説明

高温複合材料テープ及びその製造方法

プリント基板の生産に用いられる複合材料テープの製造方法を提供する。方法は、紙基材層の第1表面上に離型層を提供する工程と;紙基材層の第2表面上に複合材料接着剤層を提供する工程であって、前記複合材料接着剤層がポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物により形成される工程と;複合材料接着剤層の第2表面上にプラスチック層を提供する工程と、前記プラスチック層の第2表面上に接着層を提供する工程と、を含む。本発明による複合材料テープは、所定の時間最高280℃の高温に耐えられるだけでなく、テープは剥離しない又は反らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ及びその製造方法、特にプリント基板用高温複合材料テープ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板(PCB)のような電気装置の製造プロセス中、プリント基板の特定の領域をスズでコーティングする必要があるが、一方プリント基板の残りの領域は保護テープのような遮蔽部材により被覆することが必要である。プリント基板は、製造プロセス中、高温下で短時間スズめっきする必要がある。
【0003】
既存の保護テープは、典型的には、複合材料接着剤のようなゴム型のりを採用している。しかしながら、ゴム型のりの不利点は、260℃を超える温度に耐えられないことである。よって、送風加熱水平化(blast heat leveling)の高温加工後のような、プリント基板の製造プロセスにおいては、基材物質としての役割を果たす紙をPETから分離する場合がある。更に、既存のゴム型のりが特定の厚さに達したときしか、適切な固着強度を得られない場合がある。しかしながら、これでは最終的なテープの厚さが厚くなりすぎる恐れがある。それ故、送風加熱水平化、流動はんだ付け等の間、スズが浸出し、テープとPCBとの固着縁部に蓄積する場合があり、これは「スズダム(tindam)」現象を導く。送風加熱水平化中の現在用いられているスズめっきプロセスは、鉛を用いる。環境保護の必要性により、鉛を用いるプロセスは、次第に鉛を用いないプロセスに置き換えられている。鉛を用いるプロセスと鉛を用いないプロセスとの間の重要な違いは、鉛を用いないプロセス中の温度は280℃以上に達する場合があるが、一方鉛を用いるプロセス中の温度は通常250〜260℃に達する点にある。既存のテープは、この高温要件を満たすことができない。
【0004】
この目的のために、いくつかの特許が上記問題を解決するために提唱されている。例えば、1998年6月2日に公開されたTW487727(台湾、中国)は、高温保護テープを開示しており、ここでは金属フィルム層がテープに組み込まれている。高温プロセス中、金属フィルム層は均一に加熱され、その結果テープの縁部において反りが回避され、したがってスズ浸出が発生する恐れがある。しかしながら、金属フィルム層の追加は、テープの厚さを増加させ、これはまたテープとPCBとの固着縁部にスズが蓄積する可能性を高める。また金属の熱膨張係数は、紙及び金属フィルム層に比べて比較的高く、この差がテープ基材物質全体のそりを導く恐れがある。
【0005】
加えて、Four Dimension Tape Corp.により製造されている、製品番号CM8R及びCM8G高温遮蔽紙−プラスチック複合材料テープは、複合材料接着剤としてゴム型のりを用いており、この製品は約250℃の最高温度に1分間耐えることができる。Scapa Corp.により製造されている製品番号657送風加熱水平化テープは、約105℃の最高温度を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記から、既存の市販されているテープは、高温問題を解決できない。市場では、紙−プラスチック複合材料基材物質が剥離しない又は反らない、280℃以上で2分間耐え得る薄い高温遮蔽テープに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本開示は複合材料高温テープ及びその製造方法を提供する。本明細書に開示されている複合材料テープは、最高280℃の高温に2分間曝された場合でさえ、その紙−プラスチック複合材料基材物質は、実質的に剥離することがなく、複合材料高温テープは実質的に平坦なままである。
【0008】
別の態様では、本開示は複合材料高温テープ及びその製造方法を提供する。高温複合材料テープは、高温複合材料テープとPCBプレートとの固着縁部におけるスズの蓄積を低減することができる。
【0009】
更に別の態様では、本開示は、本明細書に開示する高温複合材料テープを用いてプリント基板を製造する方法を提供する。
【0010】
この開示の種々の態様を達成するために、その工程をプリント基板を生産するために用いることができる複合材料テープの製造方法が提供される。方法は、紙基材層の第1側面上に離型層を提供する工程と;紙基材層の反対側の第2側面上に複合材料接着剤層を提供する工程であって、前記複合材料接着剤層がポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物により形成される工程と;複合材料接着剤層の下方側面上にプラスチック層を提供する工程と;プラスチック層の下方側面上に接着層を提供する工程と、を含む。
【0011】
本開示の更に別の態様では、プリント基板の製造に用いられる複合材料テープが提供される。複合材料テープは、紙基材層と;紙基材層の第1表面上に提供される離型層と;紙基材層の反対側の第2表面上に提供される複合材料接着剤層であって、ポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物を含む複合材料接着剤層と;複合材料接着剤層の第2表面上に提供されるプラスチック層と;プラスチック層の第2表面上に提供される接着層と、を含む。
【0012】
本開示の更に別の態様では、プリント基板を製造する方法が提供される。方法は、本明細書に開示する複合材料テープをある領域に接着させて、プリント基板上を保護する工程と、移動によりプリント基板をスズめっきする工程と、熱噴射空気下で取り出されたプリント基板を平坦化する工程と、を含む。
【0013】
既存のテープと比べて、本開示による複合材料テープは以下の利点のうち1つ以上を有する。複合材料接着剤層は、ポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物により形成されるため、複合材料テープは280℃以上の温度曝露に耐えることができる。紙−プラスチック複合材料基材物質は、剥離しない又は反らない。更に、複合材料接着剤層に起因して、基材物質の厚さは減少する可能性があり、よってスズ又は他の金属の蓄積が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明を添付図面を参照に更に説明する。
【図1】本開示による複合材料テープの断面図。
【図2】本開示による複合材料テープの製造方法のフロー図。
【図3】本開示によるプリント基板の製造方法のフロー図。
【0015】
添付図面と総合して、以下の好ましい実施形態の詳細な説明により導かれる、本発明の更なる目的、利点、及び態様は、当業者により容易に明らかとなろう。添付図面及び種々の実施形態は正確な縮尺で描かれてはおらず、説明目的を意図する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、電気又は電子装置の製造プロセス中、高温遮蔽部材として用いることができる複合材料テープの断面図を示す。具体的には、高温複合材料テープ1は、その製造中、プリント基板上の部分的領域を高温から保護するために用いることができる。通常、プリント基板の製造プロセス中、高温耐性保護テープが必要である。テープは、ゴールドフィンガー(gold finger)がスズめっきされる、又はプリント基板のスズめっき中プリント基板上にはめ込まれた穴を挿入することから保護できる。よって、スズ又ははんだは、電気伝導又はホールジャムの挿入を導かない。加えて、高温複合材料テープ1は、スズめっき、送風加熱平坦化、及び流動はんだ付け条件下において、製造プロセス中剥離しない。一方、テープは、実質的に接着剤を残さず容易に引き剥がすことができる。
【0017】
図1に示すように、プリント基板を製造するための複合材料テープ1は5つの層、紙基材層12、離型層11、複合材料接着剤層13、プラスチック層14、及び接着層15を有する。通常、紙基材層12は、対向する第1側面及び第2側面を有し、平坦な紙、裏の黒い紙、又はクレプト紙(crept paper)で作られる。紙基材層12の第1側面上に提供される離型層11は、アクリル酸又はフロリン(florin)を含有するものであってもよい。離型層は、アクリル酸エマルション、又は有機ケイ素感圧性接着剤を離型させることができるものであってもよい。
【0018】
複合材料接着剤層13は、紙基材層の第2側面上に設けられる。複合材料接着剤層13は、ポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物を含み、これは280℃もの高温に耐えることができる。1つの代表的な実施形態では、複合材料接着剤は、ROHM&HASSにより製造されているADCOTE 76P1−38であってもよい。高温耐性ポリエステル、ポリウレタン型接着剤を使用することにより、複合材料接着剤層13の厚さは、その固着強度を維持しながら減少する。
【0019】
プラスチック層14は、複合材料接着剤層13上に配置される。好適なプラスチック層14としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、プラスチック層14は、コロナ加工により加工されて、プラスチック層の表面エネルギーを増加させることができる。接着層15は、プラスチック層14上に配置される。接着層15は、有機シリコーン感圧性接着剤又は類似の化学特性を有するものから作製することができる。
【0020】
図2は、複合材料テープの製造方法のフローチャートである。最初に、離型層11を、紙基材層12の第1側面上に形成する(S10)。2番目に、ポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物から作製された複合材料接着剤層13を、紙基材層12の反対側の第2側面上に提供する(S20)。次いで、プラスチック層14を、複合材料接着剤層13上に形成する(S30)。最後に、接着層15をプラスチック層14上に提供する(S40)。上記工程は例示目的のためにのみ記載したことに留意すべきである。図2に示すプロセスの変形を用いてもよい。例えば、紙基材層12及び離型層11を、第1積層体に成形してもよい。次いで、複合材料接着剤層13、プラスチック層14、及び接着層15を、第2積層体に成形してもよい。2つの積層体をともに付着させると、複合材料テープ1が得られる。複合材料テープを作製するためには、他の工程の組み合わせも可能である。
【0021】
図3は、本開示の1つの実施形態によるプリント基板の製造方法のフローチャートを示す。
【0022】
プリント基板の製造プロセスでは、その表面をスズめっきすることが必要である。必要に応じて、プリント基板の表面を研磨してもよい。この目的のために、ゴールドフィンガー又はプリント基板の表面上の金コーティング領域のような、プリント基板上のスズめっきを必要としない領域を遮蔽しなければならない。本明細書に開示する高温複合材料テープ1を、この目的のために用いることができる。次いで、プリント基板を、スズめっきのために高温スズめっき焼付炉に移動させてもよい。スズめっき焼付炉内の温度は280℃以上に達する場合があるため、本明細書に開示する複合材料テープは、剥離せず、反らないことに加えて、焼付炉内の最高温度に耐えることができる。スズめっき後、プリント基板の表面上に残ったすずは、所望により、高速及び高温ガスを用いて吹き飛ばしてもよい。先行技術のテープは厚い場合があり、これはテープとプリント基板との固着縁部において「スズダム」現象を生じさせる恐れがある。加えて、酸洗浄、水洗浄、乾燥及び/又は研磨は、そのプロセスが必要とされる可能性があるとき、スズをプリント基板の表面上にしっかりとコーティングすることができるように、スズめっき工程の前又は後に実施してもよい。
【0023】
1つの実施形態のプリント基板の製造方法は、以下の工程を含む。本明細書に開示する複合材料テープ1を、プリント基板上の保護されるべき領域に接着させる(S100)。あるいは、(S101)に示すように、この工程の後に複合材料テープを加熱し、加圧してもよい。複合材料テープ1を接着させたプリント基板を、PCBをスズめっきするためにスズめっき焼付炉に移動させる(S200)。あるいは、(S201)に示すように、プリント基板を、スズめっき工程前及び/又は後に、酸洗浄、水洗浄、乾燥及び/又は研磨してもよい。次いで、プリント基板を取り出し、熱空気噴射下で平坦化する(S300)。そして最後に、複合材料テープ1を保護されるべき領域から取り除く(S400)。しかしながら、図3では、条件が必要である可能性があるとき、工程S200の前、S400の前及び/又は後に、工程S201を行ってもよい。
【0024】
スズめっき焼付炉内におけるスズめっきプロセスの間、本明細書に開示する複合材料テープ1では、紙−プラスチック複合材料基材は280℃で2分間では剥離せず、それと同時に紙基材の厚さが減少して、複合材料テープとプリント基板との固着縁部におけるスズの蓄積が減少する可能性がある。
【0025】
加えて、複合材料テープの複合材料構造は、スズめっきプロセス中プリント基板の部分的領域保護のような、高温下及び熱伝導遅延下における保護に適応することができる。
【0026】
加えて、複合材料テープは、電気又は電動装置の製造分野に広く用いることができる。それは、プリント基板の保護的スズめっきプロセスにおいて用いることができ、また真空めっき、又は高温断熱を必要とする、変圧器及び/若しくは発電機等内において用いてもよい。
【0027】
本発明の記載は、例示目的のためのみであり、それ故、本発明の原理及び趣旨を逸脱することなく、これらの実施形態において修正、変更、及び置換を行ってもよく、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等物で定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の生産に用いられる複合材料テープの製造方法であって、
紙基材層の第1表面上に離型層を提供する工程と、
前記紙基材層の反対側の第2表面上に複合材料接着剤層を提供する工程であって、前記複合材料接着剤層がポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物を含む工程と、
前記複合材料接着剤層上にプラスチック層を提供する工程と、
前記プラスチック層上に接着層を提供する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記プラスチック層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記紙基材層が、平坦な紙、裏の黒い紙、及びクレプト紙からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記離型層が、アクリル酸エマルション又は有機シリコーン感圧性接着剤を離型させることができるものを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接着層が、有機シリコーン感圧性接着剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック層が、コロナ加工により加工され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プリント基板を製造するために用いられる複合材料テープであって、
対向する第1及び第2表面を有する紙基材層と、
前記紙基材層の第1表面上に配置される離型層と、
前記紙基材層の第2表面上に配置される複合材料接着剤層であって、ポリウレタン接着剤、ポリエステル接着剤、又はこれらの混合物を含む複合材料接着剤層と、
前記複合材料接着剤層上に配置されるプラスチック層と、
前記プラスチック層上に配置される接着層と、を含む複合材料テープ。
【請求項8】
前記プラスチック層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる群から選択される、請求項7に記載の複合材料テープ。
【請求項9】
前記紙基材層が、平坦な紙、裏の黒い紙、及びクレプト紙からなる群から選択される、請求項1に記載の複合材料テープ。
【請求項10】
前記離型層が、アクリル酸エマルション又は有機ケイ素感圧性接着剤を離型させることができるものを含む、請求項7に記載の複合材料テープ。
【請求項11】
前記接着層が、有機ケイ素感圧性接着剤を含む、請求項7に記載の複合材料テープ。
【請求項12】
前記プラスチック層が、コロナ加工により加工され得る、請求項7に記載の複合材料テープ。
【請求項13】
プリント基板上の保護されるべき領域に、請求項7に記載の複合材料テープを接着させる工程と、
前記プリント基板をスズめっきする工程と、
熱空気噴射下で取り出した前記プリント基板を平坦化する工程と、を含む、プリント基板の製造方法。
【請求項14】
前記接着工程後に、複合材料テープを加熱及び加圧する工程を更に含む、請求項13に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項15】
スズめっき工程後及び/又は前に、前記プリント基板を酸洗浄、水洗浄、乾燥及び/又は研磨する工程を更に含む、請求項13に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項16】
前記保護されるべき領域が、プリント基板の表面上の金めっきされた領域、又は他の被覆されるべき領域である、請求項13に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項17】
前記保護されるべき領域から前記複合材料テープを取り除く工程を更に含む、請求項13に記載のプリント基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−506139(P2011−506139A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538038(P2010−538038)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/084808
【国際公開番号】WO2009/079182
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】