説明

高所作業車の操作装置

【課題】全操作モードに単一の操作レバーで対応可能とした高い操作性をもつ高所作業車の操作装置を提供する。
【解決手段】三つの異なる動作軸X,Y,Z毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する三軸操作レバーを備え、該三軸操作レバーの各動作軸X,Y,Z上における各操作量に基づいて伸縮バルブの駆動量「SL」と上記起伏バルブの駆動量「Sθ」と上記旋回バルブの駆動量「Sφ」とを選択的に算出することで個別操作モードと水平操作モードと垂直操作モードの各操作モードに対応することができ、これによって、操作が格段に簡便化され高い操作性をもつ高所作業車の操作装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高所作業車の操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、通常、車両上に搭載した旋回台に、その先端部にバケットを備えた伸縮ブームを起伏自在に取り付けて構成され、上記伸縮ブームの旋回動と伸縮動と起伏動とによって上記バケットを任意の位置に移動させて所要の高所作業に使用される。また、この場合、作業性を高める観点から、上記バケットは上記伸縮ブームの先端部においてスイング動自在とされるのが通例である。
【0003】
そして、かかる高所作業車の作業時動作は、旋回用、伸縮用、起伏用及びバケットスイング用の各油圧アクチュエータを適宜作動させることで実現されるものであり、その操作モードとしては、上記各油圧アクチュエータをそれぞれ個別に操作して上記バケットを任意位置に移動させる「個別操作モード」の外に、自動操作モードとして、上記各油圧アクチュエータを適宜連動して作動させて上記バケットを水平面に沿って移動させる「水平操作モード」と上記バケットを垂直方向に移動させる「垂直操作モード」とが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる高所作業車においては、上記各操作モードを実現するための操作レバーを備えるが、従来は一つの動作軸だけを使用する操作レバーが一般的であり、従って、この場合には、上記各操作モードに対応させて個別操作用操作レバー(伸縮ブームの旋回動と伸縮動と起伏動とをそれぞれ行う三つの操作レバーで構成される)と水平操作用レバーと垂直操作用レバーとを備えていた。
【0005】
しかし、このような一つの動作軸のみを使用する構成の操作レバーのみを備えた操作装置においては、操作の煩雑さから操作性が低劣であるという問題があり、このため、より簡便な操作を可能とする操作装置の開発が要請されていた。また、操作レバーの必要数が多い分だけコストアップになるという問題もあった。
【0006】
かかる要請に応えるものとして、次述するように、二つの動作軸を使用する構成の操作レバーを備えた操作装置が提案されている。
【0007】
図7には、かかる2軸使用の操作レバーを備えた高所作業車の操作装置の一例を示したものである。即ち、この操作装置は、同図(イ)に示すように左右方向の1軸のみを使用したブーム旋回専用の操作レバー41と、同図(ロ)に示すように左右方向と前後方向の2軸を使用して個別操作モードにおける伸縮操作と水平操作モードにおける水平操作とを行う操作レバー42と、同図(ハ)に示すように前後方向の1軸を使用して個別操作における起伏操作と垂直操作モードにおける垂直操作とを選択的に行う操作レバー43(尚、この操作レバー43は、前後方向と左右方向の2軸を使用する構成とすることも可能である)と、同図(ニ)に示すように左右方向の1軸のみを使用したバケットスイング専用の操作レバー44を備えて構成される。
【0008】
しかしながら、かかる2軸使用の操作レバーで構成したものにおいても、操作レバーの数は依然として多いため、操作性という点においては未だ十分とは言えず、操作の更なる簡便化が要請されるところである。
【0009】
そこで本願発明は、単一の操作レバーによって個別操作モードと水平操作モードと垂直操作モードの各操作を実現した操作性の極めて良好な高所作業車の操作装置を提供することを主たる目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明では、車両1上に起伏動及び旋回自在に取り付けた伸縮ブーム3の先端部にバケット4を装着して構成され、且つ上記伸縮ブーム3の伸縮動はこれを伸縮バルブ22により伸縮用油圧アクチュエータ26の作動を制御することで、上記伸縮ブーム3の起伏動はこれを起伏バルブ23により起伏用油圧アクチュエータ27の作動を制御することで、上記伸縮ブーム3の旋回動はこれを旋回バルブ24により旋回用油圧アクチュエータ28の作動を制御することでそれぞれ実現するようにした高所作業車の操作装置において、三つの異なる動作軸X,Y,Zを有しオペレータの操作によって該各動作軸X,Y,Z毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する単一の三軸操作レバー20を備え、上記各アクチュエータ26,27,28を個別に動作させて上記バケット4を任意位置に移動させる個別操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Z上における各操作量に基づいて、例えばX軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」を、Y軸上の操作量に基づいて上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」を、さらにZ軸の操作量に基づいて上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」を、それぞれ算出し、上記各アクチュエータ26,27,28を連動動作させて上記バケット4を水平面内において移動させる水平操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうちの少なくともいずれか二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出し、上記各アクチュエータ26,27,28のうち、上記伸縮用油圧アクチュエータ26と上記起伏用油圧アクチュエータ27とを連動動作させて上記バケット4を垂直方向に移動させる垂直操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうちの上記水平操作モード時の二つの動作軸の少なくともいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出することを特徴としている。
【0012】
なお、この場合において、上記バケット4の垂直移動に使用しない二つの動作軸のいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」を算出するように構成することも可能である。
【0013】
また、上記記載の高所作業車の操作装置においては、上記個別操作モード時に上記伸縮ブーム3の旋回動に使用される軸と、上記垂直操作モード時に上記伸縮ブーム3の旋回動に使用される軸を同一の動作軸に設定することも可能である。
【0014】
次に、本願の第2の発明では、車両1上に起伏動及び旋回自在に取り付けた伸縮ブーム3の先端部にバケット4を装着して構成され、且つ上記伸縮ブーム3の伸縮動はこれを伸縮バルブ22により伸縮用油圧アクチュエータ26の作動を制御することで、上記伸縮ブーム3の起伏動はこれを起伏バルブ23により起伏用油圧アクチュエータ27の作動を制御することで、上記伸縮ブーム3の旋回動はこれを旋回バルブ24により旋回用油圧アクチュエータ28の作動を制御することで、それぞれ実現するようにした高所作業車の操作装置において、三つの異なる動作軸X,Y,Zを有しオペレータの操作によって該各動作軸X,Y,Z毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する単一の三軸操作レバー20を備え、その際、前記単一の三軸操作レバー20は、三つの異なる動作軸X,Y,Zの内二つの動作軸X,Yを共に傾倒操作される動作軸X、動作軸Yとし残りの動作軸Zを回動操作される動作軸Zで構成し、上記各アクチュエータ26,27,28を個別に動作させて上記バケット4を任意位置に移動させる個別操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうち、共に傾倒操作される動作軸Xと動作軸Yの二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出し回動操作される動作軸Zの軸上における操作量に基づいて上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」を算出し、上記各アクチュエータ26,27,28を連動動作させて上記バケット4を水平面内において移動させる水平操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうち、共に傾倒操作される動作軸Xと動作軸Yの二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出し、上記各アクチュエータ26,27,28のうち、上記伸縮用油圧アクチュエータ26と上記起伏用油圧アクチュエータ27とを連動動作させて上記バケット4を垂直方向に移動させる垂直操作モード時には、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうち、共に傾倒操作される動作軸Xと動作軸Yの少なくともいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出するように構成したことを特徴としている。その際、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうち、回動操作される動作軸Zの軸上における操作量に基づいて上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」を算出するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、三つの異なる動作軸X,Y,Zを有しオペレータの操作によって該各動作軸X,Y,Z毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する単一の三軸操作レバー20の該各動作軸X,Y,Z上における各操作量に基づいて伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出することで個別操作モードが実現される一方、上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうちの少なくともいずれか二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出することで水平操作モードが実現され、さらに上記三軸操作レバー20の上記各動作軸X,Y,Zのうちの少なくともいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ22の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出することで垂直操作モードが実現される、即ち、単一の三軸操作レバー20の操作のみによって高所作業車の全操作モードに対応することができるものであり、従って、従来のように複数本の操作レバーを備えこれらを選択的にあるいは同時に操作するような場合に比して、オペレータによる操作が格段に簡便化され、より良好な操作性が確保されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明にかかる操作装置を備えた高所作業車の斜視図である。
【図2】図1に示した高所作業車の要部平面図である。
【図3】図1の高所作業車における上部操作手段部分の構造例を示す斜視図である。
【図4】図3に示した三軸操作レバーの操作形態説明図である。
【図5】本願発明にかかる高所作業車の操作装置の機能ブロック図である。
【図6】本願発明にかかる高所作業車の操作装置の制御フローチャート図である。
【図7】従来の操作装置における操作レバーの操作形態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本願発明にかかる操作装置を備えた高所作業車Zを示している。この高所作業車Zは、車両1上に搭載された旋回台2に伸縮ブーム3を起伏自在に取り付けるとともに、該伸縮ブーム3の先端部にバケット4を装着して構成されている。そして、上記伸縮ブーム3は、内蔵配置された伸縮用の油圧シリンダ26(図5を参照。特許請求の範囲中の「伸縮用油圧アクチュエータ」に該当する)によって伸縮駆動されるとともに、上記旋回台2との間に起伏シリンダ27(図5を参照。特許請求の範囲中の「起伏用油圧アクチュエータ」に該当する)によって起伏駆動され、さらに上記旋回台2側に配置した旋回モータ28(図5を参照。特許請求の範囲中の「旋回用油圧アクチュエータ」に該当する)によって該旋回台2と一体的に旋回駆動される。また、上記バケット4は、バケットスイングモータ29によってスイング駆動される。
【0018】
ところで、これら各アクチュエータの作動による上記バケット4の移動制御は、図5に示すように、次述の上部操作手段11あるいは旋回台側操作手段12の操作に基づいて、次述の制御手段17によって行われる。即ち、上記制御手段17には、ブーム長さ検出手段13とブーム起伏角検出手段14及び旋回角検出手段15とによってそれぞれ検出される上記伸縮ブーム3の伸縮長さと起伏角と旋回角にそれぞれ対応する各信号と、バケットスイング角検出手段16によって検出される上記バケット4のスイング角に対応する信号とが制御情報として入力されるとともに、上部操作手段11あるいは旋回台側操作手段12からは操作モードに対応した操作信号が入力される。そして、この制御手段17においては、これら各入力信号に基づいて、各操作モード毎に、伸縮バルブ22と起伏バルブ23と旋回バルブ24とバケットスイングバルブ25の各駆動量をそれぞれ算出し、該各バルブ22,23,24,25による油圧制御を介して上記伸縮シリンダ26と起伏シリンダ27と旋回モータ28及びバケットスイングモータ29をそれぞれ適宜作動させて上記バケット4を設定された操作モードの下で所要位置に的確に移動させるものである。
【0019】
上記上部操作手段11と旋回台側操作手段12は、適宜選択使用されるものであって、その構成は略同一であるので、ここでは、図3に示す上記上部操作手段11の構成を例にとって説明する。
【0020】
上記上部操作手段11は、本願発明の要旨たる三軸操作レバー20と操作内容切替スイッチ21とを備えている。
【0021】
上記三軸操作レバー20は、動作軸として三つの軸X,Y,Zを使用するもので、X軸は三軸操作レバー20の左右傾倒方向の軸であり、Y軸は三軸操作レバー20の前後傾倒方向の軸であり、Z軸は三軸操作レバー20の回動方向の軸であり、これら三軸を適宜使い分けることで、上述の「個別操作モード」と「水平操作モード」と「垂直操作モード」とを単一の上記三軸操作レバー20によって実現するものである。この三軸操作レバー20の各軸X,Y,Zのそれぞれにおける操作量は、該各軸毎に設けたポテンショメータ(図示省略)によって検出され、この検出された操作量信号(以下、「Pot値」と略記する)は上記上部操作手段11からの操作信号の一つとして上記制御手段17に入力される。
【0022】
上記操作内容切替スイッチ21は、上記三軸操作レバー20の操作に応じて上記各ポテンショメータから出力される操作量信号を、上記各操作モードのうちのいずれの操作モードにおいて使用するのかを選択するためのものであって、この実施形態においてはこれをモーメンタリタイプのスイッチで構成している。従って、上記操作内容切替スイッチ21は、これが押操作される毎に、「個別操作モード」→「水平操作モード」→「垂直操作モード」と順次操作モードが繰り返して切り替わるとともに、電源投入時には強制的に「個別操作モード」に設定される。このため、上記操作内容切替スイッチ21には、「個別操作モード」を表示する表示ランプ31と、「水平操作モード」を表示する表示ランプ32と「垂直操作モード」を表示する表示ランプ33とがそれぞれ付設され、オペレータはこれら各表示ランプ31〜33の点灯の有無を確認することで容易且つ確実に現在設定されている操作モードを知ることができる。
【0023】
尚、上記上部操作手段11及び旋回台側操作手段12には、上記バケット4を上記三軸操作レバー20によらずに個別に操作するためのスイング操作レバー(図示省略)が備えられている。
【0024】
ここで、上記三軸操作レバー20の操作形態を図4に基づいて説明する。
先ず、この実施形態の操作装置においては、上述のように、操作モードとして、「個別操作モード」と「水平操作モード」及び「垂直操作モード」の三つのモードを設定している。
【0025】
ここで、「個別操作モード」は、上記各油圧アクチュエータ26〜28を個別に、あるいは同時に作動させて上記バケット4の移動を行うモードである。尚、この場合、上記バケット4は、上記スイング操作レバーの操作によって上記バケットスイングモータ29を作動させることで、上記伸縮ブーム3の動作とは別個にスイング動させることができる。
【0026】
「水平操作モード」は、上記各油圧アクチュエータ26〜29を連動して作動させ、上記バケット4を水平面に沿って移動させるモードである。
【0027】
「垂直操作モード」は、上記各油圧アクチュエータ26〜29のうち、伸縮シリンダ26と起伏シリンダ27と旋回モータ28を連動して作動させ、上記バケット4を垂直方向(鉛直方向)に沿って昇降移動させるとともに必要に応じてこれを旋回させるモードである。
【0028】
そして、この実施形態においては、これら三つの操作モードを単一の三軸操作レバー20によって実現するために、上記操作内容切替スイッチ21の切り替えによって、上記三軸操作レバー20の三つの軸X,Y,Zの各操作量、即ち、「Pot値」を、上記各操作モードにおける各操作に対応した信号として利用できるようにしたものである。これを図4に基づいて具体的に説明する。
【0029】
図4(イ)は、「個別操作モード」時における上記三軸操作レバー20の操作形態であって、上記三軸操作レバー20の三つの軸X,Y,Zを使用し、X軸上における操作量を伸縮ブーム3の伸長動と縮小動に、Y軸上における操作量を伸縮ブーム3の起仰動と倒伏動に、さらにZ軸上における操作量を伸縮ブーム3の旋回動に、それぞれ使用するようになっている。
【0030】
図4(ロ)は、「水平操作モード」時における上記三軸操作レバー20の操作形態であって、上記三軸操作レバー20の三つの軸X,Y,Zのうち、X軸とY軸の二つの軸のみを使用し、Z軸はこれを無効としている。そして、この「水平操作モード」においては、X軸上及びY軸上のそれぞれにおける操作量を共に水平移動に使用するようにしている。従って、同図に実線矢印で示す方向への操作に基づくX軸及びY軸方向への移動のみならず、同図に破線矢印で示す斜め方向への操作に基づく斜め移動も可能とされる。
【0031】
図4(ハ)は、「垂直操作モード」時における上記三軸操作レバー20の操作形態であって、上記三軸操作レバー20の三つの軸X,Y,Zのうち、X軸とZ軸の二つの軸のみを使用し、Y軸はこれを無効としている。そして、この「垂直操作モード」においては、X軸上における操作量を垂直移動の上昇動と下降動とに使用し、またZ軸上における操作量を伸縮ブーム3の旋回動に使用するようにしている。従って、この実施形態のものにおいては、Z軸が使用されずにX軸のみが使用される操作形態においては上記バケット4の単なる昇降動のみが実現され、X軸と共にZ軸が使用されると昇降動に旋回動が加わった動作が実現される。
【0032】
尚、次述するように、この実施形態の操作装置においては、その「水平操作モード」での動作時に上記バケット4のスイング動をも自動的に行い、該バケット4の水平移動に拘わらずその平面上における姿勢を一定に維持するようになっている。即ち、図2に示すように、上記バケット4の支点Pを通る直交する二方向に、上記三軸操作レバー20の動作軸に対応させてX0軸とY0軸とを設定し、上記伸縮ブーム3の中心線L0と上記X0軸との夾角を上記バケット4のスイング角「ψ」とし、「水平操作モード」での動作時には上記バケット4の各軸X0,Y0が一定に維持されるように上記スイング角「ψ」を制御するようになっている。
【0033】
続いて、上記三軸操作レバー20の操作に基づいて上記制御手段17により行われる上記バケット4の移動制御の実際を図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0034】
制御開始後、先ず、ステップS1において、上記三軸操作レバー20の各軸X,Y,Zの操作量、即ち、「Pot値」と、上記バケット4のスイング角と上記操作内容切替スイッチ21の信号(即ち、現在の設定操作モード)をそれぞれ読み込む。
【0035】
次に、ステップS2において、上記操作内容切替スイッチ21による設定操作モードが「水平操作モード」であるか否かを判断する。ここで、「水平操作モード」ではないと判断された場合には、さらにステップS3において現在の設定操作モードは「垂直操作モード」であるか否かを判定する。従って、ステップS2とステップS3の双方において「NO」と判定された場合は「個別操作モード」設定時であり、ステップS2において「YES」と判定された場合は「水平操作モード」設定時であり、ステップS2で「NO」と判定され且つステップS3で「YES」と判定された場合は「垂直操作モード」設定時である。以下、これら各操作モード毎に上記バケット4の移動制御を説明する。
【0036】
「個別操作モード」設定時の制御
「個別操作モード」設定時には、ステップS4において、上記三軸操作レバー20の操作に伴う上記各軸X,Y,Zのそれぞれにおける「Pot値」を、それぞれ該各軸に対応する動作の操作量とする。即ち、「個別操作モード」においては、図4(イ)に示すように、X軸は伸縮動に、Y軸は起伏動に、Z軸は旋回動にそれぞれ対応するので、
X軸の「Pot値」を起伏操作量「A1」とし、この起伏操作量「A1」に基づいて起伏バルブ駆動量「Sθ」を算出し、
Y軸の「Pot値」を伸縮操作量「B1」とし、この伸縮操作量「B1」に基づいて伸縮バルブ駆動量「SL」を算出し、
Z軸の「Pot値」を旋回操作量「C1」とし、この旋回操作量「C1」に基づいて旋回バルブ駆動量「Sφ」を算出する。
【0037】
しかる後、この実施形態においては上記各バルブ22〜25を電流比例弁で構成しているので、ステップS5においては、上記各バルブ駆動量「Sθ」,「SL」,「Sφ」に基づいて、該各バルブの駆動電流「Iθ」,「IL」,「Iφ」を求め、これを上記起伏,伸縮,旋回の各バルブ22〜24に供給し、上記伸縮シリンダ26と起伏シリンダ27と旋回モータ28をそれぞれ駆動させて上記バケット4を上記三軸操作レバー20によって指示された位置に移動させる。
【0038】
尚、この「個別操作モード」は、上記操作内容切替スイッチ21により「個別操作モード」が設定されている間は継続される。
【0039】
「水平操作モード」設定時における制御
「水平操作モード」設定時には、図4(ロ)に示すように、上記三軸操作レバー20の三つの動作軸X,Y,Zのうち、X軸とY軸とを使用するものであり、且つこれら両軸X,Yは共に水平動作に関与するものであるため、先ず、ステップS6において、X軸の「Pot値」を水平操作量「A2」、Y軸の「Pot値」を水平操作量「A3」とする一方、Z軸の「Pot値」はこれを無効とし、さらにバケット4のスイング角の「Pot値」をスイング角「ψ」とする。そして、これら各水平操作量「A2」,「A3」とスイング角「ψ」とに基づいて、上記バケット4を移動させる方向、即ち、水平操作方向「ω」と、その移動速度、即ち、水平操作速度「V」とを求める。
【0040】
尚、この水平操作方向「ω」と水平操作速度「V」の算出方法は、例えば特開平10−167697号に開示されるように従来公知であるので、ここでの説明は省略する。
【0041】
次に、ステップS7において、上記水平操作方向「ω」と水平操作速度「V」とに基づいて、起伏バルブ駆動量「Sθ」と伸縮バルブ駆動量「SL」と旋回バルブ駆動量「Sφ」及びバケットスイングバルブ駆動量「Sψ」をそれぞれ演算により求める。
【0042】
しかる後、ステップS5において、上記各バルブ駆動量「Sθ」,「SL」,「Sφ」,「Sψ」に基づいて、上記各バルブの駆動電流「Iθ」,「IL」,「Iφ」,「Iψ」を求め、これを該各バルブ22〜25に供給し、上記伸縮シリンダ26と起伏シリンダ27と旋回モータ28とバケットスイングモータ29をそれぞれ駆動し、上記バケット4を上記三軸操作レバー20によって指示された方向及び速度で水平移動させる。
【0043】
尚、この「水平操作モード」は、上記操作内容切替スイッチ21により「水平操作モード」が設定されている間は継続される。
【0044】
「垂直操作モード」設定時における制御
「垂直操作モード」設定時には、図4(ハ)に示すように、上記三軸操作レバー20の三つの動作軸X,Y,Zのうち、X軸とZ軸とを使用するものであるため、ステップS8において、先ず、Y軸の「Pot値」を無効とする一方、X軸の「Pot値」を垂直操作量「B2」、Z軸の「Pot値」を旋回操作量「C2」とする。
【0045】
そして、上記垂直操作量「B2」から上記伸縮ブーム3の起伏速度と伸縮速度とを演算し、これらに基づいて起伏バルブ駆動量「Sθ」と伸縮バルブ駆動量「SL」とを演算により求める。また、上記旋回操作量「C2」に基づいて旋回バルブ駆動量「Sφ」を演算による求める。
【0046】
しかる後、ステップS5において、上記各バルブ駆動量「Sθ」,「SL」,「Sφ」に基づいて、対応する各バルブの駆動電流「Iθ」,「IL」,「Iφ」を求め、これを該各バルブ22〜24に供給し、上記伸縮シリンダ26と起伏シリンダ27と旋回モータ28とをそれぞれ駆動し、上記バケット4を上記三軸操作レバー20によって指示された方向及び速度で垂直移動させる。
【0047】
尚、この「垂直操作モード」は、上記操作内容切替スイッチ21により「垂直操作モード」が設定されている間は継続される。
【0048】
以上に述べたように、この実施形態の高所作業車の操作装置によれば、単一の三軸操作レバー20の操作のみによって高所作業車Zの全操作モード、即ち、「個別操作モード」と「水平操作モード」と「垂直操作モード」に対応することができるものであり、例えば、従来のように複数本の操作レバーを備えこれらを選択的にあるいは同時に操作するような場合に比して、オペレータによる操作が格段に簡便化され、より良好な操作性が確保されるものである。
【0049】
その他
(1) 上記実施形態においては、上記三軸操作レバー20の三つの動作軸X,Y,Zを、左右動作と前後動作と回動動作にそれぞれ対応させた設定としているが、本願発明はこのような設定に限定されるものではなく、例えば、左右動作と前後動作と押引動作とに設定することも可能である。また、各軸X,Y,Zと各動作との対応関係も、上記実施形態に限定されることなく、任意に設定できるものである。
【0050】
(2) 上記実施形態においては、上記操作内容切替スイッチ21をモーメンタリタイプのスイッチで構成しているが、これに限定されるものではなく、例えばディテントタイプのスイッチを採用することもできるものである。
【0051】
(3) 上記実施形態においては、上記バケット4のスイング動を油圧式のバケットスイングモータ29で構成しているが、かかる構造に限定されるものではなく、例えばこれを電動機で駆動する構成を採用することも可能である。尚、この場合、「水平操作モード」時には、上記バケットスイングバルブ駆動量「Sψ」の算出に代えて、上記電動機への供給電流を直接算出することで、上記実施形態の場合と同様の作動が得られる。
【0052】
(4) 上記実施形態においては、上記伸縮ブーム3の起伏動と伸縮動と旋回動とを「垂直操作モード」での制御対象としているが、他の実施形態においては、起伏動と伸縮動のみを制御対象とすることも可能なことは勿論である。また、同様に、「水平操作モード」では上記バケット4のスイング動を制御対象の一つとしているが、他の実施形態においてはこのバケット4のスイング動を制御対象から外した構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1は車両、2は旋回台、3は伸縮ブーム、4はバケット、11は上部操作手段、12は旋回台側操作手段、13はブーム長さ検出手段、14はブーム起伏角検出手段、15は旋回角検出手段、16はバケットスイング角検出手段、17は制御手段、20は三軸操作レバー、21は操作内容切替スイッチ、22は伸縮バルブ、23は起伏バルブ、24は旋回バルブ、25はバケットスイングバルブ、26は伸縮シリンダ、27は起伏シリンダ、28は旋回モータ、29はバケットスイングモータ、31〜33は表示ランプ、Zは高所作業車である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)上に起伏動及び旋回自在に取り付けた伸縮ブーム(3)の先端部にバケット(4)を装着して構成され、且つ上記伸縮ブーム(3)の伸縮動はこれを伸縮バルブ(22)により伸縮用油圧アクチュエータ(26)の作動を制御することで、上記伸縮ブーム(3)の起伏動はこれを起伏バルブ(23)により起伏用油圧アクチュエータ(27)の作動を制御することで、上記伸縮ブーム(3)の旋回動はこれを旋回バルブ(24)により旋回用油圧アクチュエータ(28)の作動を制御することで、それぞれ実現するようにした高所作業車の操作装置であって、
三つの異なる動作軸(X),(Y),(Z)を有しオペレータの操作によって該各動作軸(X),(Y),(Z)毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する単一の三軸操作レバー(20)を備え、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)を個別に動作させて上記バケット(4)を任意位置に移動させる個別操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ(23)の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ(24)の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出し、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)を連動動作させて上記バケット(4)を水平面内において移動させる水平操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)のうちの少なくともいずれか二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ(23)の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ(24)の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出し、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)のうち、上記伸縮用油圧アクチュエータ(26)と上記起伏用油圧アクチュエータ(27)とを連動動作させて上記バケット(4)を垂直方向に移動させる垂直操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)のうちの上記水平操作モード時の二つの動作軸の少なくともいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ(23)の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出するように構成したことを特徴とする高所作業車の操作装置。
【請求項2】
車両(1)上に起伏動及び旋回自在に取り付けた伸縮ブーム(3)の先端部にバケット(4)を装着して構成され、且つ上記伸縮ブーム(3)の伸縮動はこれを伸縮バルブ(22)により伸縮用油圧アクチュエータ(26)の作動を制御することで、上記伸縮ブーム(3)の起伏動はこれを起伏バルブ(23)により起伏用油圧アクチュエータ(27)の作動を制御することで、上記伸縮ブーム(3)の旋回動はこれを旋回バルブ(24)により旋回用油圧アクチュエータ(28)の作動を制御することで、それぞれ実現するようにした高所作業車の操作装置であって、
三つの異なる動作軸(X),(Y),(Z)を有しオペレータの操作によって該各動作軸(X),(Y),(Z)毎にそれぞれ異なった操作信号を出力する単一の三軸操作レバー(20)を備え、
前記単一の三軸操作レバー(20)は、三つの異なる動作軸(X),(Y),(Z)の内二つの動作軸(X),(Y)を共に傾倒操作される動作軸(X)、動作軸(Y)とし残りの動作軸(Z)を回動操作される動作軸(Z)で構成し、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)を個別に動作させて上記バケット(4)を任意位置に移動させる個別操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)のうち、共に傾倒操作される動作軸(X)と動作軸(Y)の二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ23の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出し回動操作される動作軸(Z)の軸上における操作量に基づいて上記旋回バルブ24の駆動量「Sφ」を算出し、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)を連動動作させて上記バケット(4)を水平面内において移動させる水平操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)のうち、共に傾倒操作される動作軸(X)と動作軸(Y)の二つの軸上における各操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ(23)の駆動量「Sθ」と上記旋回バルブ(24)の駆動量「Sφ」とをそれぞれ算出し、
上記各アクチュエータ(26),(27),(28)のうち、上記伸縮用油圧アクチュエータ(26)と上記起伏用油圧アクチュエータ(27)とを連動動作させて上記バケット(4)を垂直方向に移動させる垂直操作モード時には、上記三軸操作レバー(20)の上記各動作軸(X),(Y),(Z)のうち、共に傾倒操作される動作軸(X)と動作軸(Y)の少なくともいずれか一つの軸上における操作量に基づいて上記伸縮バルブ(22)の駆動量「SL」と上記起伏バルブ(23)の駆動量「Sθ」とをそれぞれ算出するように構成したことを特徴とする高所作業車の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−150044(P2010−150044A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28375(P2010−28375)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【分割の表示】特願平11−153401の分割
【原出願日】平成11年6月1日(1999.6.1)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】