2段スイッチ及び多方向スライド・2段スイッチ
【課題】メンブレンスイッチの軽荷重での入力を可能とし、かつ押し子の中立位置においてのみ、そのような軽荷重入力を可能とする。
【解決手段】メンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチ(メタルドームスイッチ)が配置されている2段スイッチにおいて、押し子11の下面に突部11bを形成し、その突部11bの下方に位置してメンブレンスイッチ20とメタルドーム17の間に補助部材19を配置する。突部11b及び補助部材19の大きさはスペーサ23により規定されているメンブレンスイッチ20の接点空間領域26の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子11の押下操作により接点空間領域26を挟む上部接点シート21及び下部接点シート22が突部11b及び補助部材19によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とする。
【解決手段】メンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチ(メタルドームスイッチ)が配置されている2段スイッチにおいて、押し子11の下面に突部11bを形成し、その突部11bの下方に位置してメンブレンスイッチ20とメタルドーム17の間に補助部材19を配置する。突部11b及び補助部材19の大きさはスペーサ23により規定されているメンブレンスイッチ20の接点空間領域26の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子11の押下操作により接点空間領域26を挟む上部接点シート21及び下部接点シート22が突部11b及び補助部材19によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はメンブレンスイッチとその下方に配置されたプッシュスイッチとを備える2段スイッチに関し、さらにメンブレンスイッチにスライド操作される複数のスイッチ(周辺スイッチ)が構成されている多方向スライド・2段スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図18Aは2段スイッチの従来例として、特許文献1に記載されている構成を示したものであり、図中、1は押下操作されるボタンを示す。ボタン1の下にはシート状スイッチ2が配置され、さらにシート状スイッチ2の下には中間部材3を介してスイッチ装置4が配置されている。図中、4aはスイッチ装置4の突出部を示し、スイッチ装置4は突出部4aが押されることによりオン状態となる。
【0003】
シート状スイッチ2はこの例ではメンブレンスイッチとされ、向い合せに電極5a,6aが配置されたシート5及びシート6と、それらシート5,6間に挟みこまれたスペーサ7とよりなる。中間部材3の上面には突起3aが形成されている。
【0004】
ボタン1を図18Bに示したように矢印a方向に押し下げると、ボタン1はシート状スイッチ2を介して中間部材3を矢印b方向に押し下げ、この時、シート状スイッチ2はボタン1と中間部材3に挟まれて圧迫され、電極5a,6aが接触する。中間部材3はスイッチ装置4の突出部4aを矢印c方向に押し、これによりスイッチ装置4がオンとなる。
【0005】
このように、この例では2つのスイッチが上下2段に配置され、ボタン1を押し下げることにより、それら2つのスイッチが共にオン状態になるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−262874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような構成を有する2段スイッチにおいて、動作感が分かるようにスイッチ装置4にクリック感をもたせた場合、2つのスイッチのスイッチ動作を安定させるためには、シート状スイッチ2がオンした後にスイッチ装置4がオンするようにするのが望ましく、このことは特許文献1にも記載されている。
【0008】
この場合、シート状スイッチ2を軽荷重化する必要があり、軽荷重化するためには例えばスペーサ7によって規定されている電極5a,6aが位置する接点空間領域の大きさ、即ちスペーサ7の逃げている大きさLを大きくし、中間部材3の突起3aによって押し込まれるシート6が撓みやすくする必要がある。
【0009】
しかるに、このようにスペーサ7の逃げている大きさLを大きくし、突起3aによって押し込まれるシート6を撓みやすくすることは、軽荷重化を図れる反面、簡単にスイッチが入ってしまうことになり、誤動作の原因となる。特に、図18に示した構成ではボタン1がシート状スイッチ2のスペーサ7が逃げている大きさLより大きく、ボタン1が押下された際に、シート5は撓まず、シート6だけが突起3aによって押し上げられて(押し込まれて)接点がオンする構造となっているため、例えばボタン1がシート状スイッチ2の面方向にずれていても(中立位置からスライドしていても)、ボタン1に押圧力が加わると簡単にスイッチが入ってしまう。
【0010】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、メンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置されている2段スイッチにおいて、メンブレンスイッチの軽荷重での入力を可能とし、かつメンブレンスイッチを押圧操作する押し子の中立位置においてのみ、そのような軽荷重入力を可能とする2段スイッチを提供することにあり、さらにメンブレンスイッチがスライド操作される複数の周辺スイッチを備えた多方向スライド・2段スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層されてなるメンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、それらメンブレンスイッチ及びプッシュスイッチを押圧操作する押し子がメンブレンスイッチ上に配置された2段スイッチにおいて、押し子の下面に突部が形成され、その突部の下方に位置して、メンブレンスイッチとプッシュスイッチの間に補助部材が配置され、前記突部及び補助部材の大きさはスペーサにより規定されているメンブレンスイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ前記突部及び補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされる。
【0012】
請求項2の発明では請求項1の発明において、プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされる。
【0013】
請求項3の発明によれば、上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層され、中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する複数の周辺スイッチとが構成されているメンブレンスイッチの中央スイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、メンブレンスイッチ上に配置された押し子の押下操作により中央スイッチ及びプッシュスイッチが押圧操作され、押し子のスライド操作によりメンブレンスイッチ上に配置された押圧力伝達部材を介して周辺スイッチが押圧操作される構造とされている多方向スライド・2段スイッチにおいて、押し子の下面に突部が形成され、その突部の下方に位置して、メンブレンスイッチとプッシュスイッチの間に補助部材が配置され、前記突部及び補助部材の大きさはスペーサにより規定されているメンブレンスイッチの中央スイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ前記突部及び補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされる。
【0014】
請求項4の発明では請求項3の発明において、プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明による2段スイッチによれば、押し子の突部とメンブレンスイッチの下に配置した補助部材とによって、メンブレンスイッチの上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ押し込まれてメンブレンスイッチが押圧操作されるものとなっており、よってスペーサによって規定された狭い範囲においても軽荷重での入力が可能となり、かつ押し子の所定の位置(中立位置)においてのみ、そのようなメンブレンスイッチ(1段目のスイッチ)の軽荷重入力を可能とすることができる。
【0016】
また、この発明による多方向スライド・2段スイッチによれば、上記のような2段スイッチを中央に具備した多方向スライドスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による多方向スライド・2段スイッチの一実施例の外観を示す平面図。
【図2】図1のA−A拡大断面図。
【図3】図1に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め上方から見た図)。
【図4】図1に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め下方から見た図)。
【図5】上部接点シート及びその上に形成されたパターン、中央スペーサを説明するための図。
【図6】下部接点シート及びその上に形成されたパターンを説明するための図、Aは表面側を示し、Bは裏面側を示す。
【図7】押し子がスライド操作された状態を示す断面図。
【図8】押し子が押下操作された状態を示す断面図。
【図9】補助部材の他の構成例を説明するための図(その1)。
【図10】補助部材の他の構成例を説明するための図(その2)。
【図11】補助部材の他の構成例を説明するための図(その3)。
【図12】この発明による多方向スライド・2段スイッチの他の実施例の外観を示す平面図。
【図13】図12のA−A拡大断面図。
【図14】図12に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め上方から見た図)。
【図15】図12に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め下方から見た図)。
【図16】上部接点シート及びその上に形成されたパターン、中央スペーサを説明するための図。
【図17】下部接点シート及びその上に形成されたパターンを説明するための図、Aは表面側を示し、Bは裏面側を示す。
【図18】2段スイッチの従来構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
まず、図1〜4を参照して2方向スライド・2段スイッチの各部の構成を説明する。
【0019】
操作者が押下操作及びスライド操作する押し子11は、その上面側に突出形成された操作軸11aがラバー12の中央に形成されている角筒部12aに圧入されて固定されており、このラバー12により押下及びスライド可能に支持されている。
【0020】
ラバー12の上にはカバープレート13が配置され、カバープレート13に形成されている開口13aに、ラバー12の角筒部12aに固定保持された押し子11の操作軸11aが位置して外部に突出されている。
【0021】
押し子11の下面には突部11bが形成されており、押し子11の下方には突部11bによって押圧操作される複数のスイッチが構成されたメンブレンスイッチ20が配置されている。メンブレンスイッチ20は互いの対向面に所定の電極パターンが形成された上部接点シート21及び下部接点シート22とそれら間に介在されるスペーサとより、スペーサはこの例では互いに独立して位置する中央スペーサ23と外周スペーサ24とよりなるものとされる。
【0022】
さらに図5は上部接点シート21の内面(下部接点シート22との対向面)に形成されている電極パターンをハッチングを付して示したものであり、上部接点シート21には矩形をなす上部電極パターン21aが形成され、さらにその上部電極パターン21aから導出された接続部21bが形成されている。上部電極パターン21aの中央にはクロスハッチングを付して示したように、線状の中央スペーサ23が2箇所に設けられている。これら2つの中央スペーサ23はこの例では上部電極パターン21a上に印刷されて形成されている。
【0023】
一方、さらに図6は下部接点シート22の構成を示したものであり、この例では下部接点シート22は後述する押し子11の押下操作により操作されるメタルドームスイッチを構成する接点パターンが形成されているメタルドームスイッチ部221とメンブレンスイッチ20を構成するメンブレンスイッチ部222とそれらを連結する連結部223とケーブル部224とよりなるものとされる。なお、図3及び4においては下部接点シート22を連結部223において分離して示しているが、下部接点シート22は連結部223において折り返されることにより組み込まれる。
【0024】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222には上部接点シート21に形成されている上部電極パターン21aと対向するように、3つの下部電極パターンが一方向に配列されて形成されている。3つの下部電極パターンは中央に位置する下部中央電極パターン22aと、それを挟む2つの下部周辺電極パターン22bとよりなる。なお、連結部223と反対側の先端部には接続部22cが形成されている。
【0025】
一方、連結部223の折り返しにより、メンブレンスイッチ部222の下方に位置することになるメタルドームスイッチ部221には中央接点パターン22d及び周辺接点パターン22eが形成されており、これら中央接点パターン22d、周辺接点パターン22e及びメンブレンスイッチ部222の下部中央電極パターン22a、下部周辺電極パターン22b、接続部22cは所要の配線、スルーホールを介して図6に示したようにケーブル部224に配列形成されている端子22fと接続されている。なお、接続部22c及び周辺接点パターン22eはGNDとされ、互いに導通されている。
【0026】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222と、中央スペーサ23が形成されている上部接点シート21とは外周スペーサ24を介して積層され、これによりメンブレンスイッチ20が構成される。この際、上部接点シート21及び下部接点シート22の両接続部21b,22cの間にはACF(異方性導電接着剤)25が配され、このACF25により接続部21bと22cとが互いに導通接続される。
【0027】
互いに対向配置された上部電極パターン21aと下部中央電極パターン22aとによって中央スイッチが構成され、上部電極パターン21aと下部周辺電極パターン22bとによって2方向のスライド信号を出力する2つの周辺スイッチが構成される。中央スペーサ23は下部接点シート22の下部中央電極パターン22aと2つの下部周辺電極パターン22bとの各間に位置し、外周スペーサ24はそれら下部中央電極パターン22a、下部周辺電極パターン22bを囲む外周部に位置される。
【0028】
メンブレンスイッチ20の上面側(上部接点シート21の外面側)には2箇所に押圧力伝達部材14が配置され、さらにこの押圧力伝達部材14の上に押し子11のスライド時の摩擦力を低減させるための摩擦低減用シート15が貼り付けられている。押圧力伝達部材14は押し子11のスライド操作を確実にメンブレンスイッチ20の周辺スイッチの押圧操作へと変換するために機能するもので、この例では印刷により形成されており、互いに向い合う側には押し子11が乗り上げやすいように傾斜面が設けられている。
【0029】
上記のように上面側に押圧力伝達部材14及び摩擦低減用シート15が配置されたメンブレンスイッチ20はベース16に形成された2つのボス16aに挿入されて位置決めされる。メンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21には2つのボス16aにそれぞれ挿入位置決めされる長円穴21c及び長円切欠き21dが形成されており、外周スペーサ24には同様に長円切欠き24a,24bが2箇所に形成されている。また、下部接点シート22には長円穴22g及び22hが形成されている。
【0030】
下部接点シート22のメタルドームスイッチ部221はベース16の下に位置され、このメタルドームスイッチ部221の上にはメタルドーム17が搭載される。メタルドーム17はその外周部が周辺接点パターン22e上に位置され、ドームシート18によって固定されている。
【0031】
ドームシート18上には補助部材19が配置されている。補助部材19は押し子11の突部11bの下方に位置し、押し子11の中立位置における押下操作時の押圧力は補助部材19を介してメタルドーム17に伝達される。メタルドーム17の頂点上に位置する補助部材19はメタルドームスイッチの感触(オン/オフの明確感)向上の役割を果している。また、補助部材19は押し子11が押下操作された際に、上に位置する下部接点シート22を上部接点シート21に近づく方向に押し込むように機能する。補助部材19はこの例では短冊状をなす片面粘着シートによって構成され、ドームシート18に貼り付けられている。補助部材19の長さはメンブレンスイッチ20の外周スペーサ24の中央に形成されている開口24cに入り込める長さとされている。
【0032】
下部接点シート22のメタルドームスイッチ部221はリアプレート31上に搭載され、その上にベース16を組み込み、ベース16の下面側に形成されている2つのボス16bをリアプレート31の穴31a及び長円穴31bにそれぞれ挿入し、リアプレート31に立設されている4つの爪31cをベース16の4箇所の側壁部16cの外面に形成されている係止部16dにそれぞれ引っ掛けることでベース16とリアプレート31とが互いに固定される。ベース16にはメタルドーム17及び補助部材19が位置する開口16eが形成されている。なお、ドームシート18にはボス16bが通る穴18a及び長円切欠き18bが形成されており、下部接点シート22にはボス16bが通る穴22i及び長円穴22hが存在している。
【0033】
ベース16の4箇所の側壁部16cの外面にはそれぞれ係止部16dに加え、爪16fが突出形成されており、カバープレート13はその側壁面に形成されている4つの係止穴13bがそれぞれベース16の爪16fに係止されることによって、ベース16とカバープレート13とが互いに固定される。なお、この際、ベース16の上面側に形成されている2つのボス16aがラバー12に形成されている2つの穴12bに挿入され、これによりラバー12が位置決めされる。
【0034】
上記のような構成において、押し子11及びベース16は例えばABSやPC、PMMA、POM等の硬質樹脂製とされる。ラバー12はシリコーンラバーとされる。なお、シリコーンラバーに替え、熱可塑性エラストマや合成ゴム等を使用することもできる。カバープレート13及びリアプレート31はSUS等の金属薄板により形成される。摩擦低減用シート15には例えば表面にテフロン(登録商標)加工が施されたシートを用いる。なお、摩擦低減用シート15は必ずしも必要ではなく、摺動部品自体の表面処理等により代替することも可能である。
【0035】
メンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21にはPETフィルムを用い、導電インク(Ag,カーボン等)を印刷して所要の配線パターン(電極パターン)を形成する。なお、フィルムはPETに限らず、PI、PC等のフィルムも用いることができる。外周スペーサ24には例えばフィルム基材の両面粘着テープが用いられる。中央スペーサ23の印刷形成には絶縁性のレジストインキが使用される。所要の配線パターンを有する下部接点シート22はPIフィルムに銅箔により所要の配線パターンが形成されたFPCとされる。なお、上述した構成ではメンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21は下部接点シート22と別体とされているが、これら上部接点シート21と下部接点シート22を一体形成し、折り返すことによってメンブレンスイッチ20を構成することもできる。この場合、ACF25は不要となる。
【0036】
補助部材19は例えばPETフィルムを基材とした片面粘着シートとされる。なお、ABS等の樹脂等への代替も可能である。
【0037】
次に、上述したような構成を有する2方向スライド・2段スイッチの動作について説明する。
【0038】
図7に示したように、押し子11を矢印方向にスライドさせると、押し子11は押圧力伝達部材14が配置されている部分に至り、さらにスライドさせることにより押圧力伝達部材14の上に図7に示したように乗り上げる。押圧力伝達部材14は押し子11の突部11bによって押されて下方に変位し、メンブレンスイッチ20の上部接点シート21を押圧する。上部接点シート21はこの押圧により変形して下方へ変位し、これにより上部接点シート21に形成されている上部電極パターン21aが下部接点シート22に形成されている下部周辺電極パターン22bと接触導通し、周辺スイッチがオンとなる。押し子11のスライドを解除すると、ラバー12の復元力により押し子11は図2に示した初期状態(中立状態)の位置に戻る。
【0039】
一方、図8に示したように、押し子11を押下すると、押し子11の突部11bと補助部材19によってメンブレンスイッチ20が押圧され、さらに補助部材19を介してメタルドーム17が押圧される。押し子11の突部11b及び補助部材19の大きさは2つの中央スペーサ23により規定されているメンブレンスイッチ20の中央スイッチの接点空間領域26の大きさよりそれぞれ小とされており、押し子11の押下操作により、この接点空間領域26を挟む上部接点シート21及び下部接点シート22はそれぞれ突部11b及び補助部材19によって図8に示したように互いに近づく方向に押し込まれる。これにより、上部電極パターン21aと下部中央電極パターン22aが接触導通し、メンブレンスイッチ20の中央スイッチがオンとなる。
【0040】
メタルドーム17は押圧されると反転し、これにより中央部が下部接点シート22に形成されている中央接点パターン22dと接触して中央接点パターン22dと周辺接点パターン22eとがメタルドーム17を介して導通され、メタルドームスイッチがオンとなる。押し子11の押下を解除すると、メタルドーム17は元の状態に復帰し、これにより押し子11は図2に示した初期状態の位置に戻る。メタルドーム17により、メタルドームスイッチのオン/オフが明確に伝わり、感触が向上する。
【0041】
以上説明したように、この例ではメンブレンスイッチ20は中央スイッチとその中央スイッチを挟む2つの周辺スイッチを有し、メンブレンスイッチ20の中央スイッチの下方には、プッシュスイッチとしてメタルドームスイッチが配置され、1つの押し子11でそれらすべてのスイッチを押圧操作できるものとなっている。
【0042】
押し子11の下面にはメンブレンスイッチ20を押圧する突部11bが形成され、この突部11bの下方に位置してメンブレンスイッチ20とメタルドームスイッチとの間には補助部材19が配置されており、メンブレンスイッチ20の中央スイッチは押し子11を押下することで、突部11bが上部接点シート21を押し込み、補助部材19が下部接点シート22を押し込むことによって接触導通する(オンとなる)ものとなっている。よって、2つの中央スペーサ23によって規定された狭い範囲においても軽荷重での入力が可能であり、かつ2つの中央スペーサ23の間隔を狭くすることにより、押し子11の中立位置においてのみ、中央スイッチの押下を可能とすることができる。言いかえれば、中立位置以外(スライド操作時など)での中央スイッチの誤動作を防止することができる。
【0043】
なお、メンブレンスイッチ20の中央スイッチの下方には、上述した例ではメタルドームスイッチを配置しているが、メタルドームスイッチに替え、例えば通常のタクトスイッチを配置することもできる。
【0044】
メンブレンスイッチ20の下部接点シート22を下から押し込む補助部材19は上述した例では短冊状とされ、ドームシート18上に貼り付けられて取り付けられているが、補助部材19の形状・取り付け方はこれに限らず、図9〜11に示したような形態とすることもできる。
【0045】
図9は補助部材19を半球状としてドームシート18上に配置したものである。図10は短冊状の補助部材19をメタルドーム17上に配置し、ドームシート18によって覆って固定したものである。図11は短冊状の補助部材19をドームシート18上ではなく、メンブレンスイッチ20の下部接点シート22の下面に取り付けたものである。補助部材19の形状・取り付け方はこれら図9〜11に示したような形態を採用してもよい。
【0046】
次に、図12〜17に示したこの発明による多方向スライド・2段スイッチの他の実施例について説明する。
【0047】
この例ではメンブレンスイッチは中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する4つの周辺スイッチを備えており、これによりこの例では4方向スライド・2段スイッチが構成されている。これら図12〜17において、前述の図1〜6と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。以下、図1〜6に示した実施例と特に異なる点について説明する。
【0048】
メンブレンスイッチ20の上部接点シート21にはこの例では図16に示したように円形をなす上部電極パターン21aが形成されており、この上部電極パターン21aの中央にはリング形状をなす中央スペーサ23が設けられている。
【0049】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222には図17に示したように円形の下部中央電極パターン22aと、それを囲んで扇形をなす4つの下部周辺電極パターン22bが形成されている。これら4つの下部周辺電極パターン22b及び下部中央電極パターン22aは上部電極パターン21aと対向するように形成されている。なお、図17においては端子22fとの接続用の配線パターンの図示は省略している。
【0050】
押圧力伝達部材14はリング形状とされ、これによりメンブレンスイッチ20に形成されている4つの周辺スイッチを押し子11の前後左右4方向のスライド操作によってそれぞれ良好に押圧操作することができるものとなっている。押圧力伝達部材14の上に貼り付けられる摩擦低減用シート15はリング形状の押圧力伝達部材14を覆うように円形形状をなすものとされる。
【0051】
中央スペーサ23は上述したようにリング形状とされ、この中央スペーサ23により規定されたメンブレンスイッチ20の中央スイッチの接点空間領域26において、下部接点シート22を良好に押し込めるように、補助部材19はこの例では円形形状とされている。同様に、押し子11の突部11bも円形形状とされている。
【0052】
なお、前述した例のように押し子11が2方向にのみスライド操作される場合は押し子11のスライド方向と直交する方向の両端部をカバープレート13によって抑えることができ、つまり押し子11の浮きを防止することができるものの、この例のように押し子11が4方向にスライド操作される場合はそのようなスライド操作を可能とすべく、カバープレート13には大きな円形の開口13aを形成する必要があり、よってカバープレート13のみによってはスライド操作時の押し子11の浮きを良好に抑えることができない。従って、この例では補助プレート41を設け、この補助プレート41によって押し子11を抑え、スライド操作時に押し子11が浮かないようにしている。これにより、スライド操作時、押し子11は確実に押圧力伝達部材14に押圧力を加えることができるものとなっている。
【0053】
補助プレート41はラバー12と押し子11との間に位置するように、その周縁部がベース16に位置決めされて取り付けられる。なお、補助プレート41と押し子11との間には押し子11のスライド動作を滑らかにすることを目的として、この例では摩擦低減用シート42を配置している。
【0054】
この例では押し子11をスライド操作することで、スライド4方向の信号を入力することができ、押し子11を中立位置において押下操作することで、メンブレンスイッチ20の中央スイッチによって押下方向1段目の信号が入力され、さらに押下することでメタルドームスイッチによって押下方向2段目の信号が入力される。
【0055】
以上、2方向スライド・2段スイッチ及び4方向スライド・2段スイッチの構成及び動作について説明したが、これに限らず、例えば8方向スライド・2段スイッチを構成することもできる。また、例えばメンブレンスイッチ20が中央スイッチのみ有するものとし、スライド操作を行わない単なる2段スイッチを構成することもできる。
【0056】
上述した実施例における2方向スライド・2段スイッチは例えばデジタルスチルカメラ(DSC)において、シャッタースイッチ機能とズームスイッチ機能を統合できるスイッチ(デバイス)として用いることができ、DSCの小型化やデザイン自由度の向上に寄与することができる。
【技術分野】
【0001】
この発明はメンブレンスイッチとその下方に配置されたプッシュスイッチとを備える2段スイッチに関し、さらにメンブレンスイッチにスライド操作される複数のスイッチ(周辺スイッチ)が構成されている多方向スライド・2段スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図18Aは2段スイッチの従来例として、特許文献1に記載されている構成を示したものであり、図中、1は押下操作されるボタンを示す。ボタン1の下にはシート状スイッチ2が配置され、さらにシート状スイッチ2の下には中間部材3を介してスイッチ装置4が配置されている。図中、4aはスイッチ装置4の突出部を示し、スイッチ装置4は突出部4aが押されることによりオン状態となる。
【0003】
シート状スイッチ2はこの例ではメンブレンスイッチとされ、向い合せに電極5a,6aが配置されたシート5及びシート6と、それらシート5,6間に挟みこまれたスペーサ7とよりなる。中間部材3の上面には突起3aが形成されている。
【0004】
ボタン1を図18Bに示したように矢印a方向に押し下げると、ボタン1はシート状スイッチ2を介して中間部材3を矢印b方向に押し下げ、この時、シート状スイッチ2はボタン1と中間部材3に挟まれて圧迫され、電極5a,6aが接触する。中間部材3はスイッチ装置4の突出部4aを矢印c方向に押し、これによりスイッチ装置4がオンとなる。
【0005】
このように、この例では2つのスイッチが上下2段に配置され、ボタン1を押し下げることにより、それら2つのスイッチが共にオン状態になるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−262874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような構成を有する2段スイッチにおいて、動作感が分かるようにスイッチ装置4にクリック感をもたせた場合、2つのスイッチのスイッチ動作を安定させるためには、シート状スイッチ2がオンした後にスイッチ装置4がオンするようにするのが望ましく、このことは特許文献1にも記載されている。
【0008】
この場合、シート状スイッチ2を軽荷重化する必要があり、軽荷重化するためには例えばスペーサ7によって規定されている電極5a,6aが位置する接点空間領域の大きさ、即ちスペーサ7の逃げている大きさLを大きくし、中間部材3の突起3aによって押し込まれるシート6が撓みやすくする必要がある。
【0009】
しかるに、このようにスペーサ7の逃げている大きさLを大きくし、突起3aによって押し込まれるシート6を撓みやすくすることは、軽荷重化を図れる反面、簡単にスイッチが入ってしまうことになり、誤動作の原因となる。特に、図18に示した構成ではボタン1がシート状スイッチ2のスペーサ7が逃げている大きさLより大きく、ボタン1が押下された際に、シート5は撓まず、シート6だけが突起3aによって押し上げられて(押し込まれて)接点がオンする構造となっているため、例えばボタン1がシート状スイッチ2の面方向にずれていても(中立位置からスライドしていても)、ボタン1に押圧力が加わると簡単にスイッチが入ってしまう。
【0010】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、メンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置されている2段スイッチにおいて、メンブレンスイッチの軽荷重での入力を可能とし、かつメンブレンスイッチを押圧操作する押し子の中立位置においてのみ、そのような軽荷重入力を可能とする2段スイッチを提供することにあり、さらにメンブレンスイッチがスライド操作される複数の周辺スイッチを備えた多方向スライド・2段スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層されてなるメンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、それらメンブレンスイッチ及びプッシュスイッチを押圧操作する押し子がメンブレンスイッチ上に配置された2段スイッチにおいて、押し子の下面に突部が形成され、その突部の下方に位置して、メンブレンスイッチとプッシュスイッチの間に補助部材が配置され、前記突部及び補助部材の大きさはスペーサにより規定されているメンブレンスイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ前記突部及び補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされる。
【0012】
請求項2の発明では請求項1の発明において、プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされる。
【0013】
請求項3の発明によれば、上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層され、中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する複数の周辺スイッチとが構成されているメンブレンスイッチの中央スイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、メンブレンスイッチ上に配置された押し子の押下操作により中央スイッチ及びプッシュスイッチが押圧操作され、押し子のスライド操作によりメンブレンスイッチ上に配置された押圧力伝達部材を介して周辺スイッチが押圧操作される構造とされている多方向スライド・2段スイッチにおいて、押し子の下面に突部が形成され、その突部の下方に位置して、メンブレンスイッチとプッシュスイッチの間に補助部材が配置され、前記突部及び補助部材の大きさはスペーサにより規定されているメンブレンスイッチの中央スイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ前記突部及び補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされる。
【0014】
請求項4の発明では請求項3の発明において、プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明による2段スイッチによれば、押し子の突部とメンブレンスイッチの下に配置した補助部材とによって、メンブレンスイッチの上部接点シート及び下部接点シートがそれぞれ押し込まれてメンブレンスイッチが押圧操作されるものとなっており、よってスペーサによって規定された狭い範囲においても軽荷重での入力が可能となり、かつ押し子の所定の位置(中立位置)においてのみ、そのようなメンブレンスイッチ(1段目のスイッチ)の軽荷重入力を可能とすることができる。
【0016】
また、この発明による多方向スライド・2段スイッチによれば、上記のような2段スイッチを中央に具備した多方向スライドスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による多方向スライド・2段スイッチの一実施例の外観を示す平面図。
【図2】図1のA−A拡大断面図。
【図3】図1に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め上方から見た図)。
【図4】図1に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め下方から見た図)。
【図5】上部接点シート及びその上に形成されたパターン、中央スペーサを説明するための図。
【図6】下部接点シート及びその上に形成されたパターンを説明するための図、Aは表面側を示し、Bは裏面側を示す。
【図7】押し子がスライド操作された状態を示す断面図。
【図8】押し子が押下操作された状態を示す断面図。
【図9】補助部材の他の構成例を説明するための図(その1)。
【図10】補助部材の他の構成例を説明するための図(その2)。
【図11】補助部材の他の構成例を説明するための図(その3)。
【図12】この発明による多方向スライド・2段スイッチの他の実施例の外観を示す平面図。
【図13】図12のA−A拡大断面図。
【図14】図12に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め上方から見た図)。
【図15】図12に示した多方向スライド・2段スイッチの分解斜視図(斜め下方から見た図)。
【図16】上部接点シート及びその上に形成されたパターン、中央スペーサを説明するための図。
【図17】下部接点シート及びその上に形成されたパターンを説明するための図、Aは表面側を示し、Bは裏面側を示す。
【図18】2段スイッチの従来構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
まず、図1〜4を参照して2方向スライド・2段スイッチの各部の構成を説明する。
【0019】
操作者が押下操作及びスライド操作する押し子11は、その上面側に突出形成された操作軸11aがラバー12の中央に形成されている角筒部12aに圧入されて固定されており、このラバー12により押下及びスライド可能に支持されている。
【0020】
ラバー12の上にはカバープレート13が配置され、カバープレート13に形成されている開口13aに、ラバー12の角筒部12aに固定保持された押し子11の操作軸11aが位置して外部に突出されている。
【0021】
押し子11の下面には突部11bが形成されており、押し子11の下方には突部11bによって押圧操作される複数のスイッチが構成されたメンブレンスイッチ20が配置されている。メンブレンスイッチ20は互いの対向面に所定の電極パターンが形成された上部接点シート21及び下部接点シート22とそれら間に介在されるスペーサとより、スペーサはこの例では互いに独立して位置する中央スペーサ23と外周スペーサ24とよりなるものとされる。
【0022】
さらに図5は上部接点シート21の内面(下部接点シート22との対向面)に形成されている電極パターンをハッチングを付して示したものであり、上部接点シート21には矩形をなす上部電極パターン21aが形成され、さらにその上部電極パターン21aから導出された接続部21bが形成されている。上部電極パターン21aの中央にはクロスハッチングを付して示したように、線状の中央スペーサ23が2箇所に設けられている。これら2つの中央スペーサ23はこの例では上部電極パターン21a上に印刷されて形成されている。
【0023】
一方、さらに図6は下部接点シート22の構成を示したものであり、この例では下部接点シート22は後述する押し子11の押下操作により操作されるメタルドームスイッチを構成する接点パターンが形成されているメタルドームスイッチ部221とメンブレンスイッチ20を構成するメンブレンスイッチ部222とそれらを連結する連結部223とケーブル部224とよりなるものとされる。なお、図3及び4においては下部接点シート22を連結部223において分離して示しているが、下部接点シート22は連結部223において折り返されることにより組み込まれる。
【0024】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222には上部接点シート21に形成されている上部電極パターン21aと対向するように、3つの下部電極パターンが一方向に配列されて形成されている。3つの下部電極パターンは中央に位置する下部中央電極パターン22aと、それを挟む2つの下部周辺電極パターン22bとよりなる。なお、連結部223と反対側の先端部には接続部22cが形成されている。
【0025】
一方、連結部223の折り返しにより、メンブレンスイッチ部222の下方に位置することになるメタルドームスイッチ部221には中央接点パターン22d及び周辺接点パターン22eが形成されており、これら中央接点パターン22d、周辺接点パターン22e及びメンブレンスイッチ部222の下部中央電極パターン22a、下部周辺電極パターン22b、接続部22cは所要の配線、スルーホールを介して図6に示したようにケーブル部224に配列形成されている端子22fと接続されている。なお、接続部22c及び周辺接点パターン22eはGNDとされ、互いに導通されている。
【0026】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222と、中央スペーサ23が形成されている上部接点シート21とは外周スペーサ24を介して積層され、これによりメンブレンスイッチ20が構成される。この際、上部接点シート21及び下部接点シート22の両接続部21b,22cの間にはACF(異方性導電接着剤)25が配され、このACF25により接続部21bと22cとが互いに導通接続される。
【0027】
互いに対向配置された上部電極パターン21aと下部中央電極パターン22aとによって中央スイッチが構成され、上部電極パターン21aと下部周辺電極パターン22bとによって2方向のスライド信号を出力する2つの周辺スイッチが構成される。中央スペーサ23は下部接点シート22の下部中央電極パターン22aと2つの下部周辺電極パターン22bとの各間に位置し、外周スペーサ24はそれら下部中央電極パターン22a、下部周辺電極パターン22bを囲む外周部に位置される。
【0028】
メンブレンスイッチ20の上面側(上部接点シート21の外面側)には2箇所に押圧力伝達部材14が配置され、さらにこの押圧力伝達部材14の上に押し子11のスライド時の摩擦力を低減させるための摩擦低減用シート15が貼り付けられている。押圧力伝達部材14は押し子11のスライド操作を確実にメンブレンスイッチ20の周辺スイッチの押圧操作へと変換するために機能するもので、この例では印刷により形成されており、互いに向い合う側には押し子11が乗り上げやすいように傾斜面が設けられている。
【0029】
上記のように上面側に押圧力伝達部材14及び摩擦低減用シート15が配置されたメンブレンスイッチ20はベース16に形成された2つのボス16aに挿入されて位置決めされる。メンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21には2つのボス16aにそれぞれ挿入位置決めされる長円穴21c及び長円切欠き21dが形成されており、外周スペーサ24には同様に長円切欠き24a,24bが2箇所に形成されている。また、下部接点シート22には長円穴22g及び22hが形成されている。
【0030】
下部接点シート22のメタルドームスイッチ部221はベース16の下に位置され、このメタルドームスイッチ部221の上にはメタルドーム17が搭載される。メタルドーム17はその外周部が周辺接点パターン22e上に位置され、ドームシート18によって固定されている。
【0031】
ドームシート18上には補助部材19が配置されている。補助部材19は押し子11の突部11bの下方に位置し、押し子11の中立位置における押下操作時の押圧力は補助部材19を介してメタルドーム17に伝達される。メタルドーム17の頂点上に位置する補助部材19はメタルドームスイッチの感触(オン/オフの明確感)向上の役割を果している。また、補助部材19は押し子11が押下操作された際に、上に位置する下部接点シート22を上部接点シート21に近づく方向に押し込むように機能する。補助部材19はこの例では短冊状をなす片面粘着シートによって構成され、ドームシート18に貼り付けられている。補助部材19の長さはメンブレンスイッチ20の外周スペーサ24の中央に形成されている開口24cに入り込める長さとされている。
【0032】
下部接点シート22のメタルドームスイッチ部221はリアプレート31上に搭載され、その上にベース16を組み込み、ベース16の下面側に形成されている2つのボス16bをリアプレート31の穴31a及び長円穴31bにそれぞれ挿入し、リアプレート31に立設されている4つの爪31cをベース16の4箇所の側壁部16cの外面に形成されている係止部16dにそれぞれ引っ掛けることでベース16とリアプレート31とが互いに固定される。ベース16にはメタルドーム17及び補助部材19が位置する開口16eが形成されている。なお、ドームシート18にはボス16bが通る穴18a及び長円切欠き18bが形成されており、下部接点シート22にはボス16bが通る穴22i及び長円穴22hが存在している。
【0033】
ベース16の4箇所の側壁部16cの外面にはそれぞれ係止部16dに加え、爪16fが突出形成されており、カバープレート13はその側壁面に形成されている4つの係止穴13bがそれぞれベース16の爪16fに係止されることによって、ベース16とカバープレート13とが互いに固定される。なお、この際、ベース16の上面側に形成されている2つのボス16aがラバー12に形成されている2つの穴12bに挿入され、これによりラバー12が位置決めされる。
【0034】
上記のような構成において、押し子11及びベース16は例えばABSやPC、PMMA、POM等の硬質樹脂製とされる。ラバー12はシリコーンラバーとされる。なお、シリコーンラバーに替え、熱可塑性エラストマや合成ゴム等を使用することもできる。カバープレート13及びリアプレート31はSUS等の金属薄板により形成される。摩擦低減用シート15には例えば表面にテフロン(登録商標)加工が施されたシートを用いる。なお、摩擦低減用シート15は必ずしも必要ではなく、摺動部品自体の表面処理等により代替することも可能である。
【0035】
メンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21にはPETフィルムを用い、導電インク(Ag,カーボン等)を印刷して所要の配線パターン(電極パターン)を形成する。なお、フィルムはPETに限らず、PI、PC等のフィルムも用いることができる。外周スペーサ24には例えばフィルム基材の両面粘着テープが用いられる。中央スペーサ23の印刷形成には絶縁性のレジストインキが使用される。所要の配線パターンを有する下部接点シート22はPIフィルムに銅箔により所要の配線パターンが形成されたFPCとされる。なお、上述した構成ではメンブレンスイッチ20を構成する上部接点シート21は下部接点シート22と別体とされているが、これら上部接点シート21と下部接点シート22を一体形成し、折り返すことによってメンブレンスイッチ20を構成することもできる。この場合、ACF25は不要となる。
【0036】
補助部材19は例えばPETフィルムを基材とした片面粘着シートとされる。なお、ABS等の樹脂等への代替も可能である。
【0037】
次に、上述したような構成を有する2方向スライド・2段スイッチの動作について説明する。
【0038】
図7に示したように、押し子11を矢印方向にスライドさせると、押し子11は押圧力伝達部材14が配置されている部分に至り、さらにスライドさせることにより押圧力伝達部材14の上に図7に示したように乗り上げる。押圧力伝達部材14は押し子11の突部11bによって押されて下方に変位し、メンブレンスイッチ20の上部接点シート21を押圧する。上部接点シート21はこの押圧により変形して下方へ変位し、これにより上部接点シート21に形成されている上部電極パターン21aが下部接点シート22に形成されている下部周辺電極パターン22bと接触導通し、周辺スイッチがオンとなる。押し子11のスライドを解除すると、ラバー12の復元力により押し子11は図2に示した初期状態(中立状態)の位置に戻る。
【0039】
一方、図8に示したように、押し子11を押下すると、押し子11の突部11bと補助部材19によってメンブレンスイッチ20が押圧され、さらに補助部材19を介してメタルドーム17が押圧される。押し子11の突部11b及び補助部材19の大きさは2つの中央スペーサ23により規定されているメンブレンスイッチ20の中央スイッチの接点空間領域26の大きさよりそれぞれ小とされており、押し子11の押下操作により、この接点空間領域26を挟む上部接点シート21及び下部接点シート22はそれぞれ突部11b及び補助部材19によって図8に示したように互いに近づく方向に押し込まれる。これにより、上部電極パターン21aと下部中央電極パターン22aが接触導通し、メンブレンスイッチ20の中央スイッチがオンとなる。
【0040】
メタルドーム17は押圧されると反転し、これにより中央部が下部接点シート22に形成されている中央接点パターン22dと接触して中央接点パターン22dと周辺接点パターン22eとがメタルドーム17を介して導通され、メタルドームスイッチがオンとなる。押し子11の押下を解除すると、メタルドーム17は元の状態に復帰し、これにより押し子11は図2に示した初期状態の位置に戻る。メタルドーム17により、メタルドームスイッチのオン/オフが明確に伝わり、感触が向上する。
【0041】
以上説明したように、この例ではメンブレンスイッチ20は中央スイッチとその中央スイッチを挟む2つの周辺スイッチを有し、メンブレンスイッチ20の中央スイッチの下方には、プッシュスイッチとしてメタルドームスイッチが配置され、1つの押し子11でそれらすべてのスイッチを押圧操作できるものとなっている。
【0042】
押し子11の下面にはメンブレンスイッチ20を押圧する突部11bが形成され、この突部11bの下方に位置してメンブレンスイッチ20とメタルドームスイッチとの間には補助部材19が配置されており、メンブレンスイッチ20の中央スイッチは押し子11を押下することで、突部11bが上部接点シート21を押し込み、補助部材19が下部接点シート22を押し込むことによって接触導通する(オンとなる)ものとなっている。よって、2つの中央スペーサ23によって規定された狭い範囲においても軽荷重での入力が可能であり、かつ2つの中央スペーサ23の間隔を狭くすることにより、押し子11の中立位置においてのみ、中央スイッチの押下を可能とすることができる。言いかえれば、中立位置以外(スライド操作時など)での中央スイッチの誤動作を防止することができる。
【0043】
なお、メンブレンスイッチ20の中央スイッチの下方には、上述した例ではメタルドームスイッチを配置しているが、メタルドームスイッチに替え、例えば通常のタクトスイッチを配置することもできる。
【0044】
メンブレンスイッチ20の下部接点シート22を下から押し込む補助部材19は上述した例では短冊状とされ、ドームシート18上に貼り付けられて取り付けられているが、補助部材19の形状・取り付け方はこれに限らず、図9〜11に示したような形態とすることもできる。
【0045】
図9は補助部材19を半球状としてドームシート18上に配置したものである。図10は短冊状の補助部材19をメタルドーム17上に配置し、ドームシート18によって覆って固定したものである。図11は短冊状の補助部材19をドームシート18上ではなく、メンブレンスイッチ20の下部接点シート22の下面に取り付けたものである。補助部材19の形状・取り付け方はこれら図9〜11に示したような形態を採用してもよい。
【0046】
次に、図12〜17に示したこの発明による多方向スライド・2段スイッチの他の実施例について説明する。
【0047】
この例ではメンブレンスイッチは中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する4つの周辺スイッチを備えており、これによりこの例では4方向スライド・2段スイッチが構成されている。これら図12〜17において、前述の図1〜6と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。以下、図1〜6に示した実施例と特に異なる点について説明する。
【0048】
メンブレンスイッチ20の上部接点シート21にはこの例では図16に示したように円形をなす上部電極パターン21aが形成されており、この上部電極パターン21aの中央にはリング形状をなす中央スペーサ23が設けられている。
【0049】
下部接点シート22のメンブレンスイッチ部222には図17に示したように円形の下部中央電極パターン22aと、それを囲んで扇形をなす4つの下部周辺電極パターン22bが形成されている。これら4つの下部周辺電極パターン22b及び下部中央電極パターン22aは上部電極パターン21aと対向するように形成されている。なお、図17においては端子22fとの接続用の配線パターンの図示は省略している。
【0050】
押圧力伝達部材14はリング形状とされ、これによりメンブレンスイッチ20に形成されている4つの周辺スイッチを押し子11の前後左右4方向のスライド操作によってそれぞれ良好に押圧操作することができるものとなっている。押圧力伝達部材14の上に貼り付けられる摩擦低減用シート15はリング形状の押圧力伝達部材14を覆うように円形形状をなすものとされる。
【0051】
中央スペーサ23は上述したようにリング形状とされ、この中央スペーサ23により規定されたメンブレンスイッチ20の中央スイッチの接点空間領域26において、下部接点シート22を良好に押し込めるように、補助部材19はこの例では円形形状とされている。同様に、押し子11の突部11bも円形形状とされている。
【0052】
なお、前述した例のように押し子11が2方向にのみスライド操作される場合は押し子11のスライド方向と直交する方向の両端部をカバープレート13によって抑えることができ、つまり押し子11の浮きを防止することができるものの、この例のように押し子11が4方向にスライド操作される場合はそのようなスライド操作を可能とすべく、カバープレート13には大きな円形の開口13aを形成する必要があり、よってカバープレート13のみによってはスライド操作時の押し子11の浮きを良好に抑えることができない。従って、この例では補助プレート41を設け、この補助プレート41によって押し子11を抑え、スライド操作時に押し子11が浮かないようにしている。これにより、スライド操作時、押し子11は確実に押圧力伝達部材14に押圧力を加えることができるものとなっている。
【0053】
補助プレート41はラバー12と押し子11との間に位置するように、その周縁部がベース16に位置決めされて取り付けられる。なお、補助プレート41と押し子11との間には押し子11のスライド動作を滑らかにすることを目的として、この例では摩擦低減用シート42を配置している。
【0054】
この例では押し子11をスライド操作することで、スライド4方向の信号を入力することができ、押し子11を中立位置において押下操作することで、メンブレンスイッチ20の中央スイッチによって押下方向1段目の信号が入力され、さらに押下することでメタルドームスイッチによって押下方向2段目の信号が入力される。
【0055】
以上、2方向スライド・2段スイッチ及び4方向スライド・2段スイッチの構成及び動作について説明したが、これに限らず、例えば8方向スライド・2段スイッチを構成することもできる。また、例えばメンブレンスイッチ20が中央スイッチのみ有するものとし、スライド操作を行わない単なる2段スイッチを構成することもできる。
【0056】
上述した実施例における2方向スライド・2段スイッチは例えばデジタルスチルカメラ(DSC)において、シャッタースイッチ機能とズームスイッチ機能を統合できるスイッチ(デバイス)として用いることができ、DSCの小型化やデザイン自由度の向上に寄与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層されてなるメンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、それらメンブレンスイッチ及びプッシュスイッチを押圧操作する押し子がメンブレンスイッチ上に配置された2段スイッチであって、
前記押し子の下面に突部が形成され、
その突部の下方に位置して、前記メンブレンスイッチと前記プッシュスイッチの間に補助部材が配置され、
前記突部及び前記補助部材の大きさは前記スペーサにより規定されている前記メンブレンスイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、
前記押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む前記上部接点シート及び前記下部接点シートがそれぞれ前記突部及び前記補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされていることを特徴とする2段スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の2段スイッチにおいて、
前記プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされていることを特徴とする2段スイッチ。
【請求項3】
上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層され、中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する複数の周辺スイッチとが構成されているメンブレンスイッチの前記中央スイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、前記メンブレンスイッチ上に配置された押し子の押下操作により前記中央スイッチ及び前記プッシュスイッチが押圧操作され、前記押し子のスライド操作により前記メンブレンスイッチ上に配置された押圧力伝達部材を介して前記周辺スイッチが押圧操作される構造とされている多方向スライド・2段スイッチであって、
前記押し子の下面に突部が形成され、
その突部の下方に位置して、前記メンブレンスイッチと前記プッシュスイッチの間に補助部材が配置され、
前記突部及び前記補助部材の大きさは前記スペーサにより規定されている前記メンブレンスイッチの前記中央スイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、
前記押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む前記上部接点シート及び前記下部接点シートがそれぞれ前記突部及び前記補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされていることを特徴とする多方向スライド・2段スイッチ。
【請求項4】
請求項3記載の多方向スライド・2段スイッチにおいて、
前記プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされていることを特徴とする多方向スライド・2段スイッチ。
【請求項1】
上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層されてなるメンブレンスイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、それらメンブレンスイッチ及びプッシュスイッチを押圧操作する押し子がメンブレンスイッチ上に配置された2段スイッチであって、
前記押し子の下面に突部が形成され、
その突部の下方に位置して、前記メンブレンスイッチと前記プッシュスイッチの間に補助部材が配置され、
前記突部及び前記補助部材の大きさは前記スペーサにより規定されている前記メンブレンスイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、
前記押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む前記上部接点シート及び前記下部接点シートがそれぞれ前記突部及び前記補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされていることを特徴とする2段スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の2段スイッチにおいて、
前記プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされていることを特徴とする2段スイッチ。
【請求項3】
上部接点シートと下部接点シートがスペーサを介して積層され、中央スイッチとその中央スイッチの回りに位置する複数の周辺スイッチとが構成されているメンブレンスイッチの前記中央スイッチの下方にプッシュスイッチが配置され、前記メンブレンスイッチ上に配置された押し子の押下操作により前記中央スイッチ及び前記プッシュスイッチが押圧操作され、前記押し子のスライド操作により前記メンブレンスイッチ上に配置された押圧力伝達部材を介して前記周辺スイッチが押圧操作される構造とされている多方向スライド・2段スイッチであって、
前記押し子の下面に突部が形成され、
その突部の下方に位置して、前記メンブレンスイッチと前記プッシュスイッチの間に補助部材が配置され、
前記突部及び前記補助部材の大きさは前記スペーサにより規定されている前記メンブレンスイッチの前記中央スイッチの接点空間領域の大きさよりそれぞれ小とされ、
前記押し子の押下操作により、前記接点空間領域を挟む前記上部接点シート及び前記下部接点シートがそれぞれ前記突部及び前記補助部材によって互いに近づく方向に押し込まれる構造とされていることを特徴とする多方向スライド・2段スイッチ。
【請求項4】
請求項3記載の多方向スライド・2段スイッチにおいて、
前記プッシュスイッチがメタルドームスイッチとされていることを特徴とする多方向スライド・2段スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−272431(P2010−272431A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124815(P2009−124815)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
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