高周波増幅回路
【課題】低出力モードで出力電力を変化させても、ゲインの差が殆ど生じない高周波増幅回路を実現する。
【解決手段】高周波増幅回路100Aは増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、バラスト抵抗素子52を介してエミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続する。エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、抵抗素子51を介してバイアス電源が接続されている。エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子53を介してモード制御電源が接続されている。抵抗素子53は固定抵抗値の抵抗素子である。モード制御電源は、可変電圧型であり、モードに応じて直流のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード制御電圧Vmodeは、低出力モード時には低電圧となり、高出力モード時には高電圧となる。
【解決手段】高周波増幅回路100Aは増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、バラスト抵抗素子52を介してエミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続する。エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、抵抗素子51を介してバイアス電源が接続されている。エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子53を介してモード制御電源が接続されている。抵抗素子53は固定抵抗値の抵抗素子である。モード制御電源は、可変電圧型であり、モードに応じて直流のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード制御電圧Vmodeは、低出力モード時には低電圧となり、高出力モード時には高電圧となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波信号を増幅する高周波増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の無線通信端末には、高周波数の送信信号を増幅するパワーアンプが備えられている。このような携帯無線通信端末では、パワーアンプすなわち高周波増幅回路を省電力化するために、低消費電流で動作させることが求められている。しかしながら、低消費電流での動作は歪みを生じ易い。
【0003】
このため、低出力モード(低消費電流モード)と高出力モード(通常の消費電流モード)とを高周波増幅回路に備え、状況に応じて切り替えるものが考案されている。
【0004】
その一つとして、非特許文献1には、図1に示すような高周波増幅回路が記載されている。図1は従来の高周波増幅回路100Pの回路図である。
【0005】
従来の高周波増幅回路100Pは、増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、入力整合回路30を介して高周波信号入力端子101へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタは、出力整合回路40を介して高周波信号出力端子102へ接続している。
【0006】
増幅用トランジスタ10のコレクタには、チョークコイル60を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0007】
増幅用トランジスタ10のベースは、熱抵抗防止用のバラスト抵抗素子52を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続している。エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、増幅用トランジスタ10のコレクタと同じ駆動電圧Vccが印加され、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、抵抗素子51を介してモード制御電圧Vmodeが印加される。このモード制御電圧Vmodeを変化させることで、増幅用トランジスタ10のコレクタ電流Iccを制御し、低出力モードと高出力モードとを切り替える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Daehyun Kang,Daekyu Yu, Kyoungjoon Min, Kichon Han, Jinsung Choi, IEEE TRANSACIOTNS ONMICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL.56, NO.1, JANUARY 2008, Page77-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無線通信で利用する高周波増幅回路で増幅されたキャリア信号には、当該キャリア信号の通信品質を保つための指標として、Error Vector Magnitude(EVM)等がある。通信品質を良好に保つために、高周波増幅回路において、当該高周波増幅回路によって増幅されたキャリア信号は、EVM特性の一定の基準を満たすことが要求されている。
【0010】
一方で、無線通信で利用する高周波増幅回路では、回路の消費電力を低減させ、当該高周波増幅回路が搭載される無線通信機の駆動時間を長くすることが要求されている。しかし、高出力モードと低出力モードとを切り替える高周波増幅回路において消費電流を抑えると、低出力時のゲインが低下し、出力電力の増加にともなって(高出力になるにしたがって)ゲインが増加する所謂ゲインエクスパンションが起こりやすく、EVM特性が劣化しやすい。一般的に、良好なEVM特性を実現するためには、出力電力を変化させた時のゲイン変化量、すなわち、AM−AM特性の歪みを小さくすることが必要であると知られている。
【0011】
図2は従来の高周波増幅回路100Pの出力特性を示すグラフであり、図2(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図2(B)が高周波増幅回路100Pのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0012】
図2(B)に示すように、高出力モードにおいては出力電力Poutが変化してもゲインが殆ど変化しない出力電力範囲であっても、低出力モードでは、トランジスタの静特性における非線形な領域を利用することになるため、出力電力Poutの増加にともなってゲインが上昇する、所謂ゲインエクスパンジョンが発生する。具体的に、図2(B)の例であれば、10[dBm]から25[dBm]の間で0.9[dB]程度のゲインの差が生じる。このようなゲインの差が生じると、通信品質が低下してしまう。
【0013】
この発明の目的は、低出力モードで出力電力を変化させても、ゲインの差が殆ど生じない高周波増幅回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、高周波信号を増幅する高周波増幅回路に関する。この高周波増幅回路は、増幅用トランジスタと、エミッタフォロワ用トランジスタと、コレクタ電圧可変手段とを備える。増幅用トランジスタは、ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する。エミッタフォロワ用トランジスタは、増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続されており、エミッタフォロワ回路を構成する。コレクタ電圧可変手段は、低出力モードと高出力モードとの間で、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧を変化させる。
【0015】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧をモード別で制御することにより、高出力モードでの出力特性を殆ど変化させることなく、低出力モードでのゲインエクスパンジョンの発生が抑制される。例えば、後述の図4等に示すように、低出力モードでのゲインのフラットネスが向上する。
【0016】
この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに定抵抗素子を介して接続された電圧可変型のモード制御電源であることが一例として好ましい。
【0017】
この構成では、コレクタ電圧可変手段が、電圧可変型のモード制御電源と定抵抗素子のみから構成される。この構成により、コレクタ電圧可変手段を簡素に構成することができる。
【0018】
また、この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに可変抵抗素子を介して接続された電圧固定型のモード制御電源もしくは電圧可変型のモード制御電源であることが一例として好ましい。
【0019】
この構成では、コレクタ電圧可変手段が、可変抵抗素子と電圧固定型のモード制御電源もしくは、可変抵抗素子と電圧可変型のモード制御電源の組で構成される。この構成でも、コレクタ電圧可変手段を簡素に構成することができる。
【0020】
また、この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタにそれぞれ異なる電圧を与える複数の電圧印加回路を備えることが一例として好ましい。
【0021】
この構成では、コレクタ電圧可変手段を複数の電圧印加回路で実現しており、これにより、所望な値にコレクタ電圧を制御することが可能になる。
【0022】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源を備える。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第2ダイオードを介して接続され、電圧可変型のモード制御電源の高出力モードでの電圧より低く、電圧可変型のモード制御電源の低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源を備える。
【0023】
この構成では、コレクタ電圧可変手段における複数の電圧印加回路の具体例を示している。このような構成とすることで、第1ダイオード側の電圧供給回路と、第2ダイオード側の電圧供給回路とが個別に形成されるので、それぞれに高出力モード時の電圧印加、低出力モード時の電圧印加を割り当てる場合、個別に回路設計することができる。これにより、モード別のエミッタフォロワ用トランジスタへの電圧供給回路の設計自由度が向上する。これにより、それぞれのモードに対して、より所望な値にコレクタ電圧を制御することが可能になる。
【0024】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に並列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子を備える。第1スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源を備える。第2スイッチ素子の制御端子に接続し、電圧可変型のモード制御電源の高出力モードでの電圧より低く、電圧可変型のモード制御電源の低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源を備える。
【0025】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタへの供給電圧源を、両方のモードで共通し、増幅用トランジスタの駆動電圧で兼用する場合の回路構成を示している。この場合、第1、第2のスイッチを用いて、駆動電圧源とエミッタフォロワ用トランジスタのコレクタとの間の回路構成を、高出力モードと低出力モードとで切り替えている。この構成のように、エミッタフォロワ用トランジスタと増幅用トランジスタとの駆動電源を共通化しても、それぞれのモードに対して、所望な値にコレクタ電圧を制御することができる。
【0026】
また、この発明の高周波増幅回路では、次の構成であることがより好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのベースに接続し、当該エミッタフォロワ用トランジスタのベースバイアスを決定するバイアス制御回路を備える。電圧可変型のモード制御電源は、バイアス制御回路にも接続されている。バイアス制御回路は、定電圧であるバイアス電源の電圧と電圧可変型のモード制御電源の電圧とからエミッタフォロワ用トランジスタのベースに印加する電圧を決定する。
【0027】
この構成では、さらに、エミッタフォロワ用トランジスタのバイアス電圧をモード毎に可変にすることができる。これにより、各モードでの消費電流量も含む、より詳細な特性設定が可能になり、所望の特性を実現しやすくなる。
【0028】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子を備える。該第1抵抗素子に並列接続されたスイッチ素子を備える。該スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源を備える。
【0029】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタへの供給電圧源を、両方のモードで共通し、増幅用トランジスタの駆動電圧で兼用する場合の回路構成を示している。そして、第1のスイッチを用いて、駆動電圧源とエミッタフォロワ用トランジスタのコレクタとの間の回路構成を、高出力モードと低出力モードとで切り替えている。この構成では、出力電力の上昇に伴ってゲインが低下するゲインコンプレッションが生じる。したがって、従来のようなゲインエクスパンジョンを防止できる。
【0030】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子を備える。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源を備える。
【0031】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタの一方のモードの駆動電圧を、増幅用トランジスタの駆動電圧源から供給し、他方のモードの駆動電圧を別回路で構成する。この構成でも、ゲインコンプレッションが生じる。したがって、従来のようなゲインエクスパンジョンを防止できる。
【0032】
また、この発明の高周波増幅回路は、次の構成であることが一例として好ましい。上述のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路で構成される第1高周波増幅素子を備える。ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する第2増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続された第2エミッタフォロワ用トランジスタと該第2エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと第2増幅用トランジスタのコレクタに接続する駆動電圧印加端子とを備えた第2高周波増幅回路を備える。第1高周波増幅回路と第2高周波増幅回路とを直列接続した構成を備える。
【0033】
この構成では、ゲインコンプレッションを生じる高周波増幅回路と、ゲインエクスパンジョンを生じる高周波増幅回路とを直列接続することで、全体の高周波増幅回路としては、出力電圧の変化に関係なく、ゲインが略一定になる。
【0034】
また、この発明では、無線装置をとして次の構成を備えることが好ましい。上述のゲイン変化が殆ど無い高周波増幅回路を備える。当該高周波増幅回路を高周波送信信号用のパワーアンプに用いる。
【0035】
この構成では、上述のような出力電圧に影響されることなくゲインが略一定な高周波増幅回路を用いることで、通信特性に優れる無線装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、高出力モードと低出力モードとを有する高周波増幅回路において、低出力モードで出力電力を変化させても、ゲインの差が殆ど生じず、優れた増幅特性を実現できる。これにより、優れた通信品質の無線通信装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の高周波増幅回路100Pの回路図である。
【図2】従来の高周波増幅回路100Pの出力特性を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態に係る高周波増幅回路100Aの回路図である。
【図4】第1の実施形態に係る高周波増幅回路100Aの出力特性を示すグラフである。
【図5】第2の実施形態に係る高周波増幅回路100Bの回路図である。
【図6】第2の実施形態に係る高周波増幅回路100Bの出力特性を示すグラフである。
【図7】第3の実施形態に係る高周波増幅回路100Cの回路図である。
【図8】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Cの出力特性を示すグラフである。
【図9】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Dの回路図である。
【図10】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Dの出力特性を示すグラフである。
【図11】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Eの回路図である。
【図12】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Eの出力特性を示すグラフである。
【図13】第4の実施形態に係るパワーアンプ110の回路図である。
【図14】第5の実施形態に係る高周波増幅回路100Fの回路図である。
【図15】第5の実施形態に係る高周波増幅回路100Fの出力特性を示すグラフである。
【図16】第6の実施形態に係る高周波増幅回路100Gの回路図である。
【図17】第6の実施形態に係る高周波増幅回路100Gの出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図3は本実施形態に係る高周波増幅回路100Aの回路図である。図4は高周波増幅回路100Aの出力特性を示すグラフであり、図4(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図4(B)が高周波増幅回路100Aのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0039】
(回路構成)
高周波増幅回路100Aは、npn型からなる増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、入力整合回路30を介して高周波信号入力端子101へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタは、出力整合回路40を介して高周波信号出力端子102へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタには、チョークコイル60を介して駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。この駆動電源とチョークコイル60との接続点が、本発明の「駆動電圧印加端子」となる。
【0040】
増幅用トランジスタ10のベースは、熱抵抗防止用のバラスト抵抗素子52を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続している。エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースは、抵抗素子51を介してバイアス電源が接続されている。この構成により、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、バイアス電圧Vctrが印加されている。バイアス電圧Vctrは例えば2.610[V]である。
【0041】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子53を介してモード制御電源が接続されている。抵抗素子53は固定抵抗値の抵抗素子であり、例えば50Ω程度の抵抗値を有する。モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード制御電源は、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、1.3[V])を発生し、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])を発生する。
【0042】
(動作)
高出力モードでは、モード制御電源から高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、抵抗素子53を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなる。
【0043】
低出力モードでは、モード制御電源から低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、抵抗素子53を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなる。
【0044】
このようなモード制御電圧Vmodeの電圧値制御を行うことで、図4に示すように、高出力モード時のゲインのフラットネス(平坦度)を損なうことなく、低出力モード時のゲインエクスパンジョンを抑制し、ゲインのフラットネスを改善することができる。具体的に、図4の場合であれば、10[dBm]から25[dBm]の間で0.4[dB]程度のゲインの差に抑圧することができる。
【0045】
これは、本実施形態の回路では、低出力モード時にエミッタフォロワのコレクタ電圧が低く抑えられるため、増幅用トランジスタの低出力モード内での高出力時におけるベースバイアスが抑制され、当該高出力時の増幅用トランジスタのコレクタ電流の増加が抑制されるからである。
【0046】
このように、本実施形態の構成を用いることで、高出力モードと同様に、低出力モードであってもAM−AM歪みを抑制することができ、無線通信用の高周波信号に対して優れた増幅特性を有する高周波増幅回路を実現することができる。
【0047】
そして、この高周波増幅回路を送信信号のパワーアンプに用いることで、優れた通信特性の無線装置を実現することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、固定抵抗値からなる抵抗素子と、可変電圧型のモード制御電源とを組み合わせた例を示したが、可変抵抗素子と固定電圧型のモード制御電源を組み合わせて用いたり、可変抵抗素子と可変電圧型のモード制御電源を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
次に、第2の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図5は本実施形態に係る高周波増幅回路100Bの回路図である。図6は高周波増幅回路100Bの出力特性を示すグラフであり、図6(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図6(B)が高周波増幅回路100Bのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0050】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Bは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0051】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0052】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、第1ダイオード21Aのカソードが接続されている。第1ダイオード21Aのアノードは、モード制御電源に接続されている。第1ダイオード21Aは、ダイオード素子を用いてもよいが、図5に示すように、npn型トランジスタのコレクタとベースを短絡したものを用いてもよい。この場合、ベースがアノードに対応し、エミッタがカソードに対応する。
【0053】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0054】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子54を介して第2ダイオード21Bのカソードが接続されている。この抵抗素子54は省略することも可能である。第2ダイオード21Bのアノードは、リファレンス電源に接続されている。なお、第2ダイオード21Bも第1ダイオード21Aと同様に、npn型トランジスタで形成してもよい。
【0055】
リファレンス電源は、一定値のリファレンス電圧Vrefを発生する。リファレンス電圧Vrefは例えば2.7[V]である。
【0056】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、リファレンス電圧Vrefよりも高くなる。したがって、モード制御電圧Vmode(H)からトランジスタ21Aのベース−エミッタ間電圧だけ低下した電圧が、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0057】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、リファレンス電圧Vrefよりも低くなる。したがって、高出力モードでのモード制御電圧Vmode(H)よりも低電圧のリファレンス電圧Vrefからトランジスタ21Bのベース−エミッタ間電圧だけ低下した電圧が抵抗素子54を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0058】
このような構成とすることで、図6に示すような特性が得られる。すなわち、低出力モード時のゲインのフラットネスをより向上させることができる。例えば、具体的に、図6(B)に示すように、10[dBm]から20[dBm]の間で0.3[dB]程度のゲインの差に抑圧することができる。
【0059】
これは、本実施形態の回路では、低出力モード時にエミッタフォロワのコレクタ電圧を低く抑えるだけでなく、エミッタフォロワのコレクタ端子の電流を供給する経路の抵抗値を大きくすることで、低出力モードにおける高出力時の電流増加をより抑制できるからである。
【0060】
さらに、本実施形態では、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタへの電圧供給回路が、低出力モードと高出力モードとで個別の回路になる。したがって、各モード時の供給電圧を個別に設定でき、エミッタフォロワ用トランジスタ20に所望のコレクタ電圧を印加するための設計を容易にすることができる。これにより、AM−AM歪みを、より容易に抑圧することができる。
【0061】
次に、第3の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図7は本実施形態に係る高周波増幅回路100Cの回路図である。図8は高周波増幅回路100Cの出力特性を示すグラフであり、図8(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図8(B)が高周波増幅回路100Cのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0062】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Cは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0063】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0064】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、第1スイッチ素子であるnpn型のトランジスタ22Aのエミッタが接続されている。
【0065】
トランジスタ22Aのコレクタには、駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。トランジスタ22Aのベースには、抵抗素子55Aを介してモード制御電源に接続されている。
【0066】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0067】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子54を介して、第2スイッチ素子であるnpn型のトランジスタ22Bのエミッタが接続されている。
【0068】
トランジスタ22Bのコレクタには、駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。トランジスタ22Bのベースには、抵抗素子55Bを介しリファレンス電源に接続されている。
【0069】
リファレンス電源は、一定値のリファレンス電圧Vrefを発生する。リファレンス電圧Vrefは例えば2.7[V]である。
【0070】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)によりトランジスタ22Aがオン状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Aを介して駆動電圧Vccが印加される。これにより、高出力モードでは、低出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が相対的に高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0071】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)によりトランジスタ22Aがオフ状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Bおよび抵抗素子54を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0072】
ここで、低出力モードでは、トランジスタ22Aのベース電圧となるリファレンス電圧Vrefが高出力モードのモード制御電圧Vmode(H)よりも低く、抵抗素子54を介した状態で、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに駆動電圧Vccが印加される。このため、低出力モードでは、高出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧は相対的に低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0073】
このような構成とすることで、図8に示すように、上述の第2の実施形態の図6と同様の特性が得られる。すなわち、上述の第2の実施形態と同様に、優れた増幅特性の高周波増幅回路を実現できる。
【0074】
次に、第4の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図9は本実施形態に係る高周波増幅回路100Dの回路図である。図10は高周波増幅回路100Dの出力特性を示すグラフであり、図10(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutとの関係を示し、図10(B)が高周波増幅回路100Cのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0075】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Dは、第3の実施形態に示した高周波増幅回路100Cに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスを供給する回路構成が異なり、他の構成は第3の実施形態の高周波増幅回路100Cと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0076】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースは、抵抗素子51を介してバイアス制御回路200へ接続されている。バイアス制御回路200には、モード制御電源およびバイアス電源が接続されている。
【0077】
バイアス制御回路200は、モード制御電源からのモード制御電圧Vmodeとバイアス電源からのバイアス電圧Vctrとを用いて、モード可変バイアス電圧Vaを出力し、抵抗素子51を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースに印加する。
【0078】
例えば、具体的には、バイアス制御回路200は、高出力モードでは、3.3[V]のモード制御電圧Vmode(H)と2.610[V]のバイアス電圧とから2.610[V]のモード可変バイアス電圧Va(H)を生成して出力する。バイアス制御回路200は、低出力モードでは、0.0[V]のモード制御電圧Vmode(L)と2.610[V]のバイアス電圧とから2.525[V]のモード可変バイアス電圧Va(L)を生成して出力する。
【0079】
これにより、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、高出力モードでは相対的に高い電圧値のバイアス電圧Va(H)が印加され、低出力モードでは相対的に低い電圧値のバイアス電圧Va(L)が印加される。
【0080】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)によりトランジスタ22Aがオン状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Aを介して駆動電圧Vccが印加される。これにより、高出力モードでは、低出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が相対的に高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0081】
さらに、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスが高くなり、より多くのベース電流がエミッタフォロワ用トランジスタ20にながれる。このため、増幅用トランジスタ10のベースバイアスを上昇させる効果がより高くなる。
【0082】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)によりトランジスタ22Aがオフ状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Bおよび抵抗素子54を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0083】
ここで、低出力モードでは、トランジスタ22Bのベース電圧となるリファレンス電圧Vrefが高出力モードのモード制御電圧Vmode(H)よりも低く、抵抗素子54を介した状態で、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに駆動電圧Vccが印加される。このため、低出力モードでは、高出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧は相対的に低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0084】
さらに、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスが低くなり、その分、増幅用トランジスタ10のベースバイアスも低下する。このため、増幅用トランジスタ10のコレクタ電流Iccを低減できる。
【0085】
すなわち、図10に示すように、低出力モードでの消費電流を抑制し、且つ低出力モードでのゲインのフラットネスを向上させることができる。これにより、上述の各実施形態よりもさらに消費電力が少なく優れた増幅特性の高周波増幅回路を実現できる。
【0086】
また、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧とベース電圧を調整できることで、エミッタフォロワによる増幅用トランジスタ10に対する効果を、より詳細に設定することができる。これにより、より所望な特性の高周波増幅回路を実現することができる。
【0087】
次に、第5の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図11は本実施形態に係る高周波増幅回路100Eの回路図である。図12は高周波増幅回路100Eの出力特性を示すグラフであり、図12(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図12(B)が高周波増幅回路100Eのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0088】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Eは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0089】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0090】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、抵抗素子56Aを介して駆動電源に接続されている。抵抗素子56Aには、スイッチ素子であるFET80と抵抗素子56Bとの直列回路が、並列に接続されている。抵抗素子56Aの抵抗値は抵抗素子56Bの抵抗値よりも大きく設定されている。例えば、抵抗素子56Aを10k[Ω]とし、抵抗素子56Bを10[Ω]としている。
【0091】
FET80のゲートは抵抗素子56Cを介してモード制御電源に接続されている。モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、2.0[V])である。
【0092】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、FET80のゲートに印加され、FET80がオン状態になる。ここで、FET80に直列接続される抵抗素子56Bの抵抗値は、抵抗素子56Aよりも十分に抵抗値が小さい。したがって、高出力モードでは、抵抗素子56BおよびFET80のソース−ドレイン間を介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子56Bの抵抗値が小さく、FET80のソース−ドレイン間の抵抗値も低いため、コレクタ電圧は駆動電圧Vccに近い高い電圧値となる。これにより、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子56Bの抵抗値が抵抗素子56Aの抵抗値よりも小さい分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0093】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、FET80のゲートに印加され、FET80がオフ状態になる。このため、FET80と抵抗素子56Bとの直列回路は、駆動電源とエミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタとを接続する回路から切り離された状態(インピーダンス無限大の状態)となる。
【0094】
したがって、抵抗素子56Aを介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子56Aの抵抗値はキロオーダーと高いので、コレクタ電圧は、駆動電圧Vccに対して大幅に低い電圧値となる。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子56Aの抵抗値が抵抗素子56Bの抵抗値よりも大きい分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0095】
このような構成とすることで、図12に示すような出力特性が得られる。すなわち、低出力モード時のゲインエクスパンジョンが無くなり、出力電力の増加に伴ってゲインが低下するゲインコンプレッションが生じる。
【0096】
したがって、このようなゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eと、従来のゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路とを組み合わせることで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。
【0097】
図13は本実施形態のパワーアンプ110の回路図である。パワーアンプ110は、従来と同様の構造からなるゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pと、本実施形態のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eとを直列接続している。すなわち、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pの入力端子に、高周波信号入力端子101を接続し、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pの出力端子に、本実施形態のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eの入力端子を接続し、ゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eの出力端子に、高周波信号出力端子102を接続する。
【0098】
このような構成とすれば、図2(B)のゲイン−出力電力Pout特性と図12(B)のゲイン−出力電力Pout特性とを加算した特性になり、低出力モードにおいて出力電力の上昇に伴って高周波増幅回路100Pで上昇したゲインを、高周波増幅回路100Eで低下させ、ゲインのフラットネスを得ることができる。
【0099】
次に、第6の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図14は本実施形態に係る高周波増幅回路100Fの回路図である。図15は高周波増幅回路100Fの出力特性を示すグラフであり、図15(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図15(B)が高周波増幅回路100Fのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0100】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Fは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0101】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0102】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、抵抗素子57を介して駆動電源に接続されている。抵抗素子57は10k[Ω]程度の高い抵抗値を有する。
【0103】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、第3ダイオード23のカソードが接続されている。第3ダイオード23のアノードは、モード制御電源に接続されている。第3ダイオード23は、ダイオード素子を用いてもよいが、図14に示すように、npn型トランジスタのコレクタとベースを短絡したものを用いてもよい。この場合、ベースがアノードに対応し、エミッタがカソードに対応する。
【0104】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0105】
(動作)
高出力モードでは、モード制御電圧Vmode(H)が高電圧となるため、第3ダイオード23に順方向バイアスがかかり、モード制御電圧Vmode(H)がエミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。抵抗素子57による電圧降下もないため、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子57の抵抗値分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0106】
低出力モードでは、モード制御電圧Vmode(L)が低電圧となるため、第3ダイオード23に逆方向バイアスがかかり、第3ダイオード23とモード制御電源とが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタから切り離された状態となる。
【0107】
したがって、抵抗素子57を介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子57の抵抗値はキロオーダーと高いので、コレクタ電圧は、駆動電圧Vccに対して大幅に低い電圧値となる。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子57の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0108】
これにより、上述の第5の実施形態と同様に、ゲインコンプレッション型の高周波増幅回路を実現することができる。したがって、図13に示したように、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路と直列接続することで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。また、本実施形態の高周波増幅回路100Fの構成を用いることで、低出力モードに第3ダイオード23側に流れる電流が無く、不要な電流が流れない。これにより、より、消費電流の少ない高周波増幅回路を実現することができる。
【0109】
次に、第7の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図16は本実施形態に係る高周波増幅回路100Gの回路図である。図17は高周波増幅回路100Gの出力特性を示すグラフであり、図17(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図17(B)が高周波増幅回路100Gのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0110】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Gは、第5の実施形態に示した高周波増幅回路100EのFET80を、npn型のトランジスタ24に置き換えたものである。このように、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに接続するスイッチ素子をFETでなく、トランジスタにしても、図17に示すように、上述の第5の実施形態と同様のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路を実現できる。したがって、図13に示したように、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路と直列接続することで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。
【0111】
なお、上述の各実施形態に記載した電圧や素子値は一例であって、所望とする仕様に応じて、適宜、別の値に設定することができる。
【0112】
また、上述の各実施形態は、本願の作用効果を得られる一部の例であり、増幅用トランジスタのベースにエミッタフォロワ回路を接続し、当該エミッタフォロワ回路のトランジスタに対して、低出力モードでのコレクタ電圧が高出力モードのコレクタ電圧よりも低くなるように設定する構造であれば、回路素子の構成が異なっていても、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0113】
100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100P:高周波増幅回路、101:高周波信号入力端子、102:高周波信号出力端子、110:パワーアンプ、10:増幅用トランジスタ、20:エミッタフォロワ用トランジスタ、21A:第1ダイオード、21B:第2ダイオード、22A,22B,24:トランジスタ、23:第3ダイオード、
30:入力整合回路、40:出力整合回路、51,53,54,55A,55B,56A,56B,56C,57:抵抗素子、52:バラスト抵抗素子、60:チョークコイル、70:バイパスコンデンサ、80:FET
200:バイアス制御回路
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波信号を増幅する高周波増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の無線通信端末には、高周波数の送信信号を増幅するパワーアンプが備えられている。このような携帯無線通信端末では、パワーアンプすなわち高周波増幅回路を省電力化するために、低消費電流で動作させることが求められている。しかしながら、低消費電流での動作は歪みを生じ易い。
【0003】
このため、低出力モード(低消費電流モード)と高出力モード(通常の消費電流モード)とを高周波増幅回路に備え、状況に応じて切り替えるものが考案されている。
【0004】
その一つとして、非特許文献1には、図1に示すような高周波増幅回路が記載されている。図1は従来の高周波増幅回路100Pの回路図である。
【0005】
従来の高周波増幅回路100Pは、増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、入力整合回路30を介して高周波信号入力端子101へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタは、出力整合回路40を介して高周波信号出力端子102へ接続している。
【0006】
増幅用トランジスタ10のコレクタには、チョークコイル60を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0007】
増幅用トランジスタ10のベースは、熱抵抗防止用のバラスト抵抗素子52を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続している。エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、増幅用トランジスタ10のコレクタと同じ駆動電圧Vccが印加され、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、抵抗素子51を介してモード制御電圧Vmodeが印加される。このモード制御電圧Vmodeを変化させることで、増幅用トランジスタ10のコレクタ電流Iccを制御し、低出力モードと高出力モードとを切り替える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Daehyun Kang,Daekyu Yu, Kyoungjoon Min, Kichon Han, Jinsung Choi, IEEE TRANSACIOTNS ONMICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL.56, NO.1, JANUARY 2008, Page77-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無線通信で利用する高周波増幅回路で増幅されたキャリア信号には、当該キャリア信号の通信品質を保つための指標として、Error Vector Magnitude(EVM)等がある。通信品質を良好に保つために、高周波増幅回路において、当該高周波増幅回路によって増幅されたキャリア信号は、EVM特性の一定の基準を満たすことが要求されている。
【0010】
一方で、無線通信で利用する高周波増幅回路では、回路の消費電力を低減させ、当該高周波増幅回路が搭載される無線通信機の駆動時間を長くすることが要求されている。しかし、高出力モードと低出力モードとを切り替える高周波増幅回路において消費電流を抑えると、低出力時のゲインが低下し、出力電力の増加にともなって(高出力になるにしたがって)ゲインが増加する所謂ゲインエクスパンションが起こりやすく、EVM特性が劣化しやすい。一般的に、良好なEVM特性を実現するためには、出力電力を変化させた時のゲイン変化量、すなわち、AM−AM特性の歪みを小さくすることが必要であると知られている。
【0011】
図2は従来の高周波増幅回路100Pの出力特性を示すグラフであり、図2(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図2(B)が高周波増幅回路100Pのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0012】
図2(B)に示すように、高出力モードにおいては出力電力Poutが変化してもゲインが殆ど変化しない出力電力範囲であっても、低出力モードでは、トランジスタの静特性における非線形な領域を利用することになるため、出力電力Poutの増加にともなってゲインが上昇する、所謂ゲインエクスパンジョンが発生する。具体的に、図2(B)の例であれば、10[dBm]から25[dBm]の間で0.9[dB]程度のゲインの差が生じる。このようなゲインの差が生じると、通信品質が低下してしまう。
【0013】
この発明の目的は、低出力モードで出力電力を変化させても、ゲインの差が殆ど生じない高周波増幅回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、高周波信号を増幅する高周波増幅回路に関する。この高周波増幅回路は、増幅用トランジスタと、エミッタフォロワ用トランジスタと、コレクタ電圧可変手段とを備える。増幅用トランジスタは、ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する。エミッタフォロワ用トランジスタは、増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続されており、エミッタフォロワ回路を構成する。コレクタ電圧可変手段は、低出力モードと高出力モードとの間で、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧を変化させる。
【0015】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧をモード別で制御することにより、高出力モードでの出力特性を殆ど変化させることなく、低出力モードでのゲインエクスパンジョンの発生が抑制される。例えば、後述の図4等に示すように、低出力モードでのゲインのフラットネスが向上する。
【0016】
この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに定抵抗素子を介して接続された電圧可変型のモード制御電源であることが一例として好ましい。
【0017】
この構成では、コレクタ電圧可変手段が、電圧可変型のモード制御電源と定抵抗素子のみから構成される。この構成により、コレクタ電圧可変手段を簡素に構成することができる。
【0018】
また、この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに可変抵抗素子を介して接続された電圧固定型のモード制御電源もしくは電圧可変型のモード制御電源であることが一例として好ましい。
【0019】
この構成では、コレクタ電圧可変手段が、可変抵抗素子と電圧固定型のモード制御電源もしくは、可変抵抗素子と電圧可変型のモード制御電源の組で構成される。この構成でも、コレクタ電圧可変手段を簡素に構成することができる。
【0020】
また、この発明の高周波増幅回路では、コレクタ電圧可変手段は、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタにそれぞれ異なる電圧を与える複数の電圧印加回路を備えることが一例として好ましい。
【0021】
この構成では、コレクタ電圧可変手段を複数の電圧印加回路で実現しており、これにより、所望な値にコレクタ電圧を制御することが可能になる。
【0022】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源を備える。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第2ダイオードを介して接続され、電圧可変型のモード制御電源の高出力モードでの電圧より低く、電圧可変型のモード制御電源の低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源を備える。
【0023】
この構成では、コレクタ電圧可変手段における複数の電圧印加回路の具体例を示している。このような構成とすることで、第1ダイオード側の電圧供給回路と、第2ダイオード側の電圧供給回路とが個別に形成されるので、それぞれに高出力モード時の電圧印加、低出力モード時の電圧印加を割り当てる場合、個別に回路設計することができる。これにより、モード別のエミッタフォロワ用トランジスタへの電圧供給回路の設計自由度が向上する。これにより、それぞれのモードに対して、より所望な値にコレクタ電圧を制御することが可能になる。
【0024】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に並列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子を備える。第1スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源を備える。第2スイッチ素子の制御端子に接続し、電圧可変型のモード制御電源の高出力モードでの電圧より低く、電圧可変型のモード制御電源の低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源を備える。
【0025】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタへの供給電圧源を、両方のモードで共通し、増幅用トランジスタの駆動電圧で兼用する場合の回路構成を示している。この場合、第1、第2のスイッチを用いて、駆動電圧源とエミッタフォロワ用トランジスタのコレクタとの間の回路構成を、高出力モードと低出力モードとで切り替えている。この構成のように、エミッタフォロワ用トランジスタと増幅用トランジスタとの駆動電源を共通化しても、それぞれのモードに対して、所望な値にコレクタ電圧を制御することができる。
【0026】
また、この発明の高周波増幅回路では、次の構成であることがより好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのベースに接続し、当該エミッタフォロワ用トランジスタのベースバイアスを決定するバイアス制御回路を備える。電圧可変型のモード制御電源は、バイアス制御回路にも接続されている。バイアス制御回路は、定電圧であるバイアス電源の電圧と電圧可変型のモード制御電源の電圧とからエミッタフォロワ用トランジスタのベースに印加する電圧を決定する。
【0027】
この構成では、さらに、エミッタフォロワ用トランジスタのバイアス電圧をモード毎に可変にすることができる。これにより、各モードでの消費電流量も含む、より詳細な特性設定が可能になり、所望の特性を実現しやすくなる。
【0028】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子を備える。該第1抵抗素子に並列接続されたスイッチ素子を備える。該スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源を備える。
【0029】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタへの供給電圧源を、両方のモードで共通し、増幅用トランジスタの駆動電圧で兼用する場合の回路構成を示している。そして、第1のスイッチを用いて、駆動電圧源とエミッタフォロワ用トランジスタのコレクタとの間の回路構成を、高出力モードと低出力モードとで切り替えている。この構成では、出力電力の上昇に伴ってゲインが低下するゲインコンプレッションが生じる。したがって、従来のようなゲインエクスパンジョンを防止できる。
【0030】
また、この発明の高周波増幅回路では、複数の電圧印加回路は、次の構成であることが一例として好ましい。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子を備える。エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源を備える。
【0031】
この構成では、エミッタフォロワ用トランジスタの一方のモードの駆動電圧を、増幅用トランジスタの駆動電圧源から供給し、他方のモードの駆動電圧を別回路で構成する。この構成でも、ゲインコンプレッションが生じる。したがって、従来のようなゲインエクスパンジョンを防止できる。
【0032】
また、この発明の高周波増幅回路は、次の構成であることが一例として好ましい。上述のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路で構成される第1高周波増幅素子を備える。ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する第2増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続された第2エミッタフォロワ用トランジスタと該第2エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと第2増幅用トランジスタのコレクタに接続する駆動電圧印加端子とを備えた第2高周波増幅回路を備える。第1高周波増幅回路と第2高周波増幅回路とを直列接続した構成を備える。
【0033】
この構成では、ゲインコンプレッションを生じる高周波増幅回路と、ゲインエクスパンジョンを生じる高周波増幅回路とを直列接続することで、全体の高周波増幅回路としては、出力電圧の変化に関係なく、ゲインが略一定になる。
【0034】
また、この発明では、無線装置をとして次の構成を備えることが好ましい。上述のゲイン変化が殆ど無い高周波増幅回路を備える。当該高周波増幅回路を高周波送信信号用のパワーアンプに用いる。
【0035】
この構成では、上述のような出力電圧に影響されることなくゲインが略一定な高周波増幅回路を用いることで、通信特性に優れる無線装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、高出力モードと低出力モードとを有する高周波増幅回路において、低出力モードで出力電力を変化させても、ゲインの差が殆ど生じず、優れた増幅特性を実現できる。これにより、優れた通信品質の無線通信装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の高周波増幅回路100Pの回路図である。
【図2】従来の高周波増幅回路100Pの出力特性を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態に係る高周波増幅回路100Aの回路図である。
【図4】第1の実施形態に係る高周波増幅回路100Aの出力特性を示すグラフである。
【図5】第2の実施形態に係る高周波増幅回路100Bの回路図である。
【図6】第2の実施形態に係る高周波増幅回路100Bの出力特性を示すグラフである。
【図7】第3の実施形態に係る高周波増幅回路100Cの回路図である。
【図8】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Cの出力特性を示すグラフである。
【図9】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Dの回路図である。
【図10】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Dの出力特性を示すグラフである。
【図11】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Eの回路図である。
【図12】第4の実施形態に係る高周波増幅回路100Eの出力特性を示すグラフである。
【図13】第4の実施形態に係るパワーアンプ110の回路図である。
【図14】第5の実施形態に係る高周波増幅回路100Fの回路図である。
【図15】第5の実施形態に係る高周波増幅回路100Fの出力特性を示すグラフである。
【図16】第6の実施形態に係る高周波増幅回路100Gの回路図である。
【図17】第6の実施形態に係る高周波増幅回路100Gの出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図3は本実施形態に係る高周波増幅回路100Aの回路図である。図4は高周波増幅回路100Aの出力特性を示すグラフであり、図4(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図4(B)が高周波増幅回路100Aのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0039】
(回路構成)
高周波増幅回路100Aは、npn型からなる増幅用トランジスタ10を備える。増幅用トランジスタ10のベースは、入力整合回路30を介して高周波信号入力端子101へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタは、出力整合回路40を介して高周波信号出力端子102へ接続している。増幅用トランジスタ10のコレクタには、チョークコイル60を介して駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。この駆動電源とチョークコイル60との接続点が、本発明の「駆動電圧印加端子」となる。
【0040】
増幅用トランジスタ10のベースは、熱抵抗防止用のバラスト抵抗素子52を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のエミッタに接続している。エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースは、抵抗素子51を介してバイアス電源が接続されている。この構成により、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、バイアス電圧Vctrが印加されている。バイアス電圧Vctrは例えば2.610[V]である。
【0041】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子53を介してモード制御電源が接続されている。抵抗素子53は固定抵抗値の抵抗素子であり、例えば50Ω程度の抵抗値を有する。モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード制御電源は、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、1.3[V])を発生し、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])を発生する。
【0042】
(動作)
高出力モードでは、モード制御電源から高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、抵抗素子53を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなる。
【0043】
低出力モードでは、モード制御電源から低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、抵抗素子53を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなる。
【0044】
このようなモード制御電圧Vmodeの電圧値制御を行うことで、図4に示すように、高出力モード時のゲインのフラットネス(平坦度)を損なうことなく、低出力モード時のゲインエクスパンジョンを抑制し、ゲインのフラットネスを改善することができる。具体的に、図4の場合であれば、10[dBm]から25[dBm]の間で0.4[dB]程度のゲインの差に抑圧することができる。
【0045】
これは、本実施形態の回路では、低出力モード時にエミッタフォロワのコレクタ電圧が低く抑えられるため、増幅用トランジスタの低出力モード内での高出力時におけるベースバイアスが抑制され、当該高出力時の増幅用トランジスタのコレクタ電流の増加が抑制されるからである。
【0046】
このように、本実施形態の構成を用いることで、高出力モードと同様に、低出力モードであってもAM−AM歪みを抑制することができ、無線通信用の高周波信号に対して優れた増幅特性を有する高周波増幅回路を実現することができる。
【0047】
そして、この高周波増幅回路を送信信号のパワーアンプに用いることで、優れた通信特性の無線装置を実現することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、固定抵抗値からなる抵抗素子と、可変電圧型のモード制御電源とを組み合わせた例を示したが、可変抵抗素子と固定電圧型のモード制御電源を組み合わせて用いたり、可変抵抗素子と可変電圧型のモード制御電源を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
次に、第2の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図5は本実施形態に係る高周波増幅回路100Bの回路図である。図6は高周波増幅回路100Bの出力特性を示すグラフであり、図6(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図6(B)が高周波増幅回路100Bのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0050】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Bは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0051】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0052】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、第1ダイオード21Aのカソードが接続されている。第1ダイオード21Aのアノードは、モード制御電源に接続されている。第1ダイオード21Aは、ダイオード素子を用いてもよいが、図5に示すように、npn型トランジスタのコレクタとベースを短絡したものを用いてもよい。この場合、ベースがアノードに対応し、エミッタがカソードに対応する。
【0053】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0054】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子54を介して第2ダイオード21Bのカソードが接続されている。この抵抗素子54は省略することも可能である。第2ダイオード21Bのアノードは、リファレンス電源に接続されている。なお、第2ダイオード21Bも第1ダイオード21Aと同様に、npn型トランジスタで形成してもよい。
【0055】
リファレンス電源は、一定値のリファレンス電圧Vrefを発生する。リファレンス電圧Vrefは例えば2.7[V]である。
【0056】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、リファレンス電圧Vrefよりも高くなる。したがって、モード制御電圧Vmode(H)からトランジスタ21Aのベース−エミッタ間電圧だけ低下した電圧が、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0057】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、リファレンス電圧Vrefよりも低くなる。したがって、高出力モードでのモード制御電圧Vmode(H)よりも低電圧のリファレンス電圧Vrefからトランジスタ21Bのベース−エミッタ間電圧だけ低下した電圧が抵抗素子54を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0058】
このような構成とすることで、図6に示すような特性が得られる。すなわち、低出力モード時のゲインのフラットネスをより向上させることができる。例えば、具体的に、図6(B)に示すように、10[dBm]から20[dBm]の間で0.3[dB]程度のゲインの差に抑圧することができる。
【0059】
これは、本実施形態の回路では、低出力モード時にエミッタフォロワのコレクタ電圧を低く抑えるだけでなく、エミッタフォロワのコレクタ端子の電流を供給する経路の抵抗値を大きくすることで、低出力モードにおける高出力時の電流増加をより抑制できるからである。
【0060】
さらに、本実施形態では、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタへの電圧供給回路が、低出力モードと高出力モードとで個別の回路になる。したがって、各モード時の供給電圧を個別に設定でき、エミッタフォロワ用トランジスタ20に所望のコレクタ電圧を印加するための設計を容易にすることができる。これにより、AM−AM歪みを、より容易に抑圧することができる。
【0061】
次に、第3の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図7は本実施形態に係る高周波増幅回路100Cの回路図である。図8は高周波増幅回路100Cの出力特性を示すグラフであり、図8(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図8(B)が高周波増幅回路100Cのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0062】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Cは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0063】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0064】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、第1スイッチ素子であるnpn型のトランジスタ22Aのエミッタが接続されている。
【0065】
トランジスタ22Aのコレクタには、駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。トランジスタ22Aのベースには、抵抗素子55Aを介してモード制御電源に接続されている。
【0066】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0067】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、抵抗素子54を介して、第2スイッチ素子であるnpn型のトランジスタ22Bのエミッタが接続されている。
【0068】
トランジスタ22Bのコレクタには、駆動電源に接続され、駆動電圧Vccが印加される。トランジスタ22Bのベースには、抵抗素子55Bを介しリファレンス電源に接続されている。
【0069】
リファレンス電源は、一定値のリファレンス電圧Vrefを発生する。リファレンス電圧Vrefは例えば2.7[V]である。
【0070】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)によりトランジスタ22Aがオン状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Aを介して駆動電圧Vccが印加される。これにより、高出力モードでは、低出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が相対的に高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0071】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)によりトランジスタ22Aがオフ状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Bおよび抵抗素子54を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0072】
ここで、低出力モードでは、トランジスタ22Aのベース電圧となるリファレンス電圧Vrefが高出力モードのモード制御電圧Vmode(H)よりも低く、抵抗素子54を介した状態で、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに駆動電圧Vccが印加される。このため、低出力モードでは、高出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧は相対的に低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0073】
このような構成とすることで、図8に示すように、上述の第2の実施形態の図6と同様の特性が得られる。すなわち、上述の第2の実施形態と同様に、優れた増幅特性の高周波増幅回路を実現できる。
【0074】
次に、第4の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図9は本実施形態に係る高周波増幅回路100Dの回路図である。図10は高周波増幅回路100Dの出力特性を示すグラフであり、図10(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutとの関係を示し、図10(B)が高周波増幅回路100Cのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0075】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Dは、第3の実施形態に示した高周波増幅回路100Cに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスを供給する回路構成が異なり、他の構成は第3の実施形態の高周波増幅回路100Cと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0076】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースは、抵抗素子51を介してバイアス制御回路200へ接続されている。バイアス制御回路200には、モード制御電源およびバイアス電源が接続されている。
【0077】
バイアス制御回路200は、モード制御電源からのモード制御電圧Vmodeとバイアス電源からのバイアス電圧Vctrとを用いて、モード可変バイアス電圧Vaを出力し、抵抗素子51を介して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースに印加する。
【0078】
例えば、具体的には、バイアス制御回路200は、高出力モードでは、3.3[V]のモード制御電圧Vmode(H)と2.610[V]のバイアス電圧とから2.610[V]のモード可変バイアス電圧Va(H)を生成して出力する。バイアス制御回路200は、低出力モードでは、0.0[V]のモード制御電圧Vmode(L)と2.610[V]のバイアス電圧とから2.525[V]のモード可変バイアス電圧Va(L)を生成して出力する。
【0079】
これにより、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースには、高出力モードでは相対的に高い電圧値のバイアス電圧Va(H)が印加され、低出力モードでは相対的に低い電圧値のバイアス電圧Va(L)が印加される。
【0080】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)によりトランジスタ22Aがオン状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Aを介して駆動電圧Vccが印加される。これにより、高出力モードでは、低出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が相対的に高くなり、抵抗素子54が接続されていない分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0081】
さらに、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスが高くなり、より多くのベース電流がエミッタフォロワ用トランジスタ20にながれる。このため、増幅用トランジスタ10のベースバイアスを上昇させる効果がより高くなる。
【0082】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)によりトランジスタ22Aがオフ状態になる。したがって、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタには、トランジスタ22Bおよび抵抗素子54を介して駆動電圧Vccが印加される。
【0083】
ここで、低出力モードでは、トランジスタ22Bのベース電圧となるリファレンス電圧Vrefが高出力モードのモード制御電圧Vmode(H)よりも低く、抵抗素子54を介した状態で、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに駆動電圧Vccが印加される。このため、低出力モードでは、高出力モードよりも、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧は相対的に低くなり、抵抗素子54の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0084】
さらに、エミッタフォロワ用トランジスタ20のベースバイアスが低くなり、その分、増幅用トランジスタ10のベースバイアスも低下する。このため、増幅用トランジスタ10のコレクタ電流Iccを低減できる。
【0085】
すなわち、図10に示すように、低出力モードでの消費電流を抑制し、且つ低出力モードでのゲインのフラットネスを向上させることができる。これにより、上述の各実施形態よりもさらに消費電力が少なく優れた増幅特性の高周波増幅回路を実現できる。
【0086】
また、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧とベース電圧を調整できることで、エミッタフォロワによる増幅用トランジスタ10に対する効果を、より詳細に設定することができる。これにより、より所望な特性の高周波増幅回路を実現することができる。
【0087】
次に、第5の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図11は本実施形態に係る高周波増幅回路100Eの回路図である。図12は高周波増幅回路100Eの出力特性を示すグラフであり、図12(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図12(B)が高周波増幅回路100Eのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0088】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Eは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0089】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0090】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、抵抗素子56Aを介して駆動電源に接続されている。抵抗素子56Aには、スイッチ素子であるFET80と抵抗素子56Bとの直列回路が、並列に接続されている。抵抗素子56Aの抵抗値は抵抗素子56Bの抵抗値よりも大きく設定されている。例えば、抵抗素子56Aを10k[Ω]とし、抵抗素子56Bを10[Ω]としている。
【0091】
FET80のゲートは抵抗素子56Cを介してモード制御電源に接続されている。モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、2.0[V])である。
【0092】
(動作)
高出力モードでは、高電圧のモード制御電圧Vmode(H)が、FET80のゲートに印加され、FET80がオン状態になる。ここで、FET80に直列接続される抵抗素子56Bの抵抗値は、抵抗素子56Aよりも十分に抵抗値が小さい。したがって、高出力モードでは、抵抗素子56BおよびFET80のソース−ドレイン間を介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子56Bの抵抗値が小さく、FET80のソース−ドレイン間の抵抗値も低いため、コレクタ電圧は駆動電圧Vccに近い高い電圧値となる。これにより、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子56Bの抵抗値が抵抗素子56Aの抵抗値よりも小さい分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0093】
低出力モードでは、低電圧のモード制御電圧Vmode(L)が、FET80のゲートに印加され、FET80がオフ状態になる。このため、FET80と抵抗素子56Bとの直列回路は、駆動電源とエミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタとを接続する回路から切り離された状態(インピーダンス無限大の状態)となる。
【0094】
したがって、抵抗素子56Aを介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子56Aの抵抗値はキロオーダーと高いので、コレクタ電圧は、駆動電圧Vccに対して大幅に低い電圧値となる。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子56Aの抵抗値が抵抗素子56Bの抵抗値よりも大きい分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0095】
このような構成とすることで、図12に示すような出力特性が得られる。すなわち、低出力モード時のゲインエクスパンジョンが無くなり、出力電力の増加に伴ってゲインが低下するゲインコンプレッションが生じる。
【0096】
したがって、このようなゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eと、従来のゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路とを組み合わせることで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。
【0097】
図13は本実施形態のパワーアンプ110の回路図である。パワーアンプ110は、従来と同様の構造からなるゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pと、本実施形態のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eとを直列接続している。すなわち、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pの入力端子に、高周波信号入力端子101を接続し、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路100Pの出力端子に、本実施形態のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eの入力端子を接続し、ゲインコンプレッション型の高周波増幅回路100Eの出力端子に、高周波信号出力端子102を接続する。
【0098】
このような構成とすれば、図2(B)のゲイン−出力電力Pout特性と図12(B)のゲイン−出力電力Pout特性とを加算した特性になり、低出力モードにおいて出力電力の上昇に伴って高周波増幅回路100Pで上昇したゲインを、高周波増幅回路100Eで低下させ、ゲインのフラットネスを得ることができる。
【0099】
次に、第6の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図14は本実施形態に係る高周波増幅回路100Fの回路図である。図15は高周波増幅回路100Fの出力特性を示すグラフであり、図15(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図15(B)が高周波増幅回路100Fのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0100】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Fは、第1の実施形態に示した高周波増幅回路100Aに対して、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに電圧供給する回路構成が異なり、他の構成は第1の実施形態の高周波増幅回路100Aと同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0101】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、バイパスコンデンサ70を介して接地されている。
【0102】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、抵抗素子57を介して駆動電源に接続されている。抵抗素子57は10k[Ω]程度の高い抵抗値を有する。
【0103】
エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタは、第3ダイオード23のカソードが接続されている。第3ダイオード23のアノードは、モード制御電源に接続されている。第3ダイオード23は、ダイオード素子を用いてもよいが、図14に示すように、npn型トランジスタのコレクタとベースを短絡したものを用いてもよい。この場合、ベースがアノードに対応し、エミッタがカソードに対応する。
【0104】
モード制御電源は、可変電圧型で直流電圧のモード制御電圧Vmodeを発生する。モード電圧Vmodeは、低出力モード時には相対的に低い電圧(例えば、0.0[V])であり(電圧印加無し)、高出力モード時には相対的に高い電圧(例えば、3.3[V])である。
【0105】
(動作)
高出力モードでは、モード制御電圧Vmode(H)が高電圧となるため、第3ダイオード23に順方向バイアスがかかり、モード制御電圧Vmode(H)がエミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。抵抗素子57による電圧降下もないため、高出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が高くなり、抵抗素子57の抵抗値分、コレクタ側が低インピーダンスになる。
【0106】
低出力モードでは、モード制御電圧Vmode(L)が低電圧となるため、第3ダイオード23に逆方向バイアスがかかり、第3ダイオード23とモード制御電源とが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタから切り離された状態となる。
【0107】
したがって、抵抗素子57を介して、駆動電圧Vccが、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに印加される。そして、抵抗素子57の抵抗値はキロオーダーと高いので、コレクタ電圧は、駆動電圧Vccに対して大幅に低い電圧値となる。これにより、低出力モードでは、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタ電圧が低くなり、抵抗素子57の抵抗値分、コレクタ側が高インピーダンスになる。
【0108】
これにより、上述の第5の実施形態と同様に、ゲインコンプレッション型の高周波増幅回路を実現することができる。したがって、図13に示したように、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路と直列接続することで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。また、本実施形態の高周波増幅回路100Fの構成を用いることで、低出力モードに第3ダイオード23側に流れる電流が無く、不要な電流が流れない。これにより、より、消費電流の少ない高周波増幅回路を実現することができる。
【0109】
次に、第7の実施形態に係る高周波増幅回路について、図を参照して説明する。図16は本実施形態に係る高周波増幅回路100Gの回路図である。図17は高周波増幅回路100Gの出力特性を示すグラフであり、図17(A)が増幅用トランジスタのコレクタ電流Iccと出力電力Poutと関係を示し、図17(B)が高周波増幅回路100Gのゲインと出力電力Poutと関係を示す。
【0110】
(回路構成)
本実施形態の高周波増幅回路100Gは、第5の実施形態に示した高周波増幅回路100EのFET80を、npn型のトランジスタ24に置き換えたものである。このように、エミッタフォロワ用トランジスタ20のコレクタに接続するスイッチ素子をFETでなく、トランジスタにしても、図17に示すように、上述の第5の実施形態と同様のゲインコンプレッション型の高周波増幅回路を実現できる。したがって、図13に示したように、ゲインエクスパンジョン型の高周波増幅回路と直列接続することで、ゲインのフラットネスを向上させることができる。
【0111】
なお、上述の各実施形態に記載した電圧や素子値は一例であって、所望とする仕様に応じて、適宜、別の値に設定することができる。
【0112】
また、上述の各実施形態は、本願の作用効果を得られる一部の例であり、増幅用トランジスタのベースにエミッタフォロワ回路を接続し、当該エミッタフォロワ回路のトランジスタに対して、低出力モードでのコレクタ電圧が高出力モードのコレクタ電圧よりも低くなるように設定する構造であれば、回路素子の構成が異なっていても、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0113】
100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100P:高周波増幅回路、101:高周波信号入力端子、102:高周波信号出力端子、110:パワーアンプ、10:増幅用トランジスタ、20:エミッタフォロワ用トランジスタ、21A:第1ダイオード、21B:第2ダイオード、22A,22B,24:トランジスタ、23:第3ダイオード、
30:入力整合回路、40:出力整合回路、51,53,54,55A,55B,56A,56B,56C,57:抵抗素子、52:バラスト抵抗素子、60:チョークコイル、70:バイパスコンデンサ、80:FET
200:バイアス制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する増幅用トランジスタと、
該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続されたエミッタフォロワ用トランジスタと、
低出力モードと高出力モードとの間で、前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧を変化させるコレクタ電圧可変手段と、
を備えた高周波増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに定抵抗素子を介して接続された電圧可変型のモード制御電源である、高周波増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに可変抵抗素子を介して接続された電圧固定型のモード制御電源もしくは電圧可変型のモード制御電源である、高周波増幅回路。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、それぞれ異なる電圧を与える複数の電圧印加回路を備える、高周波増幅回路。
【請求項5】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源と、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第2ダイオードを介して接続され、前記電圧可変型のモード制御電源の前記高出力モードでの電圧より低く、前記電圧可変型のモード制御電源の前記低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項6】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に並列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源と、
前記第2スイッチ素子の制御端子に接続し、前記電圧可変型のモード制御電源の前記高出力モードでの電圧より低く、前記電圧可変型のモード制御電源の前記低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の高周波増幅回路であって、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのベースに接続し、当該エミッタフォロワ用トランジスタのベースバイアスを決定するバイアス制御回路を備え、
前記電圧可変型のモード制御電源は、前記バイアス制御回路にも接続され、
該バイアス制御回路は、定電圧であるバイアス電源の電圧と前記電圧可変型のモード制御電源の電圧とから、前記エミッタフォロワ用トランジスタのベースに印加する電圧を決定する、高周波増幅回路。
【請求項8】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子と、
該第1抵抗素子に並列接続されたスイッチ素子と、
該スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源と、
を備えた高周波増幅回路。
【請求項9】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子と、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の高周波増幅回路で構成される第1高周波増幅素子と、
ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する第2増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続された第2エミッタフォロワ用トランジスタと該第2エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記第2増幅用トランジスタのコレクタに接続する前記駆動電圧印加端子と、を備える第2高周波増幅回路と、を備え、
前記第1高周波増幅回路と前記第2高周波増幅回路とを直列接続した構成を備える、高周波増幅回路。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7、請求項10のいずれか一項に記載の高周波増幅回路を備え、
該高周波増幅回路を高周波送信信号用のパワーアンプに用いる無線装置。
【請求項1】
ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する増幅用トランジスタと、
該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続されたエミッタフォロワ用トランジスタと、
低出力モードと高出力モードとの間で、前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタ電圧を変化させるコレクタ電圧可変手段と、
を備えた高周波増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに定抵抗素子を介して接続された電圧可変型のモード制御電源である、高周波増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに可変抵抗素子を介して接続された電圧固定型のモード制御電源もしくは電圧可変型のモード制御電源である、高周波増幅回路。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波増幅回路であって、
前記コレクタ電圧可変手段は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、それぞれ異なる電圧を与える複数の電圧印加回路を備える、高周波増幅回路。
【請求項5】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源と、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに、第2ダイオードを介して接続され、前記電圧可変型のモード制御電源の前記高出力モードでの電圧より低く、前記電圧可変型のモード制御電源の前記低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項6】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に並列に接続された第1スイッチ素子および第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源と、
前記第2スイッチ素子の制御端子に接続し、前記電圧可変型のモード制御電源の前記高出力モードでの電圧より低く、前記電圧可変型のモード制御電源の前記低出力モードでの電圧よりも高い直流電圧を出力するリファレンス電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の高周波増幅回路であって、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのベースに接続し、当該エミッタフォロワ用トランジスタのベースバイアスを決定するバイアス制御回路を備え、
前記電圧可変型のモード制御電源は、前記バイアス制御回路にも接続され、
該バイアス制御回路は、定電圧であるバイアス電源の電圧と前記電圧可変型のモード制御電源の電圧とから、前記エミッタフォロワ用トランジスタのベースに印加する電圧を決定する、高周波増幅回路。
【請求項8】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子と、
該第1抵抗素子に並列接続されたスイッチ素子と、
該スイッチ素子の制御端子に接続する電圧可変型のモード制御電源と、
を備えた高周波増幅回路。
【請求項9】
請求項4に記載の高周波増幅回路であって、
前記複数の電圧印加回路は、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記増幅用トランジスタの駆動電圧印加端子との間に接続された第1抵抗素子と、
前記エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタに第1ダイオードを介して接続される電圧可変型のモード制御電源と、
を備える高周波増幅回路。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の高周波増幅回路で構成される第1高周波増幅素子と、
ベースから入力された高周波信号を増幅してコレクタから出力する第2増幅用トランジスタと、該増幅用トランジスタのベースにエミッタが接続された第2エミッタフォロワ用トランジスタと該第2エミッタフォロワ用トランジスタのコレクタと前記第2増幅用トランジスタのコレクタに接続する前記駆動電圧印加端子と、を備える第2高周波増幅回路と、を備え、
前記第1高周波増幅回路と前記第2高周波増幅回路とを直列接続した構成を備える、高周波増幅回路。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7、請求項10のいずれか一項に記載の高周波増幅回路を備え、
該高周波増幅回路を高周波送信信号用のパワーアンプに用いる無線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−227637(P2012−227637A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91884(P2011−91884)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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