説明

高い残留性及び容量を与える高い能力を有する注入可能なヒドロゲル

【課題】高い残留性及び容量を与える高い能力を有する注入可能なヒドロゲルの提供。
【解決手段】
本発明の対象は、単相型架橋バイオポリマーに基づくヒドロゲルマトリックスを含む注入可能なヒドロゲルであって、前もって架橋されたバイオポリマー粒子が前記マトリックスと共架橋されていることを特徴とする注入可能なヒドロゲルである。
本発明はまた上述のヒドロゲルの使用及び製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋バイオポリマー(単相型マトリックス)に基づくマトリックスを含む注入可能なヒドロゲルであって、該マトリックスにおいては、前もって架橋されたバイオポリマー粒子が共架橋されているところのヒドロゲルに関する。
本発明はまた、注入可能なヒドロゲルの製造方法に関する。
本発明はまた、その対象として治療用途や皮膚化粧品分野における上述のヒドロゲルの使用がある。
【背景技術】
【0002】
架橋バイオポリマーに基づく粘弾性生成物の使用は、生物組織を分離する、置換する又は生物組織を充填する、又は前記組織の容量を増やす、あるいは、生体液を補充する又は置換するために、一般的である。
【0003】
それ故、架橋バイオポリマーに基づく粘弾性生成物は、多くの治療用途及び皮膚化粧品分野において使用されている。
【0004】
例えば、架橋バイオポリマーに基づく粘弾性生成物は、以下において使用されている:
− 滑液の代替薬剤、一時的な補足物として、リウマチ学において、
− 括約筋又は尿道の容量の増加を可能にする薬剤として、泌尿器学/婦人科学にお
いて、
− 白内障の手術における又は緑内障治療のための助剤として、眼科学において、
− 活性物質を放出するためのゲルとして、医薬品において、
− 骨再建、声帯の容量の増加、又は手術用組織の製造のために、外科において、
− しわを埋める、傷跡を隠す又は唇のボリュームを増やすために、皮膚化粧品にお
いて。
【0005】
先行技術から、生分解性のバイオポリマーに基づくゲルには2つの大きな系統が知られている:“単相”と呼ばれるゲルと“二相”と呼ばれるゲルである。
【0006】
バイオポリマーは生体内に存在するポリマーであるか、又は該ポリマーにより合成された生体組織であり、それらは処理領域(それらが挿入されたか又は注入された領域)において経時的に再吸収され得る場合、生分解性と呼ばれる。
【0007】
ヒアルロン酸ナトリウムのような、1つ以上の架橋生分解性バイオポリマーに基づく、単相ゲルは、単相形態になる。これらの生分解性バイオポリマーに基づく単相ゲルは、表面的な方法で、経時的に分解する。この表面分解はこれらのゲルの架橋された性質を考慮して、ゆっくりと起きる。
【0008】
二相ゲルは、生理溶液、緩衝液、又はバイオポリマーベースの溶液のような、流体相に分散された、1つ以上の架橋バイオポリマー(ヒアルロン酸ナトリウムのような)から成る粒子を含む。この場合、この流体相は、媒介物の役割を果たす。これらの二相ゲルについては、流体相の分解は非常に早い。この流体相が非架橋ヒアルロン酸ナトリウムから成る場合、皮内注射されると、この流体相の半減期は約48時間である。架橋粒子の分解は遅くそして表面分解により起こる。
【0009】
しかしながら、架橋バイオポリマーベースの粘弾性生成物ひいては本発明のヒドロゲルは、有効性をもってそれらの作用を確保するためには、特に次の要件を満たさなければな
らない:針を通して注入可能なこと、強い残留性(注入部位でのゲルの滞留時間)を有すること、及び容量を増やしたい組織へそれらを挿入した場合、容量を与える強い能力を有すること。
【0010】
仏国特許第2733426号明細書には、しわを埋めるために設計され、そして、インターカテナリー(intercatenary)橋渡し(架橋)により共重合し、その後ミクロスフェアへ変換された生体適合性ポリマーと、架橋され得るか又は架橋され得ない同じポリマーのゲルとを含むマトリックスが記載されている。前記ミクロスフェアは架橋ゲルにけん濁され得る。
【0011】
国際公開00/01428号パンフレットには、架橋されたヒアルロン酸を有するヒドロゲルのような、連続層の製造を最初に含む二相組成物の製造方法が記述されている。次に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそれらの誘導体の一種の重合及び架橋により得られたポリヒドロゲルから得られた粒子形態の分散相が製造される。最後に、これらの二相−連続層及び分散層−は混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許第2733426号明細書
【特許文献2】国際公開00/01428号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前もって架橋されたバイオポリマー粒子が共架橋されている架橋バイオポリマーベースのマトリックス(単相型マトリックス)を含む、新しいタイプの注入可能なゲルを記載する。
【0014】
この新しいタイプのヒドロゲルは、上記した単相及び二相ゲルと相違しているだけではなく、上記で引用した2つの文献に記載されたゲル、すなわち、粒子又はミクロスフェアが単相型ヒドロゲルマトリックスに単純に分散されそして共架橋されていないゲル、ともまた相違する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるヒドロゲルは、針を通して注入し得ることができ、そして単相及び二相バイオポリマーベースのゲル(実施例ご参照)と比較して、高い残留性及び容量を与える高い能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、いくつかのゲルA、B及びCに酸化剤を添加後の該ゲルの経時的な弾性モジュールG’の値(Pa)の容量を示す。
【図2】図2は、上記ゲルA、B及びCの経時的な弾性モジュールG’の値(Pa)の容量、但し試験されるゲルにヒアルロニダーゼ溶液を添加後のもの、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
注入可能なヒドロキシゲルの残留性は、生成物の重要な特性である。この残留性を適応症に合わせることは重要でありそして、大部分の場合、強い残留性が望まれる。
【0018】
ヒドロゲルは様々な分解因子により、経時的に生体内で分解される。第一の分解因子は次の通りである(適応症に基づき多かれ少なかれ重要因子):ラジカル型分解、酵素分解、熱分解、又は機械的分解。
【0019】
本発明によるヒドロゲルの残留性は、主に以下の2つの理由のために改良されている:
− 本発明によるヒドロゲルは、上記の単相又は二相ゲルより分解に対して良好な抵
抗力を有するように思われる。本発明によるヒドロゲルは、事実、経時的にゆっく
りと表面分解を受け、単相型架橋マトリックスの3Dネットワークに閉じ込められ
た(立体的に又は共有結合により)架橋粒子の遅発性出現(そして所望によりその
後持続放出)を引き起こす。これらの粒子はその後表面侵食により経時的に分解さ
れる。
− 挿入中や後に、二相ゲル(流体相に分散された架橋粒子)に含まれる粒子は、移
行する傾向が強い。この移行は処理領域で処理の有効性の減少を誘発する。粒子が
単純に分散した単相の架橋ゲルについては、これらの粒子は3Dマトリックス中で
立体的に保たれる。本発明によるゲルについては、立体配置だけでなくまた共有結
合により粒子がゲルの範囲内で保持されるので、粒子の拡散は上述のゲルと比較し
て著しく減少される。
【0020】
本発明によるヒドロゲルの容量を与える能力は、単相及び二相と比較して高い。
【0021】
実際に、本発明によるヒドロゲルは、より濃密であり、そしてその構造は単相ゲルと比較して強化されている:単相型マトリックス内の架橋粒子の存在が、一方では、単相型マトリックスから3Dネットワークを“除去すること”を可能にし、また、他方では、その構造の全弾性を著しく増加させることを可能にする。
【0022】
生物組織へ注入されると、ヒドロゲルは機械的なストレスを受ける。本発明によるヒドロゲルは、その強化された構造及び強い弾性のおかげで、単相型のヒドロゲルと比較して容量を与えること及び保持することに対しより良い能力を有する。
【0023】
特に、バイオポリマーは、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、セルロース及びその誘導体、アルギン酸塩、キサンタン、カラゲナイン(carraghenine)、タンパク質又は核酸又はそれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0024】
これらのバイオポリマーは全て、例えば、アルコール及び/又はカルボキシル及び/又はアミド及び/又は硫酸塩反応性官能基を有する。良好な反応条件下(pH、温度等に関して)、これらの反応性官能基は添加された架橋剤と反応し得、従って、共有結合(例えば、エーテル、エステル、又は硫黄に基づく)の形成、ひいてはバイオポリマーの架橋をもたらす。
【0025】
さらに好ましくは、本発明で使用(粒子の製造及び/又は単相型マトリックスの製造)されるバイオポリマーの1つは、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0026】
本発明のバイオポリマーの全濃度は、0.01ないし100mg/mlであり、好ましくは10ないし40mg/mlである。
【0027】
本発明で使用されるヒドロゲル粒子は様々な形状:球状、楕円形、又は不規則な形、を有すか、又はそれらはこれらの形状のいくつかを有する。有利には、これらの粒子は1ないし2000マイクロメーターの内径を有し、好ましくは50ないし1000マイクロメーターの内径を有する。
【0028】
単相型マトリックスにおける粒子の質量パーセントは、1ないし99%である。
【0029】
本発明によるヒドロゲルにおける粒子の平均サイズ及び粒子の質量パーセントは、望まれる機械的特性や目標とする適応症のために求められる残留性次第である。
【0030】
ヒドロゲル粒子は、単相型ヒドロゲルマトリックスの内部で有利に分配され、そして均一に共架橋される。
【0031】
本発明によるヒドロゲルは、様々な一般的な添加剤を含み得る。一例として、pH調節剤やオスモル濃度調整剤が引用される。
【0032】
本発明によるヒドロゲルはまた、いずれかの薬理活性物質も含み得る。それはその後有効成分の制御された放出のためのゲルを構成し得る。例えば、トリアムシノロン・アセトニドのようなステロイド系抗炎症剤を含む本発明によるゲルが引用される。
【0033】
本発明によるヒドロゲルは、抗酸化剤のようないずれかの活性物質も、又はゲルを生体内分解に対して良好に抵抗可能にさせるいずれかの物質もまた含み得る。例えば、ポリオール族の分子が引用される。
【0034】
本発明の別の対象は、上記の特性に従って注入可能なハイドロゲルの製造方法であって、
− 架橋されたヒドロゲル粒子を製造する段階、
− 単相型ヒドロゲルマトリックスの第一架橋又は第二架橋中に、これらの架橋され
たヒドロゲルを加える段階、
を含むことを特徴とする方法である。
【0035】
架橋ヒドロゲル粒子は当業者に良く知られている技術により製造される(米国特許出願公開第2005/0136122号明細書ご参照)。例えば、粒子は架橋単相ゲルの機械的粉砕により得られ得る。
【0036】
本発明によるヒドロゲルを得るためには、架橋ヒドロゲル粒子を単相型架橋マトリックスの製造中に反応媒体に加える。
【0037】
単相型架橋マトリックスは先行技術(例えば:国際公開05/085329号パンフレット、国際公開05/012364号パンフレット、国際公開04/092222号パンフレット)に記載されている技術により製造される。
【0038】
反応媒体への粒子の添加は、2つの改良型により実行される。
【0039】
1つめの改良型によれば、架橋ヒドロゲル粒子は単相型架橋マトリックスの第一の架橋中に、すなわち、反応混合物へ架橋剤の最初の添加前又は後に反応媒体に加えられる。
【0040】
2つめの改良型によれば、架橋ヒドロゲル粒子は、第一の架橋から依然として存在する残存架橋剤に基づきあるいは反応媒体に再度架橋剤を加えることによって、新たな架橋を誘発することにより、第二の架橋条件下に反応媒体に加えられる。
【0041】
単相型架橋マトリックスの架橋と粒子の共架橋は、ゲルの精製による残存架橋剤の除去中完全に停止する。
【0042】
単相型マトリックスの架橋及び粒子の共架橋のために使用される架橋剤は、先行技術に記載されたものである。例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)のようなジ−エポキシが使用される。
【0043】
単相型マトリックスの架橋及び粒子の共架橋は、望まれる架橋結合の種類に基づいて、酸性のpHないし塩基性のpHの範囲にあり得る媒体中で行われる。
【0044】
単相型マトリックスの架橋及び粒子の共架橋は、精製による残存架橋剤の除去中完全に停止し、ここで架橋されたゲルの精製のための技術は当業者に良く知られている:様々な脱イオン水バス、透析、....。
【0045】
架橋技術は当業者に良く知られており、この文書ではさらに詳細に説明はしない。
【0046】
この文書の対象はまた、生物組織を分離する、置換する又は生物組織を充填する又は前記組織の容量を増やす、あるいは、生体液を補充する又は置換するための、上記の本発明による、注入可能なヒドロゲルの使用である。
【0047】
従って、本発明のヒドロゲルは多くの治療用途及び皮膚化粧品分野で使用される。
【0048】
例えば、本発明のヒドロゲルは以下において使用される:
− 滑液の代替薬剤、一時的な補足物として、リウマチ学において、
− 括約筋又は尿道の容量の増加を可能にする薬剤として、泌尿器学/婦人科学にお
いて、
− 白内障の手術における又は緑内障治療のための助剤として、眼科学において、
− 活性物質を放出するためのゲルとして、医薬品において、
− 骨再建、声帯の容量の増加、又は手術用組織の製造のために、外科において、
− しわを埋める、傷跡を隠す又は唇のボリュームを増やすために、皮膚化粧品にお
いて。
【0049】
図表を参照して、純粋に説明のために及び非制限的に提供された、本発明のいくつかの実施態様についての以下の詳細かつ説明的な記載を通じて、本発明はより良く理解され、また、他の対象、詳細、特徴、及びそれらの利点がより明確になるであろう。
【0050】
実施例は説明の目的ために提案されているが、決して本発明の範囲を制限すると解釈されない。
【実施例】
【0051】
実施例1:単相型ゲル“A”(先行技術)の製造
ヒアルロン酸ナトリウム(MM=2.106Da)3.5gを1% NaOH溶液30
.5mlに加えた。この混合物全体を1時間放置し、その後10分間スパチュラで混合した。その後ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)263μlをその溶液に加えることにより架橋反応を引き起こし、そして混合物全体を10分間スパチュラで混合した。この反応混合物を50℃の水浴に2時間導入した。この混合物を1M HClを使用して生理的pHに再調整した。体積はpH7において緩衝溶液で116mlに調整された。
このようにして得られたゲルはその後pH=7において緩衝溶液に対して24時間透析された(再生セルロース、分離限度:MM=60kDa)。
ヒアルロン酸ナトリウムの全濃度は26mg/mlであった。
前記ゲルを1mlのガラスシリンジに充填し、121℃、15分間のサイクルに従って湿式加熱消毒した。
ゲルAを得た。
【0052】
実施例2:架橋ヒドロゲル粒子の製造
ヒアルロン酸ナトリウム(MM=2.106Da)3.5gを1% NaOH溶液24
mlに加えた。この混合物全体を1時間放置し、その後10分間スパチュラで混合した。その後ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)700μlをその溶液に加えることにより架橋反応を引き起こし、そして混合物全体を10分間スパチュラで混合した。この反応混合物を50℃の水浴に2時間導入した。この混合物を1M HClを使用して生理的pHに再調整した。体積はpH7において緩衝溶液を使用して92mlに調整された。
単相型ゲルはその後約200〜300μmに等しい相当平均直径を有する粒子の機械的粉砕により変換された。
【0053】
実施例3:本発明によるゲル“B”の製造
ヒアルロン酸ナトリウム(MM=2.106Da)3.5gを5.5% NaOH溶液
5.5mlに加えた。また粒子(実施例2で製造したもの)2.5gをその溶液に加えた。
この混合物全体を1時間放置し、その後10分間スパチュラで混合した。その後ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)263μlをその溶液に加えることにより架橋反応を引き起し、そして混合物全体を10分間スパチュラで混合した。この反応混合物を50℃の水浴に2時間導入した。この混合物を1M HClを使用して生理的pHに再調整した。体積はpH7において緩衝溶液を使用して116mlに調整された。
このようにして得られたゲルはその後pH=7において緩衝溶液に対して24時間透析された(再生セルロース、分離限度:MM=60kDa)。
ヒアルロン酸ナトリウムの全濃度は28mg/mlであった。
前記ゲルを1mlのガラスシリンジに充填し、121℃、15分間のサイクルに従って湿式加熱消毒した。
ゲルBを得た。
【0054】
実施例4:本発明によるゲル“C”の製造
ヒアルロン酸ナトリウム(MM=2.106Da)3.5gを1% NaOH溶液30
.5mlに加えた。
この混合物全体を1時間放置し、その後10分間スパチュラで混合した。その後ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)263μlをその溶液に加えることにより架橋反応を引き起し、そして混合物全体を10分間スパチュラで混合した。この反応混合物を50℃の水浴に2時間導入した。
粒子(実施例2で製造したもの)58gと1% NaOH溶液24mlを加え、そしてその後10分間スパチュラで混合した。
反応はさらに25℃において6時間続いた。pHはその後1M HClを使用して生理的pHに再調整された。
このようにして得られたゲルはその後pH=7において緩衝溶液に対して24時間透析された(再生セルロース、分離限度:MM=60kDa)。
ヒアルロン酸ナトリウムの全濃度は31mg/mlであった。
前記ゲルを1mlのガラスシリンジに充填し、121℃、15分間のサイクルに従って湿式加熱消毒した。
ゲルCを得た。
【0055】
比較用の表(実施例1、3及び4)
【表1】

【0056】
b)噴出力
噴出力は、27G1/2の針を通して12.5mm/分の速度でシリンジからゲルを押出すのに必要な強さの尺度に相当する。
【0057】
【表2】

【0058】
c)レオロジー特性
ゲルのレオロジー特性は、40mmの平らな幾何構造、1000ミクロンのエアーギャップ(air gap)、及び25℃の分析温度を有するAR 1000血流計(ティー・エイ・インスツルメント)(TA Instruments)を使用して検討した。
1Hzで測定されたパラメーターG’の値を3つのゲルについて比較した。
【0059】
【表3】

【0060】
B及びC(本発明による)は非常に強い弾性(非常に高いG’(1Hz))を有する。
強い弾性の結果、ゲルB及びCは単相型ゲルAと比較して容量を与えかつ維持する良好な能力を有する。
【0061】
d)残留性テスト(図1及び2)
ゲルの残留性は40mmの平らな幾何構造及び1000ミクロンのエアーギャップ(a
ir gap)を有するAR 1000血流計(ティー・エイ・インスツルメント)(TA Instruments)を使用して検討した。
分解テスト1は試験されるゲルに酸化剤を添加すること、1分間スパチュラでその混合物を均質にすること、37℃の温度にすること、及び0.3%の歪みを課すことにより実行された。1HzにおけるパラメーターG’の値を経時的に測定した。このようにして得られたレオロジー曲線を図1に表す。
本発明によるゲルは非常に強い残留性を有することが分かる。ラジカル/熱/機械的分解に関わらず、それらは長期間にわたって高い弾性を維持する。
【0062】
分解テスト2は試験ゲルにヒアルロニダーゼ溶液を添加すること、1分間スパチュラでその混合物を均質にすること、37℃の温度にさらすこと、及び0.3%の歪みを課すことにより実行された。1HzにおけるパラメーターG’の値を経時的に測定した。
このようにして得られたレオロジー曲線を図2に表す。本発明によるゲルは非常に強い残留性を有することが分かる。ラジカル/熱/機械的分解に関わらず、それらは長期間にわたって高い弾性を維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相型架橋バイオポリマーに基づくヒドロゲルマトリックスを含む注入可能なヒドロゲルであって、前もって架橋されたバイオポリマーヒドロゲル粒子が前記マトリックスと共架橋されていることを特徴とする注入可能なヒドロゲル。
【請求項2】
前記バイオポリマーが、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、セルロース及びその誘導体、アルギン酸塩、キサンタン、カナゲナイン(carraghenine)、タンパク質又は核酸又はそれらの混合物の1つから成る群から選ばれる、請求項1に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項3】
前記バイオポリマーが、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項4】
全バイオポリマー濃度が0.01ないし100mg/mlであり、好ましくは10ないし40mg/mlである請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項5】
本発明で使用されるヒドロゲル粒子が次の形状:球状、楕円形、又は不規則な形、を有する、又はそれらはこれらの形状のいくつかを有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項6】
前記粒子は1ないし2000マイクロメーターの内径を有し、好ましくは50ないし1000マイクロメーターの内径を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項7】
単相型マトリックスにおける粒子の質量パーセントは、1ないし99%である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項8】
バイオポリマー粒子は、単相型架橋バイオポリマーに基づくヒドロゲルマトリックスの内部で有利に分配され、そして均一に共架橋されている、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項9】
pH調節剤又はオスモル濃度調整剤のような、少なくとも1種の添加剤も含む、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項10】
少なくとも一種の薬理活性物質、例えばトリアムシノロン・アセトニドのようなステロイド系抗炎症剤、又は抗酸化剤、あるいは前記ゲルを生体内分解に対してより良好に抵抗可能にさせる分子、例えばポリオール族の分子、を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲル。
【請求項11】
− 架橋されたヒドロゲル粒子を製造する段階、
− 単相型ヒドロゲルマトリックスの第一架橋又は第二架橋中にこれらの架橋されたヒ
ドロゲルを加える段階、
を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲルの製造方法。
【請求項12】
生物組織を分離する、置換する又は生物組織を充填する又は前記組織の容量を増やすための、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲルの使用。
【請求項13】
− 滑液の代替薬剤、一時的な補足物として、リウマチ学における;
− 括約筋又は尿道の容量の増加を可能にする剤として、泌尿器学/婦人科学におけ
る;
− 白内障の手術における又は緑内障治療のための助剤として、眼科学における;
− 活性物質を放出するためのゲルとして、医薬品における;
− 骨再建、声帯の容量の増加、又は手術用組織の製造のために、外科における;
− しわを埋める、傷跡を隠す又は唇のボリュームを増やすための、皮膚化粧品におけ
る、
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の注入可能なヒドロゲルの使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36032(P2010−36032A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177755(P2009−177755)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(506032369)アンタイス エス.エイ. (6)
【Fターム(参考)】