説明

高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料

【課題】熱伝導性、流動性および熱安定性に富み、損失係数が低く、コストを削減し、歩留まり率を向上させる高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂前駆体2、双硬化剤化合物3、触媒4、流動調整剤5、高熱伝導無機充填剤6および溶剤7が均等に調合されてなる。エポキシ樹脂前駆体2は、三官能エポキシ樹脂、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から少なくとも二種類のエポキシ樹脂が一定の比率で調合されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ材料に関し、特に、熱伝導性、流動性および熱安定性に富み、コストを削減し、歩留まり率を向上させ、高密度連結プリント基板または基板のパッケージングに用いられる高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の日進月歩にともない、各種ハイテク産業が次々と現れ、性能がよく、人に優しい電子製品が絶え間なく発売されている。これらの電子製品は、軽薄短小が基本的なコンセプトである。電子製品には、少なくとも一つのマザーボードが設けられ、たくさんの電子デバイスおよび基板により構成されている。基板は、各電子デバイスを搭載し、電気的に接続する役割がある。プリント基板が最もよく用いられる基板である。
【0003】
プリント基板は、電子部品を接続して性能を十分に発揮させるため、電子製品において、不可欠な基本部品である。プリント基板は、品質に優劣があると、電子製品の信頼性に影響を及ぼし、競争力を左右することになるため、「電子製品の母」と呼ばれるほど重要なものである。
【0004】
市販されている基板の製造技術は、耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板(FR-4)が主流であり、耐熱性、低導電率および環境保護が考慮されている。高周波プリント基板は、これ以外に、低損失係数という性質を有する。現在、最もよく用いられている方法に、樹脂付銅箔(Resin Coated Copper ; RCC)法およびLDPP(Laser Drillable Prepreg)法がある。RCCは、銅箔を表面処理して、層間絶縁膜を塗布し、B段階(B-Stage)までベイクした後に、所定の大きさに裁断し、重ね合わせ、プレスを加える。LDPPは、調合したビルドアップ材料をガラス繊維に浸し、B段階(B-Stage)までベイクした後に、所定の大きさに裁断し、重ね合わせ、プレスを加える。
【0005】
RCC法およびLDPP法に用いられるビルドアップ材料には、以下のような欠点があったため、RCC法およびLDPP法は、完璧な作製法とは言えなかった。1、樹脂の流動性が悪く、穴を十分に充填できなった。2、生産コストが高く、信号伝達が不十分であった。3、熱伝導性、流動性および熱安定性が不良である。4、プリント基板の歩留まり率が低かった。5、樹脂含有量の制限により、穴埋めおよび面塗りを同時に行うことができなかった。6、厚い銅箔を用いたプリント基板を製作するのが困難だった。
一方、先行技術として、例えば特許文献1及び2は、基板に対して半導体チップを実装する際にビルドアップ材料層を構造的に如何に配置して用いるか、つまり実装技術の改善を図るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−33158号公報
【特許文献2】特開2008−141144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱伝導性、流動性および熱安定性に富み、損失係数(dissipation factor)が低く、コストを削減し、歩留まり率を向上させる高熱伝導性で、低損失係数(low dissipation factor)のビルドアップ材料の改善を図ることにある。
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料を提供する。本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料は、エポキシ樹脂前駆体、双硬化剤化合物、触媒、流動調整剤、高熱伝導無機充填剤および溶剤が均等に調合されてなる。エポキシ樹脂前駆体は、三官能エポキシ樹脂、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から少なくとも二種類のエポキシ樹脂が一定の比率で調合されてなる。
【0009】
実施において、三官能エポキシ樹脂は、添加比率が50%以下で、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂は添加比率が50%以下で、臭素化エポキシ樹脂は添加比率が80%以下で、ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂は添加比率が80%以下で、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂は添加比率が90%以下で、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂は添加比率50%以下で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は添加比率80%以下である。双硬化剤化合物は、添加量が2〜20phrで、触媒は0.1〜5phrで、流動調整剤は0.1〜5phrで、高熱伝導無機充填剤は15〜45phrで、溶剤は3〜25phrである。双硬化剤化合物は、アミン系硬化剤および酸無水物系硬化剤が均等に調合されて形成された化合物である。アミン系硬化剤は、添加比率が10%以下で、酸無水物系硬化剤は添加比率が30%以下である。触媒は、イミダゾール系触媒で、添加比率が10%以下である。流動調整剤は、ポリプロピレンまたは変性ポリプロピレンで、共重合体の平均分子量が5,000〜200,000で、添加比率が0.05〜10%である。高熱伝導無機充填剤は、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、三酸化二アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウムおよびケイ酸アルミニウムからなるグループから一つが選択され、粒度が1〜50umで、添加比率が90%以下である。溶剤は、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなるグループから一つが選択される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料は、以下の4つの長所がある。1、損失係数を大幅に低下させ、信号の伝達を十分に行うことができる。2、熱伝導性および熱安定性が良好である。3、材料の損失を減少させ、歩留まり率を向上させることができる。4、穴埋めおよび面塗りを同時に行い、工程を簡潔にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料の作製図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1を参照する。図1は、本発明の一実施形態による高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料の作製図である。図1に示すように、本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料1は、エポキシ樹脂前駆体2、双硬化剤化合物3、触媒4、流動調整剤(Flow modifier)5、高熱伝導無機充填剤(Filler)6および溶剤7が均等に調合されてなる。
【0014】
エポキシ樹脂前駆体2は、三官能エポキシ樹脂(Trifunctional)、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂(Rubber-modified or Dimmer-acid-modified Epoxy)、臭素化エポキシ樹脂(Br-contained Epoxy)、ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂(Br-free/P-contained Epoxy)、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂(Br-Free/P-Free Epoxy)、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Bisphenol A;BPA)から少なくとも二種類のエポキシ樹脂が一定の比率で、調合されてなるものである。
【0015】
三官能エポキシ樹脂は、添加比率が50%以下である。ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂は、添加比率が50%以下である。臭素化エポキシ樹脂は、添加比率が80%以下である。ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂は、添加比率が90%以下である。ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂は、添加比率が90%以下である。長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂は、添加比率50%以下である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、添加比率80%以下である。
【0016】
双硬化剤化合物3は、アミン系硬化剤(Amine)および酸無水物系硬化剤(Acid Anhydride)が均等に調合されて形成された化合物である。アミン系硬化剤は、添加比率が10%以下である。酸無水物系硬化剤は、添加比率が30%以下である。触媒4は、イミダゾール系触媒(Imidazole Catalyst)であり、添加比率が10%以下である。流動調整剤5は、ポリプロピレンまたは変性ポリプロピレンであり、共重合体の平均分子量(M.W.)が5,000〜200,000で、添加比率が0.05〜10%である。高熱伝導無機充填剤6は、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、三酸化二アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ベリリウム(BeO)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)およびケイ酸アルミニウム(Aluminum Silicate)からなるグループから一つが選択され、粒度が1〜50umで、添加比率が90%以下である。溶剤7は、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸メチル(DMCA)、メチルエチルケトン(MEK)およびシクロヘキサノン(Cyclohexanone) からなるグループから一つが選択される。双硬化剤化合物3は、添加量が2〜20phrで、触媒4は、0.1〜5phrで、流動調整剤5は、0.1〜5phrで、高熱伝導無機充填剤6は、15〜45phrで、溶剤7は、3〜25phrである。
【0017】
表1に示すように、実施の際は、三官能エポキシ樹脂が10phr、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が30phr、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂が5phr、臭素化エポキシ樹脂が30phr、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂が25phrを選択し、混合すると得られるエポキシ樹脂前駆体に、充填剤(窒化アルミニウム20phr、三酸化二アルミニウム40phr、二酸化ケイ素40phr)、双硬化剤化合物2.5phr、イミダゾール系触媒0.25phr、流動調整剤(ポリプロピレン2phr)および溶剤(ジメチルホルムアミド20phr)を均等に混合すると本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料を形成することができる。ビルドアップ材料は、粘度が14,800 cpsで、その硬化物の熱伝導係数が2.3W/m-Kで、損失係数が0.008(@1GHz)である。
表1

【0018】
粘度の高いビルドアップ材料が必要な場合は、表2に示すように、三官能エポキシ樹脂が10phr、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が 25phr、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂が5phr、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂が40phr、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂が20phrを選択し、混合すると得られるエポキシ樹脂前駆体に、充填剤(窒化アルミニウム20phr、三酸化二アルミニウム30phr、二酸化ケイ素30phr、ケイ酸アルミニウム20phr)、双硬化剤化合物14phr、イミダゾール系触媒1.5phr、流動調整剤(変性ポリプロピレン1phr)および溶剤(ジメチルホルムアミド20phr)を均等に混合すると本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料を形成することができる。ビルドアップ材料は、粘度が21,450 cpsで、その硬化物の熱伝導係数が2.5W/m-Kで、損失係数が0.007(@1GHz)である。
表2

【0019】
二種類のエポキシ樹脂のみを選択してエポキシ樹脂前駆体を調合することもできる。表3に示すように、三官能エポキシ樹脂が50phrおよびノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂50phrを選択して調合したエポキシ樹脂前駆体に、充填剤(窒化アルミニウム50phr、三酸化二アルミニウム30phr、ケイ酸アルミニウム20phr)、双硬化剤化合物19phr、イミダゾール系触媒0.5phr、流動調整剤(変性ポリプロピレン1phr)および溶剤(ジメチルホルムアミド3phr)を均等に混合すると本発明の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料を形成することができる。ビルドアップ材料は、粘度が22,100 cpsで、その硬化物の熱伝導係数が3.0W/m-Kで、損失係数が0.006(@1GHz)である。
表3

【0020】
本発明では好適な実施形態を前述の通りに開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者は誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0021】
1 高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料
2 エポキシ樹脂前駆体
3 双硬化剤化合物
4 触媒
5 流動調整剤
6 高熱伝導無機充填剤
7 溶剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度連結プリント基板または基板のパッケージングに用いられ、エポキシ樹脂前駆体、双硬化剤化合物、触媒、流動調整剤、高熱伝導無機充填剤および溶剤が均等に調合されてなる高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料であって、
前記エポキシ樹脂前駆体は、三官能エポキシ樹脂、ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂、ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂、長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から少なくとも二種類のエポキシ樹脂が一定の比率で調合されてなる高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項2】
前記三官能エポキシ樹脂は、添加比率が50%以下で、前記ゴム変性または二量体酸変性エポキシ樹脂は添加比率が50%以下で、前記臭素化エポキシ樹脂は添加比率が80%以下で、前記ノンハロゲン/リン含有エポキシ樹脂は添加比率が90%以下で、前記ノンハロゲン・ノンリンエポキシ樹脂は添加比率が90%以下で、前記長鏈ノンハロゲンエポキシ樹脂は添加比率50%以下で、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は添加比率80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項3】
前記双硬化剤化合物は、添加量が2〜20phrで、前記触媒は0.1〜5phrで、前記流動調整剤は0.1〜5phrで、前記高熱伝導無機充填剤は15〜45phrで、前記溶剤は3〜25phrであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項4】
前記双硬化剤化合物は、アミン系硬化剤および酸無水物系硬化剤が均等に調合されて形成された化合物であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項5】
前記アミン系硬化剤は、添加比率が10%以下で、酸無水物系硬化剤は添加比率が30%以下であることを特徴とする請求項4に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項6】
前記触媒は、イミダゾール系触媒で、添加比率が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項7】
前記流動調整剤は、ポリプロピレンまたは変性ポリプロピレンで、共重合体の平均分子量が5,000〜200,000で、添加比率が0.05〜10%であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項8】
前記高熱伝導無機充填剤は、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、三酸化二アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウムおよびケイ酸アルミニウムからなるグループから一つが選択され、粒度が1〜50umで、添加比率が90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。
【請求項9】
前記溶剤は、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなるグループから一つが選択されることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性で、低損失係数のビルドアップ材料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−79968(P2011−79968A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233485(P2009−233485)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(505224433)合正科技股▲ふん▼有限公司 (6)
【Fターム(参考)】