説明

高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物

【課題】顕著な摩耗の低減をもたらす高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】次の成分を含む低硫黄低リン潤滑油組成物:(a)潤滑粘度の油、(b)分散剤、(c)酸化防止剤及び(d)灰分含有清浄剤[但し、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンと三核モリブデン化合物を含まない]。また、次の成分を含む低硫黄低リン潤滑油組成物:(a)潤滑粘度の油、(b)ホウ酸化分散剤と非ホウ酸化分散剤、(c)モリブデン酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤及び(d)低過塩基性カルシウムスルホネートと高過塩基性カルシウムフェネート[但し、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンと三核モリブデン化合物を含まない]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次の成分を含む高負荷(ヘビーデューティ)ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:(a)主要量の潤滑粘度の油、および(b)一種もしくは二種以上の分散剤、(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤および(d)一種もしくは二種以上の灰分含有清浄剤、ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。また、本発明は、次の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物にも関する:(a)潤滑粘度の油、(b)ホウ酸化分散剤と非ホウ酸化分散剤、(c)モリブデン酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤、および(d)低過塩基性カルシウムスルホネートと高過塩基性カルシウムフェネート、ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。また、本発明は、高負荷ディーゼルエンジンを潤滑する方法であって、本発明の高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑することからなる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
将来のディーゼルエンジンには、将来の排出ガス法に従うことを可能にする排ガス後処理装置が備えられることになる。これらの装置のうちあるものは、エンジンに使用される燃料や潤滑剤の燃焼生成物に鋭敏であることが証明されている。ある種の装置は潤滑剤に由来するリンに鋭敏であり、別の装置は燃料と潤滑剤両方に由来する硫黄に鋭敏であり、また別の装置は燃料と潤滑剤の燃焼から生じる硫酸灰分に鋭敏である。これら様々な種類の後処理装置の耐久性を保証するために、低レベルの硫酸灰分、硫黄およびリンを特徴とする特別な潤滑剤が開発されてきている。これら潤滑剤のうち最も一般的なものは、硫黄およびリンの低減と共に低い硫酸灰分レベルをもたらす。それほど一般的ではないものは、特定の、大抵は硫黄又はモリブデン系のジアルキルジチオリン酸亜鉛代替添加剤を使用した低リン又は無リン潤滑剤である。
【0003】
2007年と2008年に商業化される低排出ガスディーゼル用潤滑剤のガイドラインは、次の通りである:(1)硫酸灰分は、ディーゼルエンジン用潤滑油では1.0質量%に等しいか、又はそれより低く、客車用ディーゼルエンジン用潤滑油では0.5質量%に等しいか、又はそれより低くなければならない、(2)エンジン製造者によっては、潤滑油の硫黄分は0.2質量%以下でなければならないとしているが、一方、別のエンジン製造者は最大0.4質量%まで認めている、そして(3)エンジン製造者によってはリンの最大量が0.08質量%となるように要求しているが、一方、別のエンジン製造者は0.12質量%までのリンを認めている。
【0004】
第一世代の低排出ガスディーゼル用潤滑油は、低レベルの清浄剤とジアルキルジチオリン酸亜鉛とを使用して上記ガイドラインを満たすように配合された。しかし、将来のある時点で、最大硫黄及びリン分は、我々が産業に期待するところよりもずっと低減されて現在と2010年の間を行くだろうという予測されている。無リンの潤滑油は何等摩耗防護をもたらさないだろうと予測されていた。性能範囲の限界を打破しようとして、我々はリンを基本的に含まない本発明の実験的な潤滑油配合物を開発した。これら実験的潤滑油を高負荷ディーゼルエンジンに用いて摩耗測定を行ったところ、その結果は、予測し得ないほど低いシリンダライナ摩耗レベルを示した。
【0005】
低硫黄低リン潤滑油組成物を使用して排出ガスを低減する方法については、多数の特許及び特許出願に記述されているが、いずれにも、(a)ホウ酸化分散剤と非ホウ酸化分散剤、(b)モリブデン酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤および(c)低過塩基性スルホネートと高過塩基性スルホネートを含む低硫黄低リン潤滑油組成物であって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まないにもかかわらず顕著な摩耗の低減をもたらす潤滑油組成物は開示されていない。
【0006】
特許文献1には、潤滑油添加剤として、特にリンを含まないか又は僅かにしか含まない潤滑剤に有用な油溶性硫黄含有組成物が開示されている。一態様ではこの発明の組成物は、(A)少なくとも一種のジチオカルバミン酸の少なくとも一種の金属塩、および(B)少なくとも一種の油溶性硫化ディールス・アルダー付加物を含んでいる。そのような潤滑油組成物は、酸化・腐食防止性、耐摩耗性および/または極圧性の改善を示すとされ、また、0.1質量%以下のリンを含むこれら潤滑油組成物は優れたニトリルシールとの適合性も示すとされている。
【0007】
特許文献2には、リンがゼロか又は低減量であって、かつ酸化防止剤と追加の耐摩耗性添加剤を多量に及び/又は費用のかかる形で必要としない、最近の油要求条件に適した潤滑剤に使用できる硫黄含有ホウ酸エステルが開示されている。
【0008】
特許文献3には、主要量の潤滑粘度の油、およびヘキサカルボキシルモリブデンを化学式(ROCS22のジ−キサントゲンと接触させることにより製造された少量の添加剤を含む潤滑油組成物が開示されている。さらに、この発明の潤滑油組成物はリンを含んでいない。
【0009】
特許文献4には、潤滑油基材、および過塩基性アルカリ土類金属スルホネート、フェノラート及びサリチレートの中から選ばれる一種以上の金属系清浄分散剤を含むディーゼルエンジン油組成物が開示されている。この組成物の全リン分は百万分の100質量部又はそれ以下に抑えられ、それにより酸化安定性および耐摩耗性を示すディーゼルエンジン油組成物となっている。
【0010】
特許文献5には、約40%乃至60%のアルキルフェノール、10%乃至40%のアルカリ土類アルキルフェノールおよび20%乃至40%のアルカリ土類単芳香環アルキルサリチレートを有する、未硫化でアルカリ金属を含まない清浄分散剤組成物が開示されている。この組成物は、単環アルキルサリチレートと二芳香環アルキルサリチレートとのモル比が少なくとも8:1である限り、アルカリ土類二芳香環サリチレートを有していてもよいとされている。
【0011】
特許文献6及び特許文献7には、(a)全体の動粘度が100℃で少なくとも約4.8×10-62/s(4.8cSt)で粘度指数が少なくとも110である合成基油組成物、(b)分散型粘度調整剤、および(c)無硫黄官能化炭化水素置換フェノール清浄剤を含む潤滑剤が、高負荷ディーゼルエンジンに長いドレン間隔と共にバルブ・トレーン摩耗の改善をもたらすことが開示されている。
【0012】
特許文献8には、多量の二酸化硫黄を排出するディーゼルエンジンに好適に使用される潤滑油組成物が開示されている。この組成物は二酸化硫黄に対する腐食/摩耗防止性を示す。潤滑油組成物は、潤滑油基油、過塩基性アルカリ土類金属のスルホネート、過塩基性アルカリ土類金属のフェネートおよび過塩基性アルカリ土類金属のサリチレートからなる群より選ばれる化合物である成分(A)、およびビス型コハク酸イミド化合物である成分(B)を含んでいる。
【0013】
特許文献9及び特許文献10には、基油、脂肪族炭素原子数が少なくとも約10の置換基を持つ窒素含有アシル化化合物を含む低硫黄の消費潤滑油組成物が開示されていて、硫黄分は百万分の約5乃至約250部であり、該組成物の特徴は金属とリンからなる極圧剤が存在しないことにある。
【0014】
特許文献10には、基油、脂肪族炭素原子数が少なくとも10の置換基を持つ窒素含有アシル化化合物、および約5乃至約250ppmの硫黄分を含む低硫黄の消費潤滑油組成物が開示されていて、そのような組成物の特徴は金属とリンからなる極圧剤が存在しないことにある。
【0015】
特許文献11には、(a)粘度指数が少なくとも95の潤滑粘度の油、(b)少なくとも一種のカルシウム清浄剤、(c)少なくとも一種の油溶性モリブデン化合物、(d)少なくとも一種の無灰無窒素有機摩擦緩和剤、および(e)少なくとも一種の金属二炭化水素ジチオリン酸塩化合物を含む潤滑油組成物が開示されていて、この組成物は、NOACK揮発度が約15質量%又はそれ以下で、カルシウム清浄剤によるカルシウムが0.05乃至0.6質量%、モリブデン化合物によるモリブデンが少なくとも10ppmの量、かつ金属二炭化水素ジチオリン酸塩化合物によるリンが約0.1質量%までの量である。
【0016】
特許文献12には、特に百万分の350部以下の硫黄を有する燃料と併用できる内燃機関用潤滑油が、潤滑油基材油、ホウ素含有無灰分散剤、モリブデン含有減摩剤、金属型清浄剤およびジチオリン酸亜鉛を含むことが開示されている。
【0017】
特許文献13には、(A)基油、(B)塩基性窒素含有化合物とモリブデン化合物と二硫化炭素とから誘導されたモリブデン及び硫黄含有組成物、(C)ホウ素含有化合物、および(D)任意にリン含有化合物を含む潤滑油組成物であって、潤滑油組成物のリン分は約0.1質量%を越えないとの条件付きの組成物が開示されている。
【0018】
特許文献14には、有機酸の金属塩からなる一種以上の金属清浄剤を含む清浄剤組成物であって、清浄剤組成物中の有機酸の金属塩のモル量に基づき50モル%以上の:(I)芳香族カルボン酸の金属塩、または(II)フェノールの金属塩、または(III)芳香族カルボン酸の金属塩とフェノールの金属塩の両方を含む清浄剤組成物を少量で、潤滑油組成物の耐酸化性を改善するために潤滑油組成物に使用すること、ただし、油組成物のリン量と硫黄量はそれぞれ、油組成物の質量に基づき0.09質量%以下と最大で0.5質量%であることが開示されている。50モル%以上の芳香族カルボン酸の金属塩を含む清浄剤組成物は、エンジン内の摩耗の低減を改善することも判明している。
【0019】
特許文献15には、0.2質量%以下の硫黄、50ppm以下の塩素、50ppm以下のリンを有し、NOACK揮発度が15質量%又はそれ以下であり、かつ有機モリブデン化合物、過塩基性カルシウム又はマグネシウムサリチレート、分散剤および酸化防止助剤を含む潤滑油組成物が開示されている。
【0020】
特許文献16には、基油に金属ジチオカルバメートおよび油溶性アミノ化合物を配合することにより製造された潤滑油組成物が開示されている。この組成物は、リンを含まないか又は殆ど含まず、そして耐摩耗性、極圧性、摩擦特性、酸化安定性および耐コーキング性に非常に優れ、よって自動車の内燃機関用潤滑油として好適に使用できるとされている。
【0021】
特許文献17には、油溶性で反応性硫黄を実質的に含まないモリブデン化合物によるモリブデンを百万分の約50乃至1000部、好ましくは50乃至500部、ジアリールアミンを百万分の約1000乃至20000部、好ましくは1000乃至10000部、およびフェネートを百万分の2000乃至40000部含む潤滑油組成物が開示されている。この成分の組み合わせは、酸化抑制の改善および堆積物抑制の改善を潤滑油にもたらす。この組成物は特にクランクケース用潤滑剤として使用するのに適しているとされている。
【0022】
特許文献18には、主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の油および少量のアルキルアミン−アルキルリン酸エステル添加剤を含む、ディーゼルエンジンに適した改善潤滑油組成物が開示されている。アルキルアミン−アルキルリン酸エステル添加剤は、少なくとも1.25当量のアルキルアミン乃至1.0当量のアルキルリン酸エステルを含んでいる。
【0023】
特許文献19には、ディーゼル微粒子捕集フィルタを有するディーゼルエンジン用の燃料油又は潤滑油組成物に使用される添加剤、およびその添加剤を含む燃料油が開示されている。潤滑油組成物は、硫酸灰分が1.0質量%又はそれ以下で、硫黄分が0.3質量%又はそれ以下で、かつモリブデン含量が100ppm又はそれ以上である。
【0024】
特許文献20には、全塩基価が少なくとも約8の潤滑油組成物であって、主要量の潤滑粘度の油、潤滑油組成物に0.06質量%以下のリンを導入する量の一種以上の二炭化水素ジチオリン酸金属塩、少なくとも1.2質量%のヒンダードフェノール酸化防止剤、および潤滑油組成物に少なくとも200質量ppmのホウ素を与える量のホウ素及び/又はホウ素含有化合物(類)を含む潤滑油組成物(ただし、質量パーセントは全て潤滑油組成物の全質量に基づく)が開示されている。
【0025】
特許文献21には、硫黄分が50ppm以下の燃料で作動する内燃機関に使用できる、少量の少なくとも一種の金属含有清浄剤を含む潤滑油組成物であって、該潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン用に配合される場合には全灰分が1.0質量%以下であり、ガソリンエンジン用に配合される場合には全灰分が0.7質量%以下であることが開示されている。
【0026】
特許文献22には、エンジン性能要求条件を満たす、亜鉛及びリンを実質的に含まない潤滑油が、金属清浄剤、少なくとも一種のホウ酸化無灰分散剤、少なくともアミン酸化防止剤および三核モリブデン化合物を含む添加剤系を含有することが開示されている。この潤滑剤は、最少で120ppmのホウ素および最少で80ppmのモリブデンを含んでいる。
【0027】
特許文献23には、リン分が非常に低く、かつ粘度増加、酸化およびニトロ化の減少により証明されるように寿命の長い潤滑油組成物が、主要量の潤滑粘度の基油、および中性及び過塩基性金属系清浄剤と、少なくとも亜鉛ジアルキルジチオカルバメート耐摩耗性添加剤と、少なくともジヒドロカルボキシルチオカルバモイルとの混合物少量を含むことが開示されている。
【0028】
特許文献24には、亜鉛およびリンを実質的に含まないエンジン用潤滑剤が、平均炭素数がC20−C120の範囲にあるホウ酸化1,2−エポキシ混合ポリブテンからなる耐摩耗性添加剤を含んでいることが開示されている。
【0029】
【特許文献1】米国特許第4623473号明細書
【特許文献2】米国特許第4859353号明細書
【特許文献3】米国特許第4990271号明細書
【特許文献4】米国特許第6159911号明細書
【特許文献5】米国特許第6162770号明細書
【特許文献6】米国特許第6331510号明細書
【特許文献7】米国特許第6610637号明細書
【特許文献8】米国特許第6376434号明細書
【特許文献9】米国特許第6408812号明細書
【特許文献10】米国特許第6588393号明細書
【特許文献11】米国特許第6723685号明細書
【特許文献12】米国特許第6730638号明細書
【特許文献13】米国特許第6777378号明細書
【特許文献14】米国特許第6784143号明細書
【特許文献15】米国特許第6852679号明細書
【特許文献16】欧州特許出願第92917678.2号(公開第EP0556404A2号)明細書
【特許文献17】欧州特許出願第00302646.5号(公開第EP1041134A1号)明細書
【特許文献18】欧州特許出願第04016160.6号(公開第EP1498471A1号)明細書
【特許文献19】米国特許出願第10/344696号(公開第US2003/0182847A1号)明細書
【特許文献20】米国特許出願第10/277295号(公開第US2004/0077506A1号)明細書
【特許文献21】米国特許出願第10/649572号(公開第US2004/0127371A1号)明細書
【特許文献22】米国特許出願第10/893599号(公開第US2005/0043191A1号)明細書
【特許文献23】米国特許出願第10/666356号(公開第US2005/0026792A1号)明細書
【特許文献24】米国特許出願第10/951356号(公開第US2005/0137096A1号)明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、次の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:(a)主要量の潤滑粘度の油、および(b)一種もしくは二種以上の分散剤、(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤および(d)一種もしくは二種以上の灰分含有清浄剤、ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。また、本発明は、次の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物にも関する:(a)潤滑粘度の油、(b)ホウ酸化分散剤と非ホウ酸化分散剤、(c)モリブデン酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤、および(d)低過塩基性カルシウムスルホネートと高過塩基性カルシウムフェネート、ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。また、本発明は、高負荷ディーゼルエンジンを潤滑する方法であって、本発明の高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑することからなる方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
つまり、本発明は、下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤(ただし、酸化防止剤はアミン酸化防止剤ではない)、および
(d)一種もしくは二種以上の灰分含有清浄剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0032】
上記潤滑油組成物において(d)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0033】
上記本発明の潤滑油組成物において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下であり、そして最も好ましくは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%未満である。
【0034】
本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある。最も好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある。
【0035】
本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある。更に好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にあり、そして最も好ましくは0.0質量%である。
【0036】
本発明の潤滑油組成物に用いることができる好ましい分散剤は、無灰分散剤である。無灰分散剤の例としては、アルケニルコハク酸イミド及びコハク酸アミドがある。これら分散剤は、例えばホウ素またはエチレンカーボネートとの反応により更に変性させることができる。長鎖炭化水素置換カルボン酸とヒドロキシ化合物とから誘導されたエステル系無灰分散剤も用いることができる。より好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物から誘導されたものである。
【0037】
本発明の潤滑油に用いられる好ましい酸化防止剤の例としては、チオジカルボン酸のエステル、15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)などのジチオカルバメート、ジチオリン酸の塩、アルキル又はアリールリン酸エステルがある。モリブデン化合物、例えばアミン−モリブデン錯化合物およびモリブデンジチオカルバメートも酸化防止剤として使用することができ、またヒンダードフェノール、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−I−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)も使用できる。より好ましいのは、潤滑油のリン、硫黄及び硫酸灰分に寄与しないヒンダードフェノールおよびモリブデン含有化合物である、ただし、モリブデン化合物には三核モリブデンが含むことはない。
【0038】
本発明の潤滑油組成物に用いることができる好ましい低及び高過塩基性金属清浄剤の例としては、低及び高過塩基性スルホン酸又はフェノール、またはアルキルフェノールとアルデヒドとアミンのマンニッヒ縮合物がある。より好ましいのは低及び高過塩基性スルホン酸である。過塩基性清浄剤には、過塩基性サリチル酸又はカルボン酸が含まれないことが好ましい。これらの清浄剤は、アルカリ金属清浄剤であってもアルカリ土類金属清浄剤であってもよい。好ましくはアルカリ土類金属清浄剤であり、より好ましくはカルシウム清浄剤である。これら清浄剤のTBNは1より大きく、約500又はそれ以上である。
【0039】
本発明の別の態様は、下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、および
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0040】
上記態様の潤滑油組成物において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下であり、そして最も好ましくは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度は潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%未満である。
【0041】
上記態様の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある。最も好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある。
【0042】
上記態様の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある。更に好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にあり、そして最も好ましくは0.0である。
【0043】
本発明のまた別の態様は、基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、
(d)一種もしくは二種以上の灰分含有清浄剤、および
(e)一種もしくは二種以上の(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる一種以上の添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0044】
上記潤滑油組成物において(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0045】
上記態様の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある。最も好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある。
【0046】
上記態様の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある。更に好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にあり、そして最も好ましくは0.0質量%である。
【0047】
上記態様の潤滑油組成物は、オレフィン共重合体などの粘度指数向上剤も含んでいてもよく、その例としては、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ビニルピロリドンとメタクリレートの共重合体、および分散型粘度指数向上剤がある。
【0048】
流動点降下剤は、流体が流動するか、あるいは流体を注ぐことができる温度を下げるものである。潤滑油の低温流動性を最適化する添加剤は、ポリメタクリレートなどの種々の共重合体である。
【0049】
本発明の潤滑油組成物にさび止め添加剤を添加することも考えられる。好ましいさび止め添加剤としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。また、さび止め添加剤として用いることができるその他の化合物としては、ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。しかし、より好ましいさび止め添加剤は潤滑油のリン又は硫黄分に寄与しないものである。
【0050】
本発明の潤滑油組成物に用いられる摩擦緩和剤としては、灰分含有摩擦緩和剤と無灰摩擦緩和剤の両方が挙げられる。摩擦緩和剤としては、これらに限定されるものではないが、脂肪アルコール、脂肪酸、例えばステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸およびその他の脂肪酸、またはそれらの塩及びエステル、ホウ酸化エステル、アミン、リン酸エステルおよび二及び三炭化水素リン酸エステル、炭化水素亜リン酸エステル及びホスホン酸エステルを挙げることができる。摩擦緩和剤は、モリブデン化合物に三核モリブデンが含まれないとの条件で、モリブデンを含んでいてもよい。好ましくは、本発明の潤滑油組成物に使用される摩擦緩和剤は無灰摩擦緩和剤である。
【0051】
本発明の潤滑油組成物に使用することができる極圧剤としては、アルカリ土類金属ホウ酸化極圧剤およびアルカリ金属ホウ酸化極圧剤が挙げられる。モリブデンを含む極圧剤も、モリブデン化合物に三核モリブデンが含まれないとの条件で、本発明の潤滑油組成物に用いてもよい。硫化オレフィン、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。好ましい極圧剤は潤滑油のリン分に寄与しないものである。
【0052】
本発明の潤滑油組成物での使用が考えられる好ましい腐食防止剤は、ジフェニルアミンの誘導体、コハク酸イミドの誘導体、硫化オレフィン、および共硫化アルケニルエステル/アルファオレフィン腐食防止剤である。金属ジチオリン酸塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛などの腐食防止剤はあまり望ましくない、というのはそれらが潤滑油の亜鉛、リン及び硫黄分に寄与するからである。より好ましい腐食防止剤はコハク酸イミドの誘導体である。
【0053】
本発明の潤滑油組成物に用いられる金属不活性化剤としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾールを挙げることができる。
【0054】
本発明の潤滑油組成物はシール膨潤剤を用いてもよく、以下に限定されるものではないが、ジエステル、例えばジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペートおよびジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリデシルアルコールなどの脂肪族アルコールを含む鉱油、およびヒドロカルボニル置換フェノールと組み合わせたトリス亜リン酸エステルを挙げることができる。
【0055】
本発明の潤滑油に用いることができる抗乳化剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを挙げることができる。
【0056】
本発明に使用できる消泡剤は、アルキルメタクリレートである。
【0057】
本発明の別の態様は、基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0058】
上記潤滑油組成物において(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0059】
上記態様の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある。最も好ましくは、本発明の潤滑油組成物の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある。
【0060】
上記態様の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある。更に好ましくは、本発明の潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にあり、そして最も好ましくは0.0質量%である。
【0061】
本発明のまた別の態様では、潤滑粘度の油はアルファオレフィンの液体重合体ではない。
【0062】
本発明の別の態様は、下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油濃縮物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、および
(d)一種もしくは二種以上の灰分含有清浄剤、
ただし、潤滑油濃縮物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油濃縮物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0063】
上記潤滑油濃縮物において(d)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0064】
本発明の別の態様は、基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油濃縮物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0065】
上記潤滑油濃縮物において(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0066】
本発明の更に別の態様は、高負荷ディーゼルエンジンを潤滑する方法であって、下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑することからなる方法に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、および
(d)一種以上の灰分含有清浄剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0067】
上記潤滑油組成物において(d)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【0068】
本発明の別の態様は、高負荷ディーゼルエンジンを潤滑にする方法であって、基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑にすることからなる方法に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【0069】
上記潤滑油組成物において(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤は、過塩基性金属サリチレートでも過塩基性金属カルボキシレートでもないことが好ましい。
【発明の効果】
【0070】
低硫黄低リン潤滑油組成物が、高負荷ディーゼルエンジンに使用したときに優れた摩耗抑制をもたらすことを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本明細書で使用するとき、以下の用語は特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0072】
「アルカリ金属」は、本明細書で使用するとき、周期表のIA族金属を意味する。
【0073】
「アルカリ土類金属」は、本明細書で使用するとき、周期表のII族金属を意味し、例えばカルシウムおよびマグネシウムである。
【0074】
「基本的に含まない」とは、本明細書で使用するとき、本発明の潤滑油組成物のジアルキルジチオリン酸亜鉛含量を意味する。潤滑油組成物のジアルキルジチオリン酸亜鉛含量は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、潤滑油組成物のジアルキルジチオリン酸亜鉛含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%未満である。更に好ましくは、潤滑油組成物のジアルキルジチオリン酸亜鉛含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.005質量%未満である。最も好ましくは、潤滑油組成物のジアルキルジチオリン酸亜鉛含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%未満である。
【0075】
「低リン」は、本明細書で使用するとき、潤滑油のリン分を意味する。潤滑油のリン分は、潤滑油の全質量に基づき約0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、潤滑油のリン分は潤滑油の全質量に基づき約0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある。更に好ましくは、潤滑油のリン分は潤滑油の全質量に基づき約0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にある。最も好ましくは、潤滑油のリン分は潤滑油の全質量に基づき0.0質量%である。
【0076】
「低硫黄」は、本明細書で使用するとき、潤滑油の硫黄分を意味する。潤滑油の硫黄分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.175質量%以下である。好ましくは、硫黄分は潤滑油の全質量に基づき約0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある。より好ましくは、潤滑油の硫黄分は潤滑油の全質量に基づき約0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある。
【0077】
「過塩基性」は、本明細書で使用するとき、アルカリ土類金属アルキルフェノール及びアルキルスルホネートであって、有機部の当量数に対するアルカリ土類金属の当量数の比が1より大きいものを意味する。低過塩基性は、全塩基価(TBN)が1より大きく20以下のアルカリ土類金属アルキルフェノール、アルキルサリチレート及びアルキルスルホネートを意味し、中過塩基性は、TBNが20より大きく200以下のアルカリ土類金属アルキルフェノール及びアルキルスルホネートを意味する。高過塩基性は、TBNが200より大きいアルカリ土類金属アルキルフェノール及びアルキルスルホネートを意味する。
【0078】
「硫酸灰分」は、本明細書で使用するとき、潤滑油中の清浄剤と金属系添加剤から生じた不燃焼性残渣物を意味する。ASTM D874試験を使用して硫酸灰分を決定した。
【0079】
「全塩基価」又は「TBN」は、本明細書で使用するとき、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと等価な塩基の量を意味する。よって、TBN値が高いほど生成物のアルカリ性が強く、従ってアルカリ度が大きいことを反映している。ASTM D2896試験を使用してTBNを決定した。
【0080】
特に明記しない限り、パーセントは全て質量%である。
【0081】
[潤滑油組成物]
マンニッヒ縮合物の金属塩からなるライナ摩耗防護添加剤組成物を含む低硫黄低リン潤滑油組成物が、高負荷ディーゼルエンジンに使用したときに優れた摩耗抑制をもたらすことを見い出した。従来の潤滑油組成物では摩耗抑制は、ジアルキルジチオリン酸の金属塩、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛の添加によって達成されているが、しかし、これらライナ摩耗防護添加剤中の金属は潤滑油の硫酸灰分の増加に寄与し、またリンは排ガス後処理装置に使用されている酸化触媒の失活を引き起こす。本発明の潤滑油組成物に用いられるライナ摩耗防護添加剤組成物は、硫黄および硫酸灰分の増加に寄与することなく優れた摩耗抑制をもたらし、またリンを含まないか又は僅かにしか含まないので酸化触媒を失活させることもない。
【0082】
本発明の潤滑油組成物は、以下に詳しく記載する化合物を単にブレンドしたり混合することにより製造することができる。所望の濃度の添加剤を含有する潤滑油組成物のブレンドを容易にするために、これらの化合物は他の種々の添加剤と一緒に適当な割合で、濃縮物またはパッケージとして予備ブレンドすることもできる。
【0083】
(潤滑粘度の油)
潤滑粘度の油または基油は、本明細書で使用するとき、潤滑油を意味し、鉱油であっても潤滑粘度の合成油であってもよいが、好ましくは内燃機関のクランクケースに使用できるものである。クランクケース潤滑油の粘度は通常、−17.8℃で約1300センチストークス乃至98.9℃で22.7センチストークスである。潤滑油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては、パラフィン系、ナフテン系、および通常潤滑油組成物に使用されるその他の油を挙げることができる。合成油としては、炭化水素合成油および合成エステルが挙げられる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファ−オレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6−C12アルファ−オレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンを使用してもよい。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。炭化水素油と合成油のブレンドを使用してもよい。例えば、10質量%乃至25質量%の水素化1−デセン三量体と75質量%乃至90質量%の37.8℃で683センチストークスの鉱油とのブレンドは、優れた油基材となる。また、フィッシャー・トロプシュ法誘導基油を本発明の潤滑油組成物に用いてもよい。
【0084】
さらに、本発明の潤滑油組成物を製造するのに用いられる潤滑粘度の油が低硫黄基油であることも考えられる。低硫黄基油の使用は、硫黄分が極めて低い潤滑油組成物を得るのに役に立つ。基油の硫黄分は当該分野の熟練者にはよく知られていて、よって本発明のために低硫黄基油を選択することができる。
【0085】
(分散剤)
本発明の潤滑油組成物は分散剤を含有している。一般に無灰分散剤は、アルケニルコハク酸無水物とアミンを反応させることにより生成する窒素含有分散剤である。そのような分散剤の例としては、アルケニルコハク酸イミドおよびアルケニルコハク酸アミドがある。これら分散剤は、例えばホウ素またはエチレンカーボネートとの反応によって更に変性させることができる。長鎖炭化水素置換カルボン酸とヒドロキシ化合物から誘導されたエステル系無灰分散剤を用いてもよい。好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物から誘導されたものである。多数の分散剤が市販されている。
【0086】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、潤滑油が空気の存在下で老化したり酸化したりするにつれて潤滑油中で自然に起こる分解過程を防ぐために潤滑油に使用される。これら酸化過程はガムやラッカー、スラッジの形成を引き起こし、その結果、酸度および粘度の増加をもたらす。使用できる酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−I−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)がある。アルキル化及び非アルキル化芳香族アミンの例としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化−アルファ−ナフチルアミンがある。酸化防止剤の他の部類としては、チオジカルボン酸のエステル、ジチオリン酸の塩、アルキル又はアリールリン酸エステルがあり、またアミン−モリブデン錯化合物およびモリブデンジチオカルバメートなどのモリブデン化合物も、モリブデン化合物に三核モリブデンが含まれないとの条件で酸化防止剤として使用してもよい。しかし、それらの添加は潤滑油のリン分、硫黄分および硫酸灰分に寄与することになる。
【0087】
(低、中及び高過塩基性金属清浄剤)
本発明の潤滑油組成物に用いられる低及び中過塩基性金属清浄剤の例としては、低又は中過塩基性スルホン酸、フェノール、またはアルキルフェノールとアルデヒドとアミンのマンニッヒ縮合物がある。過塩基性清浄剤には、過塩基性サリチル酸又はカルボン酸が含まれないことが好ましい。これら清浄剤は、アルカリ金属清浄剤であってもアルカリ土類金属清浄剤であってもよい。好ましくはアルカリ土類金属清浄剤であり、より好ましくはカルシウム清浄剤である。これら清浄剤のTBNは1より大きく約500又はそれ以上である。これら清浄剤は当該分野ではよく知られていて市販もされている。
【0088】
[その他の添加剤]
本発明の潤滑油組成物は一般に、上述した添加剤に加えて、本発明の潤滑油組成物に所望の特性を付与するために使用される他の添加剤も含有していてもよい。よって、潤滑油は、粘度指数向上剤、流動点降下剤、抗乳化剤、極圧剤および消泡剤などの添加剤を一種もしくは二種以上含有していてもよい。
【0089】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤は、温度の変化による粘度変化を調整するために潤滑油に添加される。市販されている粘度指数向上剤の幾つかの例としては、オレフィン共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ビニルピロリドンとメタクリレートの共重合体、および分散型粘度指数向上剤がある。
【0090】
(極圧剤)
本発明の潤滑油組成物に使用することができる極圧剤としては、アルカリ土類金属ホウ酸化極圧剤およびアルカリ金属ホウ酸化極圧剤が挙げられる。モリブデンを含む極圧剤も、モリブデン化合物に三核モリブデンが含まれないとの条件で、本発明の潤滑油組成物に用いてもよい。硫化オレフィン、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。好ましい極圧剤は潤滑油のリン分に寄与しないものである。
【0091】
(流動点降下剤)
ポリメチルメタクリレートは、本発明の潤滑油組成物に添加するために使用できる流動点降下剤の例である。
【0092】
(さび止め添加剤)
さび止め添加剤としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。また、さび止め添加剤として用いることができるその他の化合物としては、ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。しかし、好ましいさび止め添加剤は潤滑油のリン又は硫黄分に寄与しないものである。
【0093】
(腐食防止剤)
腐食防止剤は、攻撃されやすい金属面を保護するために潤滑油に含有される。そのような腐食防止剤は一般に、非常に少量で、約0.02質量%乃至約1.0質量%の範囲で使用される。使用することができる腐食防止剤の例としては、硫化オレフィン腐食防止剤、および共硫化アルケニルエステル/アルファオレフィン腐食防止剤がある。腐食防止剤は、金属ジチオリン酸塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛であるべきではない、というのはこの腐食防止剤の添加が潤滑油の亜鉛、リン及び硫黄分に寄与することになるからである。
【0094】
(摩擦緩和剤)
本発明の潤滑油組成物に用いられる摩擦緩和剤としては、灰分含有及び無灰摩擦緩和剤が挙げられる。摩擦緩和剤としては、これらに限定されるものではないが、脂肪アルコール、脂肪酸、例えばステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸およびその他の脂肪酸、またはそれらの塩及びエステル、ホウ酸化エステル、アミン、リン酸エステルおよび二及び三炭化水素リン酸エステル、炭化水素亜リン酸エステル及びホスホン酸エステルを挙げることができる。摩擦緩和剤は、モリブデン化合物に三核モリブデンが含まれないとの条件で、モリブデンを含んでいてもよい。好ましくは、本発明の潤滑油組成物に使用される摩擦緩和剤は無灰摩擦緩和剤である。
【0095】
(金属不活性化剤)
本発明の潤滑油組成物に用いることができる金属不活性化剤としては、これらに限定されるものではないが、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チオジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾールを挙げることができる。
【0096】
(シール膨潤剤)
本発明の潤滑油組成物はシール膨潤剤を用いてもよく、以下に限定されるものではないが、ジエステル、例えばジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペートおよびジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリデシルアルコールなどの脂肪族アルコールを含む鉱油、およびヒドロカルボニル置換フェノールと組み合わせたトリス亜リン酸エステルを挙げることができる。
【0097】
(抗乳化剤)
本発明の潤滑油組成物に用いられる抗乳化剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを挙げることができる。
【0098】
(消泡剤)
本発明に使用できる消泡剤は、アルキルメタクリレート重合体、ジメチルシリコーン重合体、およびポリシロキサン型消泡剤である。
【0099】
ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンおよび天然ガスエンジンを潤滑にするために従来の潤滑油組成物に望まれる特性を付与する観点から、最良の総体的結果を得るために、潤滑油は、上記部類の添加剤の各々の混合しうる添加剤組合せを有効量で含有することができる。
【0100】
本明細書に記載した各種の添加剤物質又は物質の部類は、よく知られた物質であり、容易に商業的に購入したり、あるいは公知の方法又はその明らかな改良法により製造することができる。
【0101】
下記第1表に、本発明の潤滑油に使用することが考えられる添加剤の処理比率を記す。成分量は全て活性添加剤の質量%として記す。
【0102】
第 1 表
─────────────────────────────────────
成分 範囲 好ましい範囲 最も好ましい
(質量%) (質量%) 範囲(質量%)
─────────────────────────────────────
ホウ酸化及び非ホウ酸化 0〜10 2〜9 2〜7
コハク酸イミド分散剤
酸化防止剤 0〜3.0 0.2〜2.0 0.2〜1.5
中性又は過塩基性 0〜10 1〜8 1〜5
金属清浄剤
粘度指数向上剤 0〜10 2〜9 3〜8
極圧剤 0〜2.0 0〜1.0 0.1〜0.5
流動点降下剤 0〜1.0 0.05〜0.5 0.05〜0.3
さび止め添加剤 0〜1.0 0〜0.75 0.05〜0.5
腐食防止剤 0〜3.0 0.2〜2.0 0.2〜1.5
摩擦緩和剤 0〜1.0 0.05〜0.75 0.1〜0.5
消泡剤 0〜3.0 0.2〜2.0 0.2〜1.5
─────────────────────────────────────
【実施例】
【0103】
本発明の高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物について、下記の実施例1および第1表に記載したようにして製造した配合物でその耐摩耗性能の評価を行った。
【0104】
[実施例1]
比較配合物A及びBおよび試験配合物Cは、二種類の分散剤、二種類の酸化防止剤、低過塩基性カルシウムスルホネートと高過塩基性カルシウムフェネート、腐食防止剤および消泡剤を含有している。基油を使用して比較配合物A及びBおよび試験配合物Cの各々を100%とした。
【0105】
試験配合物Cの耐摩耗性能を、上記他の成分に加えてジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有した比較配合物A及びBと比較した。試験配合物Cを用いて摩耗抑制度をシリンダライナ摩耗の減少として求めて、比較配合物A及びBと比較した。
【0106】
下記第2表に、比較配合物A及びBおよび試験配合物Cの詳細を記載する。潤滑油配合物の成分の量を活性添加剤の質量%で第2表に記す。
【0107】
第 2 表
────────────────────────────────────
成分 配合物(質量%)
比較A 比較B 試験C
────────────────────────────────────
基油
ホウ酸化分散剤 1.0 1.0 1.0
非ホウ酸化分散剤 3.3 3.3 3.3
低過塩基性カルシウムスルホネート 0.4 0.4 0.4
高過塩基性カルシウムフェネート 2.5 2.5 2.5
モリブデン酸化防止剤 0.11 0.11 0.11
フェノール系酸化防止剤 0.4 0.4 0.4
腐食防止剤 0.12 0.12 0.12
消泡剤 0.02 0.02 0.02
ジアルキルジチオリン酸亜鉛 1.4 0.5 0.0
────────────────────────────────────
【0108】
下記第3表に、比較配合物A及びBおよび試験配合物Cの硫黄とリンの量を示す。
【0109】
第 3 表
──────────────────────────
成分 配合物(質量%)
比較A 比較B 試験C
──────────────────────────
硫黄 0.48 0.27 0.16
リン 0.16 0.06 0.00
──────────────────────────
【0110】
[実施例2] シリンダライナ摩耗試験
以下に記載するように、試験配合物Cの耐摩耗抑制を比較配合物A及びBと比較した。
【0111】
エンジン試験実験室に設置されたマック・ディーゼルエンジンにて、摩耗測定を行った。エンジン台の配置は、ASTM D−6987試験法として知られているマックT−10エンジン試験法に従った。さらに、エンジンは放射性シリンダライナ、およびエンジン潤滑剤を循環させて外部溜めに通す装置を備えていた。溜めに検出器を配置し、循環して検出器を通過した油からのガンマ線を計数した。一定時間に渡るガンマ線計数の増加量は、放射性領域、この場合にはトップ・リング逆利き位置周囲のシリンダライナ、からの金属重量損失量の測定値である。
【0112】
報告したデータは、試験終了時点で測定したシリンダライナ摩耗であった。下記第4表に、シリンダライナ摩耗試験の結果をまとめて示す。
【0113】
第 4 表
────────────────────────────────
シリンダライナ摩耗試験 配合物
A B C
────────────────────────────────
測定した摩耗 39.6 14.2 10.2
(ナノメートル/時)
────────────────────────────────
【0114】
上記第4表にまとめて示したシリンダライナ摩耗試験で得られた結果は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む比較配合物Aについて測定したシリンダライナ摩耗が36.9ナノメートル/時であり、一方、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含まない試験配合物Cについて測定したシリンダライナ摩耗が10.2ナノメートル/時であったことを示している。データは、試験配合物Cからジアルキルジチオリン酸亜鉛を除外すると、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む比較配合物Aで観測したシリンダライナ摩耗に比べて、シリンダライナ摩耗が74%減少したことを示している。また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む比較配合物Bについて測定したシリンダライナ摩耗は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含まない試験配合物Cで観測した摩耗よりも大きいものの、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を3倍の量で含む比較配合物Aで観測した摩耗よりは小さかった。試験配合物Cでは比較配合物Bに比べてシリンダライナ摩耗が64%減少した。
【0115】
上記第4表にまとめて示したシリンダライナ摩耗試験の結果は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛無しの試験配合物Cが、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含んだ比較配合物Aよりも著しく優れた性能を示し、また比較配合物Bよりも多少良い性能を示したことを明らかにしている。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、従来より高負荷ディーゼルエンジン用潤滑油に使用されている耐摩耗性添加剤であるので、このような結果は予測できなかった。従来知識によれば、これは驚異的な結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、および
(d)一種もしくは二種以上の清浄剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項2】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下である請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
リン分が、潤滑油の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にある請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
リン分が、潤滑油の全質量に基づき0.0質量%である請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
(d)の一種以上の清浄剤が、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもない請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、および
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項14】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下である請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下である請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にある請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある請求項18に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にある請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある請求項20に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にある請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、
(d)一種もしくは二種以上の清浄剤、および
(e)一種もしくは二種以上の粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項25】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下である請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下である請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項26に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にある請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある請求項28に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にある請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある請求項31に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にある請求項32に記載の潤滑油組成物。
【請求項34】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項33に記載の潤滑油組成物。
【請求項35】
(d)の一種もしくは二種以上の清浄剤が、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもない請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項36】
基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項37】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%以下である請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項38】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%以下である請求項37に記載の潤滑油組成物。
【請求項39】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項38に記載の潤滑油組成物。
【請求項40】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.17質量%の範囲にある請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項41】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%乃至約0.165質量%の範囲にある請求項40に記載の潤滑油組成物。
【請求項42】
硫黄分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%乃至約0.16質量%の範囲にある請求項41に記載の潤滑油組成物。
【請求項43】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.03質量%の範囲にある請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項44】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.02質量%の範囲にある請求項43に記載の潤滑油組成物。
【請求項45】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%乃至約0.01質量%の範囲にある請求項44に記載の潤滑油組成物。
【請求項46】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である請求項45に記載の潤滑油組成物。
【請求項47】
(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤が、過塩基性金属サリチレートでも過塩基性金属カルボキシレートでもない請求項36に記載の潤滑油組成物。
【請求項48】
下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油濃縮物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、および
(d)一種もしくは二種以上の清浄剤、
ただし、潤滑油濃縮物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油濃縮物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項49】
基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用の低硫黄低リン潤滑油濃縮物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なるとの条件が付く分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なるとの条件が付く清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項50】
(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤が、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもない請求項49に記載の潤滑油組成物。
【請求項51】
高負荷ディーゼルエンジンを潤滑にする方法であって、下記の成分を含む高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑にすることからなる方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)一種もしくは二種以上の分散剤、
(c)一種もしくは二種以上の酸化防止剤、および
(d)一種もしくは二種以上の清浄剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項52】
高負荷ディーゼルエンジンを潤滑にする方法であって、基本的に下記の成分からなる高負荷ディーゼルエンジン用低硫黄低リン潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑にすることからなる方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)ホウ酸化分散剤および非ホウ酸化分散剤、
(c)モリブデン含有酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤、
(d)低過塩基性カルシウムスルホネートおよび高過塩基性カルシウムフェネート、および
(e)一種もしくは二種以上の、(b)に挙げたものとは異なる分散剤、(c)に挙げたものとは異なる酸化防止剤、(d)に挙げたものとは異なる清浄剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる添加剤、
ただし、潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛を基本的に含まず、かつ0.175質量%を超える量の硫黄を含まず、そして潤滑油組成物はアルキル化及び非アルキル化の芳香族アミンおよび三核モリブデン化合物を含むことはない。
【請求項53】
(e)の一種もしくは二種以上の清浄剤が、過塩基性金属サリチレートでも、また過塩基性金属カルボキシレートでもない請求項52に記載の方法。

【公開番号】特開2007−138166(P2007−138166A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307086(P2006−307086)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】