説明

骨粗鬆症の予防及び治療効果を有するフラン誘導体並びにこれを含む薬学的組成物

本発明は、骨粗鬆症を予防、治療するためのフラン誘導体及びこれを含む薬学的組成物に関する。本発明のフラン誘導体は、副作用を低減させつつ骨の増殖効果を有し、骨の病気に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラン誘導体及びこれを含む薬学的組成物に関する。より具体的には、従来の骨粗鬆症治療剤に比して骨の増殖効果にすぐれたフラン誘導体及びその薬学的に許容される塩並びに前記誘導体を有効成分とする薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、骨組織の物理的強度を決定するカルシウムがさまざまな理由(遺伝的要因、栄養摂取、ホルモンの変化、運動、生活習慣)により減少し、骨髄腔が広くなる状態であり、小さな衝撃を受けても骨折しやすくなり、暮らしの質を顕著に低下させる症状である。特に、女性の場合、30才以降骨密度が持続的に減少し、閉経期に入るとホルモンであるエストロゲンが急速に減少するが、インターロイキン-7によるようにB-リンパ球が多量に生成され、骨髄にB細胞前駆体が蓄積され、これによりインターロイキン-6の量が増加して破骨細胞の活性を増加させるため、結局骨密度が減少してしまうのである。
【0003】
現在、骨粗鬆症治療剤としては、ビスホスホネート製剤(アレンドロネート、エチドロネート)、ホルモン製剤(ラロキシフェン)、ビタミンD製剤、カルシトニン製剤、カルシウム製剤などがある。しかしながら、ビスホスホネート製剤は、吸収率が悪く、服用方法が厳格な上、服用方法を誤ると食道炎を誘発する欠点がある。ホルモン製剤は、一生服用しなければならず、乳がん及び子宮がんの発生率を増加させる。ビタミンD製剤は高価であり、効果が確実ではない。カルシトニン製剤は高価であり、投与方法が難解である。カルシウム製剤は、副作用は少ないが、効果が治療よりも予防に限られる。
【0004】
具体的には、従来の骨粗鬆症治療剤の適用上の問題点(医薬情報Vol.24, No.10 1998)を見ると、ビスホスホネートは米国FDAにより95年11月に承認を受けた骨粗鬆症治療剤であり、骨吸収を強力に抑制し閉経後の骨粗鬆症にすぐれた効果があるが、食事の30分から1時間前に服用しなければならず、吸収率が低い。カルシトニンは、骨吸収に対する効果及び視床下部への作用による骨折の痛みの改善効果にすぐれているが、効果に比して価格が高く、長期使用した場合の効果が少なく、使用方法も複雑である。また、性ホルモンは、骨粗鬆症治療よりは更年期障害や心血管疾患の予防に主に使用されており、破骨細胞の活動を抑制することによる骨粗鬆症治療効果が高いものの、乳がんや出血といった副作用の発生リスク、及び患者らの利便性が劣る。カルシウム剤は、成長期/青少年期/妊娠授乳期の骨格形成を助けるにすぎない。
【0005】
上記のような従来の骨粗鬆症治療剤の欠点を改善すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、フラン誘導体が従来の骨粗鬆症治療剤に比し骨増殖 効果にすぐれ副作用が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の詳細な説明】
【0006】
本発明は、骨粗鬆症の予防及び治療効果を有するフラン誘導体並びに薬学的に許容可能なその塩を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記誘導体を有効成分とする骨粗鬆症の予防及び治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明はフラン誘導体及び薬学的に許容可能なその塩を提供する。
また、本発明は、前記誘導体を有効成分とする骨粗鬆症予防及び治療用薬学的組成物を提供する。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、以下の化学式1で示したフラン誘導体及び薬学的に許容可能なその塩を含む。
【0008】
【化1】

【0009】
(前記式において、XはH、OH、OR、NR1R2であり、YはOR、NR1R2、SC(=NH2)NHであり、
Rは水素、ナフタリン、又は、メチル、メトキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ及びフッ素からなる置換基のうちの3つ以下の置換基を有するアリル、又は、4つ以下のフッ素が置換されたC1〜C4の脂肪族アルキル基であり、
R1、R2は、それぞれ水素、ナフタリン若しくはメチル、メトキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ及びフッ素からなる置換基のうち3つ以下の置換基を有するアリル、若しくは、C1〜C3の脂肪族アルキル基であり、又は、R1、R2が炭素、酸素若しくは水素若しくはC1〜C3の脂肪族アルキル基を有する窒素で互いに連結された構造を有する脂肪族アルキル基である。)
【0010】
前記化学式1に示すフラン誘導体をより具体的に例示すると、以下の表1〜7の置換基X及びYからなるフラン誘導体である。
【0011】
【表1】

【0012】
【表2】

【0013】
【表3】

【0014】
【表4】

【0015】
【表5】

【0016】
【表6】

【0017】
【表7】

【0018】
本発明は、前記化学式1で示すフラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩のみではなく、それより製造されうる可能な溶媒化物及び水化物をすべて含む。
本発明の化学式1の化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができ、塩としては薬学的に許容可能な塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば化合物を過量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過し、ろ液を蒸発及び乾燥させて得る。この際、金属塩としては、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を製造するのが製薬上適当である。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得る。
【0019】
本発明のフラン誘導体は、本分野において使用される通常の抽出及び化学的合成を通じて得ることができ、本発明においてはその範囲を限定しない。
具体的に、本発明のフラン誘導体の製造方法の一例を以下に記述する。
(1)本発明の化合物のうちXが-Hであるフラン-2-カルボキシアルデヒド化合物誘導体は、以下の反応式1に示すように、5-クロロメチルフラン-2-カルボキシアルデヒドをアセトニトリル溶媒において炭酸カリウム塩基を用いて置換された脂肪族アルコール、置換されたアリルアルコール又はさまざまな種類のアミンと反応させ5-置換されたメチルフラン-2-カルボキシアルデヒドを製造する(Xが H、YがOHである場合は、植物である熟地黄(Rehmannia glutinosa Libosch)から抽出し、生理活性を検定した)。ここで、出発物質として使用された化学式IIに示す5-クロロメチルフラン-2-カルボキシアルデヒドは、参考文献(W.N. Haworth, W. G. M. Jones, J. Chem. Soc. 667-670, 1944)に基づきグルコース及び塩酸から製造される。
【0020】
【化2】

【0021】
(2) 本発明の化合物のうち、XがHではないフラン-2-カルボキシル化合物誘導体は、以下の反応式2に示すように、化学式 IIIに示す5-ヒドロキシメチルフラン-2-カルボキシル酸を用いて化学式IVに示す5-クロロメチルフラン-2-カルボキシルクロライドを製造し、ここにさまざまなアルコール及びアミン誘導体を反応させて化学式Vに示す5-クロロメチルフラン-2-カルボキシル酸エステル及びアミド誘導体を製造する。5-クロロメチルフラン-2-カルボキシル酸エステル及びアミド誘導体にさまざまなアルコール、アミン、チオウレアなどの親核体を置換させて、化学式Iに示す5-置換メチルフラン-2-カルボキシル酸エステル及びアミド誘導体を製造する。
ここで、出発物質として使用された化学構造式IIIに示す5-ヒドロキシメチルフラン-2-カルボキシル酸は、参考文献 (W. N. Haworth, et al, J. Chem. Soc. 1513-1526, 1927)に基づき製造される。
【0022】
【化3】

【0023】
また、本発明は化学式1に示すフラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する骨粗鬆症の予防及び治療用薬学的組成物を含む。
本発明のフラン誘導体は、従来の骨粗鬆症治療剤に比して、骨芽細胞の増殖促進にすぐれ、骨芽細胞の活性を増進させ、破骨細胞の増殖及び活性を抑制する活性を示す。具体的には、以下の実験例において見られるように、実施例1の化合物を添加した場合、添加しなかったコントロール群に比し105%以上の細胞増殖効果を示し(第1図参照)、リン酸分解酵素の活性が120%増加し(第2図参照)、実施例1の化合物が骨芽細胞の分化のためのRunx2の活性を促進することが認められる(第3図参照)。本発明の実施例1の化合物は、骨芽細胞において破骨細胞の生成を抑制する物質であるOPG(osteoprotegerin) 蛋白質の発現を増加させ(第4図参照)、TRAP(+)多核細胞に添加したときにその数が顕著に減少し(第5図参照)、これにより破骨細胞の活性を抑制する作用を示す(第6図参照)。また、動物モデルを用いた臨床組織実験の結果、骨粗鬆症の予防効果及び治療効果を示した。前記効果を示す本発明のフラン誘導体からなる薬学的組成物は、骨増殖を向上させ、成長期の子供の背丈の成長及び骨粗鬆症、退行性骨疾患及びリウマチ関節炎のような骨疾患などの予防及び治療に有用に使用しうる。
【0024】
前記化学式1の化合物は、臨床投与時に経口及び非経口のさまざまな剤形で投与されうるが、製剤化する場合には通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して製造する。経口投与のための固形製剤には、錠剤、患者、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トロッキー剤などが含まれる。かかる固形製剤は、1種以上の化学式1の化合物に少なくとも1種以上の賦形剤、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)若しくはゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単なる賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム滑石のような潤滑剤も使用される。
【0025】
経口投与用の液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤又はシロップ剤などが該当するが、広く使用されている単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれうる。
【0026】
非経口投与用の製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されうる。座剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween) 61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されうる。
【0027】
また、前記化学式1に示す化合物の人体に対する投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患程度によって異なりうるものであり、体重が70kgの成人患
者を基準とするとき一般的に0.01〜1000mg/日であり、好ましくは0.1〜500mg/日であり、また医師や薬剤師の判断にしたがって一定の時間の間隔をおいて1日1回乃至数回に分けて分割投与することもできる。
【0028】
また、本発明は、前記フラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩を有効成分とする機能性食品、健康補助食品又は特殊栄養食品を提供する。
本明細書において「機能性食品」とは、一般食品に前記フラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩を添加することにより一般食品の機能性を向上させた食品を意味する。
【0029】
機能性食品とは区別して、本明細書において「健康補助食品」又は「特殊栄養食品」とは、前記フラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩を一般食品に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液化などにより製造した健康食品であり、これを摂取した場合に健康上特定の効果をもたらすものを意味するが、一般の薬品とは異なり食品を原料としているため、薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがないという長所を有する。
【0030】
本発明によるフラン誘導体及び薬学的に許容されるその塩を含有する機能性食品、健康補助食品及び特殊健康食品の含量は、使用される食品群によってさまざまに変化させることができ、その含量は前記薬学的組成物としての用途で測定された毒性範囲内において遂行する。
【実施例】
【0031】
《実施例1》本発明のフラン誘導体の製造方法
(1) 5-ヒドロキシメチルフラン-2-カルボキシアルデヒド(化合物1)の 製造方法
熟地黄(Rehmannia glutinosa Libosch : エタノール[酒精、どぶろく]の蒸気で蒸したもの)600gを抽出用の反応機に蒸留水3リットルを加えて95℃程度で熱水抽出を2回繰り返した。ろ過後、抽出液を集めて40℃以下で減圧濃縮した。
濃縮液をオープンカラム(open column)にシリカゲルを充填し、酢酸エチルとn−ヘキサンを溶媒としてクロマトグラフィーを実施して720mgを得た(融解点32〜35℃)。
【0032】
(2) 置換基を有するオキシメチルフラン-2-カルボキシアルデヒド(化合物 2〜30)の製造方法
5-クロロメチルフランカルボキシアルデヒド143mg(1mmol)、アルコール化合物(1−2mmol)、アセトニトリル (10ml)混合液に炭酸カリウム(1mmol)を加えて5時間常温で撹拌した。反応終結を薄膜クロマトグラフィーで確認した後、溶媒を真空蒸発装置において除去した。残滓に酢酸エチル(30ml)と水(30ml)を加え、有機層を分離した後に乾燥及びろ過してカラムクロマトグラフィーで分離し、置換基を有するオキシメチルフラン-2-カルボキシアルデヒドを50〜70%の収率で得た。
【0033】
(3) 5-クロロメチルフラン-2-カルボン酸メチルエステル (V、X=-OCH3)の製造方法
5-ヒドロキシメチルフランカルボキシル酸(100mmol)、チオニルクロライド(150mmol)、トルエン(100ml)混合液にジメチルホルムアミド(1ml)を滴加し、5時間還流した。反応終結後、常圧蒸留をおこなって溶媒と過量のチオニルクロライドを除去し5-クロロメチルフランカルボニルクロライド(IV)を液体状態で得た。ここに無水メタノール(50ml)を常温で滴加し、炭酸カリウム (200mmol)を粉末状態で加え、1時間撹拌した。メタノールを真空蒸発装置にて除去し、水(100ml)と酢酸エチル(100ml)を加え、有機層を分離した。有機層は、マグネシウム硫酸塩で乾燥させ、ろ過した。真空蒸発装置にて有機溶媒を除去した後、残滓をカラムクロマトグラフィーに通して、求める5-クロロメチルフラン-2-カルボン酸メチルエステルを70%の収率で得た。
【0034】
(3-1) 5-置換オキシメチルフラン-2-カルボン酸メチルエステル(化合物 31〜44)の製造方法
5-ヒドロキシメチルフランカルボキシアルデヒド(1mmol)、トリエチルアミン(2mmol)、アセトニトリル(10ml)混合液にアシル化合物(1mmol)を加え、5時間常温で撹拌した。反応終結を薄膜クロマトグラフィーで確認した後、溶媒を真空蒸発装置にて除去した。残滓に酢酸エチル(10ml)と水(10ml)を加え、有機層を分離した後、乾燥及びろ過し、カラムクロマトグラフィーで分離して、求める物質を50〜70%の収率で得た。
【0035】
(3-2) 5-アミノカルボニルオキシメチルフラン-2-カルボキシアルデヒド(化合物45〜57)の製造方法
5-ヒドロキシメチル-2-フルフラール(2mmol)をテトラヒドロフラン (5ml)に溶解させ窒素を流し込む。イソシアネート誘導体(2.2mmol)を反応液に付加し、少量のトリエチルアミン(0.5ml)を入れる。反応液を常温で3−6時間撹拌した後、水(50ml)に反応液を付加し、酢酸エチル(25ml×3)で有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥した。溶媒を減圧濃縮して得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、カーバメート化合物(95−98%)を得た。
【0036】
(3-3) 5-置換オキシメチルフラン-2-カルボン酸(化合物100〜120)の製造方法
5-クロロメチルフランカルボン酸(1mmol)、アルコール又はアミン化合物 (1−2mmol)、アセトニトリル(10ml)混合液に炭酸カリウム(2mmol)を加え5時間常温で撹拌する。反応終結を薄膜クロマトグラフィーで確認した後、一水塩酸で中和して溶媒を真空蒸発装置にて除去する。残滓に酢酸エチル(10ml)と水(10ml)を加え有機層を分離した後、乾燥及びろ過し、カラムクロマトグラフィーで分離して、求める物質を50−70%の収率で得た。
【0037】
(4) 5-クロロメチルフラン-2-カルボン酸エステル、アミド (V, X=-OR, -NR)の製造方法
5-ヒドロキシメチルフランカルボキシル酸(100mmol)、チオニルクロライド(150mmol)、トルエン(100ml)混合液にジメチルホルムアミド(1ml)を滴加し、5時間還流した。反応終結後、常圧蒸留して溶媒と過量のチオニルクロライドを除去し、5-クロロメチルフランカルボニルクロライド(IV)を液体状態で得る。残滓をトルエン(30ml)に溶かした溶液に無水アルコール(110mmol)を 常温で滴加し、炭酸カリウム(110mmol)を粉末状態で加え、1時間撹拌する。溶媒を真空蒸発装置にて除去し、水(100ml)と酢酸エチル(100ml)を加え、有機層を分離する。有機層をマグネシウム硫酸塩で乾燥及びろ過した後、真空蒸発装置にて有機溶媒を除去する。残滓をカラムクロマトグラフィーに通して、求める5-クロロメチルフラン-2-カルボン酸メチルエステルを50−70%の収率で得た。
【0038】
(4-1) 5-置換オキシメチルフラン-2-カルボン酸エステル、アミド(化合物58〜191)の製造方法
5-クロロメチルフランカルボン酸エステル(1mmol)、アルコール又はアミン化合物(1−2mmol)、アセトニトリル(10ml)混合液に炭酸カリウム(1mmol)を加え、5時間常温で撹拌する。反応終結を薄膜クロマトグラフィーで確認後、溶媒を真空蒸発装置にて除去する。残滓に酢酸エチル(10ml)と水 (10ml)を加えて有機層を分離した後、乾燥及びろ過し、カラムクロマトグラフィーで分離して求める物質を50−70%の収率で得た。
以下に、前記化合物1、31〜57についてのNMRデータ及び質量分析スペクトルをまとめた。
【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
【表10】

【0042】
《実験例1》本発明の化合物(化合物1)による骨芽細胞増殖及び効能実験
〈1-1〉本発明の化合物(化合物1)による骨芽細胞の増殖と細胞活性度増加の実験
本発明者らは、骨芽細胞増殖と細胞活性度を測定するために、以下のような各実験を行った。
具体的には、本発明の化合物1が骨芽細胞の増殖に及ぼす影響を評価するために3種類の細胞を使用した。ヒト細胞としては、ヒト骨肉種に由来する2種類の細胞株であるMG-63 (ATCC No. CRL-1427)とHOS(ATCC No. CRL-1543)を使用し、マウス細胞としては、マウス筋肉細胞であるC2C12細胞 (ATCC No. CRL-1772)をATCC (American Type Culture Collection, Rockville, USA)より購入して使用し、Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)に10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加した培地に培養して使用した。
【0043】
細胞増殖の測定(Cell proliferation)は、化合物1の毒性を間接的に評価し、また骨芽細胞の増殖に対する天然物の影響を調べるために、前述のMG-63 骨芽細胞を用いて細胞増殖時に細胞のDNA内に取り込まれた3H-チミジン(thymidine)の量を測定した。骨芽細胞を24-ウェルプレートに1ウェルあたり2×104個となるよう分注し、翌日1%FBSが含有されたDMEMに取り替えた。取り替えられた培養液の中に、一定濃度の範囲内において連続的に希釈して準備した天然物を濃度別に添加し、48時間培養した。最後の4時間の間に3μCi/ウェルの3H−チミジン(thymidine)を添加して培養した後、細胞をフォスフェート(phosphate)緩衝液で洗浄し、5% ice coldトリクロロ酢酸(trichloroacetic acid; TCA)で処理し、TCA−不溶性である分画を分離した後、0.1M NaOHで溶解した。このうち、一定の分画について液体シンチレーションカウンタを使用して放射能を測定し、3H-チミジン(thymidine)流入度を測定した。その結果を、以下の第11表及び第1図に示す。
【0044】
【表11】

【0045】
骨粗鬆症から回復するためには、骨組織内に存在する主な骨形成細胞である骨芽細胞の増殖が先行しなければならない。本発明においては、骨芽細胞を培養するにあたり化合物1を添加して、骨芽細胞の数が増加するか否かを確認した。その結果、本発明の化合物1を添加した細胞は、添加しなかったコントロール群に比し約105%以上の細胞増殖効果を示した(第11表及び第1図)。前記結果から、本発明の化合物が骨芽細胞の増殖に効果があることを確認した。
【0046】
〈1-2〉骨芽細胞の標識酵素である塩基性リン酸分解酵素活性の測定 (alkaline phosphatase activity; 骨芽細胞の標識酵素)
本発明者らは、化合物1が骨芽細胞の活性に及ぼす影響を評価するために、前記実験例〈1-1〉において言及したHOS細胞を96-ウェルプレートに1ウェルあたり5×103 cellsとなるように分注し、単層で増殖した後、一定の濃度で天然抽出物を培養液に添加し、10%FBSが含まれているDMEMで96-ウェルプレートにおいて48時間培養した後、細胞を0.1% Triton X-100/salineで37℃において30分間処理した。細胞処理液の一定量を基質である100 mMのp-ニトロフェニルフォスフェート(nitrophenyl phosphate; PNPP)存在下で0.1Nグリシン-NaOH緩衝液(pH 10.4)とともに37℃において30分間反応させ、基質であるPNPPから遊離して生じたPNP(p-nitrophenol)の量を405nmで比色定量し、改良ローリー法で蛋白質の量を測定し、酵素の活性をnmol substrate cleaved/h/mg proteinで表示した。結果は、以下の第12表及び第2図に示した。
【0047】
【表12】

【0048】
塩基性リン酸分解酵素は、骨芽細胞の標識酵素として用いられ、骨組織形成の様々な段階に関与するとされている(Siffert, 1958 ; FarleyとBaylink, 1986)。本発明においては、化合物1が骨芽細胞の活性に及ぼす影響を観察するために、骨芽細胞活性の指標として塩基性リン酸分解酵素の活性を測定した。その結果、化合物1を添加した細胞は、添加しなかったコントロール群に比し塩基性リン酸分解酵素の活性が121%程度増加した(第12表及び第2図参照)。前記結果から、本発明の化合物が骨芽細胞の標識酵素である塩基性リン酸分解酵素の活性にすぐれた効果を示し、骨芽細胞の活性に効果があることを確認した。
【0049】
〈1-3〉骨芽細胞分化の主要転写因子であるRunx2の発現の測定
それぞれの細胞に骨形成に不可欠な転写因子であるRunx2が結合する DNAシーケンスであるOSE2を6つ直列に連結したものをpGL3プロモーターベクターに挿入した6xOSE2-Lucベクターを過渡的にトランスフェクションし(transient transfectionし)、検査対象分画を投与することで活性化されたRunx2の程度をルシフェラーゼ活性で判定する方法を選択した。その詳細な方法は、以下の通りである。
【0050】
前記実験例〈1-1〉において培養したC2C12細胞を6-ウェルプレート1ウェルあたり1×105 播種した後、5% CO2 培養器にて24時間培養した。
24時間後、リポフェクトアミンを用いてp6xOSE2-Luc:リポフェクトアミン錯体を作り、以下のようにトランスフェクションした。15分にわたり反応させる間、細胞の培地を除去した後DMEM (FBS free)で細胞を洗浄した。6ウェルプレート1ウェルあたり800μlのDMEM (FBS free)を入れ、反応が終結した207μlのp6xOSE2-Luc:リポフェクトアミン錯体を入れた後、3時間にわたり5%CO2培養器にて培養した。3時間培養後、1Mlの30% FBSが入っているDMEMを1ウェルあたり入れた後、24時間にわたり5% CO2 培養器にて培養した。
【0051】
24時間後、細胞の培地を除去した後、DMEM (FBS free)で細胞を洗浄した。6-ウェルプレート1ウェルあたり2Mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)が10ng/ml添加されているDMEM(FBS free)を処理し、コントロール群はbFGFが添加されていないDMEM(FBS free)を処理した。24時間にわたり5%CO2インキュベータにて培養した後、PBS溶液で洗浄し、ルシフェラーゼ活性を測定した。 結果は、以下の第13表及び第3図に示した。
【0052】
【表13】

【0053】
その結果、化合物1は1及び10μMの濃度において添加しなかったコントロール群に比しRunx2の活性を200%以上促進した(第13表及び第3図参照)。骨形成の促進のためには、骨芽細胞の分化が先行しなければならない。 骨芽細胞の分化を促進するためには、分化のための転写因子 (Runx2)の発現が不可欠であり、これは骨芽細胞が必要とするさまざまな遺伝子(オステオカルシン、オステオポンチン、I型コラーゲン、骨シアロ蛋白質)の発現を増加させる。これらの遺伝子のプロモーターとしてはRunx2の応答配列(OSE: osteoblast specific factor binding element)が存在し、その中心のコンセンサス配列にはPuACCPuCAがある。これは、骨芽細胞の骨形成遺伝子の発現を増加させたもので、骨形成の促進に関与していることを示している(Lee他, 2000; Park他, 2001)。
【0054】
〈1-4〉破骨細胞生成を抑制するosteoprotegerin (OPG)の発現の測定
前記実験例〈1-1〉において言及したMG63細胞株を96-ウェルプレートに集密的に培養した後、さまざまな濃度の薬用天然物試料が含まれている血清free DMEM2mlを添加し、16時間培養し、上清液を回収した。OPG ELISA kitを用いてOPGが遊離した量を測定した。結果は、以下の第14表及び第4図に示した。
【0055】
【表14】

【0056】
破骨細胞の生成及び活性には、NF-kappa Bレセプターのレセプター活性化物質(receptor activator)(RANKL)が必ず必要である。RANKLは、骨芽細胞及び間葉細胞に存在し、破骨細胞前駆細胞及び破骨細胞のNF-kappa Bのレセプター活性化物質(RANK)に結合する(Hofbauer他, 2000)。OPGは、RANKLの受容体であり、RANKLと RANKの結合を妨害することで破骨細胞前駆細胞が破骨細胞に分化するのを抑制し、破骨細胞の活性も抑制する(Kong他, 1999; Yasuda他, 1999; Suda他, 1999; Aubin 他, 2000)。本発明においては、骨芽細胞を培養するにあたり化合物1を処理し、OPGの分泌量の増加を観察しようとした。
【0057】
その結果、本発明の化合物1を添加した場合、骨芽細胞において破骨細胞の生成を抑制する物質であるOPG蛋白質の発現を実施例1の10-10、10-9 及び10-8 Mの濃度においてそれぞれ185%、204%及び866%まで増加させた(第14表及び第4図参照)。前記結果から、本発明の化合物1が骨芽細胞において破骨細胞の生成を抑制するOPGを発現させ、破骨細胞の生成を抑制する働きをすることを確認した。
【0058】
《実験例2》化合物1による破骨細胞の増殖抑制作用
本発明者らは、化合物1が破骨細胞の成長及び活性にいかなる影響を与えるかを確認するために、カルシウム-フォスフェートで被膜されたプレート(OAAS,OCT Inc.)に破骨細胞前駆細胞を培養し、破骨細胞の標識酵素であるTRAP (耐タートレート酸性ホスファターゼ活性測定。以下「TRAP」と略す) 活性及び吸収活性度(Resorption pit)を分析した。
【0059】
〈2-1〉破骨細胞前駆細胞の純粋分離及び成熟した破骨細胞への分化誘導
マウスの骨髄細胞を分離するために、7〜9週齢の雄性マウスを脛部捻転により犠牲とした後、大腿骨と脛骨を無菌的に摘出し、軟組織を除去した。長骨の両端を切断した後、26G注射針を用いて一方の端の骨髄腔に0.1%コラゲナーゼ(Gibco)、0.05%トリプシン及び0.5 mM EDTA(Gibco)が含まれた酵素溶液1Mlを注射し、骨髄を取り出した後、30分間撹拌して骨髄細胞を集め、10%FBSが含まれたα-minimum essential medium (α-MEM)に24時間前培養してから、未付着細胞を収集した。破骨細胞の前駆細胞になる未付着細胞を1ウェルあたり2×105個の細胞となるように分注して培養する。8日間培養する間20ng/Mlマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF, Peprotech, USA)と30ng/Ml RANKL(Peprotech, USA)が含まれているα-MEMに化合物1を処理し、培養した。培養が終わった後、破骨細胞の生成を検査するために細胞を固定しTRAP染色をおこなった。また、破骨細胞の活性を検査するため、細胞を取り出して吸収された部位を観察した。
【0060】
〈2-2〉TRAP(+)である多核細胞形成の測定
細胞培養後、付着細胞をPBSで洗浄してから、シトレート-アセテート-ホルムアリデヒド(citrate-acetate-formaldehyde)で5分間固定し、ナフトールAS-BIフォスフェート(naphthol AS-BI phosphate)、ファストガーネット(fast Garnet)GBC溶液と7 mM タートレートバッファ(tartrate buffer) (pH 5)を含有する37℃アセテートバッファ(acetate buffer) (pH 5.0)に1時間にわたり培養し、TRAP染色を行った。3つ以上の核を有するTRAP(+) 多核細胞を破骨細胞とみなした。結果は、第15表及び第5図に示した。
【0061】
【表15】

【0062】
破骨細胞は、骨髄内の単核球/大食細胞系統の細胞に由来する。この単核前駆細胞は、血液内を循環し、骨内膜層にて前駆細胞が増殖し、多核細胞を形成するために融合すると言われる(Scheven他, 1986)。破骨細胞は、特徴的にタートレートに対する抵抗性を示す酸性ホスファターゼであるTRAPを有し、これは他の骨組織細胞と区別しうる破骨細胞の細胞化学的標識酵素として利用される (Minkin, 1982)。本発明においては、破骨細胞の分化を誘導するため、破骨細胞の前駆細胞があるとされる骨髄を用いた。TRAPに陽性であり多核である細胞を破骨細胞とみなし、破骨細胞前駆細胞を培養するにあたり化合物1を処理して8日間培養した後、処理しなかったコントロール群に比しTRAP 陽性多核細胞の数が減少することを確認しようとした。
【0063】
その結果、化合物1を添加したとき、コントロール群に比しTRAP (+) 多核細胞の数が132から77へと顕著に減少することがわかった(第5図)。前記結果から、本発明の実施例1の化合物が破骨細胞の生成を抑制する働きをすることを確認した。
【0064】
〈2-3〉破骨細胞の吸収と観察
分化した破骨細胞の活性を検査するため、カルシウム-フォスフェートで被膜されたプレート(OAASTM, OCT, Korea)にて細胞を培養した後、培養液を除去した。細胞培養後、付着してしまった細胞を除去するため、培養プレートを蒸留水で洗浄した後、5% sodium hypochlorite 溶液を入れて5分間放置し、その後ふたたび蒸留水できれいに洗浄し、乾燥させてから、吸収された部位をImage pro plusを用いて観察した。結果は、第16表及び第6図に示した。
【0065】
【表16】

【0066】
骨組織内において骨吸収を主に担っている破骨細胞の活性を検査するために骨組織の無機質部分に似せて製作したカルシウムとフォスフェートが被膜されたプレートを使用し(Choi他, 2001)、破骨細胞の前駆細胞を培養するにあたり化合物1を処理して、コントロール群に比し吸収面積が減少することを観察しようとした。
【0067】
その結果、化合物1を添加したとき、コントロール群に比し吸収窩(resorption pit)の面積が50%まで減少することがわかった(第16表及び第6図参照)。これにより、化合物1が破骨細胞の活性を抑制する働きをすることを確認した。
【0068】
〈2-4〉本発明のフラン誘導体の破骨細胞生成抑制率の測定
実験例〈2-1〉において言及したように、破骨細胞前駆細胞の純粋分離及び成熟した破骨細胞への分化を誘導した後、実験例〈2-2〉において言及したTRAP(+)である多核細胞形成を測定した。その結果は、化合物の濃度が0であるときを100%と見てそれに対する百分率で表し、破骨細胞生成抑制率として示した(第17〜19表参照)。
【0069】
【表17】

【0070】
【表18】

【0071】
【表19】

【0072】
前記表にて示したように、本発明のフラン誘導体は破骨細胞生成抑制効果を示している。具体的には、0.1μM投与した結果、化合物128、147、152、156、157、165、187の破骨細胞生成抑制率が4〜21%であり、10μM投与した場合ほとんどのフラン誘導体が破骨細胞の生成抑制効果を示している。
【0073】
《実験例3》動物モデルを用いた臨床組織実験
本発明者らは、卵巣摘出術(Ovariectomy)により骨粗鬆症が誘導された雌性白鼠を実験モデルとして用いて、本発明の化合物が骨粗鬆症の治療及び予防にいかなる影響を及ぼすかを調べるため、卵巣摘出白鼠に化合物1を投与した後、脛骨を切断して組織観察を行った。
【0074】
〈3-1〉卵巣摘出術
100mg/kgのケタミン(Ketamine、 Ketara)と2%キシラジン(Xylazine、Rompun 0.15ml/kg)で全身麻酔をかけた後、通常の方法にしたがって除毛及び術前無菌処理(10% povidone-ヨウ素で洗浄した後、70%アルコールで拭いた)を行った。
【0075】
白鼠の腹側中央に1cmほどの切開を施してから、横隔膜や肝臓など主要臓器に損傷が加わらないように注意し、子宮に沿って卵巣を確認した。縫合用の糸で卵巣を結紮した後、卵巣摘出を両側におこなった。卵巣摘出後、各臓器を腹腔内に戻した後、縫合用の糸で層別縫合をおこなった。手術後、感染防止のために抗生物質セファゾリン(cefazolin 50mg/kg)を注射した。
【0076】
〈3-2〉化合物1の化合物投与
雌性白鼠1匹に対する薬物投与量は、体重250gを基準としておこなった。具体的には、コントロール群の白鼠には固形飼料と1匹あたり30mlの水のみを投与し、実験群の白鼠の薬物投与(経口投与)は、1匹あたり水30mlに化合物1を10mgボトルに混ぜて投与した。毎朝1日分の薬物を製造し、残った薬物は捨てずに残量とは無関係に匹数に応じて原液を入れた。水は、常に匹数を基準にして供給した。ボトルが入れ替わってしまわないように注意を払い、毎日匹数を確認し、匹数に応じて薬物を製造した。
【0077】
化合物1の骨粗鬆症予防効果を調べるために、卵巣摘出を行った直後から4週間にわたり前記薬物投与方法と同一の方法で薬物を投与した。薬物投与開始から4週間後に実験群16匹とコントロール群4匹を標本として抽出した。そして、白鼠の体重変化を測定してから、脛骨(Tibia)の組織片を通法に従って固定、脱水、明化、染色し、その後に組織学的観察を行った。
【0078】
化合物1の治療効果を調べるために、卵巣摘出後4週間にわたり同一条件下において固形飼料で飼育した。骨粗鬆症の変化を確認した後、実験群には前記薬物投与方法と同一の方法で4週間にわたり薬物を投与し、コントロール群は引き続き固形飼料のみで飼育した。卵巣摘出後8週となるとき、通法に従って組織片を製作した。
【0079】
〈3-3〉組織標本の光学顕微鏡観察
前記実験例〈3-2〉において抽出された組織標本は、固定液(Bouin's solution)により約24時間固定した。その後、これら各組織からカルシウムを含む無機質を除去し、薄切に適当な程度に組織を軟化させるために5%硝酸で約60時間脱灰過程(Decalcification)を行った。その後、流水で12時間水洗し、70%アルコールから上昇濃度順にそれぞれ2時間ずつ80%、90%、95%、100%アルコールで2時間ずつ3回脱水をした後、キシレンで明化過程を2時間ずつそれぞれ3回実施した。パラフィンが浸透するように、液状パラフィンで2時間ずつ3回処理した後、試料をパラフィン包埋した。
【0080】
パラフィンブロック製作後の標本製作においては、回転式ミクロトームを用いて4μmの厚さで薄切片を作り、Poly-L-lysinでコーティングされたスライドグラスに付着し、スライド加温器(40±3℃)を用いて乾燥させた。完全に乾燥したスライドは、xyleneを用いてパラフィンを除去し、アルコールによって脱水した後、ヘマトキシリン−エオシン二重染色をおこない、又はGomori 染色 (Gomori's trichrome stain)をおこなった。染色した組織は、再びアルコールとキシレンを通過させて封入剤にスライドを封入し、60℃インキュベーターにおいて一日のあいだ乾燥させてから光学顕微鏡で検鏡及び撮影を実施した。
【0081】
〈3-4〉骨粗鬆症予防効果1
体重200g前後の雌性白鼠20匹を選び、実験群(16匹)とコントロール群(4匹)とに振り分け、前述の卵巣摘出術に従って卵巣を摘出した後、薬物投与4週間実験群とコントロール群を同一の条件下で前述の薬物投与方法と同一の方法により実験群白鼠に薬物を投与した。薬物投与4週間後、すなわち卵巣摘出術が開始されてから4週間が経った実験群とコントロール群の標本を抽出し、白鼠の体重変化を測定し、脛骨(Tibia)の組織片を通法に従って固定、脱水、明化、染色した後、組織学的観察を行った。
【0082】
その結果、12.5倍で観察したところ、化合物1を投与しなかったコントロール群においては脊椎骨の縁部の皮質骨と内部の小柱骨が消失し(第7図のa)、化合物1を投与した実験群においては小柱骨が消失していなかった(第7図のb)。また、40倍で観察したところ、コントロール群に比し、化合物1を投与した実験群においては皮質骨と小柱骨の厚さが増加し、骨髄腔部分が小柱骨で満たされている脛骨 (tibia)の横断面が観察された(第8図)。
【0083】
〈3-5〉骨粗鬆症予防効果2
体重200g前後の雌性白鼠20匹を選び、実験群(16匹)とコントロール群(4匹)とに振り分け、4週間薬物を投与した。薬物の投与方法は、食塩水1mlに、実施例1を10mg溶かし、皮下注射で投与した。コントロール群には 食塩水1mlを同一の方法で投与した。4週間薬物を投与した白鼠は、体重変化を測定し、脛骨(Tibia)の組織片を通法に従って固定、脱水、明化、染色した後、組織学的観察を行った。
【0084】
その結果、コントロール群においては骨髄腔内の小柱骨の減少と皮質骨の穿孔が観察されたが、化合物1を投与した実験群においては小柱骨の減少と皮質骨の穿孔が減少していた。かかる結果から、本発明の化合物1が骨粗鬆症予防に顕著な効果があることを確認した(第9図)。
【0085】
〈3-6〉治療効果
卵巣摘出を行ってから4週間にわたり同一の条件下において固形飼料で飼育し、骨粗鬆症の変化を確認した後に、220μlの化合物1を水30mlに溶かして経口で4週間投与した。薬物投与4週間後、実験群16匹とコントロール群4匹を標本として抽出した。そして、白鼠の体重の変化を測定し、脛骨(Tibia)組織片を通法に従って固定、脱水、明化、染色した後、組織学的観察を行った。
【0086】
その結果、コントロール群は甚だしい骨小柱の減少を示したが、化合物1を投与した実験群においてはその程度が軽微であった。かかる結果から、本発明の化合物1がすでに進行してしまった骨粗鬆症の治療に対しても骨減少防止効果があることを確認した(第10図)。
【0087】
《実験例4》骨密度測定器(Bone mineral densitometer; BMD)を用いた臨床的効能試験
〈4-1〉予防効果
250g前後の白鼠を選んで卵巣を摘出した後、4週間1匹あたり薬物10mgを経口投与した。卵巣摘出前に骨密度測定を行ってから、1週おきに繰り返し4週間BMD測定を行った。BMD測定には、ドイツにて製造されたXCT 540 Research SAを用いた。
【0088】
ケージの中で飼育中の白鼠に対しKetamin HCl(ketara 10mg/kg)と2% xylazine HCl(Roupun 0.15ml/kg) との混合液を腹腔に投与し、全身麻酔をかけた後、voxel sizeは0.1mm×0.1mm、BMD算出用のしきい値は280mg/cm2(海綿骨測定)、500mg/cm2(緻密骨測定)に設定した。Scout scan (10mm/sec)を通じて脛骨(Proxima tibia)の測定位置を決め、CT scan(7mm/sec)を通じて決められた位置で3つのsliceにおける骨密度(BMD)の値を測定し、同一の位置において2回以上撮影し、4週間にわたり毎週繰り返した。
【0089】
その結果、卵巣摘出をおこなったコントロール群においては時間の経過につれて骨密度が平均19%程度減少したが、化合物1を投与した実験群においては卵巣摘出前と似た状態を引き続き維持し、4週間後には卵巣摘出前よりもさらに増加した骨密度を示した。以上のように、本発明の化合物は、骨粗鬆症予防に効果があることを示した(第20表及び第11図)。
【0090】
【表20】

【0091】
〈4-2〉治療効果
250g前後の白鼠を選び、卵巣を摘出した後、4週間飼育した。4週間後、骨粗鬆症の誘発を骨密度測定器を通じて確認し、その後4週間1匹あたり220μlの化合物1を水30mlに溶かし、経口で4週間投与した。
卵巣摘出前に骨密度測定を行ってから、1週おきに繰り返し8週間骨密度(BMD) 測定を行った。 BMD測定には、ドイツにて製造されたXCT 540 Research SAを用いた。
【0092】
ケージの中で飼育中の白鼠に対し Ketamin HCl(ketara 10mg/kg)と2% xylazine HCl(Roupun 0.15ml/kg)との混合液を腹腔に投与し、全身麻酔をかけた後、voxel sizeは0.1mm×0.1mm、BMD算出用のしきい値は280mg/cm2(海綿骨測定)、500mg/cm2(緻密骨測定)に設定した。Scout scan (10mm/sec)を通じて脛骨(Proxima tibia)の測定位置を決め、CT scan(7mm/sec)を通じて決められた位置で3つのsliceにおける骨密度(BMD)の値を測定し、同一の位置において2回以上撮影し、8週間にわたり毎週繰り返した。
【0093】
その結果、8週間進行した骨密度変化において、卵巣が除去されたコントロール群の白鼠は約22%の骨密度減少を観察することができた。これに対し、化合物1を投与した白鼠は、約15%の骨密度減少を見せた。かかる結果から、化合物1が骨密度変化、すなわち骨の形成及び減少に影響を与えていることを確認することができ、骨粗鬆症治療に効果があることがわかる(第21表及び第12図)。
【0094】
【表21】

《実験例5》マウスとラットに対する経口投与急性毒性実験
6週齢の特定病原体不在(specific pathogen-free, SPF) SD系ラットを使用して、急性毒性実験を実施した。1群あたり2匹ずつのこの動物に本発明の化合物1をそれぞれ0.5%メチルセルロース溶液に懸濁し、1回単回経口投与した。試験物質の投与後、動物の斃死如何、臨床症状、体重変化を観察し、血液学的検査と血液生化学的検査を行い、剖検して肉眼で腹腔臓器と胸腔臓器の異常有無を観察した。
【0095】
その結果、試験物質を投与した全ての動物において特異だとしうる臨床症状や斃死した動物はなく、体重変化、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などにおいても毒性変化は観察されなかった。以上の結果、本発明の実施例1はいずれもマウスにおいては1910mg/Kg、ラットにおいては3100mg/kg まで毒性変化を示さず、経口投与最小致死量(LD50)は、マウスにおいて1910mg/Kg であり、ラットにおいては3100mg/kg以上である安全な物資であるることを判断した
【0096】
〈製剤例1〉カプセル剤の製造方法
実施例1の化合物5mgを、ラクトース14.8mg、ポリビニルピロリドン10.0mg、ステアリン酸マグネシウム0.2mgとともに混ぜ合わせた。混合物を、適当な装置を使用して、丈夫なNo.5ゼラチンカプセルに充填した。
前記粉末及びカプセル剤の構成成分は、次の通りである。
実施例1の化合物.................. 5.0 mg
ラクトース ....................... 14.8 mg
ポリビニルピロリドン.............. 10.0 mg
ステアリン酸マグネシウム .......... 0.2 mg
【0097】
〈製剤例2〉注射液剤の製造方法
実施例1の化合物10mg、マンニトール180mg、Na2HPO4・12H2O 26mg及び蒸留水2974mgを含有させて、注射剤を製造した。前記溶液を瓶に入れて、20℃において30分間加熱して滅菌した。
前記注射液剤の構成成分は、次の通りである。
実施例1の化合物.................... 10 mg
マンニトール ...................... 180 mg
Na2HPO4・12H2O....................... 26 mg
蒸留水 ............................ 0.2 mg
【0098】
〈製剤例3〉飲料の製造方法
実施例1の化合物0.1g、ビタミンC、粉末ビタミンE、乳酸鉄、酸化亜鉛、ニコチン酸アミド、ビタミンA、ビタミンB1及びビタミンB2を混合して製造した。
前記飲料の構成成分は、次の通りである。
実施例1の化合物.................... 0.1 g
ビタミン C .......................... 15 g
粉末ビタミン E ..................... 7.5 g
乳酸鉄............................ 19.75 g
酸化亜鉛 ........................... 3.5 g
ニコチン酸アミド.................... 3.5 g
ビタミン A ......................... 0.2 g
ビタミン B1 ....................... 0.25 g
ビタミン B2 ........................ 0.3 g
水 ................................ 適量
【産業上の利用可能性】
【0099】
前述のように、本発明のフラン誘導体は、従来の骨粗鬆症治療剤における問題点が現れず、骨芽細胞の増殖を促進し、骨芽細胞の活性を増進し、破骨細胞の増殖及び活性を抑制する活性を有するものであり、このことから成長期の子供の背丈の成長や骨粗鬆症、退行性骨疾患及びリウマチ関節炎といった骨疾患などの予防及び治療に有用に使用しうる。また、まったく毒性がないので、健康補助食品としても広く用いうる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施例1の化合物1をさまざまな濃度で骨芽細胞株MG63細胞に処理したときに細胞が増殖する程度を、化合物1を処理しなかったコントロール群と比較して示したグラフである。
【図2】本発明の実施例1の化合物1をHOS細胞に処理したときの塩基性リン酸分解酵素(ALP)の活性を、化合物1を処理しなかったコントロール群と比較して示したグラフである。
【図3】本発明の実施例1の化合物1を6xOSE2-Lucベクターを挿入したC2C12細胞に処理したときの分化のための転写因子(Runx2)の発現をコントロール群と比較して示したグラフである。
【図4】本発明の実施例1の化合物1を骨芽細胞株MG63細胞に処理したときのOPG 蛋白質の発現をELISAで分析したグラフである。
【図5】本発明の実施例1の化合物1を破骨細胞の前駆細胞に処理したときのTRAP(耐タートレート酸性ホスファターゼ)陽性多核細胞の生成を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例1の化合物1をカルシウムとフォスフェートで被膜されたプレートで培養した破骨細胞の前駆細胞に処理したときの吸収窩(resorption pit)の面積をコントロール群と比較して示したグラフである。
【図7a】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に経口で4週間10mg/day投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×12.5)であり、化合物1を投与しなかった白鼠の足の骨の断面である。
【図7b】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に経口で4週間10mg/day投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×12.5)であり、化合物1を投与した白鼠の足の骨の断面である。
【図8a】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に経口で4週間10mg/day投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与しなかった白鼠の足の骨の断面である。
【図8b】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に経口で4週間10mg/day投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与した白鼠の足の骨の断面である。
【図9a】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に4週間10mg皮下投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与しなかった白鼠の足の骨の断面である。
【図9b】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に4週間10mg皮下投与した実験群において、コントロール群に比し海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与した白鼠の足の骨の断面である。
【図10a】本発明の実施例1の化合物1を、卵巣摘出した白鼠を4週間固形飼料で飼育し骨粗鬆症を誘発した後4週間経口で220μl/day投与し治療効果を検証した実験群において、コントロール群に比して海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与しなかった白鼠の足の骨の断面である。
【図10b】本発明の実施例1の化合物1を、卵巣摘出した白鼠を4週間固形飼料で飼育し骨粗鬆症を誘発した後4週間経口で220μl/day投与し治療効果を検証した実験群において、コントロール群に比して海綿骨の骨小柱が消失していない様相を見せている顕微鏡写真(×40)であり、化合物1を投与した白鼠の足の骨の断面である。
【図11】本発明の実施例1の化合物1を卵巣摘出した白鼠に4週間経口で10mg/day投与した実験群において、コントロール群に比し骨密度が著に高く、4週目に卵巣摘出前よりも骨密度が増加する様相を見せている骨密度(Bone mineral density、BMD)グラフである。
【図12】本発明の実施例1の化合物1を、卵巣摘出した鼠を4週間固形飼料で飼育し骨粗鬆症を誘発した後4週間経口で220μl/day投与し治療効果を検証した実験群において、コントロール群に比し骨密度が劣る程度が軽微で骨密度が維持されている様相を見せているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式1に示すフラン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩。
【化1】

(前記式において、XはH、OH、OR、NR1R2であり、YはOR、NR1R2、SC(=NH2)NHであり、
Rは水素、ナフタリン、又は、メチル、メトキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ及びフッ素からなる置換基のうちの3つ以下の置換基を有するアリル、又は、4つ以下のフッ素が置換されたC1〜C4の脂肪族アルキル基であり、
R1、R2は、それぞれ水素、ナフタリン若しくはメチル、メトキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、ニトロ及びフッ素からなる置換基のうち3つ以下の置換基を有するアリル、若しくは、C1〜C3の脂肪族アルキル基であり、又は、R1、R2が炭素、酸素若しくは水素若しくはC1〜C3の脂肪族アルキル基を有する窒素で互いに連結された構造を有する脂肪族アルキル基である。)
【請求項2】
前記X及びYが以下の表1〜表7に示したX及びYの対からなる群より選択されたいずれかの対であることを特徴とする請求項1に記載のフラン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【請求項3】
請求項1のフラン誘導体又はその塩を有効成分とする骨疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記骨疾患が骨粗鬆症、退行性骨疾患及びリウマチ関節炎であることを特徴とする請求項3記載の骨疾患予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1のフラン誘導体及びその塩を有効成分とする機能性食品、健康補助食品又は特殊栄養食品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−515276(P2006−515276A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546535(P2004−546535)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002231
【国際公開番号】WO2004/037804
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505152572)オスコテック株式会社 (5)
【出願人】(505152594)韓国化学研究院 (1)
【Fターム(参考)】