説明

高圧放電灯点灯装置

【課題】回路構成が簡単で、小型なイグナイタ始動回路を備えた高圧放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】高圧放電灯9及びインダクタ6の間に2次巻線8bが挿入された昇圧トランス8、昇圧トランス8の1次巻線8a側に接続された2端子サイリスタ13、及び直流電源回路1の出力間に直列に接続された抵抗10、ダイオード11及び充放電コンデンサ13を有し、2端子サイリスタ13が導通したときに昇圧トランス8の2次巻線8bに高電圧パルスを発生させるイグナイタ始動回路と、高圧放電灯9を始動する際、充放電コンデンサ13の充電電圧が2端子サイリスタ13を導通させる電圧値となるように、高圧放電灯9が点灯した後は、その充電電圧が2端子サイリスタ13を非導通させる電圧値となるように、直流電源回路1を制御する制御回路14とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等の高圧放電灯を点灯制御する高圧放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧放電灯点灯装置は、高圧放電灯を始動点灯するパルス電圧を発生させるためのイグナイタ始動回路を備えている。このイグナイタ始動回路は、2次巻線が高圧放電灯及びインダクタの間に挿入された高圧トランスと、高圧トランスの1次巻線の一端側に設けられ、チョッパ回路からの電流により充電される一方の充放電回路と、一対のFETのうち一方のFETのオン時にインダクタを介して流れる電流により充電される他方の充放電回路と、高圧トランスの1次巻線の他端に接続された3端子サイリスタと、この3端子サイリスタのゲートと接続され、他方の充放電回路の充電電圧がブレークオーバ電圧に達したときに導通して3端子サイリスタをオンし、一方の充放電回路の充電電圧を高圧トランスの1次巻線に印加させる2端子サイリスタとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−203185公報(第6頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の高圧放電灯点灯装置では、イグナイタ始動回路において、高圧放電灯を始動点灯するための高電圧パルスを発生又は停止させるために、2種のサイリスタと2つの充放電回路を用いており、回路構成が複雑になっていた。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、回路構成が簡単で、小型のイグナイタ始動回路を備えた高圧放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高圧放電灯点灯装置は、高圧放電灯が取り付けられる負荷回路と、商用電源を所望の直流電圧に変換するための直流電源回路と、直流電源回路からの直流電圧を交流電圧に変換し、負荷回路に供給するインバータ回路と、負荷回路に2次巻線が挿入された昇圧トランス、昇圧トランスの1次巻線側に接続された2端子サイリスタ、及び直流電源回路の出力間に設けられた充放電回路を有し、2端子サイリスタが導通したときに昇圧トランスの2次巻線に高電圧パルスを発生させるイグナイタ始動回路と、負荷回路の高圧放電灯を始動する際、充放電回路の充電電圧が2端子サイリスタを導通させる電圧値となるように、高圧放電灯が点灯した後は、充電電圧が2端子サイリスタを非導通させる電圧値となるように、直流電源回路を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、負荷回路の高圧放電灯を始動する際、充放電回路の充電電圧が2端子サイリスタを導通させる電圧値となるように、高圧放電灯が点灯した後は、その充電電圧が2端子サイリスタを非導通させる電圧値となるように直流電源回路を制御するようにしたので、充放電回路と2端子サイリスタをそれぞれ一部品で済み、このため、イグナイタ始動回路の構成が簡単になり、小型化を図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
図中に示す本実施の形態の高圧放電灯点灯装置は、直流電源回路1と、ハーフブリッジ型のインバータ回路と、負荷回路と、イグナイタ始動回路と、制御回路14とを備えている。直流電源回路1は、例えば、交流電源の電力を直流電力に整流する整流回路と、この整流回路の出力間に接続された昇圧型PFC(Power Factor Contorol )回路とで構成されている。この昇圧型PFC回路には、インダクタ、制御回路14のオン・オフ制御に基づいて整流回路の出力を昇圧するスイッチング素子等が設けられている。
【0009】
前記のインバータ回路は、直流電源回路1の出力間に直列に接続された第1のスイッチング素子2及び第2のスイッチング素子3と、これらスイッチング素子2,3に並列に接続され、第1の電解コンデンサ4及び第2の電解コンデンサ5の直列回路とから構成されている。負荷回路は、第1及び第2のスイッチング素子2,3の接続点と第1及び第2の電解コンデンサ4,5の接続点との間に、後述する昇圧トランス8の2次巻線8bを介在して直列に接続されたインダクタ6及び高圧放電灯9と、この高圧放電灯9及び前記2次巻線8bに並列に接続されたコンデンサ7とで構成されている。前述した高圧放電灯9として、HIDランプ(高圧水銀ランプ)、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等が用いられている。
【0010】
イグナイタ始動回路は、直流電源回路1の出力間に直列に接続された抵抗10、ダイオード11及び充放電コンデンサ12と、2次巻線8bが前述の如くインダクタ6及び高圧放電灯9の間に挿入され、1次巻線8aの一端がダイオード11及び充放電コンデンサ12の接続点に接続された昇圧トランス8と、昇圧トランス8の1次巻線の他端及び充放電コンデンサ12の負極側の間に挿入された2端子サイリスタ13とから構成されている。なお、前述した抵抗10、ダイオード11及び充放電コンデンサ12により充放電回路が構成されている。
【0011】
制御回路14は、動作説明時に詳述するが、負荷回路の高圧放電灯9を始動する際、充放電回路の充電電圧が2端子サイリスタ13を導通させる電圧値、即ち2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達する電圧値となるように直流電源回路1を制御し、高圧放電灯9が点灯した後は、その充電電圧が2端子サイリスタ13を非導通させる電圧値(ブレークオーバー電圧より低い電圧値)となるように直流電源回路1を制御する。高圧放電灯9が点灯したか否かの判別は、図1には図示していないが、例えば電圧検出回路により検出された高圧放電灯9の電圧が予め設定された電圧値より低くなったときに、高圧放電灯9が点灯したと判別する。なお、これに代えて、電流検出回路の検出電流から高圧放電灯9が点灯したか否かを判別するようにしても良い。この場合、その検出電流が予め設定された電流値よりも高くなったときに、高圧放電灯9が点灯したと判別する。
【0012】
次に、本実施の形態の高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。
制御回路14は、高圧放電灯9を始動する際、第1のスイッチング素子2及び第2のスイッチング素子3を交互にオン・オフすると共に、直流電源回路1を制御し、かつ、電圧検出回路の検出電圧を通じて高圧放電灯9が点灯したか否かを判別する。第1及び第2のスイッチング素子2,3の制御は、予め設定された第1の期間、第1のスイッチング素子2のみを高周波でオン・オフし、次いで、第2の期間、第2のスイッチング素子3のみを高周波でオン・オフし、この第1及び第2の期間の切り替えを低周波で繰り返し行っている。また、直流電源回路1側の制御は、抵抗10及びダイオード11を介して充放電コンデンサ12に充電される電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達する電圧値となるように行っている。
【0013】
この制御により、充放電コンデンサ12の充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達する毎に放電され、その電圧が昇圧トランス8の1次巻線8aに間欠的に印加され、2次巻線8bに高電圧パルスが発生し、第1及び第2のスイッチング素子2,3の動作による点灯周波数の矩形波電圧に重畳し、高圧放電灯9に繰り返し印加される。一方、制御回路14は、昇圧トランス8の2次巻線8bに高電圧パルスを発生させているときに、電圧検出回路の検出電圧が予め設定された電圧値より低くなったことを検知すると、高圧放電灯9が点灯したと判別して、充放電コンデンサ12の充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧より低くなるように直流電源回路1を制御し、昇圧トランス8の2次巻線8bに発生する高電圧パルスを停止させる。
【0014】
以上のように実施の形態1によれば、負荷回路の高圧放電灯9を始動する際、充放電コンデンサ12の充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達する電圧値となるように直流電源回路1を制御し、高圧放電灯9が点灯した後は、その充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧より低い電圧値となるように直流電源回路1を制御するようにしたので、充放電回路と2端子サイリスタ13をそれぞれ一部品で済み、このため、イグナイタ始動回路の構成が簡単になり、小型化を図れるという効果がある。
【0015】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。なお、図1で説明した実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
実施の形態1では、直流電源回路1の出力間に、抵抗10、ダイオード11及び充放電コンデンサ12を直列に接続してなる充放電回路を設けているが、本実施の形態は、インダクタ6及び昇圧トランス8の2次巻線8bの接続点と直流電源回路1の負極側(アース側)との間に、抵抗10、ダイオード11及び充放電コンデンサ12を直列に接続してなる充放電回路を設けたものである。
【0016】
本実施の形態におけるイグナイタ始動回路の2端子サイリスタ13は、実施の形態1と同様に、充放電コンデンサ12に昇圧トランス8の1次巻線8aを介して接続されており、始動時に高圧放電灯9に印加される電圧よりブレークオーバー電圧が低く、高圧放電灯9が点灯した後の電圧よりもブレークオーバー電圧が高い特性を有するものが選定されている。また、制御回路14は、高圧放電灯9を始動する際、実施の形態1と同様に、まず、第1の期間、第1のスイッチング素子2のみを高周波でオン・オフし、次いで、第2の期間、第2のスイッチング素子3のみを高周波でオン・オフし、この切り替えを低周波で繰り返し行う。
【0017】
次に、本実施の形態の高圧放電灯点灯装置の動作について説明する。
制御回路14は、負荷回路の高圧放電灯9を始動する際、前述したように、第1の期間、第1のスイッチング素子2のみを高周波でオン・オフし、次いで、第2の期間、第2のスイッチング素子3のみを高周波でオン・オフし、この切り替えを低周波で繰り返し行う。第1のスイッチング素子がオン・オフ動作しているときにインダクタ6を介して流れる電流が充放電コンデンサ12に充電され、その充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達したときに、その充電電圧が放電されて昇圧トランス8の1次巻線8aに印加し、その2次巻線8bに高電圧パルスが発生し、第1及び第2のスイッチング素子2,3の動作による点灯周波数の矩形波電圧に重畳して、高圧放電灯9に印加される。
【0018】
一方、制御回路14は、高電圧パルスの印加により高圧放電灯9が点灯すると、第1及び第2のスイッチング素子2,3を高周波で交互にオン・オフし、高圧放電灯9の点灯を継続する。この時、高圧放電灯9に印加される電圧が低下するので、放電コンデンサ12の充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧より低くなり、昇圧トランス8の2次巻線8aに発生する高電圧パルスを停止する。なお、制御回路14による高圧放電灯9の点灯判別は、電圧検出回路の検出電圧が予め設定された電圧値より低くなったことを検知したときである。
【0019】
以上のように実施の形態2によれば、高圧放電灯9の始動時には、充放電コンデンサ12への充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧に達する毎に昇圧トランス8の2次巻線8bに高電圧パルスが発生し、高圧放電灯9が点灯した際には、充放電コンデンサ12への充電電圧が2端子サイリスタ13のブレークオーバー電圧より低くなって昇圧トランス8の2次巻線8bに発生する高電圧パルスが停止するので、高圧放電灯9の点灯時の直流電源回路1の出力電圧の変更に対する制御が不要になり、このため、イグナイタ始動回路を簡素化及び小型化できるという効果に加え、制御回路14の構成を実施の形態1と比べ簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る高圧放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る高圧放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1 直流電源回路、2 第1のスイッチング素子、3 第2のスイッチング素子、4 第1の電解コンデンサ、5 第2の電解コンデンサ、6 インダクタ、7 コンデンサ、8 昇圧トランス、9 高圧放電灯、10 抵抗、11 ダイオード、12 充放電コンデンサ、13 2端子サイリスタ、14 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電灯が取り付けられる負荷回路と、
商用電源を所望の直流電圧に変換するための直流電源回路と、
該直流電源回路からの直流電圧を交流電圧に変換し、前記負荷回路に供給するインバータ回路と、
前記負荷回路に2次巻線が挿入された昇圧トランス、該昇圧トランスの1次巻線側に接続された2端子サイリスタ、及び前記直流電源回路の出力間に設けられた充放電回路を有し、前記2端子サイリスタが導通したときに前記昇圧トランスの2次巻線に高電圧パルスを発生させるイグナイタ始動回路と、
前記負荷回路の高圧放電灯を始動する際、前記充放電回路の充電電圧が前記2端子サイリスタを導通させる電圧値となるように、前記高圧放電灯が点灯した後は、前記充電電圧が前記2端子サイリスタを非導通させる電圧値となるように、前記直流電源回路を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記負荷回路の高圧放電灯の電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記制御部は、前記電圧検出回路の検出電圧が予め設定された電圧値より低くなったときに高圧放電灯の点灯を判別することを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記負荷回路の高圧放電灯の電流を検出する電流検出回路を備え、
前記制御部は、前記電流検出回路の検出電流が予め設定された電流値より高くなったときに高圧放電灯の点灯を判別することを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
高圧放電灯が取り付けられる負荷回路と、
商用電源を所望の直流電圧に変換するための直流電源回路と、
該直流電源回路からの直流電圧を交流電圧に変換し、前記負荷回路に供給するインバータ回路と、
前記負荷回路に2次巻線が挿入された昇圧トランス、該昇圧トランスの1次巻線側に接続された2端子サイリスタ、及び前記負荷回路と前記直流電源回路の一方の出力端との間に設けられた充放電回路を有し、前記2端子サイリスタが導通したときに前記昇圧トランスの2次巻線に高電圧パルスを発生させるイグナイタ始動回路とを備え、
前記充放電回路は、前記負荷回路の高圧放電灯が始動される際、充電電圧が前記2端子サイリスタを導通させる電圧値となり、前記高圧放電灯が点灯した後は、前記充電電圧が前記2端子サイリスタを導通させる電圧値よりも低くなることを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記充放電回路は、前記高圧放電灯が点灯した後は、前記充電電圧が前記2端子サイリスタを非導通させる電圧値となることを特徴とする請求項4記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
高圧放電灯が取り付けられる負荷回路と、
商用電源を所望の直流電圧に変換するための直流電源回路と、
該直流電源回路からの直流電圧を交流電圧に変換し、前記負荷回路に供給するインバータ回路と、
前記負荷回路に2次巻線が挿入された昇圧トランス、該昇圧トランスの1次巻線側に接続された2端子サイリスタ、及び前記負荷回路と前記直流電源回路の一方の出力端との間に設けられた充放電回路を有し、前記2端子サイリスタが導通したときに前記昇圧トランスの2次巻線に高電圧パルスを発生させるイグナイタ始動回路とを備え、
前記2端子サイリスタの導通電圧は、前記高圧放電灯の始動時に前記高圧放電灯に印加される電圧より低く、その高圧放電灯が点灯した後に当該高圧放電灯に印加される電圧よりも高いことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−200793(P2007−200793A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20251(P2006−20251)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】