である。
【図6】回転駆動体と入力部材の各回転軸線がずれている場合であって、駆動力伝達部材の前進時に駆動力伝達部材が揺動した場合の動作を示す断面図(a)〜(c)である。
【図7】突起が凹形状部の外側から凹形状部内に入るまでの動作を示す説明図(a),(b)である。
【図8】突起が凹形状部内に入ってからの駆動力伝達部材の動作を示す説明図(a)〜(d)である。
【図9】回転駆動体と入力部材の各回転軸線が一致している場合に、駆動力伝達部材の先端面が入力側係合部に当接して斜めになっている状態を示す断面図である。
【図10】回転駆動体と入力部材の各回転軸線が一致している場合に、駆動力伝達部材の突起が外壁部等に当接して斜めになっている状態を示す断面図である。
【図11】先端面に突起を2つ設けた形態を示す説明図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明においては、まず、図1により一実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラーレーザプリンタの全体構成を簡単に説明し、その後、本発明の特徴部分について詳細に説明する。
【0015】
<カラーレーザプリンタの全体構成>
図1に示すように、カラーレーザプリンタ1は、駆動力供給体の一例としての装置本体2内に記録シートSHを供給する給紙部30と、この給紙部30から給紙された記録シートSH上に画像を形成する画像形成部40と、この画像形成部40により画像が形成された記録シートSHを装置本体2から排出する排紙部50とを備えている。
【0016】
なお、図1に矢印で示す上下、左右、前後の方向は、カラーレーザプリンタ1の前(手前)側に立った者から見た方向であり、以下の説明において、上下、左右、前後の方向は、特に断りのない限り、図1に矢印で示した方向に準じる。
【0017】
装置本体2の前壁には、後述するドロワ45を着脱するための開口部2Aが形成されるとともに、この開口部2Aを開閉するフロントカバー21が、下端に設けられた軸を中心に揺動可能に設けられている。
【0018】
給紙部30は、装置本体2に着脱可能な給紙トレイ31と、給紙トレイ31から記録シートSHを画像形成部40へ搬送する用紙供給機構32とを備えている。
【0019】
画像形成部40は、スキャナ部41、プロセス部42、転写部43および定着部44を備えている。
【0020】
スキャナ部41は、図示はしないが、レーザ発光部、ポリゴンミラー、複数のレンズおよび反射鏡を備えている。スキャナ部41では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応したレーザ光を、プロセス部42の各感光ドラム47Aに出射する。
【0021】
プロセス部42は、スキャナ部41と転写部43の間に配置されて装置本体2に着脱可能に装着されるドロワ45を備えている。ドロワ45は、フロントカバー21を開放した状態において、装置本体2内の収納位置(図1の位置)と、装置本体2外の離脱位置(図2の位置)との間で移動可能となっている。そして、このドロワ45内には、駆動力受動体の一例としての4つ(複数)のプロセスカートリッジ46が記録シートSHの搬送方向に沿って配列されている。なお、各プロセスカートリッジ46は、ドロワ45に着脱可能に構成されていてもよいし、一体に設けられていてもよい。
【0022】
各プロセスカートリッジ46は、下部に配置されたドラムサブユニット47と、ドラムサブユニット47に着脱可能に連結される現像ユニット48と、現像ユニット48に着脱可能に連結される現像剤カートリッジ49とを備えている。
【0023】
ドラムサブユニット47は、感光ドラム47Aや帯電器(符号省略)などを備えている。感光ドラム47Aは、ドラムサブユニット47に回転可能に支持されている。
【0024】
現像ユニット48は、現像ローラ48Bや供給ローラ48A等を備えている。また、現像剤カートリッジ49内には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の非磁性一成分のトナー(現像剤)が収容されている。
【0025】
このように構成されるプロセス部42では、帯電器によって帯電された感光ドラム47Aの表面が、スキャナ部41から出射されるレーザ光によって露光されることで、その露光部分の電位が下がって感光ドラム47A上に画像データに基づく静電潜像が形成される。さらに、感光ドラム47Aに接触する現像ローラ48Bによってトナーが感光ドラム47A上の静電潜像に供給されることで、感光ドラム47A上にトナー像が担持される。
【0026】
転写部43は、駆動ローラ43A、従動ローラ43B、搬送ベルト43Cおよび転写ローラ43Dを備えている。
【0027】
搬送ベルト43Cは、複数の感光ドラム47Aに対向して配置される。この搬送ベルト43Cは、駆動ローラ43Aの回転駆動により、従動ローラ43Bとともに回転駆動される。そして、この搬送ベルト43Cの内側には、各感光ドラム47Aとの間で搬送ベルト43Cを挟み込む転写ローラ43Dが配置されている。転写ローラ43Dには、図示しない高圧基板から転写バイアスが印加される。
【0028】
そして、転写部43では、搬送ベルト43Cによって搬送される記録シートSHが、感光ドラム47Aと転写ローラ43D間に供給されると、感光ドラム47A上のトナー像が記録シートSHに転写される。
【0029】
定着部44は、加熱ローラ44Aおよび加圧ローラ44Bを備えている。この定着部44では、加熱ローラ44Aと加圧ローラ44Bとの間で記録シートSHを挟持しつつ送り出すことで、記録シートSH上のトナー像を熱定着させる。
【0030】
排紙部50は、複数の搬送ローラ(符号省略)を有しており、定着部44から排出された記録シートSHを、上方の排紙トレイ53へ搬送する。
【0031】
<駆動力伝達機構>
次に、図3等を参照して、装置本体2とプロセスカートリッジ46との間に設けられ、装置本体2からの駆動力をプロセスカートリッジ46に伝達する駆動力伝達機構60について説明する。
【0032】
図3に示すように、駆動力伝達機構60は、装置本体2側に設けられるモータ等の駆動源61と、回転駆動体62と、バネ手段の一例としてのコイルバネ63と、駆動力伝達部材64と、プロセスカートリッジ46側に設けられる入力部材65とを備えている。
【0033】
駆動源61は、装置本体2に設けられており、回転駆動体62に直接または所定数のギヤを介して間接的に駆動力を伝達している。
【0034】
回転駆動体62は、装置本体2に回転可能に設けられており、主に、駆動源61から駆動力61が伝達されるギヤ部62Aと、ギヤ部62Aの中心部から駆動力伝達部材64に向けて突出する円筒状の回転駆動軸62Bとを有している。なお、回転駆動軸62Bは、装置本体2にプロセスカートリッジ46が装着された状態で、入力部材65の回転軸線L1にほぼ平行な回転軸線L2を有するように配置されている。その状態で、駆動力伝達部材64の先端部64Cは、入力部材65の後述する凹形状部65Aに入り込む前において、回転軸線L2方向から見て凹形状部65Aと少なくとも一部で重なる位置にある。また、「装置本体2にプロセスカートリッジ46が装着された状態」とは、本実施形態においてはプロセスカートリッジ46を装着したドロワ45を装置本体2内の所定位置に装着した状態をいう。
【0035】
コイルバネ63は、回転駆動体62と駆動力伝達部材64との間に配設されており、駆動力伝達部材64を入力部材65側に向けて付勢している。
【0036】
駆動力伝達部材64は、回転駆動体62と回転方向に一体回転可能で、かつ入力部材65に向けて回転駆動軸62Bの軸方向(回転軸線L2と平行な方向)に進退可能に構成されている。具体的に、駆動力伝達部材64は、回転駆動軸62Bが入り込む筒部64Aと、筒部64Aの入力部材65側の端部を閉鎖して入力部材65と対向する壁64Bと、壁64Bから入力部材65側に突出する先端部64Cとを備えている。
【0037】
筒部64Aの基端側(回転駆動軸62B側)には、径方向内側に向けて突出する係合突起64Dが形成されている。この係合突起64Dは、図4に示すように、筒部64Aにおいて、2箇所に対向するように設けられている。そして、2つの係合突起64Dが、回転駆動軸62Bの先端に径方向外側へ突出するように形成された係合壁B1に軸方向に係合するようになっており、これにより回転駆動軸62Bからの駆動力伝達部材64の脱落が防止されている。
【0038】
また、駆動力伝達部材64の筒部64Aの内周面であって、上記係合突起64Dが設けられていない範囲には、径方向内側に突出するリブA1が内周面に沿うように形成されている。このリブA1の回転軸線L2に平行となる方向の端面が回転駆動軸62の係合壁B1に回転方向で係合することにより、駆動力伝達部材64が回転駆動軸62Bと回転方向に一体回転可能となっている。
【0039】
図5(a)に示すように、筒部64Aは、回転駆動軸62Bに対して径方向に遊隙を持って位置している。これにより、駆動力伝達部材64は、その先端部64Cが回転駆動軸62Bの回転軸線L2と直交する方向に揺動可能となるように、回転駆動軸62Bに支持されている。
【0040】
筒部64Aの外周面には、径方向外側に延出する環状フランジ64Fが形成されており、この環状フランジ64Fがコイルバネ63で入力部材65側に付勢されている。なお、この環状フランジ64Fは、フロントカバー21の開放に応じて前進する図示せぬ公知のカム部材によって、コイルバネ63の付勢力に抗して回転駆動体62側に押されるようになっている。これにより、フロントカバー21の開放時に駆動力伝達部材64が入力部材65から退避して外れるようになっている。また、フロントカバー21の閉塞に応じて前記カム部材が退避して環状フランジ64Fから外れるようになっており、これによりフロントカバー21の閉塞時に駆動力伝達部材64がコイルバネ63に押されて前進して入力部材65と係合するようになっている。なお、上記カム部材は、フロントカバー21の開放によって操作するだけでなく、モータ、ソレノイドその他の駆動源によって操作することもできる。
【0041】
図5(b),(c)に示すように、先端部64Cは、入力部材65の端面に形成される凹形状部65A内に入り込んで当該凹形状部65Aに回転方向に対して係合可能な形状となっており、この先端部64Cが凹形状部65Aに係合することで、駆動力伝達部材64と入力部材65とが一体回転可能となっている。そして、先端部64Cの先端面F1には、駆動力伝達部材64の回転軸線L3から径方向にずれた位置に、凹形状部65Aの縁に内側から係合可能な突起64Gが形成されている。
【0042】
具体的に、先端部64Cは、駆動力伝達部材64の回転軸線L3を中心とした円柱状に形成される中心部64Hと、中心部64H(回転軸線)を挟んで互いに反対方向の径方向外側に延設される2つの伝達側係合部64Jとを備えている。各伝達側係合部64Jは、凹形状部65Aの後述する入力側係合部65Cと回転方向で係合するようになっており、一方の伝達側係合部64Jの端面には、前述した突起64Gが形成されている。なお、この突起64Gは、先細となる略半球状に形成されている。
【0043】
図5(a),(c)に示すように、入力部材65は、プロセスカートリッジ46に回転可能に設けられ、装置本体2からの駆動力を受ける凹形状部65Aを有している。凹形状部65Aは、有底筒状に形成されており、主に、筒状の外壁部65Bと、外壁部65Bから内側に向かって突出する2つの入力側係合部65Cとを有している。なお、詳細な説明は省略するが、入力部材65は、その一部にギヤ歯部を有し、このギヤ歯部は、前述した感光ドラム47Aや現像ローラ48Bなどの駆動ギヤに直接または間接的に係合して駆動力を伝達している。
【0044】
各入力側係合部65Cは、入力部材65の回転軸線L1を挟んで対向するように設けられており、それぞれ駆動力伝達部材64の先端部64Cの各伝達側係合部64Jと係合するようになっている。具体的には、入力側係合部65Cの回転軸線L1側に向かって延びる端縁と、伝達側係合部64Jの中心部64H側に向かって延びる端面とが回転方向に当接することにより係合する。なお、先端部64Cは、2つの伝達側係合部64Jを有するものだけでなく、回転軸線L3を中心とした非円形とし、凹形状部65Aもそれと回転方向に対して係合可能な形状であればよい。
【0045】
また、凹形状部65Aの底65Dの回転中心には、駆動伝達部材64と入力部材65とが係合した際に、駆動力伝達部材64の先端面F1と当接する半球状の凸部65E(図5(a)参照)が設けられている。なお、本実施形態では、底65Dは、その中心部分が駆動力伝達部材64側に突出されており、この突出した部分に凸部65Eが設けられている。これにより、回転駆動軸62Bの回転軸線L2と入力部材65の回転軸線L1とがずれてその両者間(凹形状部65A内)で駆動力伝達部材64が傾斜している場合であっても、駆動力伝達部材64の先端面F1が凸部65Eに当接していることで、先端面F1が底65Dに干渉することなく回転駆動軸62Bの回転を入力部材65に伝達することができる。
【0046】
そして、駆動力伝達部材64の突起64Gは、凹形状部65A内に入り込んでいる先端面F1が凸部65Eとの接点を中心に最大に揺動したときにおいて、凸部65Eおよび底65Dと干渉しないような高さで形成されている。これにより、駆動力伝達部材64と入力部材65が係合して駆動力が伝達される際に、突起64Gが駆動力伝達部材64の回転を妨げるのを防止することが可能となっている。
【0047】
次に、図6および図8を参照して、駆動力伝達機構60の作用について説明する。
例えば、図6(a)に示すように、入力部材65の回転軸線L1と回転駆動体62の回転軸線L2とが、製造誤差等によりずれている場合において、フロントカバー21の閉塞に伴って、駆動力伝達部材64が入力部材65に向けて前進すると、図6(b),(c)に示すように、駆動力伝達部材64が揺動した際に、その先端面F1の中心(回転軸線L3)付近が凹形状部65Aの縁に当接する場合がある。
【0048】
このように駆動力伝達部材64の先端面F1の中心付近が凹形状部65Aの縁に当接した状態で、装置本体2の駆動源61からの駆動力により回転駆動体62が回転すると、その回転力は、まず駆動力伝達部材64に伝達される。この際、駆動力伝達部材64の先端面F1に突起64Gを設けない構成では、駆動力伝達部材64の先端部64Cが入力部材65のどの部位にも引っ掛からずに、駆動力伝達部材64が、その回転軸線L3を中心に空回りし続けてしまうおそれがある。この場合、駆動力伝達部材64の回転が入力部材65に伝達されず、不具合を生じる。
【0049】
これに対し、本実施形態では、駆動力伝達部材64の先端面F1に突起64Gを設けている。駆動力伝達部材64が入力部材65に向けて前進する際の動きは、図6の場合と同様であり、先端面F1付近が凹形状部65Aの縁に当接した場合には、駆動力伝達部材64の揺動により、駆動力伝達部材64(先端部64C)の一部が凹形状部65A側に入り込むように傾いて当接する。例えば、図7(a),(b)に示すように、駆動力伝達部材64と入力部材65との当接時に突起64Gが凹形状部65A外に位置する場合には、突起64Gが形成されていない方の伝達側係合部64J側が、凹形状部65A側に入り込むように駆動伝達部材64は傾いた状態となる。この状態で、まず、駆動力伝達部材64が回転軸線L3を中心に図中矢印方向に回転することで、突起64Gは入力部材65の端面F2と当該入力部材65を囲う円筒部46Aの端面F3(図6(c)参照)との円形状に沿うように移動し、当該端面F2,F3に外側から近付いていく。ここで、円筒部46Aは、プロセスカートリッジ46に一体に形成されており、その端面F3が入力部材65の端面F2と略面一となっている。そして、突起64Gが端面F2,F3と当接しようとすると、先端部64Cのうち突起64Gとは反対側の部位が端面F2,F3に内側から近付くように駆動力伝達部材64が回転する。そして、突起64Gが端面F2,F3に外側から当接し、さらに端面F2,F3上を滑って凹形状部65A内に進んでいく。
【0050】
なお、この際、突起64Gが円筒部46Aの外周面(外壁部65Bの外周側)に当接し、係合する場合であっても、入力部材65との当接時に、駆動力伝達部材64の一部が凹形状部65A内に入り込むように傾いていることにより、突起64Gの先端のみが円筒部46Aの外周面に当接するので、駆動力伝達部材64の揺動によって突起64Gが円筒部46Aの外周面(角部)を容易に乗り越えることが可能となっている。より具体的には、駆動力伝達部材64の一部である突起64Gとは反対側の部位が凹形状部65A内に入り込むように傾いていることにより、円筒部46Aよりも外に位置する突起64Gの先端は、軸方向において端面F2,F3よりも離れた位置か或いは略同じ位置に位置するので、突起64Gと円筒部46Aの外周面とが係合する範囲は非常に小さな範囲となっている。そのため、円筒部46Aの外側に位置する突起64Gは、円筒部46Aの外周面に当接した際に、駆動力伝達部材64の揺動によって円筒部46Aおよび外壁部65Bを容易に乗り越えて、凹形状部65A内に入り込むことが可能となっている。
【0051】
図7(b)に示す状態から駆動力伝達部材64がさらに回転すると、駆動力伝達部材64が端面F2,F3に対して傾いていることにより、先端部64Cの突起64Gは凹形状部65Aの底に近付くように移動するとともに、先端部64Cの突起64Gとは反対側の部位は端面F2,F3から軸方向に離れるように移動する。
【0052】
そして、図8(a)に示すように、突起64Gが凹形状部65A内に入ると、コイルバネ63の付勢力により、突起64Gが凹形状部65Aの奥に押し込められるように駆動力伝達部材64が揺動した後、図8(b)に示すように、突起64Gが入力部材65の凹形状部65Aの縁(外壁部65B)に内側から係合する。
【0053】
突起64Gが入力部材65の凹形状部65Aの縁(外壁部65B)に内側から係合した後は、図8(c)に示すように、突起64Gと外壁部65Bとの係合部分TPを中心にして駆動力伝達部材64が回転する。これにより、駆動力伝達部材64の先端部64Cのうち凹形状部65Aの外側にはみ出した部分(突起64Gが形成されていない伝達側係合部64J)が凹形状部65Aの内側に向けて回動して、図8(d)に示すように、駆動力伝達部材64の先端部64Cが凹形状部65A内に迅速に入り込むこととなる。
【0054】
ここで、突起64Gが上記作用効果を発揮するための条件としては、駆動力伝達部材64の最大揺動時の回転軸線L3が入力部材65(円筒部46A)の外周縁よりも内側に位置することが必要である。すなわち、駆動力伝達部材64の最大揺動時に駆動力伝達部材64の一部が凹形状部65A内に入り込むことが可能である必要がある。そして、この条件によって、回転軸線L1,L2のずれ量の許容範囲が設定される。
【0055】
また、傾きの程度は、駆動力伝達部材64の先端面F1と端面F2,F3とのなす角よりも、先端面F1と凹形状部65Aの内周面とのなす角の方が大きくなるような角度とするのが望ましい。すなわち、先端面F1と凹形状部65Aの内周面とのなす角が大きい(直角に近い)程、突起64Gが凹形状部65Aの内周面(縁)に引っ掛かりやすく、先端面F1と端面F2,F3とのなす角が小さい程、端面F2,F3に対して突起64Gが滑りやすくなる(引っ掛かり難くなる)ので、前述した作用効果を良好に発揮することができる。
【0056】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
駆動力伝達部材64の先端面F1が凹形状部65Aの縁に当接した場合であっても、先端面F1に設けられた突起64Gが凹形状部65Aの縁に内側から引っ掛かることで、その係合部分TPを新たな回転中心とすることができる。これにより、駆動力伝達部材64の先端部64Cを凹形状部65A内に確実に入り込ませることができるので、回転軸線L1,L2のずれの許容範囲を大きくすることができる。すなわち、従来の許容範囲よりも回転軸線L1,L2のずれが大きい場合でも、駆動力伝達部材64と入力部材65とを係合させることができる。
【0057】
凹形状部65A内に入り込んでいる先端面F1が凸部65Eとの接点を中心に最大に揺動したときにおいて凸部65Eおよび底65Dと干渉しないような高さで突起64Gが形成されているので、突起64Gが駆動力伝達部材64の回転を妨げるのを防止することができる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、入力部材65の回転軸線L1と回転駆動体62の回転軸線L2とがずれている場合の例を説明したが、本発明はこれに限定されず、図9および図10に示すように、回転軸線L1,L2が一致している場合であっても本願発明の効果を得ることができる。すなわち、図9に示すように、駆動力伝達部材64の揺動により、先端面F1の中心付近が入力側係合部65Cの内縁と当接した場合であっても、前記実施形態と同様に、突起64Gが凹形状部65A内に入り込んで凹形状部65Aの縁に内側から係合する。また、図10に示すように、突起64Gが入力部材65の端面F2と円筒部46Aの端面F3とに直接当接した場合も、突起64Gが端面F2,F3上を滑った後、凹形状部65A内に入り込んで凹形状部65Aの縁に内側から係合する。この係合により、駆動力伝達部材64を入力部材54の凹形状部65Aに確実に導くことができる。
【0059】
前記実施形態では、2つの伝達側係合部64Jのうちの一方のみに突起64Gを設けたが、本発明はこれに限定されず、図11(a)に示すように、2つの伝達側係合部64Jの両方に突起64Gを設けてもよい。これによれば、図11(a),(b)に示すように、駆動力伝達部材64が凹形状部65Aの縁に当接した後は、駆動力伝達部材64が回転軸線L3を中心に半周する前にいずれかの突起64Gが凹形状部65Aの縁に内側から係合するので、より迅速に駆動力伝達部材64の先端部64Cを凹形状部65A内に入り込ませることができる。
【0060】
前記実施形態では、カラーレーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよいし、その他の駆動力を伝達する機構、例えばモータを内蔵した本体にボトル部を着脱可能にした食品用ミキサーにおいて、ボトル部内のカッターをモータと連結する動力伝達機構などに適宜本発明を適用してもよい。
【0061】
前記実施形態では、バネ手段としてコイルバネ63を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば線バネや皿バネなどを採用してもよい。
【0062】
前記実施形態では、回転駆動軸62Bに、駆動力伝達部材64の筒部64Aを嵌め込む構造としたが、本発明はこれに限定されず、回転駆動軸と筒部を逆に形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 カラーレーザプリンタ
2 装置本体
46 プロセスカートリッジ
60 駆動力伝達機構
61 駆動源
62 回転駆動体
62B 回転駆動軸
63 コイルバネ
64 駆動力伝達部材
64C 先端部
64G 突起
64J 伝達側係合部
65 入力部材
65A 凹形状部
65C 入力側係合部
65E 凸部
F1 先端面
L1 回転軸線
L2 回転軸線
L3 回転軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を有する駆動力供給体と、当該駆動力供給体に着脱可能となる駆動力受動体との間に設けられ、前記駆動力供給体からの駆動力を前記駆動力受動体に伝達する駆動力伝達機構であって、
前記駆動力受動体に回転可能に設けられ、前記駆動力供給体からの駆動力を受ける凹形状部を有する入力部材と、
前記駆動力供給体に回転可能に設けられた回転駆動軸と、
当該回転駆動軸と回転方向に一体回転可能で、かつ前記駆動力受動体に向けて当該回転駆動軸の回転軸線と平行な方向に進退可能で、かつ前記駆動力受動体側の先端部が前記回転軸線と直交する方向に揺動可能となるように前記回転駆動軸に支持され、当該先端部が前記凹形状部内に入り込んで係合することで前記入力部材と一体回転可能となる駆動力伝達部材と、を有し、
前記駆動力供給体に前記駆動力受動体が装着されたとき、前記入力部材は、前記回転駆動軸の回転軸線にほぼ平行な回転軸線を有し、かつまだ前記駆動力伝達部材の先端部が前記凹形状部内に入り込んでいない状態で、前記回転軸線方向から見て前記凹形状部が前記駆動力伝達部材の先端部と少なくとも一部で重なる位置にあり、
前記駆動力伝達部材の先端部の前記凹形状部側の先端面には、当該駆動力伝達部材の回転軸線から径方向にずれた位置に、前記凹形状部の縁に前記駆動力伝達部材の先端部が当接して傾いた場合に前記凹形状部の縁に内側から係合可能な突起が形成されていることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項2】
前記駆動力伝達部材は、前記回転駆動軸の外周に径方向に遊隙を持って位置し、前記回転軸線と平行な方向に摺動可能でかつ前記回転軸線と直交する方向に揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動力伝達機構。
【請求項3】
前記駆動力伝達部材は、バネ手段で前記入力部材側に向け付勢されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動力伝達機構。
【請求項4】
前記凹形状部は、
筒状の外壁部と、
前記外壁部から内側に向かって突出して、前記駆動力伝達部材の先端部と回転方向で係合する入力側係合部と、を有し、
前記駆動力伝達部材の前記先端面が前記外壁部の前記駆動力伝達部材側の端面に当接したときに前記駆動力伝達部材の突起が前記外壁部の外側に位置する場合に、前記駆動力伝達部材の回転により前記駆動力伝達部材の突起が前記外壁部の外周側または端面に当接可能であり、
前記駆動力伝達部材は、前記駆動力伝達部材の突起と前記外壁部の外周側または端面との当接により、前記回転駆動軸に対して揺動することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の駆動力伝達機構。
【請求項5】
前記駆動力伝達部材の先端部は、
回転軸線を挟んで互いに反対方向の径方向外側に延設されて前記入力側係合部と回転方向で係合する2つの伝達側係合部を有し、
前記突起は、前記2つの伝達側係合部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動力伝達機構。
【請求項6】
前記突起は、前記2つの伝達側係合部にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5に記載の駆動力伝達機構。
【請求項7】
前記凹形状部の底の回転中心には、前記駆動力伝達部材の先端面と当接する半球状の凸部が設けられ、
前記凹形状部に入り込んでいる前記先端面が前記凸部との接点を中心に最大に揺動したときに前記突起が前記凸部および前記底と干渉しないような高さで形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の駆動力伝達機構。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の駆動力伝達機構を備え、
前記駆動力供給体が、装置本体であり、
前記駆動力受動体が、前記装置本体に着脱可能となるカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−154326(P2011−154326A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17312(P2010−17312)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】