説明

2−アミノ−2−フェニル−アルカノールの誘導体、その製造、及びこれを含有する医薬組成物

一般式(I)で表される2−アミノ−2−フェニル−アルカノールのエステル誘導体であり:
R1は、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、任意で、窒素原子のα位が、互いに独立して水素原子、又は直鎖若しくは分岐鎖アルキル(1〜4C)である1つ又は2つのRa及びRb基により置換され、かつR2は、水素原子であり、又は基-CO-O-CHR4-OCOR5で表され、ここでR4は水素原子又は直鎖又は分岐鎖アルキル基(1〜4C)であり、そしてR5は任意でベンジルオキシカルボニルアミノ、アシルアミノにより、若しくはアミノ酸の残りの部分(remainder)により置換されたアルキル基であり、又はヘテロシクリル基を構成し、又はR2は、直鎖又は分岐鎖アルキル基(1〜4C)、OH、アルコキシ、アルキルチオ、NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノで置換されたアルキル基(2〜4C)を表し、任意で、それらと結合する窒素原子と共に、5〜6員複素環が形成され、当該置換されたアルキル基が直鎖又は分岐鎖で、NとR2との間に2つ以上のCを含み、当該置換基のアルキル又はアシル基が、他に言及が無い限り、直鎖又は分岐鎖で(1〜7C)ある、上記誘導体、存在する場合、そのR若しくはS体、又はそれらの混合物、及びそれらの医薬として許容される塩に関する。
で表される、2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛作用に特徴を有する、様々に置換された2-アミノ-2-フェニル-アルカノールの誘導体に関する。また、本発明は、これらの誘導体の調製方法及びそれらを含有する医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO 99/01417において、(S)2-メチルアミノ-2-フェニル-n.ブチル3,4,5-トリメトキシベンゾエート及びその慢性疼痛の処置における使用が記載されている。
【0003】
欧州特許出願EP 1110549において、トリメブチン[(2-メチルアミノ-2-フェニル)ブチル3,4,5-トリメトキシベンゾエートマレエート]又はその立体異性体の炎症性疾患及び疼痛の処置における使用が記載されている。
【0004】
英国特許出願GB1,434826において、下記の構造:
【化1】

[式中、
R1〜R3は特に水素原子であってもよく、
R4はアルキル基であってもよく
R5及びR6は、水素原子、アルキル若しくはアラルキル基であってもよく、又はそれらが一緒になって、結合している窒素原子と共に、複素環を形成してもよい]
を有するアミノアルコールのエステルが記載されている。当該産物は、抗痙攣剤として有用である。また、当該英国出願には、R7の構造が-NH-R"7であるカルバメートも記載されている。そのように構成されるアリールカルバメートは、鎮痛及び抗炎症活性を有する。しかしながら、アミンに導入される改変は非常に限定されており、強力な鎮痛作用をもたらすことが出来ない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般式:
【化2】

[式中、
R1は、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、任意で、窒素原子のα位が、互いに独立して水素原子、又は1〜4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖アルキルである1つ又は2つのRa及びRb基により置換され、そして
R2は、水素原子又は基-CO-O-CHR4-OCOR5で表され、ここでR4は水素原子又は1〜4個のCを有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、そしてR5は任意でベンジルオキシカルボニルアミノ、アシルアミノにより、若しくはアミノ酸の残りの部分(remainder)により置換されたアルキル基であり、又はヘテロシクリル基を構成し、又は
R2は、1〜4個のCを含む直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜4個のCを含み、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノアルキルで置換されたアルキル基を表し、当該アルキル部分が、それらと結合する窒素原子と共に、5〜6員複素環を形成することが出来、当該置換された2〜4個のCを有するアルキル基が直鎖又は分岐鎖で、R2を有する窒素原子と置換基との間に2つ以上の炭素原子を含む]
で表される、2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体、並びに存在する場合、そのR若しくはS体、又はそれらの混合物、及びそれらの医薬として許容される塩が、鎮痛剤として、特に慢性疼痛の処置における鎮痛剤として、格別に興味深い活性を有することが、目下見出された。
【0006】
特段の言及がない限り、アルキル若しくはアシル基又は他の基は、直鎖又は分岐鎖であり、1〜7個の炭素原子を有し、特に、アシル基は、アセチル基であることが出来ると理解される。アリール又はアラルキル基は6〜10員の単環又は二環基であることが出来、例えばフェニル、ナフチル、ベンジル、フェネチル又はナフチルアルキルが挙げられる。
【0007】
ヘテロシクリル基は、単環又は二環の、芳香族又は非芳香族基であり、5〜10員であり、酸素、窒素又は硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含むことが出来ると理解される。特に、それらは、チエニル、フリル、ピロリル、ピロリジニル、ピペリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピペラジニル、ジオキソリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、テトラゾリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、インドリル、インドリジニル、キノリル、ナフチリジニルから選択出来る。
【0008】
上記アミノ酸は、特に、天然の又は人工のアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、バリン、フェニルアラニン、又はH2NC(CH3)2CO2H、それらのL型、D型等から選択されることが出来、そしてこれらの基は、合成反応の前に、アミド又はカルバメートの形態で保護され;保護基による保護及び開放は、TW Greene and PGM Wuts , Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Edition ISBN 978-0-471-69754-1, December 2006に記載の方法に従う。
【0009】
前記ハロゲン原子は、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0010】
本発明の好ましい態様において、アルキル又はアシル基は、直鎖又は分岐鎖であり、1〜4個の炭素原子を含む。
【0011】
本発明において、一般式(I)で表される2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体は、以下の一般式:
【化3】

[式中、
Zはハロゲン原子、ヒドロキシ基、又は反応性エステルの残りの部分(remainder)である]
で表される誘導体が、以下の一般式:
【化4】

[式中、
R1及びR3は上記で定義したものであり、R2は上記で定義したものである]
で表される2-アミノ-2-フェニルアルカノールの誘導体と反応して、続いて、適切な場合、R2が水素原子であるとき、取得される、以下の一般式:
【化5】

[式中、
R1及びR3は上記で定義したものである]
で表される2-アミノ-2-フェニルアルカノールのエステル誘導体のアミンは、以下のように置換される。
・R2が基-CO-O-CHR4-OCOR5である前記誘導体を取得しようとする場合、クロロアルキルクロロギ酸エステルと反応させ、続いて当該産物を、対応する酸R5COOHのアルカリ塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩もしくはセシウム塩R5COOCs等と、若しくは当該酸の銀塩もしくは第四級アンモニウム塩と反応させる。
・又は、R2が置換されたアルキルである前記誘導体を取得しようとする場合、ハロゲン酸又は以下の構造:
【化6】

[式中、
R2は上記で定義したものであり、
Xはハロゲン原子又は反応性エステルの残りの部分(remainder)である]
を有する反応性エステルと反応させ、続いて当該産物のアミド形態を還元してアミンにする。
【0012】
式(II)の産物は、3,4,5-トリメトキシ安息香酸の反応性誘導体、例えば酸ハロゲン化物、又は反応性エステルであることが出来る。
【0013】
一般式(III)の2-アミノ-2-フェニルアルカノールの誘導体の反応は、好ましくはR2が水素原子である誘導体を使用して実施される。
【0014】
一般式(II)の産物が酸ハロゲン化物又は反応性エステル等の3,4,5-トリメトキシ安息香酸の反応性誘導体であるとき、一般式(II)の誘導体と一般式(III)の2-アミノ-2-フェニルアルコール誘導体との反応は、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、式(II)の産物が酸ハロゲン化物の場合はジイソプロピルエチルアミン等の窒素性塩基の存在下で有利に実施され、当該反応は、一般に、0〜70℃の間の温度で、塩素化溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)等の有機溶媒中で、好ましくは窒素大気下で実施される。そして、式(II)の産物が反応性エステルの場合、メタノール又はエタノール等のアルコールの存在下、トルエン等の有機溶媒中、ナトリウムメチレートの存在下、25〜150℃の温度で実施されるのが好ましい。
【0015】
Zがハロゲン原子であるとき、塩素又は臭素のいずれかから選択されるのが有利である。
【0016】
一般式(II)の産物が3,4,5-トリメチル安息香酸であるとき、前記反応は、一般に、ハロゲン化溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等)中、カルボジイミドの存在下、0〜70℃の温度で実施される。
【0017】
R型又はS型の一般式(IV)の誘導体を取得しようとする場合、R又はS型の一般式(III)の2-アミノ-2-フェニルアルカノールの誘導体が反応させられることが理解される。また、R型又はS型の一般式(IV)の誘導体は、R又はS型の一般式(I)の誘導体をもたらすことも理解される。
【0018】
R2基が-CO-O-CHR4-OCOR5である生産物を取得しようとするとき、合成反応は、クロロアルキルクロロギ酸エステルに一般式(IV)の産物を反応させることにより実施され、当該反応は、塩素化溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、又はエーテル(テトラヒドロフラン等)等の有機溶媒中で、-10〜50℃の間の温度で実施される。続いて、得られた産物を、有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド等のアミド、塩素化溶媒(ジクロロメタン等)、エステル(酢酸エチル等)、芳香族炭化水素(トルエン等)、ニトリル(アセトニトリル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)中、ヨウ化ナトリウムの存在下、0〜60度の間の温度で、対応する酸R5COOHのアルカリ塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、又はセシウム塩、銀塩、又は第四級アンモニウム塩等と反応させて、例えば、R1及びR3が窒素原子と共に5員環を形成し、が-CO-O-C(CH3)-O-CO-CH2NHCOCH3である場合、前記産物は、下記スキームに従い調製出来る。
【化7】

【0019】
R2が置換アルキルである一般式(I)の誘導体を取得しようとする場合、一般式(IV)の誘導体のアミンのアシル化反応が、ハロゲン化溶媒(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)中、又はエーテル(テトラヒドロフラン)中、0〜70℃の間の温度で実施される。適切な場合、前記反応性エステルは、ヒドロキシベンゾトリアゾールを使用して調製されることが出来る。前記反応は、ボラン、又はアルミニウム及び水素化リチウムの存在下、テトラヒドロフラン中、0〜70℃の間の温度で実施される。
【0020】
一般式(II)の3,4,5-トリメトキシ安息香酸の誘導体は、当該分子の残りの部分を改変せずに、カルボン酸を反応性誘導体に変換する、通常の方法により調製出来る。
【0021】
一般式(III)のアルコールの前駆体である2-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸は市販のものであり、その誘導体は、この産物の合成と類似の方法により調製できる。
【0022】
より具体的には、前記対応する酸は、A.O. Martiryosyan, S.P. Gasparyan et al., Chemistry of Heterocyclic Compounds, vol. 36(4), 416-420 (2000)に記載の合成方法により、又はこれと類似の方法により調製出来、特に以下のスキームに従い調製される。
【化8】

R2が水素であり、式(III)のR1及びR3が置換基Ra及びRbを有する可能性がある環状形態で表されるとき、又は、R2が水素原子以外であり、式(III)のR1及びR3が置換基Ra及びRbを有することが出来る環状形態で表されるとき、下記の模式図に従い調製される。
【化9】

【0023】
第一の段階で使用される塩基はトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の第四級アミンであることが出来、カップリング剤は、例えばヒドロキシベンゾトリアゾールであることが出来る。
【0024】
一般に、一般式(III)の誘導体は、対応する酸をアルコールに還元することにより、及び特許出願FR 2 765 218又はEP 510 168に記載の方法と類似の方法により調製出来る。例えば、下記スキームが使用される。
【化10】

【0025】
S又はR型の一般式(I)の産物を取得しようとするとき、S又はR型の一般式(III)の2-アミノ-2-フェニルアルカノールの誘導体が反応させられることが理解される。
【0026】
S又はR型の一般式(III)の2-アミノ-2-フェニルアルカノールの誘導体は、当該分子の残りの部分に影響を及ぼさない鏡像異性体を調製する通常の方法を用いた分離により、又は欧州特許EP 510,168に記載の方法と類似の方法により調製出来る。
【0027】
存在する場合、医薬として許容される塩は、酸付加塩であることが出来る。鉱酸付加塩の具体例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩が挙げられ、また、有機酸付加塩の例として、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩が挙げられる。
【0028】
一般式(I)の誘導体は、通常の方法により、具体的にはクロマトグラフィー又は結晶化により精製出来る。
【0029】
一般式(I)の誘導体は、鎮痛活性が、特に慢性疼痛に対する鎮静活性が強力であるため、特に有用である。
【0030】
それらの活性は、G.B. Brown, 3H-batrachotoxinin-A benzoate binding to voltage-sensitive sodium channels: inhibition by the channel blockers tetrodotoxin and saxitoxin, J. Neurosci., 6, 2064 (1986)に記載の方法を利用して、ナトリウムチャンネル阻害試験において、インビトロで実証された。このインビトロでの試験において、本発明に係る産物は、3.2(μM)の濃度で、25〜90%の阻害活性を呈していた。
【0031】
この活性は、抗侵害効果を予測させるものであるから、内臓及び神経の疼痛の処置に潜在的な効用を有することが期待される(Roman F.J. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 289(3), 1391-97 (1999); V. Kayser et al., Life Sciences, 66(5), 433-39 (2000))。
【0032】
侵害におけるナトリウムチャンネルの重要な役割は、公知文献において広く支持されている(Wood J.N. et al., Voltage-gated sodium channels and pain pathways, J. Neurobiol., 61(1), 55-71 (2004); Cox JJ. et al., Nature; 444 (7121), 894-8 (2006); Ahmad S. et al., Hum. Mol. Genet., 16(17), 2114-21 (2007))。より具体的には、神経痛の処置におけるナトリウムチャンネルの治療可能性は周知である(Devor M., Sodium channels and mechanisms of neuropathic pain., J. Pain., 7(1 Suppl 1), S3-S12 (2006))。現在までに、多くの合成産物が、ナトリウムチャンネル阻害剤が、疼痛の処置において使用される治療剤の利益/リスクプロフィールを改善出来ることを実証している(Veneroni et al., Pain., 102(1-2), 17-25 (2003); Ok et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 16(5), 1358-61 (2006); Ilyin et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 318(3), 1083-93 (2006); Jarvis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 104 (20), 8520-5 (2007))。
【0033】
更に、本発明に係る産物は、既知の毒性を呈しない。
【0034】
一般式(I)の産物の中で、特に有用なものは:R1は、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、任意で、窒素原子のα位が、互いに独立して水素原子、又は1〜4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖アルキルである1つ又は2つのRa及びRb基により置換され、そしてR2は水素原子である。そして、それらの産物の中で、一般式(I)の2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体として特に有用なものは、R1及びR3が、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子と一緒に4〜7員の複素環を形成し、そしてR2は水素原子である。当該産物は、存在する場合、R型、L型又はそれらの混合物、及びそれらの医薬として許容される塩である。
【0035】
特に好ましいものは、以下に列挙するもの:
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の4-メチル-2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の4,4-ジメチル-2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の5-メチル-2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の5,5-ジメチル-2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の6-メチル-2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の6,6-ジメチル-2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の7-メチル-2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の7,7-ジメチル-2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
のいずれかである。
【0036】
以下の実施例は、本発明を例証する。
【実施例】
【0037】
以下実施例において使用される下記略語は、下記の意味を有する。
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
THF テトラヒドロフラン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0038】
実施例
【化11】

(2-フェニルピロリジン-2-イル)メタノール200 mg (0.001 mol)を、蒸留ベンド(distillation bend)を付けた三ツ口フラスコ中の6mlのトルエン及び0.4mlのメタノールに溶解する。当該反応混合物に、3,4,5-トリメトキシ-安息香酸メチルエステル0.026g (0.00124 mol)を添加する。当該反応混合物を130℃まで加熱し、ナトリウムメトキシド61 mg (0.0011 mol)を添加する。当該反応混合物を130℃で一昼夜置き、メタノールを蒸発させる。更に0.0266gの3,4,5-トリメトキシ-安息香酸メチルエステルを添加し、当該反応混合物を130℃で3時間加熱する。
【0039】
シリカのTLC(CH2Cl2/MeOH: 95/5)で、上記反応の完遂が確認される。
【0040】
前記反応混合物をシリカカラム(CH2Cl2/MeOH: 99/1)で精製して、54mgの3,4,5-トリメトキシ安息香酸の2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステルを、黄色の油の形態で取得した(収量:10%)。
【0041】
NMR 1H (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 1.56-2.17 (m, 4H, CH2); 2.96-3.15 (m, 2H, CH2N); 3.76-3.91 (3 (s), 9H, OCH3); 4.33 (dd, 2H, CH2O); 7.08 (s, 2H, ArH); 7.24-7.35 (m, 3H, ArH); 7.43-7.55 (d, 2H, ArH).
【0042】
MS (ES+): [M+H]+ , m/z: 372.2
【0043】
2-フェニルピロリジン-2-イル)メタノールは、以下の方法で調製出来る:
2-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸(217.20 mg, 0.0011358 mol)を、窒素大気下で、テトラヒドロフラン(THF) (5 mL)に溶解する。ボラン-THF錯体1MのTHF溶液を2.3mL滴下する。当該反応混合物を還流下で3時間加熱した後、氷冷バス中で冷却する。
【0044】
NaOHの5M溶液を、5mL滴下する。水相を、20mLの塩化メチレンで2回抽出する。得られた有機相をNa2SO4で脱水し、濾過し、そしてロータリーエバポレーター中で乾燥するまで濃縮する。こうして、200.0mgの2-フェニルピロリジン-2-イル)メタノールが、黄色の油の形態で取得される(収率:99%)。
【0045】
NMR 1H (300 MHz, CD3OD): δ (ppm) = 1.64-2.17 (m, 4H, CH2); 2.80-3.08 (m, 2H, CH2N); 3.21 (m, 1H, NH); 3.42-3.58 (m, 2H, CH2O); 3.61 (m, 1H, OH); 7.08-7.43 (m, 5H, ArH).
【0046】
一般式(I)の産物は、エアロゾル、又は局所形態で、経口、非経口、経舌(perlingual)又は直腸経路により投与出来る。
【0047】
また、本発明は、1つ以上の一般式(I)の2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体及び/又は存在する場合それらの塩を、精製状態で、又は適切かつ医薬として許容される1つ以上の希釈剤若しくは助剤と組み合わせた形態で含有する、医薬組成物にも関する。
【0048】
これらの組成物は、固体状態で存在してもよく、具体的には、錠剤、被覆された錠剤、ピル、ゼラチンカプセル、溶液若しくは懸濁物調製用の粉末、又は顆粒等が挙げられる。液体状態で存在してもよく、具体的には、水もしくはパラフィン油等の不活性な希釈剤を含む、注射用溶液若しくは懸濁物、飲用溶液若しくは懸濁物、シロップ、乳濁物、エリキシル剤が挙げられる。坐薬、クリーム、軟膏及びローション又はスプレー用の組成物の形態であってもよい。これらの医薬品形態は、通常の方法に従い調製される。
【0049】
経口投与用の固体組成物において、本発明に係る有効成分は、サッカロース、ラクトース、澱粉又はその誘導体、微結晶セルロース、コロイドシリカ、ポビドン、滑石、アラビアゴム等、1つ以上の不活性な希釈剤又は助剤と混合される。
【0050】
これらの組成物は、希釈剤の他に、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑剤、又は調整放出を意図した被覆材等の物質を含んでもよい。
【0051】
経口投与用の液体組成物は、希釈剤等の水性若しくは非水性ビヒクルを含んでもよく、水和剤、甘味料又は香料等の他の物質を含んでもよい。前記非水性組成物は、動物又は植物由来の油脂性物質、パラフィン誘導体、グリコール、大豆レシチン等を含んでもよい。
【0052】
非経口経路により投与出来る組成物は、より具体的には、筋肉内又は静脈内経路により投与出来る組成物である。非経口投与用の組成物は、滅菌溶液又は乳濁物であってもよい。以下のものは、溶媒又はビヒクルとして使用出来る:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル。
【0053】
また、これらの組成物は、助剤、特に水和剤、等張剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、及び/又は保存料を含んでもよい。
【0054】
前記滅菌は、例えば細菌フィルター、放射線照射又は加熱等、幾つかの方法により実施出来る。また、当該組成物は、使用時に滅菌水又は他の注射用滅菌媒体に溶解される、滅菌固体組成物の形態で調製される場合もある。
【0055】
直腸投与用の組成物は、坐薬又は直腸カプセルであって、有効成分に加えて、カカオバター、半合成グリセリド又はポリエチレングリコール等の賦形剤を含有するものであってもよい。
【0056】
局所投与用の組成物は、例えばパッチが挙げられ、有効成分の他に、適切な賦形剤、例えばシリコーン油、パラフィン等を含有してもよい。
【0057】
前記組成物は、エアロゾルであってもよい。液体エアロゾルの形態で使用するために、前記組成物は、安定な滅菌溶液、又は使用時に発熱原を含まない(apyrogenic)滅菌水、血清、又は他の医薬として許容されるビヒクルに溶解される固体組成物であってもよい。直接吸引用の乾燥エアロゾルの形態で使用するために、前記有効成分は微細に砕かれ、30〜80μmの、デキストラン、マンニトール又はラクトース等の希釈剤又は水溶性固体ビヒクルと組み合わせられる。
【0058】
ヒトの治療において、医師は、処置に最も適切な用量を、処置を受ける患者の年齢、体重、及び他の適切な要素に依存して決定する。通常の用量は、処置を受ける患者や対象の疾患に従って変動的であるが、例えば、成人の経口投与で、1日あたり50mg〜2gであることが出来る。
【0059】
下記の例示物は、本発明に係る組成物を例証する。
【0060】
例示物
経口経路により投与される製剤は、以下の組成をもって調製される:
3,4,5-トリメトキシ安息香酸の2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル・・・100mg
モノステアリン酸ラクトース、
改変コーンスターチ、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
カルボキシメチル澱粉ナトリウム、
酒石酸、
コロイドシリカ、
ステアリン酸マグネシウム、
マクロゴール4000、
二酸化チタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

[式中、
R1は、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、任意で、窒素原子のα位が、互いに独立して水素原子、又は1〜4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖アルキルである1つ又は2つのRa及びRb基により置換され;
R2は、水素原子であり、又は基-CO-O-CHR4-OCOR5で表され、ここでR4は水素原子又は1〜4個のCを有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、そしてR5は任意でベンジルオキシカルボニルアミノ、アシルアミノにより、若しくはアミノ酸の残りの部分(remainder)により置換されたアルキル基であり、又はヘテロシクリル基を構成し、
R2は、1〜4個のCを含む直鎖又は分岐鎖アルキル基、2〜4個のCを含み、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノアルキルで置換されたアルキル基を表し、当該アルキル部分が、それらと結合する窒素原子と共に、5〜6員複素環を形成することが出来、当該置換された2〜4個のCを有するアルキル基が直鎖又は分岐鎖で、R2を有する窒素原子と置換基との間に2つ以上の炭素原子を含み、
当該アルキル及びアシル基が、他に言及が無い限り、直鎖又は分岐鎖で、1〜7個の炭素原子を含む]
で表される、2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体。
【請求項2】
R1が、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、任意で、窒素原子のα位が、互いに独立して水素原子、又は1〜4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖アルキルである1つ又は2つのRa及びRb基により置換され、かつR2が水素原子であることを特徴とする、請求項1に記載の2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体、並びに存在する場合、そのR若しくはS体、又はそれらの混合物、及びそれらの医薬として許容される塩。
【請求項3】
R1が、R3と、それぞれに結合する窒素原子及び炭素原子とで、4〜7員複素環を形成し、かつR2が水素原子であることを特徴とする、請求項1に記載の2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体、並びに存在する場合、そのR若しくはS体、又はそれらの混合物、及びそれらの医薬として許容される塩。
【請求項4】
以下の構造
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の4-メチル-2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の4,4-ジメチル-2-フェニル-アゼチジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の5-メチル-2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の5,5-ジメチル-2-フェニル-ピロリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の6-メチル-2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の6,6-ジメチル-2-フェニル-ピペリジン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の7-メチル-2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
3,4,5-トリメトキシ-安息香酸の7,7-ジメチル-2-フェニル-アゼパン-2-イルメチルエステル
の一つと合致することを特徴とする、請求項1又は2に記載の2-アミノ-2-フェニル-アルカノールのエステル誘導体。
【請求項5】
請求項1に記載の誘導体を調製するプロセスであり、以下の一般式:
【化2】

[式中、
Zはハロゲン原子、ヒドロキシ基、又は反応性エステルの残りの部分(remainder)である]
で表される誘導体が、以下の一般式:
【化3】

[式中、
R1及びR3は請求項1に定義したものであり、R2は上記で定義したものである]
で表される2-アミノ-2-フェニルアルカノールと反応して、適切な場合、R2が水素原子であるとき、以下の一般式:
【化4】

[式中、
R1及びR3は上記で定義したものである]
で表される、取得される2-アミノ-2-フェニルアルカノールのエステル誘導体のアミンの置換が行われること、
・あるいは、R2が基-CO-O-CHR4-OCOR5である前記誘導体を取得しようとする場合、クロロアルキルクロロギ酸エステルと反応させ、続いて当該産物を、対応する酸R5COOHのアルカリ塩、若しくは当該酸の銀塩もしくは第四級アンモニウム塩と反応させること、
・又は、R2が置換されたアルキルである前記誘導体を取得しようとする場合、ハロゲン酸又は以下の構造:
【化5】

[式中、
R2は上記で定義したものであり、
Xはハロゲン原子又は反応性エステルの残りの部分(remainder)である]
を有する反応性エステルと反応させ、続いて当該産物のアミド形態を還元してアミンにすること
を特徴とする、前記プロセス。
【請求項6】
純粋状態で、又は1つ以上の適切な、及び医薬として許容される希釈剤、又は助剤と組み合わせられた、請求項1に記載の1つ以上の産物を含有する医薬組成物。

【公表番号】特表2013−500320(P2013−500320A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522224(P2012−522224)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051598
【国際公開番号】WO2011/012810
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(510207508)
【Fターム(参考)】