説明

高分子化合物、有機半導体材料及び有機トランジスタ

【課題】有機トランジスタの活性層(有機半導体層)に用いた場合に、有機トランジスタの電界効果移動度が高くなる高分子化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)


(1)で表される構造単位と、下記式で表される構造単位とを含む高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料として用いるのに有用な高分子化合物及びそれを用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を利用した有機トランジスタは、従来の無機半導体材料を利用したトランジスタと比較して、デバイスの軽量化や、製造コストの低下、低温で製造できることが期待されるため、盛んに研究開発が行われている。
【0003】
有機トランジスタの性能の一つである電界効果移動度は、活性層に含まれる有機半導体材料のキャリア移動度に大きく依存するため、様々な有機半導体材料を有機トランジスタの活性層に用いることが検討されている。
【0004】
例えば、非特許文献1では、有機半導体材料として下記高分子化合物を用いて、有機トランジスタが製造され、トランジスタ特性が測定されている。
【0005】
【化1】

【0006】
しかしながら、前記高分子化合物を有機半導体材料として用いた有機トランジスタは、電界効果移動度が1.0×10−3cm/Vsであり、電界効果移動度が必ずしも十分に高くないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】モレキュラー クリスタルズ アンド リキッド クリスタルズ(Molecular Crystals & Liquid Crystals)、2009年、第504巻、p.52−58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、有機トランジスタの活性層(有機半導体層)に用いた場合に、有機トランジスタの電界効果移動度が高くなる高分子化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、式
【0010】
【化2】

(1)
【0011】
〔式中、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。〕
で表される構造単位と、式
【0012】
【化3】

【0013】
〔式中、Zは、−CR=CR−、−S−、−O−、−Se−又は−NR−を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Zは、=S=、=CR−CR=又は=Se=を表す。〕
で表される構造単位とを含む高分子化合物を提供する。
【0014】
ある一形態においては、前記高分子化合物は、式
【0015】
【化4】

【0016】
〔式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。aは1〜4の整数を表す。bは0〜4の整数を表す。cは1〜4の整数を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。〕
で表される構造単位を有する。
【0017】
また、本発明は、前記高分子化合物を含む有機半導体材料を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記有機半導体材料を含む有機層を有する有機半導体素子を提供する。
【0019】
また、本発明は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び活性層を有し、該活性層に前記有機半導体材料を含む有機トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高分子化合物を活性層に含む有機トランジスタは、高い電界効果移動度を示すため、本発明は極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
本明細書中、「構造単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位構造を意味する。「構造単位」は、「繰返し単位」(即ち、高分子化合物中に2個以上存在する単位構造)として高分子化合物中に含まれることが好ましい。
【0024】
<高分子化合物>
(第1構造単位)
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構造単位(以下、「第1構造単位」という場合がある。)を含む。第1構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0025】
式(1)中、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0026】
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基が有する炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。アルキル基の中でも、直鎖アルキル基、分岐アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0027】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0028】
アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基の具体例としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルコキシ基の炭素数は、通常1〜20である。アルコキシ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。
【0030】
アルコキシ基の具体例としては、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
アルコキシ基の中でも、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖アルキルオキシ基が好ましい。
【0032】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20である。アルキルチオ基は、直鎖、分岐いずれでもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。
【0033】
アルキルチオ基の具体例としては、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。
【0034】
アルキルチオ基の中でも、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ドデシルチオ基等の直鎖アルキルチオ基が好ましい。
【0035】
アリール基は、芳香族炭化水素化合物から芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。アリール基が有する炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基等が挙げられる。
【0036】
アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアリール基としては、4−ヘキシルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0037】
ヘテロアリール基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を有する基、独立した複素芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。ヘテロアリール基が有する炭素数は、通常2〜60であり、3〜20であることが好ましい。ヘテロアリール基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基等が挙げられる。
【0038】
ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているヘテロアリール基としては、5−オクチル−2−チエニル基、5−フェニル−2−フリル基等が挙げられる。ヘテロアリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0039】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0040】
は、高分子化合物の溶解性を向上させて素子作製を容易にする観点からは、アルキル基が好ましい。
【0041】
は、第1構造単位を含む化合物の合成の容易さ及び高分子化合物の溶解性を向上させて素子作成を容易にする観点から、水素原子、アルキル基又はアルキルチオ基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0042】
第1構造単位としては、例えば、式(1−001)で表される構造単位〜式(1−010)で表される構造単位が挙げられる。中でも、合成の容易さの観点からは、式(1−001)で表される構造単位が好ましい。
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
〔式(1−001)〜式(1−010)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい〕
【0046】
高分子化合物のキャリア移動度を向上させる観点からは、高分子化合物が、第1構造単位を含む式(3)で表される構造単位又は式(4)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0047】
式(3)及び式(4)中、aは1〜4の整数を表す。合成の容易さの観点からは、1〜2が好ましい。
【0048】
式(3)及び式(4)中、bは0〜4の整数を表す。合成の容易さの観点から、0〜2が好ましい。
【0049】
式(3)及び式(4)中、cは1〜4の整数を表す。合成の容易さの観点から、1〜2が好ましい。
【0050】
合成の容易さの観点からは、aとcが同一であることが好ましい。
【0051】
式(3)で表される構造単位としては、例えば、式(3−001)で表される構造単位〜式(3−014)で表される構造単位が挙げられる。中でも、式(3−001)で表される構造単位〜式(3−005)で表される構造単位が好ましい。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
〔式(3−001)〜式(3−014)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい〕
【0056】
式(4)で表される構造単位としては、例えば、式(4−001)で表される構造単位〜式(4−014)で表される構造単位が挙げられる。中でも、式(4−001)で表される構造単位〜式(4−005)で表される構造単位が好ましい。
【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
〔式(4−001)〜式(4−014)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい〕
【0061】
合成の容易さの観点からは、式(3)で表される構造単位が式(4)で表される構造単位よりも好ましい。
【0062】
(第2構造単位)
本発明の高分子化合物は、式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位(以下、式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位を「第2構造単位」という場合がある。)を含む。第2構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0063】
式(2−1)及び式(2−2)中、Zは、−CR=CR−、−S−、−O−、−Se−又は−NR−を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Zは、=S=、=CR−CR=又は=Se=を表す。R、R、R及びRで表される、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。R、R、R及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0064】
で表される、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0065】
本発明の高分子化合物は、式(2−1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0066】
は、本発明の高分子化合物のキャリア移動度を高める観点からは、−S−であることが好ましい。
【0067】
第2構造単位としては、例えば、式(2−001)で表される構造単位〜式(2−006)で表される構造単位が挙げられる。
【0068】
【化13】

【0069】
〔式(2−001)〜式(2−006)中、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基又はハロゲン原子を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい〕
【0070】
第2構造単位は、第1構造単位と比較して、相対的に電子をより受容する構造である。そのため、高分子化合物中に第2構造単位を有する高分子では、第2構造単位は比較的負に分極し、第1構造単位は比較的正に分極する。この結果、高分子化合物間で静電的な引力が生じ、分子間のキャリア移動が促進されると推測される。
【0071】
(他の構造単位)
本発明の高分子化合物は、第1構造単位、第2構造単位、式(3)で表される構造単位、式(4)で表される構造単位以外の構造単位(以下、「他の構造単位」という場合がある。)を含んでいてもよい。他の構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0072】
他の構造単位としては、例えば、2価の芳香族基、式−CR=CR−で表される基、式−C≡C−で表される基が挙げられる。
【0073】
2価の芳香族基は、芳香環から水素原子2個を除いた原子団であり、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立した芳香族環又は縮合環2個以上が直接結合した基を含む。2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ビチオフェンジイル基、テルチオフェンジイル基、クアテルチオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピリミジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。2価の芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0074】
−CR=CR−で表される基中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシアノ基を表す。Rで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0075】
他の構造単位は、本発明の高分子化合物のキャリア移動度を高める観点からは、2価の芳香族基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニレンジイル基、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、置換基としてアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を有していてもよいチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいチエノチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいベンゾジチオフェンジイル基がより好ましく、以下の式(A−001)で表される基〜式(A−005)で表される基が特に好ましい。
【0076】
【化14】

【0077】
〔式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基又はハロゲン原子を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。〕
【0078】
で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、前述のRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0079】
本発明の高分子化合物は、共役高分子化合物であることが好ましい。
【0080】
本発明の高分子化合物が第1構造単位と第2構造単位と他の構造単位からなる場合、高分子化合物のキャリア移動度を高める観点からは、高分子化合物が有する構造単位の合計に対して、第1構造単位と第2構造単位の合計が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0081】
本発明の高分子化合物が、式(3)で表される構造単位及び式(4)で表される構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位と、第2構造単位と他の構造単位からなる場合、高分子化合物のキャリア移動度を高める観点からは、高分子化合物が有する構造単位の合計に対して、式(3)で表される構造単位と式(4)で表される構造単位と第2構造単位の合計が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0082】
本発明の高分子化合物としては、第1構造単位、式(3)で表される構造単位、式(4)で表される構造単位、第2構造単位、その他の構造単位を組み合わせた高分子化合物P01〜P12が挙げられる。各構造単位の合計は、100モル%である。
【0083】
[表1]

【0084】
本発明の高分子化合物は、分子鎖末端に重合反応に活性である基が残っていると、該高分子化合物のキャリア移動度が低下する可能性がある。そのため、分子鎖末端は、アリール基、ヘテロアリール基等の安定な基であることが好ましい。
【0085】
本発明の高分子化合物は、いかなる種類の共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0086】
高分子化合物のキャリア移動度を高める観点からは、式(3)で表される構造単位又は式(4)で表される構造単位と、式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位との交互共重合体であることがより好ましく、式(3)で表される構造単位と式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位との交互共重合体であることがさらに好ましい。
【0087】
本発明の高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1×10〜1×10である。
【0088】
薄膜作製時に良好な薄膜を形成する観点からは、数平均分子量は2×10以上が好ましい。
【0089】
溶媒への溶解性を高め、薄膜作製を容易にする観点からは、数平均分子量は1×10以下であることが好ましい。
【0090】
<有機半導体素子>
本発明の高分子化合物は、キャリア移動度が高いことから、有機半導体材料として、例えば、有機半導体素子の有機層に含ませて用いることができる。有機半導体素子としては、有機トランジスタ、有機太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子等が挙げられる。本発明の高分子化合物は、中でも、有機トランジスタの電荷輸送材料として特に有用である。
【0091】
<有機半導体材料>
有機半導体材料は、本発明の高分子化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また2種類以上を含むものであってもよい。また、有機半導体材料は、キャリア輸送性を高めるため、キャリア輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物を本発明の高分子化合物に加えて更に含んでいてもよい。有機半導体材料が、本発明の高分子化合物以外の成分を含む場合は、本発明の高分子化合物を30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましい。本発明の高分子化合物の含有量が30質量%未満である場合、薄膜化が困難となったり、良好な電荷移動度が得られ難くなったりする場合がある。
【0092】
キャリア輸送性を有する化合物としては、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾール誘導体、フラーレン類及びその誘導体等の低分子化合物、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等の高分子化合物が例示できる。
【0093】
有機半導体材料は、その特性を向上させるために、高分子化合物材料を高分子バインダーとして含有していてもよい。高分子バインダーとしては、キャリア輸送性を過度に低下させないものが好ましい。
【0094】
高分子バインダーの例としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが挙げられる。
【0095】
<有機トランジスタ>
有機トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタ等が挙げられる。
【0096】
電界効果型有機トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極及びドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0097】
静電誘導型有機トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを有し、該ゲート電極が活性層中に設けられている有機トランジスタである。特に、ソース電極、ドレイン電極、及び前記ゲート電極が、前記活性層に接して設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0098】
ゲート電極は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成でき、かつ、ゲート電極に印加した電圧で該電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし型電極である。
【0099】
図1は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0100】
図2は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0101】
図3は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0102】
図4は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0103】
図5は、本発明の有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一であっても異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0104】
図6は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0105】
図7は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように活性層2上に形成されたソース電極5と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0106】
図8は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図8に示す有機トランジスタ170は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、を備えるものである。この場合、ゲート電極4は基板1を兼ねる構成となっている。
【0107】
上述した本発明の有機トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、本発明の高分子化合物を含有する膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0108】
このような電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、特開2004−006476号に公報記載の方法等の公知の方法により製造することができる。
【0109】
基板1の材料は、有機トランジスタの特性を阻害しない材料であればよい。基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0110】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、SiOx、SiNx、Ta25、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等を用いることができるが、低電圧化の観点からは、誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0111】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。
【0112】
有機電界効果トランジスタの場合、電子やホール等の電荷は、一般に絶縁層と活性層の界面付近を通過する。従って、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が提案されている(例えば、表面化学、2007年、第28巻、第5号、p.242−248)。
【0113】
シランカップリング剤の例としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシしラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV処理、O2プラズマ処理してもよい。
【0114】
このような処理によって、絶縁層として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、活性層を構成している膜の絶縁層上での配向性が向上し、高い電荷輸送性(移動度)が得られる。
【0115】
ゲート電極4には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性能とともに、基板としての性能も併有する。このような基板としての性能も有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。
【0116】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン等から構成されることが特に好ましい。これらの材料は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0117】
前記有機トランジスタにおいて、ソース電極5及びドレイン電極6と、活性層2との間には、更に他の化合物から構成された層が介在していてもよい。このような層としては、電子輸送性を有する低分子化合物、ホール輸送性を有する低分子化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン、硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物、硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物、過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物、アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0118】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機トランジスタへの影響も該保護膜により低減することができる。
【0119】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等で覆う方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、有機トランジスタを大気にさらすことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)保護膜を形成することが好ましい。
【0120】
このように構成された有機トランジスタの一種である有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子等として適用できる。そして、上述した実施形態の有機電界効果トランジスタは、活性層として、本発明の高分子化合物を含有し、そのことにより電荷輸送性が向上した活性層とを備えているため、その電界効果移動度が高いものとなる。したがって、十分な応答速度を持つディスプレイの製造等に有用である。
【実施例】
【0121】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0123】
(質量分析)
質量分析は、質量分析装置(AccuTOF TLC JMS−T100TD、日本電子製)により求めた。
【0124】
(分子量分析)
高分子化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、島津製作所製、商品名:LC−10AD)を用いて求めた。測定する高分子化合物は、テトラヒドロフランに溶解させ、GPCに注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用いた。カラムは、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M10A)を用いた。
【0125】
合成例1
(3−ドデシルチオチオフェンの合成)
【0126】
【化15】

【0127】
フラスコに、3−メトキシチオフェンを25g(0.22mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物を2.5g(11mmol)、ドデカンチオールを44g(0.22mol)、トルエンを250mL入れ、80℃で20時間加熱撹拌した。反応液を水に加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して液体を得た。得られた液体をn−ヘキサンで希釈し、希釈した溶液をn−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて3−ドデシルチオチオフェンを得た。得量は55gであり、収率は88%であった。
【0128】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.32(m,1H),7.11(m,1H),7.02(m,1H),2.84(t,2H),1.62(m,2H),1.15−1.40(m,18H),0.88(t,3H)
【0129】
合成例2
(2−ブロモ−3−ドデシルチオチオフェンの合成)
【0130】
【化16】

【0131】
フラスコに、3−ドデシルチオチオフェンを55g(0.19mol)、クロロホルムを165mL入れ、0℃で撹拌した。反応液にN−ブロモスクシンイミドを34g(0.19mol)少しずつ加えた。その後、反応液を0℃で3時間撹拌した。その後、反応液をチオ硫酸ナトリウム水溶液に加え、クロロホルム層を抽出した。クロロホルム溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して液体を得た。得られた液体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて2−ブロモ−3−ドデシルチオチオフェンを得た。得量は70gであり、収率は95%であった。
【0132】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.25(d,1H),6.92(d,1H),2.85(t,2H),1.56(m,2H),1.15−1.50(m,18H),0.88(t,3H)
【0133】
合成例3
(化合物1の合成)
【0134】
【化17】

【0135】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、2−ブロモ−3−ドデシルチオチオフェンを1.0g(2.8mmol)、5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェンを0.55g(1.3mmol)、テトラヒドロフランを20mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを50mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを64mg入れた。反応液に2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を5.5mL滴下し、5時間還流させた。その後、反応液を濃縮し、濃縮した反応液を水に注ぎ、さらにトルエンを加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して液体を得た。得られた液体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて化合物1を得た。得量は1.7gであり、収率は90%であった。
【0136】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.29(m,2H),7.18(m,2H),7.15(m,2H),7.04(m,2H),2.87(t,4H),1.61(m,4H),1.15−1.50(m,36H),0.88(t,6H)
【0137】
合成例4
(化合物2の合成)
【0138】
【化18】

【0139】
フラスコに、化合物1を1.7g(2.4mmol)、クロロホルムを50mL入れ、0℃で撹拌した。反応液にN−ブロモスクシンイミドを0.88g(5.0mmol)加え、0℃で8時間撹拌した。その後、反応液をチオ硫酸ナトリウム水溶液に加え、クロロホルム層を抽出した。クロロホルム溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して液体を得た。得られた液体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて化合物2を得た。得量は1.9gであり、収率は91%であった。
【0140】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.19(d,2H),7.12(d,2H),6.99(s,2H),2.84(t,4H),1.61(m,4H),1.15−1.50(m,36H),0.88(t,6H)
【0141】
合成例5
(化合物4の合成)
【0142】
【化19】

【0143】
フラスコ内の気体をアルゴンで置換したフラスコに、化合物1を4.8g(6.6mmol)、ジエチルエーテルを96mL入れ、−70℃に冷却した。反応液に2.6mol/Lのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を5.6mL滴下した後、室温(25℃)で1時間撹拌した。再度、反応液を−70℃に冷却し、塩化トリブチルスズを4.7g(14mmol)滴下した。その後、反応液を室温(25℃)で3時間撹拌した。その後、反応液中の溶媒をエバポレーターで留去して液体を得た。得られた液体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたアルミナカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて化合物3を得た。
【0144】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、上記方法で得られた化合物3を全量、2−ブロモ−3−ドデシルチオチオフェンを7.2g(20mmol)、トルエンを200mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを0.15g入れ、反応液を8時間還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して固体を得た。得られた固体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて固体を得た。2−プロパノールを用いて該固体を再結晶し、化合物4を得た。得量は8.0gであり、収率は94%であった。
【0145】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.35(m,2H),7.31(s,2H),7.16−7.21(m,4H),7.04(m,2H),2.91(t,4H),2.87(t,4H),1.50−1.70(m,8H),1.10−1.50(m,72H),0.87(t,12H)
【0146】
合成例6
(化合物5の合成)
【0147】
【化20】

【0148】
フラスコに、化合物4を8.0g(6.2mmol)、クロロホルムを50mL入れ、0℃で撹拌した。反応液にN−ブロモスクシンイミドを2.3g(13mmol)加えた。その後、反応液を0℃で8時間撹拌した。反応液をチオ硫酸ナトリウム水溶液に加え、クロロホルム層を抽出した。クロロホルム溶液を水で洗浄した後、溶媒をエバポレーターで留去して固体を得た。得られた固体をn−ヘキサンで希釈し、n−ヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、n−へキサン溶液を回収した。その後、n−へキサンを蒸発させて化合物5を得た。得量は7.0gであり、収率は78%であった。
【0149】
MS 1455.91
【0150】
実施例1
(化合物6の合成)
【0151】
【化21】

【0152】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物2を0.20g(0.22mmol)、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを0.079g(0.20mmol)、テトラヒドロフランを14mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを4.1mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを5.2mg入れて撹拌した。反応液に2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を1.1mL滴下し、15分還流させた。反応液にフェニルボロン酸を35mgとクロロベンゼンを14mL加えて、30分還流させた。次に、反応液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を1.0g加えて、3時間還流させた。その後、反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、トルエン溶液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をクロロホルムに溶解させ、クロロホルムを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行った。精製後のクロロホルム溶液をメタノールに滴下し、析出物をろ過し、化合物6を得た。得量は0.18gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は2.5×10であり、重量平均分子量は5.3×10であった。
【0153】
実施例2
(化合物7の合成)
【0154】
【化22】

【0155】
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物5を0.30g(0.21mmol)、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを0.076g(0.20mmol)、テトラヒドロフランを19mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.8mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを4.8mg入れて撹拌した。反応液に2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を1.0mL滴下し、30分還流させた。反応液にフェニルボロン酸を32mgとクロロベンゼンを19mL加えて、30分還流させた。次に、反応液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を1.0g加えて、3時間還流させた。その後、反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、有機層をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をクロロベンゼンに溶解させ、クロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行った。精製後のクロロベンゼン溶液をメタノールに滴下し、析出物をろ過し、化合物7を得た。得量は0.13gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は4.0×10であり、重量平均分子量は6.3×10であった。
【0156】
実施例3
(有機トランジスタ1の作製及び評価)
電荷輸送性化合物として化合物6を含む溶液を用いて、図8に示す構造を有する有機トランジスタ1を作製した。
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。熱酸化膜は絶縁層として機能する。次に、フォトリソ工程により熱酸化膜上にソース電極及びドレイン電極を作製した。該ソース電極及び該ドレイン電極は、熱酸化膜側からクロム(Cr)層と金(Au)層とを有し、チャネル長が20μm、チャネル幅が2mmであった。こうして得られた熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極を形成した基板をアセトンで超音波洗浄を行ない、オゾンUVクリーナーでUVオゾン処理を行なった。その後、β−フェネチルトリクロロシランで熱酸化膜の表面を修飾し、ペンタフルオロベンゼンチオールでソース電極及びドレイン電極の表面を修飾した。次に、上記表面処理した熱酸化膜、ソース電極及びドレイン電極上に、0.5重量%の化合物6のオルトジクロロベンゼン溶液を1000rpmの回転速度でスピンコートし、有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を230℃で1時間加熱し、有機トランジスタ1を製造した。
【0157】
得られた有機トランジスタ1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、3.8×10−3cm/Vsであった。
【0158】
実施例4
(有機トランジスタ2の作製及び評価)
化合物6にかえて化合物7を用いた以外は実施例3と同様に有機トランジスタ2を作製した。
【0159】
得られた有機トランジスタ2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、2.4×10−3cm/Vsであった。
【符号の説明】
【0160】
1…基板、
2、2a…活性層、
3…絶縁層、
4…ゲート電極、
5…ソース電極、
6…ドレイン電極、
100、110、120、130、140、150、160、170…有機トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(1)
〔式中、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。〕
で表される構造単位と、式
【化2】

〔式中、Zは、−CR=CR−、−S−、−O−、−Se−又は−NR−を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Zは、=S=、=CR−CR=又は=Se=を表す。〕
で表される構造単位とを含む高分子化合物。
【請求項2】

【化3】

〔式中、R及びRは、前記と同じ意味を表す。aは1〜4の整数を表す。bは0〜4の整数を表す。cは1〜4の整数を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。〕
で表される構造単位を含む請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
aとcとが同一である請求項2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
式(2−1)で表される構造単位を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
が−S−である請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
共役系高分子化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
式(3)で表される構造単位又は式(4)で表される構造単位と、式(2−1)で表される構造単位又は式(2−2)で表される構造単位との交互共重合体である請求項2〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
ポリスチレン換算の数平均分子量が2×10〜1×10である請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む有機半導体材料。
【請求項10】
請求項9に記載の有機半導体材料を含む有機層を有する有機半導体素子。
【請求項11】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び活性層を有し、該活性層に請求項9に記載の有機半導体材料を含む有機トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−82345(P2012−82345A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230769(P2010−230769)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】