説明

高分子凝集剤

【課題】 難脱水性の有機性汚泥等の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性ポリマー(A)、および芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)を含有してなる高分子凝集剤。(A)は、(B)の存在下、水溶性不飽和モノマー(a)をラジカル重合させてなる水溶性ポリマーであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、有機性汚泥等の脱水性能に優れる高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水もしくはし尿(以下、汚泥と略記)等又は工場廃水もしくは無機性汚泥(以下、廃水と略記)等のうち、汚泥とくに有機性汚泥の脱水に対しては、ポリ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリアミジン等のカチオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性高分子凝集剤が広く使用されている。
また、廃水等の脱水に対しては、ポリアクリルアミド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムコポリマー等のアニオン性高分子凝集剤が広く使用されている。
これらの高分子凝集剤の製造方法としては、水溶液重合法、薄膜重合法、逆相懸濁重合法、沈殿重合法および乳化重合法等が知られている。
【0003】
これらの高分子凝集剤の中で、近年、特に有機性汚泥の脱水に関して、発生する汚泥量の増加および汚泥性状の難脱水性化への対応の観点から脱水処理速度向上のニーズが高まってきており、より強いフロックを形成する高分子凝集剤が望まれている。
また、脱水ケーキを焼却処分する際の焼却処分費用の高騰、脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況から、脱水ケーキ含水率の低減を実現することができる高分子凝集剤が望まれている。
【0004】
最近では、これらの高性能化を目的とした高分子凝集剤として、例えば、重合時又は重合後にポリマー中のカルボキシル基と化学結合する架橋剤を加え反応させることで部分架橋を形成させた両性高分子凝集剤(例えば、特許文献1参照)、重合時にアゾ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物又は光開裂基を有するポリアルキレンオキサイド化合物を添加して製造したもの(例えば、特許文献2参照)、重合時にニトロキシラジカルを添加して製造したもの(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−129311号公報
【特許文献2】特開2002−97236号公報
【特許文献3】特開2001−139606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状用いられている高分子凝集剤は、まだ前記の課題を十分に解決できるレベルには到達しておらず、また上記開示されている高分子凝集剤はフロック強度や脱水ケーキ含水率の観点から、多少は改良されているもののまだ不十分であった。
本発明の目的は、難脱水性の有機性汚泥の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性ポリマー(A)、および芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)を含有してなる高分子凝集剤(P);並びに上記の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子凝集剤は下記の効果を奏する。
(1)汚泥等の脱水処理において強固な粗大フロックを形成する。
(2)形成されたフロックは破壊、再分散されにくいため凝集処理の安定性や処理速度を著しく高めることができる。
(3)脱水工程後のケーキ含水率が低く廃棄物量および焼却処理コストを低減できる。
【0009】
[水溶性ポリマー(A)]
本発明における水溶性ポリマー(A)は、水溶性不飽和モノマー(a)を必須構成単位とする。(a)は、懸濁物の凝集性の観点から、カチオン性モノマー(a1)[下記一般式(1)または(2)で表される(a11)、(a12)、および後述の(a13)、(a14)等]を含有するのが好ましい。
(a)中には(a1)の他に、必要によりさらに、1個の不飽和基を有する、ノニオン性モノマー(a2)および/またはアニオン性モノマー(a3)を含有させることができる。
なお、ここおよび以下において水溶性不飽和モノマーもしくは水溶性ポリマーとは、水に対する溶解度が1g以上/水100g(20℃)であるものを意味し、後述する水不溶性不飽和モノマーとは、水に対する溶解度が1g未満/水100g(20℃)であるものを意味する。

CH2=C(R1)CO−Q−X−NR23 (1)
CH2=C(R1)CO−Q−X−N+234・Z- (2)
【0010】
一般式(1)、(2)中、R1はHまたはメチル基、R2、R3は、ヘテロ原子を含有してもよい炭素数(以下Cと略記)1〜3[凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ。)の観点から好ましくは1〜2]のアルキルもしくはアルコキシル基を表し、R2とR3は互いに結合して環を形成してもよい。
4はHまたはC1〜7の、アルキル、アルコキシルまたはベンジル基を表す。R1〜R4は相互に同じでも異なっていてもよい。
QはOまたはNH、XはC1〜4のアルキレン基またはC2〜4のヒドロキシアルキレン基を表す。
-はハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンを表す。
【0011】
(a1)〜(a3)としては下記のものが挙げられる。
(a1)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11) 窒素原子含有(メタ)アクリレート[ここにおいて(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタアクリレートを表す。以下同じ。]
C6〜21のもの、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a12) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C6〜21のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a13) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C6〜21のもの、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン等];
(a14) アミンイミド基を有する化合物
C6〜21のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド。
【0012】
(a2)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21)(メタ)アクリレート
C4以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述の測定条件でのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。基準物質:ポリスチレン]5,000以下のもの、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−および(ポリ)グリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a22)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(C1〜2)(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキシド(C2〜3、以下AOと略記。)1〜8モル付加物;
(a23) 前記(a1)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルマレイミドのAO2〜10モル付加物。
【0013】
(a3)アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸、マレイン酸AO付加物モノエステル;
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜3)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0015】
(a)のうち水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点から好ましいのは、カチオン性モノマーのうちの(a11)、(a12)、(a13)、ノニオン性モノマーのうちの(a21)、(a22)、アニオン性モノマーのうちの(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a11)、(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a11)、(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a11)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(前記のもの)、(a22)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a23)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0016】
本発明におけるMnおよび後述の重量平均分子量のGPC測定は次の測定条件に従うものとする。
<GPC測定条件>
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL2本+TSKgel
Multipore HXL−M、東ソー(株)製
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)、
東ソー(株)製
【0017】
水溶性不飽和モノマー(a)中のカチオン性モノマー(a1)の含有量(モル%)は、凝集性能の観点から好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%;ノニオン性モノマー(a2)の含有量(モル%)は、(A)の高分子量化および凝集性能の観点から好ましくは0〜80モル%、さらに好ましくは0〜50モル%;アニオン性モノマー(a3)の含有量(モル%)は、(A)の高分子量化および汚泥粒子表面の電荷中和の観点から好ましくは0〜30モル%、さらに好ましくは0〜20モル%である。
【0018】
水溶性ポリマー(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で水溶性不飽和モノマー(a)の他に必要により水不溶性モノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用することができる。
水不溶性モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0019】
(x2) [モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールは以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0020】
(x3) C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4) 不飽和アルコール[C2〜4のもの、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5) ハロゲン含有モノマー(C2〜30のもの、例えば塩化ビニル)。
【0021】
また、架橋性モノマー(y)としては、2個またはそれ以上の不飽和基を有する、以下の(y1)〜(y4)、反応性エポキシ基を2個もしくはそれ以上、または不飽和基と反応性エポキシ基を合計で2個もしくはそれ以上有する、以下の(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20のもの、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン)塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
(y1) ビスポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30のもの、例えばN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(y2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30のもの、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(2〜4)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;
【0023】
(y3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下、例えばジビニルアミン、多価(2価〜5価またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール(以下、EGと略記)、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等]、ポリオキシアルキレン[Mn2,000〜3,000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、PPG(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン(グリセリンは以下、GRと略記)、ペンタエリスリトール、ソルビトール、デンプン〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル等;
【0024】
(y4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(y5) 反応性エポキシ基を2個もしくはそれ以上、または不飽和基と反応性エポキシ基を合計で2個もしくはそれ以上有するもの
C8以上かつMn6,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリレート。
【0025】
水溶性ポリマー(A)を構成するモノマー(a)、および必要により併用する(x)、(y)の合計モル数に基づく各モノマーの含有量は、(a)は、通常50%以上、凝集性能の観点から好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%;(x)は、通常50%以下、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%;また、(y)は、通常5%以下、(y)の重合性または反応性にも依存するものの、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から、好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0026】
水溶性ポリマー(A)は、公知の水溶液重合(例えば、特開昭55−133413号公報に記載の断熱重合、薄膜重合、噴霧重合)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号に記載のもの)等]で、ラジカル重合開始剤(d)を用いて製造することができる。該重合法のうち、有機溶媒等を使用する必要がないこと等、工業上の観点から好ましいのは水溶液重合法である。
なお、本発明の高分子凝集剤(P)については後述のとおり、次の製造方法(1)〜(3)で製造することができ、(1)の場合の(A)の製造は、後述する芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)の存在下で行われる。
(1)(B)の存在下で(A)を製造する方法
(2)製造後の(A)の含水ゲルに(B)を浸透させて製造する方法
(3)製造後の(A)の粉末に(B)を混合して製造する方法
【0027】
ラジカル重合開始剤(d)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキシド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド、ジクミルパーオキシド等]〕が挙げられる。
上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕等が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち、水溶性ポリマー(A)の水不溶解分低減の観点からアゾ化合物が好ましい。
(d)は、通常重合系の水相に含有させるが、前記重合方法によっては水相(もしくは分散相)および/または油相(もしくは連続相)のいずれに存在させてもよい。
【0029】
(d)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、好ましくは0.001〜1.0%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.2%、最も好ましくは0.02〜0.1%である。
【0030】
重合に際しては、さらに連鎖移動剤(f)を使用することができる。
(f)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョン ウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymerHandbook fourth edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
【0031】
該(f)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60のもの、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。
これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
【0032】
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20のもの、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20のもの、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環含有チオール(C5〜20のもの、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香族チオール(C6〜12のもの、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール、チオナフトール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20のもの、例えばα−トルエンチオール)が挙げられる。
【0033】
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40のもの、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール、トリエチレングリコールジチオール、EG−ジ−2−メルカプトエチルエーテル)、脂環式ジチオール(C5〜20のもの、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16のもの、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20のもの、例えばキシレンジチオール)が挙げられる。
【0034】
また、上記(f)のうち、高分子凝集剤の水不溶解分低減の観点から水溶性の高いものが好ましく、(f)の水/n−デカン分配係数は、好ましくは10/90〜100/0、さらに好ましくは20/80〜100/0、とくに好ましくは50/50〜100/0である。ここにおける水/n−デカン分配係数は、日本工業規格(JIS)に規定されている水/1−オクタノール分配係数(JIS Z7260−107)と同様の測定方法で、1−オクタノールを、n−デカンに代えることで測定することができる。
(f)の使用量は、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、高分子凝集剤の水不溶解分低減および高分子量化の観点から、好ましくは0.0001〜1%、さらに好ましくは0.001〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.3%、最も好ましくは0.05〜0.1%である。
【0035】
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法としては、例えば次の方法が挙げられる。
すなわち、疎水性分散媒(b)および分散剤(c)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。
一方、水溶性不飽和モノマー(a)、ラジカル重合開始剤(d)、および必要により連鎖移動剤(f)、並びに水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に投入し、懸濁させながら重合させる。
モノマー水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a)、(d)および必要により加える(x)および/または(y)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。モノマー水溶液等を不活性ガスで置換する方法としては、モノマー水溶液等に不活性ガスをバブリング供給する方法、滴下ライン中でスタティックミキサー等により不活性ガスをブレンドする方法等が挙げられ、重合の均一性の観点からスタティックミキサーで不活性ガスをブレンドする方法が好ましい。
【0036】
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法や逆相乳化重合法で用いられる疎水性分散媒(b)としては、以下の炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
なお、ここにおいて疎水性分散媒とは、水に対する溶解度(20℃)が1g未満/水100gである分散媒を意味する。
(1)炭化水素
脂肪族(C5〜12、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環含有(C5〜12、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香環含有炭化水素(C6〜12、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等]等;
(2)ケトン
脂肪族(C3〜10、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環含有(C5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等]等;
(3)エーテル
脂肪族(C4〜8、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状(C4〜18、例えばテトラヒドロピラン)および芳香環含有エーテル(C7〜12、例えばアニソール)等]等;
(4)エステル
脂肪族(C3〜10、例えば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル)、脂環含有(C7〜12、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)および芳香環含有エステル(C8〜13、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等]等。
【0037】
これらのうち、製造時の取り扱い性、および重合時の温度制御の観点から、好ましいのは脂肪族および脂環含有炭化水素、脂肪族および脂環含有エステル、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルおよび酢酸シクロヘキシルである。
【0038】
疎水性分散媒(b)の使用量は、逆相懸濁重合では、分散系の粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、分散系の安定性の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%;逆相乳化重合では、エマルションの粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、エマルションの安定性の観点から好ましい上限は80%、さらに好ましくは70%、とくに好ましくは60%である。
【0039】
また、逆相懸濁重合法で用いられる分散剤(c)としては、逆相懸濁または乳化粒子の分散または乳化安定性、および後述の水溶性ポリマー(A)の乾燥粒子の安息角、すなわち粉体流動性の制御の観点から好ましくはHLBが1〜8、さらに好ましくは1.5〜7.5、とくに好ましくは2〜7の、種々の油溶性物質が挙げられる。
ここにおいてHLBとは、Hydrophile−Lipophile Balanceを略記したもので、親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる[「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「新・界面活性剤入門」、197−198頁、1992年三洋化成工業(株)刊、等参照]。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0040】
(c)の融点は、水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤の粒子の安息角の観点から、好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃、とくに好ましくは40〜70℃である。該融点はJIS K0064−1992,3.2融点試験方法に準じ、融点測定装置を用いて測定される。
【0041】
(c)には、重量平均分子量[以下Mwと略記。測定は前記条件でのGPC法による。基準物質:ポリスチレン]が5,000未満(さらに好ましくは100〜3,000、とくに好ましくは100〜1,000)の低分子分散剤(c1)、およびMwが5,000以上(さらに好ましくは7,000〜1,000,000、とくに好ましくは10,000〜100,000)の高分子分散剤(c2)が含まれる。
【0042】
(c1)には、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールの脂肪酸(C10〜30)エステル〔ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120のもの、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120のもの、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120のもの、例えばグリセリンモノステアレート)、PEG脂肪酸エステル[Mw100〜5,000未満、例えばPEGのモノおよびジステアレート]等〕、アルキル(C1〜30)アリルエーテル等が含まれる。
【0043】
上記(c1)のうち、製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、多価アルコールの脂肪酸エステル、さらに好ましいのはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PEG脂肪酸エステルである。
【0044】
(c2)には、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体[例えば1−オレフィン(C11〜100)/(無水)マレイン酸共重合体、およびそのアミン反応物]、長鎖アルキル基(C12〜50)含有(メタ)アクリレート(共)重合体、変性(アミノ、カルボキシ、エポキシ、ヒドロキシ、メルカプト、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド変性等)オルガノポリシロキサン、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
上記(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体には、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、およびエチレン・酢酸ビニル共重合物を無水マレイン酸で変性したもの等が含まれる。
該エチレン・酢酸ビニル共重合体を無水マレイン酸で変性したものとしては、無水マレイン酸をエチレン・酢酸ビニル共重合体に付加したものが挙げられ、無水マレイン酸とエチレン・酢酸ビニル共重合体の重量比は、逆相懸濁粒子の分散安定性および反応物の分子量調整の観点から好ましくは2/98〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80である。
【0045】
上記(c2)のうち、製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体、変性オルガノポリシロキサン、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0046】
分散剤(c)の使用に当たっては、逆相懸濁粒子の分散安定性および乾燥粒子の安息角、粒度分布の観点から(c1)と(c2)を併用することが好ましく、併用する際の重量比[(c1)/(c2)]は、同様の観点から好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜5/95である。
(c1)と(c2)を併用する場合、粒度分布の観点から好ましい組合せは、多価アルコールの脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せ、さらに好ましいのはPEG脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組み合わせである。
【0047】
(c)の使用量は、疎水性分散媒(b)の重量に基づいて、通常20%以下、逆相懸濁粒子の安定性、乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角および粒子径制御の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
【0048】
ラジカル重合法におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常1%、工業上の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは15%、最も好ましくは20%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%、最も好ましくは60%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、前記と同様の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、前記と同様の観点から好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは80%、より好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
【0049】
本発明における水溶性ポリマー(A)は、さらに変性反応させてもよい。ポリマー変性方法としては、例えば、水溶性不飽和モノマー(a)として加水分解性官能基を分子内に有する(メタ)アクリルアミドを使用した場合、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、(a)のアミド基を部分的に加水分解してカルボキシル基を導入する方法(特開昭56−16505号公報等参照);ホルムアルデヒド、ジアルキルアミン(C1〜12)およびハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)化アルキル(C1〜12)(メチルクロライド、エチルクロライド等)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法;アクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミドなどの加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(特開平5−192513号公報等参照);および重合後に前記の架橋性モノマー(y)を添加して架橋反応させる方法(特許3305688号公報等参照)等が挙げられる。
【0050】
[芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)]
本発明の高分子凝集剤(P)は、水溶性ポリマー(A)と共に、芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)を含有する。(B)中のカルボキシル基および/またはその塩基の個数は、(P)の凝集性能および水溶解性の観点から好ましくは2〜8個、さらに好ましくは2〜6個である。なお、本発明ではポリカルボン酸は無水物を含む意味で用いる。
高分子凝集剤(P)は、(B)を含有することにより、フロック径が大きく、撹拌によるフロック径変化が小さくなる(フロック強度が大となる)等の凝集性能が向上する。
(B)としては、下記(B1)〜(B3)、これらの塩〔金属塩[アルカリ金属(K、Na等)塩、アルカリ土類金属(Ca、Mg等)塩等]等。以下の金属塩も同様。〕、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、(B)の芳香環には、炭素のみが環を形成した芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)、炭素と窒素が環を形成した芳香環(ピリジン環等)等が含まれる。
【0051】
(B1)単一の芳香環をもつ(ポリ)カルボン酸
C7〜30のもの、例えばカルボキシル基が1個のもの:カルボキシル基が芳香環に直結するもの[安息香酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸(キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等)、トリメチル安息香酸(プレーニチル酸、イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸)、サリチル酸、メトキシ安息香酸、イソプロピル安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、ジヒドロキシメチル安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、ヒドロキシジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、4−ピリジンカルボン酸、4−メチルピリジン−3−カルボン酸等]、カルボキシル基が芳香環に直結しないもの[フェニル酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、(4−メトキシフェニル)酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、2−フェニルプロパン酸、3−フェニルプロパン酸等];
【0052】
カルボキシル基が2個のもの:2個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[ベンゼンジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、メチルイソフタル酸、ジメトキシフタル酸、3,5−ピリジンジカルボン酸等]、1個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[カルボキシメチル安息香酸(ホモフタル酸、ホモイソフタル酸、ホモテレフタル酸等)、カルボキシカルボニル安息香酸(フタロン酸、イソフタロン酸、テレフタロン酸等)等]等;
【0053】
カルボキシル基が3個のもの:3個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[ベンゼントリカルボン酸(ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸等)等]等;
カルボキシル基が4個のもの:4個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸、ピロメリット酸等)等];
およびこれらの酸無水物等。
【0054】
(B2)2個の芳香環をもつ(ポリ)カルボン酸
C11〜30のもの、例えばカルボキシル基が1個のもの:カルボキシル基が芳香環に直結するもの[ナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンカルボン酸、フェニル安息香酸、メトキシナフタレンカルボン酸、アミノナフタレンカルボン酸、クロロヒドロキシナフタレンカルボン酸、ブロモナフタレンカルボン酸、トリメトキシジヒドロナフタレンカルボン酸等]、カルボキシル基が芳香環に直結しないもの[2−ナフチル酢酸、アセトキシナフチル酢酸等];
【0055】
カルボキシル基が2個のもの:2個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[1,4−、1,6−、1,8−、2,3−および2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジカルボン酸等]等;
【0056】
カルボキシル基が3個のもの:3個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[ナフタレントリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸等]等;
カルボキシル基が4個のもの:4個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの[ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸等]等;
およびこれらの酸無水物等。
【0057】
(B3)3個以上の芳香環をもつ(ポリ)カルボン酸
C15〜40のもの、例えばカルボキシル基が1〜8個のもの:カルボキシル基が芳香環に直結するもの[フェナントレンやアントラセンのモノ−およびポリ(2〜8個)カルボン酸、オクタカルボキシフタロシアニン等]等、およびこれらの酸無水物等。
【0058】
上記(B1)〜(B3)のうち、水溶性ポリマー(A)と併用した高分子凝集剤(P)による汚泥等の処理時のフロック径、撹拌によるフロック径変化(フロック強度)の観点から、好ましいのは2〜6個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、さらに好ましいのは(B1)中の該ポリカルボン酸、より好ましいのは少なくとも2個のカルボキシル基が芳香環に直結するもの、特に好ましいのはベンゼンジ−、トリ−およびテトラカルボン酸、最も好ましいのはヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸およびピロメリット酸である。なお、上記の好ましいものには、対応する酸無水物、および金属塩が含まれる。
また、(B)は(P)の水溶解性の観点からエチレン性不飽和基を有しない非重合性のものが好ましい。
【0059】
[高分子凝集剤(P)]
本発明の高分子凝集剤(P)は前記(A)および(B)を含有してなる。
(B)の含有量は、凝集性能および水不溶解分の観点から、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.2〜5%、とくに好ましくは0.5〜4%、最も好ましくは1〜3%である。
【0060】
本発明の高分子凝集剤(P)の製造方法には、下記(1)、(2)、(3)の製造方法が含まれ、凝集性能の観点から、(1)の製造方法が好ましい。
(1)(B)の存在下で前記水溶性不飽和モノマー(a)、および必要により(x)、(y)を重合させて、(B)および水溶性ポリマー(A)を含有する(P)を製造する方法。重合させるモノマーへの(B)の添加は、重合前および/または重合中のいずれでもよいが、高分子量化の観点から重合前が好ましい。
(2)水溶性不飽和モノマー(a)の水溶液、および必要により(x)、(y)を加えたモノマーを重合させて水溶性ポリマー(A)の含水ゲルを製造した後に、(B)を(A)の含水ゲルに浸透させて製造する方法。該浸透方法には、(A)の含水ゲルを含む、水溶液中もしくは水と有機溶剤の混合液中に、(B)を水または有機溶剤に溶解もしくは分散させた(B)の溶液もしくは分散液を加えて、撹拌し、(B)を(A)の含水ゲルに浸透させる方法が含まれる。該(2)の方法のうち(A)に対する(B)の浸透性の観点から、(B)を溶解した溶液を用いる方法が好ましい。
(3)重合後に乾燥させた粉末状の(A)に対して、粉末状の(B)を混合する方法(ドライブレンド法)。
【0061】
前記重合させて得られる含水ゲル[製造方法(1)では水溶性ポリマー(A)、(B)と水、または製造方法(2)では(A)、(B)と、水および/または有機溶剤からなる]は、必要に応じて細断され、さらに脱水、乾燥することによって粉末状の水溶性ポリマーが得られる。
【0062】
水溶性ポリマー(A)、並びに芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)を含有する本発明の高分子凝集剤(P)の0.5重量%塩水溶液粘度(以下0.5%塩水溶液粘度ということがある)(mPa・s、25℃)は、好ましくは1〜200、さらに好ましくは2〜180、とくに好ましくは3〜150である。0.5%塩水溶液粘度が1以上であると、汚泥等の処理における凝集性が良好であり、200以下であると、懸濁粒子との反応性が良好である。なお、0.5%塩水溶液粘度は後述の方法で測定することができる。
また、水溶性ポリマー(A)の0.2重量%水溶液粘度(以下0.2%水溶液粘度ということがある)(mPa・s、25℃)は、好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは100〜900、とくに好ましくは200〜800である。0.2%水溶液粘度が50以上であると汚泥等の処理における凝集性が良好であり、1,000以下であると懸濁粒子との反応性が良好である。なお、0.2%水溶液粘度は後述の方法で測定することができる。
【0063】
高分子凝集剤の分子量分布を表すことができる簡便な測定方法として、0.4重量%水溶液の曳糸長が挙げられ、該曳糸長が小さいほど分子量分布は狭く、曳糸長が大きいほど分子量分布は広いことを示すことができる。
高分子凝集剤(P)の0.4重量%水溶液の曳糸長(mm)は、後述するノニオン性およびアニオン性高分子凝集剤では、工業上および凝集性能の観点から、好ましくは20〜200、さらに好ましくは40〜150、カチオン性および両性高分子凝集剤では、同様の観点から、好ましくは5〜100、さらに好ましくは6〜80である。
【0064】
ここで、曳糸長L(mm)は曳糸性測定器[協和界面科学(株)製]等を用いて以下の手順で測定することができる。
ポリマー(高分子凝集剤)粒子0.80g(固形分換算)を300mlのガラス製ビーカーにとり、該粒子とイオン交換水の重量の合計が200.0gとなるようにイオン交換水をすばやく加え、ガラス棒などを用いて該重合体が膨潤して均一分散するまで(約1分)撹拌する。この時、該重合体がままこにならないように注意する。その後、透明樹脂フィルムでふたをして室温(約20℃)で約20時間静置した後、板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)1枚付き撹拌棒を取り付けたジャーテスターにセットし、120rpmで1時間撹拌して測定試料の0.4重量%水溶液を調製する。該測定試料を25±2℃に温度調整した後、曳糸性測定器の、吊り下げ糸の下端に取り付けられたガラス製回転楕円体(以下ガラス球という)(短径7mm、長径11mm。長径方向に吊り下げる。)をガラス球の長径上端が測定試料の液面直下に位置するように浸漬し、15秒間保持した後、16mm/秒の速度でガラス球を引き上げ、ポリマー水溶液の糸が切れるまでの、液面からガラス球下端までの距離を測定する。測定試料におけるガラス球の浸漬位置を変更して、測定を10回繰り返し、平均値を算出し、曳糸長L(mm)の値とする。
【0065】
高分子凝集剤(P)の固有粘度η(1N−NaNO3水溶液中30℃での測定値。単位はdl/g。以下同じ)は、凝集性および懸濁粒子との反応性(凝集速度)の観点から好ましくは2〜30、さらに好ましくは10〜20である。
【0066】
前記のように通常、曳糸長は分子量または分子量分布と相関があり、分子量が大である程、もしくは分子量分布が広い程大きな値となる。また、異なる水溶性ポリマー同士を比較する際は、いずれも水不溶解分量が小さく、しかも同程度の分子量(固有粘度の差が±5%以内)である場合は、曳糸長が短い方が分子量分布がシャープであり、凝集性能に優れると判断することができる。このような曳糸長、分子量(固有粘度)および凝集性能の関係から、本発明において、さらに曳糸長と固有粘度の比(L/η)を特定の範囲とすることで、さらに優れた凝集性能を発揮することができることを見出した。
すなわち(P)の曳糸長L(mm)と固有粘度η(dl/g)の比(L/η)は、工業上および凝集性能の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.5〜7、特に好ましくは2〜5である。
【0067】
本発明の高分子凝集剤(P)は、用途により、適したイオン性のものを用いる。
一般的に、汚泥においては、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、脱水用高分子凝集剤としてはカチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
廃水においては、溶解性有機物等を処理するためにまず無機凝集剤を添加することが多く、その場合、懸濁粒子表面は無機凝集剤で覆われることとなりプラス荷電を有していることから、凝集沈殿処理用高分子凝集剤としては、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
石油の3次回収用としては、比較的大きな分子量を有するものが使用され、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用としては、カチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
上記のイオン性は、本発明の高分子凝集剤中の、水溶性ポリマー(A)のイオン性に由来するものである。
【0068】
ここで、カチオン性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す高分子凝集剤であり、また両性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す高分子凝集剤である。これらの高分子凝集剤の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価方法については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性凝集剤中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性凝集剤中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値、アニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0069】
本発明の高分子凝集剤がカチオン性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0である。
また本発明の高分子凝集剤が両性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0であり;アニオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は−13.0、より好ましくは−10.0、さらに好ましくは−8.0、とくに好ましくは−5.0、最も好ましくは−3.0、凝集性能の観点から好ましい上限は−0.05、より好ましくは−0.1、さらに好ましくは−0.3、とくに好ましくは−0.5、最も好ましくは−1.0である。
【0070】
コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、以降の測定は室温(約20℃)下で行う。
(1)測定試料(高分子凝集剤の50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlの三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(長さ40mm、直径5mmの円筒状マグネット、回転数1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解させ、0.2重量%の高分子凝集剤溶液を調製する。500mlのビーカーに該調製溶液10mlをとり、全体の重量(溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、高分子凝集剤の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレ(直径100mm、深さ10mm)に秤量(W1)して、循風乾燥機中、105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。

固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
【0071】
(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する。 次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点とする。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、上記(2)と同様にして滴定する。
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外は(2)および(3)と同様の操作を行う。
(5)計算方法

コロイド当量値(meq/g)=(1/2)×(試料の滴定量−空試験の滴定量)
×(N/400PVSKの力価)
【0072】
本発明の高分子凝集剤(P)は、前記(A)と(B)以外に、必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、高分子凝集剤に通常用いられる、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を含有することができる。
上記添加剤の合計含有量は、フロック強度の観点から、(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0073】
本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加する方法としては、特に限定はなく、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法が挙げられる。
本発明の高分子凝集剤(P)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の含有量、高分子凝集剤の分子量等により異なるが、特に限定はなく、汚泥または廃水中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、処理費用の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
【0074】
本発明の高分子凝集剤(P)の使用方法としては、十分な凝集性能の観点から水溶液にした後に汚泥または廃水に添加するのが好ましいが、(P)を固体の状態で直接汚泥または廃水に添加することもできる。(P)を水溶液として用いる場合の濃度は、取り扱い上および溶解速度の観点から好ましくは0.05〜1重量%である。
(P)の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の(P)を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。粉末状の(P)を水に溶解させる際に、所定量の(P)を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
【0075】
本発明の高分子凝集剤(P)を石油の3次回収用として使用する際には、通常水溶液として使用される。該(P)の濃度(重量%)は、通常0.001〜3%、増粘効果および送液可能な粘度の観点から好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0076】
また、本発明の高分子凝集剤(P)は、凝集性能(フロック強度、ろ過速度等)向上の観点から、該(P)以外の他の高分子凝集剤(Q)を併用してもよい。該(Q)には特願2011−55783明細書に記載の高分子凝集剤等が含まれる。該(Q)は、ハロゲンイオンを対イオンとする3級アミン塩基または4級アンモニウム塩基を有する水溶性不飽和モノマーを必須モノマーとする水溶性不飽和モノマーを含有する不飽和モノマーが、2〜10個のカルボキシル基を有する飽和脂肪族ポリカルボン酸および/またはその塩の存在下で、ラジカル重合されてなる水溶性ポリマーを含有する高分子凝集剤である。
【0077】
(P)と(Q)を併用する方法としては、それぞれ作成した粉末状の(P)と(Q)をあらかじめ混合後、水に溶解しこれを汚泥または廃水に添加する方法、(P)と(Q)の各水溶液を作成後、これらを汚泥または廃水に、(P)、(Q)ほぼ同時に添加する方法、(P)を添加して1次処理後、(Q)を添加して2次処理する、あるいは(Q)を添加して1次処理後、(P)を添加して2次処理する逐次的添加方法等が挙げられる。
これらの方法のうち、凝集性能(フロック強度、ろ過速度等)向上の観点から好ましいのは粉末状の(P)と(Q)をあらかじめ混合後、水に溶解しこれを汚泥または廃水に添加する方法である。
【0078】
(P)と該(Q)を併用する場合の(Q)の使用量は、(P)と(Q)の合計重量に基づいて通常90%以下、より強固なフロックを形成する観点および凝集性能の観点から好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜30%である。
【0079】
本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に適用する際、汚泥または廃水が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用するのが好ましい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤(P)に予めこれらを添加した混合物で汚泥または廃水を処理するか、汚泥または廃水に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、本発明の高分子凝集剤(P)を添加して処理するかいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0080】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、凝結性能の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、凝結性能の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
【0081】
本発明の高分子凝集剤(P)の添加の際には、汚泥または廃水のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を汚泥または廃水に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【0082】
また、本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加して形成されたフロックの脱水方法(固液分離法)としては、遠心脱水、フィルタープレス脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤(P)の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、スクリュープレス脱水およびベルトプレス脱水である。
【実施例】
【0083】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0084】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)水溶性不飽和モノマー(a)
(a−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩
の80%水溶液
(a−2):N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩
の70%水溶液
(a−3):アクリルアミドの50%水溶液
(a−4):アクリル酸
(2)芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)
(B1−1):トリメリット酸のナトリウム塩
(B1−2):フタル酸
(B1−3):ピロメリット酸のナトリウム塩
(B1−4):4−ヒドロキシ安息香酸
(B3−1):2,3−アントラセンジカルボン酸のナトリウム塩
(B3−2):オクタカルボキシフタロシアニンのナトリウム塩
(3)連鎖移動剤(f)
(f−1):1−チオグリセロールの1%水溶液
(f−2):エチレングリコール−ジ−2−メルカプトエチルエーテルの1%水溶液
(f−3):次亜リン酸Naの1%水溶液
(f−4)2−アミノベンゼンチオール
【0085】
(4)ラジカル重合開始剤(d)
(d−1):アゾビスアミジノプロパン塩酸塩[和光純薬工業(株)製、「V−
50」、10時間半減期温度:56℃]の10%水溶液
(d−2):4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)[和光純薬工業(株)製、
「V−501」、10時間半減期温度:69℃]の10%水溶液(水
酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整したもの。)
(d−3):過酸化水素水の1%水溶液
(d−4):アスコルビン酸の1%水溶液
(d−5):硫酸鉄(II)の1%水溶液
(d−6):ジクミルパーオキシド
【0086】
(5)疎水性分散媒(b)
(b−1):n−デカン
(6)分散剤(c)
(c1−1):PEG(Mn300)のジステアリン酸エステル[商品名「イオネット DS−300」、三洋化成工業(株)製、HLB6.6、Mw700]
(c2−1):後述の製造例1で得られた分散剤(HLB2.1、Mw15,000)
【0087】
曳糸長、固形分含量は前記の方法で評価し、その他の項目は下記の方法で評価した。
なお、汚泥または廃水中の蒸発残留物重量(TS)、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)、アルカリ度は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
【0088】
(1)0.2%水溶液粘度(mPa・s、25℃)
ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付けた撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水499gを入れ、水温20〜25℃にて300rpmで撹拌下、固形分1.0gの高分子凝集剤試料を徐々に加えて、3時間かけて完全に溶解させる。その後、得られた水溶液の一部を200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽に20分間静置して温度調整した後、B型粘度計[型式「TV−10M」、東機産業(株)製、以下同じ。]でM2ローター、30rpmにて測定開始300秒後の値を0.2%水溶液粘度とする。
【0089】
(2)0.5%塩水溶液粘度(mPa・s、25℃)
上記と同じ撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水477.5gを入れ、水温20〜25℃にて200rpmで撹拌下、固形分2.5gの高分子凝集剤試料を徐々に加えて、4時間かけて完全に溶解させる。その後、塩化ナトリウム20gを入れ、さらに30分間撹拌して溶解させる。その後、得られた塩水溶液(塩化ナトリウムの濃度は4重量%)の一部を200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽に20分間静置して温度調整した後、B型粘度計[東機産業(株)製、型式TV−10M、以下同じ。]でM1ローター、60rpmにて、測定開始300秒後の値を0.5%塩水溶液粘度とする。
【0090】
(3)水溶解性
上記の0.5%塩水溶液粘度を測定した際に調整した水溶液全量(W5)を、あらかじめ重量(W3)を測定したふるい(目開き180μm)に全量移し、ろ過した。ろ過後、水道水の流水(流速:約10L/min)でふるい上の残分を3分間洗浄した。洗浄後、ふるいの枠に付着している水分を布などでふき取り、重量(W4)を測定し、次式から水不溶解分量を計算した。

水不溶解分量(%)=[(W4)−(W3)]×100/(W5)

上記の式から求めた水不溶解分量に基づき、下記の基準に従って水溶解性を評価した。
<評価基準>
◎ 水溶解性が非常に良好 (水不溶解分≦1%)
○ 良好 (1%<水不溶解分≦3%)
△ やや悪い (3%<水不溶解分≦6%)
× 悪い (6%<水不溶解分)
【0091】
(4)フロック粒径(mm)
300mlのビーカーに汚泥200mlを入れ、上記(1)と同じ撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を300rpmとし、徐々に汚泥を撹拌しながら、所定の濃度の高分子凝集剤の水溶液を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察する。続いて回転数を650rpmに変え、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を再度目視にて観察する。
【0092】
(5)フロック強度
上記(3)における回転数300rpmおよび650rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部細分化)
△ やや弱い (部分的に細分化)
× 弱い (全体的に細分化)
【0093】
(6)10秒後ろ液量、60秒後ろ液量(ml)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、および300mlが計測できるメスシリンダーを用いてろ過装置をセットする。上記(3)のフロック粒径試験後の汚泥をヌッチェろ過面上に一気に全量投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から10秒後および60秒後までに通過したろ液量を測定する。
【0094】
(7)ろ布剥離性
ろ過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(1kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテル
で剥離させる場合の脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎:非常に剥がれやすい(ろ布に付着物なし)
○:剥がれやすい (ろ布に付着物わずかにあり)
△:多少剥がれにくい (ろ布に付着物あり、わずかにろ布内部にまで付着物あり)
×:剥がれにくい (ろ布内部にまで付着物多い)
【0095】
(8)脱水ケーキ含水率(%)
上記(7)のろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W6)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W7)として、次式からケーキ含水率を算出する。

脱水ケーキ含水率(%)=[(W6)−(W7)]×100/(W6)
【0096】
製造例1[分散剤(c2−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、エチレン・酢酸ビニル共重合体[商品名「AC−POLY−400」、Honeywell(株)製、酢酸ビニル単位含量14%]171部、無水マレイン酸17.1部、キシレン117.7部を仕込み、100℃まで加熱して均一溶液とし、ポリマー溶液を調製した。別の容器に、重合開始剤(d−6)11.8部、キシレン11.8部、n−ドデカンチオール0.092部を仕込み、均一混合して開始剤溶液とした。
150℃に加熱した前記ポリマー溶液に上記開始剤溶液を0.4部/分(ここにおいて「部」を「g」と読み替えた場合はg/分を示す。)の滴下速度で1時間かけて投入し、その後同温度で3時間反応させた後、キシレンを3〜20kPaの減圧下、140〜160℃、2時間でストリッピングして、分散剤(c2−1)(無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体)を得た。
【0097】
実施例1 [高分子凝集剤(P−1)の製造](水溶液重合)
撹拌機を備えた反応容器に、表1に従って、(a)、(B)、緩衝剤およびイオン交換水を仕込み水相(1)として、均一になるまで混合、撹拌した。撹拌下、水相(1)のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら硫酸を用いて3.0に調整した。
次に、0℃の恒温水槽中で溶液温度を5℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度約5ppm)。その後、表1に基づいてラジカル重合開始剤(d−1)、(d−3)、(d−4)、(d−5)および連鎖移動剤(f−1)を水相(2)として加えたモノマー水溶液配合物について、溶液温度5℃で重合を開始させ、重合により発生する熱により溶液温度が上昇し、溶液温度が70℃に達した時点で90℃の恒温槽内に反応容器を入れて10時間保温し重合を完結させた。なお、重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。
その後、得られた含水ゲルを取り出し、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後ジューサーミキサーで粉砕して、水溶性ポリマー(A−1)と芳香環含有カルボン酸塩[トリメリット酸のナトリウム塩(B1−1)]からなる粉末状の高分子凝集剤(P−1)920部を得た(収率92%、固形分含量95%)。評価結果を表1に示す。
【0098】
実施例2〜12、比較例1〜3[高分子凝集剤(P−2)〜(P−12)、(RP−1)〜(RP−3)の製造]
実施例1において、モノマー水溶液配合物を表1〜2に基づいて配合したモノマー水溶液配合物に代えたこと以外は実施例1と同様にして、各高分子凝集剤を得た。各高分子凝集剤の評価結果を表1〜2に示す。
【0099】
実施例13[高分子凝集剤(P−13)の製造](逆相懸濁重合)
[第1工程] 容器に、表2に従って、(a)、(B)および緩衝剤を仕込み、水相(1)を室温(20〜25℃)で調製した。さらにスルファミン酸を用いて水相(1)のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。別の容器に、重合開始剤(d−1)、連鎖移動剤(f−1)およびイオン交換水を表1に従って配合し、水相(2)を調製した。該水相(1)、(2)を別々に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気して十分に窒素置換(溶存酸素濃度20ppb以下)した。
これらとは別に、撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えた反応槽に、疎水性分散媒(b−1)1,770部、分散剤(c1−1)21.3部および(c2−1)5.3部を仕込み油相を調製した。撹拌翼を340rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、80℃まで昇温して30分間保持した後、重合温度である50℃まで冷却した。重合温度に到達後、0.1kPa圧力条件下で、上記水相(1)、(2)を各々滴下ポンプにて室温(20〜25℃)で送液し、スタティックミキサーにて連続的に混合しながら、混合液(モノマー水溶液)を反応槽中に2時間かけて全量滴下投入した。その後2時間、50℃で撹拌を継続し逆相懸濁重合させた。
【0100】
[第2工程] その後、さらに同じ配合比で作成した水相(2)を9部添加し、その1時間後さらに重亜硫酸ナトリウム14部およびメルカプト酢酸0.19部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を追加投入し、該投入した時点から反応系の温度を55℃とし、30分間撹拌を継続して重合を完結させた。
減圧(3〜20kPa)により共沸脱水させてスラリーを得た。該スラリーを減圧ろ過機に供給し固液分離を行った後、固形分を減圧乾燥機中(1.3kPa、40℃×2時間)で乾燥させ、水溶性ポリマー(A−13)と芳香環含有カルボン酸塩[トリメリット酸のナトリウム塩(B1−1)]を含有してなる乾燥粒子である高分子凝集剤(P−13)960部を得た(収率96%、固形分含量95%)。(P−13)の評価結果を表2に示す。
【0101】
実施例14[高分子凝集剤(P−14)の製造][(A)の含水ゲルに(B)を浸透させる製造方法(2)]
実施例1の水溶性ポリマー(A−1)の製造において、(B)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして水溶性ポリマー(A−14)の含水ゲルからなるミンチ状細断物を得た。その後、(A−14)含水ゲルからなる該ミンチ状細断物全量に対して、トリメリット酸のナトリウム塩(B1−1)、およびイオン交換水を表2に基づいて配合し、これを撹拌して均一に溶解させて含水ゲルを得た。その後、得られた含水ゲルについて、実施例1と同様にして80℃の熱風で2時間乾燥後ジューサーミキサーで粉砕して、水溶性ポリマー(A−14)と(B1−1)からなる粉末状の高分子凝集剤(P−14)890部を得た(収率88%、固形分含量95%)。(P−14)の評価結果を表2に示す。
【0102】
実施例15[高分子凝集剤(P−15)の製造][(A)の粉末に(B)の粉末を混合する製造方法(3)]
実施例1の水溶性ポリマー(A−1)の製造において、(B)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性ポリマー(A−15)を得た。その後、該粉末(A−15)全量に対して、トリメリット酸のナトリウム塩(B1−1)の粉末を、表2に基いて配合しドライブレンド法で混合することにより、(A−15)と(B1−1)からなる粉末状の高分子凝集剤(P−15)920部を得た(収率91%、固形分含量95%)。(P−15)の評価結果を表2に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

実施例16〜30、比較例4〜6[高分子凝集剤の性能評価]
得られた高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解させて固形分含量0.2%の水溶液とした。A市処理場から採取した消化処理した消化汚泥[pH7.4、TS2.9%、SS2.7%、有機分65%、アルカリ度4,543mg−CaCO3/L]200gを500mLのビーカーに採り、上記高分子凝集剤の各水溶液20g添加(この時の固形分添加量0.7%/TS)し、性能を評価した。結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
表3から、実施例16〜30では、比較例4〜6に比べて、大粒径のフロックが形成され、低撹拌下(300rpm)で一旦形成されたフロックが高撹拌下(650rpm)でも壊れにくい(フロック強度が強い)こと、10秒後ろ液量が多いことから初期ろ過速度が速いこと、および脱水性(脱水ケーキ含水率)において優れた効果を示すことから、本発明の高分子凝集剤(P)は凝集性能に極めて優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集性能を示すことから、汚泥または廃水の脱水用高分子凝集剤、製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用高分子凝集剤の他、産業廃水の凝集沈殿処理用、石油の3次回収用等の高分子凝集剤として幅広く好適に用いられ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性ポリマー(A)、および芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)を含有してなる高分子凝集剤(P)。
【請求項2】
(A)が、(B)の存在下、水溶性不飽和モノマー(a)をラジカル重合させてなる水溶性ポリマーである請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
(B)中のカルボキシル基および/またはその塩基が、2〜6個である請求項1または2記載の高分子凝集剤。
【請求項4】
(A)を構成するモノマーの全重量に基づく(B)の含有量が0.1〜10%である請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項5】
(A)が、さらに連鎖移動剤(f)の存在下、(a)をラジカル重合させてなる水溶性ポリマーである請求項2〜4のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項6】
(A)を構成するモノマーの全重量に基づく(f)の使用量が、0.0001〜1%である請求項5記載の高分子凝集剤。
【請求項7】
芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(B)の存在下で、水溶性不飽和モノマー(a)をラジカル重合させて水溶性ポリマー(A)とすることを特徴とする、(A)と(B)を含有してなる高分子凝集剤(P)の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか記載の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2012−196661(P2012−196661A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263014(P2011−263014)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】