説明

高シリカゼオライト:UZM−5HS

UZM−5HSと称され、UZM−5由来である結晶性アルミノシリケートゼオライトの族を合成した。UZM−5HSのアルミニウム含量は出発UZM−5の含量未満であり、従ってそのイオン交換容量及び酸性度も変化する。これらのUZM−5HSは以下の実験式によって表され、


また酸抽出及びAFS処理などの処理によって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UZM−5ゼオライトに由来し、関連する結晶性アルミノシリケートUZM−5HSゼオライトの族に関するものである。UZM−5HSのアルミニウム含量は出発UZM−5のアルミニウム含量よりも少なく、従ってそのイオン交換容量及び酸性度も変化する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、微小孔性であって、頂点を共有するAlO2及びSiO2四面体から形成される結晶性アルミノシリケート組成物である。天然産、及び合成によって作られる多くのゼオライトが、種々の工業生産において用いられている。ゼオライトは、寸法が均一な細孔開口部を有し、大きなイオン交換容量を有し、そして永久ゼオライト結晶構造を構成するいずれの原子も大きく移動させることなく、結晶の内部空洞を通じて分散される吸着相を可逆的に脱着させることが可能であるという点で特徴付けられる。
【0003】
国際ゼオライト学会(IZA)構造委員会発刊の“Atlas of Zeolite Framework Types”を参照しても明らかなように、合成ゼオライトの種類の数は100を優に上回る。よく知られているように、ゼオライトは、その組成、結晶構造、触媒及び吸着特性に基づいて相互に区別される。当業界においてゼオライトを区別するために一般的に用いられている方法の1つにX線回折がある。
【0004】
UZM−5ゼオライトは、米国特許6,613,302号明細書及び同6,388,159号明細書に述べられているゼオライトの族である。上記UZM−5ゼオライト組成物は独自のX線回折パターンを有しており、また無水換算でのモル比が以下の実験式で表される。
【0005】

【0006】
ここで、Mはアルカリ及びアルカリ土類金属から成る群より選択される少なくとも1つの交換性カチオンであり、mはM対(Al+E)のモル比であって0〜1.2の範囲で変化し、Rは第4級アンモニウムイオン、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、第4級アルカノールアンモニウムイオン、ジ第4級アンモニウムイオン及びそれらの混合物から成る群より選択される窒素含有有機カチオンであり、rはR対(Al+E)のモル比であって0.25〜3.0の値を有し、EはGa、Fe及びBから成る群より選択される元素であり、xはEのモル分率であって0〜0.5の範囲で変化し、nはMの加重平均原子価であって+1〜+2の値を有し、pはRの加重平均原子価であって+1〜+2の値を有し、yはSi対(Al+E)のモル比であって5〜12の範囲で変化し、そしてzはO対Alのモル比であって以下の式によって定義される値を有している。
【0007】

【0008】
ゼオライトのこの族の特定のメンバーとして、UZM−5及びUZM−5Pがある。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0009】
本発明者等は、これらのUZM−5物質を、その特性のいくつかに変化を与えるために改質した。本発明者等は、酸抽出、焼成、蒸気処理、アンモニウムヘキサフルオロシリケート処理の内の1つ又は複数を用いて、ほぼ全てのシリカに対するUZM−5ゼオライトのアルミニウム含量を、その構造及び気孔率を維持しつつ制御することができた。ゼオライト中のAl組成を制御することで、イオン交換容量や酸性度などのAlに関連する特性を調節することが可能となり、これにより改良された触媒及び/又は吸着材が提供される。この物質の新しい族をUZM−5HSと呼ぶ。そして、これらのゼオライトは炭化水素を転化するための触媒として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のアルミノシリケートゼオライト(UZM−5HS)及びその置換態は、UZM−5に関連する独自の構造を有している。UZM−5HSは、a)フルオロシリケート溶液又は懸濁液、b)焼成又は蒸気処理、その後に続く酸抽出又はイオン交換、c)酸抽出、又はd)これらのプロセスのいずれかの順序での組み合わせによって、UZM−5のトポロジーを有する出発ゼオライトを処理することによって得られる。UZM−5ゼオライトは、米国特許6,613,302号及び米国特許6,388,159号明細書において述べられている。上記参照文献において述べられているように、UZM−5は、合成時の形態で、そして無水換算で以下の実験式によって表される組成を有している。
【0011】

【0012】
ここで、Mは少なくとも1つの交換性カチオンであって、アルカリ及びアルカリ土類金属から成る群より選択される。Mカチオンの具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びそれらの混合物等が挙げられる。M対(Al+E)のモル比であるmの値は0〜1.2の範囲で変化する。Rは含窒素有機カチオンであって、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、第4級アンモニウムイオン、ジ第4級アンモニウムイオン、4級化アルカノールアンモニウムイオン及びそれらの混合物から成る群より選択される。A対(Al+E)のモル比であるrの値は、0.25〜3.0の範囲で変化する。Mの加重平均原子価であるnの値は、+1〜+2の範囲で変化する。有機カチオンの加重平均原子価であるpの値は、+1〜+2の値を有する。Eは、四面体配位され、骨格内に存在し、そしてガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物から成る群より選択される元素である。Eのモル分率であるxの値は0〜0.5の範囲で変化する。シリコン対(Al+E)の比は5〜12の範囲で変化するyによって表され、一方O対(Al+E)のモル比はzによって表され、以下の式によって示される値を有する。
【0013】

【0014】
Mが1つの金属のみである場合には、加重平均原子価は、上記1つの金属、つまり+1又は+2の原子価である。しかし、2つ以上のM金属が存在する場合には、その総量は以下の式によって表される。
【0015】

【0016】
そして加重平均原子価nは、以下の式によって表される。

【0017】
同様に、ただ1つのR有機カチオンのみが存在する場合には、加重平均原子価は、1つのRカチオン、つまり+1又は+2の原子価である。2つ以上のRカチオンが存在する場合には、Rの総量は以下の式によって表される。
【0018】

【0019】
そして加重平均原子価pは以下の式によって表される。

【0020】
これらのアルミノシリケートゼオライトは、M、R、アルミニウム、及びシリコンの反応源を水性媒体中で結合させることによって調製した反応混合物の水熱合成によって調製される。従って上記アルミニウム源には、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩及びアルミニウム金属等が含まれる。アルミニウムアルコキシドの具体例としては、アルミニウムsec−ブトキシド及びアルミニウムイソプロポキシド等が挙げられる。シリカの供給源としては、テトラエチルオルトシリケート、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ及びコロイダルシリカ等が挙げられる。M金属の供給源としては、ハライド塩、硝酸塩、酢酸塩、及びアルカリ又はアルカリ土類金属それぞれの水酸化物等が挙げられる。Rが第4級アンモニウムカチオンである場合、上記供給源には水酸化物、炭酸塩、酢酸塩及びハロゲン化合物が含まれる。具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム及び炭酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。またRは、中性アミン、ジアミン及びアルカノールアミンであってもよい。具体例としては、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びN,N,N’,N’テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンが挙げられる。
【0021】
所望の成分の反応源を含んだ反応混合物を、酸化物のモル比で以下の式によって表す。
【0022】

【0023】
ここで、aはMの酸化物のモル比であって0〜2の値を有し、bはRの酸化物のモル比であって1.5〜30の値を有し、dはシリカのモル比であって5〜30の値を有し、cはEの酸化物のモル分率であって0〜0.5の値を有し、そしてeは水のモル比であって30〜6000の値を有する。ここで上記反応混合物を、自生圧力下、密閉反応容器中で、100℃〜175℃、好ましくは120℃〜150℃の温度下、12時間〜14日間、好ましくは2日間〜6日間といった条件下で反応させる。結晶化が完了した後、上記固体生成物を濾過又は遠心分離などの手段によって上記不均質混合物から分離させ、続いて脱イオン水で洗浄し、そして100℃までの大気温度下、空気中で乾燥させる。
【0024】
この点において、以下の種類が、少なくとも表B及びCに示すdスペース及び相対強度を有するそれらのX線回折パターンによって同定された。'860出願において示されているように、ゼオライトのUZM−5族は、そのX線回折パターンに少なくとも2つのピーク、1つは3.9±0.12Åのdスペースでのピーク、そしてもう1つは8.6±0.20Åのdスペースでのピーク、を有しているという点で特徴付けられる。一定の成長条件下で、最大40Åまでのdスペースでのピークで、UZM−5P相が観察された。
【0025】

【0026】

【0027】
出発UZM−5のカチオン母集団は、脱アルミニウム化のプロセスの関連する範囲においては、当面のプロセスの重要な要素ではないが、最終的な結果、特に脱アルミニウム化の程度に関係する。従って、UZM−5を合成した状態で使用、あるいはイオン交換して異なるカチオン形態を作り出すことも可能である。この点において、上記出発ゼオライトは以下の実験式によって表される。
【0028】

【0029】
ここでR、x、y及びEは上に述べたのと同じ定義にて用いられるが、m’は0〜3.0の値を有し、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウムイオン、及びそれらの混合物から成る群より選択されるカチオンであり、n’はM’の加重平均原子価であって1〜3の範囲で変化し、r’は0〜3.0の値を有し、そしてpはRの加重平均原子価であって+1〜+2の範囲で変化する。z’の値は以下の式によって表される。
【0030】

【0031】
UZM−5の称号は、ゼオライトの合成時の状態及びイオン交換形態の両方を含んだ式(2)によって表されるゼオライトを指すのに用いられる。
【0032】
あるカチオンを別のカチオンに交換するために用いられる方法は当技術においてよく知られており、ミクロ多孔性組成物を、交換条件において所望のカチオン(モル過剰で)を含む溶液と接触させる処理が含まれる。交換条件としては、15℃〜100℃の温度、そして20分〜50時間の時間とが含まれる。また上記有機カチオンは、イオン交換に先立って、制御された条件下で加熱することによって除去される。イオン交換の特別なケースとしてはアンモニア焼成があり、その際有機テンプレートは分解され、アンモニウムカチオンに置換される。
【0033】
好適な例、特にフルオロシリケート溶液を用いた処理による脱アルミニウム化において、UZM−5は、15℃〜100℃の温度下で硝酸アンモニウムと接触させることによってアンモニウムカチオンと交換され、続いて水で洗浄される。この手順を複数回繰り返す。最後に、上記交換されたUZM−5ゼオライトを100℃で乾燥させる。
【0034】
本発明のUZM−5HSを調製するプロセスの1つは、フルオロシリケート塩を用いて上述のUZM−5組成物を20℃〜90℃の温度下で処理することによって行われる。上記フルオロシリケート塩は、2つの目的に使用できる。まずアルミニウム原子を骨格から除去し、(上記アルミニウムに代わって)骨格内に挿入される付加シリコンの源を提供する。使用可能なフルオロシリケート塩は、以下の一般式によって表される。
【0035】

【0036】
ここでnはAの原子価であって、AはNH4+、H+、Mg2+、Li+、Na+、Ba2+、Cd2+、Cu+、Cu2+、Ca2+、Cs+、Fe2+、Ca2+、Pb2+、Mn2+、Rb+、Ag+、Sr2+、Tl+、及びZn2+から成る群より選択されるカチオンである。アンモニウムフルオロシリケートは、その水への実質的溶解性のため、そしてゼオライトと反応して水溶性の副生塩、つまり(NH43AlF6を生成するため最も好適である。
【0037】
上記フルオロシリケート塩を、水溶液又は懸濁液の形態のUZM−5ゼオライトと、3〜7の範囲のpHで接触させる。この溶液を、上記骨格内のアルミニウム原子が十分な割合で除去され、シリコン原子と置き換えられて出発UZM−5ゼオライトの骨格(結晶性)構造の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が維持されるように、追加的に又は継続的にゆっくりとした速度でゼオライトと接触させる。本発明のプロセスを実行するために必要なフルオロシリケートの量には大きな変化があるが、少なくとも出発ゼオライト100グラムあたりフルオロシリケート塩0.0075モルの範囲内である。一旦反応が終了すると、生成ゼオライトUZM−5HSは、濾過処理などの従来技術によって分離される。
【0038】
いずれかの特定の理論への限定を意図するものではないが、アルミニウムを除去してシリコンを挿入するプロセスは2つのステップで進行するように見え、ここでアルミニウム抽出ステップは、制御されない限りは、非常に素早く進み、一方シリコン挿入は比較的ゆっくり進む。シリコン置換が行われずに脱アルミニウム化が過剰に進行した場合、上記結晶構造は著しく劣化し、最終的に崩壊する。通常、ゼオライトと接触するフルオロシリケート溶液のpHが3〜7の範囲内で増加し、そして反応系におけるフルオロシリケートの濃度が減少すると、アルミニウム抽出の比率は減少する。pHの値が3未満の場合、結晶性の劣化が著しく、一方pHの値が7よりも大きくなると、シリコン挿入の速度が著しく下がってしまう。また反応温度を上昇させると、シリコン置換の速度も上昇する傾向がある。反応温度を上昇させると、溶液のpHよりも脱アルミニウム化の効果が下がるということが分かった。従って、pHは脱アルミニウム化を制御する手段、一方温度は置換速度を制御する手段であると考えることができる。
【0039】
理論上は、当然のこととして溶液のpHが、フルオロシリケートを用いた所望の反応とは別にUZM−5ゼオライト構造上に生じる過度の破壊的変化を防ぐことができるほど十分に高いならば、用いられる水溶液中のフルオロシリケート塩の濃度には下限は無い。フルオロシリケート塩をゆっくりと加えることによって、結果として結晶構造の破壊を伴うような過剰なアルミニウム抽出が生じる前に、骨格へのシリコン挿入に必要なだけの適度な時間をとることが可能となる。通常、効果的な反応温度は10℃〜99℃、好ましくは20℃〜95℃の範囲であるが、125℃以上の温度及び0℃のような低い温度でも実施は可能である。
【0040】
当然、使用される水溶液中のフルオロシリケート塩の最大濃度は、温度、pH要素と関連し、またゼオライトと溶液間の接触時間、そしてゼオライトとフルオロシリケート塩の相対的比率とも相互に関連する。フルオロシリケート塩の濃度がリットル当たり10-3モルからその飽和状態までの溶液を使用することも可能であるが、リットル当たり0.05〜2.0モルの範囲の濃度の溶液を使用することが望ましい。更に上に述べたように、フルオロシリケート塩の懸濁液を使用することもできる。上述の濃度の値は真の溶液に関してのものであり、水中の塩の懸濁液に含まれるフルオロシリケート塩の総量に当てはまるものではない。ごく微量の水溶性フルオロシリケート塩でも、水に懸濁させ試薬として用いることが可能であり、未溶解固形物をゼオライトとの反応において消費される溶解性分子種と置換することも可能である。追加されるフルオロ塩の量の最小値は、少なくともゼオライトより除去されるアルミニウムの最小モル比率と等しいのが望ましい。
【0041】
大量のシリコン原子が置換される、つまりSiO2/A123の比率が100%よりも増加する場合、結晶性の劣化を最小限化するためにプロセスを複数の段階に分けて実施するのが望ましいことが分かった。骨格内に置換されるシリコンの量は大幅に増加(100%を超える増加)するので、実際、結晶構造の過度の劣化を防ぐために、プロセスを2つ又はそれ以上のステップに分けて実施することが必要となる。つまり、フルオロシリケート塩との接触は、1つのステップにおいて所望の量のシリコンを置換するために必要とされるのよりも低い濃度のフルオロシリケート塩を用いて、2つ又はそれ以上のステップに分けて実施される。各フルオロシリケート処理の後、上記生成物を洗浄し、フッ化物及びアルミニウムを除去する。また、湿潤ゼオライト生成物の取り扱いを容易にするために、各処理の間にゼオライトを50℃で乾燥させてもよい。
【0042】
本発明のもう1つの実施の形態として、アルミニウムの幾分かを骨格より除去し、それによって本発明のUZM−5HSゼオライトを提供できるようにするために、UZM−5出発ゼオライトを酸と接触させる処理(酸抽出)が挙げられる。酸によってアルミニウムを骨格から抽出することが可能であることは知られているが、結果として生じた生成物がその結晶性の実質的部分を維持するのかどうか、またはその構造が崩壊して非結晶性物質となるのかどうかは予測ができない。本発明者等は、UZM−5が、実質的な結晶性、表面積及び細孔容積を維持しつつ、ほぼ純粋なシリカ形態にまで脱アルミニウム化することが可能であることを発見した。
【0043】
酸抽出を行う際に用いられる酸には、鉱酸、カルボン酸及びそれらの混合物などが含まれる。これらの例として、硫酸、硝酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、シュウ酸等が含まれる。用いられる酸の濃度は決定的に重要な意味合いは持たないが、1重量%〜80重量%酸、好ましくは5重量%〜40重量%酸の範囲であると都合がよい。酸抽出の条件には、10℃〜100℃の温度下で10分〜24時間の間での条件も含まれる。一旦酸で処理されると、UZM−5HSゼオライトを濾過処理などの方法で分離し、脱イオン水で洗浄し、最大100℃までの大気温度下で乾燥させる。
【0044】
酸抽出より得られる脱アルミニウム化の効果の程度は、出発UZM−5のカチオン型、そして抽出が行われる際の酸濃度、時間及び温度によって決まる。例えば、出発UZM−5に有機カチオンが含まれている場合、脱アルミニウム化の効果の程度は、有機カチオンが除去されたUZM−5と比較すると僅かである。これは、もし脱アルミニウム化の作用がUZM−5の表面でのみ生ずるよう意図される場合には好適である。有機カチオン除去のための好適な方法としては、焼成、アンモニア焼成、蒸気処理及びイオン交換が含まれる。焼成処理の条件には、300℃〜600℃の温度下で2〜24時間の間での条件が含まれる。蒸気処理の条件としては、1%〜100%の蒸気で400℃〜850℃の温度下で10分〜48時間の間、好ましくは5〜50%の蒸気濃度で500℃〜600℃の温度下で1〜2時間の間での条件が含まれる。イオン交換の条件は上に示したとおりである。
【0045】
有機カチオンを除去してアンモニウムイオン交換形態を得るための特別な処理は、アンモニア焼成である。アンモニア雰囲気にて焼成することによって、有機カチオンは、推定上、アンモニアによって中和されアンモニウムカチオンを形成するプロトン形態になるまで分解される。ゼオライトのアンモニウム形態を安定させることで、水和反応による脱アルミニウム化を防ぐことができる。前記水和反応は、空気焼成において得られるプロトン形態の低比率ゼオライトに頻繁に生じる。その結果生じたアンモニウム形態のゼオライトは更にイオン交換され、その他のいずれかの所望の形態となる。アンモニア焼成の条件としては、アンモニア雰囲気中で、250℃〜600℃の温度下で、より好ましくは250℃〜450℃の温度下で、10分〜5時間行われる処理条件が含まれる。必要に応じて上記処理は、上記アンモニア雰囲気中での総時間が5時間を超えないように、この温度範囲内で複数の段階に分けて行われる。500℃を超える場合は、上記処理はより短く、30分間未満、より好ましくは約5〜10分間の間でとり行われる。500℃以上の温度で焼成時間を延長すると、所望のアンモニウムイオン交換に伴って、意図せぬ脱アルミニウム化作用を引き起こし、そして殆どの有機アンモニウムテンプレートは低温度下で容易に分解してしまうため、焼成が不必要に荒くなってしまう。
【0046】
なお強調すべきこととして、焼成及び蒸気の両処理は有機カチオンを除去するのみならず、ゼオライトを脱アルミニウム化する作用も併せ持つ。従って本発明の代替的実施の形態には、酸抽出が後に続く焼成処理、及び酸抽出が後に続く蒸気処理が含まれる。また本発明の更なる実施の形態には、出発UZM−5ゼオライトを焼成又は蒸気処理し、その後にイオン交換が続く処理が含まれる。勿論、酸抽出をイオン交換と同時、その前又はその後に行うことも可能である。
【0047】
イオン交換の条件は前記に同じ、つまり15℃〜100℃の温度及び20分〜50時間の間である。イオン交換は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウムイオン及びそれらの混合物から構成される群より選択されるカチオン(M1’)から成る溶液を用いて行われる。このイオン交換を行うことによって、M1カチオンは第2の又は異なるM1’カチオンと交換される。好適な実施の形態において、蒸気処理又は焼成工程後のUZM−5HS組成物をアンモニウム塩から成るイオン交換溶液と接触させる。アンモニウム塩の例として、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。溶液を含んだアンモニウムイオンは、必要に応じて硝酸、塩酸、硫酸及びそれらの混合物などの鉱酸を含む。上記鉱酸の濃度は、H+対NH4+比を0〜1とするのに必要なだけの量である。このアンモニウムイオン交換は、蒸気及び/又は焼成処理の後、細孔内に存在するデブリの除去のために寄与する。
【0048】
これまで述べたことからも明らかなように、有効なプロセスの条件に関して、脱アルミニウム化プロセスを通じてゼオライトの結晶構造の完全性がほぼ維持され、またゼオライトがその元の結晶化度の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%に維持されることが望ましい。出発物質の結晶化度に対する生成物の結晶化度を評価する簡便な方法は、それらの各X線粉末回折パターンのdスペースの相対強度を比較することである。上記の条件を前提とした任意の装置において出発物質のピーク強度の合計を標準として用い、続いて生成物の対応するピーク強度と比較する。例えばモレキュラーシーブ生成物のピークの高さの合計が出発ゼオライトのピーク強度の合計値の85%である場合は、85%の結晶化度が維持されたことになる。実際には、この目的のためのピークの一部のみ、例えば最高ピークの5又は6を利用するのが一般的である。結晶化度維持のその他の目安は、表面積及び吸着容量である。これらの試験は、置換金属が著しく変化、例えば試料によるX線吸収が増加する場合、またはピークが脱アルミニウム化のプロセスなどにおいて実質的に変化する場合に好適である。
【0049】
上述の脱アルミニウム処理のいずれかを経過した後、UZM−5HSは通常乾燥させられ、以下に示すような色々なプロセスにおいて用いられる。本発明者等は、上記UZM−5HSの性質が、1つ又は複数の追加処理によって更に改質が可能であることを発見した。これらの処理には蒸気処理、焼成処理、またはイオン交換が含まれ、個別に又はいずれかの組み合わせで行うことができる。これら組み合わせのいくつかの例を以下に示す(これらに限定はされない)。
蒸気処理 → 焼成処理 → イオン交換;
焼成処理 → 蒸気処理 → イオン交換;
イオン交換 → 焼成処理 → 蒸気処理;
イオン交換 → 蒸気処理 → 焼成処理;
蒸気処理 → 焼成処理;
焼成処理 → 蒸気処理等;
【0050】
必ずしもその結果が等しくなるとは限らないが、上述の脱アルミニウム処理をいずれかの順序で組み合わせ、本発明のゼオライトを生成することも可能である。なお強調すべきこととして、処理の特定の順序、例えばAFS、酸抽出、蒸気処理、焼成処理、その他を必要な回数繰り返し、所望の性質を得ることも可能である。勿論、1つの処理を繰り返しその他の処理を繰り返さない、例えば蒸気処理又は焼成処理等を行う前にAFSを2回以上繰り返すということも可能である。最後に、処理の順序及び/又は反復は、最終的なUZM−5HS組成物の性質を決定する。
【0051】
上記のように調製されたUZM−5HSは、無水換算で以下の実験式によって表される。
【0052】

【0053】
ここでM1は、アルカリ、アルカリ土類金属、希土類金属、アンモニウムイオン、水素イオン及びそれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1つの交換性カチオンであり、aはM1対(Al+E)のモル比であって0.15〜5.0の範囲で変化し、nはM1の加重平均原子価であって+1〜+3の値を有し、Eは、ガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物から成る群より選択される元素であり、xはEのモル分率であって0〜0.5の範囲で変化し、y’はSi対(Al+E)のモル比であって5よりも大きい値からほぼ純粋なシリカまでの範囲で変化し、そしてz”はO対(Al+E)のモル比であって以下の式によって定められる値を有する。
【0054】

【0055】
上記ゼオライトは、少なくとも2つのX線回折ピーク、1つは3.84±0.07Å、そしてもう1つは8.55±0.25Åのdスペースを有しているという点で特徴付けられる。前者のピークは非常に幅広い場合が多い。ほぼ純粋なシリカとは、殆ど全てのアルミニウム及び/又はE金属が骨格より除去されたということを意味する。全てのアルミニウム及び/又はE金属を除去することは、事実上不可能であることがよく知られている。数に関して、y’が少なくとも3,000、好ましくは10,000、そして最も好ましくは20,000の値を有している場合、ゼオライトはほぼ純粋なシリカである。従ってy’の値の範囲は、5〜3,000までの範囲、好ましくは12より大きい値から3,000までの範囲、5〜10,000までの範囲、好ましくは12より大きい値から10,000までの範囲、そして5〜20,000までの範囲、好ましくは12より大きい値から20,000までの範囲である。
【0056】
ゼオライト出発物質の比率又はここで用いられるゼオライト生成物の吸着能等を特定する際、特に明記しない限りゼオライトの『無水状態』を意味する。ここで『無水状態』という用語は、物理吸着及び化学吸着水の両方を実質的に有していないゼオライトを指す用語として用いられる。
【0057】
上述処理の内の1つ又は複数の処理の後に得られたUZM−5HSゼオライトは、UZM−5の回折パターンとは異なる(つまり独自の)X線回折パターンを有している。全てのUZM−5HS物質に共通の、主要なピークのリストを表Aに示す。
【0058】

【0059】
この発明のゼオライトは、分子サイズ(運動直径)又は分子種の極性の度合いに基づいて、分子種の混合物を分離させることができる。分子種の分離が分子サイズに基づく場合、分離は、結晶内空間に入り込む小さな分子種によって、一方でより大きな種を排除しながら行われる。酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素及び種々の炭化水素などの色々な分子の運動直径が、D.W.Breck,Zeolite Molecular Sieves,John Wiley and Sons(1974)p.636に記載されている。分子サイズに基づいた炭化水素の分離は、好ましい方法である。
【0060】
本発明の結晶性ミクロ多孔組成物は、その合成時又は焼成後のいずれのものでも、炭化水素転換プロセスにおける触媒として又は触媒担持体として用いることができる。炭化水素転換プロセスは従来よく知られた技術であり、分解、水素化分解、芳香族化合物及びイソパラフィン両方のアルキル化、芳香族化合物及びパラフィン両方の異性体化、重合、改質、脱ろう、水素化、脱水素化、トランスアルキル化、ナフサ分解、開環、脱アルキル化、水和、脱水、水素処理、水素化脱窒素処理、水素化脱硫処理、メタン生成及び合成ガスシフト工程が含まれている。これらのプロセスに用いられる供給原料の特定の反応条件及び種類については、本件に参照として組み込まれている米国特許第4,310,440号及び同4,440,871号明細書において述べられている。好適な炭化水素転換プロセスは、芳香族化合物のアルキル化、キシレンの異性体化、ナフサ分解、酸化物のオレフィンへの転換、開環、トランスアルキル化、イソパラフィンのアルキル化、及びエチルベンゼンの異性体化である。
【0061】
これらの結晶性ミクロ多孔組成物によって、アルキル芳香族化合物の塩基触媒側鎖アルキル化、アルドール縮合、アセチレンのオレフィン二重結合異性体化及び異性体化、アルコール脱水素化、及びオレフィン二量体化、オリゴマー化を含め、その他の反応が触媒される。これらのプロセスに用いられる供給原料の反応条件と、そして種類のいくつかについては、本件に参照として組み込まれている米国特許出願第5,015,796号明細書、及びH.Pines,THE CHEMISTRY OF CATALYTIC HYDROCARBON CONVERSIONS,Academic Press(1981)pp.123−154、及びそこに含まれる参照において述べられている。
【0062】
以下の実施例(及び上記表)において示されるX線パターンは、標準的X線粉末回折技術を用いて得られた。上記放射線源は、45kV及び35maで作動する高強度X線管であった。銅K−アルファ線からの上記回折パターンは、コンピュータを利用した適当な技術によって得られた。平坦圧縮粉末試料を、分あたり2°(2θ)の走査速度で2°〜70°(2θ)の範囲を継続的に走査した。2θとして表される回折ピークの位置から、オングストローム単位の面間隔(d)が得られた。ここでθは電子化データより観察した際のブラッグ角である。バックグラウンドデータを減算した後の回折ピークの統合面積から強度を判定した。“Io”は最強線又はピークの強度であり、そして“I”はその他の各ピークの強度である。
【0063】
当業者には周知のように、パラメータ2θの判定には人的及び機械による誤差が伴い、両者を合わせて、2θの各報告値には±0.4、そしてナノ結晶性物質の報告値には最大で±0.5の誤差が発生し得る。もちろんこの誤差は、θ値より計算されるdスペースの報告値においても明らかである。この不正確性は当技術を通じて一般的なものであって、本結晶性物質の相互の区別、及び先行技術の組成物との区別を妨げる程のものではない。報告されたX線パターンのいくつかにおいては、dスペースの相対強度はvs、s、m及びwの表記によって示され、これらは非常に強い強度、強い強度、中位の強度、及び弱い強度をそれぞれ表している。100×I/Ioの観点からみて、上記表記はw=0−15、m=15−60、s=60−80、そしてvs=80−100と定義される。場合によって合成物の純度は、そのX線粉末回折パターンを基準にして判定される。従って例えば、ある試料が純粋であると表記された場合、それは上記試料のX線パターン中に結晶性不純物に起因するラインが存在しないということのみを意図していて、非結晶性物質が存在していないというわけではない。
【0064】
本発明のより十分な説明のため、以下に実施例を示す。なお、この実施例は例を挙げての説明のみを目的として示されるものであって、添付請求項に示される本発明の広範な範囲に過度の制限を設けることを意図して示されるものではない。
【実施例1】
【0065】
(UZM−5の合成)
アルミニウムトリsec−ブトキシド(95+%)58.75gを、TEAOH(35%)836.34g中に溶解させた。続いてコロイダルシリカ(LudoxTM AS−40、40%SiO2)294.73gを、脱イオン水10.18gと共に加えた。次にこの反応混合物を1時間強く撹拌し、複数のテフロン(登録商標)ボトルに移し、そして95℃の温度下で一晩熟成させた。結果的に生成されたアルミノシリケート混合物を分析すると、それが4.67%のSiを含んでいることが示された。
【0066】
このアルミノシリケート混合物の一部400gを、TMACl溶液(脱イオン水20.0g中のTMACl(97%)9.41g)で処理し、そして20分間均質化した。反応混合物を6つのテフロン(登録商標)ラインオートクレーブに入れ、自生圧力下、150℃で96時間消化(digested)した。固形生成物を遠心分離によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして98℃で乾燥させた。
【0067】
各オートクレーブからの上記固形生成物を混合した。元素分析によって、Si/Al比が6.89であることが示された。焼成物質のBET表面積及び細孔容積は、520m2/g、0.20cc/gであった。この粉末X線回折パターンは、上記物質がUZM−5であることを示した。上記回折パターンの特性線を表1に示す。
【0068】

【実施例2】
【0069】
実施例1と同様の方法で調製したUZM−5の試料12gを、アンモニアを上方へ流動させる構成の縦型管状炉内で焼成した。上記アンモニアの流速は1.1リットル/分であり、上記炉を、5℃/分で昇温して、300℃、350℃そして450℃で各0.5時間保持し、そして500℃又は550℃で6分間保持した。続いて上記試料を、流動アンモニアの存在下で室温まで冷却してNa、NH4UZM−5形態を生成した。上記出発ゼオライトに含まれているAlは、100%四面体アルミニウムであることがNMRによって示され、Cの含量は11.9%、N/Al=1.32そしてNa/Al=0.05であって、窒素及び炭素は上記テンプレート由来のものであった。上述のアンモニア焼成処理及び最終工程における500℃での処理の後、炭素レベルは0.7%まで減少し、N/Al=1.02、Na/Al=0.05であり、そして上記Alはほぼ100%四面体であることがNMRによって示された。生成したゼオライトの上記アンモニウム形態は、骨格内にアルミニウムを保持することによって最大イオン交換容量を維持しており、一方で非交換性テンプレートカチオンがアンモニウムカチオンに置換されているため、イオン交換能も増大している。この組成から、脱アルミニウム化のプロセス開始の前に、イオン交換を経由することでゼオライトの多くの変化型を得ることができる。
【実施例3】
【0070】
実施例1における物質の一部10gを以下の態様で焼成した。N2雰囲気下、温度を2℃/分で300℃に昇温して300℃の状態で1.5時間保持し、2℃/分で420℃に昇温して1.5時間保持し、2℃/分で520℃に昇温して、N2雰囲気下で1時間保持し、続いて上記雰囲気を通常の空気状態に転換し、更に520℃で5.5時間保持した。80gの脱イオン水中に98%のH2SO42.4gを希釈して酸性溶液を調製し、75℃まで加熱した。上記焼成物質をこの溶液に加え、75℃の温度で2時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして98℃で乾燥させた。
【0071】
元素分析によって上記生成物が31.7のSi/Al比を有していることが示され、一方N2吸着測定によって391m2/gのBET表面積、及び0.13cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記物質がUZM−5HSであることが示された。上記回折パターンの特性線を表2に示す。
【0072】

【実施例4】
【0073】
実施例1にて分離したUZM−5の一部8.0gを以下の態様で焼成した。N2雰囲気下、温度を2℃/分で300℃に昇温して300℃で2時間保持し、2℃/分で420℃に昇温して2時間保持し、そして2℃/分で520℃に昇温して8時間保持した。100gの脱イオン水中に、HNO3(69%)40.0gを希釈して酸性溶液を調製した。上記溶液を、焼成UZM−5を加える前に75℃まで加熱した。得られた懸濁液を75℃で2時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、98℃で乾燥させた。
【0074】
元素分析によって上記生成物が89.4のSi/Al比を有していることが示され、一方N2吸着測定によって466m2/gのBET表面積、及び0.16cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表3に示す。
【0075】

【実施例5】
【0076】
実施例1におけるUZM−5形態の一部5gを以下の態様で焼成した。N2雰囲気下、温度を3℃/分で550℃に昇温して、そのまま6時間保持した。110gの脱イオン水中にHNO3(69%)40gを希釈して溶液を調製した。上記溶液を、焼成UZM−5を加える前に75℃まで加熱した。この懸濁液を75℃の温度で4時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして98℃で乾燥させた。
【0077】
元素分析によって上記生成物が60.6のSi/Al比を有していることが示され、一方N2吸着測定によって491m2/gのBET表面積、及び0.18cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表4に示す。
【0078】

【実施例6】
【0079】
実施例1におけるUZM−5形態の一部6gを、実施例3に示される手順で焼成した。60gの脱イオン水中にHNO3(69%)40gを希釈して溶液を調製した。上記溶液を、焼成UZM−5を加える前に75℃まで加熱した。この生成した懸濁液を75℃の温度で6時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして98℃で乾燥させた。
【0080】
元素分析によって上記生成物が117のSi/Al比を有していることが示され、一方N2吸着測定によって489m2/gのBET表面積、及び0.17cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表5に示す。
【0081】

【実施例7】
【0082】
UZM−5試料(Si/Al=7.7)の一部10gを、N2雰囲気を通常の空気状態に転換する前に、N2雰囲気下で、3℃/分で560℃に昇温して、1時間保持することによって焼成した。この焼成を更に6時間継続した。40gの脱イオン水中にHNO3(69%)60gを希釈して溶液を調製した。上記溶液を、焼成UZM−5を加える前に85℃まで加熱した。懸濁液を85℃の温度で4時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして95℃で1時間乾燥させた。乾燥ケーキを分離し、75℃で1時間、NaCl溶液(脱イオン水150ml中10g)で処理した。個体を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして95℃で乾燥させた。
【0083】
元素分析によって生成物は317のSi/Al比を有していることが示され、一方N2吸着測定によって469m2/gのBET表面積、及び0.16cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表6に示す。
【0084】

【実施例8】
【0085】
アルミニウムトリsec−ブトキシド(95+%)987.54gを、TEAOH(35%)14058g中に強く撹拌しながら溶解させた。続いて、コロイダルシリカ(LudoxTM AS−40、40% SiO2)4954gを加え、更に30分間強く撹拌した。この反応混合物を、撹拌装置及び凝縮装置の備えられた22リットルフラスコ内に入れた。この混合物を95℃で16時間熟成させた。上記反応混合物は上記熟成プロセスの後、4.72%のSiを含んでいた。
【0086】
アルミノシリケート反応混合物の一部1100gを、NaCl6.78g及びTMACl(97%)12.72gを溶解した脱イオン水150g中に強く撹拌して溶解させた溶液で処理した。1時間均質化した後、上記混合物をParr2リットルオートクレーブに入れ、自生圧力下、150℃で72時間消化(digested)した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄した。X線粉末回折による特徴及び元素分析によって、この物質がSi/Al比5.88のUZM−5であることが示された。
【0087】
UZM−5の一部12gを実施例6に示された概略に沿って焼成した。40gの脱イオン水中にHNO3(69%)60gを希釈して溶液を調製した。上記溶液を、焼成UZM−5を加える前に85℃まで加熱した。懸濁液を85℃の温度で4時間撹拌した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして95℃で1時間乾燥させた。乾燥ケーキを分離し、75℃で1時間、NaCl溶液(脱イオン水150ml中のNaCl10g)で処理した。個体を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして95℃で乾燥させた。
【0088】
元素分析によって、Si/Al比が1479であること、そしてNa/Al=5.48であることが示され、一方N2吸着測定によって512m2/gのBET表面積、及び0.18cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表7に示す。
【0089】

【実施例9】
【0090】
UZM−5(Si/Al=6.03)の試料をN2雰囲気下、300℃で10時間かけて前処理した。上記UZM−5試料(3.6g)をNH4NO33g及びHNO3(69%)9.59gを含んだ脱イオン水30gに懸濁させた。この溶液はHNO3/Alの15/1の比率を示した。上記懸濁液をオイルバス内で撹拌しながら80℃で一晩中加熱した。上記固体を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして室温で乾燥させた。続いて上記試料を空気中にて500℃で焼成した。
【0091】
元素分析によってSi/Al比が65.4であること、一方N2吸着測定によって498m2/gのBET表面積、及び0.19cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表8に示す。
【0092】

【実施例10】
【0093】
実施例9にて調製されたUZM−5(6.37g、Si/Al=6.03、21.3%揮発性物質)の試料を、脱イオン水50gで希釈したHNO3(69%)32.4gを含むHNO3溶液に懸濁させた。この溶液はHNO3/Alの30/1の比率を示した。懸濁液を、オイルバス内で撹拌しながら80℃で18時間加熱した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして室温で乾燥させた。続いて試料を空気中にて500℃で4時間焼成した。
【0094】
元素分析によってSi/Al比が23.2であること、一方N2吸着測定によって510m2/gのBET表面積、及び0.20cc/gの細孔容積が示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表9に示す。
【0095】

【実施例11】
【0096】
アンモニウムヘキサフルオロシリケート溶液を、(NH42SiF68.37gを脱イオン水159g中に溶解させることによって調製した。また別に、アンモニウム交換UZM−5試料(150.55g、Si/Al=5.45)を脱イオン水395gに懸濁させ、80℃まで加熱した。続いて上記アンモニウムヘキサフルオロシリケート溶液を、1.34cc/分の速度で、120分間かけてポンプを使用して上記ゼオライト懸濁液に加えた。追加処理が一旦終了すると、上記生成した反応混合物を80℃で1時間保持した。生成物を濾過処理によって分離し、脱イオン水で洗浄し、そして室温にて乾燥させた。
【0097】
元素分析によってSi/Al比が8.25であること、一方N2吸着測定によってBET表面積が561m2/gであること、細孔容積が0.17cc/gであることが示された。X線回折パターンによって上記生成物がUZM−5HSであることが示された。上記パターンの特性線のいくつかを表10に示す。
【0098】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともAlO2及びSiO2四面体酸化物単位の三次元骨格構造を有し、及び成分のモル比が無水換算で以下の実験式で表されるミクロ多孔結晶質ゼオライトにおいて、

ここで、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アンモニウムイオン、水素イオン及びそれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1つの交換性カチオンであり、aはM1対(Al+E)のモル比であって0.15〜5.0の範囲で変化し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物から成る群より選択される元素であり、xはEのモル分率であって0〜0.5の範囲で変化し、nはM1の加重平均原子価であって+1〜+3の値を有し、y’はSi対(Al+E)のモル比であって5より大きい値を有し、そしてz”はO対(Al+E)のモル比であって以下の式によって定義される値を有しており、

このゼオライトは、少なくとも2つのX線回折ピークを有していて、1つは3.84±0.07Åのdスペース、そしてもう1つは8.55±0.25Åのdスペースであるという点で特徴付けられる、
ことを特徴とするミクロ多孔結晶質ゼオライト。
【請求項2】
少なくとも表Aに示すdスペース及び相対強度を含むX線粉末回折パターンを有していることを特徴とする請求項1記載のゼオライト。

【請求項3】
y’が5〜20,000の値を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のゼオライト。
【請求項4】
請求項1又は2又は3記載のミクロ多孔結晶質ゼオライトを調製する方法であって、該方法は、処理条件にて出発ゼオライトを処理し、これにより骨格アルミニウムの少なくとも一部を除去し、そして必要に応じて、シリコンを上記骨格内に挿入して改質ゼオライトを生成するステップを含んでおり、上記出発ゼオライトが無水換算で以下の実験式で表される組成を有しており、

ここで、M’はアンモニウムイオン、水素イオン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びそれらの混合物から成る群より選ばれる交換性カチオンであり、nはM’の加重平均原子価であって+1〜+3の範囲で変化し、m’はM’対(Al+E)のモル比であって0〜3.0の範囲で変化し、Rはプロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノールアミン、第4級アンモニウムイオン、ジ第4級アンモニウムイオン、4級化アルカノールアンモニウムイオン及びそれらの混合物から成る群より選択される有機カチオンであり、pは上記有機カチオンの平均加重原子価であって+1〜+2の範囲で変化し、r’はR対(Al+E)のモル比であって0〜3.0の範囲で変化し、y’はSi対(Al+E)のモル比であって5〜12の範囲で変化し、そしてz’はO対(Al+E)のモル比であって以下の式によって示される値を有している、

ことを特徴とする方法。
【請求項5】
上記処理ステップが、フルオロシリケート溶液又は懸濁液による処理、弱性、強性、又は複合酸による抽出、焼成プラスイオン交換、蒸気処理プラス酸抽出及びそれらの組み合わせから成る群より選択されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
炭化水素転化方法であって、該方法は、炭化水素流を炭化水素転化条件下で触媒合成物と接触させるステップを含んでおり、上記触媒合成物が請求項1又は2又は3記載のゼオライトを含んでいることを特徴とする炭化水素転化方法。
【請求項7】
上記炭化水素転化方法が、芳香族化合物のアルキル化、キシレンの異性体化、ナフサ分解、開環、トランスアルキル化、イソパラフィンのアルキル化、エチルベンゼンの異性体化、及び酸素含有物のオレフィンへの転化より成る群から選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2007−533590(P2007−533590A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509441(P2007−509441)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/012831
【国際公開番号】WO2005/113437
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】