説明

2層フレキシブル金属絶縁体積層基板および2層フレキシブル配線基板

【課題】 密着性、体積抵抗、耐食性、絶縁信頼性が高く、しかもエッチング性の良好な2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を提供し、この2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を使用して信頼性が高い2層フレキシブル配線基板を提供する。
【解決手段】 絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、前記下地金属層の表面に銅導体層が形成され、前記下地金属層と前記銅導体層を含む金属層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板であって、前記下地金属層は、銅−クロム−ニッケルを含む合金からなり、その銅の割合が0.5〜10重量%で、クロムの割合が15〜40重量%で、ニッケルの割合が50〜84.5重量%である2層フレキシブル金属絶縁体積層基板と、この2層フレキシブル金属絶縁体積層基板をエッチング加工して回路配線を形成した2層フレキシブル配線基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁信頼性の高い2層フレキシブル配線基板に関するものであり、さらに詳しくは、絶縁体フィルム上に銅−クロム−ニッケル下地金属層(シード層)を形成し、次いで該下地金属層上に銅導体層を形成した、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板と、その2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を使用し、銅導体層をエッチング加工して回路配線を形成した2層フレキシブル配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フレキシブル配線基板を作製するために用いられる金属絶縁体積層基板は、絶縁体フィルム上に接着剤を用いて導体層となる銅箔を貼り合わせた3層フレキシブル金属絶縁体積層基板(例えば、特許文献1参照)、あるいは該絶縁体フィルム上に接着剤を用いることなしに乾式めっき法または湿式めっき法により導体層となる銅導体層を直接形成した2層フレキシブル金属絶縁体積層基板とに大別される。
ここで、3層フレキシブル金属絶縁体積層基板とは、接着剤層を含む、絶縁フィルムと接着剤層及び導体層の3層からなる基板をいい、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板とは、接着剤層を除く絶縁フィルムと導体層の2層からなる基板をいう。
3層フレキシブル金属絶縁体積層基板を用いる場合には、サブトラクティブ法によって金属絶縁体積層基板上に所望の配線パターンを形成することにより、3層フレキシブル配線基板を製造することができる。また、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を用いる場合には、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法によって、金属絶縁体積層基板上に所望の配線パターンを形成することにより、2層フレキシブル配線基板を製造することができる。
ここに、サブトラクティブ法とは、フレキシブル金属絶縁体積層基板の金属膜の不要部分を化学エッチング処理することで除去して、プリント配線基板を製造する製造方法である。一方、セミアディティブ法とは、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の金属層の表面に、配線を形成したい箇所に電気めっき法などでさらに銅を付着させて、配線としての厚さを確保した後に、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の表面の不要となる金属層を除去してプリント配線基板を製造する方法である。
【0003】
従来においては、製造方法が簡単で、低コストで製造することができる3層フレキシブル金属絶縁体積層基板の使用が主流を占めていた。
ところが、近年の電子機器の高密度化に伴い、配線幅も狭ピッチ化した配線基板が求められるようになってきている。
しかし、3層フレキシブル金属絶縁体積層基板の製造に際し、基板である絶縁体フィルム上に形成した銅導体層を、所望の配線パターンに従ってエッチングして配線部の形成を行って配線基板を製造する場合に、配線部の側面がエッチングされるという、いわゆるサイドエッチングが生ずるために、配線部の断面形状が裾広がりの台形になり易い。
従って、配線部間の電気的絶縁性を確保するまでエッチングを行うと、配線ピッチ幅が広くなり過ぎてしまうために、従来一般的に使用されている35μm厚さの銅箔を接着剤で絶縁体フィルムと貼り合わせた3層フレキシブル金属絶縁体積層基板を用いる限り、配線基板における配線部の狭ピッチ化を行うには限界があった。
【0004】
このため、従来の厚さ35μmの銅箔張り合わせ金属絶縁体積層基板に代えて、厚さ18μm以下の薄い銅箔張り合わせ金属絶縁体積層基板を使用して、サイドエッチングによる裾広がりの幅を小さくして、配線基板における配線部の狭ピッチ化を図ることが行われてきた。
しかも、このような薄肉の銅箔は剛性が小さくハンドリング性が悪いため、一旦銅箔にアルミニウムキャリアなどの補強材を貼り合わせて剛性を高くした後、該銅箔と絶縁体フィルムの貼り合わせを行い、しかる後再びアルミニウムキャリアを除去するなどの方法が採られていたが、この方法はあまりにも手間と時間がかかり、作業性、生産性が悪いという問題があった。
さらに、このような薄い銅箔では、厚さのばらつきやピンホールや亀裂の発生などによる欠陥が増加するなどの製造技術上の問題が有るのみならず、銅箔が薄くなればなるほど銅箔自体の製造が困難となり、製造価格が高くなって3層フレキシブル配線基板のコストメリットが失われてしまう結果となっていた。
【0005】
最近になって、厚さ10数μm以下、あるいは数μm程度の銅箔を使用しなくては製造できないような、狭幅で狭ピッチの配線部を有する配線基板への要求が強まるに至り、3層フレキシブル金属絶縁体積層基板を用いる配線基板は、上記のような技術的な問題もさることながら、製造コスト上からも問題があった。
そこで、接着剤を施すことなく直接絶縁体フィルム上に導体層を形成することができる2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を用いた2層フレキシブル配線基板が注目されるに至った。
【0006】
かかる2層フレキシブル金属絶縁体積層基板は、接着剤なしで直接絶縁体フィルム上に銅導体層を形成するものであり、従って金属絶縁体積層基板自体の厚さを薄くすることができる上に、被着させる銅導体の厚さも任意の厚さに調整することができるという利点を有する。
そして、このような2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を製造する場合には、絶縁体フィルム上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式めっき法によりニッケル等を含む下地金属層を形成し、該下地金属層の上に銅導体層を形成する。この銅導体層は、下地金層の上に乾式めっき法で銅層を形成し、さらに前記銅層の上に湿式めっき法で形成するのが良い。湿式めっき法は、電気銅めっき法または無電解銅めっき法から任意に選択できる。(例えば、特許文献2参照)
【0007】
近年のさらなる狭幅化、狭ピッチ化等の要求特性の上昇のため、上述の一般的な方法だけでは求められている密着性、体積抵抗、耐食性に優れ、かつ優れた絶縁信頼性を得ることが困難になってきている。また前記の密着性、体積抵抗、耐食性、絶縁信頼性が目標値に達したとしても、次工程におけるエッチング性が極端に悪くなる傾向にある。すなわち、上述の絶縁信頼性等とエッチング性を両立することが困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−132628号公報
【特許文献2】特開平8−139448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、密着性、体積抵抗、耐食性に優れた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板とし、これをエッチング加工した2層フレキシブル配線基板を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、前記下地金属層の表面に銅導体層が形成され、前記下地金属層と前記銅導体層を含む金属層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板であって、前記下地金属層は、銅−クロム−ニッケルを含む合金からなり、且つ該銅の割合が0.5〜10重量%で、該クロムの割合が15〜40重量%で、該ニッケルの割合が50〜84.5重量%である2層フレキシブル金属絶縁体積層基板とした。
【0011】
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板では、前記下地金属層の厚さが3〜50nmであり、銅導体層の厚さが10nm〜18μmであって、前記下地金属層は乾式めっき法により形成された金属層であっても良く、前記銅導体層も乾式めっき法により形成された銅層であっても良い。
ここで、前記銅導体層は乾式めっき法及び湿式めっき法を併用して形成された導体層であっても良い。
【0012】
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板では、前記絶縁体フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれたいずれか1種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0013】
本発明の2層フレキシブル配線基板は、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、前記下地金属層の表面に銅導体層が形成され、前記下地金属層と前記銅導体層を含む金属層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の銅導体層に回路配線が形成されたフレキシブル配線基板であって、前記下地金属層は、銅−クロム−ニッケルを含む合金で、且つ該銅の割合が0.5〜10重量%で、該クロムの割合が15〜40重量%で、該ニッケルの割合が50〜84.5重量%である2層フレキシブル配線基板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板は、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接乾式めっき法により厚さ3〜50nmの銅−クロム−ニッケルを含む合金の下地金属層を形成し、該下地金属層上に所望の厚さの銅導体層を形成して2層フレキシブル金属絶縁体積層基板としたものである。
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板によれば、該下地金属層の銅の割合が0.2〜10重量%で、クロムの割合が15〜40重量%で、ニッケルの割合が50〜84.5重量%含まれていることから、密着性が高く、耐食性に優れ、金属絶縁体積層基板の反りがなく、かつエッチング性及び絶縁信頼性の高い銅導体層を形成しているので、欠陥のない2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明により得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板をエッチング加工することで、狭幅、狭ピッチの配線部を有するフレキシブル配線基板を効率よく得ることがきるので、その経済的効果は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板について説明する。
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板は、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層を形成し、該下地金属層上に所望の厚さの銅導体層を形成した2層フレキシブル金属絶縁体積層基板であって、絶縁体フィルム上に形成された下地層は、銅の割合が0.5〜10重量%で、クロムの割合が15〜40重量%で、ニッケルの割合が50〜84.5重量%含まれる銅−クロム−ニッケルを含有する合金を、乾式めっき法により厚さ3〜50nmで形成したものである。さらに、該下地金属層上に形成された銅導体層は、乾式めっき法あるいは乾式メッキ法と湿式メッキ法を併用して形成した、厚さ10nmから18μmの銅層からなっている。乾式メッキ法と湿式メッキ法を併用する場合は、乾式メッキにより厚さ10nm〜200nmの銅の中間層を形成し、その上に湿式メッキ法により厚い銅層を形成する。
上記構成を採用することによって、密着性が高く、耐食性に優れ、基板の反りがなく、エッチング性、かつ絶縁信頼性の高い銅導体層を形成した、欠陥のない2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を得ることができ、この2層フレキシブル金属絶縁体積層基板をエッチング加工することにより、狭幅、狭ピッチの配線部を持った2層フレキシブル配線基板を得ることができるのである。
【0017】
本発明で使用する絶縁体フィルムとしては、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた樹脂フィルムが挙げられるが、ポリイミド系のフィルム及びポリアミド系のフィルムは、はんだリフロー等の高温の接続が必要な用途に適している点で望ましい。また、絶縁体フィルムの厚さは、8〜75μmのものが好適に使用することができる。尚、ガラス繊維等の無機質材料を適宣添加することもできる。
【0018】
本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板において下地金属層は、銅の割合が0.5〜10重量%、クロムの割合が15〜40重量%、ニッケルの割合が50〜84.5重量%含まれている銅−クロム−ニッケルを含む合金を、乾式めっき法で3〜50nmの厚さに形成したものが望ましい。
下地金属層の銅の割合が0.5重量%未満になると、エッチング性の向上にならない。すなわち、本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板は、下地金属層の銅の割合が0.5重量%未満の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板に比べて、サブトラクティブ法やセミアディティブ法で、塩化第二鉄水溶液等による化学エッチングで金属層の不要部分を除去しやすい。一方、下地金属層の銅の割合が0.5重量%以上になると、塩化第二鉄水溶液による化学エッチングで不要になる下地金属層を除去することが困難な場合が生じやすくなってくる。また、銅の割合が10重量%以上になると、耐熱ピール強度や絶縁信頼性が低下するので好ましくない。
下地金属層のクロムの割合は、15重量%以上とすることで2層フレキシブル配線基板の絶縁信頼性の向上につながる。
下地金属層のクロムの割合が15重量%以上に多くなると、塩化第二鉄水溶液などの化学薬品でのエッチングし難くなってくる。2層フレキシブル金属絶縁体積層基板のエッチング性と、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板から製造される2層フレキシブル配線基板の絶縁信頼性は相反する関係にある。
【0019】
そこで、本発明は、下地金属層の銅の割合を定めエッチング性と絶縁信頼性の両立を図るため、クロムの含有割合は40重量%にとどめている。
下地金属層は、スパッタリング法などの乾式めっき法で形成する。スパッタリング法であれば、下地金属層の組成の合金スパッタリングターゲットを用いれば、薄い層を形成することが可能である。
さらに、下地金属層が3nmよりも薄いと、配線加工を行うときのエッチング液が染み込み、配線部が浮いてしまう等により配線ピール強度が著しく低下し、耐熱強度も低下して、絶縁信頼性の低下などの問題が発生するので好ましくない。また厚さが50nmより厚くなると、エッチング時間が長くなり生産性が悪くなるため好ましくない。
下地金属層には、銅−クロム―ニッケルの他に第三の成分を含んでもよい。第三の成分としては、バナジウム、チタン、マンガン、モリブデンなどを2層フレキシブル金属絶縁体積層基板のエッチング性や2層フレキシブル配線基板の絶縁信頼性等の特性を考慮して適宜選択することができる。
【0020】
銅導体層は、下地金属層の表面に形成する。銅導体層は上述の乾式めっき法で形成しても良いし、乾式めっき法で形成した後に湿式めっき法で形成する乾式めっき法と湿式めっき法の併用でも良い。湿式めっき法は電気めっき法または、電気めっき法と無電解めっき法を併用しても良い。本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板をセミアディティブ法で加工し2層フレキシブル配線基板を得る場合には、銅導体層は乾式めっき法のみで形成することができる。下地金属層と銅導体層が乾式めっき法のみで形成された薄い金属層なので、セミアディティブ法の場合には配線に不要な金属層を除去することが容易になる。 一方、本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板をサブトラクティブ法で加工し2層フレキシブル配線基板を得る場合には、乾式めっき法と湿式めっき法の併用することが望ましい。乾式めっき法と湿式めっき法の併用するのは、サブトラクティブ法では、配線に不要となる金属層を除去するので、銅導体層は2層フレキシブル配線基板の導電性を維持できる厚さを確保するためである。さらには、乾式めっき法と湿式めっき法を併用することで、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の生産性を向上できるからである。
【0021】
銅導体層の厚さは、全体で10nm〜18μmとすることが望ましい。銅導体層の厚さを10nm以上とするのは、セミアディティブ法で2層フレキシブル配線基板に加工する際の配線を電気めっきする場合の給電を確保するためである。銅導体層の厚さは、より望ましくは60nm以上であり、さらに望ましくは70nm以上である。
一方、銅導体層の厚さを18μm以下とするのは、サブトラクティブ法で2層フレキシブル配線基板に加工する際、金属層を化学エッチング除去して前述の挟ピッチ化に対応させるためである。銅導体層の厚さが厚くなれば厚くなるほど、挟ピッチ化には不向きである。銅導体層の厚さは、より望ましくは12μm以下でり、さらに望ましくは10μm以下である。なお、通常2層フレキシブル配線基板の配線の厚さ、すなわち2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の金属層の厚さは、5μm〜10μmあれば配線の導電性は確保できる。
【0022】
銅導体層を乾式めっき法と湿式めっき法を併用して形成する場合には、乾式めっき法で厚さ10nm〜200nmの銅を中間層として形成し、前記中間層上に電気めっき法で中間層と合わせた銅導体層の全体の厚さが11nm〜18μmであるように形成するのが望ましい。中間層が10nmよりも薄い場合、乾式めっき法で形成される銅導体層が薄くなるため、その後の電気めっき工程で給電が困難なため好ましくない。
上述の通りにして乾式めっき法で銅層を形成した後、前記銅層の上に湿式めっき法で銅導体層を積層形成することは、通電容量の比較的厚い銅導体層を形成することに適している。
【0023】
以下、本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の製造方法を詳述する。
本発明は、前述の通りポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた樹脂フィルムからなる絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層を形成し、該下地金属層上に所望の厚さの銅導体層を形成する。
【0024】
[脱水処理]
絶縁体フィルムは通常水分を含んでおり、乾式めっき法により銅−クロム−ニッケルを含む合金の下地金属層を形成する前に、大気乾燥あるいは、真空乾燥を行い、絶縁体フィルム中に存在する水分を取り去っておく必要がある。これが不十分であると、下地金属層との密着性が悪くなってしまう。
【0025】
[下地金属層の形成]
乾式めっき法により銅−クロム−ニッケルを含む合金の下地金属層を形成する場合、例えば、巻き取り式スパッタリング方式を用いて下地金属層を形成する場合には、所望の下地金属層組成の合金ターゲットをスパッタリングカソードに装着する。
次いで、絶縁体フィルムをセットしたスパッタリング装置内を真空排気後、アルゴンガスを導入して、装置内を1.3Pa程度に保持し、さらに装置内の巻取り巻出しロールに装着した絶縁体フィルムを搬送しながら、スパッタリングカソードに接続した直流電源より電力を供給しスパッタリング放電を開始して、絶縁体フィルム上に銅−クロム−ニッケルを含む合金の下地金属層を連続形成する。この形成によって所望の厚さの銅−クロム−ニッケルを含む合金の下地金属層が絶縁体フィルム上に形成される。
【0026】
[銅導体層の形成]
銅導体層の形成は、乾式めっき法で形成するならば、銅ターゲットをスパッタリングカソードに装着したスパッタリング装置で行い銅層を形成することができる。この場合、下地金属層と銅導体層は同一真空室内で連続して形成することが好ましい。
銅層の上に更に湿式めっき法を併用して銅導体層を形成する場合には、通常の電気銅めっき法における諸条件を採用すればよい。また、このようにして下地金属層上に形成された乾式めっき法及び湿式めっき法による銅導体層の合計厚さは、厚くとも18μm以下にする必要がある。
以上のようにして、絶縁体フィルムの少なくとも片面に接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、該下地金属層の表面に銅導体層が形成された、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板が得られる。
【0027】
次に、2層フレキシブル配線基板について説明する。
本発明の2層フレキシブル配線基板は、上述の本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の銅導体層に、所望の回路配線パターンを形成したものである。
[配線パターンの形成]
本発明に係る2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成する。また、所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して、各種用途に用いることもできる。
【0028】
前記配線パターンの形成方法としては、フォトエッチング等の従来公知の方法が使用でき、例えば、少なくとも片面に銅導体層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を準備して、該銅導体層上にスクリーン印刷あるいは、ドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光現像してパターニングする。次いで、塩化第二鉄溶液等のエッチング液で該銅導体層を選択的にエッチング除去した後、レジストを除去して所定の配線パターンを形成する。なお、上述の通り本発明の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板は、下地金属層が銅を0.5重量%以上含有するので、下地金属層がクロムを15重量%以上含有していても塩化第二鉄水溶液で不要な金属層を除去して配線パターンを綺麗に形成することができる。
【0029】
配線をより高密度化にするためには、両面に銅導体層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を準備し、両面を配線パターン加工してフレキシブル金属絶縁体積層基板の両面に配線パターンを形成することも可能である。全配線パターンを幾つの配線領域に分割するかどうかは該配線パターンの配線密度の分布等によるが、例えば、配線パターンを配線幅と配線間隔がそれぞれ50μm以下の高密度配線領域とその他の配線領域に分け、プリント金属絶縁体積層基板との熱膨張差や取り扱い上の都合等を考慮し、分割する配線金属絶縁体積層基板のサイズを10〜65mm程度に設定し適宣分割すればよい。
【0030】
前記ヴィアホールの形成方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えばレーザー加工、フォトエッチング等により前記配線パターンの所定の位置に、該配線パターンとフレキシブルシートを貫通するヴィアホールを形成する。ヴィアホールの直径は、ホール内の導電化に支障がない範囲内で小さくすることが好ましく、通常100μm以下、好ましくは50μm以下にする。
該ヴィアホール内には、めっき、蒸着、スパッタリング等により銅等の導電性金属を充填、あるいは所定の開孔パターンを持つマスクを使用して導電性ペーストを圧入、乾燥し、ホール内を導電化して層間の電気的接続を行う。前記導電性金属としては、銅、金、ニッケル等が挙げられる。
【0031】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
本発明の実施例および比較例において、ピール強度の測定方法は、IPC−TM−650、NUMBER2.4.9に準拠した方法で行った。ただし、リード幅は1mmとし、ピールの角度は90°とした。リードはサブトラクティブ法で形成した。また、耐熱性の指標としては、1mmのリードを形成したフィルム基材を、150℃のオーブンに168時間放置し、取り出したあと室温になるまで放置したのち、90°ピール強度を評価することで行った。
また、耐環境試験であるHHBT試験(恒温恒湿バイアス試験: High Temperature High Humidity Bias Test)は、まず30μmピッチ(ライン/スペース=15/15 μm)の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板片を、36重量%塩化第二鉄水溶液でエッチングするサブトラクト法によって形成した試験片を用いた。
測定はJPCA−ET04に準拠し、85℃85%RH環境下で、DC60Vを端子間に印加し、1000hr抵抗を観察した。抵抗が10Ω以下になった時点でショート不良と判断し、1000hr経過後も10Ω以上であれば合格と判断した。
腐食の指標としては、裏面変色が挙げられるが、これは、HHBT試験後のサンプル裏面観察によって行った。著しい変色が見られた場合は不良と判断し、変色が軽微な場合は合格と判断した。
[実施例1]
【0032】
厚さ38μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、製品名「カプトン150EN」)を巻き取り式スパッタ装置に装着し、その片面に下地金属層の第1層として2重量%銅−20重量%クロム−78重量%ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により2重量%銅−20重量%クロム−78重量%ニッケル合金下地金属層を形成した。別途同条件で形成した一部を透過電子顕微鏡(TEM:日立製作所(株)製)を用いて層厚を測定したところ20nmであった。下地金属層(銅−クロム−ニッケル層)を形成したフィルム上に、さらにその上に中間層となる第2金属層として、銅ターゲットを用いて、スパッタリング法により銅層を200nmの層厚に形成した。巻き取り式スパッタ装置から取り出した後、さらに電気めっきを使用して第3の金属層となる銅層を、銅導電層全体で8μmの厚さになるまで形成した。
【0033】
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)を使用して、常温(25℃)で10秒間浸漬しエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は650N/mであった。150℃耐熱ピール強度は550N/mと大きな変化が無く、良好であった。さらにHHBT試験(絶縁信頼性試験)を3サンプルについて行ったが、いずれも劣化は認められなかった。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したが、変色は見られなかった。
この結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

[実施例2〜4]
【0035】
下地金属層の組成は、クロム含有率を20重量%で固定し、銅の割合を0.7重量%、5重量%、10重量%、残部をニッケルと変動させた。(0.7、5、10)重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、それぞれ(0.7、5、10)重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところいずれも20nmであった。
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)を使用して、常温(25℃)で10秒間浸漬しエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチングは配線間の溶け残りもなく綺麗にエッチング出来ていた。エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は各々670、650、650N/mであった。150℃耐熱ピール強度は、各々560、550、540N/mと大きな変化が無く、良好であった。さらにHHBT試験(絶縁信頼性試験)をそれぞれ3サンプルについて行ったが、いずれも劣化は認められなかった。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置の耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したが、変色は見られなかった。
これらの結果を表1に併記する。
[実施例5〜8]
【0036】
下地金属層の組成は、クロム含有率を30重量%で固定し、銅の割合を0.7重量%、5重量%、10重量%、残部をニッケルと変動させた。(0.7、2、5、10)重量%銅−30重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、それぞれ(0.7、2、5、10)重量%銅−30重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところいずれも20nmであった。
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)を使用して、常温(25℃)で10秒間浸漬しエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチングは配線間の溶け残りもなく綺麗にエッチング出来ていた。エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は各々700、690、690、680N/mであった。150℃耐熱ピール強度は、各々560、550、550、540N/mと大きな変化が無く、良好であった。さらにHHBT試験(絶縁信頼性試験)をそれぞれ3サンプルについて行ったが、いずれも劣化は認められなかった。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したが、変色は見られなかった。
これらの結果を表1に併記する。
[実施例9〜12]
【0037】
下地金属層の組成は、クロム含有率を40重量%で固定し、銅の割合を0.7重量%、5重量%、10重量%、残部をニッケルと変動させた。(0.7、2、5、10)重量%銅−40重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、それぞれ(0.7、2、5、10)重量%銅−40重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところいずれも20nmであった。
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)を使用して、常温(25℃)で10秒間浸漬しエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチングは配線間の溶け残りもなく綺麗にエッチング出来ていた。エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は各々710、700、690、690N/mであった。150℃耐熱ピール強度は、各々580、560、560、550N/mと大きな変化が無く、良好であった。さらにHHBT試験(絶縁信頼性試験)をそれぞれ3サンプルについて行ったが、いずれも劣化は認められなかった。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置の耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したが、変色は見られなかった。
これらの結果を表1に併記する。
[比較例1]
【0038】
下地金属層には、12重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、12重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところ20nmであった。
上記銅−ニッケル−クロム膜を形成したフィルム上に、第2層として銅ターゲットを用いて、スパッタリング法により中間層となる銅導体層を200nmの層厚に形成した。巻き取り式スパッタ装置から取り出した後、電気めっきで厚さ8μmまで銅層を形成した。得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)に常温(25℃)で10秒間浸漬してエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は630N/mであった。150℃耐熱ピール強度は510N/mと大きな変化が無く、良好であった。しかしHHBT試験(絶縁信頼性試験)を3サンプルについて行ったが、内1サンプルに劣化が認められた。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したところ、変色が確認された。
この結果を表1に併記して示す。
[比較例2]
【0039】
下地金属層に、15重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、15重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところ20nmであった。
上記銅−ニッケル−クロム膜を形成したフィルム上に、さらにその上に第2層中間層として、銅ターゲットを用いて、スパッタリング法により銅導体層を200nmの層厚に形成した。巻き取り式スパッタ装置から取り出した後、電気めっきで全体の厚さが8μmになるまで銅層を形成した。得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を、36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)中に常温(25℃)で10秒間浸漬してエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は620N/mであった。150℃耐熱ピール強度は500N/mと大きな変化が無く、良好であった。しかしHHBT試験(絶縁信頼性試験)を3サンプルについて行ったが、いずれも劣化が認められた。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したところ、変色が確認された。
この結果を表1に併記する。
[比較例3]
【0040】
下地金属層には、0.5重量%銅−20重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、20重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところいずれも20nmであった。
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)を使用して、常温(25℃)で10秒間浸漬しエッチングを行った。配線間に溶け残りがあり、綺麗にエッチングが出来ていなかった。
エッチングは、常温(25℃)で10秒間ではエッチングが不十分である為、エッチング液温を40℃まで上げてからエッチングを行った。温度を上げてからは、配線間の溶け残りもなく綺麗にエッチング出来ていた。エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は700N/mであった。150℃耐熱ピール強度は、570N/mと大きな変化が無く、良好であった。さらにHHBT試験(絶縁信頼性試験)をそれぞれ3サンプルについて行ったが、いずれも劣化は認められなかった。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したところ、変色は見られなかった。
この結果を表1に併記して示す。
[比較例4]
【0041】
下地金属層には、10重量%銅−10重量%クロム−残部ニッケル合金ターゲットを用い、直流スパッタリング法により、10重量%クロム−残部ニッケル合金下地金属層を形成した以外は、実施例1と同様にして2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を作製した。 上記下地金属層を別途同条件で形成し、その一部を使用し透過電子顕微鏡で層厚を測定したところ20nmであった。
上記銅−ニッケル−クロム膜を形成したフィルム上に、さらにその上に中間層となる第2層として、銅ターゲットを用いて、スパッタリング法により銅導体層を200nmの層厚に形成した。巻き取り式スパッタ装置から取り出した後、電気めっきで全体の厚さが8μmになるまで銅層を形成した。
得られた2層フレキシブル金属絶縁体積層基板を36wt%塩化第二鉄溶液(関東化学(株)社製)に常温(25℃)で10秒間浸漬してエッチングを行った。配線間に溶け残りもなく綺麗にエッチングが出来ていた。
エッチング後、2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の初期ピール強度は620N/mであった。150℃耐熱ピール強度は250N/mと大幅に低下した。またHHBT試験(絶縁信頼性試験)を3サンプルについて行ったが、いずれも劣化が認められた。さらに、85℃85%RH恒温槽中に1000hr放置する耐腐食性試験後のフィルム裏面を観察したところ、変色が確認された。
この結果を表1に纏めて示す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上述べた通り、本発明に係る2層フレキシブル金属絶縁体積層基板によれば、絶縁体フィルム上に、乾式めっき法により形成された銅の割合が0.5〜10重量%とクロムの割合が15〜40重量%で残部がニッケルで構成されている銅−クロム−ニッケル合金を含有する層厚3〜50nmの下地金属層と、該下地金属層上に銅の厚さ10nm〜200nmの中間層と、さらに該中間層上に層厚10nm〜12μmである電気銅めっき導体層を形成してあるので、エッチング性が良く、体積抵抗が低く、密着性、耐食性を維持し、かつ絶縁信頼性の高い銅導体層を形成した2層フレキシブル配線基板を得ることができ、その効果は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、前記下地金属層の表面に銅導体層が形成され、前記下地金属層と前記銅導体層を含む金属層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板であって、
前記下地金属層は、銅−クロム−ニッケルを含む合金からなり、且つ該銅の割合が0.5〜10重量%で、該クロムの割合が15〜40重量%で、該ニッケルの割合が50〜84.5重量%であることを特徴とする2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項2】
前記下地金属層の厚さが3〜50nmであり、銅導体層の厚さが10nm〜18μmであることを特徴とする請求項1に記載の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項3】
前記下地金属層が乾式めっき法により形成された金属層であることを特徴とする請求項1または2に記載の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項4】
前記銅導体層が乾式めっき法により形成された銅層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項5】
前記銅導体層が乾式めっき法及び湿式めっき法で形成された導体層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項6】
前記絶縁体フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の2層フレキシブル金属絶縁体積層基板。
【請求項7】
絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層が形成され、前記下地金属層の表面に銅導体層が形成され、前記下地金属層と前記銅導体層を含む金属層が形成された2層フレキシブル金属絶縁体積層基板の銅導体層に、回路配線が形成されたフレキシブル配線基板であって、
前記下地金属層は銅−クロム−ニッケルを含む合金で、且つ該銅の割合が0.5〜10重量%で、該クロムの割合が15〜40重量%で、該ニッケルの割合が50〜84.5重量%であることを特徴とする2層フレキシブル配線基板。

【公開番号】特開2010−212459(P2010−212459A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57121(P2009−57121)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】