説明

高電圧駆動の発光ダイオード

【課題】発光素子の駆動電圧は発光素子のバンドギャップ電圧に依存して赤色発光ダイオードでは約2ボルト、白色発光ダイオードでは4から6ボルトの電圧である。いずれも商用電源で利用する場合には低い電圧へ変換して使う必要があり変換損失や変換器が必要となる。
【解決手段】本発明は一つの発光ダイオード基板上に複数個の発光素子を電気的に分離される様に構成して、この複数個の発光素子を直列に接続することにより発光ダイオードの駆動電圧を高くすることを可能にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオードを高電圧で駆動することを可能にする発光ダイオードの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のLEDは図1−1に示すような構造を有している。GaAlNなどよりなる発光素子をパッケージ上に実装してボンディングポストへのボンディングを通して電極を取り出し、発光した紫外光を蛍光体にあてて波長の長い白色光を励起する構造である。可視光を直接発生する場合には蛍光体は不要である。
【0003】
これらの発光素子の動作電圧は赤色の発光ダイオードでは約2ボルト、白色発光ダイオードでは約5ボルトである。近年、特に白色発光ダイオードの用途が家庭用では電球や蛍光灯の代わりに、車用ではヘッドライトの代わりなどに広がるにつれて一層高電圧で使用したい用途が増えてきている。商用電源を使う場合にはAC100ボルト、或いは200ボルトであり、車用にはハイブリッド車や電気自動車の普及に伴ってバッテリー電圧が100ボルトから300ボルトと高くなる見込みである。これに対して現在の使用方法では、発光ダイオードを使用する電圧まで電圧を低くして使用している例が一般的である。その為に電圧変換のために損失が発生したり、回路が複雑になり小型化の制約なってしまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いずれの発光ダイオードにおいても駆動電圧は発光素子のバンドギャップ電圧で決まり、より高い電圧で駆動することはできない。一方で、高電圧で動作する発光ダイオードが存在すれば、例えば商用交流電源から平滑回路のような簡素な電源回路を経て直接駆動できるようになり、またそれに伴い駆動電流を少なくすることができ駆動回路を簡素化できる。これにより発光ダイオードの電源回路、駆動回路のコストを下げることができ、エネルギー効率が良いという発光ダイオードの使用範囲が広がるようになる。しかし、現実的にはその様な、高電圧で作動する発光ダイオードは実用化されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この様なニーズに対応するために、本発明では、基板上に電気的に絶縁された複数個の発光部を形成して、それらを直列接続することにより高電圧で駆動できる素子を提供するものである。たとえば、駆動電圧4.5ボルトの白色の発光素子を100ボルトで直接駆動するために発光素子を22個直列に構成するものである。これによりひとつの発光ダイオードを100ボルトの高電圧で駆動することが可能になる。
【0006】
一般的に発光ダイオードは一つの発光ダイオードに一つの発光部が設けてある。意図して、発光部を分離する必要はないし、分離のために素子スペースの無駄が発生するために分離は行われていない。
【0007】
本発明では基板上の発光素子を電気的に独立した複数個の光マイクロセルとして分離して、この光マイクロセルを基板上で直列接続することにより高い電圧で直接駆動できるようにするものである。
【0008】
光マイクロセルの一つの大きさを小さくすれば、光マイクロセルの個数は多くなり光マイクロセルを直列にしたり、並列にしたりして組み合わせの自由度が大きくなるが、小さくすると光マイクロセル分離のためのスペースの占有率が高くなり、この部分は発光に寄与しないために素子面積の有効利用の点からは損失となる。すなわち、一般的には基板上に形成する発光素子部を複数個に分離する光マイクロセルのような着想は、面積の損失が大きいので行われていない。
【0009】
本発明では直列接続することにより駆動電流を低く抑えることができるというメリット、これにより駆動回路を簡素化できるというメリットを創出すること、及び、光マイクロセルを直列にも並列にも接続できることから駆動電圧を自由に設定できることなどの利点を活かすことにより、光マイクロセルの着想とその実用性を可能にならしめるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光ダイオードは、高い電圧でも駆動できるために、今後の産業用の照明として簡素な電源により、効率の良い発光システムを提供することができるものである。今後、発光効率の良い発光ダイオードが省エネルギーを背景として、家庭用の電灯の代わりになる時に本発明は産業界への影響が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 従来の発光ダイオードの構造を示す構成図
【図2】 本発明の発光ダイオードの構造を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発光ダイオードの構成を図2−1において示す。21はパッケージ、22はボンディングポストと外部へのリード、23はキャップ、24が発光素子、25がボンディングワイア、26が発光素子から発光する紫外線を可視光に変換する蛍光体である。可視光を直接発生する場合には蛍光体は不要である。
【0013】
本発明の発光素子24は図2−2に示すように22個の光マイクロセルが直列に接続されている。30は発光素子全体を示し、31はP型電極、32はN型電極、33は11番目の光マイクロセルのp電極部、34はそのn電極部を示している。
【0014】
発光素子30は4×6の24個のマイクロセルから構成されており、その内2個の部分がP電極31、N電極32で占められ、数字で1から22のマイクロセル一つ一つが電気的に分離された発光ダイオードの機能を有する光マイクロセルである。
【0015】
光マイクロセルの大きさは横0.15mm、縦0.1mmであり、発光素子30全体で横0.6mm、縦0.6mmである。素子はウエーハ状態で作られたものが一つの発光素子に切り出された状態を示している。
【0016】
図2−3において本発明の素子の断面図を示す。これは図2−2におけるX−X’の断面図である。その部分的な詳細は図2−4において示し、この図2−3においてはX−X’断面図、すなわち5番目、6番目、17番目、18番目の光マイクロセルの断面を示す。40が透明導電膜であり6番目の光マイクロセルのp電極部41と5番目の光マイクロセルのn電極部42を接続するITO(酸化インジウム)などの透明導電膜である。43が同様に17番目の光マイクロセルのn電極部と18番目の光マイクロセルのp電極部を接続する透明導電膜である。
【0017】
図2−4において本発明の基本ユニットである5番目の光マイクロセルの断面図の詳細を示す。50は発光素子を形成するための基板であり、51はSiO2などの絶縁膜であり、52は導電性の高い金属からなる光反射層、53はn型GaAlNなどからなる半導体、54は発光層、55はp型GaAlNなどからなる半導体、56は透明絶縁膜であるシリコン酸化膜SiO2、57はITOなどの透明電極である。p型GaAlN54からn型GaAlN53へ電流を注入することにより発光層54で光を発する構造である。SiO2酸化膜56により発光部分を他の光マイクロセルから絶縁している。
【0018】
図2−5においてその光マイクロセルの平面図を示している。60はn型GaAlN半導体の境界を示しており、61はn電極部の透明導電膜の境界である。62はp型GaAlN半導体の境界、63はp電極部の透明導電膜の境界である。図においてY−Y´の断面図が図2−4に相当する。
【0019】
図2−6は光マイクロセル間の接続の事例を示す。図においては4番目、5番目、6番目、7番目の光マイクロセルの接続の事例である。70が4番目の光マイクロセルのn型半導体部と5番目の光マイクロセルのp型半導体部との接続を行うためのITO膜である。71が5番目の光マイクロセルのn型半導体部72と6番目の光マイクロセルのp型半導体部73との接続を行うためのITO膜である。これらのITO膜は光マイクロセルのp型部分の表面、n部部分の表面に形成してあるITO膜と同時に形成することができる。
【0020】
図2−7、図2−8は光マイクロセルとそれぞれN型電極、P型電極との接続事例を示す。図2−7において80が素子境界であり、81がAlからなるN型電極であり、82は22番目の光マイクロセルのn電極部表面のITO膜とAl電極81を接続するためのITO膜である。これらのITO膜は同時に形成される。また図2−8において90は素子境界であり、91がAlからなるP型電極であり、92は1番目の光マイクロセルのp電極部表面のITO膜とAl電極を接続するためのITO膜である。これらのITO膜は同時に形成される。
【0021】
本発明の発光ダイオードの等価回路図を図2−9に示す。光マイクロセルを一つの単位として22個の光マイクロセルを直列接続することにより高電圧駆動を可能にならしめることを特徴としている。
【産業上の利用の可能性】
【0022】
発光ダイオードの用途は省エネに向けてその用途が拡大している。自動車分野においてはヘッドライト、家庭用では、電球のLED、産業用では信号機での採用が始まっている。高電圧駆動で使い易い発光ダイオードは今後の重要な部品となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・パッケージ 2・・・ボンディングポスト及び外部へのリード
3・・・キャップ 4・・・発光素子 5・・・ボンディングワイア
6・・・蛍光体 7・・・n型半導体層の境界 8・・・p型半導体層の境界
9・・・発光素子の境界 10・・・n型半導体の電極部
11・・・p型半導体の電極部 12・・・n型電極のAlパッド部
13・・・p型電極のAlパッド部 14・・・発光素子の基板
15・・・金属反射層 16・・・n型半導体 17・・・発光層
18・・・p型半導体 21・・・パッケージ
22・・・ボンディングポスト及び外部へのリード 23・・・キャップ
24・・・発光素子 25・・・ボンディングワイア 26・・・蛍光体
30・・・発光素子 31・・・P型電極 32・・・N型電極
33・・・11番目の光マイクロセルのp電極部、
34・・・11番目の光マイクロセルのn電極部
40・・・光マイクロセル間接続ITO膜
41・・・6番目の光マイクロセルのp電極部のITO膜
42・・・5番目の光マイクロセルのn電極部のITO膜
43・・・光マイクロセル間接続ITO膜 50・・・発光素子の基板
51・・・SiO2 酸化膜 52・・・金属反射膜 53・・・n型GaAlN半導体
54・・・発光層 55・・・p型GaAlN半導 56・・・SiO2絶縁膜
57・・・ITO透明電極 60・・・n型GaAlN半導体の境界
61・・・n電極部のITO膜の境界 62・・・p型GaAlN半導体の境界
63・・・p電極部ITO膜の境界 70・・・光マイクロセル間接続ITO膜
71・・・光マイクロセル間接続のITO膜
72・・・5番目の光マイクロセルのn電極部のITO膜
73・・・6番目の光マイクロセルのp電極部のITO膜 80・・・N型電極の境界
81・・・N型電極
82・・・N型電極と22番目の光マイクロセルのn電極部との接続
90・・・P型電極の境界 91・・・P型電極
92・・・P型電極と1番目の光マイクロセルのp電極部との接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを形成する同一基板上に、複数個の発光素子を電気的に分離して構成する構造を持ち、これらの発光素子の少なくとも一部を直列に接続して、駆動電圧を発光素子単体よりも高くしたことを特徴とする発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−263174(P2010−263174A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132525(P2009−132525)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(509012577)有限会社MTEC (14)
【Fターム(参考)】