説明

(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの調製方法

本発明は、式(I)の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの、式(V)のマロン酸ジアルキル(式中、R1bは、低級アルキルである)を用いることによる調製方法、及び糖尿病のような疾患の治療及び/又は予防に有用であるDPP−IVの製造のための本方法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式
【0002】
【化1】

【0003】
の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの調製方法、及びDPP IVに関連する疾患の治療及び/又は予防に有用である、式
【0004】
【化2】

【0005】
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の製造のための本方法の使用に関する。
【0006】
式II
【0007】
【化3】

【0008】
〔式中、R、R及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルからなる群により置換されていてもよい〕
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体、及び薬学的に許容されるその塩は、PCT国際特許出願WO2005/000848に開示されている。
【0009】
本発明の目的は、式Iのピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の製造において重要な中間体、すなわち、式Iの(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの、技術的に実行可能な合成を提供することである。
【0010】
以下に概説されるように、本発明の方法を用いて問題を解決し得ることが見出された。
【0011】
特に断りがない限り、以下の定義は、本明細書において発明を記述するために使用される様々な用語の意義及び範囲を説明及び定義するために示される。
【0012】
本明細書において、用語「低級」は、炭素原子1〜6個、好ましくは1〜4個からなる基を意味するために使用される。
【0013】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指し、フッ素、臭素及び塩素が、好ましい。
【0014】
用語「アルキル」は、単独で、あるいは他の基と一緒に用いられ、炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子1〜16個、より好ましくは炭素原子1〜10個の分枝鎖又は直鎖の一価飽和脂肪族炭化水素基を指す。
【0015】
用語「低級アルキル」は、単独で、あるいは他の基と一緒に用いられ、炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個の分枝鎖又は直鎖の一価アルキル基を指す。この用語は、さらに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどのような基で例示される。好ましい低級アルキル残基は、メチル及びエチルであり、メチルが、特に好ましい。
【0016】
用語「低級フェニルアルキル」は、上記で定義された低級アルキル基であって、ここで、該低級アルキル基の水素原子の少なくとも1個が、フェニル基に置き換えられているものを指す。フェニル環は、本明細書において定義されたように置換されていてもよい。好ましい低級フェニルアルキル基の例は、ベンジル、4−メチルベンジル、4−フルオロベンジル、3−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、2−フェニルエチル及び3−フェニルプロピルである。特に好ましいのはベンジルである。
【0017】
本明細書において使用される用語「低級アルケニル」は、炭素原子2〜6個、好ましくは炭素原子2〜4個を有し、且つオレフィン二重結合1又は2個、好ましくはオレフィン二重結合1個を有する、非置換又は置換された炭化水素鎖ラジカルを示す。例は、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)又は2−ブテニル(クロチル)である。
【0018】
用語「アルコキシ」は、基R’−O−(式中、R’は、アルキルである)を指す。用語「低級アルコキシ」は、基R’−O−(式中、R’は、上記で定義された低級アルキル基である)を指す。低級アルコキシ基の例は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ及びヘキシルオキシであり、メトキシが、特に好ましい。
【0019】
用語「低級アルコキシカルボニル」は、基R’−O−C(O)−(式中、R’は、上記で定義された低級アルキル基である)を指す。
【0020】
用語「アリール」は、芳香族一価単環式又は多環式炭素環式基、例えば、フェニル又はナフチル、好ましくはフェニルを指し、場合により、独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ、シアノ、アジド、アミノ、ジ−低級アルキルアミノ又はヒドロキシにより一置換、二置換又は三置換されていてもよい。
【0021】
用語「シクロアルキル」は、炭素原子3〜6個、好ましくは3〜5個の一価炭素環式基を指す。この用語は、さらに、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルのような基で例示され、シクロプロピル及びシクロブチルが好ましい。そのようなシクロアルキル残基は、場合により、独立して、低級アルキル又はハロゲンにより一置換、二置換又は三置換されていてもよい。
【0022】
用語「ヘテロシクリル」は、場合によりさらに窒素又は酸素原子を含有してもよい、5員若しくは6員の芳香族又は飽和のN−複素環残基、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ又はピロリジノ、好ましくは、ピリジル、チアゾリル又はモルホリノを指す。そのような複素環は、場合により、独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ、シアノ、アジド、アミノ、ジ−低級アルキルアミノ又はヒドロキシにより一置換、二置換又は三置換されていてもよい。好ましい置換基は、低級アルキルであり、メチルが好ましい。
【0023】
用語「薬学的に許容される塩」は、無機酸又は有機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸など)と式IIの化合物との塩を包含し、これは、生物に対して非毒性である。酸との好ましい塩は、ギ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩及びメタンスルホン酸塩であり、塩酸塩が特に好ましい。
【0024】
詳細には、本発明は、式
【0025】
【化4】

【0026】
の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの調製であって、以下の工程:
【0027】
a) 式
【0028】
【化5】

【0029】
〔式中、R1aは、保護基である〕
のグリシジルエーテルを、フッ化塩で変換を行って、

【0030】
【化6】

【0031】
〔式中、R1aは、上記で定義したとおりである〕
のフルオロヒドリンを提供する工程;
【0032】
b) スルホン酸誘導体で、式IVのフルオロヒドリン中のヒドロキシ基をエステル化する工程;
【0033】
c) 塩基の存在下、式
【0034】
【化7】

【0035】
〔式中、R1bは、低級アルキル又は低級フェニルアルキルである〕
のマロン酸ジアルキルでエステル置換を行って、

【0036】
【化8】

【0037】
〔式中、R1a及びR1bは、上記で定義したとおりである〕
の中間体を提供する工程、その後、
【0038】
d) 酸性条件下で、環化、加水分解及び脱カルボキシル化する工程
を含む、調製を指す。
【0039】
1aは、ヒドロキシル保護基である。好ましくは、R1aは、tert−ブチル(t−Bu)、アリル、ベンジル(Bn)、4−メトキシベンジル(PMB)、3,4−ジメトキシベンジル(DMB)及びテトラヒドロピラン−2−イル(THP)からなる群より選択される。
【0040】
より好ましい実施態様において、R1aはt−ブチルの意味を有する。
【0041】
1bは、低級アルキル又は低級フェニルアルキルである。好ましくは、R1bは、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル及びベンジルからなる群より選択される。より好ましい実施態様において、R1bはメチルの意味を有する。
【0042】
工程a)
工程a)は、式IIのグリシジルエーテルをフッ化塩で変換を行って、式IIIのフルオロヒドリンを提供することを含む。
【0043】
式IIの好ましいグリシジルエーテルは、(S)−t−ブチルグリシジルエーテルである。フッ化塩は、好ましくは、二フッ化水素カリウムである。
【0044】
反応は、相間移動触媒の存在下で好都合に実施される。適切な相間移動触媒の例は、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩であり、これは通常、式IIのグリシジルエーテルに関して0.1mol%〜10mol%の量で適用される。
【0045】
通例、トリエチレングリコールのようなグリコールを希釈剤として使用するが、異なる有機溶媒を使用してもよい。
【0046】
反応温度は、通常、100℃及び170℃の範囲、そしてより好ましくは130℃〜140℃の範囲で選択される。式IIIのフルオロヒドリンは、適切な有機溶媒での抽出によるような、当業者に公知である方法により単離することができる。精製を残留物の減圧蒸留により起こしてもよい。位置異性体(R)−1−tert−ブトキシ−2−フルオロ−プロパン−1−オールのような望ましくない副生成物は、注意深い分割減圧蒸留により分離することができる。
【0047】
工程b)
工程b)は、式IIIのフルオロヒドリン中のヒドロキシ基をスルホン酸誘導体でエステル化することを含む。
【0048】
適切なスルホン酸誘導体は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホニルフルオリド、p−トルエンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド及び4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドからなる群より選択される。好ましいスルホン酸誘導体は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物である。
【0049】
ピリジン、トリエチルアミン又はジメチルアミノピリジンのような適切なアミンは、通常、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素から選択されうる不活性有機溶媒と一緒に存在する。好ましくは、ピリジン及びジクロロメタンが使用される。反応温度は、−40℃〜20℃、好ましくは−20℃〜0℃の範囲で選択される。
【0050】
得られたエステルは、塩酸水溶液で洗浄して、続けて溶媒の蒸発によるような、当業者に公知である方法により単離することができる。
【0051】
工程c)
工程c)は、塩基の存在下、式Vのマロン酸ジアルキルでエステル置換を行って、式VIの中間体を提供することを含む。
【0052】
好ましいマロン酸ジアルキルは、マロン酸ジメチルである。
【0053】
適切な塩基は、水素化ナトリウム若しくは水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物、又はナトリウムtert−ブトキシド若しくはカリウムtert−ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシドである。通例、反応は、−20℃〜50℃の温度で、好ましくは0℃〜20℃の範囲で、有機溶媒の存在下、実施される。適切な有機溶媒は、ジメトキシエタン又はテトラヒドロフランである。
【0054】
得られた式VIの中間体を単離してもよいが、通例、それは、工程d)に概説されるような手順にしたがって直接変換される。
【0055】

【0056】
【化9】

【0057】
〔式中、R1aは保護基であり、R1bは低級アルキル又は低級フェニルアルキルであり、特に、ここで、R1aはt−ブチルの意味を有し、R1bはメチルの意味を有する〕
の中間体は、新規化合物であり、したがって、これらは本発明のさらなる実施態様である。
【0058】
工程d)
工程d)は、酸性条件下で、その場で、環化、加水分解及び脱カルボキシル化することを包含する式Iの標的生成物への変換を含む。
【0059】
式VIの中間体を含有する反応混合物は、鉱酸水溶液で酸性化される。好ましくは、硫酸水溶液が使用される。反応混合物を、通例、使用される溶媒により、70℃〜110℃の範囲の温度で、24時間〜40時間保持する。単離は、適切な有機溶媒で抽出、溶媒の除去及び、続けて精製のための減圧蒸留によるような、当業者に公知である方法により起こすことができる。
【0060】
1a又はR1bがベンジルのような低級フェニルアルキル基である場合、接触水素化分解はまた、ヒドロキシ基の脱保護に対する加水分解の代わりに用いてもよい。水素化分解に使用される典型的な触媒は、テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンのような溶媒中のラネーニッケル又はパラジウム担持炭である。
【0061】
さらに、本発明は、式
【0062】
【化10】

【0063】
〔式中、
、R及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ又は低級アルケニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルから選択される基により置換されていてもよい〕
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体、及びその薬学的に許容される塩を調製するための本明細書に記載されたような手順の使用に関し、以下のスキームにしたがう。
【0064】
【化11】

【0065】
(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、塩化亜鉛及び塩化チオニルの存在下に開環し、対応する(R)−4−クロロ−3−フルオロメチル−ブチリルクロリド(VII)を提供することができる。次に、酸クロリドを、アミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(VIII)とカップリングさせ、ピリド[2,1−a]イソキノリンのフルオロメチル−ピロリジン−2−オン誘導体(IX)を形成し、これを脱保護後、所望のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(II)(スキーム1)を得ることができる。
【0066】
【化12】

【0067】
他の実施態様(スキーム2)にしたがって、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、HBr/酢酸の存在下、開環し、対応する(R)−4−ブロモ−3−フルオロメチル−酪酸エチルエステル(X)を提供する。次に、このエステルを、アミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(VIII)とカップリングさせ、ピリド[2,1−a]イソキノリンのフルオロメチル−ピロリジン−2−オン誘導体(IX)を形成し、これを脱保護後、所望のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(II)を得ることができる。
【0068】
【化13】

【0069】
さらに他の実施態様(スキーム3)にしたがって、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、アミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(VIII)と直接カップリングさせて、ピリド[2,1−a]イソキノリンのヒドロキシメチル誘導体(XI)を形成し、これを続けてフルオロメチル−ピロリジン−2−オン誘導体(IX)に環化させる。後者を脱保護し、所望のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(II)を得ることができる。
【0070】
本発明は、特に、(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製のための本発明の方法の使用に関する。
【0071】
本発明は、式
【0072】
【化14】

【0073】
〔式中、R、R及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルから選択される基により置換されていてもよい〕
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の調製方法に関し、
この方法は、上記に定義されたような本発明の方法に続いて、以下の工程:
【0074】
e) 式
【0075】
【化15】

【0076】
の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、

【0077】
【化16】

【0078】
〔式中、R、R及びRは、上記に定義したとおりである〕
のアミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体とカップリングする工程、
【0079】
f) 塩基の存在下、式
【0080】
【化17】

【0081】
〔式中、R、R及びRは、上記に定義したとおりである〕
の得られたアミドを環化し、式
【0082】
【化18】

【0083】
〔式中、R、R及びRは上記に定義したとおりである〕
の化合物を得る工程、そして
【0084】
g) アミノ基を脱保護する工程
を含む。
【0085】
さらに、本発明は、特に、(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製方法に関し、この方法は、上記に定義したような本発明の方法に続いて、以下の工程:
【0086】
e) 式
【0087】
【化19】

【0088】
の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、
(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルとカップリングする工程、
【0089】
f) 得られた(2S,3S,11bS)−3−(3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、塩基の存在下に環化する工程、そして
【0090】
g) 得られた(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを脱保護する工程
を含む。
【0091】
PCT国際特許出願WO2005/000848に開示されたような式(II)のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体は、DPP−IVに関連する疾患、例えば糖尿病、特に非インスリン依存性糖尿病、及び/又は耐糖能障害、ならびに、DPP−IVにより正常に不活性化されるペプチドの作用を増幅させることが治療的利益を与える他の状態の治療及び/又は予防に有用である。驚いたことに、本発明の化合物はまた、肥満、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び/若しくは代謝症候群の治療及び/又は予防、又はβ細胞の保護に使用することもできる。さらに、本発明の化合物は、利尿薬として、そして高血圧の治療及び/又は予防に使用することができる。意外にも、本発明の化合物は、当該技術分野で公知の他のDPP−IV阻害剤と比較して、改善された治療及び薬理学的特性(例えば、薬物動態及び生物学的利用能に関連して)を示す。
【0092】
以下の実施例は、本発明を例示しており、それを限定するものではない。
【0093】
実施例
実施例1
(S)−tert−ブチルグリシジルエーテル (S)−1の調製
【0094】
【化20】

【0095】
温度計及びマグネチックスターラー及び氷浴を装備した500ml丸底フラスコ中、(1R,2R)−(−)−1,2−シクロヘキサンジアミノ−N,N’−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルサリチリデン)コバルト(II)6.04g(10mmol;Strem Chemicals)及びrac tert−ブチルグリシジルエーテル260.38g(2000mmol)及び酢酸2.40g(40mmol)及びTHF(テトラヒドロフラン)20mlを、撹拌下、0℃に冷却し、脱イオン水19.82g(1100mmol)を一度に加えた。暗赤色の反応混合物を、空気雰囲気下、0℃で0.5時間、そして室温で23時間撹拌した。「フェンスケ」("Fenske")ガラスリング(20×2cmカラム;「フェンスケ」ガラスリング 直径約4mm)で充填したカラムで減圧蒸留を行って、無色の液体として、(S)−tert−ブチルグリシジルエーテル(S)−1 113.2g(43.5%)、沸点84−86℃/100mbarを得た。
【0096】
実施例2
(R)−1−tert−ブトキシ−3−フルオロ−プロパン−2−オール (R−2)の調製
【0097】
【化21】

【0098】
冷却器、温度計、メカニカルスターラー、不活性雰囲気(Ar)を供給するための装置及び油浴を装備した750ml四つ口フラスコ中、(S)−tert−ブチルグリシジルエーテル(S)−2 104.2g(実施例1から800mmol)、トリエチレングリコール80ml、二フッ化水素カリウム125.0g(1600mmol)及びテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩1.36g(4.0mmol;Fluka)の白色の懸濁液を、130℃で20時間撹拌した。RT(室温)に冷却後、褐色の懸濁液をジクロロメタン160mlで希釈し、脱イオン水500ml、5% NaHCO水溶液160ml及び10%ブライン160mlで洗浄した。すべての水層を、順次、ジクロロメタン80mlで抽出し、合わせた有機層を、KCOで乾燥させて、濾過した。常圧での蒸留により、溶媒の主要部分を除去後、残留物(〜200ml)を「フェンスケ」ガラスリングで充填したカラム(20×2cm)で減圧蒸留して、(R)−フルオロヒドリン(R)−2(無色の液体として63.3%(沸点104−105℃/100mbar))を得た。
【0099】
実施例3
トリフルオロメタンスルホン酸(R)−1−tert−ブトキシメチル−2−フルオロ−エチルエステル (R)−3の調製
【0100】
【化22】

【0101】
冷却器、温度計、メカニカルスターラー、不活性雰囲気(Ar)を供給するための装置及び氷−メタノール浴を装備した750ml四つ口フラスコ中、ピリジン32.2ml(400mmol)を、−10℃で、ジクロロメタン300ml中の(R)−フルオロヒドリン(R)−2 30.04g(200mmol;実施例2)の無色の溶液に、一度に加えた。トリフルオロメタンスルホン酸無水物34.7ml(210mmol)を、−10℃で1時間かけて加えて、撹拌を−10℃で1時間続けた。黄色の冷懸濁液を、順次、1M HCl 200ml、10%ブライン 120ml及び10% NaCO 120mlで洗浄した。すべての水層を、順次、ジクロロメタン80mlで抽出して、合わせた有機層を、KCOで乾燥させた。濾過後、溶媒を回転蒸発(20℃/310mbar)により除去して、黄色の油状物として粗トリフラート(R)−3 55.5gを得たが、これを−20℃で保存した。
【0102】
実施例4a
(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン (S)−4(NaOtBuを用いて)の調製
【0103】
【化23】

【0104】
置換:
メカニカルスターラー、冷却器、滴下漏斗、温度計、不活性雰囲気(アルゴン)を供給するための装置及び氷−メタノール又は油浴を装備した750ml四つ口フラスコ中、ナトリウムtert−ブトキシド21.14g(220mmol)を、20℃で1,2−ジメトキシエタン200ml中に溶解し、マロン酸ジメチル31.71g(240mmol)を、20℃で15分かけて加えた。0℃に冷却後、トリフラート (R)−4 55.5g(£200mmol;実施例3から)を、0℃で15分かけて加え、橙色の反応混合物を0℃で7時間撹拌した。
H−NMR(CDCl):δ 1.15(s,9H,C(CH),2.58−2.78(m,1H,CH),3.47(m,2H,CHO),3.67(d,1H,CH),3.74及び3.75(s,各3H,COCH),4.52及び4.67(m,各1H,CHF)により中間体(S)−4aを同定した。
【0105】
環化、加水分解及び脱カルボキシル化:
氷−メタノール浴を除去した。2M HSO 200ml(400mmol)を一度に加えて、黄色の反応混合物を48時間還流下で加熱した。室温に冷却後、反応混合物をジクロロメタン200mlで3回抽出し、3つのすべての有機層を2% NaHCO 100mlで洗浄した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、溶媒を回転蒸発(30−45℃/310mbar)により除去して、褐色の粗油状物22.1gを得た。減圧蒸留を行って、無色の油状物としてフルオロメチル−ブチロラクトン (S)−4 19.8g(84%)、沸点68−69℃/0.5mbarを得た。
【0106】
実施例4b
(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン (S)−4(NaHを用いて)の調製
【0107】
【化24】

【0108】
置換:
メカニカルスターラー、冷却器、滴下漏斗、温度計、不活性雰囲気(Ar)を供給するための装置及び氷−メタノール又は油浴を装備した750ml四つ口フラスコ中、1,2−ジメトキシエタン200ml中の60%水素化ナトリウム9.6g(240mmol)の懸濁液に、20℃で、15分かけてマロン酸ジメチル33.0g(250mmol)を加えた。室温で撹拌を1時間続けた。無色の混濁液を0℃に冷却して、トリフラート (R)−3 55.5g(<200mmol;実施例3から)を、0℃で15分かけて加えて、橙色の反応混合物を10℃で5時間撹拌した。
【0109】
環化、加水分解及び脱カルボキシル化:
4M HSO200ml(800mmol)を一度に加えて、黄色の反応混合物を還流下、40時間加熱した(〜85℃)。室温に冷却後、反応混合物を分液漏斗に移し、脱イオン水200mlで希釈した。上部のわずかな油性層(水素化ナトリウムから鉱油)の除去後、生成物をジクロロメタン400mlで3回抽出した。すべての有機層を、順次、10%ブライン100mlで2回洗浄し、合わせた有機層を乾燥させた(NaSO)。溶媒を回転蒸発(30−45℃/310mbar)により除去して、橙色の粗油状物22.1gを得た。減圧蒸留を行って、明黄色の油状物としてフルオロメチル−ラクトン (S)−1 19.4g(82%)、沸点65−68℃/0.5mbarを得た。
【0110】
実施例5
(R)−4−クロロ−3−フルオロメチル−ブチリルクロリドの調製
【0111】
【化25】

【0112】
メカニカルスターラー、Pt−100温度計及びアルゴン注入口を装備した350ml反応器に、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン226g(1.90mol)、塩化亜鉛64.9g(476mmol)及び塩化チオニル698ml(9.52mol)を仕込んだ。この混合物を66時間還流し、次に放置して室温に冷却した。反応の間にすでに形成した白色の沈殿物を、アルゴン雰囲気下で濾別して、少量の塩化チオニルで洗浄した。濾液を次のとおり蒸留した:塩化チオニルを、30℃油浴温度/20mbarで、第一の画分として回収した。次に、油浴温度をゆっくり上昇させて、57〜62℃/1mbarで画分を回収して、(R)−4−クロロ−3−フルオロメチル−ブチリルクロリド196g(58%収率;分析:97%)を得た。
【0113】
実施例6
(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
【0114】
【化26】

【0115】
メカニカルスターラー、Pt−100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を装備した4.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−(3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル160g(419mmol)、乾燥THF 1.50L及びトリエチルアミン29.3ml(209mmol)を仕込んだ。懸濁液を0−5℃に冷却し、0−5℃で90分間、温度を維持しながら、乾燥THF 417ml中の(R)−4−クロロ−3−フルオロメチル−ブチリルクロリド97.4g(544mmol)の溶液を加えた。約半量の酸クロリド溶液を添加後、反応混合物は高粘度になったが、依然として撹拌可能な状態であった。混合物を0−5℃で1.5時間撹拌し、乾燥THF 35ml中の酸クロリド9.37g(52.7mmol)の別の部分を加えて、混合物をさらに30分間、0−5℃で撹拌した。乾燥THF 900ml中のカリウムtert.−ブチラート145g(1.26mol)の懸濁液を、35分間、6℃以下に温度を維持しながら加えた。添加を完了後、混合物を一晩0℃で撹拌し、半飽和ブライン6.2Lに注いで、酢酸エチル6.2Lで抽出した。有機層を半飽和ブライン3.2Lで洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル2.2Lで2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム800gのパッドで濾過し、ロータリーエバポレーター(45℃/10mbar)で濃縮して、40℃/0.1mbarで16時間乾燥させて、粗生成物225gを得た。この物質を、溶離剤としてジクロロメタン/THF3:1を用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーに付して、生成物168gを得た。この物質を、メタノール800ml中に懸濁して、加熱還流して、15分後、放置してゆっくり室温にして、高粘度になったが、十分に撹拌可能な懸濁液を得た。室温で4時間後、赤褐色の混合物を0℃で一晩撹拌し、次に−15〜−20℃で2時間撹拌した。結晶を濾別し、冷TBME総量250ml(−15℃に予備冷却した)で少しずつ洗浄し、45℃/9mbarで6時間乾燥させ、次に45℃/0.1mbarで15時間乾燥させて、ラクタム127g(64%収率;分析:100%)を得た。
【0116】
実施例7
(2S,3S,11bS)−3−(3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
【0117】
【化27】

【0118】
メカニカルスターラー、Pt−100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を装備した1.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル50g(128mmol)、トルエン500ml及び2−ヒドロキシピリジン2.51g(25.6mmol)を仕込んだ。この僅かに帯褐色の懸濁液に、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン22.7g(192mmol)を室温で滴下した。添加の間、発熱状態(exothermy)は観察されなかった。滴下漏斗を総量100mlのトルエンで少しずつすすいだ。懸濁液を加熱還流したが、それが60℃から出発する清澄な溶液に変化する一方で、40分後、還流下で、懸濁液が再度形成した。還流下で全体として23時間後、高粘度の懸濁液を室温に冷却し、ジクロロメタン100mlで希釈し、室温で30分間撹拌した。濾過後、フィルターケークを、総量200mlのトルエンで少しずつ、次に総量100mlのジクロロメタンで少しずつ洗浄した。フィルターケークを50℃/10mbarで、20時間乾燥させて、生成物60.0g(94%収率;分析:100%)を得た。
【0119】
実施例8
(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
【0120】
【化28】

【0121】
メカニカルスターラー、Pt−100温度計、滴下漏斗、冷却浴及び窒素注入口を装備した1.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−(3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル28g(56.5mmol)及びTHF 750mlを仕込んだ。混合物を0℃に冷却し、THF 42ml中のメタンスルホン酸6.17ml(79mmol)の溶液を、10分間、0−5℃に温度を維持しながら加えた。0℃で、THF 42ml中のトリエチルアミン12.6ml(90.2mmol)の溶液を15分間加えた。得られた懸濁液を80分間、0−5℃で撹拌したが、それが徐々に高粘度になった。次に、1Mリチウム−ビス(トリメチルシリル)アミド141ml(141mmol)を15分間、混合物に加えたが、懸濁液が溶解した。溶液を放置して60分間、撹拌下で室温にした。冷却しないで水500mlを加えて、混合物を抽出し、その後に水相をジクロロメタン500mlと250mlで抽出した。有機層をそれぞれ半飽和ブライン300mlで洗浄し、合わせて、ロータリーエバポレーターで蒸発させた。得られた泡状物をジクロロメタン155mlに溶解し、濾過し、再度蒸発させて、僅かに帯褐色の泡状物として粗生成物30.5gを得た。この物質をメタノール122mlに溶解すると、濃い懸濁液が得られ、それを加熱還流下溶解した。還流の20分後、溶液を徐々に、2時間で室温に冷却したが、結晶化が10分後に始まった。2時間後、懸濁液を0℃に1時間、続けて−25℃に1時間冷却した。結晶を予備冷却した焼結ガラス(glasssinter)漏斗を介して濾別し、TBME 78mlで少しずつ洗浄して、45℃/20mbarで18時間乾燥させて、白色の結晶として生成物21.0g(77%収率;分析:99.5%)を得た。
【0122】
実施例9
(2S,3S,11bS)−1−(2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4(S)−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン二塩酸塩の調製
【0123】
【化29】

【0124】
メカニカルスターラー、Pt−100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を装備した2.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル619g(1.30mol)、イソプロパノール4.2L及び水62mlを仕込んで、懸濁液を40−45℃に加熱した。第二の容器中で、イソプロパノール1.98Lを0℃に冷却し、塩化アセチル461ml(6.50mol)を、温度を0−7℃に維持しながら35分間で加えた。添加の完了後、混合物を約15℃にして、次に1.5時間で第一の容器にゆっくり加えた。添加の完了後、混合物を40−45℃で18時間撹拌すると結晶化が1時間後に開始した。白色の懸濁液を20℃に2時間で冷却し、その温度で、1.5時間撹拌し、濾過した。結晶をイソプロパノール1.1Lで少しずつ洗浄し、45℃/20mbarで72時間、乾燥させて、白色の結晶として生成物583g(100%収率;分析:99.0%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化30】


の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの調製方法であって、以下の工程:
a) 式
【化31】


〔式中、R1aは、保護基である〕
のグリシジルエーテルを、フッ化塩で変換を行って、

【化32】


〔式中、R1aは、上記で定義したとおりである〕
のフルオロヒドリンを提供する工程;
b) スルホン酸誘導体で、式IVのフルオロヒドリン中のヒドロキシ基をエステル化する工程;
c) 塩基の存在下、式
【化33】


〔式中、R1bは、低級アルキル又は低級フェニルアルキルである〕
のマロン酸ジアルキルでエステル置換を行って、

【化34】


〔式中、R1a及びR1bは、上記で定義したとおりである〕
の中間体を提供する工程、その後、
d) 酸性条件下で、環化、加水分解及び脱カルボキシル化する工程
を含む、方法。
【請求項2】
1aがtert−ブチルであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1bがメチルであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程a)における変換に使用されるフッ化塩が、二フッ化水素カリウムであることを特徴とする、請求項1〜3記載の方法。
【請求項5】
工程a)における変換が、相間移動触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1〜4記載の方法。
【請求項6】
相間移動触媒が、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)における変換が、トリエチレングリコールの存在下で実施されることを特徴とする、請求項5及び6記載の方法。
【請求項8】
工程b)におけるエステル化に使用されるスルホン酸誘導体が、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタン−スルホニルフルオリド、p−トルエンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド及び4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドから選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
工程b)におけるエステル化が、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて、アミンおよび不活性有機溶媒の存在下、−40℃〜20℃の範囲の温度で実施されることを特徴とする、請求項1又は8記載の方法。
【請求項10】
工程c)におけるエステル置換に使用される塩基が、アルカリ金属水素化物又はアルカリ金属アルコキシドから選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ナトリウムtert−ブトキシドを使用することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程c)におけるエステル置換が、有機溶媒の存在下、−20℃〜50℃の温度範囲で実施されることを特徴とする、請求項1、10又は11記載の方法。
【請求項13】
工程d)における変換に使用される酸が、鉱酸水溶液であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
硫酸水溶液が使用されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】

【化35】


〔式中、R1aは保護基であり、R1bは低級アルキル又は低級フェニルアルキルである〕
の化合物。
【請求項16】
1aがt−ブチルであり、R1bがメチルである、請求項15の化合物。
【請求項17】

【化36】


〔式中、R、R及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ又は低級アルケニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルから選択される基により置換されていてもよい〕
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体、及びその薬学的に許容される塩の調製のための請求項1〜14記載の方法の使用。
【請求項18】
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製のための請求項17記載の使用。
【請求項19】

【化37】


〔式中、R、R及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルから選択される基により置換されていてもよい〕
のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の調製方法であって、
請求項1〜14記載の方法に続いて、以下の工程:
e) 式
【化38】


の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、

【化39】


〔式中、R、R及びRは、上記に定義したとおりである〕
のアミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体とカップリングする工程、
f) 塩基の存在下、式
【化40】


〔式中、R、R及びRは、上記に定義したとおりである〕
の得られたアミドを環化し、式
【化41】


〔式中、R、R及びRは、上記に定義したとおりである〕
の化合物を得る工程、そして
g) アミノ基を脱保護する工程
を含む、方法。
【請求項20】
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製方法であって、
請求項1〜14記載の方法に続いて、以下の工程:
e) 式
【化42】


の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンを、
(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルとカップリングする工程、
f) 得られた(2S,3S,11bS)−3−(3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、塩基の存在下に環化する工程、そして
g) 得られた(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを脱保護する工程
を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
本明細書において、先に記載された新規な方法、中間体及び使用。

【公表番号】特表2010−508327(P2010−508327A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535070(P2009−535070)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061676
【国際公開番号】WO2008/055814
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】