説明

2型糖尿病の遺伝薬理学的診断のためのバイオマーカー

TCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1におけるSNPと糖尿病との間の重要な関連性が観察された。加えてESRRA、PPARDおよびACACBのハプロタイプと糖尿病との間の重要な関連性もまた観察された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般にインビトロでの組織試料の分析試験およびさらに特に2型真性糖尿病の指標である遺伝子多型の態様に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
2型真性糖尿病(T2DM)はアメリカ人だけでおよそ1600万人が罹患する糖尿病の一般的な形態である。T2DMは患者集団の急激な増加ならびに多くの加齢性障害およびその合併症とのその関連性のために非常に大きな公衆衛生上の問題になりつつある。Amos AF et al., Diabet. Med. 14 Suppl 5:S1−85(1997)。T2DMはその発症に遺伝的および環境的な双方の因子が寄与し、起源的に多因子性である。しかしながら、疾患およびその処置の我々の理解は限定的で、そして満足のいくものではない。
【0003】
2型真性糖尿病を含む疾患の診断および処置に対する従来の医学的研究法は臨床データだけに基づくか、または診断試験と組み合わせて行われる。かかる伝統的な実践はしばしば処方された薬物治療の効果に、または個体対象の副作用の可能性を最低にするのに最適ではない治療選択に至る。
【0004】
治療特異的診断(治療的診断法とも称される)は新たな医療テクノロジー分野であり、これは疾患を診断し、正確な処置計画を選択し、そして対象の応答をモニタリングするのに有用な試験を提供する。換言すれば、治療的診断法は個体対象における薬物応答を予測および評価する、すなわち個別化医療に有用である。治療的診断試験はまた特に処置の恩恵を受ける可能性のある処置の対象を選択するか、または個体対象における処置の効果の早期のおよび客観的な指標を提供するのにも有用であり、そして遅延を最低限にして処置を変更することができる。
【0005】
特定の薬物に対する応答と個体患者の遺伝的プロフィールとの間の相関性を確立する遺伝薬理学的の進歩は新しい治療的診断研究法の発達の基礎である。そのために当分野では遺伝子配列および遺伝子発現における患者間の変化を評定する必要がある。遺伝子プロファイリングの一般的な形態は一塩基多型(「SNP」)と称されるDNA配列の変化の同定に依存し、これは疾患感受性、疾患の進行および個体の薬物応答における患者間の変化に至るか、またはそれに相関する遺伝子変異の一つの型である。当分野においてしたがって疾患感受性、進行、薬物応答性、副作用または最適用量に関連する対象の遺伝子型を同定するのに有用であるSNPのような遺伝的多様性を同定および特徴づける必要があることになる。加えて、SNPおよびハプロタイプ(一つの染色体上に存在する密接に連関する遺伝子マーカーのセット、この局面ではSNP)を用いて患者の改善の階層化によりより良好な臨床試験を設計することができる。
【発明の開示】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は当分野における必要性に対応するものを提供する。TCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1における一塩基多型(SNP)と糖尿病との間で重要な関連性が同定され、観察された。加えてESRRA、PPARDおよびACACBのハプロタイプと糖尿病との間の重要な関連性もまた同定された。これらのSNPおよびハプロタイプは2型糖尿病(T2DM)の診断の改善およびより良好な患者の階層化による臨床試験の設計に有用である。
【0007】
したがって本発明は個体の2型糖尿病を診断するための方法を提供する。個体の遺伝子型はTCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1から選択される遺伝子において決定される。2型糖尿病に対する素因の指標であるSNPが見いだされた場合、次いで個体は2型糖尿病に対する素因を有するとして診断される。
【0008】
本発明はまたESRRA、PPARDまたはACACBから選択される遺伝子における個体のハプロタイプを決定することにより、個体における2型糖尿病を診断するための方法をも提供する。2型糖尿病に対する素因の指標であるハプロタイプが見いだされた場合、次いで個体は2型糖尿病に対する素因を有するとして診断される。
【0009】
本発明はさらに個体の2型糖尿病を処置するための治療的診断方法を提供する。2型糖尿病を有することが疑われる個体の遺伝子型またはハプロタイプを決定する。遺伝子型またはハプロタイプが、2型糖尿病を有することが疑われる個体が2型糖尿病を有するための素因を有することを示した場合、次いで個体は適当な抗糖尿病薬またはその他の治療で処置される。
【0010】
本発明は、個体が抗糖尿病薬の研究に含まれるべきかどうかを決定するための方法を提供する。研究に含める候補の遺伝子型またはハプロタイプを決定する。遺伝子型またはハプロタイプが、候補が2型糖尿病を有するための素因を有することを示した場合、次いで個体は研究に含められる。遺伝子型またはハプロタイプが、候補が2型糖尿病を有するための素因を有さないことを示した場合、次いで個体は研究に含められないか、さもなければ対照として含められるかのいずれかである。
【0011】
本発明はまた本発明の方法において使用するためのキットをも提供する。
【0012】
(発明の詳細な説明)
T2DMの種々の候補遺伝子の可能な役割を調べるために、民族的背景(白色人種)、性別、年齢(+/−5歳)および肥満度指数(BMI)(+/−単位)が適合する1000人を超える2型糖尿病の参加者および1000人を超える対照に関して分析を実施した。SNPは公共データベースから選択されるか、または選択された遺伝子のゲノム領域の直接的なシークエンシングにより内部で開発された。SNPは各遺伝子(ACADSB、ACACB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1)の全ゲノム領域にわたり少なくとも5kbの平均間隔で空間があった。TCF2に関しては、分析用に数個の候補SNPのみが文献から選択された。TCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1のSNPと糖尿病との間に有意な関連性が観察された。加えて、ESRRA、PPARDおよびACACBのハプロタイプと糖尿病との間にも有意な関連性が観察された。
【0013】
本発明の実質的な理解を提供するために、本発明の特定の態様、様式、実施態様、変化および特徴を種々のレベルの詳細さで記載することは理解されよう。一般にかかる開示は、それを必要とする対象の診断および処置に有用なTCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1のSNPを含む遺伝的多様性を提供する。したがって、本発明の種々の態様は本発明の遺伝的多様性をコードするポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドをコードする発現ベクター、ならびに本発明の遺伝的多様性および/またはポリペプチドを発現する生物に関する。本発明の種々の態様はさらに疾患に対する素因を有する個体を同定するか、または薬物応答性、副作用もしくは最適な薬物用量に関して個体を分類するために本発明の遺伝的多様性を用いる診断/治療的診断方法およびキットに関する。その他の態様では、本発明は化合物バリデーションのための方法ならびに本発明の遺伝的多様性に関するデータを保存および分析するためのコンピューターシステムを提供する。したがってこれらの態様を説明する種々の特定の実施態様は以下のとおりである。
【0014】
定義
本明細書で用いる特定の用語の定義を以下に提供する。その他の用語の定義はU.S. Department of Energy, Office of Science, Human Genome Project(http://www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/glossary/)により提供される用語集に見いだすことができる。2型真性糖尿病(T2DM)は異常に高い血糖レベルを特徴とする障害の臨床的および遺伝的に異種の群である。T2DMは糖尿病症候群のおよそ90%を構成する。恐らく前臨床段階で始まる筋肉、肝臓および脂肪組織におけるインスリン抵抗性を特徴とする。最終的にインスリン分泌の欠損がインスリン抵抗性を代償することができず、そして糖尿病の臨床的発症を誘起する高血糖症に至る。Harris MI, Chapter 32:Definition and Classification of Diabetes Mellitus and the New Criteria for Diagnosis, pp. 326−334, in Diabetes Mellitus:a Fundamental and Clinical Text, 2nd Edition, editors:LeRoith D, Taylor SI, Olefsky JM;(Lippincott Williams &Wilkins, Philadelphia, Pennsylvania, 2000)。
【0015】
本明細書で用いる「アレル」なる用語は、特異的な染色体位置(遺伝子座)での遺伝子またはDNA配列の特定の形態を意味する。
【0016】
本明細書で用いる「抗体」なる用語には、限定するものではないがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体および抗体フラグメントがタンパク質に結合するのに十分な生物学的に機能的な抗体フラグメントを含む。
【0017】
本明細書で用いる「臨床応答」なる用語は、以下の:応答、応答なし、および逆応答(すなわち副作用)の定量的手段;のいずれかまたは全てを意味する。
【0018】
本明細書で用いる「臨床試験」なる用語は、特定の処置に対する応答に関する臨床データを収集するために設計された任意の調査研究を意味し、そして限定するものではないが第I、IIおよびIII相臨床試験を含む。標準的な方法を用いて患者集団を定義し、そして対象を登録する。
【0019】
本明細書で用いる化合物の「有効量」なる用語は、望ましい治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量であり、例えば処置される疾患、例えば本明細書で同定される遺伝的多様性およびポリペプチドに関連する疾患に関連する病徴の防御または低減を招く量である。対象に投与される化合物の量は疾患の型および重篤度ならびに一般健康状態、年齢、性別、体重および薬物に対する耐容性のような個体の特性に依存する。それはまた疾患の程度、重篤度および型にも依存する。当業者はこれらおよびその他の因子に依存して適当な用量を決定することができる。典型的には、治療的または予防的効果を達成するのに十分な本発明の化合物の有効量は1日あたり体重kgあたり約0.000001mgから1日あたり体重kgあたり約10000mgの範囲である。好ましくは、用量範囲は1日あたり体重kgあたり約0.0001mgから1日あたり体重kgあたり約100mgである。本発明の化合物を互いに、または一つもしくはそれより多いさらなる治療用化合物と組み合わせて投与することもできる。
【0020】
本明細書で用いる「発現」は、限定するものではないが一つもしくはそれより多い以下の:遺伝子の前駆体mRNAへの転写;成熟mRNAを生成するための前駆体mRNAのスプライシングおよびその他のプロセシング;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用およびtRNA利用性を含む);ならびに適当な発現および機能に必要な場合、翻訳生成物のグリコシル化および/またはその他の修飾;を含む。
【0021】
本明細書で用いる「遺伝子」なる用語は、プロモーター、エクソン、イントロンおよび発現を制御するその他の非翻訳領域を含むRNA生成物の調節された生合成のための全ての情報を含有するDNAのセグメントを意味する。
【0022】
本明細書で用いる「遺伝子型」なる用語は、個体の相同染色体の一対の遺伝子座において一つもしくはそれより多い多型部位で見出されるヌクレオチド対の非位相5’から3’配列を意味する。本明細書で用いる遺伝子型は全遺伝子型および/またはサブ遺伝子型を含む。
【0023】
本明細書で用いる「遺伝子座」なる用語は、遺伝子または身体的もしくは表現型的特徴に対応する染色体またはDNA分子上の位置を意味する。
【0024】
本明細書で用いる「調整剤」なる用語は、調整剤が不在のときのポリペプチドの発現レベルまたは生物学的活性レベルに比較して、ポリペプチドの発現レベルまたは生物学的活性レベルを変更させる(例えば増加または減少させる)任意の化合物である。調整剤は小型分子、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ヌクレオチドまたはその組み合わせでよい。調整剤は有機化合物または無機化合物でよい。
【0025】
本明細書で用いる「変異体」なる用語は、野生型からの任意の遺伝的な変化を意味し、すなわち変異、例えば一塩基多型の結果である。「変異体」なる用語は本明細書全体にわたって「マーカー」、「バイオマーカー」および「標的」なる用語と互換的に用いられる。
【0026】
本明細書で用いる「医学的状態」なる用語には限定するものではないが、処置が望ましい一つもしくはそれより多い身体的および/または心理学的病徴として明示される任意の状態または疾患を含み、そして以前におよび新たに同定された疾患およびその他の障害を含む。
【0027】
本明細書で用いる「ヌクレオチド対」なる用語は、個体からの染色体の2つのコピー上の多型部位で見出されるヌクレオチドを意味する。
【0028】
本明細書で用いる「多型部位」なる用語は、集団において少なくとも2つの選択的配列が見出される遺伝子座内の位置を意味し、その最も高い頻度はせいぜい99%である。
【0029】
本明細書で用いる「相になる」なる用語は、遺伝子座の2つまたはそれより多い多型部位に関するヌクレオチド対の配列に適用する場合、公知である遺伝子座の単一のコピー上のこれらの多型部位に存在するヌクレオチドの組み合わせを意味する。
【0030】
本明細書で用いる「多型」なる用語は、集団において>1%の頻度で存在する任意の配列バリアントを意味する。配列バリアントは5%または10%またはそれより多いような1%より有意に大きい頻度で存在し得る。また多型部位で個体において観察された配列変化を意味するために用語を用いることもできる。多型にはヌクレオチド置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを含み、そして必ずしもではないが、遺伝子発現またはタンパク質機能における検出可能な差異を招き得る。
【0031】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」なる用語は任意のRNAまたはDNAを意味し、それは未修飾または修飾RNAまたはDNAでよい。ポリヌクレオチドには限定するものではないが、一本および二本鎖DNA、一本および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本および二本鎖RNA、一本および二本鎖領域の混合物であるRNA、ならびに一本鎖またはさらに典型的には二本鎖または一本および二本鎖領域の混合物でよいDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。加えてポリヌクレオチドはRNAまたはDNAまたはRNAおよびDNAの双方を含む三本鎖領域を意味する。ポリヌクレオチドなる用語はまた一つもしくはそれより多い修飾塩基を含有するDNAまたはRNAおよび安定性またはその他の理由のために修飾されたバックボーンを有するDNAまたはRNAをも含む。
【0032】
本明細書で用いる「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわちペプチドイソスターにより互いに連結された2つまたはそれより多いアミノ酸を含む任意のポリペプチドを意味する。ポリペプチドは一般にペプチド、糖ペプチドまたはオリゴマーと称される短鎖、および一般的にタンパク質と称される長鎖の双方を意味する。ポリペプチドは20個の遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは翻訳後プロセシングのような天然のプロセシングか、または当分野において周知である科学的修飾技術のいずれかにより修飾されたアミノ酸配列を含む。かかる修飾は基礎的なテキストおよびさらに詳細な研究論文、ならびに膨大な研究文献において十分に記載されている。
【0033】
本明細書で用いる「SNP核酸」なる用語は、個体または個体群の間でそれ以外は同一のヌクレオチド配列内で可変であるヌクレオチドを含み、したがってアレルとして存在する核酸を意味する。かかるSNP核酸は好ましくは約15から約500ヌクレオチド長である。SNP核酸は染色体の一部でよいか、またはそれらは例えばPCRもしくはクローニングによる染色体のそのような部分の増幅による染色体の一部の正確なコピーでよい。本明細書では以後SNP核酸を簡単に「SNP」と称する。SNPはゲノムの単一の位置でのヌクレオチド可変性の発生であり、そこで2つの選択的塩基はヒト集団においてかなりの頻度で(すなわち>1%)発生する。SNPは遺伝子内またはゲノムの遺伝子間領域内で発生し得る。本発明によるSNPプローブはSNP核酸に相補的であるオリゴヌクレオチドである。
【0034】
「ハプロタイプ」は一緒に遺伝される傾向がある一つの染色体上に存在する密接に連関する遺伝子マーカーのセット、この局面ではSNPである。
【0035】
本明細書で用いる「対象」なる用語は、好ましくは対象がヒトのような哺乳動物であるが、動物、例えば家庭用動物(例えばイヌ、ネコ等)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えばサル(例えばカニクイザル)、ラット、マウス、モルモット等)でもよいことを意味する。
【0036】
本明細書で用いるように、薬剤または薬物の対象または患者への投与には自己投与および他人による投与が含まれる。記載されるような医学的状態の処置または防御の種々の様式は「実質的である」ことを意味し、それは完全な処置または防御を含むが、完全に満たない処置または防御もまた含み、そしてそこでいくらかの生物学的または医学的に関係する結果が達成されることが意図されることもまた理解されよう。
【0037】
遺伝子配列変化の同定および特徴付け
その保持率および蔓延する特性のために、SNPはヒト疾患状態に関与する遺伝子を位置決定するための重要な道具である可能性を有する。例えばWang et al., Science 280:1077−1082(1998)参照。いずれか一つのバリアントの影響は小さいかもしれないが、多くの共通する障害を発達させる危険性およびこれらの症状を処置するために用いられる医薬品の代謝は根本的なゲノム変化により実質的に影響を受けることがますます解明されてきている。
【0038】
多型の存在のために、種のいくつかのメンバーが変異していない配列(すなわち元来のアレル)を有し得るが、一方その他のメンバーは変異した配列を有し得る(すなわちバリアントまたは変異アレル)という点でSNPはアレルであると言われている。
【0039】
SNPと特定の表現型との間の関連性は、SNPが表現型の原因であることを示すまたは要求する必要はない。それよりむしろ単にSNPと、所定の表現型に実際に寄与するこれらの遺伝的因子との間のゲノム近接のためであり得て、そのためにSNPおよび該遺伝的因子は密接に連関する。換言すれば、SNPは「真の」機能的バリアントとの連鎖不均衡(「LD」)であり得る。ゲノムの2つの異なる位置のアレルが予測よりもさらに高度に関連する場合、LD(アレル関連性とも称される)が存在する。したがって、特定の表現型を引き起こす変異に近接するので、SNPを価値のあるマーカーとして提供することができる。
【0040】
本発明の多型部位の記載において便宜上遺伝子のセンス鎖を参照する。しかしながら、当業者には認識されるように、遺伝子を含有する核酸分子は相補的二本鎖分子でよく、そしてしたがってセンス鎖の特定の部位への参照は同様に相補的アンチセンス鎖の対応する部位への参照を意味する。換言すると、いずれかの鎖の同一の多型部位を参照することができ、そしてオリゴヌクレオチドは多型部位を含有する標的領域でいずれかの鎖に特異的にハイブリダイズするように設計することができる。したがって本発明はまた本明細書で記載するゲノムバリアントのセンス鎖に相補的である一本鎖ポリヌクレオチドをも含む。
【0041】
SNPの同定および特徴付け
一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、変成高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)によるヘテロ二本鎖分析ならびに直接DNAシークエンシングおよびコンピューターによる方法を含む多くの異なる技術を用いてSNPを同定および特徴付けすることができる。Shi et al., Clin. Chem. 47:164−172(2001)。公共データベースには豊富な配列情報がある。
【0042】
最も一般的なSNP分類方法には現在ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、および切断法が含まれる。これらの方法の各々には適切な検出系が接続されていなければならない。検出テクノロジーには蛍光偏光法(Chan et al., Genome Res. 9:492−499(1999))、ピロリン酸放出の発光検出(ピロシークエンシング)(Ahmadiian et al., Anal. Biochem. 280:103−10(2000))、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)基盤の切断アッセイ、DHPLC、および質量分析(Shi, Clin. Chem. 47:164−172(2001);方法は米国特許第6297018号および第6300063号に開示されるものである。
【0043】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0044】
INVADER(商標)テクノロジー(Third Wave Technologies Inc. Madison, Wisconsin, USAから入手可能)のような市販により入手可能である生成物を用いて多型を検出することもできる。このアッセイでは特異的な上流の「インベーダー」オリゴヌクレオチドおよび部分重複する下流プローブが相補的DNA鋳型に結合した場合、一緒に特異的構造を形成する。この構造はCleavase酵素により認識され、そして特異的部位で切断され、結果的にプローブオリゴヌクレオチドの5’フラップが遊離される。次いでこのフラグメントを反応混合物に含有される合成2次標的および2次蛍光標識シグナルプローブに関して「インベーダー」オリゴヌクレオチドとして供する。Ryan D et al., Molecular Diagnosis 4(2):135−144(1999)およびLyamichev V et al., Nature Biotechnology 17:292−296(1999)、米国特許第5846717号および第6001567号もまた参照されたい。
【0045】
限定するものではないがリボプローブ(Winter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7575(1985); Meyers et al., Science 230:1242(1985))および大腸菌mutSタンパク質(Modrich P. Ann Rev Genet 25:229−253(1991))のようなヌクレオチド誤対合を認識するタンパク質を用いるRNアーゼ保護法を含む誤対合検出技術を用いて多型の同一性を決定することもできる。これに代えて、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析(Orita et al., Genomics 5:874−879(1989); Humphries et al., in Molecular Diagnosis of Genetic Diseases, R. Elles, ed.,(1996)pp. 321−340)または変性グラジエントゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al., Nucl. Acids. Res. 18:2699−2706(1990); Sheffield et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:232−236(1989))によりバリアントアレルを同定することができる。ポリメラーゼ媒介プライマー伸長法を用いて多型を同定することもできる。いくつかのかかる方法は特許および科学文献に記載されており、そして「Genetic Bit Analysis」法(第WO92/15712号)およびリガーゼ/ポリメラーゼ媒介genetic bit analysis(米国特許第5679524号)を含む。関連する方法は第WO91/02087号、第WO90/09455号、第WO95/17676号ならびに米国特許第5302509号および第5945283号に開示されている。米国特許第5605798号に記載されるように多型を含有する伸長プライマーを質量分析により検出することができる。別のプライマー伸長法はアレル特異的PCR(Ruafio et al., Nucl. Acids. Res. 17:8392(1989); Ruafio et al., Nucl. Acids. Res. 19:6877−6882(1991);第WO93/22456号; Turki et al., J. Clin. Invest. 95:1635−1641(1995))である。加えて、PCT特許出願第WO89/10414号に記載されるようにアレル特異的プライマーのセットを用いて核酸の複数の領域を同時に増幅することにより複数の多型部位を調査することができる。
【0046】
オリゴヌクレオチドのハプロタイプ分類および遺伝子型分類
本発明は個体において遺伝子をハプロタイプ分類および/または遺伝子型分類するための方法および組成物を提供する。本明細書で用いる「遺伝子型」および「ハプロタイプ」なる用語は各々本明細書で記載する一つもしくはそれより多い多型部位に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドを含有する遺伝子型またはハプロタイプを意味し、そして場合によっては遺伝子の一つもしくはそれより多いさらなる多型部位に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドをも含み得る。さらなる多型部位は現在公知の多型部位または後に見出される部位でよい。
【0047】
本発明の組成物は、多型部位を含有するか、またはそれに隣接する一つもしくはそれより多い標的領域に特異的にハイブリダイズするように設計されたオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含有する。本発明のオリゴヌクレオチド組成物は個体において遺伝子を遺伝子型分類および/またはハプロタイプ分類するための方法において有用である。本明細書で記載する多型部位で個体の遺伝子型またはハプロタイプを確立するための方法および組成物は、タンパク質の発現および機能により影響を受ける疾患の原因論において多型の影響を研究するのに、薬物ターゲティングの効率を研究するのに、タンパク質の発現および機能により影響を受ける疾患に対する個体の感受性を予測するのに、そして遺伝子生成物をターゲティングする薬物に対する個体の応答性を予測するのに有用である。
【0048】
本発明の遺伝子型分類オリゴヌクレオチドをマイクロチップ、ビーズまたはガラススライドのような固体表面上に固定または合成することができる。例えば第WO98/20020号および第WO98/20019号参照。
【0049】
遺伝子型分類オリゴヌクレオチドは本明細書で同定された多型部位の一つの下流1から数個のヌクレオチドに位置する標的領域にハイブリダイズすることができる。かかるオリゴヌクレオチドは本明細書で記載する多型の一つを検出するためのポリメラーゼ媒介プライマー伸長法で有用であり、そしてしたがってかかる遺伝子型分類オリゴヌクレオチドは本明細書では「プライマー伸長オリゴヌクレオチド」と称される。
【0050】
本発明の直接的遺伝子型分類方法
本発明の遺伝子型分類方法は目的の遺伝子またはそのフラグメントの2個のコピーを含む核酸混合物を個体から単離し、そして2個のコピーの一つもしくはそれより多い多型部位でヌクレオチド対の同一性を決定することを含み得る。当業者には容易に理解されるように、個体の遺伝子の2個の「コピー」は同一のアレルでよいか、または異なるアレルでよい。特に好ましい実施態様では、遺伝子型分類方法は各多型部位でヌクレオチド対の同一性を決定することを含む。典型的には、血液試料または組織試料のような個体から採取した生物学的試料から核酸混合物を単離する。適当な組織試料には全血、精液、唾液、涙液、尿、糞便材料、汗、口腔塗抹、皮膚および毛髪が含まれる。
【0051】
以下の実施例で用いる遺伝子型分類の方法は以下のとおりである:全てのSNPの遺伝子型分類は一塩基伸長により実施し、Sequenom’s MassArray(商標)テクノロジーを用いる質量分析を続ける。Ross et al., Nat. Biotechnol. 16:1347−1351(1998)。この系の遺伝子型の確認は均一な質量増加(homogenous Mass Extension)(hME)反応生成物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)分析に基づく。
【0052】
本発明の直接的ハプロタイプ分類方法
本発明のハプロタイプ分類方法は目的の遺伝子またはそのフラグメントの2個のコピーのうちの1個のみを含有する核酸分子を個体から単離し、そしてそのコピーの一つもしくはそれより多い多型部位でヌクレオチドの同一性を決定することを含み得る。直接的ハプロタイプ分類方法には、例えばCLASPER System(商標)テクノロジー(米国特許第5866404号)またはアレル特異的ロングレンジPCR(Michalotos−Beloin et al., Nucl. Acids. Res. 24:4841−4843(1996))が含まれる。遺伝子またはフラグメントの2個のコピーを分離することができる任意の方法を用いて核酸を単離することができる。当業者には容易に理解されるように、任意の個々のクローンは個体に存在する2個の遺伝子コピーのうちの1個のハプロタイプ情報のみを提供する。一つの実施態様では、個体に存在する遺伝子の各コピーの一つもしくはそれより多い多型部位でヌクレオチドの相になった配列を同定することによりハプロタイプ対を決定する。好ましい実施態様では、ハプロタイプ分類方法は遺伝子の各コピーの各多型部位の相になった配列を同定することを含む。
【0053】
以下の実施例では、ハプロタイプ分類方法は以下のとおりであった:全てのハプロタイプ関連解析をバイナリ形質(binary trait)に関する推奨されるパラメーターを用いてRのhaplo.statsパッケージのhaplo.scoreプログラムを用いて実施した。Becker R, Chambers J & Willks A, The new S language: a programming environment for data analysis and graphics(Wadsworth & Brooks/Cole Advanced Books, Pacific Grove, 1988)p. 702; Schaid DJ et al., Am. J. Hum. Genet. 70(2):425−34(2002)参照。Haplo.score はEMアルゴリズムを用いて遺伝子型データからハプロタイプを推測し、そして遺伝子座での個体のハプロタイプおよびハプロタイプの全セットの双方に関して形質との関連性を検定する。
【0054】
遺伝子型分類方法およびハプロタイプ分類方法の双方で、遺伝子またはそのフラグメントの一つまたは双方のコピーから直接的に多型部位を含有する標的領域を増幅し、そして従来の方法により増幅された領域をシークエンシングすることにより、多型部位でのヌクレオチド(またはヌクレオチド対)の同一性を決定することができる。第WO95/11995号に記載されるように遺伝子の一つまたは双方のコピーを含有する核酸試料を核酸アレイおよびサブアレイにハイブリダイズさせることにより個体の遺伝子に関する遺伝子型またはハプロタイプを決定することもできる。
【0055】
標的多型と連鎖不均衡にある多型部位を用いる間接的遺伝子型分類方法
加えて、本発明のいずれかの多型部位に存在するアレルの同一性を、目的のこれらの部位と連鎖不均衡にあるその他の多型部位を遺伝子型分類することにより間接的に決定することができる。前記したように、一つの部位での特定のバリアントの存在が第2の部位での別のバリアントの存在の指標である場合、二つの部位は連鎖不均衡にあるといわれている。Stevens JC, Mol. Diag. 4:309−317(1999)。本発明の多型部位と連鎖不均衡にある多型部位は同一の遺伝子の領域またはその他のゲノム領域に位置し得る。
【0056】
標的遺伝子領域の増幅
限定するものではないがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4965188号)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189−193(1991); 公開PCT特許出願第WO90/01069号)およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren et al., Science 241:1077−1080(1988))を含む任意のオリゴヌクレオチド指向性増幅方法を用いて標的領域を増幅することができる。かかる方法においてプライマーまたはプローブとして有用なオリゴヌクレオチドは多型部位を含有するかまたはそれに隣接する核酸の領域に特異的にハイブリダイズすべきである。典型的には、オリゴヌクレオチドは10ヌクレオチド長と35ヌクレオチド長の間であり、そして好ましくは15ヌクレオチド長と30ヌクレオチド長との間である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは20ヌクレオチド長と25ヌクレオチド長の間である。オリゴヌクレオチドの正確な長さは当業者により日常的に考えられそして実行される多くの因子に依存する。
【0057】
転写基盤の増幅系(米国特許第5130238号;欧州特許第329822号;米国特許第5169766号、公開PCT特許出願第WO89/06700号)および等温法(Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392−396(1992))を含むその他の公知の核酸増幅手順を用いて標的領域を増幅することができる。
【0058】
アレル特異的オリゴヌクレオチドの標的遺伝子へのハイブリダイズ
当分野において公知のいくつかのハイブリダイゼーション基盤の方法の一つを用いて増幅の前または後に標的領域における多型を検定することができる。典型的には、アレル特異的オリゴヌクレオチドをかかる方法の実施に利用する。アレル特異的オリゴヌクレオチドを、異なって標識されたプローブ対として用いることができ、対の一方のメンバーは標的配列の一つのバリアントと完全な対合を示し、他方のメンバーは異なるバリアントと完全な対合を示す。いくつかの実施態様ではアレル特異的オリゴヌクレオチドのセットまたはオリゴヌクレオチド対を用いて一を超える多型部位を一度に検出することができる。好ましくは、セットのメンバーは多型部位の各々へのハイブリダイゼーションが検出される場合、お互いの5℃以内、およびさらに好ましくは2℃以内の融点を有する。
【0059】
アレル特異的オリゴヌクレオチドの標的ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを双方の実体と共に溶液中で実施することができるか、またはオリゴヌクレオチドもしくは標的ポリヌクレオチドのいずれかが共有結合的にもしくは非共有結合的に固体支持体に取り付けられている場合にかかるハイブリダイゼーションを実施することができる。付着は例えば抗体−抗原相互作用、ポリ−L−Lys、ストレプトアビジンまたはアビジン−ビオチン、塩橋、疎水性相互作用、化学的連結、UV架橋、焼き付け等により媒介され得る。アレル特異的オリゴヌクレオチドを固体支持体上で直接的に、または合成した後に固体支持体に付着させることができる。本発明の検出方法で用いるのに適当な固体支持体にはシリコン製の基質、ガラス、プラスチック、紙等が含まれ、これを例えばウェル(96ウェルプレートのような)スライド、シート、膜、繊維、チップ、皿およびビーズに形成することができる。固体支持体を処理、コーティングまたは誘導してアレル特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定を促すことができる。
【0060】
集団遺伝子型およびハプロタイプの決定ならびにそれらと形質との相関性
本発明は集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度を決定するための方法を提供する。方法は、集団の各メンバーに存在する遺伝子に関して遺伝子の一つもしくはそれより多い多型部位で検出されたヌクレオチド対またはヌクレオチドを含む遺伝子型またはハプロタイプを決定すること、および集団において遺伝子型またはハプロタイプが見出された頻度を計算することを含む。集団は参照集団、家族集団、同一性別集団、集団群、または形質集団(例えば医学的状態または治療的処置に対する応答のような目的の形質を呈する個体の群)でよい。
【0061】
本発明の別の態様では、参照集団において見出された遺伝子型および/またはハプロタイプに関する頻度データを形質と遺伝子型またはハプロタイプとの間の関連性を同定するための方法において用いる。形質は限定するものではないが疾患に対する感受性または処置に対する応答性を含む任意の検出可能な表現型でよい。方法を参照集団における目的の遺伝子型またはハプロタイプの頻度に関する情報を得ること、および形質を呈する集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度とデータを比較することを伴う。前記で記載した方法の一つを用いて集団の各個体を遺伝子型分類またはハプロタイプ分類することにより、参照および形質集団の一つまたは双方に関する頻度データを得ることができる。形質集団に関するハプロタイプを直接的に、またはこれに代えて前記で記載した予測的な遺伝子型からハプロタイプへの研究法により決定することができる。
【0062】
書面または電子形式でよい予め決定された頻度データを評価することにより、参照および/または形質集団に関する頻度データが得られる。例えば頻度データはコンピューターによりアクセス可能であるデータベースに存在し得る。一度頻度データが得られると、参照および形質集団の目的の遺伝子型またはハプロタイプの頻度を比較する。
【0063】
多型を分析している場合、計算を実施して、偶然に見出され得る有意な関連性を補正することができる。本発明の方法で有用な統計方法に関しては、Statistical Methods in Biology, 3rd edition, Bailey NTJ,(Cambridge Univ. Press, 1997); Waterman MS, Introduction to Computational Biology(CRC Press, 2000)およびBioinformatics, Baxevanis AD & Ouellette BFF editors(John Wiley & Sons, Inc., 2001)を参照されたい。
【0064】
別の実施態様では、異なる群に関するハプロタイプ頻度データを試験して、それらがハーディワインベルグ平衡 D.L. Hartl et al., Principles of Population Genomics, 3rd Ed.(Sinauer Associates, Sunderland, MA, 1997)と合致するすかどうかを決定する。
【0065】
別の実施態様では、ボンフェロニ補正した標準的なANOVA検定、または何回も遺伝子型表現型相関性をシミュレートし、そして有意な値を計算するブートストラップ法を用いて統計分析を実施する。ANOVAを用いて、応答可変性が一つもしくはそれより多い形質または測定できる可変性により引き起こされるかまたはそれと相関するかどうかについての仮説を検定する。L.D. Fisher & G. vanBelle, Biostatistics:A Methodology for the Health Sciences(Wiley−lnterscience, New York, 1993)Ch. 10。
【0066】
ハプロタイプ対の予測のための一つの実施態様では、分析には以下のような割り当ての工程が含まれる:最初に可能なハプロタイプ対の各々を参照集団のハプロタイプ対と比較する。一般に参照集団のハプロタイプ対の一つのみが可能なハプロタイプ対と対合し、そしてその対を個体に割り当てる。時には参照ハプロタイプ対で示された一つのハプロタイプのみが個体の可能なハプロタイプ対と合致し、そしてそのような場合には個体はこの公知のハプロタイプおよび、可能なハプロタイプ対から公知のハプロタイプを除くことにより誘導される新しいハプロタイプを含有するハプロタイプ対に割り当てられる。
【0067】
別の実施態様では、目的の遺伝子型またはハプロタイプと連鎖不均衡にある検出可能な遺伝子型またはハプロタイプを代理マーカーとして使用することができる。所定の遺伝子の特定の遺伝子型またはハプロタイプが参照集団におけるよりも可能性のある代理マーカー遺伝子型を実証する集団においてより高頻度である場合に、遺伝子型が別の遺伝子型と連鎖不均衡にあることが示される。頻度が統計的に有意であれば、次いでマーカー遺伝子型はその遺伝子型またはハプロタイプを予測し、そして代理マーカーとして使用され得る。
【0068】
ハプロタイプの内容と臨床応答との間の相関性を見出すための別の方法は誤差最小化最適化アルゴリズムに基づく予測モデルであり、その一つは遺伝的アルゴリズムである。R. Judson, 「Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry」 in Reviews in Computational Chemistry 10:1−73, K.B. Lipkowitz & D.B. Boyd, eds.(VCH Publishers, New York, 1997)を参照されたい。シュミレーテッドアニーリング(Press et al., Numerical Recipes in C:The Art of Scientific Computing, Ch. 10(Cambridge University Press, Cambridge)1992)、ニューラルネットワーク(E. Rich & K. Knight, Artificial Intelligence, 2nd Edition, Ch. 10(McGraw−Hill, New York, 1991)、標準的勾配下降法(Press et al., supra Ch. 10)またはその他の大域的もしくは局所的最適化研究法(see discussion in Judson, supra)を用いることもできる。
【0069】
対象遺伝子型またはハプロタイプの処置応答性に対する相関性
好ましい実施態様では、形質は疾患に対する感受性、疾患の重篤度、疾患の段階化または薬物に対する応答である。かかる方法は遺伝子型と有効性測定、薬物動態測定および副作用測定を含む処置結果との間の関連性に関して可能性がある全ての遺伝薬理学的適用のための診断試験および治療的処置の開発において適用可能性を有している。
【0070】
別の好ましい実施態様では、目的の形質は患者が呈するいくつかの治療的処置に対する臨床応答、例えば薬物ターゲティングまたは医学的症状のための治療的処置に対する応答である。
【0071】
処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプとの間の相関性を推測するために、処置を受けた個体の集団(以後「臨床集団」と称する)が呈する臨床応答に関して遺伝子型またはハプロタイプデータを得る。すでに行われている臨床試験の結果を分析することにより、ならびに/または一つもしくはそれより多い新しい臨床試験を設計および実行することによりこの臨床データを得ることができる。
【0072】
臨床集団に含まれる個体は通常目的の医学的症状の存在に関して等級分けされる。潜在的患者のこの等級分けには標準的な身体的試験または一つもしくはそれより多い実験室試験を用いることができる。これに代えて、患者の等級分けにはハプロタイプ対と疾患感受性または重篤度との間に強力な相関性がある状況に関してハプロタイプ分類を用いることができる。
【0073】
目的の治療的処置は試験集団の各個体に投与され、そして各個体の処置に対する応答は一つもしくはそれより多い予め決定された診断基準を用いて測定される。多くの場合で試験集団は応答の範囲を提示し、そして研究者は種々の応答により作られた応答群の数(例えば、低、中、高)を選択することが意図される。加えて試験集団の各個体の遺伝子を遺伝子型分類および/またはハプロタイプ分類し、処置を施す前または後にそれを行うことができる。
【0074】
次いでこれらの結果を分析して、多型群間で臨床応答における任意の観測された変化が統計的に有意であるかどうかを決定する。用いることができる統計分析方法はL.D. Fisher & G. vanBelle, Biostatistics:A Methodology for the Health Sciences(Wiley−lnterscience, New York, 1993)に記載されている。この分析はまた遺伝子のどの多型部位が表現型における差異に最も有意に寄与するかの回帰計算をも含み得る。
【0075】
臨床および多型の双方のデータが得られた後、個体応答と遺伝子型またはハプロタイプの内容との間の相関が創られる。いくつかの方式で相関を生むことができる。一つの方法では、その遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)により個体を群分けし(多型群とも称する)、そして次に各多型群のメンバーが呈した臨床応答の平均(average)および標準偏差を計算する。
【0076】
前記で記載した分析から、遺伝子型またはハプロタイプ内容の関数として臨床応答を予測する当業者は数学的モデルを容易に構築することができる。臨床応答と遺伝子に関する遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)との間の関連性の同定は、処置に応答するもしくは応答しないか、またはこれに代えて低レベルで応答し、そしてしたがってさらなる処置、すなわちより高用量の薬物を必要とし得るこれらの個体を決定するための診断方法を設計するための基礎になり得る。診断方法はいくつかの形態の一つ:例えば直接DNA試験(すなわち遺伝子の一つもしくはそれより多い多型部位を遺伝子型分類またはハプロタイプ分類する)血清学的試験または身体試験測定を取り得る。唯一の要件は診断検定結果と基礎となる遺伝子型またはハプロタイプとの間に良好な相関性があるということである。好ましい実施態様では、この診断方法は前記で記載した予測的ハプロタイプ分類方法を用いる。
【0077】
対象の遺伝子型群への割り当て
当業者には理解されるように、この決定を行うにはある程度の不確実性が存在する。したがって、対照群レベルの標準偏差を用いて確率的決定を行い、そして遺伝子型群決定に基づく確率の広い範囲にわたって本発明の方法が適用される。したがって例えば、そして限定するものではないが、一つの実施態様では遺伝子発現生成物の測定レベルがいずれかの対照群の平均(mean)の標準偏差2.5以内に入る場合、次いでその個体をその遺伝子型群に割り当てることができる。別の実施態様では、遺伝子発現生成物の測定レベルがいずれかの対照群の平均(mean)の標準偏差2.0以内に入る場合、次いでその個体をその遺伝子型群に割り当てることができる。さらに別の実施態様では、遺伝子発現生成物の測定レベルがいずれかの対照群の平均(mean)の標準偏差1.5以内に入る場合、次いでその個体をその遺伝子型群に割り当てることができる。なおさらに別の実施態様では、遺伝子発現生成物の測定レベルがいずれかの対照群レベルの平均(mean)の標準偏差1.0であるかまたはそれより小さい場合、次いでその個体をその遺伝子型群に割り当てることができる。
【0078】
この過程により種々の確率の程度でどの群に特異的対象をおくべきかの決定が可能になり、そして次に遺伝子型群へのかかる割り当てにより個体をおくべき危険性カテゴリーが決定される。
【0079】
臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプとの間の相関性
処置に対する臨床応答と遺伝子型またはハプロタイプとの間の相関性を推測するために、処置を受けた個体の集団(以後「臨床集団」と称する)が呈する臨床応答に関するデータを得ることが必要である。すでに行われている臨床試験の結果を分析することによりこの臨床データを得ることができ、そして/または一つもしくはそれより多い新しい臨床試験を設計および実行することによりこの臨床データを得ることができる。
【0080】
したがって異なる対照群で決定される遺伝子発現生成物の標準的な対照レベルを、次いで所定の患者の遺伝子発現生成物の測定レベルと比較する。この遺伝子発現生成物はその特定の遺伝子型群またはその遺伝子型群のポリペプチド遺伝子発現生成物に関連する特徴的なmRNAでよい。次いで患者を所定の群に関する対照レベルと比較して測定レベルがどれほど類似していたかに基づいて特定の遺伝子型群に分類または割り当てることができる。
【0081】
多型データを保存または表示するためのコンピューターシステム
本発明はまた遺伝子に関して決定された多型データを保存および表示するためのコンピューターシステムを提供する。コンピューターシステムはプロセシングユニット、ディスプレイおよび多型データを含有するデータベースを含む。多型データには参照集団の所定の遺伝子に関して同定された多型、遺伝子型およびハプロタイプが含まれる。好ましい実施態様では、コンピューターシステムはその進化的関係に従って体系化されたハプロタイプを示すディスプレイを作ることができる。コンピューターは本発明の方法の実施に関与する任意のまたは全ての分析的および数学的操作を遂行することができる。加えてコンピューターはディスプレイ装置に表示されたビュー(またはスクリーン)を作るプログラムを実行することができ、そしてそれを用いて使用者はビューと双方向作用し、そして染色体位置、遺伝子構造および遺伝子ファミリー、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝子配列データならびに臨床集団データ(例えば一つもしくはそれより多い集団に関する民族地理学的起源、臨床応答、遺伝子型およびハプロタイプ)を含む遺伝子およびそのゲノム変化に関係する多量の情報を分析することができる。本明細書に記載した多型データをリレーショナルデータベース(例えばオラクルデータベースの一例またはASCIIフラットファイル)の部分として保存することができる。これらの多型データをコンピューターハード装置に保存することができるか、または例えばCD−ROMまたはコンピューターによりアクセス可能な一つもしくはそれより多いその他の保存装置に保存することができる。例えばネットワークを介してコンピューターに接続されている一つもしくはそれより多いデータベースにデータを保存することができる。
【0082】
核酸基盤の診断
別の態様では、本発明はその遺伝的多様性の型に従って対象を分類するのに有用であるSNPプローブを提供する。本発明によるSNPプローブは従来のアレル識別アッセイでSNP間を識別するオリゴヌクレオチドである。特定の好ましい実施態様では、本発明のこの態様によるオリゴヌクレオチドはSNP核酸の一つのアレルに相補的であるが、SNP核酸の任意のその他のアレルには相補的でない。本発明のこの実施態様によるオリゴヌクレオチドは種々の方式でSNP間を識別することができる。例えばストリンジェントハイブリダイゼーション条件下では、適切な長さのオリゴヌクレオチドは一つのSNPにハイブリダイズするが、任意のその他のものにはハイブリダイズしない。放射性標識または蛍光分子タグを用いてオリゴヌクレオチドを標識することができる。これに代えて適切な長さのオリゴヌクレオチドをPCRのプライマーとして使用することができ、ここで3’末端ヌクレオチドはSNPを含有する一つのアレルに相補的であるが、任意のその他のアレルには相補的でない。この実施態様ではPCRによる増幅の存在または不在によりSNPのハプロタイプが決定される。
【0083】
本発明のゲノムおよびcDNAフラグメントは本明細書で同定した少なくとも一つの多型部位を含み、少なくとも10ヌクレオチド長を有し、そして遺伝子の全長までにわたり得る。好ましくは本発明によるフラグメントは100ヌクレオチド長と3000ヌクレオチド長の間であり、さらに好ましくは200ヌクレオチド長と2000ヌクレオチド長の間であり、そして最も好ましくは500ヌクレオチド長と1000ヌクレオチド長の間である。
【0084】
本発明のキット
本発明は個体の遺伝子をハプロタイプ分類および/または遺伝子型分類するのに有用な核酸およびポリペプチド検出キットを提供する。かかるキットは個体を分類する目的のために個体を分類するのに有用である。具体的には、本発明は生物学的試料、例えば限定するものではないが血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水または血液を含む任意の体液、および身体組織の生検試料を含む生物学的試料中の本発明のマーカーに相当するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。例えばキットは生物学的試料中の本発明のマーカーに相当するポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出することができる標識化合物または薬剤および試料中のポリペプチドまたはmRNAの量を決定するための手段、例えばポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドプローブに結合する抗体を含むことができる。キットはまたキットを用いて得られた結果を解釈するための指示書を含むこともできる。
【0085】
別の実施態様では、本発明は別個の容器に包装された少なくとも二つの遺伝子型分類オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。キットはまた別個の容器に包装されたハイブリダイゼーションバッファー(ここでオリゴヌクレオチドはプローブとして用いられる)のようなその他の構成成分をも含有できる。これに代えて、オリゴヌクレオチドを用いて標的領域を増幅しようとする場合、PCRの場合のように、キットは別個の容器に包装されたポリメラーゼおよびポリメラーゼにより媒介されるプライマー伸長に最適化された反応バッファーを含有できる。好ましい実施態様では、かかるキットはさらにDNA試料収集手段を含むことができる。
【0086】
抗体基盤のキットに関しては、キットは例えば(1)本発明のマーカーに相当するポリペプチドに結合する、例えば固体支持体に付着させた第一抗体;および場合によっては(2)ポリペプチドまたは第一抗体のいずれかに結合し、そして検出可能な標識に抱合させた第二の異なる抗体を含むことができる。
【0087】
オリゴヌクレオチド基盤のキットに関しては、キットは例えば(1)本発明のマーカーに相当するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド;または(2)本発明のマーカーに相当する核酸分子を増幅するのに有用なプライマーの対を含むことができる。
【0088】
キットはまた例えば緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定剤をも含むことができる。キットはさらに検出可能な標識、例えば酵素または基質を検出するのに必要な構成成分を含むことができる。キットはまた検定しそして被験試料と比較することができる対照試料または一連の対照試料を含有することもできる。キットの各々の構成成分を個々の容器内に封入し、そして種々の容器の全てを、キットを用いて実施されたアッセイの結果を解釈するための指示書と一緒に単一の包装にすることができる。
【0089】
本発明の核酸配列
一つの態様では、本発明は一つもしくはそれより多い単離されたポリヌクレオチドを含む。本発明はまた同一物のアレルバリアント、すなわちポリヌクレオチドによりコードされるものと同一、相同または関連する変異ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドの天然発生の代替え形態をも包含する。これに代えて当分野において周知の変異誘発技術または直接合成技術により非天然発生バリアントを生成することができる。
【0090】
したがって低ストリンジェントで本発明の変異ポリペプチドをコードする任意の核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸配列は本発明の範囲内であると考えられる。標準的なストリンジェント条件は標準的な分子生物学クローニングテキストにおいて十分に特徴付けされている。例えばMolecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed., Sambrook, Fritsch, & Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989);DNA Cloning, Volumes I and II, D.N. Glover, ed.(1985); Oligonucleotide Synthesis, M.J. Gait, ed.(1984); Nucleic Acid Hybridization, B.D. Hames & S.J. Higgins, eds(1984)参照。
【0091】
組換え発現ベクター
本発明の別の態様は変異ポリペプチドをコードする一つもしくはそれより多い核酸配列を含有するベクターを含む。本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAの多くの従来技術を用いる。これらの技術は周知であり、そして例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Vols. I−III, Ausubel, ed.(1997); Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989);DNA Cloning:A Practical Approach, Vols. I and II, Glover, Ed.(1985); Oligonucleotide Synthesis, Gait, Ed.(1984); Nucleic Acid Hybridization, Hames & Higgins, Eds.(1985); Transcription and Translation, Hames & Higgins, Eds.(1984); Animal Cell Culture, Freshney, ed.(1986); Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press, 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series Methods in Enzymology,(Academic Press, Inc., 1984); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Miller & Calos, Eds.(Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1987);およびMethods in Enzymology, Vols. 154 and 155, Wu & Grossman, and Wu, Eds.の各々において説明されている。
【0092】
本発明の一つもしくはそれより多いポリペプチドの組換え発現に関しては、当分野において周知組換えDNA技術により、ポリペプチドをコードする核酸配列の全てまたは一部を含有する核酸を適切なクローニングベクターまたは発現ベクター(すなわち挿入されたポリペプチドコード化配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含有するベクター)に挿入する。
【0093】
プラスミドは最も一般的に用いられるベクターの形態であるので、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」を互換的に用いることができる。しかしながら、本発明はウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、等価な機能を提供する技術的にはプラスミドではない発現ベクターのかかるその他の形態を含むことが意図される。かかるウイルスベクターにより対象の感染およびその対象における化合物の発現が可能になる(Becker et al., Meth. Cell Biol. 43:161 89(1994))。組換え発現ベクター内で「作動可能なように連結された」とは目的のヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えばインビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞において)調節配列に連結されていることを意味すると意図される。「調節配列」なる用語はプロモーター、エンハンサーおよびその他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。かかる調節配列は例えばGoeddel, Gene Expression Technology:Methods In Enzymology 185(Academic Press, San Diego, Calif., 1990)に記載されている。調節配列には、多くの型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は形質転換される宿主細胞の選択、望ましいポリペプチドの発現のレベル等のような因子に依存し得ることは当業者には理解されよう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それにより本明細書に記載するような核酸によりコードされる融合ポリペプチドを含むポリペプチドまたはペプチド(例えば変異ポリペプチドおよび変異誘導融合ポリペプチド等)を生成することができる。
【0094】
ポリペプチド発現宿主細胞
本発明の別の態様は本発明の一つもしくはそれより多い変異ポリペプチドをコードする核酸を含有するポリペプチド発現宿主細胞に関係する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」なる用語は本明細書では互換的に用いられる。かかる用語が特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫または潜在的子孫をも意味することは理解される。変異または環境の影響のいずれかのために後の世代で特定の修飾が生じ得るので、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で用いる用語の範囲内に依然含まれる。宿主細胞は任意の原核または真核細胞でよい。Sambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。
【0095】
従来の形質転換またはトランスフェクション技術によりベクターDNAを原核または真核細胞に導入することができる。本明細書で用いる「形質転換」および「トランスフェクション」なる用語は外来の核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための当分野で認識されている種々の技術を意味し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションが含まれると意図される。宿主を形質転換またはトランスフェクションするための適当な方法をSambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989)、およびその他の実験室マニュアルに見出すことができる。細胞へのDNAの導入に関しては、エレクトロポレーション、粒子ボンバードメント、リン酸カルシウム共沈およびウイルス形質導入が当分野において公知である;したがって方法の選択は当業者の能力および嗜好を伴い得る。
【0096】
本発明の組換え細胞を調製するために、イソ遺伝子が染色体外に留まるように、望ましいイソ遺伝子をベクター中で宿主細胞に導入することができる。かかる状況では、遺伝子は染色体外位置から細胞により発現される。好ましい実施態様では、イソ遺伝子を細胞に存在する内因性遺伝子と組換えされるように細胞に導入する。組換えおよび染色体外維持の双方のための遺伝子の導入のためのベクターが当分野において公知であり、そして任意の適当なベクターまたはベクター構築物を本発明で用いることができる。
【0097】
原核または真核細胞において変異ポリペプチドを発現するために本発明の組換え発現ベクターを設計することができる。例えば変異ポリペプチドを大腸菌(E. coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、真菌細胞、例えば酵母、または哺乳動物細胞において発現させることができる。適当な宿主細胞はさらにGoeddel, Gene Expression Technology:Methods In Enzymology 185(Academic Press, San Diego, Calif., 1990)において論じられている。
【0098】
原核細胞におけるポリペプチドの発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を指示する構成的または誘導プロモーターを含有するベクターを伴う大腸菌において最も頻繁に実施される。典型的な融合発現ベクターにはpGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson, 1988. Gene 67:31 40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass., USA)およびグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合ポリペプチドまたはポリペプチドAを各々標的組換えポリペプチドの融合させるpRIT5(Pharmacia, Piscataway, N.J., USA)が含まれる。適当な誘導非融合大腸菌発現ベクターの実例にはpTrc(Amrann et al., Gene 69:301 315(1988))およびpET11d(Studier et al., Gene Expression Technology:Methods In Enzymology(Academic Press, San Diego, Calif., 1990)pp. 60−89)が含まれる。その他の試験計画はGottesman, Gene Expression Technology:Methods In Enzymology(Academic Press, San Diego, Calif., 1990)pp. 119−128 およびWada, et al., Nucl. Acids Res. 20:2111−2118(1992))に記載されている。
【0099】
ポリペプチド発現ベクターは酵母発現ベクターでよい。出芽酵母における発現のためのベクターの実例にはpYepSec1(Baldari et al., EMBO J. 6:229 234(1987))、pMFa(Kurjan & Herskowitz, Cell 30:933−943(1982))、pJRY88(Schultz et al., Gene 54:113 123(1987))、pYES2(InVitrogen Corporation, San Diego, Calif. USA)およびpicZ(InVitrogen Corp, San Diego, Calif., USA)が挙げられる。これに代えてバキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞において変異ポリペプチドを発現させることができる。培養された昆虫細胞(例えばSF9細胞)におけるポリペプチドの発現に利用可能なバキュロウイルスベクターにはpAcシリーズ(Smith et al., Mol. Cell. Biol. 3:2156 2165(1983))およびpVLシリーズ(Lucklow & Summers, Virology 170:31 39(1989))が含まれる。pCDM8(Seed, Nature 329:842 846(1987))またはpMT2PC(Kaufman et al., EMBO J. 6:187 195(1987))のような哺乳動物発現ベクターを用いて本発明の核酸を哺乳動物細胞において発現させることができる。原核および真核細胞の双方のための発現系に適当なその他のものに関しては、例えばSambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989)16および17章を参照されたい。組織特異的および発生学的に調節される調節エレメントは当分野において公知である。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節についての議論は例えばWeintraub et al., 「Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis」 Trends in Genetics 1(1)(1986)を参照されたい。
【0100】
培養下の原核または真核宿主細胞のような本発明の化合物を含む宿主細胞を用いて組換え変異ポリペプチドを生成(すなわち発現)することができる。組換えポリペプチドの精製は当分野において周知であり、そしてイオン交換精製技術または、例えば化合物に対する抗体を伴うアフィニティー精製技術が含まれる。
【0101】
トランスジェニック動物
当分野において公知の標準的な手順を用いて本発明のバリアント遺伝子を発現する組換え生物、すなわちトランスジェニック動物を調製する。当業者に公知のいくつかの方法により本発明の構築物を担持するトランスジェニック動物を作ることができる。例えば米国特許第5610053号およびRecombinant DNA, Eds. J.D. Watson, M. Gilman, J. Witkowski & M. Zoller(W.H. Freeman and Company, New York)pp. 254−272の「The Introduction of Foreign Genes into Mice」およびその引用文献を参照されたい。発現および/または活性異常に関係する疾患を研究するための、ならびにこれらの疾患の病徴または影響を低減させるための種々の候補薬物、化合物および処置計画をスクリーニングおよび検定するための生物学的モデルとしてヒトイソ遺伝子を安定して発現し、そしてヒトタンパク質を生成するトランスジェニック動物を用いることができる。
【0102】
遺伝子発現レベルの特徴付け
mRNAレベル(すなわち遺伝子転写レベル)およびポリペプチド遺伝子発現生成物のレベル(すなわち遺伝子翻訳レベル)を検出および測定するための方法は当分野において周知であり、そしてヌクレオチドマイクロアレイの使用ならびに質量分析器および/または抗体検出および定量技術を伴うポリペプチド検出方法を含む。またTom Strachan & Andrew Read, Human Molecular Genetics, 2nd Edition.(John Wiley and Sons, Inc. Publication, New York, 1999)も参照されたい。
【0103】
標的遺伝子転写の決定
生物学的試料、例えば個体の組織または体液中の遺伝子の発現生成物のレベルの決定を種々の方式で実施することができる。「生物学的試料」なる用語は対象から単離された組織、細胞、生物学的液体およびその単離体、ならびに対象内に存在する組織、細胞および液体が含まれると意図される。多くの発現検出方法は単離されたRNAを用いる。インビトロ法に関しては、mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術を細胞からのRNAの精製に利用することができる。例えばAusubel et al., Ed., Curr. Prot. Mol. Biol.(John Wiley & Sons, New York, 1987−1999)参照。
【0104】
一つの実施態様では、標的遺伝子のmRNA発現生成物のレベルを決定する。特異的mRNAのレベルを測定するための方法は当分野において周知であり、そしてノーザンブロット分析、逆転写PCRおよびリアルタイム定量PCRまたはオリゴヌクレオチドアレイもしくはマイクロアレイへのハイブリダイゼーションによるものを含む。その他のさらに好ましい実施態様では、限定するものではないが血液または血清を含む体液または組織試料中のタンパク質または遺伝子のポリペプチド発現生成物のレベルを決定することにより発現のレベルの決定を実施することができる。例えば米国特許第4843155の一工程RNA単離方法のような当業者に周知の技術を用いて多数の組織試料を容易に加工することができる。
【0105】
限定するものではないがサザンまたはノーザン分析、PCR分析およびプローブアレイを含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて単離されたmRNAを用いることができる。mRNAレベルを検出するための一つの好ましい診断方法は、検出されている遺伝子によりコードされるmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と単離されたmRNAを接触させることを伴う。核酸プローブは例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドのような、そしてストリンジェント条件下で本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分である全長cDNAまたはその一部でよい。本発明の診断アッセイにおいて使用するためのその他の適当なプローブを本明細書で記載する。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは問題のマーカーが発現されていることを示す。
【0106】
一つの形式では、プローブを固体表面に固定し、そしてmRNAを例えばAffymetrix 遺伝子チップアレイ(Affymetrix, Calif. USA)中プローブと接触させる。当業者は本発明のマーカーによりコードされるmRNAのレベルを検出するのに使用するために公知のmRNA検出方法を容易に適合させることができる。
【0107】
試料中の本発明のマーカーに相当するmRNAのレベルを決定するための代替えの方法は例えばRT−PCR(米国特許第4683202号に示す実験的実施態様);リガーゼ連鎖反応(Barany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189−193(1991))、自律的配列複製(Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878(1990));転写増幅系(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177(1989));Qベータレプリカーゼ(Lizardi et al., Biol. Technology 6:1197(1988));ローリングサークル複製(U.S. Pat. No. 5,854,033);または任意のその他の核酸増幅方法による核酸増幅の過程を伴い、続いて当業者に周知の技術を用いて増幅した分子を検出する。核酸分子が非常に低数で存在する場合、これらの検出スキームはかかる分子の検出に特に有用である。本明細書で用いるように、「増幅プライマー」は遺伝子の5’または3’領域にアニーリングし(各々プラスおよびマイナス鎖、またはその逆)、そしてその間に短い領域を含有することができる核酸分子の対であると定義される。一般に増幅プライマーは約10−30ヌクレオチド長であり、そして約50−200ヌクレオチド長の領域をフランキングする。
【0108】
リアルタイム定量PCR(RT−PCR)は例えば本発明の遺伝子、例えば目的のSNPおよび多型を含有する遺伝子の遺伝子発現レベルを評価するための一つの方式である。RT−PCRアッセイはmRNA鎖を含むRNA鎖からのDNA鎖の合成を触媒するRNA逆転写酵素を利用する。得られたDNAを特異的に検出および定量することができ、そしてこの方法を用いて特定の種類のmRNAのレベルを決定することができる。これを行うための一つの方法はTAQMAN(登録商標)(PE Applied Biosystems, Foster City, Calif., USA)であり、そしてPCR反応中にAMPLITAQ GOLD(商標)DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を活用してプローブの特異的形態を切断する。これはTAQMAN(商標)プローブと称される。Luthra et al., Am. J. Pathol. 153:63−68(1998); Kuimelis et al., Nucl. Acids Symp. Ser. 37:255−256(1997);およびMullah et al., Nucl. Acids Res. 26(4):1026−1031(1998))参照。反応の間にプローブの切断はレポーター色素およびクエンチャー色素を分離し、結果的にレポーターの蛍光が増加する。PCR生成物の蓄積をレポーター色素の蛍光の増加をモニタリングすることにより直接的に検出する。Heid et al., Genome Res. 6(6):986−994(1996))。核酸標的の出発コピー数が多いほど、蛍光の有意な増加の観察が早くなる。Gibson, Heid & Williams et al., Genome Res. 6:995−1001(1996)参照。
【0109】
細胞の転写状態を測定するためのその他のテクノロジーは二重制限酵素消化を相調整(phasing)プライマー(例えば欧州特許第0534858A1号参照)と組み合わせた方法、または定義されたmRNA末端に最も近い部位を有する制限フラグメントを選択する方法のような電気泳動分析のための限定的で複雑な制限フラグメントのプールを生み出す。(例えばPrashar & Weissman, Proc.°Natl. Acad. Sci. USA 93(2)659−663(1996)参照)。
【0110】
その他の方法は複数のcDNAの各々で各cDNAを同定するために十分な塩基、例えば20−50塩基をシークエンシングすることによる、または定義されたmRNA末端経路パターンに相対した公知の位置で生じる短いタグ、例えば9−10塩基をシークエンシングすることによるようにcDNAプールを統計的に試料採取する。例えばVelculescu, Science 270: 484−487(1995)参照。試料中のcDNAレベルを定量し、そして当業者に周知の標準的な統計手段を用いることにより各cDNAの平均(mean)、平均(average)および標準偏差を決定する。Norman T.J. Bailey, Statistical Methods In Biology, 3rd Edition(Cambridge University Press, 1995)。
【0111】
ポリペプチドの検出、免疫学的検出方法
検出可能なように標識された、または続いて標識できるプローブにより本発明の遺伝子によりコードされるタンパク質の発現を検出することができる。「標識された」なる用語はプローブまたは抗体に関しては、結合、すなわち物理学的連結によるプローブまたは抗体の直接標識、プローブまたは抗体に対して検出可能な物質、および直接標識されている別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含すると意図される。間接的標識の実例には蛍光標識二次抗体を用いる一次抗体の検出および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようなDNAプローブのビオチンでの末端標識が挙げられる。一般的にプローブは発現されたタンパク質を認識する抗体である。種々の形式を用いて試料が所定の抗体に結合する標的タンパク質を含有するかどうかを決定することができる。本発明の標識ポリペプチドの検出に有用なイムノアッセイ法には、限定するものではないが例えばドットブロッティング、ウェスタンブロッティング、タンパク質チップ、競合および非競合タンパク質結合アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫組織化学、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、ならびに一般に用いられそして科学的および特許文献において広く記載されているその他のものおよび多くの市販により用いられるものが含まれる。当業者は細胞が本発明のマーカーを発現するかどうか、および血液またはその他の身体組織中のその特異的ポリペプチド発現生成物の相対濃度を決定するのに使用するための公知のタンパク質/抗体検出方法を容易に適合させることができる。当業者に周知である技術を用いて個体からのタンパク質を単離することができる。用いられるタンパク質単離方法は例えばHarlow & Lane, Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1988))に記載されているようなものでよい。
【0112】
開示される遺伝子の一つによりコードされるタンパク質に対する抗体の生成のために、ポリペプチドまたはその一部を注射することにより種々の宿主動物を免疫することができる。かかる宿主動物には、限定するものではないがウサギ、マウスおよびラットが含まれる。宿主の種に依存して、限定するものではないがフロイント(完全または不完全)、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル;リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノールのような界面活性物質;ならびにカルメットゲ・ラン桿菌(BCG)およびコリネバクテリウム・パルバムのような有用な可能性のあるヒトアジュバントを含む種々のアジュバントを用いて免疫学的応答を増強させることができる。
【0113】
培養下の連続的な細胞系による抗体分子の生成を提供する任意の技術により、特定の抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体(mAb)を得ることができる。これらには、限定するものではないがKohler & Milstein, Nature 256:495−497(1975);および米国特許第4376110号のハイブリドーマ技術; Kosbor et al., Immunol. Today 4:72(1983); Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026−2030(1983)のヒトB細胞ハイブリドーマ技術; ならびにCole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(Alan R. Liss, Inc., 1985)pp. 77−96のEBVハイブリドーマ技術が挙げられる。
【0114】
加えて適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の生成のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851−6855(1984); Neuberger et al., Nature 312:604−608(1984); およびTakeda et al., Nature 314:452−454(1985)参照)を用いることができる。キメラ抗体は、ネズミmAbおよびヒト免疫グロブリン定常領域から誘導された可変または超可変領域を有するもののような、異なるタンパク質が異なる動物種から誘導される分子である。
【0115】
これに代えて、一本鎖抗体の生成のために記載された技術(米国特許第4946778号; Bird, Science 242:423−426(1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883(1988);およびWard et al., Nature 334:544−546(1989))を差次的に発現された遺伝子一本鎖抗体を生成するために適合させることができる。
【0116】
「ヒト化抗体」の生成に有用な技術をタンパク質、そのフラグメントまたは誘導体に対する抗体の生成に適合させることができる。かかる技術は米国特許第5932448号;第5693762号;第5693761号;第5585089号;第5530101号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5789650号;第5661016号;および第5770429号に開示されている。
【0117】
発現されたタンパク質を検出するために、抗体または抗体フラグメントをウェスタンブロットまたは免疫蛍光技術のような方法において用いることができる。かかる使用において抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定するのが一般に好ましい。適当な固相支持体または担体には抗原または抗体と結合できる任意の支持体が含まれる。周知の支持体または担体にはガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩およびマグネタイトが含まれる。
【0118】
検出の容易さに関して有用な方法はサンドウィッチELISAであり、その多くの変法が存在し、その全てが本発明の方法およびアッセイで用いられると意図される。本明細書で用いる「サンドウィッチアッセイ」は基本的な二部位技術の全ての変法を包含すると意図される。免疫蛍光およびEIA技術は双方共に当分野において十分に確立されている。しかしながら、放射性同位体、化学的発光または生物発光分子のようなその他のレポーター分子を用いることもできる。必要とされる使用に適合するためにどのように手順を変化させるかは当業者には明白であろう。
【0119】
結合部位が細胞ゲノムによりコードされる複数のタンパク質種に特異的な、固定された、好ましくはモノクローナルの抗体を含むマイクロアレイを構築することにより、タンパク質の全ゲノム、すなわち「プロテオーム」を実施することができる。好ましくはコードされたタンパク質の実質的な分画に関する、または少なくとも目的の生物学的ネットワークモデルの試験もしくは確認に関係するこれらのタンパク質に関する抗体が存在する。前記で記したようにモノクローナル抗体を作成するための方法は周知である。例えばHarlow & Lane, Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1988))参照。好ましい実施態様では、細胞のゲノム配列に基づいて設計された合成ペプチドフラグメントに対してモノクローナル抗体を上昇させる。かかる抗体アレイを用いて、細胞からのタンパク質をアレイと接触させ、そしてその結合を当分野において公知のアッセイで測定する。
【0120】
ポリペプチドの検出、二次元ゲル電気泳動
二次元ゲル電気泳動は当分野において周知であり、そして典型的には一次元目に等電点電気泳動、続いて二次元目にSDS−PAGE電気泳動を伴う。例えばHames et al., Gel Electrophoresis of Proteins:A Practical Approach(IRL Press, New York, 1990); Shevchenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14440−14445(1996); Sagliocco et al., Yeast 12:1519−1533(1996);およびLander, Science 274:536−539(1996)参照。
【0121】
ポリペプチドの検出、質量分析
標的ポリペプチドの同一性および発現レベルを、質量分析技術(MS)を用いて決定することができる。MS基盤の分析方法論は単離された標的ポリペプチドの分析および生物学的試料中の標的ポリペプチドの分析に有用である。標的ポリペプチドの分析に使用するためのMS様式には、限定するものではないがマトリックス支援レーザー脱離(MALDI)のようなイオン化(I)技術、イオンスプレーまたはサーモスプレー、およびマッシブクラスター衝撃(MCI)のような連続的またはパルス的エレクトロスプレーイオン化(ESI)および関連する方法が含まれる。かかるイオン供給源は、直線的または非直線的リフレクトロン飛行時間(TOF)、単一または複数の四重極、単一または複数の磁場セクター、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップおよびイオントラップ/TOFのようなその組み合わせを含む検出形式に適合させることができる。イオン化には非常に多くのマトリックス/波長の組み合わせ(例えばマトリックス支援レーザー脱離(MALDI))または溶媒の組み合わせ(例えばEST)を用いることができる。
【0122】
質量分析(MS)に関しては、標的ポリペプチドを適切な溶液または試薬系中で可溶化することができる。溶液または試薬系、例えば有機または無機溶媒の選択は標的ポリペプチドの特性および実施するMSの型に依存し、そして当分野において周知の方法に基づく。例えばMALDIに関してはVorm et al., Anal. Chem. 61:3281(1994);およびESIに関してはValaskovic et al., Anal. Chem. 67:3802(1995)を参照されたい。ペプチドのMSはまた例えば国際PCT出願番号第WO93/24834号および米国特許第5792664号にも記載されている。標的ペプチドが気化過程のために導入されたエネルギーにより分解される危険性を最小にする溶媒を選択する。例えばマトリックスに試料を包埋することにより標的ポリペプチド分解の危険性の低減を達成することができる。適当なマトリックスは糖、例えばペントースもしくはヘキソースまたはセルロースのような多糖類のような有機化合物でよい。かかる化合物は熱分解によりCOおよびHOに分解され、化学反応を導き得る残留物は形成されない。マトリックスはまた本質的に何ら残留物を残さないで分解されるアンモニウムの硝酸塩のような無機化合物でもよい。これらのおよびその他の溶媒の使用は当業者に公知である。例えば米国特許第5062935号参照。エレクトロスプレーMSはFenn et al., J. Phys. Chem. 88:4451−4459(1984);およびPCT出願番号第WO90/14148号;に記載されており、そして本出願は総説において要約されている。Smith et al., Anal. Chem. 62:882−89(1990);およびArdrey, Spectroscopy 4: 10−18(1992)参照。
【0123】
MSにより決定された標的ポリペプチドの質量を対応する公知のポリペプチドの質量と比較することができる。例えば標的ポリペプチドが変異タンパク質である場合、対応する公知のポリペプチドは対応する非変異タンパク質、例えば野生型タンパク質でよい。ESIを用いるフェムトモル量での分子量の決定は複数のイオンピークの存在のために非常に正確であり、その全てを質量計算に用いることができる。サブアトモルレベルのタンパク質は例えばESI MS(Valaskovic et al., Science 273:1199−1202(1996))およびMALDI MS(Li et al., J.°Am. Chem. Soc. 118:1662−1663(1996))を用いて検出されている。
【0124】
マトリックス支援レーザー脱離(MALDI)
生物学的試料、例えば体液または組織試料中の標的タンパク質のレベルを、限定するものではないがさらに以下に詳記するようなマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI−TOF−MS)および表面エンハンス型レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(SELDI−TOF−MS)として当分野において公知のこれらの技術を含む質量分析(MS)法を用いて測定することができる。MALDIを実施するための方法は当業者に周知である。例えばJuhasz et al., Analysis, Anal. Chem. 68:941−946(1996)を参照されたく、そしてMALDIおよびディレイドエクストラクションプロトコールの記載に関しては例えば米国特許第5777325号;第5742049号;第5654545号;第5641959号;第5654545号および第5760393号もまた参照されたい。分解能を改善するための非常に多くの方法もまた公知である。MALDI−TOF−MSはHillenkamp et al., Biological Mass Spectrometry, Burlingame & McCloskey, eds.(Elsevier Science Publ., Amsterdam, 1990)pp. 49−60により記載されている。
【0125】
質量分析を用いるマーカー検出のための種々の技術を用いることができる。Bordeaux Mass Spectrometry Conference Report, Hillenkamp, Ed., pp. 354−362(1988); Bordeaux Mass Spectrometry Conference Report, Karas & Hillenkamp, Eds., pp. 416−417(1988); Karas & Hillenkamp, Anal. Chem. °60:2299−2301(1988);およびKaras et al., Biomed. Environ. Mass Spectrum 18:841−843(1989)参照。TOF−MSでのレーザービームの使用は米国特許第4694167号;第4686366号、第4295046号および第5045694号にて示されており、それはその全てを出典明示により本明細書の一部とする。その他のMS技術によりフラグメント化することなく高分子量バイオポリマーを気化するのに成功でき、そして広範な生物学的高分子を質量分析により分析することが可能になっている。
【0126】
表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(SELDI)
アフィニティー質量分析(AMS)として記載されるように、プローブエレメントが特異的被分析物の捕捉およびドッキングに積極的に参加することが可能になる表面を有する新しいMSプローブエレメント組成物を用いるその他の技術を用いる。SELDI特許米国特許第5719060号;第5894063号;第6020208号;第6027942号;第6124137号;および米国特許出願第U.S.2003/0003465号参照。いくつかの型の新しいMSプローブエレメントは表面エンハンス型アフィニティーキャプチャー(SEAC)を伴って設計されている。Hutchens & Yip, Rapid Commun. Mass Spectrom.°7:576−580(1993)参照。SEACプローブエレメントを用いて、タンパク質表面構造および生体特異的分子認識について公知であることを活用することにより、異なるクラスのバイオポリマー、特にタンパク質を取り出し、そして拘束することに成功している。MSプローブエレメント表面に固定したアフィニティーキャプチャー装置、すなわちSEACはプローブ表面のために被分析物の位置および親和性(特異性)を決定し、したがって続く分析用MS過程が効率的である。
【0127】
SELDIの一般的なカテゴリー内に三つの別個のサブカテゴリーが存在する:(1)プローブエレメント表面、すなわち試料提示手段が表面に直接的(ニート)に加えられた被分析物の脱離イオン化を促すために「マトリックス」の代わりにエネルギー吸収分子(EAM)を含有するように設計されている表面エンハンス型ニート脱離(Surfaces Enhanced for Neat Desorption)(SEND)。(2)プローブエレメント表面、すなわち試料提示手段が種々の機構(たいていは非共有結合)により被分析物のプローブ表面への特異的または非特異的いずれかの付着または吸収(いわゆるドッキングまたは拘束)を促すために化学的に定義された、および/または生物学的に定義されたアフィニティーキャプチャー装置を含有するように設計されているSEAC。(3)プローブエレメント表面、すなわち試料提示手段が共有結合ドッキング装置として提供されるために一つもしくはそれより多い型の化学的に定義された架橋分子を含有するように設計または修飾されている表面エンハンス型光解離性付着/放出(Surfaces Enhanced for Photolabile Attachment and Release)(SEPAR)。SEPAR試料提示手段(すなわちプローブエレメント表面)と被分析物(例えばタンパク質)との間の光解離性分子付着点の型および数を決定する化学的特異性は被分析物にいずれか一つもしくはそれより多い数の異なる残基または化学構造を伴い得る(例えばタンパク質およびペプチドの場合、His、Lys、Arg、Tyr、PheおよびCys残基)。
【0128】
機能化ポリペプチド
本発明のポリペプチドを修飾して固体支持体への抱合を促すことができる。化学的または物理的部分を適切な位置でポリペプチドに組み込むことができる。例えばポリペプチドのカルボキシル末端もしくはアミノ末端に、またはペプチドのアミノ酸に(例えば反応性側鎖にまたはペプチドバックボーンに)適切な官能基を加えることにより目的のポリペプチドを修飾することができる。しかしながら当業者は、かかる修飾、例えばビオチン部分の組み込みが特定の試薬がポリペプチドと特異的に相互作用する能力に影響し得ることを認識し、そしてしたがって関係がある場合、目的のポリペプチドをどのように修飾するのが最適であるかを選択するにあたりこの因子を考慮するであろう。通常ポリペプチドに存在する天然発生アミノ酸はまたポリペプチドを固体支持体に抱合させるのに適当な官能基を含有することもできる。例えばポリペプチドに存在するシステイン残基を用いて、ジスルフィド連結を介してスルフヒドリル基を含有する支持体、例えばそこに付着したシステイン残基を有する支持体にポリペプチドを抱合させることができる。2個のアミノ酸間に形成され得るその他の結合には、限定するものではないが例えばポリペプチドに組み込まれ得る非天然発生アミノ酸である2個のランチオニン残基間のモノスルフィド結合;Gluのyカルボキシル基(またはAspのアルファカルボキシル基)とLysのアミノ基との間のような酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸の側鎖の間のアミノ基転移反応により形成されるラクタム結合;または例えばSerのヒドロキシ基とGluのカルボキシル基との間の架橋により生成されるラクトン結合が含まれる。したがって、望ましいアミノ酸残基、例えばGlu残基を含有するように固体支持体を修飾することができ、そしてSer残基、特にN末端またはC末端のSer残基を有するポリペプチドをラクトン結合の形成を介して固体支持体に抱合させることができる。ポリペプチドのSerでラクトン様結合を形成するのが望ましい場合、支持体を特定のアミノ酸、例えばGluを含有するように修飾する必要はないが、代わりに接近可能なカルボキシル基を含有する様に修飾し、したがってGluのアルファカルボキシル基に相当する官能基を提供することができる。
【0129】
チオール反応性機能
チオール反応性機能はポリペプチドの固体支持体への抱合に特に有用である。チオール反応性機能は求核性チオール部分と速やかに反応して共有結合、例えばジスルフィド結合またはチオエーテル結合を生じることができる化学的基である。種々のチオール反応性機能は当分野において公知であり、例えばヨードアセチルのようなハロアセチル;ジアゾケトン;エポキシケトン、アルファエノンおよびベータエノンのようなアルファおよびベータ不飽和カルボニル;ならびにマレイミドのようなその他の反応性マイケル受容体;酸ハロゲン化物;ベンジルハロゲン化物;等が含まれる。Greene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd Edition(John Wiley & Sons, 1991)参照。
【0130】
所望により光解離性保護基でチオール基を遮断することができ、次いでそれを例えばフォトリソグラフィーにより選択的に切断して目的のポリペプチドの固定のために活性化された表面の部分を提供することができる。光切断可能な保護基は当分野において公知であり(例えば公開国際PCT出願番号第WO92/10092号;およびMcCray et al., Ann. Rev. Biophys. Biophys. Chem. 18:239−270(1989)参照)、そして例えばフォトリソグラフィーマスクを用いて表面の選択された面積の照射により選択的に遮断解除することができる。
【0131】
リンカー
リンカーを介して目的のポリペプチドを直接支持体に付着させることができる。直接かまたはスペーサーを介してかのいずれかでペプチドまたはアミノ酸の支持体への連結に適当であることが当業者に公知の任意のリンカーを用いることができる。例えば可変スペーサーの手段によりポリペプチドをビーズのような支持体に抱合させることができる。リンカーにはリンクアミドリンカー(例えばリンク、Tetrahedron Lett. 28:3787(1976)参照);塩化トリチルリンカー(例えばLeznoff, Ace Chem. Res. 11:327(1978)参照);およびメリフィールドリンカー(例えばBodansky et al., Peptide Synthesis, 2nd Edition(Academic Press, New York, 1976)参照)が含まれる。例えばトリチルリンカーが公知である。例えば米国特許第5410068号および第5612474号参照。アミノトリチルリンカーもまた公知である。例えば米国特許第5198531号参照。その他のリンカーには融合タンパク質に組み込まれ、そして宿主細胞において発現され得るものが含まれる。かかるリンカーをアミノ酸、酵素基質または任意の適当なペプチドから選択することができる。核酸を単離する場合、リンカーを例えばプライマーの適切な選択により作成することができる。これに代えて、それらを目的のタンパク質の翻訳後修飾により加えることができる。ペプチドの支持体への化学的連結に適当であるリンカーにはジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合ならびにアミンおよびチオール基のような遊離反応性基間の共有結合が含まれる。
【0132】
切断可能なリンカー
リンカーは選択条件下で切断されるように可逆的な連結を提供することができる。とりわけ光切断可能なリンカー(米国特許第5643722号参照)、酸切断可能なリンカー(Fattom et al., Infect. Immun. 60:584−589(1992)参照)、酸不安定性リンカー(Welhoener et al., J. Biol. Chem. 266:4309−4314(1991)参照)および熱感受性リンカーを含む選択的に切断可能なリンカーが有用である。連結は例えばメルカプトエタノールもしくはジチオエリスロールにより化学的に切断可能であるジスルフィド結合;光切断可能にできるビオチン/ストレプトアビジン連結;酸性条件に暴露することにより、もしくはMS条件下で切断することができるトリチルエーテル基のヘテロ二機能性誘導体(Koester et al, Tetrahedron Lett. 31:7095(1990)参照);ヒドラジニウム/酢酸バッファーを用いてほぼ中性の条件下で切断できるレブリニル媒介連結;そのいずれかをトリプシンのようなエンドペプチダーゼにより切断することができるアルギニン−アルギニンもしくはリジン−リジン結合;ピロホスファターゼにより切断することができるピロリン酸結合;またはリボヌクレアーゼを用いて、もしくはアルカリ条件に暴露することにより切断することができるリボヌクレオチド結合でよい。3−アミノ−(2−ニトロフェニル)プロピオン酸のような光解離性架橋を固体支持体からのポリペプチドの切断のための手段として用いることができる。Brown et al., Mol Divers, pp. 4−12(1995); Rothschild et al., Nucl. Acids. Res. 24:351−66(1996);および米国特許第5643722号。その他のリンカーには、リボザイムおよびその他のRNA酵素により切断可能であるRNAリンカー、ならびにヒトIgG1の定常領域からのCH、CHおよびCHのような種々ドメインのようなリンカーが含まれる。Batra et al., Mol Immunol 30:379−396(1993)参照。
【0133】
任意のリンカーの組み合わせもまた本明細書では意図される。例えばシリル連結または光切断可能な連結のようなMS条件下で切断可能であるリンカーをこれらの条件下で切断されないが、別の条件下で切断され得るアビジンビオチン連結のようなリンカーと組み合わせることができる。酸不安定性結合は3−HPAマトリックス溶液の添加時に標的ポリペプチドのコンディショニングの間に切断されるので、酸不安定性リンカーは質量分析、特にMALDI−TOFのためにとりわけ有用な化学的に切断可能なリンカーである。酸不安定性結合を別個のリンカー基、例えば酸不安定性トリチル基として導入することができるか、またはジイソプロピルシリルを用いて一つもしくはそれより多いシリル橋を導入し、それによりポリペプチドと固体支持体との間にジイソプロピルシリル連結を形成することにより合成リンカーに組み込むことができる。1.5%トリフルオロ酢酸(TFA)または3−HPA/1%TFA MALDI−TOFマトリックス溶液のような穏やかな酸性条件を用いてジイソプロピルシリル連結を切断することができる。ジイソプロピルシリル連結およびその類似体の調製のための方法は当分野において周知である。例えばSaha et al., J. Org. Chem. 58:7827−7831(1993)参照。
【0134】
ポリペプチドを固定するためのピンツールの使用
ピンツールを用いる目的のポリペプチドの固体支持体への固定が特に有利であり得る。ピンツールには本明細書で開示するもの、またはそれ以外の当分野において公知のものが含まれる。例えば米国出願番号第08/786988号および第08/787639号;および国際PCT出願番号第WO98/20166号参照。
【0135】
アレイ、例えば4X4アレイのピンツールを目的のポリペプチドを容れるウェルに適用することができる。ピンツールが各ピンチップ付着した官能基を有するか、または固体支持体例えば機能化ビーズもしくは常磁性ビーズが各ピンに付着している場合、ウェルのポリペプチドを捕捉することができる(最大能力1ピコモル)。捕捉工程の間、捕捉効率を高めるためにピンを動かし続けることができる(垂直方向、道程1−2mm)。インビトロ転写のような反応がウェル中で実施される場合、ピンの動きが反応の効率を高めることができる。ピンツールに電場を適用することによりさらに固定させることができる。電圧をピンツールに適用すると、ポリペプチドはその正味電荷に依存して陽極または陰極に付着する。
【0136】
さらに具体的には、目的のポリペプチドのみがピンに結合するようにピンツール(電圧を伴うかまたは伴わない)を、目的のポリペプチドに特異的な試薬をそこに抱合しているように修飾することができる。例えばポリヒスチジン配列を含有するポリペプチドのみが結合するように、ピンにニッケルイオンを付着させることができる。同様に、抗体に認識されるエピトープを含有する標的ポリペプチドのみがピンに結合するように、ピンはそこに付着した、または今度はピンに付着しているビーズに付着した、標的ポリペプチドに特異的な抗体を有することができる。
【0137】
例えばUV/VIS、IR、蛍光、化学発光、NMR分光法、MSもしくはその他の当分野において公知の方法、またはその組み合わせのような分光測定技術を含む種々の手段により捕捉したポリペプチドを分析することができる。条件が捕捉したポリペプチドの直接分析を妨げる場合、試料濃度の利点が失われないような条件下でポリペプチドをピンから遊離または移動させることができる。したがって、最小容量の溶出液を用いて、そして試料を何ら喪失することなく、ピンからポリペプチドを除去することができる。ポリペプチドがピンに付着したビーズに結合している場合、ポリペプチドを含有するビーズをピンから除去し、そしてビーズから直接測定することができる。
【0138】
ピンツールはアレイで空間的にアドレス指定可能な様式で目的のポリペプチドを固定するのに有用であり得る。かかる空間的にアドレス指定可能なまたはプレアドレス指定可能なアレイは例えば品質管理およびアミノ酸シークエンシング診断を含む種々の方法で有用である。米国出願番号第08/786988号および第08/787639号ならびに国際PCT出願番号第WO98/20166号に記載されるピンツールは固体支持体表面でポリペプチドのマルチエレメントアレイを作成するために用いることができる連続および並行分配用具である。アレイ表面は平坦でビーズを伴うか、またはビーズを含有できるウェルを含むように形状的に変化させることができる。加えてMS形状をピンツール装置を収容するために適合させることができる。
【0139】
生物学的状況のその他の態様
本発明の種々の実施態様では、薬物および経路応答を得るために生物学的に活性な状況の態様、または混ざり合った態様を測定することができる。細胞機能の特徴付けに関係するタンパク質の活性を測定することができ、そして本発明の実施態様はかかる測定を基礎とすることができる。特徴付けされている特定の活性に適切な任意の機能的、生化学的または物理学的手段により活性測定を実施することができる。活性が化学的変換を伴う場合、細胞タンパク質を天然基質と接触させ、そして変換の速度を測定することができる。活性が多量体単位での関連性、例えば活性化されたDNA結合複合体とDNAとの関連性を伴う場合、転写されたmRNAの量のような関連するタンパク質の量または関連性の二次的な結果を測定することができる。また、例えば細胞サイクル制御におけるような機能的活性のみが公知である場合、機能の実施を観察することができる。タンパク質活性の変化は公知でっても、測定されていても、本発明の方法により分析された応答データを形成する。代替えの、および非限定的な実施態様では、応答データは細胞の生物学的状況の混ざり合った態様の形態を為し得る。例えば特定のmRNAの存在量の変化、特定のタンパク質の存在量の変化および特定のタンパク質活性の変化から応答データを構築することができる。
【0140】
本発明の好ましい実施態様をさらに十分に説明するために以下の実施例を提示する。この実施例を添付の請求の範囲に定義されるように本発明の範囲を限定するとは決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0141】
(実施例)
遺伝子TCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1A、ACACBおよびSCD1における遺伝的多様性は北米白色人種の2型糖尿病に関連する
序文および要旨
この実施例の目的は疾患の同一性に関するバイオマーカーを提供することによりさらに正確に2型糖尿病を定義することである。かかるバイオマーカーはより良好な診療のために薬物標的を同定し、そして個体に合わせた医薬品に基づいてより効果的に患者を処置することを助ける。
【0142】
T2DM多型関連解析において用いられる集団の層
分析は1000人を超える2型真性糖尿病(T2DM)の参加者および1000人を超える正常な対照からなった。USAコレクションのみを用いて研究を行った。参加者は白色人種のみに限定され、中央および南アメリカからの参加者は排除された。
【0143】
糖尿病参加者のための研究基準
サーベイソース(USコレクションのみ)を用いて以下の基準を参加者選択に適用した:(1)糖尿病参加者は2型糖尿病を有するが、1型糖尿病を有さないことを確認した。(2)参加者の空腹時血糖レベルは少なくとも1回の測定で≧140mg/dlであった。(3)ヘモグロビンA1c(HBA1C)試験は少なくとも1回の測定で≧7であった。1004人の糖尿病参加者がこれらの基準に合致した。糖尿病参加者の年齢は>30歳および≦80歳であった。診断時の参加者の年齢もまた>30歳および≦80歳であった。糖尿病参加者の肥満度指数(BMI)は≧25および≦40であった。
【0144】
対照のための研究基準
対照に関しては以下の基準を適用した:対照は1型または2型糖尿病を有さなかった。1609人の対照参加者がこれらの基準に合致した。対照参加者の年齢は>30歳であった。対照参加者の肥満度指数(BMI)は≧25および≦40であった。
【0145】
適合基準および症例対照比較
以下の基準を用いて糖尿病の症例および対照が一致した:(1)性別の正確な一致、(2)+/−5歳の年齢の一致(すなわち糖尿病と対照との間の最大年齢差=5歳)。(3)肥満度指数(BMI)+/−5単位の一致。最終的に糖尿病と対照との間の最大差=4.9単位。各々の糖尿病参加者および対照から血液試料を収集した。
【0146】
一塩基多型遺伝子型分類
9個の遺伝子で全部で115個のSNPの遺伝子型分類に成功した。OMIM、SNPコンソーシアム、Locus LinkおよびdbSNPのようなデータベースからの情報を用いてSNPアッセイを設計した。
【0147】
一塩基伸長、続いてSequenom’s MassArray(商標)テクノロジーを用いる質量分析により全てのSNPの遺伝子型分類を実施した。Ross et al., Nat. Biotechnol. 16:1347−1351(1998)。この系での遺伝子型の確認は均一な質量増加(homogenous Mass Extension)(hME)反応生成物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)分析に基づく。hME反応の間、プライマーはSNPアレルに依存して特定数のヌクレオチドおよびSNPのすぐ3’の数個の塩基により伸長する。伸長は所定のアレルに一致する3個のジデオキシヌクレオチド(ddNTP)のいずれか一つを組み込むことにより停止するか、または対立のアレルに一致する1個のデオキシヌクレオチド(dNTP)を用いて持続される。したがってhME反応は異なる質量(ダルトン)のアレル特異的伸長生成物を生成する。これらのhME生成物の質量差に基づいて多くの異なるアッセイを同時に行うことができ(マルチプレックス)、それにより費用効率が高く、そして高処理の遺伝子型分類が提供される。各々の質量特異的ピークはマルチプレックスで各SNPからの二つの伸長生成物の公知の配列に基づいて特異的アレルと称される。過程を通じてバーコード化された追跡を用いて自動化することにより全遺伝子型分類過程を支援する。最終的な遺伝子型データは承認され、そしてプラットフォーム系から最終統計分析のためのデータベースに移される。組み合わされた保守的および適度なコールの通過率が95%よりも大きいかまたはそれに等しく、そして公称HWE p値が0.01またはそれより高い場合、遺伝子型データは所定のアッセイで通用すると考えられる。
【0148】
検定した全SNPのリストを表2に記載する。
【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0149】
SNP関連性検定に関する統計方法、単一マーカー関連性検定
見せかけの状態とマーカーの各々との間の関連性の検定をアレル頻度および遺伝子型頻度の双方に基づいて実施した。アレル頻度測定のために、二つの見せかけの群の各アレルの観察された数をまとめた分割表を自由度(df)1のx検定と関連性のない帰無仮説からの期待値と比較した。少なくとも一つのスパースマージン(sparse margin)(観測数<10)を有する分割表では代わりにフィッシャーの正確確率検定を使用した。同様に遺伝子型に基づく関連性に関しては、2dfのx検定、または少なくとも一つのスパースマージンを有する分割表に関するフィッシャーの正確確率検定を用いて二つの見せかけの群の遺伝子型の数を、疾患と遺伝学との関連性がない期待値と比較した。加えて遺伝の劣勢または優勢様式から誘導される遺伝子型基盤の関連性を検出するために、観察されたデータに関する分割表の構築において、ヘテロ接合型遺伝子型の数をメジャーまたはマイナーアレルの各々に関するホモ接合型遺伝子型の数と比較した。再度1dfのx検定、またはフィッシャーの正確確率検定のいずれかを用いて、遺伝の特異的モデルを示す見せかけの状況と関連性のない帰無仮説からの偏差を評価した。
【0150】
アレル基盤および遺伝子型基盤の双方の仮説検定に関しては、Westfall P & Young S, Resampling−based multiple testing: examples and methods for p−value adjustment(Wiley, New York, 1993)p. 340の標準的な再抽出手順により分析分布からの有意性を確認した。帰無仮説を推定するために検定統計を、少なくとも5000のシミュレーションデータセットに関してコンピューター処理したが、その各々は置き換えなしに無作為に抽出することにより対象に再割り当てされた見せかけの状態を有するが、元来のデータからの遺伝子型割り当てを保存している。関連性の有意性をさらに評価するために、またシミュレーション帰無分布を用いてマーカーに関して補正されたp値をコンピューター処理した。SNPの各群(すなわち単一の遺伝子の全てのSNPまたは全てのシングルトンSNPを一緒に)は複数の仮説の別個のセットと見なされた。各群に関して最良のマーカーの統計を、補正されたp値を推定するために再抽出されたデータから誘導される最大値分布と比較した。各群の残りのマーカーの統計に関して、被験マーカーp値より大きいかまたはそれと等しい未補正p値を有したこれらのマーカーのみを含有する元来の群からのマーカーのサブセットの再抽出されたデータから推定された最大値分布との比較から補正p値を誘導した。時には最大値に関するこれらの入れ子型帰無分布が、その未補正のものと同一の方式で指定されなかった補正p値を生じた。これらのマーカーに関して、最も近く、より小さい未補正p値を有するマーカーに関する補正p値に等しい補正p値を設定することにより単調性を課した。Westfall P & Young S, Resampling−based multiple testing: examples and methods for p−value adjustment(Wiley, New York, 1993)p. 340; Schaid DJ et al., Am. J. Hum. Genet. 70(2):425−34(2002)参照。
【0151】
遺伝子型分類の特質を評価するために、および分析した集団の潜在的層構造を検出するために、各SNPに関して観察された遺伝子型頻度を1dfのx検定によりサンプルから推定されたアレル頻度に基づくハーディワインベルグ期待値と比較した。
【0152】
この分析ではR統計パッケージ(Becker R et al., The new S language:A programming environment for data analysis and graphics(Wadsworth & Brooks/Cole Advanced Books, Pacific Grove, 1988)p. 702)およびハプロタイプブロック構造の分析にはハプロビュー(Barrett JC et al., 「Haploview:analysis and visualization of LD and haaplotype maps」 Bioinformatics(2004))を使用した。
【0153】
ハプロタイプ分析
バイナリ形質(binary trait)に関する推奨されるパラメーターを用いてRのhaplo.statsパッケージのhaplo.scoreプログラムを用い全てのハプロタイプ関連解析を実施したBecker R, Chambers J & Willks A, The new S language: a programming environment for data analysis and graphics(Wadsworth & Brooks/Cole Advanced Books, Pacific Grove, 1988)p. 702; Schaid DJ et al., Am. J. Hum. Genet. 70(2):425−34(2002)参照。haplo.score はEMアルゴリズムを用いて遺伝子型からハプロタイプを推測し、そして遺伝子座での個体のハプロタイプおよびハプロタイプの全セットの双方に関して形質との関連性を検定する。双方の検定に関する関連性の有意性を分析分布から、および再抽出による実証的帰無分布から決定し、実証的分布は前記したような最も密接に関連したハプロタイプに関する最大値統計を評価するためにも使用した。haplo.scoreの使用説明書は、遺伝子型データを欠いている対象はハプロタイプ推論を劇的に劣化させると警告しており、そして我々の経験によりこの注意はさらに強調された。とりわけ遺伝子ACACBに関するhaplo.scoreでのハプロタイプ推論および完全なデータは、遺伝子座を2個の群(SNP T27456C−A70941GおよびA71434G−A136178G)に分けなければ集まらず、そして次にさらにパラメーターをそのデフォルト設定から変化させなければならなかった。とりわけ基準パラメーター「挿入バッチサイズ」はそのデフォルト設定の6から下げなければならなかった(表3参照)。したがって各遺伝子に関して、全データセットのみならず全SNPに関する、およびプログラムハプロビューによるブロック構造から決定されるような主要なハプロタイプ多様性を捕捉すると推測された「タグ」SNPの数の低下に関する完全な遺伝子型情報を有した個体のサブセットまでにも分析を実施した。「タグ」SNP法は、いくつかの遺伝子型データを欠いている個体を含むSNPの全てを用いるハプロタイプ推論と、完全なデータを有する個体のみを含むSNPの全てを用いるハプロタイプ推論との間の妥協を示す。異なる分析の様式での適格な対象の数に関しては表3を参照されたい。
【0154】
【表14】

【表15】

【0155】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)関連性
遺伝子ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)における遺伝的多様性は2型糖尿病と関連する。3個の遺伝子型(相互優勢モデル)全てを用いる遺伝子型分析により、遺伝子型分類された14個のSNPのうち3個のSNP(rs3870747、rs7849およびrs1393491)が糖尿病表現型と統計的に有意な関連性を示した(P<0.05)。
【0156】
SCDは不飽和脂肪酸の合成および脂質生成における律速段階を触媒する。SCDの主要な生成物はオレイン酸であり、それはステアリン酸の不飽和化により形成される。遺伝的肥満マウス(ob/ob)の肝臓の転写プロファイリングの分析により、レプチンはSCD1のRNAレベルおよび酵素活性を特異的に抑制することが示された。Scd1を欠くマウスはやせて、そして代謝亢進状態であり;Scd1に変異を有するob/obマウスはob/ob対照よりも有意に肥満が少なく、そしてエネルギー消費が著明に増加していた。SCD1に変異を有するob/obマウスは組織学的に正常な肝臓を有し、トリグリセリド貯蔵およびVLDL生成が有意に低下していた。SCD1欠損の主な結果はトリグリセリド合成および貯蔵の低下に加えて脂質酸化の活性化であると仮定される。Cohen P et al., Science 297:240−243(2002)。
【0157】
したがってSCD阻止は肥満、インスリン抵抗性、脂肪肝疾患およびT2DMを処置するための有望な研究法である。
【0158】
表4はこの分析に用いたSCD SNPをまとめている。3個の遺伝子型(相互優勢モデル)全てを用いる遺伝子型分析により、遺伝子型分類に成功した14個のうち3個のSNP(rs3870747、rs7849およびrs1393491)が糖尿病表現型と統計的に有意な関連性を示した(P<0.05)。表は対照および糖尿病患者における各SNPの頻度ならびに二つの関連解析方法(アレルによるものおよび遺伝子型によるもの)を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるハーディワインベルグ平衡(HWE)はrs3870747を除く、これらのSNPのうちの2個に関して良好である。
【0159】
【表16】

【表17】

【表18】

【0160】
要約すれば、我々の結果により複数のSCDバリアントがT2DMに関与することが示唆される。これらのSNPを用いてT2DM診断を改善し、患者のより良好な階層化により臨床試験設計を助けることができる。
【0161】
肝細胞核因子1β(HNF1α、HNF2、TCF2)関連性
アレル特異的分析(p<0.01)ならびに優性および劣性双方のモデルを用いる遺伝子型分析(p<0.05)の双方によりSNP rs11651755のGアレルはT2DMの高い出現率と関連する。
【0162】
転写因子肝細胞核因子1β(HNF1β、HNF2、TCF2)を含有するホメオドメインにおける変異は、しばしば早期発症型進行性非糖尿病性腎機能障害に関連する若年発症成人型糖尿病のまれなサブタイプを引き起こすことがわかっている。 Horikawa Y et al.,(Letter)Nature Genet. 17:384−385(1997)。TCF2はまた2型糖尿病のより一般的な形態に関する可能性のある候補遺伝子であろうと仮定された。
【0163】
TCF2のイントロン領域内に位置するSNP rs11651755をこの分析に使用した。配列番号:166は周辺配列内のバリアントの正確な位置を示す:TAAAAATAAAAAATTTAGCTGGGTGTGGTGCTGGGCATCTATAATCCCAGTTACTCTGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCAGGATCCTGGTGGAGGTTGCAGTGAGCCAAGATGCCGTTGCACTCCAGCCTGGGTGACAAGAGCAAAACTCCACATCAAAAAAAATAATAATAAATAAATTAATTAATTAATTAAATAAAACAAGAGCTTTTCTTTTTGCTTAATAAGAGAGAGTGGTGGTGGTGCTTTTTTATTCCTGAAGATGGGAAGTCCTCTTTTGCCCACTAACCTCR(A/G)GAAGAAAGGGATGAGGTGTACCGTACAGGGGCAGTCACCTTCTCCTCTGTTTAGCTTCCATTTTGGCCTCATGTCTACCCCAAAGTTGTAGCTTAGATGGGGGGAAAATTCAGAATTTTGCATAGACCATAGGTAGCACCCCCTAGAAAAAGAATGTTTCTCCCCAGATGTCTCCCACTAGTACCCTAACCATCTGCTTGTCTGTCTAGTGAGGACCCTTGGAGGGCTGCTAAAATGATCAAGGGTTACATGCAGCAACACAACATCCCCCAGAGGGAGGTGGTCGATGTCACCGGCCTG(配列番号:166)。
【0164】
表5は結果をまとめている。Gに関する全体のアレル頻度は非糖尿病患者の48.08%と比較して糖尿病患者で52.64%である。アレル特異的分析(p<0.01)ならびに3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)および優性および劣性のモデルのいずれかを用いる遺伝子型分析(p<0.05)の双方によりGアレルはT2DMの高い出現率と関連する。
【0165】
【表19】

【表20】

【表21】

【0166】
この分析により、MODY5におけるその重要な役割に加えて、TCF2はT2DMのより一般的な形態に関する病因に関与することが示される。
【0167】
エストロゲン関連受容体α(ESRRA)関連性
アレル特異的分析ならびに3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)および優性モデルを用いる遺伝子型分析の双方によりSNP(gs229601623およびrs11600990)がT2DMとの関連性を示した(p<0.05)。3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)および優性モデルを用いる遺伝子型分析によりSNP rs2276014はT2DMの高い出現率と関連する(p<0.05)。
【0168】
ESRRAは腎臓、心臓および褐色脂肪細胞、脂肪酸を優先的に代謝する全ての組織で高度に発現されるオーファン核受容体転写因子である。ミトコンドリア発生およびインビボでの細胞エネルギー平衡を調節するのに重要な役割を果たすと仮定されている。インスリン抵抗性は骨格筋におけるトリグリセリド沈着と組織の脂肪酸酸化能力との間の不均衡の結果として発達し得る。この能力は組織ミトコンドリア密度に直接的に依存する。したがってミトコンドリア発生の刺激による骨格筋ミトコンドリア密度の上昇は脂肪酸酸化能力を高め、インスリン感受性の改善に至ると予測される。
【0169】
したがってESRRA刺激は肥満、脂質代謝異常、インスリン抵抗性およびT2DMを処置するための有望な研究法である。
【0170】
表6はこの分析に用いたESRRA SNPをまとめている。3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)または優性モデルを用いる遺伝子型分析により3個のSNP(gs229601623、rs2276014およびrs11600990)がT2DMとの関連性(を示したp<0.05)。アレル特異的分析によりこれら3個のSNPのうちの2個(gs229601623およびrs11600990)もまたT2DMと関連性を示した(p<0.05)。表は対照および糖尿病患者における各SNPの頻度および二つの関連解析方法を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるHWEはこれらのSNPに関して良好である。
【0171】
【表22】

【表23】

【表24】

【0172】
要約すれば、我々の結果により複数のESRRAバリアントがT2DMの発達に寄与しているかもしれないことが示唆される。これらのSNPおよびハプロタイプを用いてT2DM診断を改善し、患者のより良好な階層化により臨床試験設計を助けることができる。
【0173】
ESRRAハプロタイプ分析
加えて、ESRRAゲノム領域内の1個のハプロタイプ(hap3)との有意な関連性(p<0.05)もまた見出された。二つのハプロタイプ関連性方法をこの分析に使用した:Global pおよびMax−Stat p(表3および表7参照)。
【0174】
【表25】

【表26】

【0175】
ペルオキシソーム増殖活性化受容体ガンマコアクチベーター1α(PPARGC1A;PGC−1α)関連性
アレル特異的分析および3個の表現型全てを用いるかまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析により2個のSNP(rs2305683およびrs4469064)がT2DMとの関連性を示した(p<0.05)。3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)を用いる遺伝子型分析により1個のさらなるSNP(rs1532195)がT2DMのより高い出現率と関連する(p<0.05)。
【0176】
PGC1αは脱共役タンパク質2(Ucp2)の誘導により、ならびに核呼吸因子、Nrf1およびNrf2の調節により、マウスの筋肉細胞においてミトコンドリア生合成および呼吸を刺激する。Wu Z et al., Cell 98:115−124(1999)。それは肝臓でインスリン調節される糖新生において重要な役割を果たす。Yoon JC et al., Nature 413:131−138(2001)。
【0177】
マイクロアレイ発現研究により、ヒト糖尿病の筋肉における酸化的リン酸化に関与する遺伝子のセットの発現の少しであるが協調的な低下が示された。これらの遺伝子の発現はインスリン媒介の糖処理の部位で高く、PGC1αにより活性化され、そして全身有酸素容量と相関する。PGC1α発現は糖尿病患者では低い。Mootha VK et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 101(17):6570−5(April 27, 2004)。
【0178】
これらのデータにより、PGC−1αはヒトT2DMの発達において重要な役割を果たし、そしてPGC−1α媒介の酸化的リン酸化経路の改善が糖尿病を処置するための可能性のある研究法であることが示唆される。
【0179】
表8はこの分析で用いたPGC−1α SNPをまとめている。アレル特異的分析および3個の表現型全てを用いるかまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析により2個のSNP(rs2305683およびrs4469064)がT2DMとの関連性を示した(p<0.05)。3個の遺伝子型全て(相互優性モデル)を用いる遺伝子型分析により1個のさらなるSNP(rs1532195)がT2DMのより高い出現率と関連する(p<0.05)。表はまた対照および糖尿病患者における各SNPのアレル頻度および二つの関連解析方法を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるHWEはrs1532195を除くこれらの2個のSNPに関して良好である。
【0180】
【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【0181】
要約すれば、複数のPGC−1αバリアントがT2DMと関連している。これらのSNPおよびハプロタイプを用いてT2DM診断を改善し、患者のより良好な階層化により臨床試験設計を助けることができる。
【0182】
ペルオキシソーム増殖活性化受容体δ(PPARD)関連性
アレル特異的分析および3個の遺伝子型全てまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析によりSNP rs1053046はT2DMとの関連性を示した(p<0.01)。アレル特異的分析により4個のさらなるSNP(rs11571504、rs9296148、rs9658100およびrs3798343)がT2DMとの関連性を示し(p<0.05)、そのうちの3個(rs11571504、rs9296148、rs9658100)はまた3個の遺伝子型全ておよび優性モデルを用いる遺伝子型分析により関連性を実証した(p<0.05)。
【0183】
PPARDは、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよびPPAR−デルタを含むペルオキシソーム増殖剤活性化受容体転写因子スーパーファミリーに属する。PPAR−アルファおよびPPAR−ガンマは種々の脂肪酸および抗高脂血症化合物により活性化されることが示されており、そしてヒトPPARDおよびマウスPPARDはC18不飽和脂肪酸により活性化されることがわかっている。PPARは身体の脂質代謝の重要なメディエーターである。
【0184】
中年のインスリン抵抗性肥満アカゲザルを選択的PPARDアゴニストであるGW501516で処置することにより血清高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールの劇的な用量依存性の上昇が引き起こされるが、低密度リポタンパク質(LDL)、空腹時トリグリセリドおよび空腹時インスリンのレベルは低下する。Oliver WR Jr et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 98(9):5306−11(April 24, 2001)。高脂肪食を与えられたマウスおよび遺伝的肥満ob/obへのアゴニストの投与により肥満、糖尿病およびインスリン抵抗性が改善された。Tanaka T et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 100(26):15924−9(December 23, 2003)。
【0185】
したがってPPARDの刺激は肥満、脂質代謝異常、インスリン抵抗性およびT2DMを処置するための有望な研究法である。
【0186】
表9はこの分析で用いたPPARD SNPをまとめている。アレル特異的分析および3個の遺伝子型全てまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析により遺伝子型分類に成功した24個のSNPのうちSNP rs1053046がT2DMとの関連性を示した(p<0.01)。アレル特異的分析により4個のさらなるSNP(rs11571504、rs9296148、rs9658100およびrs3798343)がT2DMとの関連性を示し(p<0.05)、そのうちの3個(rs11571504、rs9296148、rs9658100)もまた3個の遺伝子型全ておよび優性モデルを用いる遺伝子型分析により関連性を実証した(p<0.05)。表はまた対照および糖尿病患者における各SNPのアレル頻度および二つの関連解析方法を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるHWEはこれらのSNPに関して良好である。
【0187】
【表31】

【表32】

【表33】

【0188】
要約すれば、我々の結果により複数のPPARDバリアントがT2DMの発達に寄与しているかもしれないと示唆される。これらのSNPおよびハプロタイプを用いてT2DM診断を改善し、患者のより良好な階層化により臨床試験設計を助けることができる。
【0189】
PPARDハプロタイプ分析
加えて、PPARDゲノム領域内の1個のハプロタイプとの有意な関連性もまた見出された(p<0.01)。二つのハプロタイプ関連性方法をこの分析に使用した:Global pおよびMax−Stat p(表3および表10参照)。
【0190】
【表34】

【表35】

【表36】

【0191】
ACACBハプロタイプ分析
アセチル−CoAカルボキシラーゼベータ(ACC−ベータ)は、マロニル−CoAのカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT1A)を阻止する能力を用いる脂肪酸酸化、脂肪酸取り込みにおける律速段階およびミトコンドリアによる酸化を制御すると仮定される。ACCベータは主に心臓および骨格筋において発現される。
【0192】
Abu−Elheiga et al., Science 291(5513):2613−6(2001)は標的破壊によりACC2を欠損するマウスを作成した。Acc2−/−変異マウスは正常な寿命、高い脂肪酸酸化率、および低い脂肪量を有する。野生型と比較して、ACC2欠損マウスの心臓および筋肉でマロニル−CoAのレベルは各々10倍および30倍低かった。Acc2−/−マウスのヒラメ筋における脂肪酸酸化率は野生型マウスのものよりも30%高く、そしてインスリンの添加により影響されなかったが、インスリンの野生型筋肉への添加は脂肪酸酸化を45%まで低下させた。変異マウスのその脂肪組織における脂肪蓄積は野生型マウスよりも50%少なかった。
【0193】
したがってACACB阻止は肥満、インスリン抵抗性、脂肪肝疾患およびT2DMを処置するための有望な研究法である。
【0194】
個々のSNPはほとんどないかまたは極弱い証拠しか提供しないが、ACACBゲノム領域内の8個のハプロタイプでは糖尿病との有意な関連性が見出された:hap1、p<0.001;hap2、3、30、31、32、33および34、p<0.05。二つのハプロタイプ関連性方法をこの分析に使用した:Global pおよびMax−Stat p(表11)。
【0195】
【表37】

【表38】

【表39】

【0196】
要約すれば、我々の結果によりACACBにおける変化がT2DMと関連することが示唆される。これらのSNPおよびハプロタイプを用いてT2DM診断を改善し、患者のより良好な階層化により臨床試験設計を助けることができる。
【0197】
アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(ACADSB)関連性
アレル特異的分析および/または優性および劣性双方のモデルを用いる遺伝子型分析により、分析した13個のSNPのうちの1個がT2DMの高い出現率と関連する(p<0.05)。
【0198】
アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(ACAD)は脂肪酸または分岐したアミノ酸の代謝に関与するミトコンドリア酵素の一群である。ACADSBは短い分岐鎖アシル−CoA誘導体、(S)−2−メチルブチリル−CoAに対して最も強い活性を有したが、その他の2−メチル−分岐鎖基質と、および短い直鎖アシル−CoAともまた有意に反応した。脂肪酸および脂質代謝の調節異常は肥満および2型真性糖尿病の原因論において重要であることは十分に確立されている。
【0199】
表12はこの研究で使用したACADSB SNPをまとめている。アレル特異的分析および3個の遺伝子型全てを用いるかまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析により遺伝子型分類および分析に成功した13個のSNPのうち1個のSNP(rs2421166)がT2DMの高い出現率と関連することが示された(p<0.05)。表は全体、対照および糖尿病患者における各SNPの頻度、集団のハーディワインベルグ平衡分析(HWE)ならびに二つの関連解析方法を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるHWEはこれらのSNPに関して良好である。
【0200】
【表40】

【表41】

【表42】

【0201】
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIA(CPT1A)関連性
アレル特異的分析および/または優性および劣性双方のモデルを用いる遺伝子型分析により、分析した20個のSNPのうちの1個がT2DMの高い出現率と関連する(p<0.05)。
【0202】
CPT1A遺伝子は脂肪酸酸化に関与する肝臓酵素であるカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIAをコードする。脂肪酸酸化過程にわたる主要な制御はCPT Iのレベルで決定され、その活性は今度は細胞内の高レベルのマロニル−CoA濃度により阻止される。脂肪酸および脂質代謝の調節異常は肥満および2型真性糖尿病の原因論において重要であることは十分に確立されている。
【0203】
表13はこの研究で使用したCPT1A SNPをまとめている。アレル特異的分析および3個の遺伝子型全てを用いるかまたは優性モデルを用いる遺伝子型分析により遺伝子型分類および分析に成功した20個のSNPのうち1個のSNP(rs1017641)がT2DMの高い出現率と関連することが示された(p<0.05)。表は全体、対照および糖尿病患者における各SNPの頻度、集団のハーディワインベルグ平衡分析(HWE)ならびに二つの関連解析方法を提供する。サンプルの集団の混合を測定するために用いられるHWEはこれらのSNPに関して良好である。
【0204】
【表43】

【表44】

【表45】

【0205】
等価物
本発明の一つもしくはそれより多い実施態様の詳細を伴う前記の記載において示す。本明細書に記載したものに類似するかまたは等価である任意の方法および材料を本発明を実施または試験するのに用いることができ、好ましい方法および材料をここで記載する。本発明のその他の特徴、目的および利点は記載および請求の範囲から明白であろう。本明細書および添付の請求の範囲では、局面が明確にそれ以外を指示する場合を除いて単数の形態は複数の指示対象を含む。別に定義されない場合、本明細書で用いる全ての技術的および科学的用語は本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。各個々の出版物、特許または特許出願は全目的のためにその全てを出典明示により本明細書の一部とすると具体的および個別に示されたかのように、本明細書に引用した全ての参照はその全てを出典明示により本明細書の一部とする。
【0206】
本発明は本出願に記載した特定の実施態様の用語に限定されるものではなく、それは本発明の個々の態様の個別の説明として意図される。当業者に明白であるように、その精神および範囲から逸脱することなく本発明の多くの修飾および変化を為すことができる。本明細書に列挙したものに加えて、本発明の範囲内である機能的に等価な方法および装置は前記の記載から当業者には明白であろう。かかる修飾および変化は添付の請求の範囲内に入ると意図される。本発明は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきであり、かかる請求の範囲が資格を有する等価物の全範囲も同様である。
【0207】
GCI SNPリスト−SNPの500bp上流および下流の配列
>4|23518012|rs10032795
【0208】
【表46】

【0209】
【表47】

【0210】
【表48】

【0211】
【表49】

【0212】
【表50】

【0213】
【表51】

【0214】
【表52】

【0215】
【表53】

【0216】
【表54】

【0217】
【表55】

【0218】
【表56】

【0219】
【表57】

【0220】
【表58】

【0221】
【表59】

【0222】
【表60】

【0223】
【表61】

【0224】
【表62】

【0225】
【表63】

【0226】
【表64】

【0227】
【表65】

【0228】
【表66】

【0229】
【表67】

【0230】
【表68】

【0231】
【表69】

【0232】
【表70】

【0233】
【表71】

【0234】
【表72】

【0235】
【表73】

【0236】
【表74】

【0237】
【表75】

【0238】
【表76】

【0239】
【表77】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)個体から試料を得ること;そして
(b)2型糖尿病に対する素因の指標であるTCF2(肝細胞核因子1β)、ACADSB(アセチル−CoAデヒドロゲナーゼ)、CPT1A(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI)、ESRRA(エストロゲン関連受容体 α)、PPARD(ペルオキシソーム増殖活性化受容体δ)、PPARGC1A(ペルオキシソーム増殖活性化受容体ガンマコアクチベーター1α)およびSCD(ステアロイル−CoAデサチュラーゼ)からなる群から選択される遺伝子における一塩基多型(SNP)の決定が、個体が2型糖尿病に対する素因を有していることを診断する個体の遺伝子型を決定すること;
の工程を含む個体における2型糖尿病に対する素因を診断するための方法。
【請求項2】
2型糖尿病に対する素因の指標であるTCF2遺伝子のSNPがrs11651755である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2型糖尿病に対する素因の指標であるACADSB遺伝子のSNPがrs242116である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2型糖尿病に対する素因の指標であるCPT1A遺伝子のSNPがrs1017641である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2型糖尿病に対する素因の指標であるESRRA遺伝子のSNPがgs229601623およびrs1160090からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2型糖尿病に対する素因の指標であるPPARD遺伝子のSNPがrs1053046、rs11571504、rs9296148、rs9658100およびrs3798343からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2型糖尿病に対する素因の指標であるPPARGC1A遺伝子のSNPがrs2305683、rs4469064およびrs1532195からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2型糖尿病に対する素因の指標であるSCD遺伝子のSNPがrs3870747、rs7849およびrs508384からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)個体から試料を得ること;そして
(b)2型糖尿病に対する素因の指標であるESRRA(エストロゲン関連受容体α)、PPARD(ペルオキシソーム増殖活性化受容体δ)、SCD(ステアロイル−CoAデサチュラーゼ)およびACACB(アセチル−CoAカルボキシラーゼβ)からなる群から選択される遺伝子におけるハプロタイプの決定が、個体が2型糖尿病に対する素因を有していることを診断する個体のハプロタイプを決定すること;
の工程を含む個体における2型糖尿病に対する素因を診断するための方法。
【請求項10】
2型糖尿病に対する素因の指標であるESRRA遺伝子におけるハプロタイプがhap3である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2型糖尿病に対する素因の指標であるPPARD遺伝子におけるハプロタイプがhap1である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
2型糖尿病に対する素因の指標であるACACB遺伝子におけるハプロタイプがhap1、hap2、hap3、hap30、hap31、hap32、hap33およびhap34からなる群から選択され、ここでhap1、hap2またはhap3の存在は2型糖尿病に対する素因が低いことを示し、そしてhap30、hap31、hap32、hap33またはhap34の存在は2型糖尿病に対する素因が高いことを示す請求項9に記載の方法。
【請求項13】
(a)2型糖尿病を有することが疑われる個体から試料を得ること;
(b)決定された遺伝子型がTCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1からなる群から選択される遺伝子における一塩基多型(SNP)であり、そして2型糖尿病に対する素因の指標である個体の遺伝子型を決定すること;
(c)決定された遺伝子型が個体が2型糖尿病に対する素因を有していることを示す場合、個体に抗2型糖尿病治療を施すこと;
の工程を含む個体における2型糖尿病を処置するための方法。
【請求項14】
抗2型糖尿病治療がナテグリニド、LAF237およびLBM642からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2型糖尿病に対する素因の指標であるTCF2、ACADSB、CPT1A、ESRRA、PPARD、PPARGC1AおよびSCD1からなる群から選択される遺伝子における一塩基多型(SNP)に基づいて選択された2型糖尿病患者の集団において処置するための医薬品の製造におけるナテグリニド、LAF237およびLBM642からなる群から選択される化合物の使用。
【請求項16】
(a)2型糖尿病を有することが疑われる個体から試料を得ること;
(b)決定されたハプロタイプがESRRA、PPARDおよびACACBからなる群から選択される遺伝子にあり、そして2型糖尿病に対する素因の指標である個体のハプロタイプを決定すること;
(c)決定されたハプロタイプが個体が2型糖尿病に対する素因を有していることを示す場合、個体に抗2型糖尿病治療を施すこと;
の工程を含む個体における2型糖尿病を処置するための方法。

【公表番号】特表2008−538177(P2008−538177A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503147(P2008−503147)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/010464
【国際公開番号】WO2006/104812
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】