説明

1−ブタン酸誘導体およびその使用

【課題】抗腫瘍剤、抗炎症剤などとして有用なブタン酸誘導体およびそれを有効成分として含有する薬剤組成物を提供する。
【解決手段】下記構造式Iで示される新規なブタン酸誘導体および該ブタン酸誘導体含有の薬剤組成物。


式中、aとbは同一又は異なり、0又は1を表し、R1は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基等を表し、R2は水酸基、アルコキシカルボニル基等を表し、R3はシアノ基、カルボキシル基等を表し、R4は=O、アミノ基等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブタン酸誘導体、その種誘導体を含む薬剤組成物、および様々な疾病治療用薬剤組成物の製造のためのその種誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は今日死因の中で最も多いものの1つで、工業国では癌症例数は増加の一途を辿っている。これは特に、悪性腫瘍が高齢者の疾患であること、および感染症の制圧成果から今日では以前にも増して高齢者が増えていることによる。診断領域および治療領域のあらゆる進歩にも拘わらず、最頻発形態の体内生成癌に対する治癒見込みが20%を越えることは稀である。癌腫瘍は、現在では根絶することが、またはその成長を抑制することが可能である。腫瘍細胞を正常な細胞に戻すことはなお実現に到ってない。主要な治療法である手術および放射線照射の場合は生体から癌細胞を取り除く手段である。癌の化学治療薬として現在一般に使用されている細胞安定剤にしても、腫瘍細胞を破壊または破損させるだけである。その作用は殆どがあまり特殊なものではないため、同時に健康な細胞にも重大な損傷が発生する。一般に、腫瘍細胞は健康な細胞とは異なる物質代謝、特に解糖現象をひき起こす。解糖に関与するイソ酵素系の変化およびNADHの運搬における変化が腫瘍細胞による典型的な現象である。特に、解糖酵素の活性度が高められる。これにより、腫瘍細胞における典型的な好気的条件下で高い代謝も現われる。これの詳細については、非特許文献1が参考になる。
【0003】
(現状技術)
指摘した文献、すなわち非特許文献1から、解糖の抑制にグルコース類似物を使用することは公知である。当文献より知られるその他の手掛かりとして、解糖イソ酵素に対する阻害剤の使用がある。例えば、それにより適当な複合体を形成するか、あるいは複合体形成を阻害する。その結果として、腫瘍細胞をいわば飢えさせる。上記の化合物で問題なのは、それらの多くが遺伝子毒性であること、および/またはその作用が必ずしも腫瘍細胞だけに限定されるものでないことである。
【0004】
炎症性疾患および自己免疫反応に対する新しい作用物質との関係で言えば、非特許文献2から、これらの作用物質、つまりレフルノミド誘導体(Leflunomid-Derivate)も同じく解糖に関与していることが知られている。
【非特許文献1】E.Eigenbrodt他の共著、「選択した癌に対する生化学的および分子的観点からの考察(Biochemical an Molecular Aspects of Selected Cancers)」第2巻(1994年刊)、311ページ以降
【非特許文献2】U.Mangold他の共著、「ヨーロッパ生化学ジャーナル(Eur.J.Biochem.)」第266巻(1999年刊)、1〜9ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底には、特に癌細胞の増殖、同様にまた新形成腫瘍の成長および炎症を抑制できて、さらに例えば敗血性ショック、自己免疫反応、移植組織剥離など身体の過剰防御反応および急性、慢性炎症反応を阻止することができ、しかも同時に血液、免疫系および組織の各正常細胞に対して毒性が殆ど、あるいは全くない作用物質を用意しなければならないという技術的課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題は、本発明が示す通り、構造式Iを有する化合物、またはその種化合物の生理的に許容可能な塩を使用することによって達成される:
【化1】

【0007】
上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CN、−COO、−COOX2、−CO−X2、−CO−NHX2(ただし、X2=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール)であり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致し、R2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCの方向への環形成がなされてもよい。
【0008】
上記の化合物または塩は、「新形成の腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、特に全身性の紅斑性狼瘡、変性関節症、軟骨の分解を伴うリューマチ性同型団疾患、関節炎のあらゆる経過形態、特に類リューマチ性および慢性多発関節炎、関節外傷、固定による軟骨萎縮、敗血性ショック、白血球の粘着性障害を伴う疾患、TNFアルファ濃度の上昇による疾患、悪液質、クローン病、皮膚乾癬、ウェゲナー肉芽腫症症候群、特に細胞治療または原基細胞治療の実施中における移植組織剥離反応」から構成される疾患グループの治療および/または予防のための薬剤組成物の製造に使用される。
【0009】
上記の定義に該当する物質の幾つかは、それ自体および他の関係から知られている。しかし上記定義に該当するその他の物質は新規物質である。つまり、本発明は、さらに下記構造式Iを有する化合物、またはその種化合物の生理的に許容可能な塩を教示する:
【化2】

【0010】
上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CNであり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致しているものとする。
【0011】
最後に、本発明は下記構造式Iを有する化合物、またはその種化合物の生理的に許容可能な塩、および生理的に許容可能な少なくとも1つの補助物質および/または担体を含む薬剤組成物を教示する:
【化3】

【0012】
上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CN、−COO、−COOX2、−CO−X2、−CO−NHX2(ただし、X2=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール)であり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致し、R2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCの方向への環形成がなされてもよい。
【0013】
構造式Iの化合物には様々な立体異性体(特に左右対称体、ジアステレオマー)が存在し得るが、それらすべては本発明の対象である。アルキルの概念には直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基が含まれる。シクロアルキルの概念には直鎖または分岐鎖のアルキル置換基を持つシクロアルキル基も含まれる。アリールの概念にはアラルキル基も含まれ、その場合のアルキル置換基はアルキルであったり、またはシクロアルキルのこともある。
【発明の効果】
【0014】
驚いたことに、試験管内治療濃度での適用によると、一般式Iのそのような1−ブタン酸誘導体には、用量に依存した癌細胞増殖抑制作用のあることが分かった。その場合、検査した用量領域では細胞毒性作用は認められなかった。したがって、一般式Iの化合物は抗増殖作用を持っている。すなわち、細胞の増殖を抑制する働きがある。例えば、慢性多発関節炎の場合関節内皮が増生し、それが殆ど腫瘍のように増殖して関節内へと生長し、疾病期間が長引くにつれて軟骨および骨を破壊するに到る。本発明に基づく構造式Iの化合物は抗増殖作用を持ち、成長を直接遅らせるほか、いわゆる全身性炎症活動を後退させる。それも炎症領域での増殖、創傷治癒または再生の全過程において効果を示す。それゆえ、本発明に基づく化合物は、その薬理特性により、上で列挙したその他疾患の治療および予防にも抜群に適している。上記の医学上の定義および概念についてはRoche医学事典、第4版/1999年刊(ミュンヘン)が参考になる。
【0015】
本発明は、そのほか、構造式Iの化合物を少なくとも1つ含む、上記疾患の検証用診断薬にも関する。それは、検査対象である細胞または細胞培養基に当該化合物を接触させて然るべき方法で評価するというものである。これに関しては実施例2を参照のこと。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ノヴィコフ肝癌細胞に対する本発明の化合物の効果を示すグラフである。
【図2】ノヴィコフ肝癌細胞に対する本発明の化合物の効果を示すグラフである。
【図3】ノヴィコフ細胞の物質代謝に対するCMPCの抑制効果を示すグラフである
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の場合その枠内であれば、制限のない各種実施態様が可能である。したがって、本発明に基づく薬剤組成物は上記の定義に該当する各種複数の化合物から構成することができる。さらに、本発明に基づく薬剤組成物は、構造式Iの化合物とは異なる作用物質を少なくとも1つ補足的に含むこともできる。その場合は配合製剤の形態になる。なお、成分となるそれぞれの作用物質は単一調製形態にまとめることができる。すなわち、作用物質はその調製形態の中で混和された状態にある。しかしまた、各作用物質を空間的に離して、それぞれを同種または異種の調製形態として構成することも可能である。この関係で好ましい作用物質は、レフルノミド(Arava(登録商標))のようないわゆる免疫調節薬、メトトレキサートまたは抗リューマチ薬である。
【0018】
本発明に基づく化合物のなかでも、次の基を有しているものが特に好ましい:
R1=−H、メチルまたはエチルであり、
R2=−OX1、−COOまたは−COOX1(ただし、X1=H、メチルまたはエチル)であり、
R3=−CN、−COOH、−COO、−COX2、−CO−NHX2(R2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCとの環形成がなされてもよい)であり、
R4==O、もしくは−NHY(ただし、Y=HまたはCOR、ここでR=メチル、エチルまたは−NHAであり、A=H、メチルまたはエチルである)またはCO−NHZ(ただし、Z=−F、−Br、−Cl、−O−Clおよび/または−O−Br置換フェニル)である、
以下では、構造式Iに該当する化合物のうちで特に適している例について説明する。
【0019】
<化合物1>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=−CN、R4=−NH、a=b=0
<化合物2>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=COOH、R4=−NH、a=b=0
<化合物3>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=−CN、R4=−NHY、a=b=0
<化合物4〜6>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=−CN、R4=−CO−NH−CF(例えばメタ)、−CO−NH−CBr(例えばオルト、メタ)またはCOCl(例えばパラ)、a=b=0
<化合物7>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=−CN、R4=−CO−NH−Z、a=b=0
<化合物8>:
R1=メチル、R2=−OH、R3=−CN、R4=−NH、a=b=0
<化合物9>:
R1=−H、R2=−COOメチル、R3=−CN、R4==O、a=1、b=0
<化合物10>:
R1=−H、R2=−COO、R3=−COOH、R4==O、a=1、b=0
<化合物11>:
R1=−H、R2=−COO、R3=−COOH、R4=−NH−CO−NH、a=b=1
<化合物12>:
R1=−H、R2=−COO、R3=−COOH、R4=NH、a=b=1
<化合物13>:
R1=−H、R2=−CH−COOメチル、R3=−CN、R4==O、a=1、b=0
<化合物14>:
R1=−H、R2=−OX1、R3=−CO−X2、R4=NH、a=b=1
ただし、X1およびX2は脱離。
【0020】
<化合物15>:
R1=−H、R2=−COOH、R3=−COOH、R4=−NH−CO−NH、a=b=1
<化合物16>:
R1=−H、R2=−OX1、R3=−CO−NHX2、R4=NH、a=b=1
ただし、X1およびX2は脱離。
【0021】
特別好ましいのは、構造式Iを持ち、4−シアノ、4−オキソ ブタン酸メチルエステル(化合物9、元の形態:カルボメトキシプロピオニルシアニド)のように(オキソ エノール形)互変異性を示すことのできる化合物である。
【化4】

【0022】
構造式Iのイオン化合物に対する対イオンとしては、例えばNa、K、Li、シクロヘキシルアンモニウムまたは塩基性アミノ酸(例えばリシン、アルギニン、オルニチン、グルタミン)が使用の対象になる。本発明に基づく化合物から製造した医薬は、経口、筋内、関節周囲、関節内、静脈内、腹膜内、皮下または直腸へ投与することができる。本発明は、構造式Iを持つ少なくとも1つの化合物と製薬に適した生理的に許容可能な担体および必要に応じてその他適当な作用物質、添加物質または補助物質とで適当な製品形態に調製することを特徴とする、医薬製造のための方法に関する。固形または液状の適当なガレノス式薬剤形態または調製形態としては、例えば顆粒、粉末、糖衣錠、錠剤、(マイクロ)カプセル、座薬、シロップ、液汁、懸濁液、エマルジョン、液滴または注入溶液、および製造時に担体物質、崩壊剤、結合剤、被覆剤、膨潤剤、平滑剤または膏剤、味覚物質、甘味剤および溶媒など常用助剤の使用された、遅延作用特性を持つ製剤がある。補助物質としてはカルボン酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニットおよびその他の糖、粉末滑石、仁石膏、ゼラチン、澱粉、セルロースおよびその誘導体、肝油、ひまわり油、落花生油、胡麻油など動植物油、ポリエチレングリコール、および例えば、滅菌水、一価アルコールまたは例えばグリセリンなどの多価アルコールと言った溶剤が挙げられる。
【0023】
医薬は用量単位で製造および投薬されるのが好ましい。ただし、各単位は、有効成分として本発明に基づく構造式Iの化合物を一定量含むものとする。錠剤、カプセル、糖衣錠または座薬などの固形用量単位の場合、この量は1〜1000mg、好ましくは50〜300mgに、アンプル形態の注入溶液の場合では0.3〜300mg、好ましくは10〜100mgにすることができる。
【0024】
体重50〜100kgの成人、例えば体重70kgの成人患者の治療には、一日用量20〜1000mgの作用物質、好ましくは100〜500mgの作用物質とする。しかし状況によっては、一日用量を増減すべき場合もある。一日用量の投与は、用量単位を全部一度に、または用量を幾つかに分けた上で同時に行うことも、あるいは用量を分割し、かつ一定の時間的間隔を置いて複数回に分けて行うこともできる。
【0025】
以下では、実施態様だけを記した例を基にして本発明をより詳しく説明する。
【0026】
実施例1
Q.TangおよびS.Sen(Tetrahedron Letters(テトラヘドロン・レポート)第39号/1998年、2249〜2252ページ)に準拠して化合物カルボメトキシプロピオニルシアニドを製造した。典型的な方法として、10mlのアセトニトリルに溶かした1.79gのCuCN(20ミリモル)溶液に1.5g(10ミリモル)のカルボメトキシプロピオニルシアニドを添加した。この混合物を還流下で30分間加熱し、次に室温へ冷却後回転蒸発器で濃縮化した。その残留濃縮物をエーテルで溶かして、そのエーテル溶液を濾過した。溶剤除去後に少し黄味がかったオイルが得られた(収量0.95g、理論値の67%)。IR(cm−1)2225、1727。
【0027】
実施例2
使用したノヴィコフ肝癌細胞は、ドイツ癌研究センター/ハイデルベルクの腫瘍バンク(癌研究1951年、第17巻、1010ページ)からのものだった。25cmの培養瓶につきそれぞれ100,000細胞を発芽させた。実施例1の本発明に基づく物質、L−シクロセリンまたはデヒドロスレオニンを、例えば水、希釈エーテル、ジメチルスルフォキシドなどの細胞培養に適した溶剤に溶かして、培養媒質に各種濃度で添加した。例えば、L−シクロセリン(化合物16)またはデヒドロスレオニン(化合物2)の場合で80μM〜5000μM、カルボメトキシプロピオニルシアニド(化合物13)の場合では100μM〜300μMとした。培養4日後に瓶当りの細胞数をカウントした。結果を図1および2に表わした。それによると、本発明に基づく化合物の添加されていない対照試料に比べて、用量に依存した増殖抑制効果が認められる。
【0028】
実施例3
ノヴィコフ細胞の物質代謝に対するカルボメトキシプロピオニルシアニド(CMPC)の検査から、図3の観察結果にも認められるように、CMPCには解糖量を強力に抑制する作用のあることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iを有する化合物、またはその種化合物の生理的に許容可能な塩の使用であって、「新形成の腫瘍、炎症性疾患、自己免疫疾患、特に全身性の紅斑性狼瘡、変性関節症、軟骨の分解を伴うリューマチ性同型団疾患、関節炎のあらゆる経過形態、特に類リューマチ性および慢性多発関節炎、関節外傷、固定による軟骨萎縮、敗血性ショック、白血球の粘着性障害を伴う疾患、TNFアルファ濃度の上昇による疾患、悪液質、クローン病、皮膚乾癬、ウェゲナー肉芽腫症症候群、特に細胞治療または原基細胞治療の実施中における移植組織剥離反応」から構成される疾患グループの治療用および/または予防用の薬剤組成物の製造のための使用:
【化1】

上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CN、−COO、−COOX2、−CO−X2、−CO−NHX2(ただし、X2=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール)であり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致し、R2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCとの環形成がなされてもよい。
【請求項2】
構造式Iを有する化合物、またはその種化合物の生理的に許容可能な塩:
【化2】

上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CNであり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致しているものとする。
【請求項3】
構造式Iを有する化合物またはその種化合物の生理的に許容可能な塩、および生理的に許容可能な少なくとも1つの補助物質および/または担体を含む薬剤組成物:
【化3】

上記式において、
aとbは同じ場合も異なる場合もあり、その値は0または1であり、
R1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールであり、
R2=−OX1、−SX1、−COO、−(CH−COOX1または−COOX1(ただし、X1=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール、n=1〜8)であり、
R3=−CN、−COO、−COOX2、−CO−X2、−CO−NHX2(ただし、X2=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリール)であり、
R4==O、−NHYまたは−CO−NHZである:
ここで、
Y=−H、−CO−R(ただし、R=−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールまたは−NHA、またA=−H、−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールである)であり、
Z=フェニル、ナフチル、−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲン、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたフェニルまたは−ハロゲンおよび/または−O−ハロゲンで、および/または−C〜C18−アルキル、−シクロアルキルまたは−アリールで置換されたナフチル(ただし、−ハロゲン=−F、−Clまたは−Br)であり、
この場合、aおよびbはCおよびCにおける残留炭素の原子価数に一致し、またR2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCとの環形成がなされてもよい。
【請求項4】
構造式Iの化合物とは異なる作用物質、好ましくはレフルノミド、メトトレキサートまたは抗リューマチ薬を少なくとも1つ補足的に含む、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の化合物または薬剤組成物の使用であって、
R1=−H、メチルまたはエチルであり、
R2=−OX1、−COOまたは−COOX1(ただし、X1=H、メチルまたはエチル)であり、
R3=−CN、−COOH、−COO、−COX2、−CO−NHX2(ただし、R2におけるX1およびR3におけるX2の脱離下において、R3を介してCの方向への環形成がなされてもよい)であり、
R4==O、もしくは−NHY(ただし、Y=HまたはCOR、ここでR=メチル、エチルまたは−NHAであり、A=H、メチルまたはエチルである)またはCO−NHZ(ただし、Z=−F、−Br、−Cl、−O−Clおよび/または−O−Br置換フェニル)である、
ことを特徴とする使用。
【請求項6】
抗増殖作用を有していることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の構造式Iを有する化合物。
【請求項7】
炎症抑制作用を有していることを特徴とする、請求項6に記載の構造式Iを有する化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の構造式Iを有する化合物を少なくとも一つ含有する診断薬。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−292831(P2009−292831A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181024(P2009−181024)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【分割の表示】特願2002−571444(P2002−571444)の分割
【原出願日】平成14年3月13日(2002.3.13)
【出願人】(508306808)ヴァルブルク・グリコムド・ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Warburg Glycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Strasse 15 A, D−40699 Erkrath, Germany
【出願人】(508306794)シェーボ・バイオテック・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】ScheBo Biotech AG
【住所又は居所原語表記】Netanyastrasse 3, D−35394 Giessen, Germany
【Fターム(参考)】