説明

2,4−ジアミノ−ピリドピリミジン誘導体とmTOR阻害剤としてのその使用

式(I)の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグ[式中:X、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;RN1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;RN3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]と、mTORの阻害により改善される疾患を治療することにおけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、mTOR阻害剤として作用する化合物、その使用、及びその合成に関する。
背景技術
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/AKTシグナル伝達経路の増殖因子/マイトジェン活性化は、最終的には、重要な細胞周期及び増殖制御レギュレーターのmTOR、哺乳動物のラパマイシン標的{あるいは、FRAP(FKBP12及びラパマイシン関連タンパク質)、RAFT1(ラパマイシン及びFKBP12標的1)、RAPT1(ラパマイシン標的1)−いずれも、FK−506結合タンパク質、FKBP12との相互作用より派生する、及びSEP(シロリムスエフェクタータンパク質)とも呼ばれる}をもたらす。mTORは、ほぼ289kDの大きさの哺乳動物のセリン/スレオニンキナーゼであり、進化で保存された真核TORキナーゼのメンバーである(参考文献1〜4)。mTORタンパク質は、そのC末端(触媒ドメイン)のPI3−キナーゼや他のファミリーメンバー、例えば、DNA−PKcs(DNA依存性タンパク質キナーゼ)、ATM(毛細管拡張性失調、突然変異型)との相同性のために、PI3−キナーゼ様キナーゼ(PIKK)のタンパク質ファミリーのメンバーである。C末端中の触媒ドメインに加えて、mTORは、FKBP12/ラパマイシン複合体結合ドメイン(FRB)を含有する。N末端に20までのHEAT(Huntingtin、EF3、PP2Aのα調節サブユニット、及びTOR)モチーフが見出される一方で、より多くのC末端は、FAT(FRAP−ATM−TRRAP)ドメインであり、このタンパク質の極C末端では、追加のFATドメイン(FAT−C)が見出される(参考文献5,6)。
【0002】
TORは、細胞成長(大きさ)と増殖の両方の中心的なレギュレーターとして同定され、これは、翻訳開始により一部支配されている。S6−キナーゼ(S6K1)のTOR依存性リン酸化は、細胞周期進行に関与するリボソームタンパク質の翻訳を可能にする(参考文献7〜9)。Cap依存性の翻訳は、真核翻訳開始因子、4E(eIF4E)結合タンパク質1(4E−BP1(PHAS−1))のリン酸化により調節されている。この修飾は、PHAS−1がeIF4Eへ結合することを妨げることにより、活性のeIF4F翻訳複合体の形成を可能にする(参考文献10、11、12に概説されている)。これらのシグナル伝達要素の活性化は、インスリン、他の増殖因子、及び栄養素に依存していて、好ましい環境条件下だけでの細胞周期進行の制御におけるmTORのゲートキーパー的な役割を示唆する。PI3K/AKTシグナル伝達カスケードは、mTORの上流に存在して、これがある種の癌では脱調節されていることが示され、例えば、PTEN欠失細胞では、増殖因子非依存性の活性化をもたらす。mTORは、この経路の制御の機軸に存在して、このキナーゼの阻害剤(例えば、シロリムス(ラパマイシン又はRapamuneTM)とエベロリムス(RAD001又はCerticanTM))は、すでに免疫抑制と薬物溶出ステントのために承認されていて(参考文献13、14に概説されている)、今日、癌治療の新規薬剤として特別な関心を受けている。
【0003】
腫瘍細胞の増殖は、腫瘍サプレッサー機能(複数)の消失といった、正常な増殖制御機序の脱調節より生じる。1つのそのような腫瘍サプレッサーは、第十染色体より欠失したホスファターゼ・テンシンホモログ(phosphatase and tensin homologue)(PTEN)である。この遺伝子は、多重進行癌での突然変異型(mutated in multiple advanced cancers)(MMAC)としても知られ、細胞周期の停止において重要な役割を担うことが示され、p53に次いで最も高度に突然変異した腫瘍サプレッサーである。膠芽腫、子宮内膜癌、及び前立腺癌の30%で、この遺伝子座の体細胞変異又は欠失がある(参考文献15、16)。
【0004】
PTENがPIP3より3’リン酸を除去してPIP2を産生することに責任があるのに対し、PI3Kは、ホスファチジルイノシトール4,5,二リン酸(PIP2)をホスファチジルイノシトール3,4,5,三リン酸(PIP3)へ変換する。PI3−KとPTENは、適正なレベルのPIP3を維持するように作用して、これがAKT(PKBとしても知られる)を動員することによりそれと下流のシグナル伝達カスケードを活性化して、それが始動される。PTENの非存在下では、このカスケードの不適正な調節があり、AKTは、有効に構成的に活性化されて、細胞増殖が脱調節される。この細胞シグナル伝達プロセスの脱調節に代わる機序は、最近同定された、PI3Kアイソフォームの突然変異型、p110αである(参考文献17)。この突然変異体の見かけの活性増加は、おそらくはPTENの機能が相殺し得る過剰において、PIP3産生の増加をもたらすと考えられている。従って、PIK3からのシグナル伝達の増加は、mTORへのシグナル伝達と、必然的に、その下流アクチベーターの増加をもたらす。
【0005】
mTORを細胞周期調節(G1からS期への)と結び付ける証拠と、mTORの阻害がこれらの調節イベントの阻害をもたらすことに加えて、mTOR活性の下流調節が細胞増殖阻害をもたらすことが示された(参考文献7、18、19に概説されている)。mTORの既知の阻害剤であるラパマイシンは、平滑筋、T細胞のような多様な組織種に由来する細胞だけでなく、横紋筋芽細胞腫、神経芽細胞腫、膠芽腫及び髄芽腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵臓癌、乳癌、及び前立腺癌が含まれる多様な範囲の腫瘍種由来の細胞の増殖又は成長を強力に阻害する(参考文献20に概説されている)。ラパマイシンは、承認されて、免疫抑制薬として臨床使用され、臓器拒絶のその予防は奏効して、これまでの療法より副作用が少ない(参考文献20、21)。ラパマイシンとその類似体(RAD001,CCI−779)によるmTORの阻害は、FK506結合タンパク質、FKBP12とこの薬物の事前の相互作用により引き起こされる。引き続き、このFKBP12/ラパマイシンの複合体がmTORのFRBドメインへ結合して、mTORから下流のシグナル伝達を阻害する。
【0006】
PI3Kの強力だが非特異的な阻害剤である、LY294002とウォルトマンニンもmTORのキナーゼ機能を阻害するが、このタンパク質の触媒ドメインを標的にすることによって作用することが示された(参考文献21)。さらに、キナーゼドメインを標的にする低分子によるmTOR機能の阻害に対して、キナーゼ失活mTORは、上流活性化シグナルをmTOR、PHAS−1、又はp70S6キナーゼの下流エフェクターへ伝達し得ないことが示されている(参考文献22)。また、mTORのすべての機能がラパマイシン感受性であるわけではなくて、このことは、ラパマイシンがmTORの活性そのものを阻害するのではなく、その基質プロフィールを改変させるという観察事実に関連している可能性があることも示された(参考文献23)。故に、mTORのキナーゼドメイン指向性の阻害剤は、mTORのより有効な阻害剤になり得ると提唱されている。
【0007】
増殖阻害(細胞分裂抑制)をそれ自身で誘導するラパマイシンの能力に加えて、ラパマイシンとその誘導体は、シスプラチン、カンプトテシン、及びドキソルビシンが含まれるいくつかの化学療法剤の細胞毒性を強化することが示されている(参考文献20に概説されている)。mTORの阻害に続いて、イオン化放射線誘発性の細胞殺傷の強化も観察された(参考文献24)。実験及び臨床上の証拠は、ラパマイシン類似体が、単独で、又は他の療法との組合せにおいて癌を治療するのに有効であることの証拠を示している(参考文献10、18、20を参照のこと)。
【0008】
mTOR薬理学の大部分は、今日まで、ラパマイシン又はその類似体によるmTORの阻害に集中してきた。しかしながら、上記に述べたように、キナーゼドメインに標的指向する機序によりmTORの活性を阻害することが報告された非ラパマイシン剤は、低分子のLY294002と天然産物のウォルトマンニンだけである(参考文献21)。
【0009】
発明の概要
本発明者は、mTORのATP競合阻害剤であり、それ故、その作用機序において非ラパマイシン様である化合物を同定した。
【0010】
故に、本発明の第一の側面は、式I:
【0011】
【化1】

【0012】
の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグを提供する[式中:
、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;
N3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]。
【0013】
本発明の第二の側面は、第一の側面の化合物と医薬的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
本発明の第三の側面は、第一の側面の化合物をヒト又は動物の身体の治療の方法における使用に提供する。
【0014】
本発明の第四の側面は、式II:
【0015】
【化2】

【0016】
の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグの、mTORの阻害により改善される疾患を治療するための医薬品の製造における使用を提供する[式中:
、X、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;
N3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]。
【0017】
本発明のさらなる側面は、本発明の第四の側面において定義される化合物の、癌、免疫抑制、免疫寛容、自己免疫疾患、炎症、骨損失、腸管障害、肝線維症、肝性壊死、慢性関節リウマチ、再狭窄、心臓同種移植片血管障害、乾癬、β−タラセミア、及びドライアイのような眼状態の治療用医薬品の製造における使用を提供する。mTOR阻害剤は、抗真菌剤としても有効であるかもしれない。
【0018】
本発明の別のさらなる側面は、本発明の第四の側面において定義される化合物の、癌療法における補助薬(adjunct)としての使用のためか、又はイオン化放射線又は化学療法剤での治療のために腫瘍細胞を増感する(potentiating)ための医薬品の製造における使用を提供する。
【0019】
本発明の他のさらなる側面は、好ましくは医薬組成物の形態である、第四の側面において定義される化合物の治療有効量を治療の必要な被検者へ投与することを含んでなる、mTORの阻害により改善される疾患の治療法と、好ましくは医薬組成物の形態である、第四の側面において定義される化合物の治療有効量をイオン化放射線又は化学療法剤と同時又は連続的に組み合わせて、治療の必要な被検者へ投与することを含んでなる、癌の治療法を提供する。
【0020】
定義
4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環:本明細書に使用する用語「4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環」は、少なくとも1つの窒素環原子を含有する4〜8員の複素環式環を意味する。これらの基の例には、限定されないが:
:アゼチジン(C)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C)、ピロリン(例、3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)(C)、2H−ピロール又は3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C)、ピペリジン(C)、ジヒドロピリジン(C)、テトラヒドロピリジン(C)、アゼピン(C);
:イミダゾリジン(C)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C)、イミダゾリン(C)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C)、ピペラジン(C);
:テトラヒドロオキサゾール(C)、ジヒドロオキサゾール(C)、テトラヒドロイソオキサゾール(C)、ジヒドロイソオキサゾール(C)、モルホリン(C)、テトラヒドロオキサジン(C)、ジヒドロオキサジン(C)、オキサジン(C);
:チアゾリン(C)、チアゾリジン(C)、チオモルホリン(C);
:オキサジアジン(C);
:オキサチアジン(C)が含まれる。
【0021】
アルキル:本明細書に使用する用語「アルキル」は、(他に特定しなければ)1〜20の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子より水素原子を除去することによって得られる一価の部分に関連し、それは、脂肪族でも脂環系でもよく、そして飽和でも不飽和(例、一部不飽和、完全不飽和)でもよい。このように、用語「アルキル」には、以下に考察する、亜群のアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、等が含まれる。
【0022】
アルキル基の文脈において、接頭辞(例、C1−4、C1−7、C1−20、C2−7、C3−7、等)は、炭素原子の数、又は炭素原子の数の範囲を意味する。例えば、本明細書に使用する用語「C1−4アルキル」は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基に関連する。アルキル基の群の例には、C1−4アルキル(「低級アルキル」)、C1−7アルキル、及びC1−20アルキルが含まれる。最初の接頭辞が他の制限に従って変動する可能性があることに留意されたい;例えば、不飽和アルキル基では、最初の接頭辞が少なくとも2でなければならず;環式アルキル基では、最初の接頭辞が少なくとも3でなければならない、といった具合である。
【0023】
(未置換)飽和アルキル基の例には、限定されないが、メチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)、ペンチル(C)、ヘキシル(C)、ヘプチル(C)、オクチル(C)、ノニル(C)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、及びエイコデシル(C20)が含まれる。
【0024】
(未置換)飽和直鎖アルキル基の例には、限定されないが、メチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、n−ブチル(C)、n−ペンチル(アミル)(C)、n−ヘキシル(C)、及びn−ヘプチル(C)が含まれる。
【0025】
(未置換)飽和分岐鎖アルキル基の例には、イソプロピル(C)、イソブチル(C)、sec−ブチル(C)、tert−ブチル(C)、イソペンチル(C)、及びネオペンチル(C)が含まれる。
【0026】
アルケニル:本明細書に使用する用語「アルケニル」は、1以上の炭素−炭素二重結合を有するアルキル基に関連する。アルケニル基の群の例には、C2−4アルケニル、C2−7アルケニル、C2−20アルケニルが含まれる。
【0027】
(未置換)不飽和アルケニル基の例には、限定されないが、エテニル(ビニル、−CH=CH)、1−プロペニル(−CH=CH−CH)、2−プロペニル(アリル、−CH−CH=CH)、イソプロペニル(1−メチルビニル、−C(CH)=CH)、ブテニル(C)、ペンテニル(C)、及びヘキセニル(C)が含まれる。
【0028】
アルキニル:本明細書に使用する用語「アルキニル」は、1以上の炭素−炭素三重結合を有するアルキル基に関連する。アルキニル基の群の例には、C2−4アルキニル、C2−7アルキニル、C2−20アルキニルが含まれる。
【0029】
(未置換)不飽和アルキニル基の例には、限定されないが、エチニル(エチニル、−C≡CH)及び2−プロピニル(プロパルジル、−CH−C≡CH)が含まれる。
シクロアルキル:本明細書に使用する用語「シクロアルキル」は、シクリル基でもあるアルキル基、即ち、炭素環式化合物の炭素環式環の脂環系環原子より水素原子を除去することによって得られる一価部分に関連して、該炭素環式環は、飽和でも不飽和(例、一部不飽和、完全不飽和)でもよく、該部分は、3〜20の環原子を含めて、(他に特定しなければ)3〜20の炭素原子を有する。このように、用語「シクロアルキル」には、亜群のシクロアルケニル及びシクロアルキニルが含まれる。好ましくは、それぞれの環は、3〜7の環原子を有する。シクロアルキル基の群の例には、C3−20シクロアルキル、C3−15シクロアルキル、C3−10シクロアルキル、C3−7シクロアルキルが含まれる。
【0030】
シクロアルキル基の例には、限定されないが、以下より派生するものが含まれる:
飽和の単環系炭化水素化合物:
シクロプロパン(C)、シクロブタン(C)、シクロペンタン(C)、シクロへキサン(C)、シクロヘプタン(C)、メチルシクロプロパン(C)、ジメチルシクロプロパン(C)、メチルシクロブタン(C)、ジメチルシクロブタン(C)、メチルシクロペンタン(C)、ジメチルシクロペンタン(C)、メチルシクロへキサン(C)、ジメチルシクロへキサン(C)、メンタン(C10);
不飽和の単環系炭化水素化合物:
シクロプロペン(C)、シクロブテン(C)、シクロペンテン(C)、シクロヘキセン(C)、メチルシクロプロペン(C)、ジメチルシクロプロペン(C)、メチルシクロブテン(C)、ジメチルシクロブテン(C)、メチルシクロペンテン(C)、ジメチルシクロペンテン(C)、メチルシクロヘキセン(C)、ジメチルシクロヘキセン(C);
飽和の多環系炭化水素化合物:
ツヤン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C)、ノルピナン(C)、ノルボルナン(C)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和の多環系炭化水素化合物:
カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香族環を有する多環系の炭化水素化合物:
インデン(C)、インダン(例、2,3−ジヒドロ−1H−インデン)(C)、テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)。
【0031】
ヘテロシクリル:本明細書に使用する用語「ヘテロシクリル」は、複素環式化合物の環原子より水素原子を除去することによって得られる一価部分に関連して、該部分は、その1〜10が環ヘテロ原子である、(他に特定しなければ)3〜20の環原子を有する。好ましくは、それぞれの環は、その1〜4が環ヘテロ原子である3〜7の環原子を有する。
【0032】
この文脈において、接頭辞(例、C3−20、C3−7、C5−6、等)は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子の数、又は環原子の数の範囲を意味する。例えば、本明細書に使用する用語「C5−6ヘテロシクリル」は、5又は6の環原子を有するヘテロシクリル基に関連する。ヘテロシクリル基の群の例には、C3−20ヘテロシクリル、C5−20ヘテロシクリル、C3−15ヘテロシクリル、C5−15ヘテロシクリル、C3−12ヘテロシクリル、C5−12ヘテロシクリル、C3−10ヘテロシクリル、C5−10ヘテロシクリル、C3−7ヘテロシクリル、C5−7ヘテロシクリル、及びC5−6ヘテロシクリルが含まれる。
【0033】
単環系ヘテロシクリル基の例には、限定されないが、以下より派生するものが含まれる:
:アジリジン(C)、アゼチジン(C)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C)、ピロリン(例、3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)(C)、2H−ピロール又は3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C)、ピペリジン(C)、ジヒドロピリジン(C)、テトラヒドロピリジン(C)、アゼピン(C);
:オキシラン(C)、オキセタン(C)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C)、オキソール(ジヒドロフラン)(C)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C)、ジヒドロピラン(C)、ピラン(C)、オキセピン(C);
:チイラン(C)、チエタン(C)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C)、チエパン(C);
:ジオキソラン(C)、ジオキサン(C)、及びジオキセパン(C);
:トリオキサン(C);
:イミダゾリジン(C)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C)、イミダゾリン(C)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C)、ピペラジン(C);
:テトラヒドロオキサゾール(C)、ジヒドロオキサゾール(C)、テトラヒドロイソオキサゾール(C)、ジヒドロイソオキサゾール(C)、モルホリン(C)、テトラヒドロオキサジン(C)、ジヒドロオキサジン(C)、オキサジン(C);
:チアゾリン(C)、チアゾリジン(C)、チオモルホリン(C);
:オキサジアジン(C);
:オキサチオール(C)及びオキサチアン(チオキサン)(C);及び、
:オキサチアジン(C)。
【0034】
置換(非芳香族)単環系ヘテロシクリル基の例には、環型の多糖、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、及びキシロフラノースのようなフラノース(C)と、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、及びタロピラノースのようなピラノース(C)より派生するものが含まれる。
【0035】
スピロ−C3−7シクロアルキル又はヘテロシクリル:本明細書に使用する用語「スピロC3−7シクロアルキル又はヘテロシクリル」は、両方の環に共通した単一の原子により別の環へ連結するC3−7シクロアルキル又はC3−7ヘテロシクリル環を意味する。
【0036】
5−20アリール:本明細書に使用する用語「C5−20アリール」は、C5−20芳香族化合物の芳香族環原子より水素原子を除去することによって得られる一価部分に関連して、前記化合物は、1つの環、又は2以上の環(例、縮合)を有して、5〜20の環原子を有し、そしてここで前記環の少なくとも1つは、芳香族環である。好ましくは、それぞれの環は、5〜7の環原子を有する。
【0037】
環原子は、「カルボアリール基」にあるように、すべて炭素原子であってよく、この場合、該基は、簡便に、「C5−20カルボアリール」基と呼ばれる場合がある。
環ヘテロ原子を有さないC5−20アリール基(即ち、C5−20カルボアリール基)の例には、限定されないが、ベンゼン(即ち、フェニル)(C)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、及びピレン(C16)より派生するものが含まれる。
【0038】
あるいは、環原子には、「ヘテロアリール基」のように、限定されないが、酸素、窒素、及びイオウが含まれる、1以上のヘテロ原子を含めてよい。この場合、該基は、簡便に、「C5−20ヘテロアリール」基と呼ばれる場合があり、ここで「C5−20」は、炭素原子であれヘテロ原子であれ、環原子を意味する。好ましくは、それぞれの環は、そのうち0〜4が環ヘテロ原子である、5〜7の環原子を有する。
【0039】
5−20ヘテロアリール基の例には、限定されないが、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、及びオキサトリアゾールより派生するCヘテロアリール基と、イソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン;例、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4−ジアジン)、及びトリアジンより派生するCヘテロアリール基が含まれる。
【0040】
ヘテロアリール基は、炭素環原子又はヘテロ環原子を介して結合してよい。
縮合環を含むC5−20ヘテロアリール基の例には、限定されないが、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールより派生するCヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンより派生するC10ヘテロアリール基;アクリジン及びキサンテンより派生するC14ヘテロアリール基が含まれる。
【0041】
上記のアルキル、ヘテロシクリル、及びアリール基は、単独であれ、別の置換基の一部であれ、それ自身と以下に収載する追加の置換基より選択される1以上の基で、それ自身、置換されていてもよい。
【0042】
ハロ:−F、−Cl、−Br、及び−I。
ヒドロキシ:−OH。
エーテル:−OR{ここでRは、エーテル置換基、例えば、C1−7アルキル基(C1−7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3−20ヘテロシクリル基(C3−20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、又はC5−20アリール基(C5−20アリールオキシ基とも呼ばれる)であり、好ましくは、C1−7アルキル基である}。
【0043】
ニトロ:−NO
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):−CN。
アシル(ケト):−C(=O)R{ここでRは、アシル置換基、例えば、H、C1−7アルキル基(C1−7アルキルアシル又はC1−7アルカノイルとも呼ばれる)、C3−20ヘテロシクリル基(C3−20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、又はC5−20アリール基(C5−20アリールアシルとも呼ばれる)、好ましくは、C1−7アルキル基である}。アシル基の例には、限定されないが、−C(=O)CH(アセチル)、−C(=O)CHCH(プロピオニル)、−C(=O)C(CH(ブチリル)、及び−C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれる。
【0044】
カルボキシ(カルボン酸):−COOH。
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):−C(=O)OR{ここでRは、エステル置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である}。エステル基の例には、限定されないが、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、−C(=O)OC(CH、及び−C(=O)OPhが含まれる。
【0045】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):−C(=O)NR{ここでRとRは、独立して、アミノ基について定義されるアミノ置換基である}。アミド基の例には、限定されないが、−C(=O)NH、−C(=O)NHCH、−C(=O)N(CH、−C(=O)NHCHCH、及び−C(=O)N(CHCH、並びに、RとRが、それらが付く窒素原子と一緒に(例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、及びピペラジニルカルボニルにあるような)複素環構造を形成するアミド基が含まれる。
【0046】
アミノ:−NR{ここでRとRは、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基(C1−7アルキルアミノ又はジC1−7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、H又はC1−7アルキル基であるか、又は「環式」アミノ基の場合、RとRは、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する複素環式環を形成する}。アミノ基の例には、限定されないが、−NH、−NHCH、−NHCH(CH、−N(CH、−N(CHCH、及び−NHPhが含まれる。環式アミノ基の例には、限定されないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、及びチオモルホリノが含まれる。環式アミノ基は、その環上で、本明細書に定義される置換基(例えば、カルボキシ、カルボキシレート、及びアミド)のいずれにより置換されてもよい。
【0047】
アシルアミド(アシルアミノ):−NRC(=O)R{ここでRは、アミド置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、H又はC1−7アルキル基、最も好ましくは、Hであり、Rは、アシル置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、C1−7アルキル基である}。アシルアミド基の例には、限定されないが、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CHCH、及び−NHC(=O)Phが含まれる。RとRは、一緒に、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、及びフタルイミジル:
【0048】
【化3】

【0049】
のような環構造を形成してよい。
ウレイド:−N(R)CONR{ここでRとRは、独立して、アミノ基について定義されるアミノ置換基であり、Rは、ウレイド置換基、例えば、水素、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、水素又はC1−7アルキル基である}。ウレイド基の例には、限定されないが、−NHCONH、−NHCONHMe、−NHCONHEt、−NHCONMe、−NHCONEt、−NMeCONH、−NMeCONHMe、−NMeCONHEt、−NMeCONMe、−NMeCONEt、及び−NHC(=O)NHPhが含まれる。
【0050】
アシルオキシ(逆エステル):−OC(=O)R{ここでRは、アシルオキシ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、C1−7アルキル基である}。アシルオキシ基の例には、限定されないが、−OC(=O)CH(アセトキシ)、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)C(CH、−OC(=O)Ph、−OC(=O)CF、及び−OC(=O)CHPhが含まれる。
【0051】
チオール:−SH。
チオエーテル(スルフィド):−SR{ここでRは、チオエーテル置換基、例えば、C1−7アルキル基(C1−7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、C1−7アルキル基である}。C1−7アルキルチオ基の例には、限定されないが、−SCHと−SCHCHが含まれる。
【0052】
スルホキシド(スルフィニル):−S(=O)R{ここでRは、スルホキシド置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくは、C1−7アルキル基である}。スルホキシド基の例には、限定されないが、−S(=O)CHと−S(=O)CHCHが含まれる。
【0053】
スルホニル(スルホン):−S(=O)R{ここでRは、スルホン置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である}。スルホン基の例には、限定されないが、−S(=O)CH(メタンスルホニル、メシル)、−S(=O)CF、−S(=O)CHCH、及び4−メチルフェニルスルホニル(トシル)が含まれる。
【0054】
チオアミド(チオカルバミル):−C(=S)NR{ここでRとRは、独立して、アミノ基について定義されるアミノ置換基である。アミド基の例には、限定されないが、−C(=S)NH、−C(=S)NHCH、−C(=S)N(CH、及び−C(=S)NHCHCHが含まれる。
【0055】
スルホンアミノ:−NRS(=O)R{ここでRは、アミノ基について定義されるアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1−7アルキル基、C3−20ヘテロシクリル基、又はC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である}。スルホンアミノ基の例には、限定されないが、−NHS(=O)CH、−NHS(=O)Ph、及び−N(CH)S(=O)が含まれる。
【0056】
上記に述べたように、上記に収載した置換基を形成する基(例、C1−7アルキル、C3−20ヘテロシクリル、及びC5−20アリール)は、それ自身が置換されてよい。従って、上記の定義には、置換される置換基が含まれる。
【0057】
さらなる選好物(preferences)
以下の選好物は、適用可能である場合、本発明の各側面へ適用することができる。それぞれの基の選好物は、適宜、他の基のいずれか又はすべての選好物と組み合わせてよい。
【0058】
、X、X、及びX
好ましくは、X、X、及びX(存在する場合)の1つがNであり、より好ましくは、X及びXの1つがNである。XがNであることが最も好ましい。
【0059】
N1とRN2
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、好ましくは、5〜7の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する。好ましい、置換されていてもよい基には、限定されないが、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)(好ましくは、N置換される)、ホモピペラジニル(好ましくは、N置換される)、及びピロリジニルが含まれる。追加の好ましい、置換されていてもよい基は、オキサゼパニルである。
【0060】
ピペラジニル及びホモピペラジニル基に好ましいN置換基には、エステル、特に、エステル置換基としてC1−7アルキル基を担うエステル、例えば、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、及び−C(=O)OC(CHが含まれる。
【0061】
より好ましい基は、モルホリノ及びピロリジニルであり、モルホリノが最も好ましい。これらの基は、好ましくは未置換である。ある態様において、それらは、1以上のC1−4アルキル基(例、メチル)により置換されてよい。好ましい基は、(3−メチル−モルホリン−4−イル)であり得る。
【0062】
N3とRN4
N3とRN4は、好ましくは、それらが付く窒素原子と一緒に、5〜7の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する。好ましい、置換されていてもよい基には、限定されないが、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)(好ましくは、N置換される)、ホモピペラジニル(好ましくは、N置換される)、及びピロリジニルが含まれる。
【0063】
上記の基に好ましい置換基には、C1−7アルキル(例、メチル)、アミド(例、−C(=O)NH)、ヒドロキシ、エーテル、アミノ、及びエステルが含まれ、このうち、メチル、−C(=O)NH、及びヒドロキシがより好ましい。この基は、1又は2以上の置換基を担ってよく、これらの置換基は、どの位置にあってもよい。
【0064】
ピペラジニル及びホモピペラジニル基に好ましいN置換基には、エステル、特に、エステル置換基としてC1−7アルキル基を担うエステル、例えば、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、及び−C(=O)OC(CHが含まれる。
【0065】
より好ましい基は、モルホリノ(例、3,5−ジメチル−モルホリノ)とピペラジニル(例、4−アミド−ピペラジニル、2−メチル−ピペラジニル、4−ヒドロキシ−ピペラジニル)である。
【0066】
特に好ましい基のセットは、式III:
【0067】
【化4】

【0068】
[式中、Rは:
(i)NRN5N6{ここで、RN5とRN6は、H、置換されていてもよいC1−7アルキル、置換されていてもよいC3−20ヘテロシクリル、及び置換されていてもよいC5−20アリールより独立して選択されるか、又はそれらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する};又は(ii)ORO1{ここでRO1は、置換されていてもよいC1−7アルキル、置換されていてもよいC3−20ヘテロシクリル、及び置換されていてもよいC5−20アリールからなる群より選択される}のいずれかである]により定義されるものである。
【0069】
N5とRN6は、式IIの別の基であること以外は、RN3及びRN4と同じ選好物を有してよい。
O1は、好ましくは、置換されていてもよいC5−20アリールより選択される。
【0070】
特に好ましい化合物は、実施例に示す。他の興味深い化合物には:
【0071】
【化5】

【0072】
を含めてよく、ここでRは:
【0073】
【化6】

【0074】
より選択される。
含まれる他の形態
上記に含まれるのは、これらの置換基のよく知られたイオン、塩、溶媒和、及び被保護の形態である。例えば、カルボン酸(−COOH)への言及には、そのアニオン(カルボキシレート)型(−COO)、塩、又は溶媒和物、並びに、慣用の被保護形も含まれる。同様に、アミノ基への言及には、アミノ基のプロトン化形態(−NHR)、塩、又は溶媒和物、例えば、塩酸塩、並びに、アミノ基の慣用の被保護形が含まれる。同様に、ヒドロキシル基への言及には、そのアニオン型(−O)、塩、又は溶媒和物、並びに、ヒドロキシル基の慣用の被保護形も含まれる。
【0075】
異性体、塩、溶媒和、及び被保護の形態とプロドラッグ
ある化合物は、1以上の特別な幾何、光学、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー、立体異性、互変異性、コンホメーション、又はアノマーの形態で存在する場合があり、限定されないが、cis及びtrans形;E及びZ形;c、t、及びr形;endo及びexo形;R、S、及びメソ形;D及びL形;d及びl形;(+)及び(−)形;ケト、エノール、及びエノレート形;シン(syn)及びアンチ(anti)形;シンクリナル及びアンチシンクリナル形;α及びβ形;アキシアル及びエクアトリアル形;舟、いす、ねじれ、封筒、及び半いす形;並びにこれらのあらゆる組合せが含まれ、以下、集合的に「異性体」(又は「異性形」)と呼ぶ。
【0076】
化合物が結晶形であれば、それは、いくつかの異なる多形の形態で存在する場合がある。
互変異性形について下記に考察する以外に、本明細書に使用する用語「異性体」より特に除外されるのは、構造(又は構成)異性体(即ち、空間中の原子の位置によるだけでなく、原子間の結合が異なる異性体)であることに留意されたい。例えば、メトキシ基、−OCHへの言及は、その構造異性体、ヒドロキシメチル基、−CHOHへの言及と解釈してはならない。同様に、オルト−クロロフェニルへの言及は、その構造異性体、メタ−クロロフェニルへの言及と解釈してはならない。しかしながら、一群の構造への言及には、その群に該当する構造異性形を含めてよい場合がある(例えば、C1−7アルキルには、n−プロピルとイソプロピルが含まれ;ブチルには、n、イソ、sec、及びtert−ブチルが含まれ;メトキシフェニルには、オルト、メタ、及びパラ−メトキシフェニルが含まれる)。
【0077】
上記の除外は、互変異性形に関連しない。例えば、以下の互変異性対:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及びニトロ/aci−ニトロにあるような、例えば、ケト、エノール、及びエノレート形である。
【0078】
用語「異性体」に特に含まれるのが、1以上の同位体置換のある化合物であることに留意されたい。例えば、Hは、H、H(D)、及びH(T)が含まれる、どの同位体形であってもよく;Cは、12C、13C、及び14Cが含まれる、どの同位体形であってもよく;Oは、16Oと18Oが含まれる、どの同位体形であってもよい、といった具合である。
【0079】
他に特定しなければ、特別な化合物への言及には、そのようなすべての異性形が含まれ、その(全部又は一部の)ラセミ混合物や他の混合物が含まれる。そのような異性形の製造(例、不斉合成)及び分離(例、分画結晶化とクロマトグラフィー手段)の方法は、当該技術分野でよく知られているか、又は本明細書に教示の方法、又は既知の方法を既知のやり方で適用することによって容易に入手される。
【0080】
他に特定しなければ、特別な化合物への言及には、例えば、下記に考察するような、そのイオン、塩、溶媒和、及び被保護の形態、並びにその異なる多形も含まれる。
活性化合物の対応する塩、例えば、医薬的に許容される塩を製造、精製、及び/又は処理することが簡便であるか又は望ましい場合がある。医薬的に許容される塩の例は、参考文献25に考察されている。
【0081】
例えば、化合物がアニオン性であるか、又はアニオンになり得る官能基を有する(例えば、−COOHは、−COOになり得る)ならば、好適なカチオンとともに塩を形成してよい。好適な無機カチオンの例には、限定されないが、Na及びKのようなアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+のようなアルカリ土類カチオン、及びAl3+のような他のカチオンが含まれる。好適な有機カチオンの例には、限定されないが、アンモニウムイオン(即ち、NH)と置換アンモニウムイオン(例、NH、NH、NHR、NR)が含まれる。いくつかの好適なアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンのようなアミノ酸より派生するものである。一般的な四級アンモニウムイオンの例は、N(CHである。
【0082】
化合物がカチオン性であるか、又はカチオンになり得る官能基を有する(例えば、−NHは、−NHになり得る)ならば、好適なアニオンとともに塩を形成してよい。好適な無機アニオンの例には、限定されないが、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及び亜リン酸より派生するものが含まれる。好適な有機アニオンの例には、限定されないが、以下の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸,リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、及びグルコン酸より派生するものが含まれる。好適な高分子アニオンの例には、限定されないが、以下の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースより派生するものが含まれる。
【0083】
活性化合物の対応する溶媒和物を製造、精製、及び/又は処理することが簡便であるか又は望ましい場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書において慣用の意味で使用して、溶質(例、活性化合物、活性化合物の塩)及び溶媒の複合体へ言及する。溶媒が水であれば、溶媒和物を、簡便にも、水和物(例えば、一水和物、二水和物、三水和物、等)と呼ぶ場合がある。
【0084】
活性化合物を化学的に保護された形態で製造、精製、及び/又は処理することが簡便であるか又は望ましい場合がある。本明細書に使用する用語「化学的に保護された形態」は、1以上の反応性の官能基が望まれない化学反応より保護されて、即ち、保護されているか又は保護する基(マスクされたかマスクする基、又はブロックされたか又はブロックする基としても知られる)の形態である化合物に関連する。反応性の官能基を保護することによって、他の保護されていない反応性の官能基が関与する反応を、保護された基に影響を及ぼすことなく行うことができて;保護基は、通常は後続の工程において、分子の残り部分に実質的に影響を及ぼさずに外すことができる。例えば、参考文献26を参照のこと。
【0085】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(−OR)又はエステル(−OC(=O)R)として、例えば:t−ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、又はトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリル又はt−ブチルジメチルシリルエーテル;又は、アセチルエステル(−OC(=O)CH、−OAc)として保護してよい。
【0086】
例えば、アルデヒド又はケトン基は、それぞれ、アセタール又はケタールとして保護してよく、ここでは、例えば、一級アルコールとの反応によって、カルボニル基(>C=O)をジエーテル(>C(OR))へ変換する。アルデヒド又はケトン基は、酸の存在下に大過剰の水を使用する加水分解によって、容易に再生する。
【0087】
例えば、アミン基は、例えば、アミド又はウレタンとして、例えば:メチルアミド(−NHCO−CH);ベンジルオキシアミド(−NHCO−OCH、−NH−Cbz)として;t−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Boc);2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Bpoc)として、9−フルオレニルメトキシアミド(−NH−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(−NH−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(−NH−Teoc)として、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(−NH−Troc)として、アリルオキシアミド(−NH−Alloc)として、2(−フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−NH−Psec)として;又は、好適な場合は、N−オキシド(>NO・)として保護してよい。
【0088】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば:C1−7アルキルエステル(例、メチルエステル;t−ブチルエステル);C1−7ハロアルキルエステル(例、C1−7トリハロアルキルエステル);トリC1−7アルキルシリル−C1−7アルキルエステル;又はC5−20アリール−C1−7アルキルエステル(例、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル)として;又は、アミドとして、例えば、メチルアミドとして保護してよい。
【0089】
例えば、チオール基は、チオエーテル(−SR)として、例えば:ベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(−S−CHNHC(=O)CH)として保護してよい。
【0090】
活性化合物をプロドラッグの形態で製造、精製、及び/又は処理することが簡便であるか又は望ましい場合がある。本明細書に使用する用語「プロドラッグ」は、代謝されるとき(例えば、in vivo で)望みの活性化合物を産生する化合物に関連する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるか、又は活性化合物より活性でないが、有利な取扱い、投与、又は代謝特性を提供する場合がある。
【0091】
例えば、あるプロドラッグは、活性化合物のエステル(例、生理学的に許容される、代謝的に不安定なエステル)である。代謝の間に、エステル基(−C(=O)OR)は切断されて、活性のある薬物を産生する。そのようなエステルは、例えば、親化合物中のカルボン酸基(−C(=O)OH)のいずれのエステル化によって生成してよく、親化合物に存在する他の反応基を、適宜、前もって保護して、必要ならば、脱保護を続ける。そのような代謝的に不安定なエステルの例には、Rが、C1−20アルキル(例、−Me、−Et);C1−7アミノアルキル(例、アミノエチル;2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル;2−(4−モルホリノ)エチル);及びアシルオキシ−C1−7アルキル(例、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;例えば、ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1−アセトキシエチル;1−(1−メトキシ−1−メチル)エチル−カルボニルオキシエチル;1−(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシカルボニルオキシメチル;1−イソプロポキシカルボニルオキシエチル;シクロヘキシル−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシル−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;及び、1−(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが含まれる。
【0092】
さらに好適なプロドラッグ形には、ホスホネート及びグリコラートの塩が含まれる。特に、ヒドロキシ基(−OH)は、クロロジベンジル亜リン酸塩との反応に続く水素化でホスホネート基:−O−P(=O)(OH)を形成することによって、ホスホン酸プロドラッグへ作製することができる。そのような基は、代謝の間にホスファターゼ酵素により切断されて、ヒドロキシ基のある活性薬物を生じることができる。
【0093】
また、あるプロドラッグは、酵素的に活性化されて活性化合物を生じるか、又は、さらなる化学反応時に活性化合物を生じる化合物を生じる。例えば、プロドラッグは、糖誘導体又は他のグリコシドコンジュゲートであっても、アミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0094】
頭字語
便宜上、多くの化学部分は、よく知られた略語を使用して表され、限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n−ブチル(nBu)、tert−ブチル(tBu)、n−ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、及びアセチル(Ac)が含まれる。
【0095】
便宜上、多くの化学化合物は、よく知られた略語を使用して表され、限定されないが、、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(i−PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテル又はジエチルエーテル(EtO)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれる。
【0096】
一般合成
【0097】
【化7】

【0098】
式I及びIIの化合物は、式1:
【0099】
【化8】

【0100】
[式中、式Iの化合物において、X=CH、Rは、NRN3N4を表し、Rは、NRN1N2を表す]により表すことができる。式1の化合物は、式2:
【0101】
【化9】

【0102】
の化合物より、HNRN1N2(HR)との反応に続く、HNRN3N4(HR)との反応によって合成することができる。
式2の化合物は、式3:
【0103】
【化10】

【0104】
の化合物より、例えば、POClとN,N−ジイソプロピルアミンでの処理によって合成することができる。
式3の化合物は、式4:
【0105】
【化11】

【0106】
の化合物より、例えば、シアン酸カリウムと塩化アンモニウムでの処理によって合成することができる。
使用
本発明は、具体的には、mTORの活性を阻害することに有効な活性化合物を提供する。
【0107】
本明細書に使用する用語「活性」は、mTOR活性を阻害することが可能である化合物に関連し、具体的には、固有の活性がある化合物(薬物)、並びにそのような化合物のプロドラッグの両方が含まれ、該プロドラッグは、それ自体は、固有の活性をほとんど、又は全く明示しなくてよい。
【0108】
特別な化合物により提供されるmTOR阻害を評価するために簡便に使用し得る1つのアッセイを以下の実施例において記載する。
さらに本発明は、mTORの活性を細胞において阻害する方法を提供し、該方法は、好ましくは医薬的に許容される組成物の形態の活性化合物の有効量と前記細胞を接触させることを含んでなる。そのような方法は、in vitro 又は in vivo で行ってよい。
【0109】
例えば、細胞の試料を in vitro で増殖させ、活性化合物を前記細胞と接触させて、それらの細胞に対する該化合物の効果を観測してよい。「効果」の例として、一定時間における細胞増殖の阻害、又は細胞周期のG1期における細胞の一定時間にわたる蓄積を定量してよい。活性化合物が細胞に影響を及ぼすことが見出された場合、このことを、同じ細胞種の細胞を担う患者を治療する方法における該化合物の効果の予後又は診断マーカーとして使用してよい。
【0110】
ある状態を治療する文脈で本明細書に使用する用語「治療」は、一般に、ある望みの治療効果(例えば、状態の進行の阻害)が達成されるヒト又は動物(例、獣医学応用において)のいずれかの治療及び療法に関連し、進行速度の低下、進行速度の休止、状態の改善、及び状態の治癒が含まれる。予防手段としての治療(即ち、予防)も含まれる。
【0111】
本明細書に使用する用語「追加」(adjunct)は、既知の治療手段と一緒の活性化合物の使用に関する。そのような手段には、異なる癌種の治療に使用する、薬物の細胞傷害方式、及び/又はイオン化放射線が含まれる。本発明からの化合物と組み合わせることができる追加抗癌剤の例には、限定されないが、以下が含まれる:アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード、メクロルエタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル:ニトロソ尿素:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、エチレンイミン/メチルメラミン、トリエチレンミラミン(TEM)、トリエチレンチオホスホロアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM,アルトレタミン):アルキルスルホネート;ブスルファン;トリアジン、デカルバジン(DTIC):代謝拮抗薬;葉酸類似体、メトトレキセート、トリメトレキセート、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲンシタビン、シトシンアラビノシド(AraC,シタラビン)、5−アザシチジン、2,2’−ジフルオロデオキシシチジン:プリン類似体;6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2’−デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2−CdA):トポイソメラーゼI阻害剤;カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン:天然産物;抗有糸分裂薬、パクリタキセル、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、ビノレルビン、TaxotereTM(ドセタキセル)、エストラムスチン、リン酸エストラムスチン;エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド:抗生物質;アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトザントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、ダクチノマイシン:酵素;L−アスパラギナーゼ、RNアーゼA:生物学的応答調節剤;インターフェロン−α、IL−2、G−CSF、GM−CSF:分化促進剤;レチノール酸誘導体:放射線増感剤;メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、RSU1069、EO9、RB6145、SR4233、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン、5−ヨードデオキシウリジン、ブロモデオキシシチジン:白金配位錯体;シスプラチン、カルボプラチン:アントラセンジオン;ミトザントロン、AQ4N置換尿素、ヒドロキシ尿素;メチルヒドラジン誘導体、N−メチルヒドラジン(MIH)、プロカルバジン;副腎皮質抑制薬、ミトタン(o.p’−DDD)、アミノグルテチミド:サイトカイン;インターフェロン(α,β,γ)、インターロイキン;ホルモン及びアンタゴニスト;副腎皮質ステロイド/アンタゴニスト、プレドニゾンと同等物、デキサメタゾン、アミノグルテチミド;プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール;エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/同等物;抗エストロゲン、タモキシフェン;アンドロゲン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン/同等物;抗アンドロゲン、フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ロイプロリド;非ステロイド性の抗アンドロゲン、フルタミド;EGFR阻害剤、VEGF阻害剤;プロテアソーム阻害剤。
【0112】
活性化合物は、例えば、既知の化学療法剤又はイオン化放射線処置に対して細胞を in vitro で増感させるために、mTORを阻害するための細胞培養添加剤として使用してもよい。
【0113】
活性化合物は、例えば、候補宿主が問題の化合物での処置より利益を得る可能性があるかどうかを決定するための in vitro アッセイの一部として使用してもよい。

本発明は、癌を治療するための抗癌剤又は追加剤である活性化合物を提供する。当業者は、ある候補化合物が、特別な細胞種の癌性状態を単独で、又は組合せにおいて治療するかどうかを容易に決定することができる。
【0114】
癌の例には、限定されないが、肺癌、小細胞肺癌、胃腸癌、大腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝臓癌、腎癌、膀胱癌、膵臓癌、脳腫瘍、肉腫、骨肉腫、カポシ肉腫、黒色腫、及び白血病が含まれる。
【0115】
どの種類の細胞も治療してよく、限定されないが、肺、胃腸(例えば、大腸、結腸が含まれる)、胸部(乳房)、卵巣、前立腺、肝臓(肝性)、腎臓(腎性)、膀胱、膵臓、脳、及び皮膚の細胞が含まれる。
【0116】
投与
活性化合物又は活性化合物を含んでなる医薬組成物は、全身的/末梢的であっても、望みの作用部位であっても、どの簡便な投与経路により被検者へ投与してもよく、限定されないが、経口(例えば、摂取による);局所(例えば、経皮、鼻腔内、眼、頬内、及び舌下が含まれる);肺(例えば、例えばエアゾール剤を、例えば口又は鼻を通して使用する吸入又は通気療法による);直腸;膣;非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、脊髄内、被膜内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内が含まれる注射による;デポー剤の、例えば、皮下又は筋肉内の埋め込みによる)が含まれる。
【0117】
被検者は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例、マウス)、イヌ科(例、イヌ)、ネコ科(例、ネコ)、ウマ科(例、ウマ)、霊長動物、類人猿(例、サル又はヒトニザル)、サル(例、マーモセット、ヒヒ)、ヒトニザル(例、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、又はヒトであってよい。
【0118】
製剤
活性化合物を単独で投与することは可能であるが、上記に定義される少なくとも1つの活性化合物を1以上の医薬的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、滑沢剤、又は当業者によく知られた他の材料を含んでなり、他の治療剤又は予防剤を含んでもよい医薬組成物(例、製剤)としてそれを提示することが好ましい。
【0119】
従って、本発明は、上記に定義される医薬組成物と、上記に定義される少なくとも1つの活性化合物を1以上の医薬的に許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定化剤、又は本明細書に記載の他の材料と一緒に混合することを含んでなる、医薬組成物を作製する方法をさらに提供する。
【0120】
本明細書に使用する用語「医薬的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比と釣り合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症を伴わずに、被検者(例、ヒト)の組織と接触させる使用に適している、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形に関する。それぞれの担体、賦形剤、等も、製剤の他の成分と適合可能であるという意味において「許容」されなければならない。
【0121】
好適な担体、希釈剤、賦形剤、等は、標準の製剤テキストに見出すことができる。例えば、参考文献27〜29を参照のこと。
製剤は、簡便には、単位剤形で提示してよく、調剤の技術分野でよく知られたどの方法により調製してもよい。そのような方法には、1以上の付属成分を構成する担体と活性化合物を一緒にする工程が含まれる。一般に、製剤は、活性化合物を液体担体又は微細化した固体担体、又はその両方と均一かつ緊密に結びつけてから、必要であれば、生成物を成型することによって調製される。
【0122】
製剤は、液剤、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、甘味入り錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、ペッサリー剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、微粉剤、フォーム剤、ローション剤、オイル剤、ボーラス剤、舐剤、又はエアゾール剤の形態であってよい。
【0123】
経口投与(例、摂取による)に適した製剤は、予決定量の活性化合物をそれぞれ含有する、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤のような離散単位として;散剤又は顆粒剤として;水系又は非水系の液体中の溶液剤又は懸濁液剤として;又は、水中油型の液体乳剤又は油中水型の乳剤として;ボーラス剤として;舐剤として;又はペースト剤として提示してよい。
【0124】
錠剤は、1以上の付属成分を伴ってもよい、慣用の手段(例、圧縮又は成型)により作製してよい。圧縮錠剤は、1以上の結合剤(例、ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤又は希釈剤(例、乳糖、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例、ナトリウムデンプングリコラート、架橋連結ポビドン、架橋連結ナトリウムカルボキシメチルセルロース);界面活性又は分散又は湿潤剤(例、ラウリル硫酸ナトリウム);及び保存剤(例、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合してもよい、散剤又は顆粒剤のような自由浮遊形態の活性化合物を好適な機械において圧縮することによって作製してよい。成型錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械において成型することによって作製してよい。錠剤は、被覆しても、割線を入れてもよく、例えば、望みの放出プロフィールを提供するために、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な比率で使用して、本発明の活性化合物の遅延又は制御放出をもたらすように製剤化してよい。錠剤は、胃ではなく腸の部分で放出をもたらすように、腸溶コーティング剤とともに提供してもよい。
【0125】
局所投与(例、経皮、鼻腔内、眼、頬内、舌下)に適した製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤、又はオイル剤として製剤化してよい。あるいは、製剤は、活性化合物を含浸した、バンデージ又は絆創膏のようなパッチ剤又は包帯剤を含んでよく、1以上の賦形剤又は希釈剤を含んでもよい。
【0126】
口中の局所投与に適した製剤には、芳香性の基剤、通常はショ糖及びアカシア又はトラガカントに活性化合物を含んでなる甘味入り錠剤;ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアのような不活性基剤に活性化合物を含んでなるトローチ剤;及び、好適な液体担体に活性化合物を含んでなるマウスウォッシュ剤が含まれる。
【0127】
眼への局所投与に適した製剤には、好適な担体、具体的には、活性化合物の水系溶媒に活性化合物が溶解又は懸濁している点眼剤も含まれる。
担体が固体である経鼻投与に適した製剤には、粒径が例えば約20〜約500ミクロンの範囲にあり、鼻を嗅ぐやり方で(即ち、速やかな吸入によって)、鼻の近くで固定した散剤の容器より鼻腔を介して投与される、粗い散剤が含まれる。担体が、例えば、経鼻スプレー、点鼻剤としての投与によるか又はネブライザーによるエアゾール投与による液体である好適な製剤には、活性化合物の水性又は油性の溶液剤が含まれる。
【0128】
吸入による投与に適した製剤には、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスのような好適な推進剤の使用を伴う、加圧パックからのエアゾールスプレー剤として提示されるものが含まれる。
【0129】
皮膚を介した局所投与に適した製剤には、軟膏剤、クリーム剤、及び乳剤が含まれる。軟膏剤で製剤化する場合、活性化合物は、パラフィン基剤又は水混和性軟膏基剤のいずれと利用してもよい。あるいは、活性化合物は、水中油型クリーム基剤とともに、クリーム剤で製剤化してよい。望まれるならば、クリーム基剤の水相には、例えば、少なくとも約30%(w/w)の多水酸基アルコール(即ち、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、及びポリエチレングリコールのような、2以上のヒドロキシル基を有するアルコールとこれらの混合物)を含めてよい。局所製剤には、望ましくは、皮膚又は他の影響部位を介した活性化合物の吸収又は浸透を高める化合物を含めてよい。そのような皮膚浸透エンハンサーの例には、ジメチルスルホキシドと関連の類似体が含まれる。
【0130】
局所乳剤として製剤化するとき、油相は、乳化剤(あるいは、エマルゲン(emulgent)として知られる)だけを含んでもよく、あるいは、それは、脂肪又はオイル、又は脂肪とオイルの両方と少なくとも1つの乳化剤の混合物を含んでよい。好ましくは、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に親水性乳化剤を含める。オイルと脂肪をともに含めることも好ましい。さらに、乳化剤は、安定化剤を伴うか又は伴わずにいわゆる乳化ワックスを構成し、このワックスは、オイル及び/又は脂肪とともにいわゆる乳化軟膏基剤を構成して、これがクリーム製剤の油性分散相を形成する。
【0131】
好適なエマルゲン及び乳化安定剤には、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート、及びラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。医薬乳化製剤に使用される可能性があるほとんどのオイルにおける活性化合物の溶解度が非常に低い場合があるので、製剤に適したオイル又は脂肪の選択は、望みの美容特性を達成することに基づく。従って、クリーム剤は、好ましくは、チューブや他の容器からの漏れを回避するのに適した粘稠度(consistency)のある、脂っこくなく、汚れつきのない、洗浄可能な製品であるべきである。ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルへキシル、又はCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルの混和物といった、直鎖又は分岐鎖の一若しくは二塩基性アルキルエステルを使用してよく、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、要求される特性に依存して、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。あるいは、白色軟ワセリン及び/又は流動パラフィン又は他の鉱油のような高融点脂質を使用してよい。
【0132】
直腸投与に適した製剤は、例えば、ココア脂又はサリチル酸エステルを含んでなる好適な基剤を用いた坐剤として提示してよい。
膣投与に適した製剤は、活性化合物に加えて、当該技術分野において適切であることが知られているような担体を含有するペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、又はスプレー製剤として提示してよい。
【0133】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内注射が含まれる注射による)に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤、及び企図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有してよい、水系及び非水系の等張で、発熱物質を含まない、無菌の注射溶液剤;及び、懸濁剤と濃化剤を含めてよい水系及び非水系の無菌懸濁液剤、並びに、該化合物を血液成分や1以上の臓器へ標的指向するように設計されたリポソーム剤や他の微粒子系が含まれる。そのような製剤における使用に適した等張担体の例には、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル液、又は乳酸添加リンゲル注射剤が含まれる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、例えば、約10ng/ml〜約1μg/mlである。
【0134】
製剤は、単回用量又は頻回用量の密封容器、例えば、アンプル及びバイアルにおいて提示してよく、使用直前に無菌の液体担体(例えば、注射用水)の添加だけを必要とする凍結−乾燥(凍結乾燥)状態で保存してよい。無菌の散剤、顆粒剤、及び錠剤より、即座の注射溶液剤及び懸濁液剤を調製してよい。製剤は、活性化合物を血液成分や1以上の臓器へ標的指向するように設計されたリポソーム剤や他の微粒子系の形態であってよい。
【0135】
投与量
活性化合物と活性化合物を含んでなる組成物の適切な投与量は、患者ごとに変動する可能性があると理解されよう。一般に、最適投与量を決定することは、本発明の治療薬のあらゆるリスクや有害な副作用に対して治療利益のレベルを均衡させることに関連する。選択される投与量レベルは、限定されないが、特別な化合物の活性、投与経路、投与の時間、化合物の排出速度、治療の期間、組み合わせて使用する他の薬物、化合物、及び/又は材料、患者の年齢、性別、体重、状態、健康全般、及び既往歴が含まれる多種多様な要因に依存するものである。一般に、投与量は、実質的に有害であるか又は危害性の副作用を引き起こさずに望みの効果を達成する、作用部位での局所濃度に到達するべきであるが、化合物の量と投与経路は、最終的には、医師の裁量によるものである。
【0136】
in vivo 投与は、治療のクール全体で、単一用量で、連続的に、又は間欠的に(例えば、適切な期間での分割用量で)行うことができる。最も有効な投与の手段及び投与量を決定する方法は、当業者によく知られていて、治療に使用する製剤、治療の目的、治療する標的細胞、及び治療する被検者に応じて変動するものである。担当医が選択する用量のレベル及びパターンを用いて、単回又は頻回の投与を行うことができる。
【0137】
一般に、活性化合物の好適な用量は、1日につき、被検者の体重(キログラム)あたり約100μg〜約250mgの範囲にある。活性化合物が、塩、エステル、プロドラッグ、等である場合、投与する量は、親化合物に基づいて計算するので、使用する実際の重量は、比例的に増加する。
【0138】
実施例
一般実験法
薄層クロマトグラフィーは、Merck Kieselgel 60 F254ガラス支持プレートを使用して行った。プレートは、UVランプ(254nm)の使用により可視化した。シリカゲル60(粒径40〜63μm)(供給元:E.M.Merck)をフラッシュクロマトグラフィーに利用した。H NMRスペクトルは、Bruker DPX−300機器で、300MHzで記録した。化学シフトは、テトラメチルシランを基準にした。
【0139】
ライブラリー試料の精製及び同定
試料は、Gilson LCユニットで精製した。移動相A−0.1% TFA水溶液、移動相B−アセトニトリル;流速6ml/分;勾配−典型的には、90% A/10% B、1分間で始めて、15分後に97%へ高めて、2分間固定してから、開始条件へ戻す。カラム:Jones Chromatography Genesis 4μm,C18カラム、10mmx250mm。ピーク獲得は、254nmでのUV検出に基づく。
【0140】
質量スペクトルは、Finnegan LCQ機器で、陽イオンモードで記録した。移動相A−0.1%ギ酸水溶液、移動相B−アセトニトリル;流速2ml/分;勾配−95% A/5% B、1分間で始めて、5分後に98% Bへ高めて、3分間固定してから、開始条件へ戻す。カラム:異なるが、いつでもC18 50mmx4.6mm(今回は、Genesis C184μm,Jones Chromatography)。PDA検出:Waters 996,スキャン範囲:210〜400nm。
【0141】
マイクロ波合成
反応は、ロボットアーム付きPersonal ChemistryTM Emrys Optimiserマイクロ波合成ユニットを使用して行った。電力範囲:2.45GHzで0〜300ワット。圧力範囲:0〜20バールの間;温度増加:2〜5℃/秒;温度範囲:60〜250℃。
【0142】
実施例1
【0143】
【化12】

【0144】
出発材料:
1a:X=N、X=CH、X=CH、X=CH:2−アミノ−ニコチン酸
1b:X=CH、X=CH、X=N、X=CH:3−アミノ−イソニコチン酸
1c:X=CH、X=CH、X=CH、X=N:3−アミノ−ピリジン−2−カルボン酸
(i)1H−ピリドピリミジン−2,4−ジオン(2)
適切なアミノ酸(1)(1当量)、シアン酸カリウム(5当量)、及び塩化アンモニウム(10当量)を水に懸濁させた。このスラリーを加熱(160℃)して、水蒸気を反応容器より追い出しながら、手動で2時間混合した。次いで、反応温度を200℃へ40分間高めた後で90℃へ冷やし、この時点で温水を加えてから、この混合物をそのまま室温へ冷やした。冷却の間に生成した沈殿を濾過により取り出し、水(2回)とジエチルエーテル(1回)で洗浄した後で、デシケーター中で乾燥させて、望みの生成物を好適に澄明な形態で得て、さらに精製せずに使用した。
【0145】
2a:1H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−2,4−ジオン:m/z (LC-MS, ESP):イオン化しない。R/T=0.76分。
2b:1H−ピリド[3,4−d]ピリミジン−2,4−ジオン:m/z (LC-MS, ESP): 164 [M-K+H]+, R/T=0.38分。
【0146】
2c:1H−ピリド[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオン:m/z (LC-MS, ESP): 164 [M-K+H]+,R/T=0.45分。
(ii)2,4−ジクロロ−ピリドピリミジン(3)
適切な1H−ピリドピリミジン−2,4−ジオン(2)(1当量)をPOCl(44当量)に溶かした。この混合物へN,N−ジイソプロピルアミン(2.8当量)を滴下形式で加えた。この反応物を不活性気体下に室温で5時間撹拌した。この時間の後で、この混合物を、温度を30℃未満に保つように留意しながら、真空で濃縮した。生じる黒い残渣を砕氷上へ注いだ。この混合物をCHCl(x2)で抽出してから、有機抽出物を水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、真空で濃縮して、望みの生成物に対応するタール様の材料を好適に澄明な形態で得て、さらに精製せずに使用した。
【0147】
3a:2,4−ジクロロ−ピリド[2,3−d]ピリミジン:m/z (LC-MS, ESP): 200 [M+H]+,R/T=3.60分。
3b:2,4−ジクロロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン:m/z (LC-MS, ESP): 200 [M+H]+,R/T=3.82分。
【0148】
3c:2,4−ジクロロ−ピリド[3,2−d]ピリミジン:m/z (LC-MS, ESP): 200 [M+H]+,R/T=3.80分。
(iii)ピリドピリミジン−2,4−ジアミン(4)
適切な2,4−ジクロロ−ピリドピリミジン(3)(1当量)をCHCl(1ミリモルの材料あたり4mlの溶媒)に懸濁させて、この混合物へトリエチルアミン(1当量)を加えた。次いで、生じる橙色の溶液を0℃へ冷やして、適切なアミン(RH)(1当量)を0.1M CHCl溶液として5分にわたり滴下した。この混合物をさらに45分間撹拌した後で、それを水で希釈して、CHCl(x2)で抽出した。この有機抽出物を、MgSOを使用して乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して粗製の固形物を得て、ヘキサン:EtOAc(2:3)を溶出液として使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO)によりこれを精製して、望みの生成物(1当量)を得て、これをジメチルアセトアミド(0.7M)に希釈して、適切なアミン(RH)(2.5当量)を加えた。この反応混合物を60℃まで16時間加熱した。完了後すぐに、この反応混合物を分取用HPLC精製に処して、以下に詳述する、望みのピリドピリミジン−2,4−ジアミンを得た:
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
実施例2
(a)
【0154】
【化13】

【0155】
2−(2−クロロメチル−モルホリン−4−イル)−4−((S)−3−メチル−モルホリン−4−イル)−ピリド[2,3−d]ピリミジン(4aj)(36mg,0.1ミリモル)と適切なアミン(0.5ミリモル)のジメチルアセトアミド(2.5ml)溶液へNaI(3mg,0.02ミリモル)とKCO(14mg,0.1ミリモル)を加えた。反応容器を密封して、マイクロ波放射線の影響下で加熱した(低吸収設定、200℃,20分)。この粗製の反応混合物を真空で濃縮し、分取用HPLCにより精製して、望みの化合物(5)を得た。
【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
(b)
【0159】
【化14】

【0160】
2−(2−クロロメチル−モルホリン−4−イル)−4−((S)−3−メチル−モルホリン−4−イル)−ピリド[2,3−d]ピリミジン(4aj)(36mg,0.1ミリモル)(11mg,0.03ミリモル)の無水ジメチルアセトアミド(0.5ml)溶液へtert−BuOK(6.8mg,0.6ミリモル)と18−クラウン−6−エーテル(0.006ミリモル,1.6mg)を加えた。次いで、この反応混合物へ適切なアルコールを加えて、それぞれの反応物を110℃まで15時間加熱した。この後で、粗製の反応混合物を真空で濃縮し、分取用HPLCにより精製して、望みの化合物(5)を得た。
【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
実施例3:生物学的アッセイ
mTOR酵素活性アッセイのために、mTORタンパク質をヒーラ細胞の細胞質抽出物より、免疫沈降反応によって単離して、組換えPHAS−1を基質として使用して、本質的に既報のようにして活性を定量した(参考文献21)。
【0164】
試験した化合物は、いずれも15μM未満のIC50値を明示した。
以下の化合物は、1.5μM未満のIC50値を明示した:4c、4d、4h、4n、4o、4y、4ab、4af、4ag、4ah、5e、5g、5h、5k、5m、5z。
【0165】
参考文献リスト
以下の文献は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
【化15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグ[式中:
、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;
N3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]。
【請求項2】
及びXの1つがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がNである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
N1とRN2が、それらが付く窒素原子と一緒に、モルホリノ、オキサゼンペニル、チオモルホリノ、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、ホモピペラジニル、及びピロリジニルより選択される、置換されていてもよい基を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
N1とRN2が、それらが付く窒素原子と一緒に、モルホリノ又は3−メチル−モルホリン−4−イルを形成する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
N3とRN4が、それらが付く窒素原子と一緒に、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、ホモピペラジニル、及びピロリジニルより選択される、置換されていてもよい基を形成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
N3とRN4が、それらが付く窒素原子と一緒に、モルホリノ及びピペラジニルより選択される、置換されていてもよい基を形成する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
N3とRN4が、それらが付く窒素原子と一緒に、式III:
【化2】

[式中、Rは:
(i)NRN5N6{ここで、RN5とRN6は、H、置換されていてもよいC1−7アルキル、置換されていてもよいC3−20ヘテロシクリル、及び置換されていてもよいC5−20アリールより独立して選択されるか、又はそれらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する};又は
(ii)ORO1{ここでRO1は、置換されていてもよいC1−7アルキル、置換されていてもよいC3−20ヘテロシクリル、及び置換されていてもよいC5−20アリールからなる群より選択される}のいずれかである]の基を形成する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の化合物と医薬的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
ヒト又は動物の身体の治療の方法における使用のための、請求項1〜8のいずれか1項の化合物。
【請求項11】
式II:
【化3】

の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグの、mTORの阻害により改善される疾患を治療するための医薬品の製造における使用[式中:
、X、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;
N3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]。
【請求項12】
化合物が、請求項1〜8のいずれか1項において定義される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
mTORの阻害により改善される疾患が、癌、免疫抑制、免疫寛容、自己免疫疾患、炎症、骨損失、腸管障害、肝線維症、肝性壊死、慢性関節リウマチ、再狭窄、心臓同種移植片血管障害、乾癬、β−タラセミア、及び眼状態(ocular conditions)より選択される、請求項11又は請求項12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
式II:
【化4】

の化合物とその異性体、塩、溶媒和物、化学的に保護された形態、及びプロドラッグの、癌療法における補助薬(adjunct)としての使用のためか、又はイオン化放射線又は化学療法剤での治療のために腫瘍細胞を増感する(potentiating)ための医薬品の製造における使用[式中:
、X、X、及びXの1つはNであり、他のものはCHであり;
N1とRN2は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成し;
N3とRN4は、それらが付く窒素原子と一緒に、4〜8の環原子を有する窒素含有複素環式環を形成する]。
【請求項15】
化合物が、請求項1〜8のいずれか1項において定義される、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2008−531538(P2008−531538A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556665(P2007−556665)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000671
【国際公開番号】WO2006/090169
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507205830)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】