説明

黒液用ガス化反応器に化学バリアを配備する方法、化学ガス化反応器、反応器のバリア層、およびこのようなバリア層のための建造ブロックの製造方法

化学反応器ならびにガス化反応器にセラミックバリアを配備する方法であって、この反応器は大量の有機または無機アルカリ金属化合物を含む黒液タイプの高エネルギー有機廃棄物を、空気または酸素による高温酸化によって変換するように配備され、この高温酸化により有機廃棄物はかなりの量の水蒸気を含む高温還元ガスに変換され、無機化合物は750〜1150℃の温度のアルカリ含有塩溶融物を生成し、またこの反応器は、反応物および生成物のための付随する入口および出口デバイスを有する外側シェル(14)を備えるように配備され、前記方法は、シェル(14)の内側にセラミックバリアの1つまたは複数の層(16、18)を備えるライニング(16、18)を配備することを含み、反応器の最も内側のセラミックバリア(16)は、酸化アルミニウム(Al)とアルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物(Me(I)O・AlおよびMe(II)O・Al型の複合物を生成している)を主に含むライニング材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の有機および無機アルカリ金属化合物を含む黒液タイプの高エネルギー有機廃棄物の、化学反応器における、空気または酸素による高温部分酸化による変換方法に関する。この高温部分酸化により、有機廃棄物はかなりの量の水蒸気、水素ガスおよび一酸化炭素を含む高温還元ガスに変換され、無機化合物は約750〜1200℃、好ましくは950〜1150℃のアルカリ含有塩溶融物を生成する。記反応器は反応物および生成物のための付随する入口および出口デバイスを有する外側シェル、さらにはこのシェルの内側に配備され1つまたは複数のセラミックバリア層を備えるライニングを備え、反応チャンバに面するライニングの内側表面が、この表面と接触している生成した塩溶融物がこの表面で自由に流動するのに十分なだけの大きな溶融物体積部分を有するのに十分なだけの高い温度を獲得し、また外側シェルにより近く位置するライニングの残りの温度が、毛管力または流体静力学的力によって前記1つまたは複数のセラミックバリア層の接合部、クラックまたは多孔の形のキャビティに浸透しようとする生成した塩溶融物が前記1つまたは複数のセラミックバリア層内で固化して固体の塩を生成するのに十分なだけ低いように、また反応器シェルへの有害な過度の温度を防ぐように反応器シェルの温度が制御されるように、ライニングの全厚および熱伝導率が選択される。
【0002】
本発明はまた、前記方法を実施するための化学反応器、前記反応器のための反応器ライニングおよびこのような反応器ライニングのための建造ブロックの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
例えばWO 2004/051167 A1(Chemrec Aktiebolag)に開示されているタイプの反応器において、約750〜1150℃の温度で空気または酸素により黒液をガス化する時には、腐食性で高還元性気相、さらには腐食性の塩溶融物が生成するであろう。気相は、主としてHO、H、CO、CO、HS、NおよびCH、ならびに少量のNaOH(g)、Na(g)およびKCl(g)を含む。形式的には、塩溶融物は正および負に荷電したイオン(主にNa、CO2−、S2−およびOH)の均質な混合物からなり、本質的には、化合物であるNaCO、NaS、NaOHの溶融した混合物として記述できるが、溶融物中のNaSO、NaCl、KCOおよびKClからの少量の他のイオンも含む。塩溶融物は約750℃の温度に下がるまで自由に流動するが、この温度でそれは固化して、本質的にはNaCO(ss)およびNaS(s)からなる固体塩混合物を生成する。塩溶融物は金属、さらにはセラミックにとって非常に腐食性である。反応器の外側スチールシェルが余りにも高い温度に曝されないように、または腐食性気相化合物によってもしくは塩溶融物によって損傷を受けないように、反応器シェルの効率的な化学的バリアさらには良好な熱絶縁が必要とされる。反応器のバリア材料として、比較的厚いセラミックライニング、またはセラミックをコーティングし十分に冷却される金属スクリーンのいずれかを用いることができる(例えば、WO 01/37984 A1(Kvaerner Chemrec AB)を参照)。言うまでもなく、反応器の外側シェルスチールは、局所的または全体的特質のいずれかの許容できない大きな如何なる機械的応力にも、また許容できない如何なる高温にも曝されてはならず、さらに、スチールにとって腐食性である化合物に接触してはならない。
【0004】
前記反応器はパルプ工場におけるエネルギーおよび化学品の回収に使用され、連続的に運転できなければならない。反応器プラントの予定外の停止は、工場の化学品の回収に、損害の大きい撹乱を直ちに生じ、長期停止の場合には、それによりパルプ工場にとって手痛い生産ロスを生じるであろう。したがって、このようなプラントでは、運転における信頼性、さらには運転可能時間(operational availability)について、非常に高い要求がある。プラントは、大量の塩溶融物と、毒性および悪臭の化合物を含む大量の高エネルギー可燃性ガスとを生成するので、高い要求が、設備の安全性に、さらには反応器容器に課され、その接続および壁面の入口の全ては常にガス漏れしないようになっている。設備の高い安全性を保ち、化学品の回収における撹乱またはセラミックラニングもしくは反応器シェルへの損傷を避けるために、信頼性をもって反応器温度を測定し制御できることが重要である。余りに高い反応器温度は塩溶融物を非常に腐食性にし、他方、余りに低い反応器温度はガス化反応を止める結果になるので、塩溶融物が不完全燃焼黒液によって汚染されるか、または固化して反応器の壁面に固体の塊を生成するであろう。
【0005】
反応器の内側セラミックバリアが室温から塩溶融物の融点(約750℃)に相当する温度まで加熱される時には、WO 2004/051167 A1およびWO 01/37984に記載されているように、セラミックにかなりの熱膨張が起こるが、他方、その外側の反応器外側スチールシェルでは、主に腐食および強度の理由でスチールシェルが比較的低い温度に保たれなければならないという事実のために、膨張はより少ない。したがって、反応器が加熱され運転される時にスチールシェルとセラミックとの間の危険なほど大きい圧縮負荷の発現を避けるために、スチール壁の内側とセラミックバリアの外側との間に、適切な熱膨張空間(thermal expansion room)が常に存在していなければならない。円柱状反応器は、円柱半径の約1%の半径方向膨張空間と、円柱軸方向長さの約1%の軸方向膨張空間を必要とする。
【0006】
したがって、WO 2004/051167 A1およびWO 01/37984においては、1つまたは複数の機械的に柔軟な層が反応器シェルとそれに最も近いセラミックバリアとの間に置かれることが示唆されている。このような層は、空の間隙、可燃性の一時的挿入物、柔らかいセラミック繊維マット、反応器容器の強度の点で許容されると考えられる低レベルの機械的負荷で適当に容易に変形する多孔質金属構造体または他の柔軟構造体からなり得る。繰返し熱サイクルに関連するセラミックバリアの物理的安定性にとって、セラミックブロックが、柔軟で弾性のある適切な層を通じて、反応器シェルからの小さな外部支持を継続的に受けることも有利である。反応器が冷めた時にセラミックバリアと反応器シェルとの間に形成される空間(play)を少なくとも再び埋めることができる弾性支持層はまた他の2つの重要な機能;1つは、それが、必要な膨張空間(殊に反応器の下側部分における空間)がセラミックバリアの小さく硬い断片からなる破片によって埋められてしまうことを防ぐということであり、もう1つは、それが気体の対流を防ぐことにより、高温のセラミックバリアと比較的低温の反応器シェルとの間の望ましくない熱移動を防ぐということである;を果たす。
【0007】
化学反応器のバリア材料として、すなわちライニングとして使用できる耐火材料の製造方法は、米国特許第5106797号、米国特許第5149412号およびEP 690139により知られる。しかし、これらの既知材料は、アルミニウムの製造に使用することを主に意図している。耐火材料は通常、バイヤー法によるAlの製造からの副生成物から製造され、その主成分はFeであるが、Alと、少量のNaOおよびCaOを、さらには他の成分も含む。焼結生成物は粉砕され、バインダー(例えば、コロイダル二酸化ケイ素、コロイダル酸化アルミニウム、ケイ酸ナトリウムまたはアルミン酸ナトリウム)および水と混合され、次いで、成形体に形作られ、ベーキングされる。これらのバリア材料の全てにとって、これらが溶融アルミニウムに対して良好なバリア性を有するという目的をもって開発されることが一般的であり、これは、塩溶融物のための化学反応器にとっての必要条件とは全く異なる必要条件を意味する。
【0008】
酸化物に基づく多くの工業的セラミックは、5〜20パーセントに達することがあり、セラミックの原材料における不純物に関連するか、または安価であるが純度の低い原材料の意図的な添加剤に関連する他の物質を含む。さらに、CaO・Alなどの特定の他の技術的添加剤を使用でき、これらは、耐火セメントレンガの冷間成形におけるバインダー、焼結に関連して速い高密度化を促進するための融剤添加剤、焼結または溶融キャストに関連して望ましくない結晶成長を抑制する添加剤、またはセラミック材料の破壊靱性もしくは耐熱衝撃性を向上させる添加剤としての役割を果たす。塩溶融物と、セラミックバリアに含まれる全ての他の化合物との間の反応において低融点相を生成し得るほとんどの添加剤は、予想され得るように、反応器の通常の運転に関連してバリア材料の長期耐久性を損ねる。
【0009】
しかし、これらの酸化物系セラミックの有する1つの問題は、これらが、セラミックライニングの上をずっと流れ、また毛管力のためにライニングの接合部、クラックおよび開孔の中へ深く浸透する高温アルカリ塩溶融物と、様々な仕方で反応することである。高温では、セラミックライニングはまた、当然ライニングの中に深く容易に浸透する、気相のアルカリ化合物と直接反応し得る。このような望ましくない化学反応は、様々な仕方でセラミックの性質を損ねる、あるいは、このような反応に関連して材料に蓄積される大きな機械的応力のために材料が物理的に分解するという結果を生じ得る。
【0010】
非常に顕著で重大であり、セラミックライニング、塩溶融物および気相の間のこれらの反応に関連して生じる1つの問題は、これらの反応の多くがライニングにおける固相の量をかなり増大させる結果になることであり、これがひいてはセラミックをゆっくりと成長させるので、反応器容器の内側とセラミックライニングの外側との間に必要とされる熱膨張空間が使い果たされ、その後、反応器容器が、膨張するライニングによる危険なほど大きな機械的負荷に曝され得るということである。
【0011】
セラミックライニングが反応器容器と接触して危険になることなく、かなり膨張し得るように、膨張するセラミックライニングと反応器容器の内側との間の膨張空間を、広い間隙または厚く柔軟な(compliant)セラミック繊維マットを用いることによって増大させることは、容易に思われるかもしれない。残念ながら、広い気体の間隙または厚い多孔質の繊維マットは、耐腐食性セラミックライニングに比べて熱伝導率が非常に悪い。典型的には、セラミック繊維マットは、同じ厚さの焼結高密度酸化物セラミックの熱伝導性より50〜100倍低い熱伝導性を有する。また、小さい膨張空間を用意する比較的薄い繊維マットは、やはり、セラミックライニングにおける非常に平らな温度プロフィールと、繊維マットにおいて非常に急激に低下する温度プロフィールを生じるであろう。このような好ましくない温度分布は、セラミックライニングにおける遥かに高すぎる平均温度、さらには、セラミックライニングの外側での高い最低温度を生じ、このために、ひいては塩溶融物と高温ライニングとの間の化学反応はより速くなるであろう。最悪の場合には、塩溶融物が全セラミックライニングを通して浸透し、柔軟な繊維マットの部分で固化するように繊維マットの部分にまで達するので、ライニングに必要とされる膨張空間をすぐに使い果たすことがある。
【0012】
塩溶融物がセラミックライニングを通して浸透すること、恐らく膨張空間に達すること、そして反応器壁を損傷することを防ぐ唯一の方法は、塩溶融物の温度を、塩溶融物が固化してセラミックライニングの比較的低温の部分内で本質的に固体の塩を生成するのに十分なだけ低く、保つことである。したがって、様々なセラミックライニングの厚さおよび熱伝導率は、通常の運転中にバリアの内側が高温であるために塩溶融物が常に自由に流動し反応器から容易に流れ出し、同時に、セラミックライニングの比較的低温の外側部分は塩溶融物を完全に固化させる(これは、750℃の温度まで起こらない)ように選択されることが重要である。これによって、溶融物がライニングの外側部分にまで深くクラックおよびポアに浸透することが防止される。その結果、WO 2004/051167 A1は、セラミックライニングに浸透するアルカリ化合物の固相への凝縮または転移が、反応チャンバを画定する内側層(摩損層(wear layer))の状態に関わらず、常にライニング内で、好ましくはライニングの外側層(ベース層)内で起こることを保証するように、温度プロフィールが制御されるべきであることを示唆している。
【特許文献1】WO 2004/051167 A1
【特許文献2】WO 01/37984 A1
【特許文献3】米国特許第5106797号
【特許文献4】米国特許第5149412号
【特許文献5】EP 690139
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
「技術分野」において記載したタイプの新規な方法を実現することが本発明の目的であり、この方法に関連して、前記問題の少なくともいくつかが解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、反応器の最も内側のセラミックバリアが、酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物(Me(I)O・AlおよびMe(II)O・Al型の複合物を生成している)から主になることによって、本発明による方法において達成される。
【0015】
酸化アルミニウム(Al)、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)および/またはアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の2元および3元複合物から主としてなる前記ライニング材料(この材料は、塩溶融物との長期間の接触の間に危険なほど膨張してライニングに必要とされる膨張空間をすぐに使い果たさないであろう)を選択することによって、塩溶融物のライニングへの浸透、それに続く、膨張しうまく機能しない反応器容器内側セラミックラニングに関連する問題が解決される。
【0016】
適切には、ライニング材料は、複合物のアルカリ成分と酸化アルミニウムとが、互いに1:1に近いモル比を有するように選択される。
【0017】
酸化にとって、エネルギーの豊富な有機廃棄物が、高めた反応器圧力で、好ましくは0.2〜5MPaの圧力で、空気または酸素富化空気により燃焼されることが適切である。
【0018】
エネルギーの豊富な有機廃棄物が、本質的に、パルプ工場からの濃い廃液/黒液からなることが有利である。代わりとして、それは、主にアルカリ石鹸(主にパルプ工場からの希薄液および混合黒液から分離された脂肪酸および樹脂酸のアルカリ塩)からなる。
【0019】
本発明の別の目的は、「技術分野」に記載したタイプの反応器を実現することであり、この反応器は前記方法の実施に適しており、この反応器では、塩溶融物がセラミックライニングを通して浸透し膨張空間に達し反応器壁を損傷することが防止される。本発明によれば、この目的は、反応器の最も内側のセラミックバリアが、本質的に、酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物(Me(I)O・AlおよびMe(II)O・Al型の複合物を生成している)からなるように設計されている、「技術分野」に記載したタイプの反応器によって実現される。しかし、固溶体は前記のタイプの異なる相の混合物中に、ある程度は存在し得る。
【0020】
酸化アルミニウム(Al)、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)および/またはアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の2元および3元複合物から主としてなる反応器の最も内側のセラミック(この材料は、塩溶融物との長期間の接触の間に危険なほど膨張してライニングに必要とされる膨張空間をすぐに使い果たさないであろう)バリアにより、塩溶融物のライニングへの浸透、それに続く、膨張しうまく機能しない反応器容器内側セラミックラニングに関連する問題が解決される。好ましい実施形態によれば、前記複合物は、生成した塩溶融物との反応で、10%を超えず、好ましくは7%を超えず、より一層好ましくは5%を超えない、ライニングの体積膨張を生じることが適切である。
【0021】
好ましくは、前記セラミックバリアは、50〜99mol%のNaAl、好ましくは50〜90mol%のNaAl、5〜35mol%のMgAl、および5〜10mol%のNaO・MgO・5Alの混合物からなる。3つの異なる化学的な記法、例えば、NaAl、NaAlO、およびNaO・Alはそれぞれ、1つの同じ複合物に対する完全に等価な表記であることに注意。
【0022】
別の実施形態において、セラミックバリアの少なくとも60%がMeAlからなり、MeはNaとKの混合物を表す。
【0023】
ライニング材料の組成は、例えば、反応器において生成される塩溶融物の組成に適合させることができる。例えば、セルロース製造プロセスがカリウム系である場合、ライニングにおけるアルカリ金属のかなりの量(少なくとも50%)を酸化カリウム(KO)にすることが適切であり得る。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、塩溶融物とライニング材料との間の化学反応がライニング材料の体積減少を引き起こす(これは利点である)ことさえも可能であり得る。
【0025】
望まれる場合には、セラミックバリアにおける好ましくは5〜20%のAl成分を、同形として類似の成分Crによって置き換えることが可能である。
【0026】
別の態様によれば、セラミックバリアは、塩溶融物と直接接触することを意図し酸化アルミニウム(Al)とアルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物からなる1つの内側セラミックバリア、ならびに、この内側層より小さい熱伝導率を有し溶融物がその外側バリア内で固化し得るように設計されている材料からなる1つの外側セラミックバリアからなる2つのセラミックバリアに分割される。
【0027】
さらに別の態様によれば、外側セラミックバリアと反応器シェルとの間にセラミックおよび/または金属材料の柔軟なバリアが存在すれば利点があり、この柔軟なバリアは、1MPaを超えない圧力でその厚さに関して少なくとも60%だけ圧縮されることが可能で、圧力を0.05MPaまで解除した時に少なくとも10%回復する性質を有する。
【0028】
セラミックバリアのNaAl成分は、適切には、1200から1400℃、好ましくは約1350℃の温度の焼結反応において、Al(OH)または微粒子のα−Alを、溶融したNaCOと反応させ、冷めた後の反応した混合物を、MgAlなどの他のセラミック粉末相と一緒に自由流動性の微粒子粉末を生成させるために、Alの粉砕具(grinding body)を有する粉砕装置(grinder)において乾式粉砕し、その後で、粉末プレスに適する粒径分布を有する粉末混合物を成形キャビティに充填し、高圧でプレスして予備成形体を形成し、次いで、最後に、焼結後のセラミック体において10〜25%の所望の残留多孔度を生じるような密度となるように、高温で、ある時間、密閉した窯炉で焼結することによって製造される。
【0029】
以下において、好ましい実施形態と添付図を参照して本発明がより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1に示される化学反応器は、約750〜1200℃、好ましくは950〜1150℃の温度での、腐食性でさらには強く還元性である気相と腐食性塩溶融物との生成の下での、空気または酸素による黒液のガス化を意図したものであり、パルプ工場からエネルギーおよび化学品を回収するために主に用いることを意図している。この反応器は、耐火性セラミックライニング16およびバーナー12を有する反応器圧力容器14を備え、バーナー12を通して、エネルギーの豊富な有機廃棄物、好ましくはパルプ工場からの濃い廃液/黒液が、反応器における高温および好ましくは高めた圧力、適切には0.2〜5MPaの圧力での、空気または酸素富化空気による部分酸化により、本質的には極度に高温の炎の中で、かなりの量の水蒸気、水素ガスおよび一酸化炭素を含む高温還元ガスに変換されるように注入され、他方、無機化合物は約750〜1150℃の温度のアルカリ塩溶融物を生成する。本発明の一実施形態において、エネルギーの豊富な有機廃棄物はまた、本質的に、アルカリ石鹸(主にパルプ工場からの希薄液および混合黒液から分離された脂肪酸および樹脂酸のアルカリ塩)からなっていてもよい。適切には、エネルギーの豊富な有機廃棄物は、還元ガスおよび塩溶融物を生成するように、好ましくは、反応器を出て行く気相における炭素活量が出口ガスの温度で計算して1未満であるが、0.01を超えるように、部分的にのみ酸化される。当然、反応器圧力容器14は、全ての反応物および生成物のための通常の入口および出口デバイス(詳細には示されていない)を、また必要であれば、反応器の補助加熱のための1つまたは複数のオイルバーナーを備えている。
【0031】
簡単な実施形態において、反応器は1つの層からなるセラミックバリアを備える。しかし、好ましい実施形態において、セラミックライニングは2つのセラミックバリア、すなわち、反応器の反応チャンバ10に面する内側摩損層16と外側のベース層18とに分割される。ライニング16、18は、反応チャンバに面する内側表面17を備える。反応容器壁14とセラミックライニング16、18との間に間隙が示されており、この間隙はセラミックライニングのための膨張空間20を形作る。この間隙20、またはその少なくとも鉛直部分は、通常、約20〜60mm、好ましくは30〜50mmの幅を有し、この幅は、反応器最上部に向かって上の方向で増加していてもよい。示されているように、反応器圧力容器は、圧力容器壁14を冷却するための冷却フード24によって囲まれており、示されていない送風機によって、冷却空気の流れ15を、反応器圧力容器14と冷却フード24との間に形成される空間を通して導くことができる。本発明の一実施形態において、反応器シェル14の温度は、シェル14内の温度が設備の全体に亘って存在する水蒸気圧のプロセスガスの露点より高くなるが、反応器圧力容器の強度規準に規定される温度より高い温度には達しないような空気の速度および温度を有する外側の空気の流れによって、制御される。
【0032】
約3mの直径と約9mの高さ、および約1000℃のセラミックライニングでの運転温度を有する鉛直円柱の形の反応器では、反応器の運転を考慮すると、加熱および運転に関連して反応器シェル14とセラミックバリア18との間の有害な密な接触を避けるために、反応器シェル14の内側とセラミックバリアの外側との間に少なくとも15mmの半径方向の膨張空間が、さらには、少なくとも90mmの軸方向の膨張空間が必要とされる。
【0033】
この結果、1つまたは複数の機械的に柔軟な層22が、通常、反応器シェル14とセラミックバリア16、18との間に置かれる。このような層は、空の間隙、可燃性の一時的挿入物、柔らかいセラミック繊維マット、反応器容器14の強度の点で許容されると考えられる低レベルの機械的負荷で適当に容易に変形する多孔質金属構造体または他の柔軟構造体からなり得る。繰返し熱サイクルに関連するセラミックバリア16、18の物理的安定性にとって、セラミックブロックが、柔軟で弾性のある適切な層22を通じて、反応器シェル14からの小さな外部支持を継続的に受けることも有利である。反応器が冷めた時にセラミックバリア16、18と反応器シェル14との間に形成される空間を少なくとも再び埋めることができる弾性支持層22はまた、他の2つの重要な機能;1つは、それが、必要な膨張空間(殊に反応器の下側部分における空間)がセラミックバリアの小さく硬い断片からなる破片によって埋められてしまうことを防ぐということであり、もう1つは、それが気体の対流を防ぐことにより、高温のセラミックバリアと比較的低温の反応器シェルとの間の望ましくない熱移動を防ぐということである;を果たす。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、外側セラミックバリア18と反応器シェル14との間にセラミックおよび/または金属材料の柔軟なバリア22が存在し、この柔軟なバリアは、1MPaを超えない圧力でその厚さに関して少なくとも60%だけ圧縮されることが可能で、圧力を0.05MPaまで解除した時に少なくとも10%回復する性質を有する。反応器シェル14と最も外側のセラミックバリア18との間の柔軟なバリア22がセラミック材料からなる場合、少なくとも63%のAl含量を有するセラミック繊維を用いることが適切である。
【0034】
「技術分野」に記載したように、本発明は、化学反応器における、空気または酸素による高温酸化による、大量の無機または有機アルカリ金属化合物を含む黒液タイプの高エネルギー有機廃棄物の変換方法に関し、この酸化により有機廃棄物はかなりの量の水蒸気、水素ガスおよび一酸化炭素を含む高温還元ガスに変換され、無機化合物は750から1200℃、通常950℃〜1150℃の温度のアルカリ含有塩溶融物を生成する。さらに、本発明はまた、この方法を実施する反応器にも関し、この反応器は、反応物および生成物のための付随する入口および出口デバイスを有する外側気密(gastight)シェル14、さらには、シェル14の内側に配備され、1つまたは複数の層のセラミックバリアを有するライニング16、18を備える。
【0035】
塩溶融物がセラミックライニング16、18を通して浸透し、膨張空間20に達し、反応器壁14を損傷することを防ぐために、本発明によれば、反応器の最も内側のセラミックバリア16は、酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との2元または3元複合物から本質的には形成される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも内側のセラミックバリア16は、50〜99mol%のNaAl、好ましくは55〜90mol%のNaAl、5〜35mol%のMgAl、および5〜10mol%のNaO・MgO・5Alの混合物を含む。
【0037】
適切には、この材料は、約10〜20mol%の、NaO・Al以外の相を含み、これは、適切な耐熱衝撃性が達成できることを意味する。5〜10mol%のNaO・MgO・5Alの含有によって、MgAlまたはNaAlのいずれかが塩溶融物の化学組成に応じて生成され得るので、この材料は緩衝容量を付与される。
【0038】
後に生成される緑液が容易に濾過/透明化されるように、濃い廃液/黒液に約1〜3%の微粒子CaCO(通常、ライムスラッジ)を加えるのが普通である。このことから、ライニング材料が反応器において生成する塩溶融物の組成に適合させられることには利点があり、この場合、塩溶融物は陽イオンのNaおよびCa2+を含む。したがって、この場合、ライニング材料が、塩溶融物さらには相NaO・Alと平衡して存在できる相である2NaO・3CaO・5Alも含むと利点がある。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態において、少なくとも内側のセラミックバリア16は、少なくとも60%のMeAlを含み、MeはNaとKの混合を表す。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態において、セラミックバリア16、18における好ましくは5〜20%のAl成分が、同形として類似の成分であるCrに置き換えられる。
【0041】
一実施形態によれば、セラミックバリア16、18は、塩溶融物と直接接触することを意図し、酸化アルミニウム(Al)とアルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物からなる内側セラミックバリア16、ならびに、内側層より小さい熱伝導率を有する材料からなり、毛管力または流体静力学的力によって前記セラミックバリア層(16、18)の接合部、クラックまたは多孔の形のキャビティに浸透しようとする如何なる塩溶融物も固化して前記1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)内の位置で固体の塩を生成するように設計されている外側セラミックバリアからなる2つのセラミックバリアに分割される。
【0042】
セラミックバリア16、18が内側のセラミックバリア16と外側のセラミックバリア18とからなる2つのセラミックバリアに分割されれば利点があり、反応器にライニングを付ける時に、これらの2つのバリアの間に、燃焼後にバリア16、18の間に膨張空間を残す可燃性材料の薄い層を付けることが適切である。
【0043】
先行技術において、温度プロフィールは、セラミックライニングの中に浸透するアルカリ化合物の固相への凝縮または転移が、反応チャンバを画定する内側層(摩損層)の状態に関わらず、ライニング内で、好ましくはライニングの外側層(ベース層)内で起こることを保証するように制御されるべきであることが示唆されている。しかし、塩溶融物に長時間接触している時に危険なほど膨張して、ライニングに必要とされる膨張空間をすぐに使い果たさないライニング材料を選択することが少なくとも同じように重要であると証明された。
【0044】
多くの主な高融点セラミック相の中で、主に、元素Al、Cr、Ca、Mg、Si、およびZr系の酸素を含有する相(例えば、α−Al、Cr、3Al・2SiO、NaO・11Al、NaO・7Al、MgO、MgO・Al、CaOおよびZrO)の多くは、黒液のガス化に関連して生成する腐食性塩溶融物に対して、比較的安定であるかまたは不活性であることが証明された。また、α−Al、NaO・11Al、NaO・7Al、NaO・MgO・5AlO、MgAlおよびMgOを含むこのようなセラミック相の2つ以上の混合物も前もって試験された。α−Alと、いくつかの異なるタイプ(β−アルミナ構造におけるNaイオンの一部をLi、K、Mg2+およびCa2+によって置き換えた)の所謂β−アルミナ相とからなる混合物も、試験された。β−アルミナは純粋な酸化アルミニウムでなくNaAl1117を意味する。しかし、化学的さらには熱的なバリアとしての良好な機能に対する必要条件は、セラミック相が塩溶融物の存在下に約1100℃を超える温度に長時間曝されないことである。
【0045】
セラミックライニングと溶融物との間の化学反応は、主として、3つの異なる種類に分けることができ、これらの最初の2つの種類は、セラミックライニングを反応器壁に向かって外に危険なほど膨張させ、またライニング内から材料を破裂脱落させる。化学反応の3番目の種類は、主として、セラミックライニング内から特定の相が溶融物に溶かされることによって、材料の急速な損失を引き起こす。この材料の損失と同時に、特定の他の化学反応も表面層で起こり得るので、さらに、セラミックライニングの膨張、クラック発生および脱落を生じ得る。
【0046】
記載した有害な反応の第1の主なタイプでは、気相におけるアルカリ(主としてNa(g)およびNaOH(g)であるが、K(g)およびKOH(g)も存在する)がセラミックライニングに浸透しセラミックライニングと反応する。有害な反応の第2の主なタイプでは、塩溶融物が毛管力によりクラック、接合部およびポアに浸透し、そこでセラミックライニングと反応する。切断したセラミックブロックから取られた試料は、溶融キャストしたかまたは焼結したセラミック材料が製造に由来する大量の大小のクラックさらにはポアを含むことを明瞭に示す。このようなセラミックにおける相の測定によるバルク密度と計算による結晶学的密度との間の比は、また、窯で焼かれたセラミック材料のほとんどに、かなりの多孔性があることを示す。
【0047】
前記のこれら2つの反応の種類は、気相のアルカリ成分(式(1a、3a)を参照)、または塩溶融物のアルカリ(式(1b、3b、4c、4d)を参照)と、セラミックライニングの様々な相との間のかなりの数の簡単な反応式によって記述でき、新たに生成する固体アルカリ相は、その系における固体材料の全量の体積のかなりの増加に寄与する。
2Na(g)+H2O(g)+11Al2O3(s) ⇔ Na2O・11Al2O3(s)+H2(g) (1a)
Na2CO3(l)+11Al2O3(s) ⇔ Na2O・11Al2O3(s)+CO2(g) (1b)
2Na(g)+H2O(g)+7Al2O3(s) ⇔ Na2O・7Al2O3(s)+H2(g) (2a)
Na2CO3(l)+7Al2O3(s) ⇔ Na2O・7Al2O3(s)+CO2(g) (2b)
2K(g)+H2O(g)+11Al2O3(s) ⇔ K2O・11Al2O3(s)+H2(g) (3a)
K2CO3(l)+11Al2O3(s) ⇔ K2O・11Al2O3(s)+CO2(g) (3b)
2Na(g)+H2O(g)+Al2O3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+CO2(g) (4a)
Na2CO3(l)+Al2O3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+CO2(g) (4b)
Na2S(l)+H2O(g)+Al2O3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+H2S(g) (4c)
2NaOH(l)+Al2O3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+H2O(g) (4d)
2NaOH(g)+Al2O3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+H2O(g) (4e)
【0048】
反応器における酸化アルミニウム系材料についてなされた分析は、運転中にかなりの量のNaAlOさらには他のタイプのβ−アルミナ相がセラミックライニング内で生成されたことを明白に示す。
【0049】
溶融物と2つの最もありふれたβ−アルミナ相との反応に対応する式は同様であろう。式(5a〜7a)を参照。
10Na2CO3(l)+Na2O・11Al2O3(s) ⇔ 22NaAlO2(s)+10CO2(g) (5a)
5Na2CO3(l)+Na2O・7Al2O3(s) ⇔ 10NaAlO2(s)+5CO2(g) (6a)
4NaCO3(l)+7Na2O・11Al2O3(s) ⇔ 11Na2O・7Al2O3(s)+4CO2(g) (7a)
【0050】
望ましくない大きな体積増加を示す例として、気相からの1モルのNa(g)(1a)が、または溶融物からの1モルのNaCO(l)(1b)がライニングと反応する時に、反応の固体生成物と固体反応物のモル体積の間の違いに基づいて、系における固相の体積増加が72.5cmと計算できる。したがって、これらの2つの反応は、セラミックの固相の26%の体積増加を生じるであろう。
【0051】
セラミックのこのような化学的に条件付けられた26%の体積増加は、セラミックが20℃から1000℃まで加熱された時の、セラミックの全体積のたった約2.5%の、熱による体積増加と都合よく比較できる。この化学的に条件付けられた非常に大きな体積増加のために、ライニングの固相のほんの小さな割合が気相のまたは塩溶融物のアルカリと反応し、より大きな体積を有する他のセラミック相を生成した時でさえ、運転中にライニングには非常に速く大きな内部応力が蓄積され得る。
【0052】
ナトリウムを含むガスまたはソーダ溶融物がセラミック材料のクラックに浸透する時には、それが反応して固体のナトリウム含有セラミック相を形成するにつれて非常に大きな破壊力を発生するであろうということに注意されたい。これは、新しいセラミック相がクラック内でまたはクラックの近くで形成される時に、それと同時に反応に関連してクラック部分において消費される固体の体積よりずっと大きな体積を、これらの相が局所的に占めるであろうということに依存している。表面層およびクラックの内部で新たに生成する相は、より大きな反応表面が生成されると同時に元のセラミックの漸進的な破壊を引き起こすであろうが、また、ライニングにおける固体セラミック相の全体積のかなりの増加も引き起こすであろう。これに関連して、セラミック材料は非常に脆く、それらは非常に小さい引張および曲げ強さを有し、また容易にクラックを生じるが、セラミック材料は非常に大きな圧縮強さを有し、このことは、セラミックライニングが反応器容器に非常に大きな圧縮荷重を容易に伝えることができることを意味するということを述べておかなければならない。
【0053】
セラミックライニングは少なくとも1年またはさらに長期の寿命をもつと期待されるので、反応(1a〜7a)の速度を制御するのはライニングへの/からのガスおよび溶融物の出入りの輸送ではなく、反応速度は、ライニングの様々なセラミック相が、初期段階にライニングのクラックおよびポアに浸透した局所的な塩溶融物およびガスと如何に速く反応するかによって制御されると十分に想定できる。
【0054】
浸透性で強く着色した水溶液を用いて実施したいくつかの実験は、溶融キャストによるセラミック材料の開孔またはクラックに、濡れ性の液体が素早く浸透することを明白に示す。同様に、酸化物セラミックへの良好な濡れ性、大きな表面張力、さらに低い粘度を有する炭酸イオン含有塩溶融物は、酸化物セラミックの大きなクラックだけでなく小さなクラックにも容易に浸透できる。非常に大きなセラミックブロックの調査は、ブロックの外側表面の一部だけが塩溶融物と直接接触した場合でさえ、深い内部のクラックが塩溶融物によって浸透されたことを示す。
【0055】
言うまでもなくライニングの最も高温部分(すなわち、セラミックライニングの内側表面または内側表面の近く)で最も早く生成する固体のアルカリ含有反応生成物は、通常、元のアルカリを含まないライニング材料より大きな熱膨張係数を有するであろう。そのように、NaAlOは14・10−6−1の熱膨張係数を有し、一方、β−アルミナのNaO・11AlおよびNaO・7Alは7.5・10−6−1の熱膨張係数を有し、α−Alは8.3・10−6−1の熱膨張係数を有する。反応器の停止および冷却で、NaAlOの豊富な生成した反応層は、その背後の元の材料よりいくらか多く、熱による収縮をするであろう。したがって、反応層は、反応器が冷めた時、クラックを生じてチェス板に似たパターンを生成する。さらに、セラミックライニングは、化学的および熱化学的応力が最大になる箇所で、生成した反応層の接線方向にクラックを生じるであろう。したがって、セラミックライニングのクラックを生じた部分は、冷めている間だけでなく次の通常の運転温度への加熱(これはライニングに温度変化による寸法変化(thermal movement)を引き起こす)の間にも、ライニング内から容易に剥がれるであろう。セラミックライニングの繰返し熱サイクルは、剥がれた反応した材料のかなりの損失を生じ得る。
【0056】
ライニングに新たに生成した半径方向および接線方向のクラックはまた、その材料へのさらなる溶融物およびガスの輸送を容易にし、これが表面および新たに生成したクラックの間からの連続的で化学的に条件付けられた体積増加を加速するであろう。これらの現象により、ライニングが反応器壁に向かって膨張し続けると同時に、かなりの量の材料が連続的に剥落し失われる結果となる。
【0057】
調査により、通常の酸化アルミニウム系セラミックライニングを有する市販のガス化プラントでの7カ月の運転後に、5〜10mmの厚さでピンク色の反応層が、塩溶融物に曝されたセラミックライニング全体に生成したことが示された。さらに、広範囲に亘るチェス板パターンのクラックがセラミックライニングの内側表面に形成された。この生成した反応層はまた、比較的影響を受けなかった背後のセラミック部分から欠け、さらには崩れようとする明白な傾向を有していた。生成した層の断片および薄片は、セラミック表面からナイフにより容易に壊れて剥がれた。生成したピンク色の反応層は、明らかに、その背後のライニングよりいくらか大きい体積を占めていた。生成した層の粉末x線分析は、大量のNaAlOさらには様々な相のβ−アルミナが反応層において生成し、それと同時に、その量のα−Alが減少したことを示した。
【0058】
ライニングの小さな部分(約1m)で、表面層のかなりの量(約20〜30mm)が剥落すると同時に、生成した反応層は10〜30mmの厚さであった。この表面層は、残っているセラミック表面が角の取れた端部および形状を有していたので、激しく焼結したように見えた。この激しい局所反応は、反応器の補助加熱用のオイルバーナーが時々セラミック表面のこの部分を過度に加熱したこと、および多くの油滴が恐らくこの高温表面で直接熱分解を受け、その後、生成したコーク(coke)が表面で燃えて表面の局所的で激しい過度の加熱を引き起こしたことによって説明できる。高温のために、塩溶融物、セラミック表面およびカーボンとの間で速い化学反応が起こり、これが、下の反応(8a)および(9a)に従ってライニングにかなりの損傷を生じ得る。
Na2CO3(l)+Al2O3(s)+C(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+2CO(g) (8a)
2NaOH(l)+Al2O3(s)+C(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+CO(g)+H2(g) (9a)
【0059】
調査により、還元雰囲気において約1100℃の温度で塩溶融物と接触している酸化アルミニウム系ライニングは、熱力学的に安定でなく、代わりに固体のNaAlOを生成することが明らかである。調査はまた、生成したNaAlOのソーダ溶融物への溶解度が非常に小さいに違いないと同時に、溶融物と固相との間の反応速度が遅いことを示す。そうでなければ、NaAlOを含む厚い反応層は、大量のソーダ溶融物が連続的に生成し、生成した反応層を通り過ぎて流れるライニング内にずっと存在できないであろう。別の見方として、溶融物中に生成したNaAlOの溶解速度がNaAlOの生成速度に比べて非常に小さいに違いなく、このような場合には、溶融物へのNaAlOの溶解度が比較的大きいことを許容できる場合でさえそうであるが、挙動のこの説明は妥当性が低いと考えられる。さらに、生成したNaAlOの層は、高い反応性を有する下にある相への塩溶融物の攻撃に対する一定の保護を提供しているように思われる。
【0060】
7カ月使用したライニング材料からのいくつかのコア試料さらには粉砕試料の調査は、塩溶融物に面する表面における5〜10mmの厚さの反応層の生成以外に、セラミックのクラックに浸透した塩溶融物が、接触している固相とクラックにおいて反応して、そこで、NaAlOを含み、また2〜5mmの幅を有するピンク色の反応ゾーンと、いくつかの場合には、190mmの厚さの溶融キャストセラミックブロックをまっすぐに貫いたクラックの伝播を生じたことを示す。反応器壁とセラミックライニングとの間の利用可能な膨張空間の測定は、7カ月の運転後に、ライニングが外向きに膨張したこと、および圧力容器の壁を背にする利用可能な全膨張空間の約3/4が使われたことを示す。運転中のライニングの連続的膨張は、膨張が止まらなければ、数カ月内に、反応器容器に非常に大きな機械的応力を及ぼすかもしれない。全膨張空間が使われたら、そのためにライニング全体が反応器容器からはぎ取り、新しいライニングに交換されなければならない。
【0061】
こうして、好ましい実施形態によれば、ライニング材料の主たる化合物が、生成した塩溶融物との反応で、10%を超えず、好ましくは7%を超えず、より一層好ましくは5%を超えないライニングの体積膨張を生じるのが適切である。
【0062】
高温およびNaOの高活性で、MgO・Al(スピネル)は、NaO・AlO(アルミン酸ナトリウム)と次の式に従って反応する。
Na2O・Al2O+4[MgO・Al2O3] ⇔ 3MgO+Na2O・MgO・5Al2O3
【0063】
したがって、セラミックバリアが、80〜95mol%のNaO・AlOおよびMgO・Alの相の混合物と、5〜20mol%のMgOおよびNaO・MgO・5Alの相の混合物とからなると利点がある。
【0064】
純粋なMgO・Al(スピネル)相が塩溶融物に対してたいへん耐性があるという事実は、溶融物との接触で生成し、NaO・AlOおよびMgOの相(見かけ上塩溶融物と平衡にあり得る)からなる高密度反応層によって、MgO・Al(スピネル)相が保護されていることに主に依存している。また、前記反応は、如何なる認められるほどの体積変化もなしに起こり得るが、これは、生成した反応層が短時間に剥落しようとする傾向なしに、比較的高密度の反応層が、MgO・Al(スピネル)に富んだライニング上にそれ自体で形成されることを意味することにも注意されたい。
【0065】
セラミックバリアがCaO・AlおよびNaO・Alを含む場合、反応が起こり、次の式に従って3元相の2NaO・3CaO・5Alが生成する。
2[Na2O・Al2O3]+3[CaO・Al2O3] ⇔ 2Na2O・3CaO・5Al2O3
【0066】
したがって、セラミックバリアが、製造後に最初から、55〜90mol%のNaO・AlO、5〜15mol%のCaO・Alおよび5〜10mol%のMgOの混合物からなると利点がある。前記の2つの反応は、生成する固相の如何なる認められるほどの体積変化もなしに起こり、他方、反応性の相の混合物は、焼結がより速く、またはより低温で起こるので、セラミックバリアの製造/焼結における利点を構成することに注意されたい。この方法は反応焼結と呼ばれる。
【0067】
ライニングの安定性にとって有害である第3の種類の反応は、セラミック表面に含まれる1つまたは複数の固相の、塩溶融物への継続的な溶解を引き起こす反応であり、これは、塩溶融物に曝されている表面から材料が、溶解したイオンの形で連続的に失われることを意味する。さらに、他の比較的耐腐食性の固相がセラミック表面における足場を急速に失い、大小の粒子の形で側を通る塩溶融物に運び去られるという、セラミックのバインダー相の選択的溶解による2次的効果があり得る。下の反応式(10a)を参照。
2Na2CO3(l)+SiO2(s)+Al2O3(s) ⇔ [SiO44-+4Na+](溶融物に溶けた遊離イオン)+Al2O3(s)(溶融物に失われる固体粒子)+CO2(g) (10a)
【0068】
新たなアルカリ相がまた、反応表面にまたはそのすぐ下に生成され得るが、反応表面でそれらは局所的にベース相よりかなり大きな固体体積を占めるであろう。したがって、新たに生成した固相は元のライニングの進行するクラック生成を引き起こし、結果として、溶融物に面するより大きな反応表面を生じ得る。下の反応式(11a)を参照。
2Na2CO3(l)+2SiO2(s)+Al2O3(s) ⇔ Na2Al2Si2O9(s)+CO2(g) (11a)
【0069】
ライニングの酸性バインダー相(例えば、SiOの相)、低融点を有する相または気相は、これらが流動性アルカリ塩溶融物と長い時間接触している時には、このタイプの損傷メカニズムに弱い。開孔または多数のクラックを有する材料は、この場合攻撃が大きな露出表面で同時に起こり得るので、このような損傷に特に弱い。これらの理由で、多くのケイ酸塩系セラミック材料は、塩溶融物の共融温度(これは約750℃である)を超える温度でこの用途には適さない。
【0070】
予想され得るように、溶融キャストセラミックは溶融物の固化による大きな結晶、さらには製造に関連する冷却の間の生成する非常に多量のミクロおよびマクロクラックを含むが、取り込まれたガスポケットによって生じるいくつかの非常に大きいポアも含む。材料におけるいくつかの異質の相(不純物に関連する)も、主な相が固化して結晶セラミックブロックを形成する時に、強く結晶粒界に濃縮されるであろう。したがって、それに特有の低い耐腐食性を有する少量の特定の不純物相は、それらが主に粒界に濃縮していて、材料における反応攻撃部位を形成する場合、材料の一般的安定性に大きな悪い方向の影響を及ぼし得る。同様に、粒界に濃縮され、溶融物中での腐食に対して良好な安定性を有する他の少量の添加剤は、材料の一般的安定性によい方向の影響を及ぼし得る。
【0071】
しかし、ガス化プロセスでは、反応器が加熱され冷却される時に、全く標準的である繰返し温度変化に耐えるはずの厚いライニング材料は、大きく高密度の焼結セラミックブロックにおいて温度変化に関連して常に生じる大きな内部熱応力によって直ちに多数の小片に割れる/破壊されることのないように、多数のミクロクラックまたはポアを必ず含んでいなければならない。
【0072】
熱衝撃に対するセラミックライニングの熱安定性を向上させるために、セラミックライニングには1つまたは複数のさらなる相の特定の混合が(これらの相がまた主たる系と共存でき、それらがソーダ溶融物に耐性があれば)存在すべきである。焼結された多相セラミック材料が冷める時、主として相の熱膨張における違いのために、セラミックにはミクロクラックの活発な生成がある。ミクロクラックは材料の耐熱衝撃性を強く向上させ、また材料の破壊靱性も向上させる。アルカリ土類金属酸化物の添加剤(主として、MgO、CaOおよびSrO)は、このような酸化物がNaOおよびAlと一緒に高融点で安定ないくつかの2元および3元相を生成し、これらの相は塩溶融物がセラミックライニングを通して浸透し膨張空間に達し、反応器壁を損傷することを防止するので、酸化アルミニウム系セラミックの製造に適している。
【0073】
したがって、走査電子顕微鏡分析、化学分析、粉末x線分析、熱力学的解析、ナトリウム含有塩溶融物中の酸化アルミニウム系セラミックの挙動による腐食試験に基づいて、結論は、NaAlO系のセラミックライニングは、本発明によれば、黒液のガス化反応器において機能を果たすということである。重要な理由は、NaAlO相が約1650℃の高融点を有すること、それが標準的な反応器温度または約750〜1150℃でソーダ溶融物に非常に溶けにくいこと、それがほとんどの既存の酸化アルミニウム系ライニング材料(塩溶融物とゆっくりと反応し、結果的にかなりの体積増加を伴い、この体積増加が、セラミックライニングを物理的に傷つけ、また、セラミックライニングと反応器壁との間に利用可能な適切に大きい膨張空間がなければ、反応器容器に非常に大きな機械的負荷を課し得る)とは対照的に塩溶融物中で熱力学的に安定であることである。
【0074】
ライニング材料の製造
例えばNaAlO系ライニングを製造する場合、NaAlOは、ギブス石(Al(OH))、ボーキサイトAlO(OH)、または微粒子α−Alまたはこれらの混合物から、1200〜1400℃、適切には約1350℃の温度での溶融NaCOとの焼結反応により製造できる。下の式を参照。
Na2CO3(l)+2Al(OH)3(s) ⇔ 2NaAlO2(s)+CO2(g)+3H2O(g)
【0075】
良好な化学的変換と適度に大きい結晶サイズを有する均質なNaAlO相、および粉砕後の良好な粉末プレス特性を実現するために、恐らく、部分的に反応した混合物のさらなる粉砕、その後のより高い温度での新たな焼結が必要とされ得る。製造されたNaAlOは、α−Alの粉砕具の助けによって適切に乾式粉砕して、微粒子粉末にすることができる。粉砕具からのα−Alの剥脱は、粉末合成に関連する初期組成におけるNaCOの僅かに必要量を超える量によって、またはNaAlO系レンガの最終的な焼結に関連する割増しの添加によって補償できる。次いで、通常、自由に粉砕されたNaAlO粉末は、吸収(absorbing)成形キャビティにおける、粉末プレス、冷間等方圧プレスまたは鋳込み成形によって、常法により成形体に成形できる。微粒子NaAlOは、水中では比較的速く、しかし湿気のある空気中でもゆっくりと加水分解し、これは、水、あるいは水を含む粉砕媒体または成形添加剤は使用できないことを意味することが指摘されなければならない。
【0076】
成形体は約1500℃の温度で、約80〜90%の相対密度まで焼結される。NaAlOの焼結温度でのNaO(g)およびNa(g)の蒸気圧は、焼結が、自由表面からのNaOおよびNaの蒸発のために焼結体の表面でβ−アルミナ相が生成されないように、適当に密閉された窯設備において起こるのに十分高いと思われる。任意選択で、表面から失われるナトリウムを減らすために、成形体は、焼結に関連して、溶融キャストされたβ−アルミナおよびNaAlOの粗い粒子粉末により覆われることによって、保護されるべきである。
【0077】
このように、本発明の好ましい実施形態に従って、セラミックバリア16のNaAl成分は、1200〜1400℃、適切には約1350℃の温度での焼結反応によって、Al(OH)、AlO(OH)または微粒子α−Al、あるいはこれらの混合物を溶融NaCOと反応させることによって製造された。冷却後、反応した混合物は、MgAlなどの他のセラミック粉末相と一緒に自由流動性の微粒子粉末を生成させるために、Alの粉砕具を有する粉砕装置において乾式粉砕され、次いで、この粉末混合物は、成形キャビティに充填され、高圧プレスされて、予備成形体が形成され、次いで最後に、この予備成形体は、焼結後のセラミックにおいて10〜25%の所望の残留多孔度を生じる密度となるように、密閉窯炉において高温で焼結された。本発明は、自由流動性の微粒子粉末を実現するのに、粉砕機(mill)の使用に限定されず、本発明の原理に合致するように混合物を精密に分配し混合するという機能を達成するどのような装置でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の好ましい実施形態による化学反応器の上側部分を垂直に切断した横断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化反応器にセラミックバリアを配備する方法であって、
この反応器は、大量の有機または無機アルカリ金属化合物を含む黒液タイプの高エネルギー有機廃棄物を、空気または酸素による高温酸化により変換するように配備されており、前記高温酸化によって、前記有機廃棄物はかなりの量の水蒸気を含む高温還元ガスに変換され、前記無機化合物は750〜1150℃の温度のアルカリ含有塩溶融物を生成し、
また、この反応器は、反応物および生成物のための付随する入口および出口デバイスを有する外側シェル(14)を備えるように配備されており、該方法は、
シェル(14)の内側に1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)を備えるライニング(16、18)を配備すること;および
反応チャンバ(10)に面するライニング(16、18)の内側表面(17)が、この表面(17)と接触している生成した塩溶融物がこの表面(17)で自由に流動するのに十分なだけ大きい溶融物体積部分を有するのに十分なだけの高い温度を得るとともに、外側シェル(14)により近く位置するライニング(16、18)の残りの温度が、毛管力または流体静力学的力によって前記1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)の接合部、クラックまたは多孔の形のキャビティに浸透しようとする生成した塩溶融物が前記1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)内の位置で固化して固体の塩を生成するのに十分なだけ低いように、また反応器シェル(14)での有害な過度の温度を防ぐように反応器シェル(14)の温度が制御されるように、前記ライニングの全厚および熱伝導率を配備すること
を含む方法において、
反応器の最も内側のセラミックバリア(16)が、酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物(Me(I)O・AlおよびMe(II)O・Al型の複合物を生成している)を主に含むライニング材料からなっていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複合物が、前記の生成した塩溶融物との反応で、10%を超えず、好ましくは7%を超えず、より一層好ましくは5%を超えない、ライニングの体積膨張を生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のエネルギーの豊富な有機廃棄物が、高めた反応器圧力で、好ましくは0.2〜5MPaの圧力で、空気または酸素富化空気により燃焼されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のエネルギーの豊富な有機廃棄物が、パルプ工場からの濃い廃液/黒液から実質的になることを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
大量の有機または無機アルカリ金属化合物を含む黒液タイプの高エネルギー有機廃棄物を、空気または酸素による高温部分酸化により変換するための化学反応器であって、
前記高温部分酸化によって、前記有機廃棄物はかなりの量の水蒸気、水素ガスおよび一酸化炭素を含む高温還元ガスに変換され、前記無機化合物は約750〜1150℃の温度のアルカリ含有塩溶融物を生成し、
反応物および生成物のための付随する入口および出口デバイスを有する外側シェル(14)、ならびに、シェル(14)の内側に配備され、1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)を備えるライニング(16、18)を備え、
反応チャンバ(10)に面するライニング(16、18)の内側表面(17)が、この表面(17)と接触している生成した塩溶融物がこの表面(17)で自由に流動するのに十分なだけ大きい溶融物体積部分を有するのに十分なだけの高い温度を得るとともに、外側シェル(14)により近く位置するライニング(16、18)の残りの温度が、毛管力または流体静力学的力によって前記1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)の接合部、クラックまたは多孔の形のキャビティに浸透しようとする生成した塩溶融物が前記1つまたは複数のセラミックバリア層(16、18)内の位置で固化して固体の塩を生成するのに十分なだけ低くなるように、また反応器シェル(14)での有害な過度の温度を防ぐように反応器シェル(14)の温度が制御されるように、前記ライニングの全厚および熱伝導率が選択される化学反応器において、
反応器の最も内側のセラミックバリア(16)が、酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物(Me(I)O・AlおよびMe(II)O・Al型の複合物を生成している)から主になることを特徴とする化学反応器。
【請求項6】
前記複合物が、前記の生成した塩溶融物との反応で、10%を超えず、好ましくは7%を超えず、より一層好ましくは5%を超えない、ライニングの体積膨張を生じることを特徴とする、請求項5に記載の化学反応器。
【請求項7】
少なくとも内側セラミックバリア(16)が、50〜90mol%のNaAl、5〜35mol%のMgAlおよび5〜10mol%のNaO・MgO・5Alの混合物からなることを特徴とする、請求項5に記載の化学反応器。
【請求項8】
少なくとも内側セラミックバリア(16)が、少なくとも60%まで、MeAl(MeはNaとKの混合物を表す)からなることを特徴とする、請求項5に記載の化学反応器。
【請求項9】
セラミックバリア(16、18)における好ましくは5〜20%のAl成分が、同形として類似の成分Crに置き換えられることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の化学反応器。
【請求項10】
セラミックまたは金属の材料の柔軟なバリア(22)が、外側セラミックバリア(18)と反応器シェル(14)との間に配備されており、この柔軟なバリアが、1MPaを超えない圧力でその厚さに関して少なくとも60%だけ圧縮されることが可能であり、圧力を0.05MPaまで解除した時に少なくとも10%回復する性質を有することを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の化学反応器。
【請求項11】
前記ライニングの内側セラミックバリア(16)が、酸化アルミニウム(Al)とアルカリ金属酸化物(Me(I)O)およびアルカリ土類金属酸化物(Me(II)O)の少なくとも1種との複合物、および製造による通常の不純物から主になることを特徴とする、請求項5から10のいずれか一項に記載の反応器に使用することを意図する反応器ライニング。
【請求項12】
前記複合物が、前記の生成した塩溶融物との反応で、10%を超えず、好ましくは7%を超えず、より一層好ましくは5%を超えない、ライニングの体積膨張を生じることを特徴とする、請求項11に記載の反応器ライニング。
【請求項13】
前記内側セラミックバリア(16)が、50〜99%、好ましくは55〜95%のMe(I)AlまたはMe(II)Al(Me(I)はNa、またはKあるいはNaとKの混合物を表し、Me(II)はMg、CaまたはSrあるいはこれらの混合物を表す)からなることを特徴とする、請求項11に記載の反応器ライニング。
【請求項14】
内側セラミックバリア(16)が、50〜99mol%、好ましくは55〜95mol%のNaAlを含むことを特徴とする、請求項13に記載の反応器ライニング。
【請求項15】
1〜35mol%のMgAl、および最大で20mol%のMeO・MgO・5Alの少なくとも一方も含むことを特徴とする、請求項14に記載の反応器ライニング。
【請求項16】
1200〜1400℃、好ましくは約1350℃の温度での焼結反応によって、Al(OH)、AlO(OH)または微粒子α−Al、あるいはこれらの混合物を、溶融したNaCOと反応させること;
冷却後、反応した混合物を、MgAlなどの他のセラミック粉末相と一緒に自由流動性の微粒子粉末を生成させるために、Alの粉砕具を有する粉砕装置において乾式粉砕すること;および
前記粉末混合物を成形キャビティに充填し、それを高圧プレスして成形体とし、次いで、この成形体を、焼結後のセラミックにおいて10〜25%の所望の残留多孔度を生じるような密度となるように、密閉した窯炉において高温で焼結すること
によるセラミックバリア(16)のNaAl成分の製造を特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の反応器に使用することを意図する反応器ライニングの建造ブロックとして使用することを意図する材料の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507206(P2009−507206A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529962(P2008−529962)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050316
【国際公開番号】WO2007/030078
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508047842)
【Fターム(参考)】