説明

高血圧を診断するための、hsgk1遺伝子における新規な多型の使用、および、QT延長症候群を診断および治療するための、sgk遺伝子ファミリーの使用

本発明は、高血圧の診断における、hsgkのフラグメントを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用に関する。前記フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、前記フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位におけるヌクレオチドGの挿入の存在または非存在によって生じる多型をさらに含む。本発明はまた、QT延長症候群の診断における、sgkファミリーのヒト相同体の過剰発現または機能的な分子改変と、QT間隔の長さとの直接的な相関の使用、および、QT延長症候群の診断における、sgk遺伝子ファミリーのヒト相同体の核酸、またはそのフラグメントの1つの使用に関する。sgk遺伝子ファミリーのヒト相同体における単一ヌクレオチドの多型(単一ヌクレオチド多型=SNP)は、特に、QT延長症候群に関する先天的な素因の診断に有用である。その他の形態において、本発明は、QT延長症候群の治療および/または予防に使用するための薬物を製造するための、sgkファミリーの遺伝子発現を高める機能的な活性化因子または転写因子の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧を診断するための、hsgkフラグメントを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用に関し、前記フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、その上、前記フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのヌクレオチドGの挿入の存在または非存在によって生じる多型を含む。
【0002】
その上、本発明は、QT延長症候群を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の過剰発現または機能的な分子改変と、QT間隔の長さとの直接的な相関の使用に関し、さらに、QT延長症候群を診断するための、sgk遺伝子ファミリーのヒト相同体の核酸、またはそのフラグメントの1つの使用に関する。特に、sgk遺伝子ファミリーのヒト相同体における個々のヌクレオチド多型(単一ヌクレオチド多型=SNP)はまた、本発明において、遺伝学的に決定されたQT延長症候群に関する素因を診断するのに用いることができる。
【0003】
さらなる形態において、本発明は、QT延長症候群を治療および/または予防するための医薬を製造するための、sgkファミリーの遺伝子発現を増加させる機能的な活性化因子または転写因子の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
多数の細胞外シグナルが、これらシグナルの細胞膜およびその受容体から細胞質および細胞核への迅速な移動を確実にする目的で、細胞内のリン酸化/脱リン酸化カスケードに導かれる。このような可逆的なシグナルトランスフェクションカスケードの特異性は、リン酸基を個々の基質に移動させる様々なタンパク質(特にキナーゼ)によって可能になる。
【0005】
血清および糖質コルチコイド依存性キナーゼ(sgk)は、血清および糖質コルチコイドによって発現が増加するセリン/トレオニンキナーゼであるが、これはラット乳ガン細胞から最初にクローニングされた(Webster等,1993年)。sgkのヒト型、すなわちhsgk1は肝細胞からクローニングされた(Waldegger等,1997年)。hsgk1の発現は、細胞容量を調節することにより影響を受けることが見出された。ラットsgkの発現については、このような細胞容量への依存性を実証することは未だにできていない。さらに、ラットのキナーゼが、上皮性Na+チャネル(ENaC)を刺激することも見出された(Chen等,1999年;Naray−Pejes−Toth等,1999年)。ENaCは、また、腎臓でのNa+排出において重要な役割を果たす。ENaC活性の増加により、腎臓のナトリウムイオンの停留が増加し、その結果高血圧が発症することが、WO02/074987A2で実証されている。
【0006】
最終的に、ヒトsgkのヒトファミリー2種のさらなるメンバー、すなわちhsgk2およびhsgk3がクローニングされており(Kobayashi等,1999年)、これらの遺伝子はいずれもhsgk1と同様に、PI3キナーゼ経路を経由してインスリンおよびIGF1によって活性化される。電気生理学的な実験により、hsgk2とhsgk3との共発現が、同様に、ENaC活性の顕著な増加をもたらすことが示されている。
【0007】
DE19708173A1によれば、hsgk1は、細胞容量の変化が重要な病態生理学的な役割を果たしている多くの病気、例えば高ナトリウム血症、低ナトリウム血症、糖尿病、腎機能不全、過剰代謝、肝性脳症、および、細菌またはウイルス感染に関連する実質的な診断上の可能性を有することは明らかである。
【0008】
WO00/62781では、hsgk1は、内皮性Na+チャネルを活性化し、それにより腎臓でのNa+再吸収を増加させることが報告されている。増加した腎臓のNa+再吸収は高血圧を併うので、この場合、hsgk1の発現の増加は、高血圧をもたし、その一方で、hsgk1の発現の減少は、最終的には低血圧をもたらすと予想される。
【0009】
DE10042137はまた、ヒト相同体hsgk2およびhsgk3の過剰発現または過剰活性、ENaCの過活性化、それにより生じる腎臓のNa+再吸収の増加と、それにより発症する高血圧との同様の関連性を報告している。その上、この文献は、本態性高血圧に関する、キナーゼhsgk2およびhsgk3の診断上の可能性をすでに論じている。
【0010】
WO02/074987A2は、hsgk1遺伝子における個々のヌクレオチドの2つの異なる多型(単一ヌクレオチド多型(SNP))の存在と、遺伝学的に決定された高血圧に関する素因との関連を開示している。この場合において、多型は、hsgk1遺伝子における、イントロン6における多型(T→C)、および、エキソン8における多型(C→T)である。特に、WO02/074987A2における表5から、解析されている2種のSNP間の強い相関不均衡があることは明らかである:エキソン8におけるSNPのCCキャリアーのほとんどはまた、イントロン6TTキャリアーであるが(すなわち64%)、一方で、同時にイントロン6CCキャリアーでもあるエキソン8TTキャリアーはほんのわずかである(わずか2%)。このような、イントロン6およびエキソン8における多型の存在との間で観察された相関は、高血圧に関する素因を実証するためにこれら2種の多型(イントロン6およびエキソン8)に関する遺伝子型を解析しなければならないことを示しているが、これは、高度の技術的な入力と時間の消費が伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえに、本発明の目的は、hsgk1遺伝子におけるさらなる多型を提供することであり、このような多型の、1つまたは他の型での存在は、患者における高血圧の表現型の出現と、エキソン8およびイントロン6における2種の既知の多型よりもずっと優れた相互関係を示す可能性がある。特に、高血圧に関する素因と相関し、および、それらの1つまたは他の型での存在がhsgk1タンパク質の機能的な分子改変さえもたらすような単独のSNPを提供することが極めて有利と予想される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、732/733位でのヌクレオチドGの挿入を含む多型である、hsgk1遺伝子の新規な多型を提供することによって達成された。このような732/733位でのヌクレオチドGの挿入がある個体(InsG/InsG)は、頻度がより高く、高血圧を発症させる素因はより低いことがわかってきた。その一方で、このような732/733位での挿入がない個体(WT/WT)は、頻度がより低く、高血圧を発症させる素因は著しく高い。これまでに得られた結果によれば、イントロン2における732/733位での多型に関して、この遺伝子型と高血圧を発症させる素因との相関は、エキソン8およびイントロン6における多型に関する対応する相関よりも極めて高い有意性を有すると思われる(表1を参照)。
【0013】
その上、既知の予測プログラムを用いて得られた予測に基づき、hsgk1遺伝子の特異的なスプライス変異体の発現は、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのGの挿入の存在または非存在に依存すると考えられる。このようなhsgk1遺伝子の特異的なスプライス変異体の発現は、hsgk1タンパク質の機能的な分子改変を起こす可能性があり、それにより、hsgk1活性が改変され、特にhsgk1活性の増加が起こる。従って、このようなhsgk1タンパク質の分子改変の生理学的な結果(特にhsgk1活性の増加)は、最終的に高血圧の症状の発症をもたらす可能性がある。
【0014】
第一の形態において、本発明は、高血圧を診断するための、配列番号1または配列番号2で示される核酸配列のフラグメントを含む、単離された一本鎖または二本鎖核酸の使用に関し、前記フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対、好ましくは少なくとも15個のヌクレオチド/塩基対、特に少なくとも20個のヌクレオチド/塩基対であり、前記フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における多型(732/733位でのヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)を含む。
【0015】
配列番号1は、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位に、ヌクレオチドG(またはGTP)の挿入のないhsgk1のゲノムDNA配列を記載しており、すなわちこれは、「野生型(WT)」配列と呼ばれ、配列番号2は、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位に、ヌクレオチドG(またはGTP)の挿入のあるhsgk1のゲノムDNA配列を記載しており、すなわちこれは、「挿入G(InsG)」配列と呼ばれる。
【0016】
第二の形態において、本発明は、高血圧を診断するためのキットに関し、本キットは、配列番号1または2に記載の配列のフラグメントを含む、単離された一本鎖または二本鎖核酸の少なくとも1つを含む。これに関連して、配列番号1または2からの前記フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対、好ましくは少なくとも15個のヌクレオチド/塩基対、特に少なくとも20個のヌクレオチド/塩基対である。その上、配列番号1または2からの前記フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における多型(732/733位でのヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)を含まなければならない。
【0017】
あるいは、高血圧を診断するためのキットは、上述の一本鎖または二本鎖核酸に加えて、またはその代わりに、このようなhsgkタンパク質の領域(hsgk1タンパク質におけるその存在は、対応するコードしているhsgk遺伝子のイントロン2における732/733位でのヌクレオチドGの挿入の存在に依存する)に対して向けられた抗体を少なくとも1つ含んでもよい。例えば、hsgk1遺伝子における732/733位でのGの挿入の存在が、エキソンのスプライシングアウトを誘導する場合、このスプライシングアウトされたタンパク質領域に対して正確に向けられた抗体は、個体の多型タイプを検出するのに用いることができる。それゆえに、このような抗体は、高血圧を発症させる素因を診断するのに用いることができる。
【0018】
第三の形態において、本発明は、高血圧を診断するための方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)個体から生体サンプルを採取する工程、
b)場合により、a)に記載の生体サンプルから、ゲノムDNA、cDNAまたはmRNAを単離および/または増幅する工程、
c)hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのヌクレオチドGの挿入がある対立遺伝子を定量する工程。
【0019】
工程a)において、生体サンプルは、試験個体から採取され、このような個体は、好ましくは哺乳動物であり、特にヒトである。この本発明に係る診断方法において、好ましく用いられる患者からの生体サンプルは、血液サンプルまたは唾液サンプルであり、これらは、細胞性の物質を含み、比較的少ない労力で患者から得ることができる。しかしながら、同様に細胞を含むその他の生体サンプル、例えば組織または細胞サンプルなどもまた、用いることができる。
【0020】
工程b)では、標準的な方法(Sambrook J.およびRussell D.W.(2001年)コールドスプリングハーバー,ニューヨーク,CSHLプレス)を用いて、a)の生体サンプルから、ゲノムDNAもしくはcDNA、または、mRNAのいずれかを必要に応じて調製し、および/または、それらを必要に応じて増幅することができる。これに関連して、当業者周知のあらゆる適切な方法を用いることができる。また、場合により、特にそれ自体にPCR増幅工程が含まれる検出方法の工程c)が使用される場合、このDNA単離工程またはDNA増幅工程を省略することもできる。
【0021】
最終的に、工程c)において、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位にヌクレオチドGの挿入がある対立遺伝子の数を定量する。これに関連して、2種のWT対立遺伝子を有する個体は、高血圧を発症させる素因を有すると予想される。hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位における多型に関する対立遺伝子の定量/同定は、当業者既知の様々な方法を用いて実行することができる。以下、いくつかの好ましい方法をより詳細に説明する。しかしながら、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位にヌクレオチドGの挿入がある対立遺伝子の数の定量は、以下で説明される好ましい方法に限定されない。好ましくは、遺伝子型(または対立遺伝子の数)は、生体サンプルからのDNA(好ましくはゲノムDNA)を、hsgk1遺伝子のイントロン2における前記732/733位で直接配列解析することによって、732/733位における多型に関して同定することができる。これを行うために、配列解析プライマーとして、hsgk1遺伝子の732/733位のごく近傍に由来する配列を有する短いオリゴヌクレオチドを利用可能にする既知の配列解析方法を用いることが必要である。
【0022】
生体サンプルからのゲノムDNAと、特異的ハイブリダイゼーションプローブとをハイブリダイズすることに基づくあらゆる既知の方法は、732/733位における多型に関する遺伝子型を同定するのに(または、対立遺伝子の数を定量するのに)同様に好ましいさらなる方法を構成する。
【0023】
サザンブロッティングは、このようなハイブリダイゼーション方法の一例である。例えば、hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位でのGの挿入の存在により、制限エンドヌクレアーゼの切断部位を破壊するか、または、切断部位を形成する場合、特異的ハイブリダイゼーションプローブを用いて、WT対立遺伝子の対応するフラグメントの長さと異なる長さの核酸フラグメントを検出できる可能性がある。このようにして、732/733位における当該多型に関して特異的な遺伝子型が検出できると予想される。
【0024】
732/733位でのGの挿入の存在または非存在の結果として、特定のエキソンが欠失したオルタナティブスプライス変異体が発現される場合、スプライス変異体において欠失しているエキソン由来の特異的なハイブリダイゼーションプローブを用いて、当該732/733位における多型に関する遺伝子型を検出できるとも予想される。
【0025】
ハイブリダイゼーション方法のその他の例は、生体サンプルからのゲノムDNAと、標識された一本鎖オリゴヌクレオチド(長さが好ましくは15〜25個のヌクレオチドであり、732/733位でのGの挿入を含む、または含まない)とをハイブリダイズさせる方法である。既知の方法を用いて各個別のオリゴヌクレオチドに関して実験的に試験することができるような極めて特異的なハイブリダイゼーション条件下で、完全にハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドと、1つの単一塩基のミスマッチを有するオリゴヌクレオチドとを区別することができる。
【0026】
732/733位における多型に関する遺伝子型を同定するための(または、対立遺伝子の数を定量するための)その他の好ましい方法は、特に、PCRオリゴヌクレオチド伸長分析またはライゲーション分析である。
【0027】
PCRオリゴヌクレオチド伸長分析の場合、例えば、配列番号2に基づくフラグメントの配列を有し、その3’末端に、多型732/733位におけるGを有するオリゴヌクレオチドを提供できると予想される。このオリゴヌクレオチドと、WT対立遺伝子のサンプルフラグメント(Gの挿入を含まない)とをハイブリダイズさせた場合、3’末端にミスマッチがあるために伸長できず、最終的にそれに続くPCR反応でこのフラグメントは増幅されないと予想される。その一方で、このオリゴヌクレオチドと、InsG対立遺伝子とをハイブリダイズさせると、オリゴヌクレオチドの3’末端で完全な塩基対が形成されるため、伸長が起こり、最終的にPCR増幅産物を得ることができると予想される。
【0028】
ライゲーション分析は、究極的には、PCRオリゴヌクレオチド伸長分析と同じ原理に基づいている:それらの末端で正確な塩基対を有する二本鎖核酸フラグメントのみがその他の二本鎖核酸フラグメントにライゲート可能である。それゆえに、特異的ライゲーション産物の出現は、hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位でのGの挿入の存在または非存在に依存して起こる。
【0029】
驚くべきことに、本発明に係る多型と高血圧に関する素因との相関に加えて、本発明に係る多型といわゆるQT間隔の長さとの第二の相関を見出した。hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位に関してWT/WT遺伝子型の個体においては、InsG/InsG遺伝子型の個体におけるQT間隔よりも著しく短いQT間隔が観察されている。ヘテロ接合型(WT/InsG)の個体は、中度のQT間隔(表3を参照)を有する。著しく延長されたQT間隔は、いわゆるQT延長症候群を発症させ、これは、それ自体心調律の障害を示し、心室細動から突然の心臓死に至ることもある。それゆえに、InsG/InsG遺伝子型を有する個体は、QT延長症候群を発症させる素因を有する可能性がある。
【0030】
実証されたQT間隔の長さとhsgk1遺伝子の遺伝学的な構成との間、特にQT間隔の長さとhsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位における多型との直接的な相関のために、その他のsgkファミリーのヒト相同体の核酸も同様に、QT延長症候群を診断するに適していると考えられる。
【0031】
ECG測定器具を用いて検出できるQ、RおよびS波は、脱分極を評価するための実験値を構成する。QT間隔は、ECG測定器具を用いて検出される、T波の伝播の始まり(Q偏差の出現)から脱分極の終了(T波の終了により特徴付けられる)までの時間と定義される。それゆえに、QT間隔は、心臓の新しい興奮状態の開始と、静止状態への戻りとの間に経過する時間を構成する。従って、著しく延長されたQT間隔は、心調律の障害をもたらし、最終的にはQT延長症候群をもたらすことが、すでに述べられている。
【0032】
それゆえに、本発明はまた、QT延長症候群を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1遺伝子)の過剰発現または機能的な分子改変と、QT間隔の長さとの間の直接的な相関性の使用に関する。
【0033】
sgkファミリーのヒト相同体(その相同体は、上記の意味において、機能的な分子改変を包含する)は、これに関連して、対応するタンパク質の特性(特に触媒特性または基質特異性)が変更されるような様式で突然変異したsgkファミリーの相同体と理解される。
【0034】
本発明に係る、QT間隔と、sgkファミリーのヒト相同体の遺伝学的な構成との直接的な相関は、以下のことを示す:遺伝子hsgk1、hsgk2またはhsgk3における個々の突然変異が個々の患者で存在し、これら突然変異によりキナーゼhsgk1、hsgk2またはhsgk3の発現レベルまたは機能的な特性を改変させ、そして、遺伝学的に誘発させたQT間隔延長を導き、および、最終的に、QT延長症候群の発症に関する素因となることが予想される。このような突然変異は、例えば、調節遺伝子領域、または、sgk遺伝子座のイントロン配列に存在する可能性がある。その一方で、sgk遺伝子座の遺伝学的な構成における個々の差は、遺伝子のコード領域に作用する可能性もある。次に、このようなコード領域における突然変異は、場合によっては、対応するキナーゼの機能的な変化(例えばキナーゼの触媒特性が改変されること)をもたらし、これら改変された特性はまた、最終的にQT間隔に影響を与える可能性もある。従って、上述のタイプの突然変異はいずれも、QT間隔延長を発生させ、それにより最終的にQT延長症候群の発症に関する素因となる可能性がある。
【0035】
上述の、患者においてQT延長症候群の発症に関する素因を発生させるsgkファミリーのヒト相同体における突然変異は、一般的に、これら相同体のエキソン領域またはイントロン領域のいずれかにおけるいわゆる単一ヌクレオチド多型(SNP)と呼ばれる。それらの低い頻度で存在する型(以下、突然変異型という)において、hsgk遺伝子のエキソン領域におけるSNPは、場合によっては、対応するhsgkタンパク質におけるアミノ酸置換を引き起こし、その結果としてキナーゼが機能的に改変される可能性がある。それらの突然変異タイプにおいて、hsgk遺伝子のイントロン領域、または、調節配列におけるSNPは、場合によっては、対応するキナーゼの発現レベルにおける変化を起こす可能性がある。しかしながら、イントロン領域におけるSNPはまた、それらが未成熟mRNAのオルタナティブスプライシングに作用する場合、キナーゼの機能的な改変を起こす可能性がある。
【0036】
本発明はまた、QT延長症候群を発症させる素因を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の配列またはそのフラグメントの1つ、特にhsgk1遺伝子それ自体またはそのフラグメントの1つを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用に関する。これに関連して、上記一本鎖または二本鎖核酸の長さは、好ましくは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対である。
【0037】
上述の一本鎖または二本鎖核酸に加えて、sgkファミリーのヒト相同体の基質、特にhsgk1の基質に対して向けられた特定の抗体も、QT延長症候群および高血圧を発症させる素因を診断するのに適している。これら診断用の抗体は、好ましくは、基質のリン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含む、sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1)のエピトープに対するものである。
【0038】
好ましい実施形態において、ユビキチンタンパク質リガーゼNedd4−2(受託番号BAA23711)が、sgkファミリーのヒト相同体の基質として用いられる。このユビキチンタンパク質リガーゼは、sgkファミリーのヒト相同体によって特異的にリン酸化されるタンパク質である[Debonneville等,Phosphorylation of Nedd4−2 by Sgk 1 regulates epithelial Na(+)channel cell surface expression.EMBO J.,2001年;20:7052〜7059;Snyder等,Serum and glucocorticoid−regulated kinase modulates Nedd4−2−mediated inhibition of the epithelial Na(+)channel.J.Biol.Chem.2002年,277:5〜8]。hsgk1のリン酸化部位は、コンセンサス配列を有し(RXRXXS/T)、式中、Rはアルギニン、Sはセリン、Tはトレオニン、Xはいずれかの任意のアミノ酸である。Nedd4−2(受託番号BAA23711)には、上述のコンセンサス配列が適合する2つの可能性のあるhsgk1のリン酸化部位、すなわちアミノ酸位置382におけるセリン、および、アミノ酸位置468におけるセリンが存在する。
【0039】
それゆえに、上述のQT延長症候群を発症させる素因を診断するための抗体は、好ましくは、基質Nedd4−2、特に好ましくは、hsgk1によるリン酸化をうける可能性のある部位の配列、すなわちコンセンサス配列(RXRXXS/T)を有するNedd4−2タンパク質の領域に対するものである。特に、これら抗体は、2つの可能性のあるリン酸化部位の少なくとも1つ、すなわちアミノ酸位置382におけるセリン、および/または、アミノ酸位置468におけるセリンを包含するNedd4−2タンパク質領域に対するものである。
【0040】
その上、本発明は、QT延長症候群、または、QT間隔延長の兆候を示すその他の病気を診断するためのキットに関する。このQT延長症候群を診断するためのキットは、好ましくは、sgkタンパク質ファミリーのヒト相同体に対する抗体、または、特に、ストリンジェントな条件下でsgk遺伝子ファミリーのヒト相同体とハイブリダイズできる核酸を含む。本キットはまた、sgkタンパク質ファミリーのヒト相同体に対して向けられた抗体と、ストリンジェントな条件下でsgk遺伝子ファミリーのヒト相同体とハイブリダイズする核酸とを共に含んでいてもよい。特に好ましくは、本発明に係るQT延長症候群を診断するためのキットはまた、hsgk1タンパク質に対して向けられた抗体、または、ストリンジェントな条件下でhsgk1遺伝子とハイブリダイズできる核酸を含んでもよい。
【0041】
これに関連して、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション温度と、ハイブリダイゼーション溶液におけるホルムアミド含量に関して関連のある専門的な文献で説明されている(Sambrook J.およびRussell D.W.(2001年)コールドスプリングハーバー,ニューヨーク,CSHLプレス)ハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションを意味するものと理解される。
【0042】
特に、診断キットは、ハイブリダイゼーションプローブとして、配列番号1または2で示される配列を有する一本鎖または二本鎖核酸を含んでもよく、前記核酸の長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、およびhsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位の多型(ヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)を包含する。
【0043】
本発明に係る診断キットは、特に、hsgk1タンパク質の領域(そのhsgk1タンパク質における存在が、hsgk1遺伝子のイントロン2における732/733位でのGの挿入の存在に依存する)に対する特異的な抗体を提供する。特に、未成熟mRNAにおけるこのG挿入の存在または非存在により、オルタナティブにスプライスアウトされるため、成熟mRNAとそれから生産されたタンパク質には存在しなくなるような領域が、診断用の抗体が結合する免疫原性エピトープとして使用するのに適している。したがって、まさに、732/733位でのGの挿入に依存してスプライスアウトされるような遺伝子領域とハイブリダイズできるhsgk1遺伝子の核酸領域も、診断用ハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに適している。
【0044】
QT延長症候群を診断するためのキットはまた、好ましくは、特異的なハイブリダイゼーションプローブとして、hsgk1遺伝子における既知のSNP、特に、エキソン8におけるSNP(C2617T,D240D)、イントロン6におけるSNP(T2071C)、および/または、イントロン2の732/733位におけるSNP(Gの挿入)を包含する核酸フラグメントを含んでもよい。
【0045】
QT延長症候群、および、QT間隔を同様に伴う類似の病気の治療的処置のために、本発明の記載の範囲内で実証されているhsgk1遺伝子のファミリーの遺伝子の遺伝学的な構成とQT間隔の長さとの相関はまた、sgkファミリーの機能的な活性化因子、または正の転写調節因子の使用も可能にする。これに関連して、「機能的な活性化因子」は、sgkファミリーの対応するキナーゼの生理学的な機能を活性化する物質と理解される。「正の転写調節因子」は、sgkファミリーの対応するキナーゼの発現を活性化する物質と理解される。
【0046】
従って、本発明はまた、QT間隔を短くするための、特に、QT延長症候群の治療および/または予防のための、sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1)の機能的な活性化因子または正の転写調節因子の使用に関する。sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1)の既知の機能的な活性化因子および/または正の転写調節因子は、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、および、多数のサイトカイン、特にTGF−βである。
【0047】
その上、本発明は、QT延長症候群を治療および/または予防するための医薬を製造するための、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、および、サイトカイン(特にTGF−β)からなる物質群より選択される基質の使用に関する。本発明はまた、QT延長症候群の治療および/または予防のための、上述の物質群から選択される物質を含む医薬に関する。
【0048】
以下の実施例によって、本発明を詳細に説明する。
【0049】
〔実施例〕
実施例1
異なる患者(双生児)におけるhsgk1遺伝子の遺伝子型を、これら患者で測定された収縮期および弛緩期の血圧値と比較し、次に、統計学的に評価する相関性の研究を本発明の文脈の範囲内で実施した。
【0050】
二卵性双生児の75ペアを、相関分析に用いた(Busjahn等,J.Hypertens 1996年,14:1195〜1199;Busjahn等,Hypertension 1997年,29:165〜170)。全ての被検者は、ドイツ系のコーカサス人種に属し、ドイツの異なる地域の出身である。二卵性を確認し、さらなる分子遺伝子学的解析を行うために、双生児のペアと彼等の親から血液を採取した。それぞれの被検者は、前もって健康診断を受けた。どの被検者も、医学的に認識されている慢性的な病気のいずれにも罹っていないことがわかった。5分後、被検者の座った姿勢での血圧を、熟練した医師によって、標準型水銀血圧計を用いて測定した(1分の時間間隔で2回測定した)。2回測定の平均を血圧値として用いた。
【0051】
相関性の研究に二卵性双生児を用いる利点は、同じ年齢であることと、それらの表現型への外的な影響は最小限と判断できることである(Martin等,Nat Genet 1997年,17:387〜392)。近年、複雑な遺伝病を説明するための双生児研究の重要性がMartin等,1997年によって記載されている。
【0052】
双生児のペアの二卵性を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、5種のマイクロサテライトマーカーを増幅することによって確認した。このマイクロサテライトマーカー分析において、デオキシリボ核酸(DNA)フラグメントは、異なるヒト個人において高度に可変性の領域を含む特異的オリゴヌクレオチドを用いたPCRによって増幅される。これらゲノム領域における高度の可変性は、増幅したフラグメントのサイズのわずかな差によって検出することができ、この際、対応する遺伝子の遺伝子座が多様な場合、二重のバンド、いわゆる、マイクロサテライトバンドが、PCR産物をゲル電気泳動により分画化した後に形成される(Becker等,J.Reproductive Med 1997年,42:260〜266)。
【0053】
標的遺伝子の分子遺伝学的分析を実行するために、本発明のhsgk1遺伝子において、hsgk1遺伝子座の極めて近接にある3種のさらなるマイクロサテライトマーカー領域(d6s472,d6sl038,d6s270)をPCRによって増幅し、次に、その他の双子と親からの対応するサンプルと比較した。この方法で、双生児が彼等の親由来の遺伝性の対立遺伝子を有するかどうか、および、試験の下でそれらが対立遺伝子に関して同一か、または異なっているかを決定することができた。構造方程式モデリング(SEM)モデル(Eaves等,Behav Genet 1996年,26:519〜525;Neale,1997年:MX:Statistical modeling,Box 126 MCV,リッチモンド,バージニア州23298:Department of Psychiatry.第四版)を用いて相関分析を行った。このモデルは、ゼロ、1または2いずれかの同一な対立遺伝子を有する確率によって特徴付けられる試験ペアの分散・共分散行列に基づいている。表現型に関する分散は、全ての遺伝子の遺伝的バックグラウンド(A)に基づく分散、標的遺伝子(この場合はhsgk1遺伝子)の遺伝的バックグラウンド(Q)に基づく分散、および、外的な影響による分散(E)に分けられた。
【0054】
〔数1〕
VAR=A2+Q2+E2
試験ペアの共分散を、以下のように、3種の考えられる対立遺伝子の組合せIBD0、IBD1およびIBD2(IBDは、血統が同一であること(identical by descent)を意味し、0、1または2は、同一な対立遺伝子の数である)と定義した:
〔数2〕
COV(IBD0)=0.5A2
COV(IBD1)=0.5A2+0.5Q2
COV(IBD2)=0.5A2+Q2
【0055】
hsgk1遺伝子座の遺伝学的な構成と、被検者の血圧との相関性を評価するために、標的遺伝子hsgk1に関する遺伝学的分散を考慮したモデルと、考慮していないモデルとの差を、それぞれχ2統計値として計算した。それぞれのペアとそれぞれの遺伝子の遺伝子座に関して、対立遺伝子の比率を、親の遺伝子型に基づいて、いわゆるマルチポイントモデルの平均によって計算した(MAPMAKER/SIBS;Kruglyak等,Am J Hum Genet 1995年,57:439〜454)。
【0056】
近年、上述のχ2統計値と比較した分散・共分散評価に基づく分析方法の、より多くの有益な値(S.A.G.E.Statistical Analysis for Genetic Epidemiology,Release 2.2.Computer program package.Department of Epidemiology and Biostatistics,Case Western Reserve University,クリーブランド,オハイオ州,米国,1996年)が模擬研究で確認された(Fulker等,Behav Gen 1996年,26:527〜532)。LanderおよびKruglyakの基準(Lander等,Nat Genet 1995年,11:241〜246)に関して有意な相関であるかどうかを確かめるために、p<0.01のエラーの確率が許容されている。
【0057】
表1は、この相関性の研究の結果を示す。
【表1】

【0058】
表1からわかるように、確認されたエラーの確率pに関する低い値は、p<0.01の許容されたエラー確率を超過しないか、または、わずかしか超過しておらず、すなわち、hsgk1遺伝子の遺伝子座に関する遺伝学的分散と、表現型によって確認された測定された血圧の分散との間に直接的な相関性があることが証明された。
【0059】
実施例2
hsgk1遺伝子のゲノムの構成はすでに記載されている(Waldegger等,Genomics,51,299[1998年],http://www.ensembl.org/Homo#sapiens/geneview?gene=ENSG00000118515)。
【0060】
その存在が高血圧を発症させる素因と関連するSNPを同定するために、まず、データベースで公開されているhsgk1遺伝子におけるSNPを調査して、そのSNPが真正のSNPであり単なる配列解析エラーではないかどうか、および、そのSNPが、高血圧に関する素因の診断検出のための基礎を形成するの十分な多型であるかどうかを決定した。エキソン8におけるSNP rs 1057293(これは、CのTでの置換に関する)(http://www.ensembl.org/Homo#sapiens/snpview?snp=1057293;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp#ref.cgi?type=rs&rs=1057293)、および、第二のSNP(これは、hsgk1遺伝子内に、イントロン6からエキソン7へのドナースプライス部位において第一のSNPから正確に551bp離れて位置し、TのCでの置換に関する)が、この方法においてすでに位置決定されている。
【0061】
実施例3
75の双生児ペアのランダムサンプルから、血液サンプルを採取した。血液サンプルからhsgk1遺伝子のゲノムDNAをPCRによって増幅するした後、hsgk1遺伝子のエキソンおよびイントロン(ただし、プロモーター領域は含まず)を、適切な配列解析プライマーを用いて直接的に完全に配列解析した。異なる被検者由来のhsgk1遺伝子の配列を比較すると、イントロン2の732/733位における追加のヌクレオチドGの挿入で構成されるさらなる多型が見つかった。その上、この、個々の被検者のhsgk1遺伝子における732/733位でのGの挿入の存在または非存在は、個々の被検者で測定された血圧と有意な相関を示した:平均して、InsG/InsG遺伝子型は、低い頻度のWT/WT遺伝子型、および、ヘテロ接合型のWT/InsG遺伝子型で示される血圧値より、顕著に低い収縮期および弛緩期の血圧値を示した(表3を参照)。それに対して、表2に示すように、hsgk1遺伝子におけるその他の多型は、測定された血圧との相関があまり有意ではないか(例えば、イントロン6(C2071T)およびエキソン8(T2617C,D240D))、または、測定された血圧と相関を示さなかった(例えば イントロン3位置のIns13+xT,T1300〜1312、および、イントロン4(C1451T)、および、イントロン7位置の2544delA)。
【0062】
被検者において様に測定されたECG値はまた、個々の被検者で決定されたQT間隔と、被検者のhsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位における多型に関する遺伝子型との間に著しい相関があったことを示した:これに関連して、低い頻度のWT/WT遺伝子型を有する被検者は、ヘテロ接合型のWT/InsG被検者のQT間隔に比べて著しく短いQT間隔を示し、一方で、その後者は、かわりに、より高頻度のInsG/InsG遺伝子型を有する被検者のQT間隔に比べて顕著に短いQT間隔を示した(表3を参照)。QT間隔が長くなると、特にQT延長症候群のような心調律の障害を起こす危険を増加させる。その結果として、hsgk1遺伝子の732/733位におけるイントロン2における多型の遺伝子型と、一方ではQT延長症候群に関する素因との、および、他方では高血圧に関する素因との間の逆の相関が見い出される。これらの相関は、それぞれの場合において、高血圧およびQT延長症候群の診断、治療および予防に用いることができる。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧を診断するための、配列番号1または配列番号2で示される核酸配列のフラグメントを含む単離された一本鎖または二本鎖核酸の使用であって、該フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、該フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における多型を含む(732/733位でのヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)ことを特徴とする、上記使用。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された一本鎖または二本鎖核酸の少なくとも1つを含む、高血圧を定量的に診断するキット。
【請求項3】
hsgkタンパク質の領域に対して向けられた抗体の少なくとも1つを含み、該hsgk1タンパク質の領域の存在は、それをコードするhsgk遺伝子のイントロン2における732/733位でのヌクレオチドGの挿入の存在に依存することを特徴とする、高血圧を定量的に診断するキット。
【請求項4】
a)生体サンプルを採取する工程、
b)適当なら、a)に記載の生体サンプルから、ゲノムDNA、cDNAまたはmRNAを単離および/または増幅する工程、
c)hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位でのヌクレオチドGの挿入がある対立遺伝子を定量する工程、
を含む、高血圧を診断するための方法。
【請求項5】
工程a)からの生体サンプルは、血液、唾液、組織、および細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
立遺伝子は、工程c)に従って、生体サンプルから単離されたゲノムDNAまたはcDNAを直接配列解析することによって定量されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
対立遺伝子は、工程c)に従って、生体サンプルから単離されたゲノムDNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズさせることによって定量されることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対立遺伝子は、工程c)に従って、PCRオリゴ伸長分析、または、ライゲーション分析によって定量されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
QT延長症候群を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の過剰発現または機能的な分子改変と、QT間隔の長さとの直接的な相関性の使用。
【請求項10】
QT延長症候群を診断するための、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対の長さを有するsgkファミリーのヒト相同体の配列もしくはそのフラグメントの1つを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用。
【請求項11】
sgkファミリーのヒト相同体は、hsgk1遺伝子であることを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
hsgk1遺伝子またはそのフラグメントの1つの核酸の長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、該核酸は、hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位の多型を含む(ヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)ことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
QT延長症候群を発症させる素因を診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の基質に対する抗体の使用であって、該抗体は、リン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含むヒト相同体のエピトープに対するものである、上記使用。
【請求項14】
sgkファミリーのヒト相同体の基質は、Nedd4−2(受託番号BAA23711)であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
sgkタンパク質ファミリーのヒト相同体に対する抗体、もしくは、ストリンジェントな条件下でsgk遺伝子ファミリーのヒト相同体とハイブリダイズできる核酸を含む、または、これら抗体と核酸とを共に含む、QT延長症候群を診断するためのキット。
【請求項16】
sgkファミリーのヒト相同体は、hsgk1遺伝子であることを特徴とする、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
QT間隔を短くするための、sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1)の機能的な活性化因子、または、正の転写調節因子の使用。
【請求項18】
機能的な活性化因子または正の転写調節因子は、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、およびサイトカイン(特にTGF−β)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
QT延長症候群の治療および/または予防用医薬を製造するための、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、およびサイトカイン(特にTGF−β)からなる群より選択される物質の使用。
【請求項20】
QT延長症候群の治療および/または予防のための、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、およびサイトカイン(特にTGF−β)からなる物質群より選択される少なくとも1つの物質を含む医薬。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧を診断するための、配列番号1または配列番号2で示される核酸配列のフラグメントを含む単離された一本鎖または二本鎖核酸のインビトロでの使用であって、該フラグメントの長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、該フラグメントは、hsgk1遺伝子のイントロン2における多型を含む(732/733位でのヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)ことを特徴とする、上記使用。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された一本鎖または二本鎖核酸の少なくとも1つを含む、高血圧を定量的に診断するキット。
【請求項3】
hsgkタンパク質の領域に対して向けられた抗体の少なくとも1つを含み、該hsgk1タンパク質の領域の存在は、それをコードするhsgk遺伝子のイントロン2における732/733位でのヌクレオチドGの挿入の存在に依存することを特徴とする、高血圧を定量的に診断するキット。
【請求項4】
a)生体サンプルを採取する工程、
b)適当なら、a)に記載の生体サンプルから、ゲノムDNA、cDNAまたはmRNAを単離および/または増幅する工程、
c)hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位でのヌクレオチドGの挿入がある対立遺伝子を定量する工程、
を含む、インビトロで高血圧を診断するための方法。
【請求項5】
工程a)からの生体サンプルは、血液、唾液、組織、および細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対立遺伝子は、工程c)に従って、生体サンプルから単離されたゲノムDNAまたはcDNAを直接配列解析することによって定量されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
対立遺伝子は、工程c)に従って、生体サンプルから単離されたゲノムDNAまたはcDNAと特異的にハイブリダイズさせることによって定量されることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
対立遺伝子は、工程c)に従って、PCRオリゴ伸長分析、または、ライゲーション分析によって定量されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
QT延長症候群をインビトロで診断するための、sgkファミリーのヒト相同体の過剰発現または機能的な分子改変と、QT間隔の長さとの直接的な相関性の使用。
【請求項10】
QT延長症候群をインビトロで診断するための、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対の長さを有する、sgkファミリーのヒト相同体の配列もしくはそのフラグメントの1つを含む一本鎖または二本鎖核酸の使用。
【請求項11】
sgkファミリーのヒト相同体は、hsgk1遺伝子であることを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
hsgk1遺伝子またはそのフラグメントの1つの核酸の長さは、少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、該核酸は、hsgk1遺伝子のイントロン2の732/733位の多型を含む(ヌクレオチドGの挿入を含む、または、含まない)ことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
QT延長症候群を発症させる素因をインビトロで診断するための、Nedd4−2(受託番号BAA23711)に対する抗体の使用であって、該抗体は、リン酸化部位(リン酸化型または非リン酸化型のいずれか)を含むヒト相同体のエピトープに対するものである、上記使用。
【請求項14】
sgkタンパク質ファミリーのヒト相同体に対する抗体、または、一本鎖もしくは二本鎖核酸フラグメント(長さが少なくとも10個のヌクレオチド/塩基対であり、ストリンジェントな条件下でsgk遺伝子ファミリーのヒト相同体とハイブリダイズできる)を含む、または、これら抗体と核酸とを共に含む、QT延長症候群を診断するためのキット。
【請求項15】
sgkファミリーのヒト相同体は、hsgk1遺伝子であることを特徴とする、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
特異的なハイブリダイゼーションプローブとして、hsgk1遺伝子における、エキソン8におけるSNP(C2617T、D240D)、イントロン6におけるSNP(T2071C)、または、イントロン2の732/733位におけるSNP(G挿入)の少なくとも1つを含む核酸フラグメントを含むことを特徴とする、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
QT間隔を短くするための、sgkファミリーのヒト相同体(特にhsgk1)の機能的な活性化因子、または、正の転写調節因子の使用。
【請求項18】
機能的な活性化因子または正の転写調節因子は、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、およびサイトカイン(特にTGF−β)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
QT延長症候群の治療および/または予防用医薬を製造するための、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピン、およびサイトカイン(特にTGF−β)からなる群より選択される物質の使用。
【請求項20】
QT延長症候群の治療および/または予防のための、鉱質コルチコイド、アルドステロン、ゴナドトロピンおよび、サイトカイン(特にTGF−β)からなる物質群より選択される少なくとも1つの物質を含む医薬。

【公表番号】特表2006−520587(P2006−520587A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501739(P2006−501739)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001051
【国際公開番号】WO2004/070057
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(501496603)
【Fターム(参考)】