説明

高屈折率、薄膜材料として用いるポリイミド

【課題】高屈折率層として用いる新しい組成物を提供する。
【解決手段】これらの新しい組成物は、溶剤系に分散または溶解したポリイミドを含有する。ポリイミドは、市販の酸二無水物およびジアミンから作製することができる。好ましいポリマーは、式(I)および式(II)からなる群から選ばれるモノマーを繰り返し単位として有する。本発明の組成物は、強度の高い薄膜を形成することができ、また、高屈折率を有するため、広範な光学分野の用途において有用である。
【化1】


および
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2003年9月19日提出の出願番号第60/504,656号仮出願「POLYIMIDES FOR USE AS HIGH REFRACTIVE INDEX, THIN FILM MATERIALS」の優先権の利益を主張するものであり、当該仮出願を引用として本明細書に含める。
【0002】
本発明は高屈折率材料として有用なポリイミド組成物に関する。これらの組成物は、溶剤系における良好な溶解性(>10%W/W)、高い分子量、良好な膜強度、可視光領域および近赤外線領域における高い透過性、ならびに非常に高い屈折率を有する。
【背景技術】
【0003】
高屈折率コーティングは、多くの電子光学素子の動作性能を向上させる。例えば、発光ダイオード(LED)では、素子と封入剤との間に高屈折率材料の層を適用することによって、発光ダイオードの効率が向上する。
【0004】
光透過性が高くしかも処理が簡単である有機ポリマー系は数多くあるが、高屈折率を提供するものは少ない。今まで高屈折率有機ポリマーの一般的な用途は、眼科用レンズの製造であった。これらのポリマーには、屈折率が1.58であるビスフェノール A ポリカーボネート、屈折率の値が1.58〜1.64であるポリフォスフォン酸塩、報告されている屈折率が1.53〜1.63である新種のアクリレートおよびメタクリレートポリマー、屈折率が1.61〜1.71の範囲である硫黄含有ポリマーなどがある。
【0005】
高屈折率膜材料形成に対する別のアプローチは、ポリマー系に無機化合物を結合して、その結果複合材料にするというものであった。文献によると、屈折率が1.505〜1.867の範囲である様々なニ酸化チタン(チタニア)複合材料が報告されている。しかし、この無機化合物の形成は、ソルゲル法によって達成されるものであり、ソルゲル法では、チタニアのナノ微粒子の正しい形成には、通常、水の添加と、高温(すなわち、300°Cを超える温度)の利用が必要になる。この他、潜在的な問題としては、マイクロ相とマクロ相の分離が発生し光損が起こる、また、比較的厚い層を形成することができないなどの問題がある。
【0006】
ポリイミドは、熱的安定性、酸化安定性、高い機械的強度、および非常に良好な耐溶剤性などの望ましい特性を多く所有しているという理由で、超小型電子技術の分野で積極的に用いられてきた。しかし、これら同じ特性が、処理および製造が難しい、通常の有機溶剤には非常に溶けにくい、などの問題を引き起こす。超小型電子技術の分野でポリイミドを用いることの利点の1つは、中間層誘電材料としてであった。この用途にとって、望まれることは、静電結合や漏話による信号ひずみを低減することにより素子効率を高めるため、より低い誘電率を達成することであった。誘電率と屈折率は指数型の関連(変形マクスウェルの方程式:ε〜1.10nからの近似的関係、式中εは誘電率、nは屈折率を示す)があるので、誘電率の値が低減すると、屈折率において小幅の低減がおこる。ポリイミドの誘電率の低減は、半芳香族、脂肪族、およびフッ素系のジアンヒドリドおよびジアミンの利用などの各種の合成アプローチによって、達成されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高屈折率材料であって、しかも広い範囲の波長において良好な透過性を有し、許容溶剤において良好な可溶性を示し、分子量が高く、溶液からスピンコートまたは鋳込み(casting)によって5μm以上の厚さの膜を形成することが可能である高屈折率材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、広くは新しい高屈折率組成物とこれらの組成物を用いる方法に関する。
【0009】
詳細には、これらの組成物は、溶剤系に分散または溶解したポリマーを含有する。ポリマーは、
【化19】

および
【化20】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有する。
【0010】
式(I)および式(II)中、各Xは、分極(偏光)可能な原子(例えば、酸素原子、硫黄原子)、−SO−、および
【化21】

からなる群からそれぞれ独立して選ばれる。
【0011】
式(III)中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル(好ましくは、C〜C12、より好ましくは、C〜C)、およびハロアルキル(好ましくは、C〜C12、より好ましくは、C〜C)からなる群からそれぞれ独立して選ばれる。好ましいハロアルキルは、フルオロアルキル、ブロモアルキル、およびクロロアルキルからなる群から選ばれるものである。
【0012】
式(I)および式(II)中、各Yは、分極可能な原子;および、スルホニル、スルホニルビス(4、4´−フェニレンオキシ)、アルキルホスフィノ(好ましくは、C〜C12、より好ましくは、C〜C)、アリールホスフィノ、イミダゾリル、ベンゾイル、フルオレニル、カルバゾリル、ナフチル、アリールホスホリル(好ましくは、C〜C18、より好ましくは、C〜C12)、アルキルホスホリル(好ましくは、C〜C12、より好ましくは、C〜C)、および式(III)からなる群から選ばれる基;からなる群からそれぞれ独立して選ばれる。もっとも好ましい分極可能な原子は、酸素、硫黄、燐、およびセレニウムからなる群から選ばれるものである。なお、ここで使われている「分極可能な原子」とは、およそ400〜700nmの波長を持つ放射線によって分極可能なものをいう。
【0013】
最も好ましいポリマーは
【化22】

および
【化23】

からなる群から選ばれるモノマーを繰り返し単位として有する。
【0014】
このポリマーの重量平均分子量は、好ましくはおよそ30,000〜180,000ダルトン、より好ましくはおよそ50,000〜100,000ダルトンである。
【0015】
本発明の組成物は、一般に、およそ1〜50%の総固形成分を有し、単にポリマー(および以下に記載する任意の他の成分)を適切な溶剤系に溶解、または分散することによって作製することができる。この溶剤系の沸点は、およそ65〜210°Cであり、好ましくは80〜150°Cである。溶剤系に溶解しているポリマーの量は、組成物の総重量を100重量%とした時に、好ましくはおよそ1〜40重量%ポリマーであり、より好ましくはおよそ5〜25重量%ポリマーである。
【0016】
組成物の総重量を100重量%としたときに、用いられる溶剤系のレベルは、およそ50重量%以上であり、好ましくはおよそ60〜99重量%であり、より好ましくはおよそ75〜95重量%である。好ましい溶剤系は、テトラヒドロフルフリル アルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、モノおよびジクロロベンゼン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤を含む。
【0017】
本発明の組成物は、また、界面活性剤(例えば、3M社から入手可能なFC4430などのフッ素系界面活性剤)、接着促進剤(例えば、シラン、グリシジルシラン)、金属酸化物ナノ微粒子(例えば、TiO,ZrO,Ta)、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含有してもよい。
【0018】
これらの組成物の使用方法は、従来の適用方法(スピンコートなど)を用いて一定量のこれらの組成物を表面に適用してその表面の上に層を形成するだけでよい。これらの基板としては、ガラス基板、水晶基板、シリコン基板、サファイヤ基板、ガリウム砒素基板、シリコンカーバイド基板、およびプラスチック(ポリカーボネートPMMAなど)基板からなる群から選ばれる基板がある。また、好ましい場合は、本発明の組成物を基板に適用する前に、他の層(接着促進層など)を基板に適用してもよい。
【0019】
この層は、次に、およそ60〜250℃、好ましくは、およそ80〜150℃の温度でおよそ2〜120分間、好ましくは、およそ2〜10分間焼成される。なお、この工程により、層から溶剤をほぼ(およそ97%以上、好ましくはおよそ99%以上、さらにより好ましくは、およそ100%以上)除去することができることは理解されるであろう。したがって、焼成された層が含む溶剤の量は、組成物の総重量を100%とした時に、およそ1重量%未満、好ましくは、およそ0.5重量%未満、そしてより好ましくは0重量%になる。しかし、その反面、ポリマーの架橋結合が非常に少ない(およそ1%未満)、もしくは、まったくないので、基板の上にポリイミドポリマーの層ができる。この方法で生成した層は一般に、焼成後の厚さがおよそ1〜30μmであるが、適用を複数回施すことによって厚さを増すこともできる。
【0020】
本発明に係る焼成した層は非常に望ましい特性を示す。例えば、屈折率および光透過率の値が高い。波長がおよそ400〜700nmの時に、厚さがおよそ5μmの層の屈折率はおよそ1.60以上、好ましくは、およそ1.60〜1.95、さらに、より好ましくは、およそ1.70から1.85である。波長がおよそ700〜1700nmの時に、屈折率はおよそ1.50以上、より好ましくは、およそ1.50〜1.65である。波長がおよそ400〜700nmの時に、厚さがおよそ5μmの層の%透過率はおよそ65%以上、好ましくは、およそ80%以上、さらに、より好ましくは、90%以上である。焼成した層は、波長がおよそ1310nm、およびおよそ1550nmとの時も、これらの透過率(%)を有するため、電気通信の用途にも有用である。
【0021】
さらに、本発明の高屈折率層は、従来技術の層と比べると、通常の溶剤に溶けやすい。つまり、焼成した層は、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、γ―ブチロラクトン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤に曝された場合に、およそ10重量%以上、好ましくはおよそ15重量%以上可溶である。
【0022】
焼成された層は、さらに、良好な熱的安定性および酸化安定性を有する。熱重量分析(TGA)を行うと、およそ400℃で、およそ2分間加熱された場合、これらの層が示す重量損は、およそ10重量%未満、好ましくはおよそ5重量%未満である。また、窒素中でTGAを行い、空気中でTGAを行うと、空気中での重量%損は窒素中での重量%損のおよそ5%以内、好ましくはおよそ1%以内である。
【0023】
基板の上に焼成された層を有する構成物は、用途に応じて、その後更に各種の処理を行ってもよい。例えば、高屈折率層の上に他の層を適用してもよい。例えば、高屈折率層に保護層を適用して構造物を形成することもできる。
【0024】
本発明の高屈折率層は、高屈折率が重要となる様々な分野で有用である。それらの分野としては、仮想ディスプレイ、LED素子、光学ディスクの保護層、および回析格子を用いる装置などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましいポリイミド作製プロセス
ポリイミドは、一般に、酸ニ無水物(dianhydride)とジアミンの反応、通常は等モル量反応によって形成され、ポリ(アミド酸)の中間体を形成し、次に、この中間体に環化脱水(cyclodehydration)反応(化学的もしくは熱的反応)を行い、ポリイミドが形成される。ポリイミドは、また、イソキノリンが触媒量存在するm−クレゾール中で酸ニ無水物(好ましくは芳香族)とジアミン(好ましくは、パラまたはメタ結合、および芳香族)を加熱するというワンステッププロセスを介して直接形成することもできる。
【0026】
適切なジアミンとしては、4、4’−オキシジアニリン、4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、3、3’−ジアミノジフェニルスルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−スルホン、2、2−ビス[4−(3−アミノフェノシキ)フェニル]−スルホン、および9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオリンなどがある。硫黄や燐などの大型の分極可能な原子を組み込んだ他のジアミン、またはスルホニル、ホスホラニル、カルバゾリルなどの官能基もモノマーとして用いることができる。酸二無水物は、好ましくはバックボーン(4、4’ビスフェノールA酸ニ無水物など)におけるアリールエーテルサブ構造である。
【0027】
ポリアミドの合成方法は、好ましくは、先ず、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジグリム、N−メチルピロリドン(NMP)、またはこれらの好適な混合物などの溶剤中で、ポリ(アミド酸)を生成する。次に、トルエン、またはO−ジクロロベンゼンなどの共沸溶剤を用いて溶剤中で熱イミド化を施し、生成された水を蒸留する。溶剤のポリマー化およびイミド化は、mクレゾールおよび触媒量のイソキノリンを用い、200℃へ加熱するというワンステップ法を用いて行ってもよい。形成されたポリイミドを、次に、メタノールなどの好適な非溶剤に沈殿させて精製し、次に真空炉内で乾燥し残った溶剤を除去する。あるいは、ピリジンまたはトリエチルアミンなどの多量の第3アミン、および無水酢酸を用いる溶液化学イミド化を用いてポリ(アミド酸)溶液からポリイミドを作製してもよい。また、その他のポリイミド合成方法、例えば、ポリ(エステル−酸)中間体(Arch Micro社のDurimide製品情報)を利用する方法なども、これらの高屈折率ポリマーの作製に適用してもよい。
【実施例】
【0028】
以下の実施例において、本発明に係る好適な方法を記載する。なお、これらの実施例は説明のために示されたものであり、本発明の全体の範囲を限定するものではない。
【0029】
(実施例1)
高屈折率ポリ(エーテルイミドスルホン)組成物
この手順では、20.77g(0.04803モル)のビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]スルホン(ChrisKev社から入手のBAPS)を、窒素入口がある添加漏斗と、機械的撹拌器と、窒素出口のついた濃縮器と、温度探針とを備えた500mL、四口フラスコに投入した。窒素ガスをこのシステム内を通過させ、合成の間、システムを窒素下に保った。102.53gのジメチルアセトアミド(Aldrich社から入手のDMAc)を加え、撹拌することにより、BAPSを溶解した。別のフラスコ内に、25.00g(0.04803モル)のビスフェノール A 酸ニ無水物(bisphenol A dianhydride (BPADA) ChrisKev社から入手)を投入し、120.13gのDMAcを加え、撹拌することにより、溶解した。BPADA溶液を、添加漏斗に移し、撹拌中のBAPS溶液にゆっくり添加した。添加を終了した後、38.12gより多くのDMAcを加え、全体の固体レベルを14.93%にした。その結果できた溶液を室温で24時間撹拌した。
【0030】
次に、50mLのトルエン(Aldrich社から入手)を、粘着性の黄色の溶液に加え、ディーンスターク(Dean−Stark)管をフラスコに取り付けた。溶液の温度を、緩やかに160℃まで上げ、そこで24時間維持した。その結果得られた溶液を室温まで冷却し、600mLの撹拌メタノール(stirring methanol)(Spectrum社から入手)中に沈殿させ、白色、線状の沈殿物を得た。追加の100mLのメタノールで沈殿物を洗浄し、80℃の真空炉で24時間乾燥した。
【0031】
得られたポリイミドの分子量は、76,300ダルトンであった。この材料の7.42μmの膜の透過率は、400〜700nmのときに86%〜100%であった。屈折率は、可視領域で1.64〜1.74であった。
【0032】
(実施例2)
高屈折率ポリ(エーテルイミド)組成物
この実施例では、16.74g(0.04803モル)の9,9−ジフェニルアミノフルオレン(FDA、Aldrich社から入手)を窒素入口がある添加漏斗と、機械的撹拌器と、窒素出口のついた濃縮器と、温度探針とを備えた500mL、四口フラスコに投入した。窒素ガスをこのシステム内を通過させ、合成の間、システムを窒素下に保った。112.28gのN−メチルピロリドン(NMP、Aldrich社から入手)を加え、撹拌することにより、FDAを溶解した。別のフラスコに、25.00g(0.04803モル)のBPADAを投入し、125.19gのNMPを加え、撹拌することにより、溶解した。次にBPADA溶液を、添加漏斗に移し、撹拌FDA溶液にゆっくり添加した。その結果できた溶液を室温で、24時間撹拌し、その後、粘着性の明るい黄色の溶液に70mLのトルエンを加え、ディーンスターク管をフラスコに取り付けた。溶液の温度を緩やかに170℃まで上昇させ、その温度で24時間維持した。その結果できた溶液を室温まで冷却し、600mLの撹拌メタノール中に沈殿させ、白色の線状沈殿物を得た。追加の100mLのメタノールを用いて沈殿物を洗浄し、80°Cの真空炉で24時間乾燥した。
【0033】
得られたポリイミドの分子量は69,500ダルトンであった。分析により、屈折率は可視領域で1.68〜1.78の範囲であった。
【0034】
(実施例3)
混合ジアミン ポリ(エーテルイミドスルホン)
この手順では、2.63g(0.0131モル)の4、4’オキシジアニリン(4、4’−ODA、ChrisKev社から入手)を、添加漏斗と、窒素気泡管のある濃縮器と、磁性撹拌棒とを備えた250−mL、2口フラスコの45gのNMP中に溶解した。次に、この溶液中に5.69g(0.0132モル)のBAPSを加え、その結果できた混合液を撹拌することにより、溶解した。この手順では、引き続き、13.70gのBPADAを75.54gのNMP中に溶解し、この溶液を窒素下で撹拌されたジアミン溶液に加えた。24時間撹拌を継続した。ディーンスタークトラップをフラスコに取り付け、25mLのトルエンをこの溶液に加えた。温度を緩やかに170℃まで上昇させ、2時間後に、25mLのトルエンを加えた。温度を、170℃に24間維持し、その後、フラスコを室温まで冷却させた。この溶液を500mLの撹拌メタノール(Spectrum社製)中に沈殿させ、そして、50℃の真空炉内で一晩乾燥させた。
【0035】
(実施例4)
スピンコート適用方法
実施例1で作製したポリイミド(BPADA/BAPS)をシクロペンタノン中に溶解し、16%(w/w)溶液を生成した。この溶液を0.45ミクロンのフィルタでろ過し、瓶に詰めた。4インチのシリコンウエファを、9:1のプロピレン グリコール メチルエ−テル/水(w/w)中で、0.5%(w/w)溶液のN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン(Gelest社から入手)を用いて処理し、2,000rpmで60秒間スピンコートし、112℃のホットプレートで、60秒間焼成した。使い捨てピペットを用いて、およそ2mLのBPADA/BAPS溶液を採り、前処理を施したシリコンウエファに適用した。溶液を、ウエファに向けて、1,000rpm(ランプ比:500rpm/s)で10秒間スピンさせた。10秒間維持した後、1,000rpm(ランプ比1,000rpm/s)で80秒間スピンさせた。ウエファをその後、100°Cで90間秒焼成し、205℃で90秒間焼成した。その結果、KLA Tencor社の側面計で計測したコーティングの厚さは、8.168μmであった。
【0036】
(実施例5)
屈折率測定
実施例1〜3のポリイミドコーティングは、実施例4で記載した手順と同様の手順でシリコンウエファの上にスピンコートされた。スピン速度は、厚さが1μm未満になるように調整された。可変角分光偏光解析器(J.A.Woollam社製)を用いて、波長が633nmのときの、屈折率値を得た。(図1参照)。
【0037】
(実施例6)
紫外・可視・近赤外(UV−vis−NIR) 透過率スペクトル
実施例1〜3のポリイミドコーティングは、3インチの水晶盤(quartz disks)の上に、実施例4に記載の手順と同様の手順でスピンコートされた。スピン速度は、厚さが5μm以上になるように調整された。UV−vis−NIR分光光度計(Varian社製)を用いて、散光または反射損失の補正なしに、透過スペクトルを得た(図2参照)。
【0038】
(実施例7)
高屈折率ポリ(エーテルイミドスルホン)組成物
ビス[4−(3−アミノフェノシキ)フェノキシ]スルホン(15.00g(0.03468モル)、m−BAPS、ChrisKev社から入手)を窒素入口のある添加漏斗と、磁気撹拌棒と、窒素出口のある濃縮器と、温度探針とを備えた250−mLの3口フラスコ内に投入した。窒素ガスをシステムに通し、合成の間、システムを窒素下に維持した。93.50gのDMAcを加えて、撹拌することにより、BAPSを溶解した。別のビーカーで、18.05g(0.03468モル)のBPADAを、93.50gのDMAcを加えて、パラフィルムできっちり蓋をしながら、撹拌することにより、溶解した。
【0039】
BPADA溶液を、添加漏斗に移し、10分間をかけて、ゆっくりと撹拌m−BAPS溶液に加えた。その結果できた溶液を室温で、24時間撹拌した。ディーンスターク管をフラスコに取り付け、溶液の温度を緩やかに80℃まで上昇させた。次に、50mLのトルエンを、この粘着性の明るい黄色の溶液に加えた。溶液の温度を緩やかに160℃まで上昇させ、そこで35時間維持した。その結果できた溶液を室温まで冷却させ、600mLの撹拌メタノールに沈殿させ、白色、ペレット状の固形物を得た。これらの固形物を追加の100mLのメタノールで洗浄し、50℃の真空炉で16時間乾燥させ、黄色の固形物を得た。
【0040】
得られたポリ(エーテルイミドスルホン)は、十分な量のシクロペンタノンに溶解し、20重量%固体の溶液を得た。この材料の8.15μmフィルムの透過率は、400〜700nmの波長において、91.8〜100%であった。屈折率は、可視領域で、1.67〜1.77の範囲であった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る3種類のポリイミド組成物(実施例1〜3)について波長を変化させた時の各々の屈折率を示すグラフである。
【図2】本発明に係る3種類のポリイミド組成物(実施例1〜3)について波長を変化させた時の各々の透過率曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子光学素子の製造において有用である組成物であって、該組成物は溶剤系に分散したポリマーを含有し、該ポリマーが、
【化1】

および
【化2】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有する改善がなされた、電子光学素子の製造において有用である組成物であって、
式中、各Xは、分極(偏光)可能な原子、−SO−、および
【化3】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)、からなる群からそれぞれ独立して選ばれる、
各Yは、分極可能な原子;および、スルホニル、スルホニルビス(4、4´−フェニレンオキシ)、アルキルホスフィノ、アリールホスフィノ、イミダゾリル、ベンゾイル、フルオレニル、カルバゾリル、ナフチル、アリールホスホリル、アルキルホスホリル、および
【化4】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)、からなる群から選ばれる基;からなる群からそれぞれ独立して選ばれる、電子光学素子の製造において有用である組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量を100重量%としたときに、前記溶剤系がおよそ50%以上のレベルで前記組成物中に存在する、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記溶剤系は、テトラヒドロフルフリル アルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、モノおよびジクロロベンゼン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤を含有する請求項1の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーは、
【化5】

および
【化6】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有する請求項1の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーの重量平均分子量が、およそ30,000〜180,000ダルトンである、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、更に、界面活性剤、接着促進剤、金属酸化物ナノ微粒子、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含有する請求項1の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%とした時に、ポリマーをおよそ1〜40重量%含有する、請求項1の組成物。
【請求項8】
電子光学用途に用いる前駆体構造を形成する方法であって、前記方法は、
表面を有する基板を用意する工程と、
前記基板に高屈折率層を適用する工程とを有し、前記高屈折率層は、溶剤系に分散されたポリマーを含有する組成物から形成され、前記ポリマーが、
【化7】

および
【化8】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有し、
式中、各Xは、分極可能な原子、−SO−、および
【化9】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)
からなる群からそれぞれ独立して選ばれ、
各Yは、分極可能な原子;および、スルホニル、スルホニルビス(4、4´−フェニレンオキシ)、アルキルホスフィノ、アリールホスフィノ、イミダゾリル、ベンゾイル、フルオレニル、カルバゾリル、ナフチル、アリールホスホリル、アルキルホスホリル、および
【化10】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)
からなる群から選ばれる基;からなる群からそれぞれ独立して選ばれる、方法。
【請求項9】
前記組成物の総重量を100重量%としたときに、前記溶剤系がおよそ50%以上のレベルで前記組成物中に存在する、請求項8の方法。
【請求項10】
前記溶剤系は、テトラヒドロフルフリル アルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、モノおよびジクロロベンゼン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤を含有する、請求項8の方法。
【請求項11】
前記ポリマーは、
【化11】

および
【化12】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有する、請求項8の方法。
【請求項12】
前記ポリマーの重量平均分子量は、およそ30,000〜180,000ダルトンである、請求項8の方法。
【請求項13】
前記組成物は、更に、界面活性剤、接着促進剤、金属酸化物ナノ微粒子、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる成分を含有する、請求項8の方法。
【請求項14】
前記組成物は、該組成物の総重量を100重量%とした時に、ポリマーをおよそ1〜40重量%含有する、請求項8の方法。
【請求項15】
前記高屈折率層を適用する工程の前に、前記基板表面に中間層を適用する工程を更に有する、請求項8の方法。
【請求項16】
前記中間層は接着促進層である、請求項15の方法。
【請求項17】
前記高屈折率層の上に、保護層を適用する工程を更に有する、請求項8の方法。
【請求項18】
前記高屈折率層を焼成する工程を更に有する、請求項8の方法。
【請求項19】
前記焼成工程は、前記高屈折率層をおよそ60〜250℃の温度におよそ2〜120分間曝すことを有する、請求項18の方法。
【請求項20】
前記焼成工程は、本質的に架橋結合していない高屈折率層を生成する、請求項18の方法。
【請求項21】
前記焼成された高屈折率層の厚さは、およそ1〜30μmである、請求項18の方法。
【請求項22】
波長がおよそ700〜1700nm、厚さがおよそ5μmのときに、前記焼成された高屈折率層の屈折率はおよそ1.50以上である、請求項18の方法。
【請求項23】
波長がおよそ400〜700nm、厚さがおよそ5μmのときに、前記焼成された高屈折率層の透過率はおよそ65%以上である、請求項18の方法。
【請求項24】
前記焼成された高屈折率層が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、γ―ブチロラクトン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤中に、およそ10重量%以上可溶である、請求項18の方法。
【請求項25】
およそ400℃で、およそ2分間加熱された場合に、前記焼成された高屈折率層が示す重量損は、およそ10重量%未満である、請求項18の方法。
【請求項26】
前記焼成された高屈折率層は、窒素雰囲気で加熱された場合の重量%損と、空気中で加熱された場合の重量%損とを有し、前記空気中の重量%損は前記窒素中の重量%損のおよそ5%以内である、請求項18の方法。
【請求項27】
前記基板は、ガラス基板、水晶基板、シリコン基板、サファイヤ基板、ガリウム砒素基板、シリコンカーバイド基板、およびプラスチック基板からなる群から選ばれる、請求項8の方法。
【請求項28】
前記適用工程は、前記高屈折率層を前記基板表面にスピンコートすることを含む、請求項8の方法。
【請求項29】
表面を有する基板と、前記表面に隣接する高屈折率層との組合せであって、前記層は
【化13】

および
【化14】

からなる群から選ばれる式を有するポリマーを含有し、
式中、各Xは、分極可能な原子、−SO−、および
【化15】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)
からなる群からそれぞれ独立して選ばれ、
各Yは、分極可能な原子;および、スルホニル、スルホニルビス(4、4´−フェニレンオキシ)、アルキルホスフィノ、アリールホスフィノ、イミダゾリル、ベンゾイル、フルオレニル、カルバゾリル、ナフチル、アリールホスホリル、アルキルホスホリル、および
【化16】

(式中、各RおよびZは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、およびハロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選ばれる)
からなる群から選ばれる基;からなる群からそれぞれ独立して選ばれる、組合せ。
【請求項30】
前記ポリマーは、
【化17】

および
【化18】

からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを繰り返し単位として有する、請求項29の組合せ。
【請求項31】
前記ポリマーの重量平均分子量は、およそ30,000〜180,000ダルトンである、請求項29の組合せ。
【請求項32】
前記層は、更に、界面活性剤、接着促進剤、および金属酸化物ナノ微粒子からなる群から選ばれる成分を含有する、請求項29の組合せ。
【請求項33】
前記基板表面と前記高屈折率層との間に、中間層を更に有する、請求項29の組合せ。
【請求項34】
前記中間層は接着促進層である、請求項33の組合せ。
【請求項35】
前記高屈折率層は、本質的に架橋結合していない、請求項29の組合せ。
【請求項36】
前記高屈折率層の厚さは、およそ1〜30μmである、請求項29の組合せ。
【請求項37】
波長がおよそ700〜1700nm、厚さがおよそ5μmのときに、前記高屈折率層の屈折率はおよそ1.50以上である、請求項29の組合せ。
【請求項38】
波長がおよそ400〜700nm、厚さがおよそ5μmのときに、前記高屈折率層の透過率はおよそ65%以上である、請求項29の組合せ。
【請求項39】
前記高屈折率層が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、γ―ブチロラクトン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる溶剤中に、およそ10重量%以上可溶である、請求項29の組合せ。
【請求項40】
およそ400°Cで、およそ2分間加熱された場合に、前記高屈折率層が示す重量損は、およそ10%未満である、請求項29の組合せ。
【請求項41】
前記高屈折率層は、窒素雰囲気で加熱された場合の重量%損と、空気中で加熱された場合の重量%損とを有し、前記空気中の重量%損は前記窒素中の重量%損のおよそ5%以内である、請求項29の組合せ。
【請求項42】
前記基板は、ガラス基板、水晶基板、シリコン基板、サファイヤ基板、ガリウム砒素基板、シリコンカーバイド基板、およびプラスチック基板からなる群から選ばれる、請求項29の組合せ。
【請求項43】
前記層はおよそ1重量%未満の溶剤を含有する、請求項29の組合せ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−505973(P2007−505973A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526946(P2006−526946)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/029564
【国際公開番号】WO2005/045475
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(500499508)ブルーワー サイエンス アイ エヌ シー. (45)
【Fターム(参考)】